説明

減圧をかけるためのシステムおよび方法

【課題】組織治療システムに関し、特に、減圧をかけるためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】減圧治療システム100は、ユーザの足の下方に配置可能で、膨張位置と圧縮位置との間で可動な圧縮性チャンバを含む。圧縮性チャンバは入口および出口を有する。入口弁は、圧縮性チャンバ内の流体が入口から流出するのを阻止するために入口と連通し、出口弁は、流体が出口を通じて圧縮性チャンバに流入するのを阻止するために出口と連通する。付勢手段は、圧縮性チャンバを膨張位置に向けて付勢するために圧縮性チャンバ内に配置され、マニホールドは、組織部位108に配置可能で、圧縮性チャンバの入口と連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に、組織治療システムに関し、特に、減圧をかけるためのシステムおよび方法に関するものである。
【0002】
本出願は、2008年3月13日に出願された米国仮出願第61/036,391号の利益を主張するものであり、この米国仮出願は、引用により本明細書に援用されるものである。
【背景技術】
【0003】
臨床研究および実践は、組織部位の近傍に減圧を付与することが組織部位における新たな組織の成長を拡大および促進することを示している。この現象の応用は多数あるが、減圧の適用は、創傷の治療において特に成果を上げている。この治療(医学界では、“負圧創傷療法”、“減圧療法”あるいは“吸引療法”としばしば呼ばれる。)は、多くの恩恵を与え、その中には、より速い治癒および肉芽組織形成の増加が含まれる。一般的には、多孔質パッドまたはその他のマニホールド装置を介して組織に減圧が与えられる。多孔質パッドは、減圧を組織に分配するとともに、組織から引き出した流体を導くことができる気泡または気孔を含んでいる。多孔質パッドは、多くの場合、治療を促進するその他の構成要素を有するドレッシング内に組み込まれる。
【0004】
減圧治療システムは、組織部位に送達される減圧を生成する動力ポンプのような減圧源を含むことができる。しかしながら、そのような減圧源は場所を取り、ユーザにとって邪魔になることが多く、足治療システムと併せて使用するように適合させるのは容易ではない。
【発明の概要】
【0005】
既存の減圧治療システムに存在する問題点は、本明細書に記載の例示的な実施形態のシステムおよび方法によって解決される。例示的な一実施形態においては、減圧治療システムが、ユーザの足の下方に配置される圧縮性ブラダー(空気袋)を含む。この圧縮性ブラダーは、チャンバ壁に実質的に包囲されたチャンバを含むとともに、減圧を生成するために、膨張位置と圧縮位置との間で可動となっている。弾性部材は、圧縮性ブラダーを膨張位置に向けて付勢するために、チャンバ壁と動作可能に関連している。マニホールドは、ユーザの組織部位に配置されて、圧縮性ブラダーのチャンバと連通する。
【0006】
別の実施形態においては、減圧治療システムが提供される。この減圧治療システムは、ユーザの足の下方に配置可能であって、膨張位置と圧縮位置との間で動作することができる圧縮性チャンバを含む。この圧縮性チャンバは、入口および出口を有する。入口弁は、圧縮性チャンバ内の流体が入口から流出するのを阻止するために、入口と連通し、出口弁は、流体が出口を通じて圧縮性チャンバに流入するのを阻止するために、出口と連通する。付勢手段は、圧縮性チャンバを膨張位置に向けて付勢するために圧縮性チャンバ内に配置され、マニホールドは、組織部位に配置可能であり、圧縮性チャンバの入口と連通する。
【0007】
さらに別の実施形態においては、減圧治療システムが提供され、この減圧治療システムが、ユーザの足の下方に配置可能な圧縮性ブラダーを含む。この圧縮性ブラダーは、チャンバを含み、膨張位置と圧縮位置との間で動作することができる。上記システムは、圧縮性ブラダーを膨張位置に向けて付勢するためにチャンバ内に配置される付勢部材をさらに含む。第1可変容量キャビティおよび第2可変容量キャビティを有する圧力調整器が提供される。第1可変容量キャビティは、圧縮性ブラダーのチャンバに流体流通可能に連結され、マニホールドは、組織部位に配置可能であって、圧力調整器の第2可変容量キャビティと連通する。
【0008】
さらに別の実施形態においては、ユーザにより使用される減圧組織治療システムに減圧を提供するための方法が提供される。この方法は、ユーザの足で圧縮性ブラダーを圧縮するステップと、圧縮性ブラダーが膨張するときに、圧縮性ブラダーのチャンバ内に減圧を生成するステップとを含む。
【0009】
例示的な実施形態のその他の目的、特徴および利点は、以下の図面および詳細な説明を参照することによって明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、例示的な実施形態に係る圧縮性ブラダーシステムを有する減圧治療システムの概略を示している。
【図2】図2は、図1の圧縮性ブラダーシステムの斜視図を示している。
【図3A】図3Aは、図2の3−3線に沿う圧縮性ブラダーシステムの側断面図を示すもので、当該ブラダーシステムが膨張状態で示されている。
【図3B】図3Bは、図2の3−3線に沿う圧縮性ブラダーシステムの側断面図を示すもので、当該ブラダーシステムが圧縮状態で示されている。
【図4】図4は、例示的な実施形態に係る圧縮性ブラダーシステムおよび圧力調整器の概略を示している。
【図5】図5は、例示的な実施形態に係る圧縮性ブラダーシステムを有する矯正用の履き物を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の幾つかの例示的な実施形態の詳細な説明においては、その一部を構成する添付図面に対して参照がなされ、その図面においては、本発明が実施される具体的な好ましい実施形態が例示を目的に示されている。それらの実施形態は、当業者が本発明を実施できる程度に十分詳細に記載されており、また、その他の実施形態が利用可能であるとともに、本発明の趣旨および範囲を逸脱しない範囲で、論理構造的、機械的、電気的および化学的な変更が可能であることを理解されたい。本明細書に記載の実施形態を当業者が実施可能とするのに必要のない細部説明を避けるために、当業者に既知の一部の情報を説明から省略する可能性がある。したがって、以下の詳細な説明は、限定の意味で捉えるべきではなく、例示的な実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0012】
用語“reduced pressure(減圧)”は、本明細書で使用されているように、概して、治療を受ける組織部位の周囲圧力未満の圧力のことをいう。多くの場合、この減圧は、患者がいる位置の大気圧未満となるであろう。若しくは、減圧は、組織部位における組織に付随する静水圧未満であってもよい。“真空”および“負圧”といった用語が組織に加えられる減圧を説明するのに使用されるかもしれないが、組織部位に加えられる実際の減圧は、完全真空に通常付随する圧力よりも遙かに低くなる可能性がある。減圧は最初に、チューブと組織部位の領域内に流体の流れを生成する可能性がある。組織部位周囲の静水圧が所望の減圧に接近したとき、流体の流れが弱まり、その後、減圧が維持される。特に表示がなければ、本明細書で述べる圧力の値は、ゲージ圧である。同様に、減圧の増加に対する言及は、一般的には絶対圧の低下のことを指し、一方、減圧の低下は、一般的には絶対圧の増加のことを指している。
【0013】
用語“tissue site(組織部位)”は、本明細書で使用されているように、任意の組織上または組織内の創傷または異常のことをいい、それには、骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱または靱帯が含まれるが、それらに限定されるものではない。用語“tissue site(組織部位)”は、さらに、必ずしも創傷または異常の無い任意の組織の領域であって、追加的な組織の成長を追加または促進することが望ましい代わりの領域のことをいうものであってもよい。例えば、減圧組織治療は、採取して別の組織位置に移植する追加的組織を成長させるために、ある特定の組織領域に使用されるものであってもよい。
【0014】
図1を参照すると、例示的な実施形態に係る減圧治療システム100は、患者の組織部位108に配置された減圧ドレッシング104を含んでいる。減圧ドレッシング104は、減圧源134によって供給される減圧を分配するために組織部位108に隣接または接触して配置される分配マニホールド122を含むことができる。分配マニホールド122は、組織部位108に減圧を分配することができる、生体吸収性または非生体吸収性の任意の材料とすることができる。一実施形態では、分配マニホールド122が、多孔質発泡体であり、流路として機能する複数の相互に接続された気泡または細孔を含む。多孔質発泡体は、テキサス州サンアントニオ所在のKinetic Concepts,Inc.により製造されるGranuFoam(登録商標)ドレッシングのような、ポリウレタンの連続気泡構造の網状発泡体とすることができる。連続気泡発泡体が使用される場合、気孔率および細孔径が変化する可能性があるが、一実施形態においては、連続気泡発泡体に付随する細孔径は約400乃至600ミクロンである。流路は、連続気泡を有する分配マニホールド122の部分の全体にわたって流体流通を可能にする。細孔および流路は、形状と寸法が均一であってもよいし、形状と寸法にパターン化されたまたはランダムなバラツキがあってもよい。マニホールドの細孔の形状および寸法のバラツキは流路のバラツキをもたらし、そのような特性は、分配マニホールド122を通る流体の流量特性を変えるために使用することができる。
【0015】
また、分配マニホールド122は、減圧治療システム100の使用後に患者の体から取り除く必要のない生体吸収性材料から構成することもできる。適当な生体吸収性材料には、ポリ乳酸(PLA)およびポリグリコール酸(PGA)のポリマーブレンドを含むことができるが、それに限定されるものではない。また、ポリマーブレンドには、ポリカーボネート、ポリフマル酸エステル、ポリヒドロキシブタレート(polyhydroxybutarates)、ポリヒドロキシ吉草酸、多糖、ポリアミノ酸およびカプララクトンを含むことができるが、それらに限定されるものではない。さらに、分配マニホールド122は、新しい細胞成長のための足場としての機能を果たすことができ、あるいは、足場材料は、細胞成長を促進するために分配マニホールド122とともに使用することができる。足場は、細胞の成長または組織の形成を増進または促進するのに使用される、細胞成長のためのテンプレートを提供する三次元多孔質構造のような物質または構造体である。足場材料の実施例には、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、珊瑚のヒドロキシアパタイト、炭酸塩または同種移植処理材料が含まれる。一実施例においては、足場材料が高いボイド率(すなわち、高い空気含量)を有している。
【0016】
分配マニホールド122は、管路112によって減圧源134に流体流通可能に接続される。管路112は、分配マニホールド122に隣接して配置されるチューブアダプタ118を通じて、分配マニホールド122との間で流体が流通可能となっている。ドレープ128は、組織部位108における減圧を維持するために、分配マニホールド122の上に置いて、組織部位108の外縁の周囲で密封することができる。
【0017】
図1に示す実施形態においては、減圧源134が、組織部位に減圧を提供するためにユーザによって手動で作動される圧縮性ブラダーシステム(bladder system)138となっている。以下に、図2および図3を参照して、圧縮性ブラダーシステム138をより詳細に説明する。減圧ドレッシング104および組織部位108への減圧の送達により、組織部位108からの滲出液の排水を維持し、組織部位108を囲む組織への血流を増加させ、組織部位108でマイクロストレイン(microstrain)を形成することにより、新しい組織の成長が促進される。
【0018】
引き続き図1を参照すると、キャニスタ142は、組織部位108から引き出された滲出液およびその他の流体を回収するために、減圧源134と組織部位108との間に流体流通可能に接続することができる。キャニスタ142は、管路112に流体流通可能に接続される入口と、減圧源134に流体流通可能に接続される出口とを含む。例えば、疎水性フィルターのような液体−空気セパレータ(図示省略)は、出口を介してキャニスタ142から液体が流出するのを防止するために、キャニスタ142の出口と動作可能に関連することができる。液体−空気セパレータは、滲出液およびその他の生物学上汚染された物質によって減圧源134が汚染されるのを防止する。キャニスタ142の代替として、あるいはキャニスタ142に加えて、減圧治療システム100は、組織部位またはその近傍で滲出液およびその他の流体を貯蔵することができる追加のドレッシング要素を組織部位108に備えることができる。例えば、組織部位108に位置する減圧ドレッシング104は、分配マニホールド122に加えて、減圧ドレッシング104内に液体の貯蔵を可能にする1またはそれ以上の吸収材層を含むことができる。そのようなドレッシングの液体の貯蔵能力は、キャニスタ142の代わりに、またはキャニスタ142に加えて使用することができる。
【0019】
圧力調整器148は、キャニスタ142および組織部位108に送達される圧力の量を調整および制御するために、圧縮性ブラダーシステム138とキャニスタ142との間に流体流通可能に接続することができる。圧力調整器は、減圧または正圧を調整または制御することができる任意のデバイスとすることができる。一実施形態においては、圧力調整器148が、組織部位108に送達される減圧が閾値を超過しないようにするために、提供される。換言すれば、圧力調整器は、組織部位108に供給される絶対圧が低くなり過ぎないようにする。通気口(図示省略)は、必要よりも多くの減圧が圧縮性ブラダーシステム138によって提供される場合に、圧力調整器内の絶対圧を上げるために、圧力調整器148に付随させることができる。通気口は、圧力調整器148内の絶対圧が予め設定された値未満に低下するときに、圧力調整器内に外気が流入するのを許容することにより、機能することができる。
【0020】
キャニスタ142および圧力調整器148に加えて、減圧治療システム100は、センサ、演算処理装置、警報インジケータ、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示装置、および組織部位108への減圧治療の適用をより容易にするユーザインターフェースも含むことができる。一実施例においては、センサ(図示省略)が、減圧源134によって生成される元の圧力を測定するために、減圧源134またはその近傍に配置することができる。センサは、減圧源134によって送達される減圧を監視および制御する演算処理装置と通信することができる。
【0021】
図2、図3Aおよび図3Bを参照すると、圧縮性ブラダーシステム138は、一対の圧縮性ブラダー210を含んでいる。各圧縮性ブラダー210は、チャンバ218を実質的に囲むチャンバ壁214を含む。圧縮性ブラダー210は、膨張位置(図3Aを参照)と圧縮位置(図3Bを参照)との間で作動することができる。付勢部材224または弾力部材は、圧縮性ブラダー210を膨張位置へと付勢するために、チャンバ218内に配置されている。一実施形態では、付勢部材224は、例えば、分配マニホールド122とともに使用されるものと類似の網状のポリウレタンフォームのような連続気泡発泡体である。別の実施形態では、付勢部材は、バネ、スポンジ、あるいは圧縮性ブラダー210の圧縮に続いて、膨張位置に圧縮性ブラダー210を戻すことができるその他の任意の種類の弾性材料または構造体とすることができる。さらに別の実施形態では、付勢部材224は、チャンバ218の外部に配置することができ、その場合も、圧縮性ブラダー210を膨張位置へと促す付勢効果を有している。例えば、付勢部材224は、チャンバ壁214に接着、溶着あるいはそれ以外の固着または一体化されて、チャンバ壁214を膨張位置へと弾性復帰させる弾性材料を含むことができる。一実施形態では、付勢部材224は、追加の構造体、構成要素または材料のないチャンバ壁214を含むことができる。より具体的に、チャンバ壁214が十分に弾性的な材料から作られる場合には、チャンバ壁214が、圧縮力が取り除かれた後に、圧縮性ブラダー210を膨張位置に戻そうとすると考えられる。
【0022】
各圧縮性ブラダー210のチャンバ218は、入口230および出口234を含む。入口弁240は、チャンバ218から流出する流体が入口230を通過するのを防ぐために、入口230と連通している。出口弁244は、流体が出口234を通じてチャンバ218内に入るのを防ぐために、出口234と連通している。図2に示されるように、入口弁240および出口弁244は、入口230および出口234に流体流通可能に連結された管路上にそれぞれ配置することができる。代替的には、入口弁240および出口弁244は、圧縮性ブラダー210の入口および出口ポートにより直接的に付随するものであっても、あるいはそれらポート内に配置されるものであってもよい。入口弁240および出口弁244は、流体流通を選択的に阻止または防止する特定の種類のバルブであってよいが、一実施形態においては、それら弁240および244を、一方向の流体流通を許容するが別方向の流体流通を阻止する逆止め弁のような一方向弁とすることができる。圧縮性ブラダー210とともに使用することができる逆止め弁の一例は、チャンバ壁214の開口部上に配置されるフラッパを含むフラッパタイプの弁である。開口部の一方の側における流体圧力が高まると、フラッパが開放位置に移動して、開口部を通じた流体流通を許容する。開口部の他方の側における流体圧力が上昇すると、フラッパが開口部に対して移動して、流体流通を阻止する。
【0023】
さらに、図2、図3Aおよび図3Bに加えて、図1も参照すると、操作中、圧縮性ブラダー210はユーザの足310の下方に位置する。一方の圧縮性ブラダー210は、足310の踵部分314の下方に位置することが好ましく、別の圧縮性ブラダー210は、足310の前側部分318の下方に位置することが好ましい。ユーザの重量がどちらかの圧縮性ブラダー210に加わると、その圧縮性ブラダー210が、圧縮位置(図3Bを参照)へと圧縮され、チャンバ218内の気体(例えば、空気)が、出口234および出口弁244を通って放出される。チャンバ218から放出される気体は、入口弁240の存在により、入口230から出るのを阻止される。圧縮されていた圧縮性ブラダー210からユーザの重量が取り除かれると、圧縮性ブラダー210が、膨張位置へと動き始める。圧縮性ブラダー210の膨張位置への動作は、付勢部材224によって補助される。圧縮性ブラダー210が膨張するに連れて、チャンバ218の容積が増大し、それにより、圧縮性ブラダー210を囲む大気圧と比較して、チャンバ218内に減圧を生成する。チャンバ218内のこの減圧は、入口弁240および入口230を通じてチャンバ218内に流体を引き込む。流体は、出口弁244の存在により、出口234を通じてチャンバ218内に流入することが妨げられる。膨張中に圧縮性ブラダー210によって生成された減圧は、圧縮性ブラダー210の入口230にマニホールド122を流体流通可能に連結することにより、分配マニホールド122に伝達することができる。
【0024】
ユーザが踵部分314、その後に前側部分318に周期的に重量を加えるときに、足310の踵部分314および前側部分318の下方の圧縮性ブラダー210の位置決めを行うことにより、減圧のより安定した供給が可能になる。重量配分のそのようなレジメンは、通常のウォーキングまたはランニング動作と一致しており、圧縮性ブラダーシステム138は、ユーザがウォーキングまたはランニングしながら、減圧を生成するのに特に適している。ユーザが踵部分314に重量を分配するとき、踵部分314下方の圧縮性ブラダー210が圧縮位置へと圧縮する。ユーザの重量が前側部分318に移ると、前側部分318下方の圧縮性ブラダー210が圧縮位置へと圧縮する。前側部分318への体重移動は、踵部分314近傍における圧縮性ブラダー210上の圧縮力を取り除き、それにより、踵部分314下方の圧縮性ブラダー210が膨張して減圧を生成するのが可能になる。ユーザの重量が踵部分314に戻ると、前側部分318の下方の圧縮性ブラダー210が膨張して減圧を生成する。ユーザがウォーキングを継続している間、このサイクルが継続し、それにより、減圧の生成が可能になる。
【0025】
図4を参照すると、圧縮性ブラダーシステム138に類似の圧縮性ブラダーシステム408が図示されている。圧縮性ブラダーシステム138は、一対の圧縮性ブラダー410を含む。各圧縮性ブラダー410は、チャンバ418を実質的に包囲するチャンバ壁414を含む。圧縮性ブラダー410は、図3Aおよび図3Bを参照して上述したものと同様に、膨張位置と圧縮位置との間で可動となっている。付勢部材または弾力部材(図示省略)は、圧縮性ブラダー410を膨張位置に向けて付勢するために、チャンバ418内に配置されている。付勢部材は、前述した付勢部材224と構造および機能が類似している。
【0026】
各圧縮性ブラダー410のチャンバ418は、入口430および出口434を含む。入口弁440は、チャンバ418から流出する流体が入口430を通過するのを防ぐために、入口430と連通している。出口弁444は、流体が出口434を通じてチャンバ418内に入るのを防ぐために、出口434と連通している。図4に示されるように、入口弁440および出口弁444は、入口430および出口434に流体流通可能に連結された管路上にそれぞれ配置することができる。代替的には、入口弁440および出口弁444は、圧縮性ブラダー410の入口および出口ポートにより直接的に付随するものであっても、あるいはそれらポート内に配置されるものであってもよい。入口弁440および出口弁444は、本明細書内で前述した弁と構造および機能が類似している。
【0027】
図4に示す実施形態では、圧縮性ブラダーシステム408が、第1可変容量キャビティ464および第2可変容量キャビティ468を有する圧力調整器460を含む。一実施形態においては、キャビティ460,468が、共通のピストン壁472を共有し、このピストン壁が、キャビティ460,468に付随する容量を変えるべく、後退位置(図示省略)と伸張位置(図4を参照)との間で動作可能となっている。キャビティ460,468は、流体が流通しないように、仕切板476によって互いに分離されている。例示的な一実施形態では、仕切板476を、十分に弾性的な材料から形成される蛇腹とすることができる。
【0028】
キャビティ460,468の各々は、ピストン壁472が後退位置に移動するときに、キャビティ460,468内の空気またはその他の気体がキャビティ460,468から追い出されるように、出口(図示省略)および一方向弁(図示省略)を含む。ユーザは、ピストン壁に圧縮力をかけることにより、後退位置にピストン壁472を配置することができる。
【0029】
各圧縮性ブラダー410の出口434は、第1可変容量キャビティ464に流体流通可能に連結される。ピストン壁472が後退位置に位置しているときは、出口434からの正の圧力がかけられた気体が、伸張位置(図4を参照)に向けてピストン壁472を付勢することができる。ピストン壁472が伸張位置に向けて移動するに連れて、第2可変容量キャビティ468の容積が増大し、それにより、第2可変容量キャビティ468内で減圧が生成される。第2可変容量キャビティ468の膨張中に圧縮性ブラダー410および圧力調整器460によって生成された減圧は、分配マニホールド122を圧力調整器460の第2可変容量キャビティ468に流体流通可能に連結することにより、分配マニホールド122に伝達することができる。
【0030】
図5を参照すると、例示的な実施形態に係る減圧治療システム500は、本明細書に記載の圧縮性ブラダーシステムの何れかと類似なものとすることができる圧縮性ブラダーシステム512を有する履き物508を含む。一実施形態では、圧縮性ブラダーシステム512が、圧力調整器516およびキャニスタ520に流体流通可能に連結されている。キャニスタ520は、組織部位528に位置する減圧ドレッシング524に流体流通可能に連結することができる。圧縮性ブラダーシステム512および/または圧力調整器516により生成される減圧は、減圧ドレッシング524を通じて組織部位528に送達される。減圧ドレッシングは、分配マニホールド(図示省略)を含むことが望ましい。組織部位528は、履き物508内で安定した足の側部に図示されているが、その代わりに、組織部位528は、足の足底部分または足または下肢のその他の任意の部分に位置するものであってもよい。若しくは、組織部位528は、身体のその他の部位に位置するものであってもよい。
【0031】
履き物508は、オフロードするボート(offloading boat)、ギブス歩行者、神経病の歩行者、またはその他の任意の種類の矯正用または治療用の履き物であってもよい。履き物508は、糖尿病性足潰瘍およびその他の足関連の負傷および創傷を治療するために圧縮性ブラダーシステム512を装備しているときに、特によく適している。履き物508は、患者の足の損傷部位の圧力を取り除くように設計することができ、それにより、患者を歩行可能な状態のままとすることができる。患者が歩くと、前述したように圧縮性ブラダーシステム512が作動して減圧を生成する。この減圧は、減圧治療を通じた治癒を改善するために、患者の負傷または創傷に導くことができる。
【0032】
ユーザによって使用される減圧組織治療システムに減圧を提供する方法が提供される。この方法は、ユーザの足で圧縮性ブラダーを圧縮するステップと、圧縮性ブラダーが膨張するときに、圧縮性ブラダーのチャンバ内で減圧を生成するステップとを含む。圧縮性ブラダーは、本明細書に記載した圧縮性ブラダーまたは圧縮性ブラダーシステムの何れかと類似するものであってもよい。一実施形態では、上記方法は、ユーザの足で第2圧縮性ブラダーを圧縮するステップと、第2圧縮性ブラダーが膨張するときに、第2圧縮性ブラダーの第2チャンバ内で第2の減圧を生成するステップとを含む。第2の減圧は、実質的に最初の減圧と同じであっても、あるいは、それよりも高いか、低い圧力であってもよい。2つの圧縮性ブラダーが提供される場合、第1圧縮性ブラダーは足の前側部分の下方に位置して、ユーザが前側部分に重量をかけるときに圧縮される。第2圧縮性ブラダーは、足の踵部分の下方に位置して、ユーザが踵部分に重量をかけるときに圧縮される。このように、圧縮性ブラダーはともに、ウォーキング中のユーザの単一のストライドの間に圧縮および膨張する。
【0033】
本明細書に記載の圧縮性ブラダーがユーザの足の下方に位置している間、その代わりに、圧縮性ブラダーは、体の別の部位またはその他の対象物から力を加えることにより、圧縮することができる。また、2つの圧縮性ブラダーを有する圧縮性ブラダーシステムが図示されているが、単一の圧縮性ブラダーを使用することもでき、あるいは、2を上回る複数の圧縮性ブラダーを使用することもできる。例示的な一実施形態においては、複数の圧縮性ブラダーが使用されるときに、圧縮性ブラダーの各々が流体流通において独立していて、各圧縮性ブラダーが、圧縮性ブラダーの入口および出口に付随する一方向弁またはデバイスを含む。
【0034】
本明細書に記載の圧力調整器は、圧縮性ブラダーシステムによって供給される圧力を調整または制御する機能を果たすことができる。圧力調整器460に関して、圧力調整器は、さらに、正圧が圧力調整器に供給されるときに、組織部位に減圧を提供するために使用することもできる。圧力調整器の使用はある実施形態では好ましいかもしれないが、その他の実施形態では、圧力調整器を省略することができる。個別の圧力調整器を含まないそれら実施形態では、圧縮性ブラダーが、大きさ、形状、および圧縮性ブラダーおよび付勢部材に使用される材料に基づいて、自動調節するように構成することができる。例えば、一実施形態においては、組織部位における減圧および組織部位に至る管路における減圧が増加するとき、圧縮性ブラダーのチャンバ壁または付勢部材の弾性力が、潰れた状態を保つ圧縮性ブラダーの動きに打ち勝つことができる限りは、圧縮性ブラダーが、追加的な減圧を供給し続ける。付勢部材またはチャンバ壁が、組織部位に至る管路における減圧の量が原因で、圧縮の後にもはや膨張することができないときは、圧縮性ブラダーは、もはや追加的な減圧を生成することはないであろう。
【0035】
顕著な利点を有する発明が提供されているのは上述した記載から明らかである。本発明はその形態のほんの数例が示されているが、それは単なる限定ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、様々な変更および変形を受け入れる余地がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮性ブラダーシステムにおいて、
第1および第2ブラダーであって、その各々が膨張位置と圧縮位置との間で移動可能な第1および第2ブラダーと、
前記第1ブラダーを前記膨張位置に向けて付勢するために前記第1ブラダーと動作可能に関連する第1付勢部材と、
前記第2ブラダーを前記膨張位置に向けて付勢するために前記第2ブラダーと動作可能に関連する第2付勢部材とを備え、
前記第1および第2ブラダーに重量が周期的に加えられて、前記第1および第2ブラダーが前記膨張位置と前記圧縮位置との間で移動するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記第1付勢部材が前記第1ブラダー内に配置され、前記第2付勢部材が前記第2ブラダー内に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記第1付勢部材および前記第2付勢部材が、連続気泡発泡体であることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記第1ブラダーが足の前側部分の下方に位置するように構成され、前記第2ブラダーが前記足の踵部分の下方に位置するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
圧縮性ブラダーシステムにおいて、
膨張位置と圧縮位置との間で移動可能な第1および第2チャンバであって、その各々が入口および出口を有する第1および第2チャンバと、
前記圧縮位置において前記第1および第2チャンバ内の流体が前記入口から流出するのを阻止するために、各入口と連通する入口弁と、
前記膨張位置において流体が前記出口を通じて前記第1および第2チャンバに流入するのを阻止するために、各出口と連通する出口弁と、
各チャンバを前記膨張位置に向けて付勢するために各チャンバ内に配置される付勢部材とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムにおいて、
前記第1チャンバが足の前側部分の下方に位置するように構成され、前記第2チャンバが前記足の踵部分の下方に位置するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のシステムにおいて、
前記第1および第2チャンバに重量が周期的に加えられて、前記第1および第2チャンバが減圧を生成するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムにおいて、
前記付勢部材が連続気泡発泡体であることを特徴とするシステム。
【請求項9】
減圧システムにおいて、
膨張位置と圧縮位置との間で移動可能な第1ブラダーと、
前記第1ブラダーを前記膨張位置に向けて付勢するために前記第1ブラダー内に配置される第1付勢部材と、
膨張位置と圧縮位置との間で移動可能な第2ブラダーと、
前記第2ブラダーを前記膨張位置に向けて付勢するために前記第2ブラダー内に配置される第2付勢部材と、
第1可変容量キャビティおよび第2可変容量キャビティを有する圧力調整器であって、前記第1可変容量キャビティが前記第1ブラダーおよび前記第2ブラダーに流体流通可能に連結され、前記第2可変容量キャビティがマニホールドと連通するように構成される圧力調整器とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記第1可変容量キャビティおよび前記第2可変容量キャビティが共通のピストン壁を有することを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記第1可変容量キャビティおよび前記第2可変容量キャビティが共通のピストン壁を有し、弾性的な蛇腹が前記第1可変容量キャビティと前記第2可変容量キャビティを分けることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記第1ブラダーが足の前側部分の下方に位置するように構成され、前記第2ブラダーが前記足の踵部分の下方に位置するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記第1可変容量キャビティが、前記第1ブラダーまたは前記第2ブラダーから正に加圧された空気を受け取ったときに、膨張するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記第1可変容量キャビティが膨張したときに、前記第2可変容量キャビティが膨張して減圧を生成するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記第1および前記第2付勢部材が、連続気泡発泡体であることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記第1可変容量キャビティおよび前記第2可変容量キャビティが共通のピストン壁を有し、
弾性的な蛇腹が前記第1可変容量キャビティと前記第2可変容量キャビティを分け、
前記第1ブラダーが足の前側部分の下方に位置するように構成され、前記第2ブラダーが前記足の踵部分の下方に位置するように構成され、
前記第1および第2ブラダーに前記足の重量が周期的に加えられて、前記膨張位置と前記圧縮位置との間で前記第1および第2ブラダーが移動するときに、前記第1可変容量キャビティが、前記第1ブラダーおよび前記第2ブラダーから正に加圧された空気を受け取るように構成され、
前記第1可変容量キャビティが前記第1ブラダーまたは前記第2ブラダーから正に加圧された空気を受け取ったときに、前記第2可変容量キャビティが膨張して減圧を生成するように構成されていることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−39412(P2013−39412A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−234434(P2012−234434)
【出願日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【分割の表示】特願2010−550891(P2010−550891)の分割
【原出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】