説明

清涼薄地織物

【課題】清涼感に富み、ソフトで適度な吸湿性が有り、爽やかな着用感と高級感に優れた、より薄く軽い繊細な清涼薄地織物を提供する。
【解決手段】下記式で求めるR率が8%以下のセルロース系フィラメント糸と繊度が35dtex以下のポリエステルフィラメント糸とを少なくとも経糸に配列してなる、染色後の仕上げ目付45〜90g/m、引き裂き強度タテ、ヨコ共4.9N以上、ポリエステルフィラメント糸混率50重量%以下に織物を構成する。R(%)=[(m−m’)/m’]×100(m:試料の標準状態の質量(g)、m’:試料の絶乾質量(g))

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清涼薄地織物に関し、更に詳しくは、清涼感に富み、ソフトで適度な吸湿性が有り、爽やかな着用感と高級感に優れた、より薄く軽い繊細な清涼薄地織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、夏用のブラウスやスカート等の薄地素材として、市場ではより薄く軽い、爽やかな着用感と高級感を演出する繊細な外観を有する清涼薄地織物が求められていた。しかしながら、ポリエステルフィラメント糸では、細繊度糸を用いることにより、繊細な外観とより薄く軽い生地は容易に作れるものの、高ヤング率からくる硬い風合いや、石油由来のワキシイな風合い、低吸湿性からくるムレ感や静電気発生等の問題があり、爽やかな着用感と高級感に優れた清涼薄地織物を得るには至っていない。
【0003】
また、前記の問題を解決するため、セルロース系フィラメント糸とポリエステルフィラメント糸を複合糸にして用いることも提案されている(特許文献1)が、複合糸にすることにより繊度が太くなるため、より薄く軽い繊細な織物を得ることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−34635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、清涼感に富み、ソフトで適度な吸湿性が有り、爽やかな着用感と高級感に優れた、より薄く軽い繊細な清涼薄地織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、下記式で求めるR率が8%以下のセルロース系フィラメント糸と糸繊度が35dtex以下のポリエステルフィラメント糸とを少なくとも経糸に配列してなる下記条件(1)〜(3)を満足する清涼薄地織物、にある。
R(%)=[(m−m’)/m’]×100
m :試料の標準状態の質量(g)
m’:試料の絶乾質量(g)
(なお、標準状態の質量は、予備乾燥(試料を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にする)した後、標準状態(温度20±2℃、相対湿度65±4%)の環境下に放置し、恒量になった状態の質量であり、絶乾質量は、試料を温度105±2℃の熱風乾燥機中に放置して恒量になった状態の質量である。)
(1) 染色後の仕上げ目付が45〜90g/m
(2) 引き裂き強度がタテ、ヨコ共4.9N以上
(3) ポリエステルフィラメント糸の混率が50質量%以下
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、清涼感に富み、ソフトで適度な吸湿性が有り、蒸れ感がなく、爽やかな着用感と高級感に優れた、より薄く軽い繊細な清涼薄地織物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明で用いるストライプの経糸配列の一例である。
【図2】本発明で用いるストライプの組織図の一例である。
【図3】本発明で用いるストライプの経糸配列の他の例である。
【図4】本発明で用いるストライプの組織図の他の例である。
【図5】本発明で用いる平二重織の組織図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明における下記式で求めるR率が8%以下のセルロース系フィラメント糸とは、
R(%)=[(m−m’)/m’]×100
m :試料の標準状態の質量(g)
m’:試料の絶乾質量(g)
セルロースを原料として半合成された繊維のフィラメント糸であり、例えばセルロースジアセテート繊維、セルローストリアセテート繊維等が挙げられるが、それらの製法や種類を特に限定するものではない。なお、セルロースを原料とした再生繊維であるビスコースレーヨン、リヨセルは、R率が11%である。
【0010】
本発明においては、特にR率が8%以下のセルロース系フィラメント糸として、セルロースジアセテートフィラメント糸やセルローストリアセテートフィラメント糸が好ましく用いられる。これ等のアセテートフィラメント糸は、低屈折率による優れた発色性、高級感のある光沢、セルロース由来のソフトで清涼感に優れた風合い、さらには分散染料可染性等を有していることから好ましく用いられる。ちなみにセルロースジアセテートフィラメント糸のR率は6.5%、セルローストリアセテートフィラメント糸のR率は3.5%であり、これらは適度な吸湿性と速乾性を有している。また風合いや光沢の高級感の点から、さらにセルローストリアセテートフィラメント糸がより好ましく用いられる。
【0011】
本発明においてセルロース系フィラメント糸のR率が8%を超えると、水膨潤性による収縮が問題となり、洗濯収縮、形態安定性、湿潤堅牢度の問題や、保水性が高く速乾性に劣る等の問題が生じる。このため、ポリエステルフィラメント糸を混用し、その混率を高める必要があるが、混率が高まると、ポリエステルフィラメント糸の欠点である金属光沢、発色性、ワキシィな硬い風合いが強調される等の問題が生じる。
【0012】
本発明におけるポリエステルフィラメント糸は、糸繊度が35dtex以下であることが必要であるが、その製法や種類を特に限定するものではなく、また単糸の断面形状、表面形状、艶、染料染着特性等も特に限定するものではない。また、2種類以上のポリエステルフィラメント糸を複合してもよく、仮撚加工やエアー交絡加工等の加工を施したものでもよく、得ようとする薄地織物表現を考慮して任意に選定することができる。
【0013】
本発明の織物においては、少なくとも経糸に、R率が8%以下のセルロース系フィラメント糸と繊度が35dtex以下のポリエステルフィラメント糸とを配列する必要がある。R率が8%以下のセルロース系フィラメント糸と共に、繊度が35dtex以下のポリエステルフィラメント糸を配列することにより、織物の強度が補強されるので、より細繊度のセルロース系フィラメント糸の使用が可能となり、より薄く軽い薄地織物を得ることが可能となる。また、繊度が35dtex以下のポリエステルフィラメント糸を使用することで外観が繊細になり高級感ある織物が得られる。
【0014】
なお、少なくとも経糸の繊度35dtex以下のポリエステルフィラメント糸の本数は、総経糸本数の20〜50%の範囲であることが好ましい。繊度35dtex以下のポリエステルフィラメント糸の本数が20%未満になると、織物の強度が低下すると共に、外観に繊細さがなくなり高級感が得られ難くなり、また本数が50%を超えると、ポリエステルフィラメント糸の欠点であるワキシィーな硬い風合い、発色性、金属光沢等が強調される傾向がある。R率が8%以下のセルロース系フィラメント糸と繊度が35dtex以下のポリエステルフィラメント糸とは配列して使用する必要があり、両者を配列せずに混繊して複合糸の状態で使用すると、糸の繊度が太くなり、本発明のより薄く軽い繊細な織物表現ができなくなる。
【0015】
本発明の織物の組織は、特に限定されるものではなく、平織、綾織、朱子織及びこれらの変化組織等による織物の製造が可能であり、目的とする織物の風合い、意匠性等を考慮して選択すればよいが、平織や梨地織等の浮きの少ない組織は、より薄く軽い清涼薄地織物の表現に適しており、好ましく用いられる。
【0016】
本発明の織物の緯糸には、任意の繊維糸を用いることによって、織物表現の幅を広げ、風合いや機能のバリエーションを広げることができる。例えば、強度の強いセルロース系の綿糸や麻糸の細番手の糸を用いることにより、綿糸では高級感のある控えめの光沢やソフトな風合い、吸湿性の向上等の効果が得られ、麻糸では麻糸の太細効果による意匠性や清涼感のあるドライな風合いが得られる。
【0017】
しかしながら、緯糸にポリエステル繊維糸を用いる場合は、繊度35dtex以下のポリエステルフィラメント糸と合わせ、それらの混率は、織物全体の50重量%以下であることが好ましく、50質量%を超えると、ポリエステル繊維糸の欠点が強調される。また、緯糸にR率が8%以下のセルロース系フィラメント糸を用いてもよく、高級感や速乾性の観点から、R率が8%以下のセルロース系フィラメント糸の混率は、織物全体の30質量%以上であることが好ましい。
【0018】
本発明の織物は、染色後の仕上げ目付が45〜90g/m、好ましくは55〜80g/mの範囲であることが必要である。染色後の仕上げ目付が45g/m未満では、織物生地が極めて薄くなり充分な強度が得られない。仕上げ目付が90g/mを超えると、織物生地が厚くなり本発明の目的とするより薄く軽い清涼薄地織物の表現ができなくなる。
【0019】
本発明の織物は、引き裂き強度がタテ、ヨコ共4.9N以上であることが必要である。タテ或いはヨコの引き裂き強度が4.9N未満では、ブラウスやスカート等の用途に適さない。
【0020】
本発明の織物において、R率が8%以下のセルロース系フィラメント糸と共に用いるポリエステルフィラメント糸の混率は50重量%以下である必要がある。ポリエステルフィラメント糸の混率が50重量%を超えると、緯糸にポリエステル繊維糸を含まなくとも、ポリエステルフィラメント糸の欠点である蒸れ感や、ワキシィな硬い風合い、発色性、金属光沢等が強調される問題が生じる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、実施例中でのR率(水分率)の測定は、試料約20gを採り、その標準状態の質量及び絶乾質量を量り、下記式によって算出し、2回の平均値をJIS Z8401によって小数点以下1桁にして得た。
R(%)=[(m−m’)/m’]×100
m :試料の標準状態の質量(g)
m’:試料の絶乾質量(g)
【0022】
また、引き裂き強度は、JIS L1096 D法(ペンジュラム法)に従って測定し、風合いや外観、発色性等は、ハンドリングと目視によって評価した。
【0023】
(実施例1)
経糸として、セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)61dtex/15フィラメント(f)に1300T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸と、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸丸断面、R率0.4%)33dtex/24fに1800T/mのZ方向の撚を加えてなる撚糸とを、1本交互に配列し、緯糸に経糸と同じ2つの撚糸を1本交互に打ち込み、平組織の織物を製織した。この生機を常法に従って分散染料で黒色に染色し、仕上げ加工を行い、経糸密度125本/吋、緯糸密度109本/吋に仕上げた。得られた織物は、目付が56g/mであり、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の混率が36質量%、引き裂き強度がタテ6.9N、ヨコ5.9Nであった。また得られた織物は、風合いがセルローストリアセテートフィラメント糸の特長が活かされた、ソフトで清涼感に富んだドライタッチであり、より軽く薄い繊細な織物であった。さらにまたこの織物は、優雅な光沢と、深みのある発色性に優れた黒色が得られ、適度な吸湿性も有り、爽やかな着用感と高級感に優れた清涼薄地織物であった。
【0024】
(実施例2)
経糸として、セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)50dtex/12fに1300T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸と、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸丸断面、R率0.4%)33dtex/24fに1800T/mのZ方向の撚を加えてなる撚糸とを、1本交互に配列し、緯糸に経糸と同じ2つの撚糸を1本交互に打ち込み、梨地組織の織物を製織した。この生機を常法に従って分散染料で黒色に染色し、仕上げ加工を行い、経糸密度171本/吋、緯糸密度126本/吋に仕上げた。得られた織物は、目付が61g/mであり、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の混率が41重量%、引き裂き強度がタテ11.8N、ヨコ9.8Nであった。また得られた織物は、風合いがセルローストリアセテートフィラメント糸の特長が活かされた、ソフトで清涼感に富んだドライタッチであり、より軽く薄い繊細な織物であった。さらにまたこの織物は、優雅な光沢と、深みのある発色性に優れた黒色が得られ、適度な吸湿性も有り、爽やかな着用感と高級感に優れた清涼薄地織物であった。
【0025】
(比較例1)
実施例2において、セルローストリアセテートフィラメント糸に代えてポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸丸断面、R率0.4%)56dtex/24fに1300T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸を用いた以外は、実施例2と組織も仕上げ密度も同じにして織物を作成した。得られた織物は、軽く薄い薄地織物であったが、セルローストリアセテートフィラメント糸が含まれずポリエチレンテレフタレートフィラメント糸のみのため、実施例2で得た織物に比べ、黒の発色性に劣り、ワキシーな硬い風合いで、清涼感や高級感の劣るものであった。また、吸湿性が無いため、爽やかな着用感にも劣っており、本発明の目的とする清涼薄地織物は得られなかった。
【0026】
(実施例3)
経糸として、セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)61dtex/15fに350T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸と、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸丸断面、R率0.4%)33dtex/24fに1800T/mのZ方向の撚を加えてなる撚糸とを、1本交互に配列し、緯糸には、セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、菊型断面糸、R率3.5%)61dtex/15fに350T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸と綿糸100/1(59dtex)とを1本交互に打ち込み、平組織の織物を製織した。この生機を常法に従って分散染料と直接染料で緑色の同色に染色し、仕上げ加工を行い、経糸密度113本/吋、緯糸密度92本/吋に仕上げた。得られた織物は、目付が47g/mであり、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の混率が20質量%、引き裂き強度がタテ8.8N、ヨコ9.8Nであった。また、得られた織物は、細番手の綿糸の特長である高級感のある光沢やソフトな風合いと、セルローストリアセテートフィラメント糸の特長である優雅な絹様光沢やソフトで清涼感に富んだドライタッチとが活かされた、より軽く薄い繊細な織物であった。さらにまたこの織物は、深みのある発色性に優れた緑色が得られ、適度な吸湿性が有り、爽やかな着用感と高級感に優れた清涼薄地織物であった。
【0027】
(実施例4)
経糸として、セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)61dtex/15fに1300T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸と、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸丸断面、R率0.4%)33dtex/24fに1800T/mのZ方向の撚を加えてなる撚糸と、セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)84dtex/20fに350T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸とを、図1に示すように5:5:12に配列した。緯糸には、綿糸100/1(59dtex)を打ち込み、図2に示すようなストライプ組織の織物を製織した。この生機を常法に従って分散染料と直接染料でベージュ色に同色に染色し、仕上げ加工を行い、経糸密度126本/吋、緯糸密度104本/吋に仕上げた。得られた織物は、目付が64g/mであり、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の混率が8質量%、引き裂き強度がタテ6.9N、ヨコ7.8Nであった。また、得られた織物は、細番手の綿糸の特長である高級感のある光沢やソフトな風合いと、セルローストリアセテートフィラメント糸の特長である優雅な絹様光沢やソフトで清涼感に富んだドライタッチとが活かされた、より軽く薄い、絹様光沢の高級感のある繊細なストライプ織物であった。さらにまたこの織物は、深みのある発色性に優れたベージュ色が得られ、適度な吸湿性が有り、爽やかな着用感と高級感に優れた清涼薄地織物であった。
【0028】
(実施例5)
経糸として、実施例1と同じ撚糸を、1本交互に配列して用い、緯糸には、セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面糸、R率3.5%)61dtex/15fに1300T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸3本と、麻糸66/−(251dtex)1本を、交互に打ち込み、平組織の織物を製織した。この生機を常法に従って分散染料と直接染料でベージュ色に染色し、仕上げ加工を行い、経糸密度111本/吋、緯糸密度84本/吋に仕上げた。得られた織物は、目付が62g/mであり、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の混率が14質量%、引き裂き強度がタテ9.2N、ヨコ26.3Nであった。また、得られた織物は、麻糸の特長である清涼感に富んだドライタッチや太細効果による意匠性に優れた清涼感のある織物表面、適度な吸湿性等が得られ、セルローストリアセテートフィラメント糸の特長である優雅な絹様光沢や、ソフトで清涼感に富んだドライタッチ、適度な吸湿性等との相乗効果もあり、爽やかな着用感と高級感に優れたより軽く薄い繊細な清涼薄地織物であった。
【0029】
(実施例6)
経糸として、実施例3と同じ撚糸を、1本交互に配列して用い、緯糸には、セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)84dtex/20fに350T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸と、麻糸66/−(251dtex)を、1本交互に打ち込み、平組織の織物を製織した。この生機を常法に従って分散染料と直接染料でピンク色の同色に染色し、仕上げ加工を行い、経糸密度110本/吋、緯糸密度72本/吋に仕上げた。得られた織物は、目付が69g/mであり、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の混率が12質量%、引き裂き強度がタテ13.7N、ヨコ39.2Nであった。また得られた織物は、麻糸の混率が51質量%と高く、麻糸の特長である清涼感に富んだドライタッチや太細効果による意匠性に優れた清涼感のある織物表面、適度な吸湿性等が活かされ、さらにこの織物は、セルローストリアセテートフィラメント糸の混率が37質量%であり、その特長であるソフトで清涼感に富んだドライタッチや優雅な光沢、優れた発色性、適度な吸湿性等が相乗効果的に活かされており、爽やかな着用感と高級感等に優れたより軽く薄い繊細な清涼薄地織物であった。
【0030】
(実施例7)
経糸として、実施例1と同じ二つの撚糸と、ベンベルグフィラメント糸(旭化成社製)56dtex/30fに1300T/mのZ方向の撚を加えた撚糸とを、図3に示すようにセルローストリアセテートフィラメント糸とポリエステルフィラメント糸とベンベルグフィラメント糸を76本:36本:40本に配列し、緯糸には、綿80重量%、麻20重量%の混紡糸60/1(99dtex)を打ち込み、図4に示すようなストライプ組織の織物を製織した。この生機を常法に従って分散染料と直接染料で黒色の同色に染色し、仕上げ加工を行い、経糸密度161本/吋、緯糸密度87本/吋に仕上げた。得られた織物は、目付が75g/mであり、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の混率が9質量%、引き裂き強度がタテ15.1Ng、ヨコ16.7Nであった。得られた織物は、綿麻糸の混率が44質量%と高く、綿麻糸の特長であるソフトで清涼感に富んだドライタッチや、マイルドな太細効果による清涼感のある外観、適度な吸湿性等の特長が発揮され、さらに、セルローストリアセテートフィラメント糸の混率が32質量%であるが、セルローストリアセテートフィラメント糸の特長であるソフトで清涼感に富んだドライタッチや優雅な絹様光沢、優れた発色性、適度な吸湿性等が充分に発揮され、ベンベルグフィラメント糸の混率が9質量%であるが、ベンベルグフィラメント糸の特長である優雅な絹様光沢と、ソフトで清涼感に富んだ風合い、深みのある発色性、優れた吸湿性等が相乗効果的に発揮されており、爽やかな着用感と高級感等に優れたより軽く薄い繊細な清涼薄地織物であった。
【0031】
(比較例2)
経糸として、セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)40dtex/9fに1600T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸と、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸丸断面、R率0.4%)11dtex/4fに2500T/mのZ方向の撚を加えてなる撚糸とを、1本交互に配列し、緯糸にも経糸と同じ二つの撚糸を1本交互に打ち込み、平組織の織物を製織した。この生機を常法に従って分散染料で黒色に染色し、仕上げ加工を行い、経糸密度146本/吋、緯糸密度128本/吋に仕上げた。得られた織物は、目付が36g/mであり、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の混率が22質量%、引き裂き強度がタテ4.0N、ヨコ3.8Nであった。この織物は、風合いがソフトで清涼感に富んだドライタッチであり、軽く薄い織物であったが、目付が小さく、引き裂き強度が低いため、衣料用途に適さないものであった。
【0032】
(比較例3)
経糸として、セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)110dtex/26fに1000T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸と、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸丸断面、R率0.4%)84dtex/72fに1200T/mのZ方向の撚を加えてなる撚糸とを、1本交互に配列し、緯糸にも経糸と同じ二つの撚糸を1本交互に打ち込み、梨地組織の織物を製織した。この生機を常法に従って分散染料で黒色に染色し、仕上げ加工を行い、経糸密度111本/吋、緯糸密度96本/吋に仕上げた。得られた織物は、目付が101g/mであり、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の混率が44質量%、引き裂き強度がタテ14.5N、ヨコ12.5Nであった。この織物は、風合いがソフトで清涼感に富んだドライタッチであるが、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の繊度が太く、目付が大きいため、生地が厚く、重く感じられ、また糸が太いため繊細さに欠けており、目的とする清涼薄地織物とはいえないものであった。
【0033】
(比較例4)
経糸として、セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)40dtex/9fに1600T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸と、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸丸断面、R率0.4%)56dtex/24fに1400T/mのZ方向の撚を加えてなる撚糸とを、1本交互に配列し、緯糸にも経糸と同じ二つの撚糸を1本交互に打ち込み、平組織の織物を製織した。この生機を常法に従って分散染料で黒色に染色し、仕上げ加工を行い、経糸密度123本/吋、緯糸密度109本/吋に仕上げた。得られた織物は、目付が55g/mであり、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の混率が58質量%、引き裂き強度がタテ10.5N、ヨコ9.7Nであった。この織物は、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の繊度が太く、混率が高いため、ワキシィな硬い風合いであり爽やかな着用感が得られないものであった。
【0034】
(比較例5)
経糸として、セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)61dtex/15fとポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸丸断面、R率0.4%)33dtex/12fを合糸した後に2000T/MのS方向およびZ方向の撚を加えた二つの複合糸を、2本交互に配列し、緯糸にも経糸と同じ二つの複合糸を2本交互に打ち込み、平組織の織物を製織した。この生機を常法に従って分散染料で黒色に染色し、仕上げ加工を行い、経糸密度111本/吋、緯糸密度96本/吋に仕上げた。得られた織物は、目付が100g/mであり、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の混率が重量35%、引き裂き強度がタテ9.8N、ヨコ6.4Nであった。この織物は、糸が太く、目付が大きいため、生地が厚く、重く感じられ、また糸が太いために繊細さが欠けており、本発明で目的とする清涼薄地織物とはいえないものであった。
【0035】
(比較例6)
経糸として、実施例1と同じ二つの撚糸を、1本交互に配列し、緯糸にはセルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)61dtex/15fに1300T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸と、ベンベルグフィラメント糸(旭化成社製)33dtex/24fに2400T/mのS方向の撚を加えてなる撚糸を、1本交互に打ち込み、図5に示すような平二重織組織の織物を製織した。この生機を常法に従って直接染料でピンク色に染色し、仕上げ加工を行い、経糸密度264本/吋、緯糸密度197本/吋に仕上げた。得られた織物は、目付が108g/mであり、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の混率が21質量%、引き裂き強度がタテ21.6N、ヨコ18.3Nであった。得られた織物は、目付が大きいため、生地が重く、重く感じられ、本発明で目的とする清涼薄地織物とはいえないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の薄地織物は、薄くて軽く、爽やかな着用感と高級感を演出する繊細な外観を有するものであり、夏用のブラウスやスカート等の清涼感のある衣料用薄地素材として、有用なるものである。
【符号の説明】
【0037】
A:セルローストリアセテート糸(61dtex/15f、1300T/mS撚糸)
B:ポリエチレンテレフタレート糸(33dtex/24f、1800T/mZ撚糸)
C:セルローストリアセテート糸(84dtex/20f、350T/mS撚糸)
D:ベンベルグ糸(56dtex/30f、1300T/mZ撚糸)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で求めるR率が8%以下のセルロース系フィラメント糸と糸繊度が35dtex以下のポリエステルフィラメント糸とを少なくとも経糸に配列してなる下記条件(1)〜(3)を満足する清涼薄地織物。
R(%)=[(m−m’)/m’]×100
m :試料の標準状態の質量(g)
m’:試料の絶乾質量(g)
(なお、標準状態の質量は、予備乾燥(試料を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にする)した後、標準状態(温度20±2℃、相対湿度65±4%)の環境下に放置し、恒量になった状態の質量であり、絶乾質量は、試料を温度105±2℃の熱風乾燥機中に放置して恒量になった状態の質量である。)
(1) 染色後の仕上げ目付が45〜90g/m
(2) 引き裂き強度がタテ、ヨコ共4.9N以上
(3) ポリエステルフィラメント糸の混率が50質量%以下
【請求項2】
R率が8%以下のセルロース系フィラメント糸が、セルロースアセテートフィラメント糸である請求項1に記載の清涼薄地織物。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−26061(P2012−26061A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167801(P2010−167801)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(301067416)三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Fターム(参考)】