説明

清涼化剤含有ゲル状痔疾治療用剤

【課題】効き目が速く、使用感の良好なゲル状痔疾治療用剤を提供すること。
【解決手段】以下の成分(a)〜()を含有することを特徴とするゲル状痔疾治療用剤。
(a)清涼化剤 0.01〜0.3質量%
(b)ゲル化剤 0.1〜10質量%
(c)アルコール 1〜10質量%
(d)水 50〜98質量%
e)局所麻酔剤 3質量%以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用剤に関し、さらに詳しくは、メントール等の清涼化剤を含有したゲル状痔疾治療用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の痔疾用軟膏においては、水溶性の薬物を油性基剤中に配合しており、薬物の放出が遅延する傾向にあった。そこで、水溶性の薬物を水溶性の基剤中に配合し、これをゲル状外用剤として提供すれば、薬物の放出性が上がり、薬効の発現が速くなることが予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般的なゲル状外用剤に使用される量のアルコールを配合すると、肛門部やその周辺に塗布した場合、刺激が強すぎるという問題点を生じた。よって、アルコールの配合量はできるだけ少なくしたいが、一方、患部に痒み等を伴う場合には、製剤塗布後にアルコールが揮散し、その冷涼感が患部の痒み等を和らげるという作用もなお重要である。
【0004】
そこで、アルコールの減量を清涼化剤の配合によって補うことを試みたが、清涼感と刺激性のバランスを確保することは存外難しく、粘膜等の刺激に敏感な部位への使用に適したゲル状外用剤は容易には調製し得なかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アルコール及び清涼化剤の配合量を調整することにより、粘膜等への刺激性を抑えた極めて使用感のよいゲル状痔疾治療用剤を調製しうることを見出した。
【0006】
かかる知見に基づき完成した本発明は、(a)清涼化剤 0.01〜0.3質量%、(b)ゲル化剤 0.1〜10質量%、(c)アルコール 1〜10質量%、(d)水 50〜98質量%、(e)局所麻酔剤 3質量%以下を含有することを特徴とするゲル状痔疾治療用剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、薬物の放出が速く、低刺激性で、良好な使用感を有するゲル状痔疾治療用剤を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】リドカインの放出率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の清涼化剤としては、L−メントール、DL−メントール、D−カンフル、DL−カンフル、ハッカ油、ユーカリ油、チモール及びボルオネオールが挙げられ、これらには誘導体も含まれる。粘膜等へ塗布した場合の使用感という点では、L−メントール及びDL−メントールが好ましい。また、清涼化剤の配合量はゲル状痔疾治療用剤中0.01〜0.3質量%であり、良好な使用感という点では0.05〜0.3質量%が好ましい。なお、前記清涼化剤は1種を用いるだけでなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0010】
本発明のゲル化剤としては、ポリアクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸共重合体、カルボキシビニルポリマー等のカルボン酸重合体及びその塩、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシル化デンプン及びその塩、キサンタンガム、ジェランガム並びにカラーギーナンが挙げられるが、カルボン酸重合体及びセルロース誘導体が特に好ましい。また、ゲル化剤の配合量はその種類によって相違するが、おおよそゲル状痔疾治療用剤中0.1〜10質量%であり、例えばカルボキシビニルポリマーでは0.1〜2質量%である。なお、前記ゲル化剤は1種を用いるだけでなく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
本発明のアルコールとしてはエタノールが好ましく、その配合量は、ゲル状痔疾治療用剤中1〜10質量%であり、好ましくは3〜7質量%である。というのも、アルコールはメントール等の清涼化剤の溶剤としても機能するから1質量%は必要であり、また10質量%を超えると患部への刺激が強くなって痔疾治療用剤としては好ましくないからである。
【0012】
本発明の水は、ゲル状痔疾治療用剤中50〜98質量%であり、好ましくは80〜98質量%である。
【0013】
本発明のゲル状痔疾治療用剤は、水にゲル化剤を分散・溶解させ、これにアルコールに溶解させた清涼化剤を添加して攪拌・混合し、さらに水を加えることによって調製できる。
【0014】
本発明のゲル状痔疾治療用剤には、外用剤としての薬効を発現する有効成分を配合することができる。有効成分としては、血管収縮剤、抗真菌剤、ステロイド剤、抗炎症剤、収れん剤、抗ヒスタミン剤、鎮痒剤、殺菌剤、サルファ剤及びビタミン類が挙げられる。
【0015】
また、本発明の作用を阻害しない範囲で他の外用剤基剤を配合することもできる。このような外用剤基剤としては、界面活性剤、多価アルコール、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤等が挙げられる。
【実施例】
【0016】
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0017】
(実施例1)
塩酸リドカイン 3.0g
塩酸テトラヒドロゾリン 0.05g
塩化ベンザルコニウム 0.05g
マレイン酸クロルフェニラミン 0.2g
L−メントール 0.1g
カルボキシビニルポリマー 1.2g
水酸化ナトリウム 0.4g
無水エタノール 5.0g
精製水 適量
上記成分を秤量し、カルボキシビニルポリマーを60mLの精製水に分散・溶解させた。これに水酸化ナトリウム水溶液10mLを加えて攪拌し、該液に塩酸リドカイン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩化ベンザルコニウム及びマレイン酸クロルフェニラミンを10mLの精製水に溶解させた後に添加し、さらに攪拌・混合させた。そして、L−メントールを無水エタノールに溶解させてから添加・混合し、精製水を加えて全量100gのゲル状外用剤を得た。
【0018】
(実施例2)
塩酸ジブカイン 0.5g
塩酸フェニレフリン 3.0g
塩化セチルピリジニウム 0.2g
塩酸ジフェンヒドラミン 0.5g
DL−メントール 0.2g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 1.0g
ポリソルベート80 2.0g
無水エタノール 3.5g
精製水 適量
上記成分を秤量し、実施例1に準拠して全量100gのゲル状外用剤を得た。
【0019】
(実施例3)
塩酸ジブカイン 0.3g
マレイン酸クロルフェニラミン 0.3g
DL−メントール 0.2g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40 1.0g
ジイソプロノールアミン 0.4g
エチルセルロース 0.6g
カルボキシビニルポリマー 0.8g
水酸化ナトリウム 0.3g
エタノール 10.0g
精製水 適量
上記成分を秤量し、実施例1に準拠して全量100gのゲル状外用剤を得た。
【0020】
(実施例4)
硝酸ミコナゾール 1.0g
塩化ベンザルコニウム 0.05g
塩酸リドカイン 0.5g
マレイン酸クロルフェニラミン 0.5g
L−メントール 1.0g
ポリエキシエチレン硬化ヒマシ油60 2.0g
ジイソプロパノールアミン 0.4g
エチルセルロース 0.6g
カルボキシビニルポリマー 0.5g
ヒドロキシプロピルセルロース 0.5g
無水エタノール 10.0g
精製水 適量
上記成分を秤量し、実施例1に準拠して全量100gのゲル状外用剤を得た。
【0021】
(実施例5)
塩酸リドカイン 1.0g
塩酸ジフェンヒドラミン 2.0g
グリチルリチン酸二カリウム 0.5g
L−メントール 1.0g
DL−カンフル 1.0g
ボルネオール 0.5g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 2.0g
1,3-ブチレングリコール 3.0g
グリセリン 5.0g
カルボキシビニルポリマー 0.9g
水酸化ナトリウム 0.3g
エタノール 8.0g
精製水 適量
上記成分を秤量し、実施例1に準拠して全量100gのゲル状外用剤を得た。
【0022】
(試験例1)薬物の放出性試験
表1記載のゲル状外用剤(実験例1)及び軟膏剤(対照例1)をセルロース膜チューブに封入した。それぞれをpH7.2のリン酸塩緩衝液(37℃±0.5℃)が入った日局溶出試験器(パドル回転数150rpm)に浸し、液中に放出されたリドカインを高速液体クロマトグラフィーにより定量してその放出率を単位時間毎に算出した。結果を図1に示す。
【0023】
なお、対照例1の軟膏剤は、加温融解したスクワランにリドカインを混合し、別途加温融解した白色ワセリンにL−メントールを混合し、両者を均一に混ぜ合わせて全量を100gとして調製した。
【0024】
【表1】

【0025】
(試験例2)エタノールの量の決定
表2に記載した対照例2〜8のゲル状外用剤について、パネラー(12名)に適量を肛門部に塗布してもらい、その刺激感(しみる感じ)を調べた。評価は下記基準により、その平均値を表2に記載した。
刺激感なし 0点
刺激感ややあり 1点
刺激感あり 2点
刺激感やや強い 3点
刺激感強い 4点
【0026】
【表2】

【0027】
表2より、平均値が0.42であるエタノール配合量10.0g(10質量%)が許容範囲の上限付近であることがわかる。
【0028】
(試験例3)
表3に記載した実験例2〜8及び対照例4〜12のゲル状外用剤について、パネラー(12名)に適量を肛門部に塗布してもらい、その清涼感及び刺激感を調べた。評価は下記基準により、その平均値を表3に記載した。
清涼感なし 0点
清涼感ややあり 1点
清涼感あり 2点
刺激感ややあり 3点
刺激感あり 4点
【0029】
【表3】

【0030】
表3より、実験例のゲル状外用剤は平均値が2付近であり、良好な清涼感を呈することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(a)〜()を含有することを特徴とするゲル状痔疾治療用剤。
(a)清涼化剤 0.01〜0.3質量%
(b)ゲル化剤 0.1〜10質量%
(c)アルコール 1〜10質量%
(d)水 50〜98質量%
e)局所麻酔剤 3質量%以下
【請求項2】
清涼化剤がL−メントール、DL−メントール、D−カンフル、DL−カンフル、ハッカ油、ユーカリ油、チモール及びボルオネオールの少なくとも1種である請求項1記載のゲル状痔疾治療用剤。
【請求項3】
ゲル化剤がポリアクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸共重合体、カルボキシビニルポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシル化デンプン、キサンタンガム、ジェランガム及びカラーギーナンの少なくとも1種である請求項1記載のゲル状痔疾治療用剤。
【請求項4】
アルコールがエタノールである請求項1記載のゲル状痔疾治療用剤。
【請求項5】
局所麻酔剤がリドカイン若しくはジブカイン又はそれらの塩酸塩である請求項1記載のゲル状痔疾治療用剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−25771(P2012−25771A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226350(P2011−226350)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願2001−238529(P2001−238529)の分割
【原出願日】平成13年8月7日(2001.8.7)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】