説明

渋柿の脱渋処理方法及び渋柿の脱渋処理装置

【課題】本発明は、比較的短時間に、容易かつ単純な操作手段によって、高品質でかつ均一な製品を工業的に容易に製造することができること、特に果実の軟化及び表皮に発生する変色(黒色)の問題を解消することをこの発明の課題(目的)とする。
【解決手段】密封された脱渋庫に渋柿を収納し、前記脱渋庫内の空気を二酸化炭素ガスで置換し、二酸化炭素ガスの圧入によって、前記脱渋庫内の圧力を1.01〜1.10気圧に加圧し、一方、前記脱渋庫内を25℃〜50℃の温度範囲に設定して脱渋処理を開始し、5〜30時間脱渋処理した後、ガス抜きして圧力を解除し、更に必要に応じて前記脱渋庫内を0℃〜35℃の温度範囲に設定して脱渋後処理工程を所定時間行うことを特徴とする渋柿の脱渋処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渋柿の脱渋処理方法及び渋柿の脱渋処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、柿の産地で行われる脱渋法としては、炭酸ガス(二酸化炭素ガス)脱渋法、炭酸ガスとアルコールガスの混合ガスによる脱渋法及びアルコール脱渋法などが知られている。
前者は、脱渋庫に渋柿を収納し、該脱渋庫に炭素ガス又は炭酸ガスとアルコールガスの混合ガスを注入するとともに前記渋柿の果実温度を所定の温度に調整し、所定時間脱渋処理を行い、ガス抜き後に、更に脱渋処理工程を所定時間行うものであるが、一般に長期の処理時間を要するため、処理能力が低下するという問題、また、二酸化炭素で脱渋処理された果実は、果実の軟化が早く、まろやかさに欠け、果実表皮の汚染による変色(黒色)という問題、さらに、収穫された渋柿の品種や品質の相違により処理時間や温度管理が異なるため手間がかかり、均一な製品の品質に仕上げるには熟練者に頼らねばならないという問題点などがあった。
【0003】
一方、アルコール脱渋法は、収穫した果実を箱詰し、アルコール(エタノール)を一定の濃度に希釈して所定量ふりかけ密封し、一定日数放置することにより脱渋を行う方法であるが、この脱渋法は温度により脱渋の進行が大きく相違し、果実の軟化も急激に進行しすぎるという問題点があった。さらにアルコールによって果実が黒く汚染され、商品価値を大きく低下させることがあるという問題もあった。
【0004】
これらの問題点を改善する方法も出願公開され、または特許登録されている(例えば、特許文献1、特許文献2)が、これらも前記従来技術の延長線上にあるものと言ってよく、処理時間、操作手段の煩雑さ、製品の品質など何れにおいても、充分とは言えず、果実の軟化及び表皮に発生する変色(黒色)という永年の難題が解決されているとは到底言えないのが現状であった。
【特許文献1】特開平8‐275765号公報
【特許文献2】特許第3027848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の係る問題点を解消し、つまり、容易かつ単純な操作手段によって、比較的短時間に、高品質でかつ均一な製品を工業的に容易に製造することができること、特に果実の軟化及び表皮に発生する変色(黒色)の問題を解消することをこの発明の課題(目的)とする。
【0006】
本発明者は、前述の渋柿果実の軟化及び表皮に発生する変色(黒色)という永年の難題について、鋭意研究、検討し、以下のような一連の推論を立てて実験による検証を行い、鋭意研究・検討、解析の結果、ほぼ満足すべき結果が得られて本発明を完成するに至ったものであり、以下にその基本的原理(推論)を参考までに概説する。
【0007】
すなわち、渋柿が二酸化炭素ガスの雰囲気中で脱渋するメカニズムは、二酸化炭素ガスが渋柿に吸収され、果実内の水とで以下のような化学式[1]
【0008】
〔化学式1〕
CO2 + HO ←→ HCO ・・・・・・・・・・・・・・[1]
【0009】
に従って、炭酸という酸性の二塩基酸を生成し、これが渋柿の渋、一説にはタンニンが化学式〔2〕
【0010】
〔化学式2〕
CO2 + HO ←→ HCO+タンニン→ 没食子酸の多分子結合(不溶性)+ブドウ糖 ・・・・・・・・・・・・・・〔2〕
に従って、加水分解反応により、没食子酸の多分子結合体(不溶性)とブドウ糖を生じさせ、いわゆる甘柿になると言われる。
【0011】
一方、この加水分解反応には過剰の水(HO)を必要とするが、この水はタンニンコロイドの凝結によって生成され、加水分解反応後は、遊離の状態で果実内に滞留することになるためにいわゆる軟化が促進されるものと考えられる。
【0012】
この点、本発明においては、渋柿の表面、特にへたの部分と果肉部分の隙間に二酸化炭素ガスを圧入するという強制的な手段を用いて二酸化炭素ガスを果実内に封じ込める事により、大過剰の二酸化炭素ガスを用いて、前記加水分解反応を促進し、かつ加水分解に必要な過剰の水(HO)(タンニンコロイドの凝結によって生成し、加水分解後、遊離の状態で果実内に滞留する水)は、押し出される形で果実外に同伴・放出させることになり、果実は略採取時の硬い状態のままで脱渋が行われ、加水分解反応後必要のなくなった遊離の水による軟化現象を抑えて、通常の甘柿並みの硬さで自然軟化の状態での保存が可能となると推測される。
【0013】
以上の推論は、一般的な化学反応(圧力、温度及び濃度)に基づくもので、反応の条件も圧力と温度を調整することによって、温度のみの条件調整をしていた従来法に比べて、幅の広い成果が期待できる。特に二酸化炭素ガスの圧入という強制的手段を用いることにより、二酸化炭素ガスの渋柿への吸収速度をより促進し、加水分解反応をより短時間に完結させることができる、また加圧条件であるので余剰の二酸化炭素ガス及び水(HO)は系外(果実外)に押し出されることによって、平たね柿の脱渋の最大の難関である軟化に関して大幅に改善される等、従来法(常圧法)に無い特有の効果が期待出来る。
【0014】
更に、二酸化炭素ガスと少量のアルコールガスを含む混合ガスによる脱渋処理方法についても、二酸化炭素ガスと同様に公知文献を参考に考察するに、アルコールによってブドウ糖と没食子酸の多分子結合体(10分子の没食子酸結合体或いは没食子酸の2量体の5分子結合体)のカルボン酸エステルになり、更に多分子の没食子酸が有する多くのフェノール性水酸基を次々とエステル化する事によりX分子のHOが生成し、前記加水分解時と同様に果実内に水分が増加し軟化するものと考えられる。
【0015】
また、一般的に二酸化炭素ガスによる脱渋処理方法より、アルコールガスによる脱渋処理の方が美味と言われているのは、アルコールによって生成した没食子酸の多分子結合体のカルボン酸エステル及び多分子結合体が有するフェノール性水酸基のエステルによる風味によるものと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、密封された脱渋庫に渋柿を収納し、前記脱渋庫内の空気を二酸化炭素ガスで置換し、二酸化炭素ガスの圧入によって、前記脱渋庫内の圧力を1.01〜1.10気圧に加圧し、一方、前記脱渋庫内を25℃〜50℃の温度範囲に設定して脱渋処理を開始し、5〜30時間脱渋処理した後、ガス抜きして圧力を解除し、更に必要に応じて前記脱渋庫内を0℃〜35℃の温度範囲に設定して脱渋後処理工程を所定時間行うことを特徴とする渋柿の脱渋処理方法(項1)である。
【0017】
また、本発明は、前記脱渋庫内の圧力を1.02〜1.08気圧になるように二酸化炭素ガスを圧入することを特徴とする項1に記載の渋柿の脱渋処理方法(項2)である。
【0018】
更に、本発明は、前記脱渋庫内の圧力を1.03〜1.06気圧になるように二酸化炭素ガスを圧入することを特徴とする項1に記載の渋柿の脱渋処理方法(項3)である。
【0019】
更にまた、本発明は、二酸化炭素ガスが、二酸化炭素ガスと少量のアルコールガスを含む混合ガスであることを特徴とする項1乃至項3の何れかに記載の渋柿の脱渋処理方法(項4)である。
【0020】
本発明は、脱渋処理の設定温度範囲が30℃〜40℃であることを特徴とする項1乃至項4の何れかに記載の渋柿の脱渋処理方法(項5)である。
【0021】
また、本発明は、脱渋処理の設定温度範囲が32℃〜38℃であることを特徴とする項1乃至項4の何れかに記載の渋柿の脱渋処理方法(項6)である。
【0022】
更に、本発明は、脱渋後処理工程を、前記脱渋庫内を5℃〜25℃の温度範囲に設定して2〜48時間行うことを特徴とする項1乃至項6の何れかに記載の渋柿の脱渋処理方法(項7)である。
【0023】
更にまた、本発明は、脱渋後処理工程を5〜30時間行うことを特徴とする項7に記載の渋柿の脱渋処理方法(項8)である。
【0024】
次に、本発明は、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の渋柿の脱渋処理方法によって放出される水を化粧品、入浴剤、ドリンク剤等又はそれらの原料としての利用に供することを特徴とする渋柿の脱渋処理方法(項9)である。
【0025】
次にまた、本発明は、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の渋柿の脱渋処理方法によって放出されたものであることを特徴とする渋柿から放出された水(項10)である。
このように、本発明の脱渋処理装置によって半強制的に放出された水は相当の量になり、これらは化粧品、入浴剤、ドリンク剤等又はそれらの原料としての利用に供することができる。
【0026】
そして、本発明は、密封された脱渋庫に渋柿を収納する手段、前記脱渋庫内の空気を二酸化炭素ガス又は二酸化炭素ガスと少量のアルコールガスを含む混合ガスで置換する手段、前記脱渋庫内の圧力を1.01〜1.10気圧になるように加圧する手段、前記脱渋庫内の二酸化炭素ガス又は二酸化炭素ガスと少量のアルコールガスを含む混合ガスの濃度を測定する手段、前記脱渋庫内の圧力を測定する手段、前記脱渋庫内を0℃〜50℃の任意の温度範囲に設定・維持する手段、前記脱渋庫内の温度を測定する手段並びにガス抜きして圧力を解除する手段を備えたことを特徴とする渋柿の脱渋処理装置(項11)である。
【0027】
そしてまた、本発明は、更に、前記脱渋庫内を除湿する手段及び該脱渋庫内の湿度を測定する手段、前記脱渋庫内の酸素を取り除く手段及び該脱渋庫内の酸素濃度を測定する手段並びに前記脱渋庫内の有効塩素濃度を保持する手段及び該脱渋庫内の有効塩素濃度を測定する手段の何れかを備えてなることを特徴とする請求項9に記載の渋柿の脱渋処理装置(項12)である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、従来の脱渋処理方法及び脱渋処理装置において、該脱渋庫内を所定の圧力に加圧するという構成を採用することによって、従来の問題点、つまり従来の脱渋処理方法に対し、単純、容易な操作・手段によって、比較的短時間に、高品質でかつ均一な製品を容易に製造することができ、特に果実の軟化及び表皮に発生する変色(黒色)という永年の難題を略完全に解消し得る渋柿の脱渋処理方法及び渋柿の脱渋処理装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の渋柿の脱渋処理方法及び渋柿の脱渋処理装置について更に詳細に説明する。
まず、本発明の渋柿の脱渋処理装置について、その実験例を図1に基づいて説明する。図1は、本発明の脱渋処理装置の一例を示す実験装置であり、符号は以下の通りである。
【0030】
1 液化二酸化炭素ガスボンベ
2 ゲージ
3 気化器
4 二酸化炭素ガス注入口
5 開閉コック付ピール管
6 気密性の微耐圧容器(脱渋庫)
7 大気開放用開閉コック付ピール管
8 開閉コック(風船接続用)
9 タイヤチューブ(風船)
10 加温・保温装置
11 圧力測定手段
12 ガス濃度測定手段
13 温度測定手段
14 湿度測定手段
【0031】
本発明の実験装置の概要
本発明の実験装置は、図1に示したとおり、気密性の微耐圧(いわゆるドラム缶など)容器6(以下、脱渋庫ということがある、容量:例えば、20リットル)を用いることを特徴とする。この脱渋庫6は上部が全面開放の蓋付きであり、該蓋はゴムパッキング(図示せず)及び締具(図示せず)等を用いて完全密閉できるように造作されてなる。
【0032】
この脱渋庫には、液化二酸化炭素ガスボンベ1が気化器3、二酸化炭素ガス注入口4、開閉コック付ピール管5を介して連結され、更に大気開放に向けて、大気開放用開閉コック付ピール管7が連結され、一方、風船接続用開閉コック8を介してタイヤチューブ(風船)9が連結されてなる。
【0033】
ここで、該脱渋庫6は、その外周に加温・保温装置10(イメージ図のみ)が設けられてなり、例えば0℃〜50℃の任意の温度に設定可能に造作(図示せず)されてなる。また、該脱渋庫6内には、脱渋庫内の圧力測定手段11(図示せず)、ガス濃度測定手段12(図示せず)、温度測定手段13(図示せず)及び湿度測定手段14(図示せず)などが適宜に設けられている。
【0034】
本発明の脱渋処理方法の実際
図1に示す実験装置を用い、脱渋庫6内に、例えば、平たね渋柿を収容した通気性荷箱を収納し、蓋をしてゴムパッキング(図示せず)及び締具(図示せず)等を用いて密封状態とする。次に、風船接続用開閉コック8は閉じた状態で、大気開放用開閉コック7を開け(つまり、大気開放とし)、二酸化炭素ガス注入口4の開閉コック5を開け、更にボンベ1を開けて二酸化炭素ガスを気化器3を通じて脱渋庫6内に送り、該脱渋庫内の空気を二酸化炭素ガスで置換する。この二酸化炭素ガス置換は、好ましくは完全(100%)に置換する(二酸化炭素ガス置換工程)。
【0035】
次いで、二酸化炭素ガス注入口4及び大気開放用開閉コック7を閉止し、予め二酸化炭素ガスを圧入した重量既知のタイヤチューブ(風船)9(容量:4〜5リットル)に連なる風船接続用開閉コック8を開け、脱渋庫内を所定の気圧に調節・設定する(二酸化炭素ガス圧入工程)。
【0036】
一方、該脱渋庫6内の室温を加温・保温装置10によって所定の温度に調節・設定して、脱渋処理をスタ−トさせる(脱渋処理の開始)。
【0037】
脱渋処理の時間は従来法を基準に5〜30時間とし、その間2時間毎の容器内に収容されている渋柿が吸収する二酸化炭素ガス減量分をタイヤチューブ(風船)9の重量を秤量して求め、一方該減量分の二酸化炭素ガスを、別途の二酸化炭素ガスボンベ(図示せず)から追加・注入して脱渋処理を継続する(脱渋処理工程)。
【0038】
続いて大気開放用開閉コック7を開け、ガス抜きして圧力を解除し(ガス抜き工程)、必要に応じて、前記脱渋庫内を0℃〜35℃の任意の温度範囲に設定して、脱渋後処理工程を所定時間行うことにより、脱渋処理を完結する(脱渋後処理工程)。
【0039】
なおこの脱渋後処理工程は、前記脱渋処理工程によって既に脱渋処理が完結している場合があり、よってこの脱渋後処理工程は必須要件ではない。
【0040】
以下、各処理工程について更に詳細に説明する。
二酸化炭素ガス置換工程
まず、図1の脱渋庫6内に、例えば、平たね渋柿を収容した通気性荷箱を収納し、蓋をして完全密封状態とする。次に、風船接続用開閉コック8は閉じた状態で、大気開放用開閉コック7を開け(つまり、大気開放とし)、次に二酸化炭素ガス注入口4の開閉コック5を開け、更にボンベ1を開けて二酸化炭素ガスを気化器を通じて脱渋庫6内に送り、該脱渋庫内の空気を二酸化炭素ガスで置換する。この時の二酸化炭素ガス濃度は、70%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは略100%とする。この時の二酸化炭素ガス濃度は、ガス濃度測定手段12(図示せず)により測定し、確認することで行われる。
【0041】
また、二酸化炭素ガスの代わりに、二酸化炭素ガスと少量のアルコールガスを含む混合ガスを用いる場合は、アルコールガスを二酸化炭素ガスと並列的に供給することで行なわれるが、例えば前記特許文献1に記載のエチルアルコールと二酸化炭素ガスが混合充填されたボンベから供給する方法が便宜である。
【0042】
液化混合ガスの混合割合は、例えば、二酸化炭素ガス8〜9.9に対してエチルアルコールが2〜0.1、好ましくは二酸化炭素ガス9〜9.9に対してエチルアルコールが1〜0.1である。エチルアルコールの混合割合を多くすると安全上の問題をクリアーする必要がある。
【0043】
2.二酸化炭素ガス圧入工程
次いで、二酸化炭素ガス注入口4及び大気開放用開閉コック7を閉止し、予め二酸化炭素ガスを圧入した重量既知のタイヤチューブ(風船)9(容量:4〜5リットル)に連なる風船接続用開閉コック8を開け、脱渋庫内を所定の気圧に調節・設定する。この時の脱渋庫内の圧力は、圧力測定手段11(図示せず)により測定し、確認することで行われる。
【0044】
この脱渋庫内の圧力は、タイヤチューブ(風船)9への注入量により適宜決められるが、通常1.01〜1.10気圧になるように加圧する。該脱渋庫内の圧力は、本発明において極めて重要であり、好ましくは1.02〜1.08気圧、特に好ましくは、1.03〜1.06気圧である。また、タイヤチューブ(風船)9の代わりに、二酸化炭素ガスを圧縮ポンプなど、別途の方法で脱渋庫に内に圧入して加圧することも出来るし、また、圧入する二酸化炭素ガスは、少量のアルコールガスを含んだ混合ガスでも構わないことも自明である。
【0045】
3.温度範囲の設定
一方、前記脱渋庫内を任意の温度範囲に設定して脱渋処理を開始する。この時の温度範囲の設定は、図1に示すようにその外周に加温・保温装置10(イメージ図のみ)を設ける場合以外、例えば、脱渋庫内に空調機などを設置して加温、保温(或いは除湿・加湿)などをすることもできる。前者の場合としては、例えば、温水循環方式、電熱コイル・ヒーター方式、発熱材料の貼り付けなどが考慮される。この時の脱渋庫内の温度又は湿度は、温度測定手段13(図示せず)又は湿度測定手段14(図示せず)により測定し、確認することで行われる。
【0046】
このときの脱渋処理の開始の設定温度範囲は、通常25℃〜50℃であるが、更に好ましくは30℃〜40℃、特に好ましくは32℃〜38℃である。25℃以下では、脱渋処理が遅すぎて処理能力が低下する問題を生ずる。また、50℃以上では軟化の問題が生じて好ましくない傾向を示す。
【0047】
本発明の設定温度範囲は、従来の常圧法における場合に比してかなり高温であるが、本発明においては、加圧法であることによって処理時間が短縮されるためにか、係る高温であっても軟化の問題が殆ど生じないで、脱渋処理が極めて都合よく行われることが本発明者によって初めて見出されたものである。
【0048】
4.脱渋処理工程
本発明において、脱渋処理工程は、脱渋庫内を1.01〜1.10気圧の所定の圧力に調節・設定し、一方、前記脱渋庫内を25℃〜50℃の任意の温度範囲に設定することで脱渋処理を開始し、5〜30時間の所定時間脱渋処理することで行われる。この脱渋処理時間は、柿の種類、脱渋度合、果肉の色合、硬度及び外気温度などによっても変わり得るが、好ましくは8〜25時間、更に好ましくは、10〜20時間行われる。
【0049】
5.ガス抜き工程
前記脱渋処理を所定時間行った後、次いで大気開放用開閉コック7を開け(つまり、大気開放とし)ガス抜きして圧力を解除し、常圧に戻す。この工程は次工程の脱渋後処理工程を大気圧下で行うという意味もあるが、出庫の準備でもあること事を考慮すると、この大気圧下に戻す工程は当然のこととも言える。
【0050】
6.脱渋後処理工程
本発明においては、必要に応じて脱渋後処理工程を行う。この脱渋後処理工程は、前段の脱渋処理工程の状況如何によっては、前記脱渋処理工程によって既に脱渋処理が完結している場合があり、よってこの脱渋後処理工程は必須要件ではない。この脱渋後処理工程は、常圧下での自然熟成手段をも包含し、従って、室温が低い場合には、流通過程で自然に行われる場合もあるので、特に改めて設ける必要も無い工程とも言える。
【0051】
しかしながら、通常は、前記脱渋庫内を0℃〜35℃とし、好ましくは5℃〜25℃、さらに好ましくは10℃〜25℃の温度範囲に設定して、所定時間、通常2〜48時間、好ましくは5〜30時間で行なわれる。この後処理工程の時間は、CTSD法における二過程に相当するものであり、設定温度、処理時間は、柿の種類、脱渋度合、果肉の色合、硬度及び外気温度などよって最適条件は個々に異なる。
【0052】
温度降下工程
このようにして所望とする脱渋を終了したら、必要により、温度を降下させる。この際の温度降下は外気温との温度差を5℃以内にするのが望ましい。この温度降下工程における装置の動作は、温度センサー、マイクロコンピュータを連動させるとともに、場合により外気を導入すればよいが、この温度の降下は複数段階で徐々に行うのが好ましい。なお、この温度降下は、脱渋庫内圧降下と共に自然降下させることによって、脱渋処理の際に放出される水の取出しが最大となる。
【0053】
出庫工程
このようにして柿を脱渋したら、糖度を確認した後、脱渋した柿を出庫すればよい。上述したような本発明に渋柿の脱渋処理方法における総工程時間は、温度の昇降やガスの注入・排出工程も考慮しても、約10〜50時間であり、従来のCTSD法の72〜84時間と対比して大幅に処理時間の短縮が図られている。
【0054】
その他、本発明の脱渋処理装置の付属品
その他、本発明になる脱渋処理装置には、以下のような装置が必要により設置される。
まず、渋柿を収納する手段(図示せず)は、たとえば、通気性荷箱に渋柿が収納されている場合が最も一般的である。
【0055】
次に、脱渋処理方法における最適環境を整えるために、必要により、以下の手段が採られることができる。これらのうちには、従来から行われているものを一部に含むが、前記脱渋庫内を除湿する手段及び該脱渋庫内の湿度を測定する手段、また特に、果実表皮変色に関する原因となる酸性雰囲気をやわらげる施策として、緩衝剤を添加する手段、0.5ppmを限度に有効塩素を発生させる手段、前記脱渋庫内の酸素を取り除く手段及び該脱渋庫内の酸素濃度を測定する手段並びに前記脱渋庫内の有効塩素濃度を保持する手段及び該脱渋庫内の有効塩素濃度を測定する手段、加水分解生成水の測定手段、或いは循環ファンによって脱渋庫内全体を均一雰囲気(温度、湿度、ガス濃度)とする手段など、これらは渋柿の種類などによっては微妙に影響する場合があり、各々の品質を最適に保つために必要となる場合がある。
【0056】
二酸化炭素ガスの有効利用について
本発明に使用する脱渋庫は2系列を1セットとする事を原則とし、一方の脱渋処理完了後の圧力解除時に余圧分の二酸化炭素ガスをもう一方の脱渋庫の空気置換に使用することが好ましい実施態様である。但し二酸化炭素ガスによる処理においては、脱渋庫内では、果実より発生が予想される酸素や爆発限界を下回るとは云うものの、可燃性のアルコ−ル混合ガスを使用する場合が存在する。その為、脱渋処理完了後の圧力解除前に余圧ガスに含まれるアルコ−ル濃度を測定し、更にこの余圧で2系列目の脱渋庫の空気置換をした後100%二酸化炭素ガス充填時に僅かに内圧を上げる程度の二酸化炭素ガスを追加注入し、その内圧を利用して脱渋庫内の二酸化炭素ガスを採取しその中のアルコ−ル濃度を測定し、2系列目の脱渋庫に注入するアルコ−ル濃度を補正することが好ましい。
【0057】
マイクロコンピュータによる管理
本発明の脱渋処理装置は、マイクロコンピュータにより管理することができる。例えば、
脱渋庫6内には、脱渋庫内の圧力測定手段たる圧力センサー11A(図示せず)、ガス濃度測定手段たるガス濃度センサー12A(図示せず)、温度測定手段たる温度センサー13A(図示せず)及び湿度測定手段たる湿度センサー14A(図示せず)類がそれぞれ設けられ、これらのセンサー類はそれぞれ制御手段たるマイクロコンピュータ(図示せず)に接続され、それぞれ所定の信号・出力を与えることができるようになっている。
【0058】
更に、前記脱渋庫内を除湿する手段及び該脱渋庫内の湿度を測定する手段、前記脱渋庫内の酸素を取り除く手段及び該脱渋庫内の酸素濃度を測定する手段並びに前記脱渋庫内の有効塩素濃度を保持する手段及び該脱渋庫内の有効塩素濃度を測定する手段にも同様にセンサーが付いていて、制御手段たるマイクロコンピュータ(図示せず)に接続され、それぞれ所定の信号・出力を与えることができるようになっている。
【0059】
なお、該マイクロコンピュータには入庫する柿の品種、品質、外気温など状況に応じて種々のプログラムがインプットされていて人為的にこれらを選択できるように構成されている。
上述したような一連の工程は、スタートから出庫までの温度管理、圧力管理、湿度管理、雰囲気管理(二酸化炭素ガス濃度管理及びアルコールガス濃度管理)及び時間管理をマイクロコンピュータにインプットしておき、温度、圧力、湿度、雰囲気ガスの異常時にもブザーが作動してこれを警告するようにマイクロコンピュータで制御することもできる。
【0060】
また、柿の脱渋処理は、入庫時の果実温度、柿の品種、品質、時期及び出庫時の脱渋度などによりそれぞれ異なるが、これらの前提条件の相違に対応して温度管理、圧力管理、湿度管理、雰囲気管理及び時間管理の複数パターンをマイクロコンピュータにインプットしておき、脱渋処理の開始時に作業者がこれを選択するようにすれば、入庫時の温度、柿の品種、品質、時期及び出庫時の脱渋度などが変わっても容易に脱渋条件を変更して常に好適な条件で脱渋処理することができる。
【0061】
また、同じ品種の柿であれば、温度などの環境が相違しても常に同じ脱渋度に処理して確実に均一に脱渋化された均質な商品として出庫することができるようにすることもできる。
【0062】
本発明者は、本発明の特徴とする加圧条件下においては、従来の常圧法に対して、渋柿への二酸化炭素ガスの吸収量に格段の差のあることを確認するために、以下のような実験を行った。以下にその概要と実験結果(測定結果)を詳述する。
【0063】
確認実験の概要
本発明の前記実験装置に、既知量(約10g)の二酸化炭素ガスを注入した風船を脱渋庫内に連通接続し、一定時間内の吸収量として、2時間毎六回計12時間と風船の注入量(約12g)で後半の12時間脱渋処理した。これは、前半の12時間は2時間毎の測定の都度吸収による減量分を追加する為、常に約10リットルの風船分の圧力が脱渋庫に掛っている事になる。これに対し後半は風船接続後の2時間は前半同様の吸収量であるが、それ以後は風船に追加注入していない為、略常圧下での吸収が行なわれるものと考えられる。此の結果は以下の測定結果に明瞭に表れており、常圧と加圧では二酸化炭素ガスの吸収量が格段の差のある事が判明した。
【0064】
実験結果(測定結果)
(1) 容量20リットルの脱渋庫に平たね柿2kgを収容し、脱渋庫内温度30℃±1℃、脱渋処理時間24時間の内前半の12時間、既知量(CO2換算10g、二酸化炭素ガス容積量:5.09リットル)の風船を接続し、2時間毎の吸収減量を秤量し、その都度新規二酸化炭素ガスを追加注入し、脱渋処理を行なう。
吸収減量:2時間毎の吸収による減量は何れもCO2換算5g、(二酸化炭素ガス容積量:約2.5リットル) 6回共コンスタントに吸収し、計CO2換算30g(二酸化炭素ガス容積量:15.27リットル)
【0065】
(2)容量20リットルの脱渋庫に平たね柿2kgを収容し、脱渋庫内温度30℃±1℃、脱渋処理時間24時間の内前半12時間の最後の2時間における吸収による減量を秤量後に、既知量(CO2換算12g、二酸化炭素ガス容積量:6.1リットル)の風船を接続後そのまま12時間脱渋処理、その間二酸化炭素ガスの吸収による減量についての追加注入なし。従って秤量は12時間後の1回のみ、
吸収減量:CO2換算10g(二酸化炭素ガス容積量:5.09リットル)
【0066】
以上の結果から(1)は明らかに常時約5リットルの風船圧力が容量20リットルの脱渋庫に掛っている為に2時間毎にCO2換算5g(二酸化炭素ガス容積量:5.09リットル)と多いが、(2)は既知量の風船を接続した当初は(1)同様の圧力が掛る為、2時間後は恐らく二酸化炭素ガスの吸収減量は5gになっているものと推定される。
この結果風船の残存CO2換算量は7g(二酸化炭素ガス容積量:3.56リットル)となり、これ以後は吸収の度に脱渋庫に掛る圧力は減少の一途たどり、2時間後の秤量値10gとなったものと推定される。
【0067】
従って(2)の12時間後の吸収量CO2換算10g(二酸化炭素ガス容積量:5.09リットル)よりスタ−ト当初の2時間後の推定秤量値5gを差し引いた、残りの5gが後半の10時間に吸収された二酸化炭素ガスと考えられる。
【0068】
此の様に同じ温度のもとで、加圧下では多くの二酸化炭素ガスが吸収されるが、常圧〔(2)の測定における後半の10時間の吸収量5gは接続風船に残存二酸化炭素ガスも少ない事から常圧に近似の吸収量と考えられる〕では一定時間毎の吸収量は加圧下の1/5となり、明らかに加圧と常圧では、二酸化炭素ガスの吸収減量及び吸収速度の異なる事が判明した。
【0069】
次に、本発明の渋柿の脱渋処理装置について、図2に基づいて説明する。図2は、本発明の脱渋処理装置の一例を示すいわゆる中実験装置の側面模式図であり、図中の符号は以下の通りである。
【0070】
101 液化二酸化炭素ガスボンベ
102 ゲージ(圧力計)
103 気化器(加熱器)
104 二酸化炭素ガス流量計
105 デジタル温度計
105a デジタル温度計の温度センサー
106 ガス抜き用開閉コック
107 加熱器(二酸化炭素ガス予熱器)
108 テーブルタップ
109 脱渋庫内のファンの操作器(脱渋庫内の攪拌用ファン119に連結)
110 温度調整用スライダック(脱渋庫内の加熱器118に連結)
111 脱渋庫内の圧力計
112 脱渋庫内の温度・湿度計測・調整器(脱渋庫内の温度センサー113・湿度センサー114に連結)
113 脱渋庫内の温度センサー
114 脱渋庫内の湿度センサー
115 二酸化炭素ガス導入口
116 渋柿収容コンテナー
117 コンテナー設置台
118 脱渋庫内の充填二酸化炭素ガス加熱用の加熱器
119 脱渋庫内の充填二酸化炭素ガス攪拌用のファン
120、120’ 脱渋によって放出される水の取り出し口(コック)
121、121’ 完全密閉の締具
122 二酸化炭素ガス用ピール管
123 気密性の微耐圧容器(脱渋庫)
【0071】
なお、図3〜図5は、本発明の前記中実験装置(図2)を説明するための、部分拡大図及び斜視図である。
【0072】
本発明の中実験装置の概要
本発明の中実験装置は、図2〜図5に示したとおりであるが、具体的には、200リットル容量のドラム缶(123)を脱渋庫として用いて、該ドラム缶の一方を全面開放可能とし、その中にコンテナー設置台(117)と約20kgの渋柿を収容できる縦30cm×横60cm×高さ32cmのコンテナー(116)を収め、これに蓋を付けて密封状態とする。ここで、該蓋はゴムパッキング(図示せず)及び締具(121、121’)を用いて完全密閉状態に造作されてなる。なお、該締具(121、121’)は数ヶ所使用して完全密閉を図ることが好ましい。
【0073】
この中実験装置(以下、脱渋庫ということがある)は、前記のとおり、ドラム缶を脱渋庫として使用するものであり、二酸化炭素ガスが、液化ガスボンベ(101)から気化器(103)及び二酸化炭素ガス流量計(104)を介して二酸化炭素ガス導入口(115)から脱渋庫に導入するようにピール管(122)で連結されてなる。この二酸化炭素ガスは、途中に加熱器(107)を設け、二酸化炭素ガスの温度を予熱・調整することができる。また、脱渋庫内の温度は、温度センサー(105a)及びデジタル温度計(105)により計測、表示される。
【0074】
さらに、脱渋庫内のファンの操作器109(脱渋庫内の攪拌用ファンに連結)、温度調整用スライダック110(脱渋庫内の加熱器に連結)及び脱渋庫内の温度・湿度計測・調整器112(脱渋庫内の温度センサー・湿度センサーに連結)を一箇所に設け、テーブルタップ108(4連)に連結して造作されてなる。更にまた、脱渋庫の下部には、脱渋によって放出される水の取り出し口(コック)120、120’が設けられ、脱渋処理よって放出する水を確保することができるように造作されている。その他、脱渋終了後のガス抜き用開閉用コック106、脱渋庫内の圧力計111等が設けられてなる。
【0075】
本発明の中実験方法の実際
図2に示す中実験装置を用い、平たね渋柿を収容したコンテナー116を脱渋庫123内に収納し、以下の工程を順次行う。
【0076】
二酸化炭素ガス置換工程
脱渋庫123に蓋をして締具121で締付け、完全密封状態とする。次に、ガス抜き用開閉コック106を開け(つまり、大気開放とし)、次に二酸化炭素ガスボンベから二酸化炭素ガスをその気化器103、ピール管(122)を介してその導入口115から脱渋庫123内に送り、該脱渋庫内の空気を二酸化炭素ガスで置換する。
【0077】
2.二酸化炭素ガス圧入工程
次いで、ガス抜き用開閉コック106を閉止し、二酸化炭素ガスを圧入する。具体的には、気化器(加熱器)103を作動し、液化二酸化炭素ガスボンベ101内の二酸化炭素ガスを脱渋庫に圧入する。この時の脱渋庫内の圧力は、圧力計111により確認することで行われる。
【0078】
3.温度・湿度範囲の設定
一方、前記脱渋庫内を任意の温度・湿度範囲に設定して脱渋処理を開始する。この時の温度範囲の設定は、脱渋庫内の温度・湿度計測・調整器112(脱渋庫内の温度センサー113・湿度センサー114に連結)により行われる。
【0079】
4.脱渋処理工程
本発明において、脱渋処理工程は、脱渋庫内を1.01〜1.10気圧の所定の圧力に調節・設定し、一方、前記脱渋庫内を25℃〜50℃の任意の温度範囲に設定することで脱渋処理を開始し、5〜30時間の所定時間脱渋処理することで行われる。この脱渋処理時間は、柿の種類、脱渋度合、果肉の色合、硬度及び外気温度などによっても変わり得るが、好ましくは8〜25時間、更に好ましくは、10〜20時間行われる。
【0080】
また、このときの脱渋処理の開始の設定温度範囲は、通常25℃〜50℃であるが、更に好ましくは30℃〜40℃、特に好ましくは32℃〜38℃である。25℃以下では、脱渋処理が遅すぎて処理能力が低下する問題を生ずる。また、50℃以上では軟化の問題が生じて好ましくない傾向を示す。
【0081】
5.ガス抜き工程
前記脱渋処理を所定時間行った後、次いでガス抜き用開閉コック106を開け(つまり、大気開放とし)ガス抜きして圧力を解除し、常圧に戻す。この工程は次工程の脱渋後処理工程を大気圧下で行うという意味もあるが、出庫の準備でもあること事を考慮すると、この大気圧下に戻す工程は当然のこととも言える。
【0082】
6.脱渋後処理工程
本発明においては、必要に応じて脱渋後処理工程を行う。この脱渋後処理工程は、前段の脱渋処理工程の状況如何によっては、前記脱渋処理工程によって既に脱渋処理が完結している場合があり、よってこの脱渋後処理工程は必須要件ではない。この脱渋後処理工程は、前記脱渋庫内を0℃〜35℃の温度範囲に設定し、所定時間行うことで達成される。この脱渋後処理工程は、常圧下での自然熟成手段をも包含し、従って、室温が低い場合には、流通過程で自然に行われる場合もあるので、特に改めて設ける必要も無い工程とも言える。
【0083】
しかしながら、通常は、前記脱渋庫内を0℃〜35℃とし、好ましくは5℃〜25℃、さらに好ましくは10℃〜25℃の温度範囲に設定して、所定時間、通常2〜48時間、好ましくは5〜30時間で行なわれる。この後処理工程の時間は、CTSD法における二過程に相当するものであり、設定温度、処理時間は、柿の種類、脱渋度合、果肉の色合、硬度及び外気温度などよって最適条件は個々に異なる。
【0084】
7.温度降下工程
このようにして所望とする脱渋を終了したら、必要により、温度を降下させる。この際の温度降下は外気温との温度差を5℃以内にするのが望ましい。この温度降下工程における装置の動作は、温度センサー、マイクロコンピュータ(図示せず)を連動させるとともに、場合により外気を導入すればよいが、この温度の降下は複数段階で徐々に行うのが好ましい。なお、この温度降下は、脱渋庫内圧降下と共に自然降下させることによって、脱渋処理の際に放出される水の取出しが最大となることを見出した。
【0085】
8.出庫工程
このようにして柿を脱渋したら、糖度を確認した後、脱渋した柿を出庫すればよい。上述したような本発明に渋柿の脱渋処理方法における総工程時間は、温度の昇降やガスの注入・排出工程も考慮しても、約10〜30時間であり、従来のCTSD法の72〜84時間と対比して大幅に処理時間の短縮が図られている。
【実施例】
【0086】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明する。
実施例1〜4、比較例1
図1に示す実験装置を用い、図1の脱渋庫6に、平たね渋柿2Kgを収納し、蓋をして締具で締付け、完全密封状態とする。次に、該脱渋庫6内の室温を加温・保温装置10によって所定の温度に調節・設定する。一方、風船接続用開閉コック8は閉じた状態で、大気開放用開閉コック7を開け(つまり、大気開放とし)、次に二酸化炭素ガス注入口4の開閉コック5を開け、更にボンベ1を開けて二酸化炭素ガスを気化器を通じて脱渋庫6内に送り、該脱渋庫内の空気を二酸化炭素ガスで置換する、好ましくはほぼ完全(100%)に置換する。
【0087】
次いで、二酸化炭素ガス注入口4及び大気開放用開閉コック7を閉止し、予め二酸化炭素ガスを圧入した重量既知のタイヤチューブ(風船)9(容量:4〜5リットル)に連なる風船接続用開閉コック8を開け、脱渋庫内を所定の気圧に調節・設定して、脱渋処理をスタ−トさせる。
【0088】
脱渋処理の時間は従来法を基準に24時間とし、その間2時間毎の容器内に収容されている渋柿が吸収する二酸化炭素ガス量をタイヤチューブ(風船)9の重量を秤量して求め、一方減量分の二酸化炭素ガスを、二酸化炭素ガスボンベ1から追加・注入して脱渋処理を継続する。
【0089】
続いて大気開放用開閉コック7を開け、ガス抜きして圧力を解除し、前記脱渋庫内を所定の温度範囲(0℃〜30℃の任意の温度範囲)に設定して、脱渋後処理工程を所定時間(2〜28時間)行うことにより、脱渋処理を完結する。脱渋庫内の圧力、同内温度、同内湿度等を種々の条件で行った結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
註1):水分測定には脱渋庫内に設置した家庭用除湿剤(塩化カルシウム)の重量増より算出
【0092】
以上の様に脱渋処理時間によって放出される水分量が異なるのは、比較的高い温度で長時間処理する事による、果実自身の水分(主に果実表皮と推定される)が揮散したものと推定される。
【0093】
実施例5〜8、比較例2
実施例1で用いた実験装置を用い、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて脱渋庫内の有効塩素濃度を0.5ppmとし、所定の有効塩素発生操作の実験結果を、表2に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
註2):有効塩素発生に関する次亜塩素酸ナトリウム水溶液は市販の家庭用漂白剤を使用
【0096】
以上の様に脱渋庫内に有効塩素0.5ppm存在しても、加水分解には影響を及ぼす事はなく水分測定と同様の結果を得た。脱渋処理時間によって水分量が異なるのは、比較的高い温度で長時間処理する事による果実自身の水分(主に果実表皮と推定される)が揮散したものと推定される。特に実施例No.8については、処理時間は短いが温度が高い為に、実施例No.5の内温度30℃と同様の水分放出量となっている。
【0097】
又これは、同じ加圧下で内温度を上げる事によって、加水分解速度が速くなり、短い後処理時間で甘味を持った柿となった事を示すものである。但し此の条件で圧力解除後冷却の操作を行なっていないので、軟化迄の日数が若干早く12日で軟化した。
【0098】
実施例9〜12、比較例3
実施例1で用いた実験装置を用い、脱酸素剤を脱渋庫内に設けて同様に行った実験結果を、表3に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
註3):脱酸素剤は市販の鉄、水、バ−ミキュライト、吸水性樹脂、食塩、その他、を含むカイロを設置
【0101】
以上の様に脱渋庫内に脱酸素剤を設置しても、加水分解には影響を及ぼす事はなく水分測定と同様の結果を得た。No.9の処理時間15時間でも水分が4gと処理時間10時間と変わらないのは、脱渋庫内に設置した脱酸素剤に吸水性樹脂が含まれており、水分の一部が脱酸素剤に吸収されたのではないかと、推定される。
【0102】
また、No.12については、36℃の高温処理にもかかわらず、28℃と同様の水分放出量となっている。これは、同じ加圧下で内温度を上げる事によって、加水分解速度が速くなり、短い後処理時間で甘味を持った柿となった事を示すものである。但し此の条件で圧力解除後冷却の操作を行なっていないので、軟化迄の日数が若干早く12日で軟化した。
【0103】
比較例4、5(その他のネガティブ結果)
実施例1で用いた実験装置を用い、脱渋庫内の温度に関する保温操作なしの実験結果を、表4に示す。
【0104】
【表4】

【0105】
上記ネガチィブデ−タには次の様な事が考えられる。
(1)常圧でも脱渋庫内の温度(通称果実温と云われるもの)を30℃〜34に上げる事が、一般的となっている。加圧だからと云って、温度を上げないのは逆で、むしろ加圧こそ常圧に比べより温度を上げるのが、化学反応的には求められるものである。つまり、加圧の場合は、常圧の場合に比べて、温度を上げても軟化の影響は少ない、従って所定の温度範囲が必須であることが裏付けられる。
【0106】
(2)比較例4、5では、脱渋庫内の温度は上げてはいないが、加圧による何らかの現象は起こっているものと考えられる。その証拠に後処理時間は非常に長く掛かるが、一応甘味が出てくる。且つそのまま軟化する事なくサクサク感を維持している。
【0107】
(3)脱渋庫内の温度を上げなくとも、加圧条件では、たとえ10%程度でも二酸化炭素ガスが果実に吸収されれば、後は時間は掛かるが脱渋が行なわれ、且つ軟化への日数も長く、食感についてもサクサク感があり、従来にない製品が得られている様である。
【0108】
(4)此の点については、常圧の従来法においても、温度と脱渋処理時間との兼ね合いを模索して、二酸化炭素ガス注入量をやや少な目にし、温度の上げ方についても思考錯誤の上、それなりに設定した結果、甘味はやや少ないが、軟化への日数も比較的長く維持出来る事になっている状況とは対象的なデ−タとして有意義なものである。
【0109】
実施例13
〔実験条件〕
設定内温:38℃
設定内圧:1.05気圧
脱渋処理時間:7時間
生成水:約40g以上
【0110】
図2に示す中実験装置を用い、平たね渋柿(中谷早生)20kgを収容したコンテナー116を脱渋庫123内に収納し、加熱器118で温度を上昇させ、装置内温36℃近くで二酸化炭素ガス置換を行い、引き続き設定内温38℃に昇温し、内圧を1.05気圧に上げ、内圧を保持(定期的に二酸化炭素ガスを補給)しながら、脱渋処理を7時間行う。内圧を下げて取り出す。
【0111】
実験経過の補足
脱渋スタートまでの昇温所要時間:1時間30分
脱渋庫内での湿度の変化:昇温により当初95%まで上がったが、二酸化炭素ガス置換により72.6%まで下がり、昇圧後に69.2%まで下がり、その後元の72・6%に戻るのに約50分間を要した。
【0112】
〔考察〕
脱渋処理スタート後に起こる湿度の降下は、この間に二酸化炭素ガスが果実内に浸透することに因ると考えられる。約50分後に元の状態に戻るのは、果実内及び周辺の環境全てが均一の二酸化炭素ガス雰囲気になった事を示すものと思われる。
【0113】
取り出しは、内圧を抜いて行ったので、処理温度が高いため果実の温度と外気との温度差がかなりあり、この差が縮まるまで果実から放出される遊離水が空気中に揮散しているものと考えられ、実際の放出水はかなりの量に上るものと推定される。
【0114】
〔脱渋評価〕
開蓋後2〜3日経過で、甘味が出た。 軟化までの期間約12日
【0115】
実施例14
〔実験条件〕
設定内温:40℃
設定内圧:1.05気圧
脱渋処理時間:6時間
生成水:約78g
【0116】
図2に示す中実験装置を用い、平たね渋柿(刀根早生)20kgを収容したコンテナー116を脱渋庫123内に収納し、加熱器118で温度を上昇させ、装置内温34℃近くで二酸化炭素ガス置換を行い、引き続き2時間で37℃に昇温し、更に2時間で40℃に達し、内圧を1.05気圧に上げ、内圧を保持(定期的に二酸化炭素ガスを補給)しながら、脱渋処理を6時間行う。内圧を下げて取り出す。
【0117】
実験経過の補足
脱渋スタートまでの昇温所要時間:1時間30分
脱渋庫内での湿度の変化:昇温により当初81.2%まで上がったが、二酸化炭素ガス置換により64.2%まで下がり、昇圧後約76%に戻るのに約2時間を要した。
【0118】
〔考察〕
脱渋処理スタート後に起こる湿度の降下は、この間に二酸化炭素ガスが果実内に浸透することに因ると考えられる。約2時間後に元の状態に戻るのは、果実内及び周辺の環境全てが均一の二酸化炭素ガス雰囲気になった事を示すものと思われる。
【0119】
取り出した生成水は、当初無色透明であったが、時間が経つにつれて白濁し、更に褐色の沈殿物が発生する。これは、タンニン凝結、加水分解によって生成した高分子没食子酸化合物が一部生成水と共に系外に放出されたものと推察される。また、生成水の液性は中性であり、生成水が空気に触れて変色することから、何らかの還元性が考えられ、これが雨水による汚染防止に役立っているのではないかと推定される。
【0120】
〔脱渋評価〕
開蓋後2日経過で、甘味が出た。 軟化までの期間約12日
【0121】
実施例15
〔実験条件〕
設定内温:40℃
設定内圧:1.05気圧
脱渋処理時間:6時間
生成水:約148g
【0122】
図2に示す中実験装置を用い、平たね渋柿(刀根早生)20kgを収容したコンテナー116を脱渋庫123内に収納し、加熱器118で温度を上昇させ、装置内温35℃近くで二酸化炭素ガス置換を行い、引き続き2時間で37℃に昇温し、更に1時間30分で40℃に達し、内圧を1.05気圧に上げ、内圧を保持(定期的に二酸化炭素ガスを補給)しながら、脱渋処理を6時間行う。内圧を下げて取り出す。
【0123】
実験経過の補足
脱渋スタートまでの昇温所要時間:1時間30分
脱渋庫内での湿度の変化:昇温により当初77.5%まで上がったが、二酸化炭素ガス置換により75.5%まで下がり、脱渋終了時約78.6%と殆ど変化のない状態で推移した。
【0124】
〔考察〕
脱渋による遊離水の系外に放出する上限を確認する目的で、最も過酷な条件での実験であった。取り出し後も、果実温度と外気の温度との差から、かなりの水が放出しているものと推察される。
【0125】
〔脱渋評価〕
開蓋後1日経過で、甘味が出た。 軟化までの期間約12日
【0126】
実施例16
〔実験条件〕
設定内温:36℃
設定内圧:1.03気圧
脱渋処理時間:10時間
生成水:約88g
【0127】
図2に示す中実験装置を用い、平たね渋柿(刀根早生)20kgを収容したコンテナー116を脱渋庫123内に収納し、加熱器118で温度を上昇させ、装置内温20℃近くで二酸化炭素ガス置換を行い、引き続き2時間で30℃に昇温し、更に2時間で36℃に達し、内圧を1.03気圧に上げ、内圧を保持(定期的に二酸化炭素ガスを補給)しながら、脱渋処理を10時間行う。内圧を下げて取り出す。
【0128】
実験経過の補足
脱渋スタートまでの昇温所要時間:4時間
脱渋庫内での湿度の変化:渋柿収容時:内温20℃、内湿度85.1%、二酸化炭素ガス置換後30℃まで昇温、内湿度71.8%、昇圧(1.03気圧)、引き続き昇温し36℃に4時間で到達した。
【0129】
〔考察〕
今回の実験条件は、一般農家が直接脱渋処理出荷する場合に、作業サイクルが適合するものに近いと考えられる。即ち、朝から採果作業を一日行い、脱渋装置に収納、夜7時頃より昇温、9時ころより昇圧、以降10時間で脱渋処理を行い、翌朝7時の採果作業前に内圧を抜き、内温を自然降下させて、同日夕方出荷となる。
【0130】
〔脱渋評価〕
開蓋後2日経過で、甘味が出た。 軟化までの期間約12日
【0131】
実施例17
〔実験条件〕
設定内温:36℃
設定内圧:1.03気圧
脱渋処理時間:9時間
生成水:約307g
【0132】
図2に示す中実験装置を用い、平たね渋柿(普通平たね)20kgを収容したコンテナー116を脱渋庫123内に収納し、加熱器118で温度を上昇させ、装置内温23℃近くで二酸化炭素ガス置換を行い、内圧を1.03気圧に上げ、内圧を保持(定期的に二酸化炭素ガスを補給)しながら、引き続き昇温し、設定内温36℃になるのに5時間かかり、この間内湿度は84〜87%で推移した。脱渋処理9時間行う。その後、内圧及び内温の自然降下後に取り出す。自然降下所要時間約2時間。
【0133】
実験経過の補足
脱渋スタートまでの昇温所要時間:2時間、設定内温36℃になるまでの所要時間:5時間、脱渋処理終了までの時間:9時間、自然降下所要時間:約2時間、脱渋トータル時間:約13時間
【0134】
〔考察〕
普通平たね品種として一般的に言われている特質(タンニン力価が高い、刀根早生より脱渋し難い(長時間架かる)、軟化については刀根早生より長持ちする)から、脱渋によって放出される水を出来るだけ正確に測定できるように、今回の条件を設定した。結果、適正な量が放出されている様で、好条件として評価できるものと考えられる。
【0135】
〔脱渋評価〕
開蓋後1日経過で、僅かに渋味の残る程度で甘味が出た。 軟化までの期間約12〜14日
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明によれば、容易かつ単純な操作手段によって、比較的短時間に、高品質でかつ均一な渋柿の脱渋処理を行う事ができ、また特に果実の軟化及び表皮に発生する変色(黒色)の問題を解消することができるので、その産業上の利用可能性は計り知れないものがある。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の脱渋処理装置を示す概略図である。
【図2】本発明の脱渋処理装置の中実験装置の側面模式図である。
【図3】本発明の脱渋処理装置の中実験装置の部分拡大図である。
【図4】本発明の脱渋処理装置の中実験装置の部分拡大図である。
【図5】本発明の脱渋処理装置の中実験装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0138】
1 液化二酸化炭素ガスボンベ
2 ゲージ(圧力計)
3 気化器(加熱器)
4 二酸化炭素ガス注入口
5 開閉コック付ピール管
6 気密性の微耐圧容器(脱渋庫)
7 大気開放用開閉コック付ピール管
8 開閉コック(風船接続用)
9 タイヤチューブ(風船)
10 加温・保温装置
11 圧力測定手段
12 ガス濃度測定手段
13 温度測定手段
14 湿度測定手段
【0139】
101 液化二酸化炭素ガスボンベ
102 ゲージ(圧力計)
103 気化器(加熱器)
104 二酸化炭素ガス流量計
105 デジタル温度計
105a デジタル温度計の温度センサー
106 ガス抜き用開閉コック
107 加熱器(二酸化炭素ガス予熱器)
108 テーブルタップ
109 脱渋庫内のファンの操作器(脱渋庫内の攪拌用ファン119に連結)
110 温度調整用スライダック(脱渋庫内の加熱器118に連結)
111 脱渋庫内の圧力計
112 脱渋庫内の温度・湿度計測・調整器(脱渋庫内の温度センサー113・湿度センサー114に連結)
113 脱渋庫内の温度センサー
114 脱渋庫内の湿度センサー
115 二酸化炭素ガス導入口
116 渋柿収容コンテナー
117 コンテナー設置台
118 脱渋庫内の充填二酸化炭素ガス加熱用の加熱器
119 脱渋庫内の充填二酸化炭素ガス攪拌用のファン
120、120’ 脱渋によって放出される水の取り出し口(コック)
121、121’ 完全密閉の締具
122 二酸化炭素ガス用ピール管
123 気密性の微耐圧容器(脱渋庫)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封された脱渋庫に渋柿を収納し、前記脱渋庫内の空気を二酸化炭素ガスで置換し、二酸化炭素ガスの圧入によって、前記脱渋庫内の圧力を1.01〜1.10気圧に加圧し、一方、前記脱渋庫内を25℃〜50℃の温度範囲に設定して脱渋処理を開始し、5〜30時間脱渋処理した後、ガス抜きして圧力を解除し、更に必要に応じて前記脱渋庫内を0℃〜35℃の温度範囲に設定して脱渋後処理工程を所定時間行うことを特徴とする渋柿の脱渋処理方法。
【請求項2】
前記脱渋庫内の圧力を1.02〜1.08気圧になるように二酸化炭素ガスを圧入することを特徴とする請求項1に記載の渋柿の脱渋処理方法。
【請求項3】
前記脱渋庫内の圧力を1.03〜1.06気圧になるように二酸化炭素ガスを圧入することを特徴とする請求項1に記載の渋柿の脱渋処理方法。
【請求項4】
二酸化炭素ガスが、二酸化炭素ガスと少量のアルコールガスを含む混合ガスであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の渋柿の脱渋処理方法。
【請求項5】
脱渋処理の設定温度範囲が30℃〜40℃であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の渋柿の脱渋処理方法。
【請求項6】
脱渋処理の設定温度範囲が32℃〜38℃であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の渋柿の脱渋処理方法。
【請求項7】
脱渋後処理工程を、前記脱渋庫内を5℃〜25℃の温度範囲に設定して2〜48時間行うことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の渋柿の脱渋処理方法。
【請求項8】
脱渋後処理工程を5〜30時間行うことを特徴とする請求項7に記載の渋柿の脱渋処理方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の渋柿の脱渋処理方法によって放出される水を化粧品、入浴剤、ドリンク剤等又はそれらの原料としての利用に供することを特徴とする渋柿の脱渋処理方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の渋柿の脱渋処理方法によって放出されたものであることを特徴とする渋柿から放出された水。
【請求項11】
密封された脱渋庫に渋柿を収納する手段、前記脱渋庫内の空気を二酸化炭素ガス又は二酸化炭素ガスと少量のアルコールガスを含む混合ガスで置換する手段、前記脱渋庫内の圧力を1.01〜1.10気圧になるように加圧する手段、前記脱渋庫内の二酸化炭素ガス又は二酸化炭素ガスと少量のアルコールガスを含む混合ガスの濃度を測定する手段、前記脱渋庫内の圧力を測定する手段、前記脱渋庫内を0℃〜50℃の任意の温度範囲に設定・維持する手段、前記脱渋庫内の温度を測定する手段並びにガス抜きして圧力を解除する手段を備えたことを特徴とする渋柿の脱渋処理装置。
【請求項12】
更に、前記脱渋庫内を除湿する手段及び該脱渋庫内の湿度を測定する手段、前記脱渋庫内の酸素を取り除く手段及び該脱渋庫内の酸素濃度を測定する手段並びに前記脱渋庫内の有効塩素濃度を保持する手段及び該脱渋庫内の有効塩素濃度を測定する手段の何れかを備えてなることを特徴とする請求項11に記載の渋柿の脱渋処理装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2007−215541(P2007−215541A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6605(P2007−6605)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(306001873)
【Fターム(参考)】