説明

渋滞時間算出装置、出発時刻算出装置、渋滞なし時間算出装置、及びプログラム

【課題】渋滞待ち時間を精度よく算出することができるようにする。
【解決手段】車両が走行したリンク毎に、収集された走行位置に基づいて、実際のリンク旅行時間を計測する(128)。車両が走行したリンク毎に、収集された車速のうちのリンク上流の車速に基づいて、信号待ちなしの場合の渋滞なしのリンク旅行時間を算出する(130)。車両が走行したリンク毎に、リンク下流の交差点に存在する信号による信号待ち時間の期待値を算出する(134、136)。車両が走行したリンク毎に、計測された実際のリンク旅行時間、算出された渋滞なしのリンク旅行時間、及び算出された信号待ち時間の期待値に基づいて、渋滞待ち時間を算出して(138)、目的地までの渋滞待ち時間を合計する(142)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渋滞時間算出装置、出発時刻算出装置、渋滞なし時間算出装置、及びプログラムに係り、特に、収集した走行データから、渋滞待ち時間を算出する渋滞時間算出装置及びプログラム、渋滞を低減するための出発時刻を算出する出発時刻算出装置及びプログラム、並びに渋滞なし時間を算出する渋滞なし時間算出装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、過去の所要時間データを、渋滞状況の変化を表す渋滞傾向係数を乗じて補正することにより、渋滞を考慮した所要時間を算出して、ユーザに情報提供する装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、交通情報の提供対象外のリンクの渋滞度を、同一メッシュ内の提供リンクの平均渋滞度として推定し、目的地までの所要時間を求めるナビゲーション装置が知られている(特許文献2)。このナビゲーション装置では、渋滞度として、渋滞、混雑、順調の3レベルを用いている。
【0004】
また、道路、日の属性、及び時間帯別に、実際の走行時間を平均化することにより、目的地点に到着するまでの走行時間を予測する走行時間予測方法が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−256418号公報
【特許文献2】特開2006−284230号公報
【特許文献3】特開2008−241466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1、3に記載の技術では、渋滞待ち時間および渋滞なしの時間を混同した所要時間を算出しており、渋滞待ち時間のみを算出することはできない、という問題がある。
【0007】
また、上記の非特許文献2に記載の技術では、渋滞度を予測しているが、渋滞、混雑、順調の3レベルであり、詳細な渋滞待ち時間を算出していない、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、渋滞待ち時間を精度よく算出することができる渋滞待ち時間算出装置及びプログラムを提供することを第1の目的とする。
【0009】
また、渋滞を低減するための出発時刻を算出することができる出発時刻算出装置及びプログラムを提供することを第2の目的とする。
【0010】
また、渋滞なし時間を精度良く算出することができる渋滞なし時間算出装置及びプログラムを提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の第1の目的を達成するために第1の発明に係る渋滞時間算出装置は、信号位置を含む道路ネットワークデータを記憶した道路情報記憶手段と、車両について計測された走行位置及び車速を収集する収集手段と、前記道路ネットワークデータにおける、前記車両が走行したリンク毎に、前記収集された走行位置に基づいて、実際のリンク旅行時間を計測する計測手段と、前記車両が走行したリンク毎に、前記収集された車速のうちのリンク上流の車速に基づいて、渋滞なしのリンク旅行時間を算出する渋滞なし時間算出手段と、前記車両が走行したリンク毎に、リンク下流の交差点に存在する信号による信号待ち時間の期待値を取得する信号待ち時間取得手段と、前記車両が走行したリンク毎に、前記計測された前記実際のリンク旅行時間、前記算出された前記渋滞なしのリンク旅行時間、及び前記取得された前記信号待ち時間の期待値に基づいて、渋滞待ち時間を算出する渋滞時間算出手段と、を含んで構成されている。
【0012】
第2の発明に係るプログラムは、信号位置を含む道路ネットワークデータを記憶した道路情報記憶手段を含むコンピュータを、車両について計測された走行位置及び車速を収集する収集手段、前記道路ネットワークデータにおける、前記車両が走行したリンク毎に、前記収集された走行位置に基づいて、実際のリンク旅行時間を計測する計測手段、前記車両が走行したリンク毎に、前記収集された車速のうちのリンク上流の車速に基づいて、渋滞なしのリンク旅行時間を算出する渋滞なし時間算出手段、前記車両が走行したリンク毎に、リンク下流の交差点に存在する信号による信号待ち時間の期待値を取得する信号待ち時間取得手段、及び前記車両が走行したリンク毎に、前記計測された前記実際のリンク旅行時間、前記算出された前記渋滞なしのリンク旅行時間、及び前記取得された前記信号待ち時間の期待値に基づいて、渋滞待ち時間を算出する渋滞時間算出手段として機能させるためのプログラムである。
【0013】
第1の発明及び第2の発明によれば、収集手段によって、車両について計測された走行位置及び車速を収集する。計測手段によって、道路ネットワークデータにおける、車両が走行したリンク毎に、収集された走行位置に基づいて、実際のリンク旅行時間を計測する。
【0014】
そして、渋滞なし時間算出手段によって、車両が走行したリンク毎に、収集された車速のうちのリンク上流の車速に基づいて、渋滞なしのリンク旅行時間を算出する。信号待ち時間取得手段によって、車両が走行したリンク毎に、リンク下流の交差点に存在する信号による信号待ち時間の期待値を取得する。
【0015】
そして、渋滞時間算出手段によって、車両が走行したリンク毎に、計測された実際のリンク旅行時間、算出された渋滞なしのリンク旅行時間、及び取得された信号待ち時間の期待値に基づいて、渋滞待ち時間を算出する。
【0016】
このように、車両が走行したリンク毎に、実際のリンク旅行時間を計測し、渋滞なしのリンク旅行時間を算出し、信号待ち時間の期待値を取得して、車両が走行したリンク毎に、渋滞待ち時間を算出することにより、渋滞待ち時間を精度よく算出することができる。
【0017】
第1の発明に係る道路情報記憶手段は、道路ネットワークデータと、各信号のサイクル長及び赤時間を含む信号情報とを記憶し、信号待ち時間取得手段は、車両が走行したリンク毎に、リンク下流の交差点に存在する信号のサイクル長及び赤時間に基づいて、信号待ち時間の期待値を算出して取得することができる。
【0018】
第1の発明に係る道路情報記憶手段は、道路ネットワークデータと、各信号のサイクル長、赤時間、及び青時間を含む信号情報とを記憶し、信号待ち時間取得手段は、リンク下流の交差点で車両が右折しない場合、又はリンク下流の交差点で車両が右折し、かつ、リンク上流の車速が所定値以上である場合、赤時間の信号待ちに対応する信号待ち時間の期待値を算出し、リンク下流の交差点で車両が右折し、かつ、リンク上流の車速が所定値未満である場合、赤時間及び青時間の信号待ちに対応する信号待ち時間の期待値を算出することができる。これによって、信号待ち時間の期待値を精度良く算出することができ、渋滞待ち時間を更に精度良く算出することができる。
【0019】
第1の発明に係る渋滞時間算出手段は、車両の出発地から目的地までの車両が走行したリンク毎に、渋滞待ち時間を算出し、出発地から目的地までの渋滞待ち時間として、渋滞待ち時間の合計を算出することができる。
【0020】
上記の第2の目的を達成するために第3の発明に係る出発時刻算出装置は、上記第1の発明に係る、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を算出する渋滞時間算出装置によって算出された、前記車両が出発時刻に出発したときの、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を、前記出発時刻、前記出発地、及び前記目的地と対応させて記憶した記憶手段と、ドライバにより入力された前記出発時刻、前記出発地、及び前記目的地に対応する前記渋滞待ち時間、及び該渋滞待ち時間に対応する出発時刻を前記記憶手段から取得する渋滞時間取得手段と、前記取得した前記出発時刻から、前記取得した前記渋滞待ち時間だけ遅らせた時刻を、渋滞を低減させるための出発時刻として算出する出発時刻算出手段と、を含んで構成されている。
【0021】
第4の発明に係るプログラムは、上記第1の発明に係る、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を算出する渋滞時間算出装置によって算出された、前記車両が出発時刻に出発したときの、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を、前記出発時刻、前記出発地、及び前記目的地と対応させて記憶した記憶手段を含むコンピュータを、ドライバにより入力された前記出発時刻、前記出発地、及び前記目的地に対応する前記渋滞待ち時間、及び該渋滞待ち時間に対応する出発時刻を前記記憶手段から取得する渋滞時間取得手段、及び前記取得した前記出発時刻から、前記取得した前記渋滞待ち時間だけ遅らせた時刻を、渋滞を低減させるための出発時刻として算出する出発時刻算出手段として機能させるためのプログラムである。
【0022】
第3の発明及び第4の発明によれば、渋滞時間取得手段によって、ドライバにより入力された出発時刻、出発地、及び目的地に対応する渋滞待ち時間、及び該渋滞待ち時間に対応する出発時刻を記憶手段から取得する。
【0023】
そして、出発時刻算出手段によって、取得した出発時刻から、取得した渋滞待ち時間だけ遅らせた時刻を、渋滞を低減させるための出発時刻として算出することができる。
【0024】
このように、精度良く算出された渋滞待ち時間だけ、出発時刻を遅らせて、渋滞を低減するための出発時刻を算出することができる。
【0025】
上記の第2の目的を達成するために第5の発明に係る出発時刻算出装置は、上記第1の発明に係る、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を算出する渋滞時間算出装置によって算出された、前記車両が出発時刻に出発したときの、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を、前記出発時刻、前記出発地、前記目的地、及び前記到着時刻と対応させて記憶した記憶手段と、ドライバにより入力された前記出発地、目的地到着目標時刻、及び前記目的地に対応する前記渋滞待ち時間を前記記憶手段から取得する渋滞時間取得手段と、前記目的地到着目標時刻から、前記取得した前記渋滞待ち時間から得られる渋滞なしの所要時間だけ早めた時刻を、渋滞を低減させるための出発時刻として算出する出発時刻算出手段と、を含んで構成されている。
【0026】
第6の発明に係るプログラムは、上記第1の発明に係る、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を算出する渋滞時間算出装置によって算出された、前記車両が出発時刻に出発したときの、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を、前記出発時刻、前記出発地、前記目的地、及び前記到着時刻と対応させて記憶手段を含むコンピュータを、ドライバにより入力された前記出発地、目的地到着目標時刻、及び前記目的地に対応する前記渋滞待ち時間を前記記憶手段から取得する渋滞時間取得手段、及び前記目的地到着目標時刻から、前記取得した前記渋滞待ち時間から得られる渋滞なしの所要時間だけ早めた時刻を、渋滞を低減させるための出発時刻として算出する出発時刻算出手段として機能させるためのプログラムである。
【0027】
第5の発明及び第6の発明によれば、渋滞時間取得手段によって、ドライバにより入力された出発地、目的地到着目標時刻、及び目的地に対応する渋滞待ち時間を記憶手段から取得する。
【0028】
そして、出発時刻算出手段によって、目的地到着目標時刻から、取得した渋滞待ち時間から得られる渋滞なしの所要時間だけ早めた時刻を、渋滞を低減させるための出発時刻として算出することができる。
【0029】
このように、精度良く算出された渋滞待ち時間から得られる渋滞なしの所要時間だけ、目的地到着目標時刻から早めて、渋滞を低減するための出発時刻を算出することができる。
【0030】
上記の第3の目的を達成するために第7の発明に係る渋滞なし時間算出装置は、信号位置を含む道路ネットワークデータを記憶した道路情報記憶手段と、車両について計測された走行位置及び車速を収集する収集手段と、前記道路ネットワークデータにおける、前記車両が走行したリンク毎に、前記収集された車速のうちのリンク上流の車速に基づいて、信号待ちがない場合の渋滞なしのリンク旅行時間を算出する第1渋滞なし時間算出手段と、前記車両が走行したリンク毎に、リンク下流の交差点に存在する信号による信号待ち時間の期待値を取得する信号待ち時間取得手段と、前記車両が走行したリンク毎に、前記算出された前記渋滞なしのリンク旅行時間及び前記取得された前記信号待ち時間の期待値に基づいて、渋滞なしのリンク旅行時間を算出する第2渋滞なし時間算出手段と、を含んで構成されている。
【0031】
第8の発明に係るプログラムは、信号位置を含む道路ネットワークデータを記憶した道路情報記憶手段を含むコンピュータを、車両について計測された走行位置及び車速を収集する収集手段、前記道路ネットワークデータにおける、前記車両が走行したリンク毎に、前記収集された車速のうちのリンク上流の車速に基づいて、信号待ちがない場合の渋滞なしのリンク旅行時間を算出する第1渋滞なし時間算出手段、前記車両が走行したリンク毎に、リンク下流の交差点に存在する信号による信号待ち時間の期待値を取得する信号待ち時間取得手段、及び前記車両が走行したリンク毎に、前記算出された前記渋滞なしのリンク旅行時間及び前記取得された前記信号待ち時間の期待値に基づいて、渋滞なしのリンク旅行時間を算出する第2渋滞なし時間算出手段として機能させるためのプログラムである。
【0032】
第7の発明及び第8の発明によれば、収集手段によって、車両について計測された走行位置及び車速を収集する。第1渋滞なし時間算出手段によって、道路ネットワークデータにおける、車両が走行したリンク毎に、収集された車速のうちのリンク上流の車速に基づいて、信号待ちがない場合の渋滞なしのリンク旅行時間を算出する。
【0033】
そして、信号待ち時間取得手段によって、車両が走行したリンク毎に、リンク下流の交差点に存在する信号による信号待ち時間の期待値を取得する。
【0034】
そして、第2渋滞なし時間算出手段によって、車両が走行したリンク毎に、算出された渋滞なしのリンク旅行時間及び取得された信号待ち時間の期待値に基づいて、渋滞なしのリンク旅行時間を算出する。
【0035】
このように、車両が走行したリンク毎に、渋滞なしのリンク旅行時間を算出し、信号待ち時間の期待値を取得して、車両が走行したリンク毎に、渋滞なしのリンク旅行時間を算出することにより、精度良く渋滞なしのリンク旅行時間を算出することができる。
【0036】
また、本発明のプログラムは、記憶媒体に格納して提供することも可能である。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、本発明の渋滞時間算出装置及びプログラムによれば、車両が走行したリンク毎に、実際のリンク旅行時間を計測し、渋滞なしのリンク旅行時間を算出し、信号待ち時間の期待値を取得して、車両が走行したリンク毎に、渋滞待ち時間を算出することにより、渋滞待ち時間を精度よく算出することができる、という効果が得られる。
【0038】
本発明の出発時刻算出装置及びプログラムによれば、精度良く算出された渋滞待ち時間だけ、出発時刻を遅らせて、渋滞を低減するための出発時刻を算出することができる、という効果が得られる。
【0039】
本発明の出発時刻算出装置及びプログラムによれば、精度良く算出された渋滞待ち時間から得られる渋滞なしの所要時間だけ、目的地到着目標時刻から早めて、渋滞を低減するための出発時刻を算出することができる、という効果が得られる。
【0040】
本発明の渋滞なし時間算出装置及びプログラムによれば、車両が走行したリンク毎に、渋滞なしのリンク旅行時間を算出し、信号待ち時間の期待値を取得して、車両が走行したリンク毎に、渋滞なしのリンク旅行時間を算出することにより、精度良く渋滞なしのリンク旅行時間を算出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る交通情報生成システムを示すブロック図である。
【図2】信号交差点への到着時刻と信号待ち時間との関係を表わすグラフである。
【図3】右折時の信号交差点への到着時刻と信号待ち時間との関係を表わすグラフである。
【図4】道路容量及び交通需要の変化を表わすグラフである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る交通情報生成装置における渋滞待ち時間記録処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る交通情報生成装置における渋滞待ち時間算出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図7】(A)出発時刻、出発地、及び目的地に対応する渋滞待ち時間を算出する様子を示すイメージ図、及び(B)出発時刻、出発地、及び目的地に対応する渋滞待ち時間が指示される様子を示すイメージ図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る交通情報生成装置における出発時刻指示処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図9】シミュレーションにおいて比較例の総渋滞長を計算した結果を示すグラフである。
【図10】シミュレーションにおいて本実施の形態の手法を用いた場合の総渋滞長を計算した結果を示すグラフである。
【図11】シミュレーションにおいて本実施の形態の手法を用いた場合の目標時刻との差の分布を示すグラフである。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る車載器を示すブロック図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る交通情報生成システムを示すブロック図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係る交通情報生成システムを示すブロック図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態に係る交通情報生成装置における渋滞なし旅行時間記録処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係る交通情報生成装置における渋滞なし旅行時間算出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。渋滞を低減するための出発時刻を表わす交通情報を生成する交通情報生成システムに本発明を適用した場合を例に説明する。
【0043】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る交通情報生成システム10は、複数の車両に搭載された複数の車載器12と、路側に設置された無線通信を行う複数の基地局14と、交通情報センター側に設けられた交通情報生成装置16とを備えている。また、各基地局14と交通情報生成装置16とは、インターネット18を介して接続されている。
【0044】
各車載器12は、自車両の位置を計測するためのGPSセンサ20と、自車両の車速を計測するための車速センサ22と、GPSセンサ20によって計測した自車位置情報、車速センサ22によって計測した車速情報、計時部(図示省略)により計測した自車位置情報が示す位置の通過時刻、及び自車両を識別する車両IDを含む走行情報を、無線通信により送信する無線通信部24とを備えている。各車載器12は、所定時間間隔で走行情報を送信する。また、車載器12では、走行開始するときに、現在地である出発地及び現在の時刻である出発時刻を含む走行開始情報が、無線通信部24によって送信される。
【0045】
また、車載器12は、ドライバが出発地及び目的地を操作入力するための操作部26を備え、操作部26によって入力された出発地、目的地、及び現在の時刻である出発時刻を含む走行設定情報が、無線通信部24によって送信される。
【0046】
各基地局14は、車載器12の無線通信部24によって送信された走行情報、走行設定情報、及び走行開始情報を受信すると共に、インターネット18を介して、受信した走行情報、走行設定情報、及び走行開始情報を交通情報生成装置16に送信する。
【0047】
交通情報生成装置16は、一般的なサーバによって構成され、CPUと、RAMと、後述する渋滞待ち時間記憶処理ルーチン及び出発時刻指示処理ルーチンを実行するためのプログラムを記憶したROMと、HDDとを備えている。交通情報生成装置16は、機能的には次に示すように構成されている。交通情報生成装置16は、車載器12から送信された走行情報、走行開始情報、及び走行設定情報を受信する情報受信部30と、情報受信部30によって受信した走行情報及び走行開始情報を収集して、後述する車両走行データ記憶部33に格納する情報収集部32と、収集した走行情報及び走行開始情報を記憶する車両走行データ記憶部33と、道路地図データ及び信号データを記憶した走行環境データベース34と、走行情報の走行位置に応じて、走行環境データベース34から、走行した各リンクのリンク長や信号情報などを収集する走行環境収集部36と、収集した走行情報、リンク長、及び信号情報に基づいて、走行開始情報の出発地から、連続して収集された走行情報のうちの最後の走行情報が示す位置である目的地までの渋滞待ち時間を算出して、後述する渋滞時間データベース40に格納する渋滞時間算出部38と、出発時刻、出発地、及び目的地に対応させて、算出された渋滞待ち時間を記憶する渋滞時間データベース40と、を備えている。なお、走行環境データベース34が、道路情報記憶手段の一例であり、情報受信部30、情報収集部32、車両走行データ記憶部33、走行環境データベース34、走行環境収集部36、及び渋滞時間算出部38が、渋滞時間算出装置の一例である。また、渋滞時間データベース40、データ検索部42、及び出発時刻算出部44が、出発時刻算出装置の一例である。
【0048】
また、交通情報生成装置16は、情報受信部30によって受信した走行設定情報に基づいて、対応するデータを、渋滞時間データベース40から検索するデータ検索部42と、検索結果に基づいて、渋滞を低減するための出発時刻を算出する出発時刻算出部44と、算出された出発時刻を含む交通情報を車載器12へ送信する情報送信部46とを更に備えている。
【0049】
情報収集部32は、車載器12から送信された、走行位置や車速を含む複数の走行情報及び走行開始情報を収集して、車両走行データ記憶部33に格納しておく。
【0050】
走行環境データベース34は、各リンクのリンク長及び信号位置を含む道路地図データと、道路地図上の各信号のサイクル長、赤時間、及び青時間を表わす信号データを記憶している。
【0051】
走行環境収集部36は、収集された走行情報に基づいて、走行した各リンクに対応する、リンク長、信号位置、法定速度、及び信号データを含む走行環境情報を、走行環境データベース34から取得して収集する。
【0052】
次に、渋滞待ち時間を算出する原理について説明する。
【0053】
まず、渋滞待ち時間は、以下のように定義できる。
【0054】
渋滞待ち時間 = 実際の旅行時間 − 渋滞なしの旅行時間
【0055】
しかしながら、街路網では、渋滞待ち時間(あるいは、渋滞なしの旅行時間)を見積もる際に、街路網特有の、(1)信号待ちか渋滞待ちかの判断がつかない、(2)折方向による信号待ち時間の差、(3)混雑状況による速度差、という3つの課題に直面する。
【0056】
そこで、本実施の形態では、(1)の課題に対する解決方法として、出発地から目的地までの経路毎ではなく、リンクを通過する毎に渋滞待ち時間を計算し加算するようにする。また、(2)の課題に対する解決方法として、右折時における対向直進車による時間遅れを考慮するために、「右折」かつ「リンク上流での速度小」のときは、信号待ち時間の期待値を大きくすることにする。さらに、(3)の課題に対する解決方法として、リンク上流での速度を用いて、「渋滞なしの旅行時間」を算出することとする。
【0057】
以上の3つの解決方法を用いて、車両が走行したリンク毎に、渋滞待ち時間を以下のように算出する。
【0058】
まず、対象リンクについて収集された走行情報に基づいて、リンク流入時刻とリンク流出時刻を取得して、実際のリンク旅行時間Trを計測する。また、対象リンクについて収集された走行情報に基づいて、対象リンクの上流部分における車速Vを取得し、車速Vと、対象リンクのリンク長Lとに基づいて、信号待ちなしの場合の渋滞なしリンク旅行時間Tnn(=L/V)を算出する。
【0059】
そして、リンク下流の交差点に存在する信号による信号待ち時間の期待値を算出する。本実施の形態では、信号の点灯状態が青および黄色では車両が停止せず、赤が点灯しているときのみ、車両が停止すると仮定する。リンク下流の交差点で、直進又は左折する場合には、図2に示すように、交差点への到着時刻Tに対する信号待ち時間は、太線に示す通り、赤時間の残り時間と等しくなる。例えば、赤信号になった時刻Trと同時に到着した車両の待ち時間は、青信号に変わる時刻をTgとすると、Tg−Trとなる。同様に、赤信号が点灯している間の時刻Tに信号交差点に到着した場合の待ち時間はTg−Tとなる。
【0060】
よって、信号待ち時間の期待値Tswは、サイクル長に対する図2の灰色で示す面積を用いて計算すればよく、以下の(1)式に従って算出される。
Tsw=(Tsr*Tsr/2)/Tsc ・・・(1)
【0061】
ただし、Tsrは、信号の赤時間(=Tg−Tr)であり、Tscは、信号サイクル時間である。また、上記(1)式で算出される信号待ち時間の期待値Tswは、赤時間だけ信号待ちする場合の信号待ち時間の期待値の一例である。
【0062】
また、リンク下流の信号交差点で、右折し、かつ、対象リンクの上流部分における車速Vが、予め決まっている、例えば対象リンクの自由走行時の速度Vfの1/2以上である場合には、信号待ち時間が、直進時及び左折時と同様に、赤時間の残り時間と等しくなるとして、上記(1)式に従って、信号待ち時間の期待値を算出する。
【0063】
また、リンク下流の信号交差点で、右折し、かつ、対象リンクの上流部分における車速Vが、予め決まっている対象リンクの自由走行時の速度Vfの1/2未満である場合には、対向直進車による時間遅れを考慮して、交差点への到着時刻Tに対する信号待ち時間は、青時間の残り時間、又は赤時間の残り時間と青時間との和と等しくなる。ここで、図3に、右折時の信号交差点への到着時刻と待ち時間との関係を示す。信号が右折矢印及び黄色では車両は停止せず、青及び赤時間に停止する(青時間には対向直進車により停止せざるを得ない状況)と仮定する。到着時刻に対する待ち時間は、太線に示す通り、[赤時間+青時間]の残り時間が待ち時間と等しくなる。例えば、赤信号になった時刻Trと同時に到着した車両の待ち時間は、黄信号に変わる時刻をTyとした場合に、Ty−Trとなる。同様に、時刻Tに信号交差点に到着した場合の待ち時間は、Ty−Tとなる。
【0064】
よって、信号待ち時間の期待値Tswは、サイクル長に対する灰色で示す面積を用いて計算すればよく、以下の(2)式に従って算出される。
Tsw=((Tsr+Tsg)*(Tsr+Tsg)/2)/Tsc ・・・(2)
【0065】
また、上記(2)式で算出される信号待ち時間の期待値Tswは、赤時間及び青時間だけ信号待ちする場合の信号待ち時間の期待値の一例である。
【0066】
次に、実際の旅行時間Tr、信号待ちなしの渋滞なしリンク旅行時間Tnn、及び信号待ち時間の期待値Tswを用いて、例えば、以下の(3)式に示す条件に従って、対象リンクで、渋滞待ち時間が発生した否かを判定する。
Tr−(Tnn+Tsw)≧Tsc ・・・(3)
【0067】
ただし、Tscは、対象リンク下流の交差点に存在する信号のサイクル長である。なお、上記(3)式では、信号のサイクル長以上であることを条件とした場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、信号のサイクル長を基準とした設定値以上であることを条件としてもよい。
【0068】
渋滞待ち時間が発生したと判定された場合には、実際の旅行時間Trと、信号待ちなしの渋滞なしリンク旅行時間Tnn及び信号待ち時間の期待値Tswの和との差分を、渋滞待ち時間として算出する。
【0069】
以上説明したように、渋滞時間算出部38は、車載器12から受信した走行開始情報の出発地から、最後の走行情報が示す位置である目的地までの各リンクについて、渋滞待ち時間を算出し、渋滞待ち時間の合計値を、出発地から目的地までの渋滞待ち時間として算出する。また、渋滞時間算出部38は、走行開始情報の出発時刻及び出発地、並びに最後の走行情報が示す位置である目的地と対応させて、算出した渋滞待ち時間を、渋滞時間データベース40に記憶する。
【0070】
次に、渋滞を低減するための出発時刻を算出する原理について説明する。
【0071】
1経路1ボトルネックの場合、図4に示すような、道路容量(リンクを流出する台数)、需要、及び渋滞待ち時間の関係が得られる。道路容量に対して、需要が超過すると(上記図4の交通需要の線を参照)、交通需要の線から道路容量の線までの待ち時間が生じる。例えば、車両iは時間Tの間待つことになる。この待ち時間分だけ出発時刻を遅らせ、ちょうど時刻t(上記図4参照)にボトルネック地点に到着すれば、待ち時間なしで、目的地へ遅刻なく到着することが可能である。
【0072】
以上の手法を街路網に適用しても、同様の関係が得られるため、以下の(4)式に従って、渋滞を低減するための新しい出発時刻を算出することができる。
新しい出発時刻 = 前回の出発時刻 + 渋滞待ち時間 ・・・(4)
【0073】
そこで、本実施の形態では、データ検索部42によって、車載器12から受信した走行設定情報が表わす出発時刻、出発地、及び目的地に対応するデータを、渋滞時間データベース40から検索する。出発時刻が対応し(同一時間帯であり)、かつ、出発地及び目的地が同一のデータが存在する場合には、出発時刻及び渋滞待ち時間が検索結果として渋滞時間データベース40から得られる。
【0074】
出発時刻算出部44は、上記(4)式に従って、取得した出発時刻を、取得した渋滞待ち時間だけ遅らせた時刻を、渋滞を低減するための出発時刻として算出する。
【0075】
情報送信部46は、算出した出発時刻を含む交通情報を、車載器12へ送信する。
【0076】
無線通信部24によって出発時刻を含む交通情報を受信した車載器12では、受信した出発時刻を、ディスプレイ(図示省略)に表示して、渋滞を低減するための出発時刻をドライバに知らせる。
【0077】
次に、第1の実施の形態に係る交通情報生成システム10の動作について説明する。まず、車載器12を搭載した車両において、ドライバが走行開始するときに、車載器12によって、出発地(現在地)及び出発時刻(現在時刻)を含む走行開始情報が生成され、無線通信で基地局14に対して送信される。そして、走行中の車両の車載器12において、所定時間間隔で、GPSセンサ20によって計測した自車位置情報、車速センサ22によって計測した車速情報、計時部(図示省略)により計測した通過時刻、及び車両IDを含む走行情報が生成され、無線通信で基地局14に対して送信される。走行情報は、目的地に到着するまで生成されて送信される。
【0078】
このとき、交通情報生成装置16では、インターネット18を介して受信した走行開始情報を取得し、車両走行データ記憶部33に記憶する。また、交通情報生成装置16では、インターネット18を介して受信した走行情報を収集し、取得した走行情報の走行位置を、走行環境データベース34に予め記憶された道路地図データと照合して、道路地図上の走行位置に変換して、走行情報を、車両走行データ記憶部33に格納する。
【0079】
そして、交通情報生成装置16において、図5に示す渋滞待ち時間記録処理ルーチンが実行される。なお、以下では、ある1つの走行開始情報に対応する渋滞待ち時間を計算する場合について説明する。
【0080】
まず、ステップ100において、対象の走行開始情報を取得して、走行開始情報の出発地及び出発時刻を記録する。また、ステップ102において、対象の走行開始情報に対応して連続して収集された走行情報のうちの最後の走行情報に基づいて、目的地を設定する。
【0081】
そして、ステップ104において、対象の走行開始情報に対応して収集された走行情報に基づいて、渋滞待ち時間を算出し、ステップ106において、上記ステップ100で記録した走行開始情報の出発地及び出発時刻、上記ステップ106で算出された渋滞待ち時間、上記ステップ102で設定した目的地、及び対応して収集された走行情報のうちの最後の走行情報の通過時刻である到着時刻を対応させて、渋滞時間データベース40に記録して、渋滞待ち時間記録処理ルーチンを終了する。
【0082】
上記ステップ104は、図6に示す渋滞待ち時間算出処理ルーチンによって実現される。
【0083】
まず、ステップ120において、収集した走行情報から得られる、対象車両が走行した、出発地から目的地までの各リンクを識別するためのリンク番号Lnを、初期値0に設定する。そして、ステップ122において、渋滞待ち時間の合計値Tを初期値0に設定する。
【0084】
次のステップ124では、対象リンクLnに対して収集された走行情報を、車両走行データ記憶部33から取得し、ステップ126において、対象リンクに対する走行環境情報を、走行環境データベース34から取得する。
【0085】
そして、ステップ128において、走行情報から得られる対象リンクのリンク流入時間及びリンク流出時間に基づいて、実際のリンク旅行時間を計測する。次のステップ130では、対象リンクの上流部分に対応する走行情報から得られるリンク上流の車速と、対象リンクの走行環境情報から得られるリンク長とに基づいて、信号待ちなしの場合における渋滞なしリンク旅行時間を算出する。
【0086】
そして、ステップ132において、次のリンクに対応する走行情報と、上記のリンク上流の車速と、対象リンクの走行環境情報から得られる自由走行時の速度(例えば、法定速度)とに基づいて、対象リンクの下流の交差点で右折し、かつ、リンク上流速度が、予め定められた設定速度(例えば、自由走行時の速度の1/2)未満であるかを判定する。対象リンクの下流の交差点で直進又は左折する場合、あるいは、対象リンクの下流の交差点で右折し、かつ、リンク上流速度が、設定速度以上である場合には、ステップ134において、対象リンクの走行環境情報から得られる対象リンクの下流の交差点の信号の信号サイクル及び赤時間に基づいて、赤時間だけ信号待ちする場合の信号待ち時間の期待値を算出して、ステップ138へ移行する。一方、対象リンクの下流の交差点で右折し、かつ、リンク上流速度が、設定速度未満である場合には、ステップ136において、対象リンクの走行環境情報から得られる対象リンクの下流の交差点の信号の信号サイクル時間、青時間、及び赤時間に基づいて、赤時間及び青時間だけ信号待ちする場合の信号待ち時間の期待値を算出して、ステップ138へ移行する。
【0087】
なお、対象リンクの下流の交差点が信号交差点ではない場合には、上記ステップ134又は136で、信号待ち時間の期待値をゼロ(信号待ちなし)とすればよい。
【0088】
ステップ138では、上記ステップ130で算出された渋滞なしリンク旅行時間から、上記ステップ134又は136で算出された信号待ち時間の期待値を減算して、信号待ちがある場合のリンク旅行時間を算出し、上記ステップ128で算出された実際のリンク旅行時間と、算出された信号待ちがある場合のリンク旅行時間との差分を算出する。
【0089】
そして、ステップ140において、算出された差分が、対象リンクの走行環境情報から得られる対象リンクの下流の交差点の信号の信号サイクル時間以上であるか否かを判定する。算出された差分が、上記信号サイクル時間未満である場合には、対象リンクでは渋滞待ちがなかったと判断して、ステップ144へ移行する。一方、算出された差分が、上記信号サイクル時間以上である場合には、対象リンクで渋滞待ちがあったと判断して、ステップ142において、上記ステップ138で算出した差分を、対象リンクの渋滞待ち時間として、渋滞待ち時間の合計値Tに加算して、ステップ144へ移行する。
【0090】
ステップ144では、対象リンクが、設定された目的地に到達するか否かを判定し、対象リンクが、設定された目的地に到達していない場合には、ステップ146で、リンク番号Lnをインクリメントして、上記ステップ124へ戻り、次のリンクについて、上記の処理を行う。一方、対象リンクが、設定された目的地に到達する場合には、渋滞待ち時間の合計値Tが、出発地から目的地までの渋滞待ち時間として、渋滞待ち時間算出処理ルーチンを終了する。
【0091】
各走行開始情報に対して、上記の渋滞待ち時間記録処理ルーチンを実行することにより、道路地図上の出発地、目的地、及び出発時刻の各組み合わせについて渋滞待ち時間が計算され、渋滞時間データベース40に記憶される。例えば、図7(A)に示すように、出発時間を7:30とし、出発地を自宅Aとし、目的地をオフィスBとした場合に、20分間の渋滞待ち時間が計算され、渋滞時間データベース40に記憶される。
【0092】
また、車載器12を搭載した車両において、ドライバが操作部26によって、出発地(現在地)及び目的地を設定すると、車載器12によって、出発地、目的地、及び出発時刻(現在時刻)を含む走行設定情報が生成され、無線通信で基地局14に対して送信される。
【0093】
そして、交通情報生成装置16において、インターネット18を介して走行設定情報を受信すると、図8に示す出発時刻指示処理ルーチンが実行される。
【0094】
まず、ステップ150において、受信した走行設定情報の出発時刻、出発地、及び目的地に対応するデータを、渋滞時間データベース40から検索する。次のステップ152では、上記ステップ150で、対応するデータが検索されたか否かを判定し、出発地及び目的地の各々が同一であって、かつ、出発時刻が同一時間帯である場合に対応して記憶された渋滞待ち時間が存在した場合には、ステップ154へ移行する。一方、出発地及び目的地の各々が同一であって、かつ、出発時刻が同一時間帯である場合に対応する渋滞待ち時間が、渋滞時間データベース40に記憶されていなかった場合には、出発時刻の算出を行わずに、出発時刻指示処理ルーチンを終了する。
【0095】
ステップ154では、上記ステップ150で検索されたデータの出発時刻及び渋滞待ち時間に基づいて、渋滞を低減するための出発時刻を算出して、ステップ156において、上記ステップ154で算出された出発時刻を含む交通情報を生成して、インターネット18を介して車載器12へ送信し、出発時刻指示処理ルーチンを終了する。
【0096】
そして、車載器12では、交通情報を受信すると、交通情報に含まれる出発時刻に出発するように、ディスプレイ(図示省略)に表示して、渋滞を低減するための出発時刻をドライバに知らせる。
【0097】
例えば、図7(B)に示すように、前日に記録されたデータの出発時刻から、渋滞待ち時間である20分だけ遅らせて、当日の渋滞を低減するための出発時刻として、7時50分に出発するように指示される。
【0098】
本実施の形態の手法を用いた場合のシミュレーションによる実験結果について説明する。計算された渋滞待ち時間に基づいて算出された出発時間を指示して、ある中堅都市の朝ピーク時間帯の交通状況をシミュレーションして、都市全体の総渋滞長を計算する実験を行った。比較例として、「渋滞なしの旅行時間=自由走行速度で走行時での旅行時間+各信号の信号サイクル時間の1/2の合計」として、実際の旅行時間との差から、渋滞待ち時間を算出して、本実施の形態と同様に、渋滞待ち時間だけ遅らせた出発時間を算出して指示する場合について、実験を行った。
【0099】
図9に示すように、比較例においては、出発時刻を指示しない場合の総渋滞長に比べて、都市全体の総渋滞長は減るものの、渋滞が多く残っている。一方、本実施の形態の手法を用いた場合には、図10に示すように、出発時刻を指示しない場合の総渋滞長に比べて、総渋滞長を殆ど削減できる。これは、交通量を数十%削減した場合と同様であり、本実施の形態の手法を用いれば、交通量を1台も削減することなしに渋滞を低減することができることがわかった。
【0100】
また、各車両に着目した場合、図11に示すように、本実施の形態の手法を用いると、出発時刻を指示しない場合に比べて、到着時刻と目標到着時刻との差の分散も小さくなることがわかった。
【0101】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る交通情報生成システムによれば、車両が走行したリンク毎に、実際のリンク旅行時間を計測し、信号待ちがない場合の渋滞なしのリンク旅行時間を算出し、信号待ち時間の期待値を算出して、車両が走行したリンク毎に、渋滞待ち時間を算出することにより、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を精度よく算出することができる。
【0102】
また、交差点の折方向及びリンク上流の車速に応じて、信号待ち時間の期待値の算出方法を変えることにより、信号待ち時間の期待値を精度良く算出することができ、渋滞待ち時間を更に精度良く算出することができる。
【0103】
また、精度良く算出された渋滞待ち時間だけ、出発時刻を遅らせることにより、渋滞を低減するための出発時刻を算出することができる。また、交通情報センター側で、渋滞待ち時間を収集して、車載器を搭載した複数の車両のドライバに対して、それぞれ渋滞を低減するための出発時刻を指示することにより、渋滞を低減することができる。
【0104】
また、渋滞解消や遅刻なしのためには、“渋滞待ち時間”を正確に算出する必要があり、本実施の形態では、街路網で課題となる、(1)信号待ちか渋滞待ちかの判断がつかない、(2)折方向による所要時間の差、(3)混雑状況による速度差、という課題を解決することにより、渋滞待ち時間を正確に算出することが可能である。このように、街路網を走行した場合の渋滞待ち時間を精度良く算出可能であるため、渋滞待ち時間を用いて、渋滞を解消することが可能となる。
【0105】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0106】
第2の実施の形態では、車載器内で、渋滞待ち時間の算出、及び渋滞を低減するための出発時刻の算出を行っている点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0107】
図12に示すように、第2の実施の形態に係る車載器212は、GPSセンサ20と、車速センサ22と、操作部26と、GPSセンサ20によって計測した自車位置情報、車速センサ22によって計測した車速情報、及び計時部(図示省略)により計測した自車位置情報が示す位置の通過時刻を含む走行情報を収集して、渋滞待ち時間を算出すると共に、渋滞を低減するための出発時刻を算出して、表示装置224に表示させるコンピュータ223とを備えている。
【0108】
コンピュータ223は、CPUと、RAMと、渋滞待ち時間記憶処理ルーチン及び出発時刻指示処理ルーチンを実行するためのプログラムを記憶したROMと、HDDとを備えている。コンピュータ223は、機能的には次に示すように構成されている。
【0109】
コンピュータ223は、GPSセンサ20によって計測した自車位置情報又は車速センサ22によって計測した車速情報を取得して生成される、走行情報及び走行開始情報を収集して、車両走行データ記憶部33に格納する情報収集部232と、車両走行データ記憶部33と、走行環境データベース34と、走行環境収集部36と、渋滞時間算出部38と、渋滞時間データベース40と、ドライバの操作部26の操作入力に応じて生成された走行設定情報に基づいて、対応するデータを、渋滞時間データベース40から検索するデータ検索部242と、出発時刻算出部44とを備えている。
【0110】
情報収集部232は、走行開始するときに、現在地である出発地及び現在の時刻である出発時刻を含む走行開始情報を生成して、車両走行データ記憶部33に格納しておく。また、情報収集部232は、走行しているときに、所定時間間隔で、GPSセンサ20によって計測した自車位置情報、車速センサ22によって計測した車速情報、及び自車位置情報が示す位置の通過時刻を含む走行情報を生成して、車両走行データ記憶部33に格納しておく。
【0111】
データ検索部242は、操作部26によって入力された出発地、目的地、及び現在の時刻である出発時刻を含む走行設定情報を生成し、走行設定情報が表わす出発時刻、出発地、及び目的地に対応するデータを、渋滞時間データベース40から検索する。
【0112】
次に、第2の実施の形態に係る車載器212の動作について説明する。まず、車載器212を搭載した車両において、ドライバが走行開始するときに、出発地(現在地)及び出発時刻(現在時刻)を含む走行開始情報が生成され、車両走行データ記憶部33に記憶される。そして、走行中の車両の車載器212において、所定時間間隔で、走行情報が生成され、車両走行データ記憶部33に記憶される。走行情報は、目的地に到着するまで生成されて記憶される。なお、生成した走行情報の走行位置は、予め用意された道路地図データと照合され、道路地図上の走行位置に変換されて、走行情報が、車両走行データ記憶部33に格納される。
【0113】
そして、車載器212において、以下のように、渋滞待ち時間記録処理ルーチンが実行される。
【0114】
まず、車両走行データ記憶部33から、対象の走行開始情報を取得して、走行開始情報の出発地及び出発時刻を記録する。また、対象の走行開始情報に対応して収集された走行情報のうちの最後の走行情報に基づいて、目的地を設定する。
【0115】
そして、対象の走行開始情報に対応して収集された走行情報に基づいて、渋滞待ち時間を算出し、記録した走行開始情報の出発地及び出発時刻、算出された渋滞待ち時間、上記で設定した目的地、及び対応して収集された走行情報のうちの最後の走行情報の通過時刻である到着時刻を対応させて、渋滞時間データベース40に記録し、渋滞待ち時間記録処理ルーチンを終了する。
【0116】
なお、渋滞待ち時間の算出処理は、上記図6の渋滞待ち時間算出処理ルーチンと同様の処理によって実現される。
【0117】
また、車載器212を搭載した車両において、ドライバが操作部26によって、出発地(現在地)及び目的地を設定すると、車載器212によって、出発地、目的地、及び出発時刻(現在時刻)を含む走行設定情報が生成される。そして、車載器212において、以下のように、出発時刻指示処理ルーチンが実行される。
【0118】
まず、生成した走行設定情報の出発時刻、出発地、及び目的地に対応するデータを、渋滞時間データベース40から検索する。そして、対応するデータが検索されたか否かを判定し、出発地及び目的地の各々が同一であって、かつ、出発時刻が同一時間帯である場合に対応して記憶された渋滞待ち時間が存在した場合には、検索されたデータの出発時刻及び渋滞待ち時間に基づいて、渋滞を低減するための出発時刻を算出する。次に、算出された出発時刻に出発するように、ディスプレイ(図示省略)に表示して、渋滞を低減するための出発時刻をドライバに知らせる。
【0119】
一方、出発地及び目的地の各々が同一であって、かつ、出発時刻が同一時間帯である場合に対応する渋滞待ち時間が、渋滞時間データベース40に記憶されていなかった場合には、出発時刻の算出を行わずに、出発時刻指示処理ルーチンを終了する。
【0120】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る車載器によれば、車両が走行したリンク毎に、実際のリンク旅行時間を計測し、信号待ちがない場合の渋滞なしのリンク旅行時間を算出し、信号待ち時間の期待値を算出して、車両が走行したリンク毎に、渋滞待ち時間を算出することにより、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を精度よく算出することができる。
【0121】
また、各車載器で、渋滞待ち時間をそれぞれ算出し、車載器を搭載した複数の車両のドライバに対して、それぞれ渋滞を低減するための出発時刻を指示することにより、渋滞を低減することができる。
【0122】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0123】
第3の実施の形態では、車載器内で、渋滞待ち時間の算出を行って、交通情報センター側に送信している点が、第1の実施の形態と主に異なっている。
【0124】
図13に示すように、第3の実施の形態に係る交通情報生成システム310の車載器312のコンピュータ323は、情報収集部232と、車両走行データ記憶部33と、走行環境データベース34と、走行環境収集部36と、渋滞時間算出部38と、無線通信部24と、送信情報として走行設定情報を生成する送信情報生成部350と、受信した交通情報から、出発時刻を取得して表示装置224に表示させる出発時刻取得部352とを備えている。
【0125】
また、交通情報生成システム310の交通情報生成装置316は、情報受信部30と、情報受信部30によって受信した渋滞待ち時間情報を収集して、渋滞時間データベース40に格納する情報収集部354と、渋滞時間データベース40と、データ検索部42と、出発時刻算出部44と、情報送信部46とを備えている。
【0126】
車載器312の無線通信部24は、渋滞時間算出部38によって算出された渋滞待ち時間と、対応する出発時刻、出発地、目的地、及び到着時刻とを含む渋滞待ち時間情報を、無線通信により送信する。
【0127】
送信情報生成部350は、操作部26によって入力された出発地、目的地、及び現在の時刻である出発時刻を含む走行設定情報を生成する。走行設定情報は、無線通信部24によって、送信される。
【0128】
出発時刻取得部352は、無線通信部24によって受信した交通情報から、送信した走行設定情報に対応する、渋滞を低減するための出発時刻を取得して、表示装置224に表示させる。
【0129】
交通情報生成装置316の情報収集部354は、情報受信部30によって受信した渋滞待ち時間情報に基づいて、渋滞待ち時間情報に含まれる出発時刻、出発地、及び目的地と対応させて、渋滞待ち時間情報に含まれる渋滞待ち時間を、渋滞時間データベース40に記憶する。
【0130】
次に、第3の実施の形態に係る交通情報生成システム310の動作について説明する。まず、車載器312を搭載した車両において、ドライバが走行開始するときに、出発地(現在地)及び出発時刻(現在時刻)を含む走行開始情報が生成され、車両走行データ記憶部33に記憶される。そして、走行中の車両の車載器312において、所定時間間隔で、走行情報が生成され、車両走行データ記憶部33に記憶される。
【0131】
そして、車載器312において、渋滞待ち時間送信処理ルーチンが実行される。
【0132】
まず、車両走行データ記憶部33から、対象の走行開始情報を取得して、走行開始情報の出発地及び出発時刻を記録する。また、対象の走行開始情報に対応して収集された走行情報のうちの最後の走行情報に基づいて、目的地を設定する。
【0133】
そして、対象の走行開始情報に対応して収集された走行情報に基づいて、渋滞待ち時間を算出し、記録した走行開始情報の出発地及び出発時刻、算出された渋滞待ち時間、上記で設定した目的地、及び対応して収集された走行情報のうちの最後の走行情報の通過時刻である到着時刻とを含む渋滞待ち時間情報を生成し、インターネット18を介して交通情報生成装置316へ送信して、渋滞待ち時間送信処理ルーチンを終了する。
【0134】
なお、渋滞待ち時間の算出処理は、上記図6の渋滞待ち時間算出処理ルーチンと同様の処理によって実現される。
【0135】
交通情報生成装置316では、インターネット18を介して受信した渋滞待ち時間情報を収集し、取得した渋滞待ち時間情報を、渋滞時間データベース40に格納する。
【0136】
また、車載器312を搭載した車両において、ドライバが操作部26によって、出発地(現在地)及び目的地を設定すると、車載器312によって、出発地、目的地、及び出発時刻(現在時刻)を含む走行設定情報が生成され、無線通信で基地局14に対して送信される。
【0137】
このとき、交通情報生成装置316は、インターネット18を介して走行設定情報を受信すると、上記図8に示す出発時刻指示処理ルーチンが実行される。これによって、算出された出発時刻を含む交通情報が生成されて、インターネット18を介して車載器312へ送信される。
【0138】
そして、車載器312では、送信した走行設定情報に対応する交通情報を受信すると、受信した交通情報から、出発時刻を取得して、取得した出発時刻に出発するように、ディスプレイ(図示省略)に表示して、渋滞を低減するための出発時刻をドライバに知らせる。
【0139】
次に、第4の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0140】
第4の実施の形態では、信号待ちがある場合の渋滞なし旅行時間を算出している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0141】
図14に示すように、第4の実施の形態に係る交通情報生成システム410は、複数の車載器12と、複数の基地局14と、交通情報生成装置16とを備えている。
【0142】
各車載器12は、無線通信部24によって、走行情報を、無線通信により所定時間間隔で送信する。また、車載器12は、走行開始するときに、走行開始情報を、無線通信部24によって送信する。
【0143】
交通情報生成装置16は、情報受信部30と、情報収集部32と、車両走行データ記憶部33と、走行環境データベース34と、走行環境収集部36と、収集した走行情報、走行環境情報に基づいて、走行開始情報の出発地から、最後の走行情報が示す位置である目的地までの、渋滞なし旅行時間を算出して、後述する渋滞なし旅行時間データベース440に格納する渋滞なし旅行時間算出部438と、出発時刻、出発地、及び目的地に対応させて、算出された渋滞なし旅行時間を記憶する渋滞なし旅行時間データベース440と、を備えている。
【0144】
次に、渋滞なし旅行時間を算出する原理について説明する。
【0145】
まず、渋滞なし旅行時間は、以下のように定義できる。
【0146】
渋滞なし旅行時間=信号待ちがない場合の渋滞なしの旅行時間+信号待ち時間
【0147】
本実施の形態では、車両が走行したリンク毎に、渋滞なしリンク旅行時間を以下のように算出する。
【0148】
まず、対象リンクについて収集された走行情報に基づいて、対象リンクの上流部分における車速Vを取得し、車速Vと、対象リンクのリンク長Lとに基づいて、信号待ちなしの場合の渋滞なしリンク旅行時間Tnn(=L/V)を算出する。
【0149】
そして、第1の実施の形態と同様に、リンク下流の交差点に存在する信号による信号待ち時間の期待値を算出し、信号待ちなしの渋滞なしリンク旅行時間Tnn及び信号待ち時間の期待値Tswの和を、渋滞なしリンク旅行時間として算出する。
【0150】
最後に、リンク毎の渋滞なしリンク旅行時間の合計が、目的地までの渋滞なし旅行時間として算出される。
【0151】
以上説明したように、渋滞なし旅行時間算出部438は、車載器12から受信した走行開始情報の出発地から、最後の走行情報が示す位置である目的地までの各リンクについて、渋滞なしリンク旅行時間を算出し、渋滞なしリンク旅行時間の合計値を、出発地から目的地までの渋滞なし旅行時間として算出する。また、渋滞なし旅行時間算出部438は、走行開始情報の出発時刻及び出発地、並びに最後の走行情報が示す位置である目的地と対応させて、算出した渋滞なし旅行時間を、渋滞なし旅行時間データベース440に記憶する。
【0152】
次に、第4の実施の形態に係る交通情報生成システム410の動作について説明する。まず、車載器12を搭載した車両において、ドライバが走行開始するときに、車載器12によって、出発地(現在地)及び出発時刻(現在時刻)を含む走行開始情報が生成され、無線通信で基地局14に対して送信される。そして、走行中の車両の車載器12において、所定時間間隔で、GPSセンサ20によって計測した自車位置情報、車速センサ22によって計測した車速情報、計時部(図示省略)により計測した通過時刻、及び車両IDを含む走行情報が生成され、無線通信で基地局14に対して送信される。走行情報は、目的地に到着するまで生成されて送信される。
【0153】
このとき、交通情報生成装置416では、インターネット18を介して受信した走行開始情報を取得し、車両走行データ記憶部33に記憶する。また、交通情報生成装置416では、インターネット18を介して受信した走行情報を収集し、取得した走行情報の走行位置を、予め用意された道路地図データと照合して、道路地図上の走行位置に変換して、走行情報を、車両走行データ記憶部33に格納する。
【0154】
そして、交通情報生成装置416において、図15に示す渋滞なし旅行時間記録処理ルーチンが実行される。なお、以下では、ある1つの走行開始情報に対応する渋滞なし旅行時間を計算する場合について説明する。また、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して説明を省略する。
【0155】
まず、ステップ100において、対象の走行開始情報を取得して、走行開始情報の出発地及び出発時刻を記録する。また、ステップ102において、対応して収集された走行情報のうちの最後の走行情報に基づいて、目的地を設定する。
【0156】
そして、ステップ450において、対象の走行開始情報に対応して収集された走行情報に基づいて、渋滞なし旅行時間を算出し、ステップ452において、上記ステップ100で記録した走行開始情報の出発地及び出発時刻、上記ステップ450で算出された渋滞なし旅行時間、上記ステップ102で設定した目的地、及び対応して収集された走行情報のうちの最後の走行情報の通過時刻である到着時刻を対応させて、渋滞なし旅行時間データベース440に記録して、渋滞なし旅行時間記録処理ルーチンを終了する。
【0157】
上記ステップ450は、図16に示す渋滞なし旅行時間算出処理ルーチンによって実現される。
【0158】
まず、ステップ120において、収集した走行情報から得られる、対象車両が走行した、出発地から目的地までの各リンクを識別するためのリンク番号Lnを、初期値0に設定する。そして、ステップ460において、渋滞なしリンク旅行時間の合計値Tを初期値0に設定する。
【0159】
次のステップ124では、対象リンクLnに対して収集された走行情報を、車両走行データ記憶部33から取得し、ステップ126において、対象リンクに対する走行環境情報を、走行環境データベース34から取得する。
【0160】
そして、ステップ130において、対象リンクの上流部分に対応する走行情報から得られるリンク上流の車速と、対象リンクの走行環境情報から得られるリンク長とに基づいて、信号待ちなしの場合における渋滞なしリンク旅行時間を算出する。
【0161】
そして、ステップ132において、対象リンクの下流の交差点で右折し、かつ、リンク上流速度が、設定速度(例えば、自由走行時の速度の1/2)未満であるかを判定する。対象リンクの下流の交差点で直進又は左折する場合、あるいは、対象リンクの下流の交差点で右折し、かつ、リンク上流速度が、設定速度以上である場合には、ステップ134において、赤時間だけ信号待ちする場合の信号待ち時間の期待値を算出して、ステップ462へ移行する。一方、対象リンクの下流の交差点で右折し、かつ、リンク上流速度が、設定速度未満である場合には、ステップ136において、赤時間及び青時間だけ信号待ちする場合の信号待ち時間の期待値を算出して、ステップ462へ移行する。
【0162】
ステップ462では、上記ステップ130で算出された渋滞なしリンク旅行時間と、上記ステップ134又は136で算出された信号待ち時間の期待値との和を算出して、信号待ちがある場合の渋滞なしリンク旅行時間とし、渋滞なしリンク旅行時間の合計値Tに加算して、ステップ144へ移行する。
【0163】
ステップ144では、対象リンクが、設定された目的地に到達するか否かを判定し、対象リンクが、設定された目的地に到達していない場合には、ステップ146で、リンク番号Lnをインクリメントして、上記ステップ124へ戻り、次のリンクについて、上記の処理を行う。一方、対象リンクが、設定された目的地に到達する場合には、渋滞なしリンク旅行時間の合計値Tが、出発地から目的地までの渋滞なし旅行時間として、渋滞なし旅行時間算出処理ルーチンを終了する。
【0164】
以上説明したように、第4の実施の形態に係る交通情報生成システムによれば、車両が走行したリンク毎に、信号待ちがない場合の渋滞なしのリンク旅行時間を算出し、信号待ち時間の期待値を算出して、車両が走行したリンク毎に、渋滞なしのリンク旅行時間を算出することにより、出発地から目的地までの渋滞なし旅行時間を精度良く算出することができる。
【0165】
また、交差点の折方向及びリンク上流の車速に応じて、信号待ち時間の期待値の算出方法を変えることにより、信号待ち時間の期待値を精度良く算出することができ、渋滞なし旅行時間を更に精度良く算出することができる。
【0166】
なお、上記の実施の形態において、上記で説明した第2の実施の形態と同様に、車載器内で、渋滞なし旅行時間の算出を行うように構成してもよい。また、上記で説明した第3の実施の形態と同様に、車載器内で、渋滞なし旅行時間の算出を行い、交通情報センター側で、車載器から送信された渋滞なし旅行時間を収集するようにしてもよい。
【0167】
また、上記の第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、出発時刻算出部44によって、渋滞時間データベース40から取得した出発時刻を、取得した渋滞待ち時間だけ遅らせた時刻を、渋滞を低減するための出発時刻として算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、渋滞時間データベース40から取得した渋滞待ち時間と実際の所要時間から得られる渋滞なしの所要時間だけ、ドライバから入力された目的地到着時刻を早めた時刻を、渋滞を低減するための出発時刻として算出してもよい。この場合には、渋滞時間データベース40に、出発地、目的地、到着時刻に対応させて、算出された渋滞待ち時間を記憶し、データ検索部42によって、ドライバから入力された出発地、目標到着時刻、及び目的地に対応するデータを、渋滞時間データベース40から検索するようにすればよい。
【0168】
また、上記の第1の実施の形態〜第4の実施の形態では、出発地から目的地までの走行情報が収集された後に、渋滞待ち時間や渋滞なし旅行時間を算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、リンクを通過する毎に、リアルタイムに、渋滞待ち時間や渋滞なしリンク旅行時間を計算するようにしてもよい。この場合には、車載器で生成される走行情報の走行位置に基づいて、リンクを通過したか否かを判定し、リンクを通過する毎に、通過時刻を記録するようにしてもよい。また、車載器で生成される走行情報の走行位置に基づいて、リンクに流入する毎に、リンク流入時刻を記録するようにしてもよい。
【0169】
また、走行環境データベースには、各信号の信号データが記憶されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、収集した走行情報から、各信号の信号データを求めるようにしてもよい。また、信号データの平均値を、各信号の信号データとして設定しておいてもよい。また、折方向に関わらず、信号サイクル時間及び赤時間から、信号待ちの期待値を算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0170】
10、310、410 交通情報生成システム
12、212、312 車載器
16、316、416 交通情報生成装置
20 GPSセンサ
22 車速センサ
32、232、354 情報収集部
34 走行環境データベース
36 走行環境収集部
38 渋滞時間算出部
40 渋滞時間データベース
42、242 データ検索部
44 出発時刻算出部
223、323 コンピュータ
438 旅行時間算出部
440 旅行時間データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号位置を含む道路ネットワークデータを記憶した道路情報記憶手段と、
車両について計測された走行位置及び車速を収集する収集手段と、
前記道路ネットワークデータにおける、前記車両が走行したリンク毎に、前記収集された走行位置に基づいて、実際のリンク旅行時間を計測する計測手段と、
前記車両が走行したリンク毎に、前記収集された車速のうちのリンク上流の車速に基づいて、渋滞なしのリンク旅行時間を算出する渋滞なし時間算出手段と、
前記車両が走行したリンク毎に、リンク下流の交差点に存在する信号による信号待ち時間の期待値を取得する信号待ち時間取得手段と、
前記車両が走行したリンク毎に、前記計測された前記実際のリンク旅行時間、前記算出された前記渋滞なしのリンク旅行時間、及び前記取得された前記信号待ち時間の期待値に基づいて、渋滞待ち時間を算出する渋滞時間算出手段と、
を含む渋滞時間算出装置。
【請求項2】
前記道路情報記憶手段は、前記道路ネットワークデータと、各信号のサイクル長及び赤時間を含む信号情報とを記憶し、
前記信号待ち時間取得手段は、前記車両が走行したリンク毎に、リンク下流の交差点に存在する信号のサイクル長及び赤時間に基づいて、前記信号待ち時間の期待値を算出して取得する請求項1記載の渋滞時間算出装置。
【請求項3】
前記道路情報記憶手段は、前記道路ネットワークデータと、各信号のサイクル長、赤時間、及び青時間を含む信号情報とを記憶し、
前記信号待ち時間取得手段は、リンク下流の交差点で車両が右折しない場合、又はリンク下流の交差点で車両が右折し、かつ、リンク上流の車速が所定値以上である場合、赤時間の信号待ちに対応する信号待ち時間の期待値を算出し、リンク下流の交差点で車両が右折し、かつ、リンク上流の車速が所定値未満である場合、赤時間及び青時間の信号待ちに対応する信号待ち時間の期待値を算出する請求項2記載の渋滞時間算出装置。
【請求項4】
前記渋滞時間算出手段は、前記車両の出発地から目的地までの前記車両が走行したリンク毎に、前記渋滞待ち時間を算出し、前記出発地から前記目的地までの渋滞待ち時間として、渋滞待ち時間の合計を算出する請求項1〜請求項3の何れか1項記載の渋滞時間算出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の渋滞時間算出装置によって算出された、前記車両が出発時刻に出発したときの、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を、前記出発時刻、前記出発地、及び前記目的地と対応させて記憶した記憶手段と、
ドライバにより入力された前記出発時刻、前記出発地、及び前記目的地に対応する前記渋滞待ち時間、及び該渋滞待ち時間に対応する出発時刻を前記記憶手段から取得する渋滞時間取得手段と、
前記取得した前記出発時刻から、前記取得した前記渋滞待ち時間だけ遅らせた時刻を、渋滞を低減させるための出発時刻として算出する出発時刻算出手段と、
を含む出発時刻算出装置。
【請求項6】
請求項4に記載の渋滞時間算出装置によって算出された、前記車両が出発時刻に出発したときの、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を、前記出発時刻、前記出発地、前記目的地、及び前記到着時刻と対応させて記憶した記憶手段と、
ドライバにより入力された前記出発地、目的地到着目標時刻、及び前記目的地に対応する前記渋滞待ち時間を前記記憶手段から取得する渋滞時間取得手段と、
前記目的地到着目標時刻から、前記取得した前記渋滞待ち時間から得られる渋滞なしの所要時間だけ早めた時刻を、渋滞を低減させるための出発時刻として算出する出発時刻算出手段と、
を含む出発時刻算出装置。
【請求項7】
信号位置を含む道路ネットワークデータを記憶した道路情報記憶手段と、
車両について計測された走行位置及び車速を収集する収集手段と、
前記道路ネットワークデータにおける、前記車両が走行したリンク毎に、前記収集された車速のうちのリンク上流の車速に基づいて、信号待ちがない場合の渋滞なしのリンク旅行時間を算出する第1渋滞なし時間算出手段と、
前記車両が走行したリンク毎に、リンク下流の交差点に存在する信号による信号待ち時間の期待値を取得する信号待ち時間取得手段と、
前記車両が走行したリンク毎に、前記算出された前記渋滞なしのリンク旅行時間及び前記取得された前記信号待ち時間の期待値に基づいて、渋滞なしのリンク旅行時間を算出する第2渋滞なし時間算出手段と、
を含む渋滞なし時間算出装置。
【請求項8】
信号位置を含む道路ネットワークデータを記憶した道路情報記憶手段を含むコンピュータを、
車両について計測された走行位置及び車速を収集する収集手段、
前記道路ネットワークデータにおける、前記車両が走行したリンク毎に、前記収集された走行位置に基づいて、実際のリンク旅行時間を計測する計測手段、
前記車両が走行したリンク毎に、前記収集された車速のうちのリンク上流の車速に基づいて、渋滞なしのリンク旅行時間を算出する渋滞なし時間算出手段、
前記車両が走行したリンク毎に、リンク下流の交差点に存在する信号による信号待ち時間の期待値を取得する信号待ち時間取得手段、及び
前記車両が走行したリンク毎に、前記計測された前記実際のリンク旅行時間、前記算出された前記渋滞なしのリンク旅行時間、及び前記取得された前記信号待ち時間の期待値に基づいて、渋滞待ち時間を算出する渋滞時間算出手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項4に記載の渋滞時間算出装置によって算出された、前記車両が出発時刻に出発したときの、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を、前記出発時刻、前記出発地、及び前記目的地と対応させて記憶した記憶手段を含むコンピュータを、
ドライバにより入力された前記出発時刻、前記出発地、及び前記目的地に対応する前記渋滞待ち時間、及び該渋滞待ち時間に対応する出発時刻を前記記憶手段から取得する渋滞時間取得手段、及び
前記取得した前記出発時刻から、前記取得した前記渋滞待ち時間だけ遅らせた時刻を、渋滞を低減させるための出発時刻として算出する出発時刻算出手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項4に記載の渋滞時間算出装置によって算出された、前記車両が出発時刻に出発したときの、出発地から目的地までの渋滞待ち時間を、前記出発時刻、前記出発地、前記目的地、及び前記到着時刻と対応させて記憶手段を含むコンピュータを、
ドライバにより入力された前記出発地、目的地到着目標時刻、及び前記目的地に対応する前記渋滞待ち時間を前記記憶手段から取得する渋滞時間取得手段、及び
前記目的地到着目標時刻から、前記取得した前記渋滞待ち時間から得られる渋滞なしの所要時間だけ早めた時刻を、渋滞を低減させるための出発時刻として算出する出発時刻算出手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
信号位置を含む道路ネットワークデータを記憶した道路情報記憶手段を含むコンピュータを、
車両について計測された走行位置及び車速を収集する収集手段、
前記道路ネットワークデータにおける、前記車両が走行したリンク毎に、前記収集された車速のうちのリンク上流の車速に基づいて、信号待ちがない場合の渋滞なしのリンク旅行時間を算出する第1渋滞なし時間算出手段、
前記車両が走行したリンク毎に、リンク下流の交差点に存在する信号による信号待ち時間の期待値を取得する信号待ち時間取得手段、及び
前記車両が走行したリンク毎に、前記算出された前記渋滞なしのリンク旅行時間及び前記取得された前記信号待ち時間の期待値に基づいて、渋滞なしのリンク旅行時間を算出する第2渋滞なし時間算出手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−196786(P2011−196786A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62976(P2010−62976)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】