説明

減圧下での発酵プロセス

【解決手段】
本発明は、炭水化物源が発酵条件下にて微生物と水性発酵ブロス中で接触させられて、塩である、または水の沸点よりも高い沸点を有する生成物である発酵生成物を形成し、該発酵プロセスが、大気圧よりも低く、かつ、反応媒体がその沸点にある値以上の圧力で、発酵温度において行われ、水を、発酵の開始時に反応器に存在する液体の体積の少なくとも20%である量で、発酵中に蒸発させ、そして反応器から除去させる、発酵プロセスに関する。効果的な減圧での発酵プロセスと、一方での大量の水の除去がたくさんの利点を有することを見出した。これは該システムにおける余分な水が有する問題を解決し、反応熱の除去を確実にし、改良された発酵品質をもたらすだろう。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発酵プロセスは当該技術分野において周知である。発酵プロセスは、乳酸、酢酸、プロピオン酸及びコハク酸等を含む酸、エタノール、プロパノール、ブタノール、エリトリトール等のアルコール、及び、ビタミンのような多くの他の生物起源成分など、多くの異なる成分の製造に使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
当該技術分野には、改良された発酵プロセスに対する継続的な要求がある。本発明は今、該技術分野で知られている様々な発酵プロセスに関連する多くの問題を解決する、改良された発酵プロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、炭水化物源が発酵条件下にて微生物と水性発酵ブロス中で接触させられて、塩である、または水の沸点よりも高い沸点を有する生成物である発酵生成物を形成し、該発酵プロセスが、大気圧よりも低く、かつ、反応媒体がその沸点にある値以上の圧力で、発酵温度において行われ、水を、発酵の開始時に反応器に存在する液体の体積の少なくとも20%である量で、発酵中に蒸発させ、そして反応器から除去させる、発酵プロセスに関する。
【0004】
本発明の最も重要な点は、該発酵プロセスが減圧下、即ち、大気圧よりも低い圧力下で行われ、相当量の水の蒸発及び除去をもたらすことである。圧力の下限値は、反応媒体が発酵条件下で液相にあるべき濃度によってもたらされる。これは、発酵温度で、圧力が、発酵媒体がその沸騰する温度またはそれ以上であるべきことを意味する。これは以下でさらに詳細に説明する。
【発明の効果】
【0005】
該発明の発酵プロセスは多くの利点を有する。
【0006】
該発明の特徴の一つは、該技術分野で知られている発酵プロセスに関連する余剰水の問題を解決することである。発酵プロセスでは、飼料源、一般的に炭水化物源が、水と組み合わされて、例えば溶解された状態で、反応器に加えられる。更に、水溶液の形態に対応して、pH調整剤のような追加のストリームが時々加えられることがある。これは希釈物ストリームの形態をもたらし、例えばそのプロセスの間に、水除去ステップの使用を余儀なくさせることがある。しかし、これは多くの不利益を有する。第1段階にて、反応媒体が除去され、このことは液体生成物の除去に関連しているかもしれず、そのプロセスにおいて収率の減少をもたらす。更に、発酵中または発酵後に除去される水の体積が大きいと、その性質上高価である多くの器具の使用を必要とする。従って、発酵槽にある余分な水を費用効率のよい方法にて減少するという発酵プロセスに対する要求がある。
【0007】
発酵を減圧下で行うことによる見事な方法にてこの問題は解決され得る事を見出した。圧力の減少は、その後除去される水の蒸発を増加し、それと共に、より濃縮された生成物ストリームをもたらす。
【0008】
本発明のプロセスの更なる利点は、発酵の間に発生した熱の除去にある。
【0009】
従来、発酵プロセスは一定の温度で行われていた。発酵の間に発生した熱はその系から取り除かれる必要がある。本発明のプロセスにおいて真空の適用が液体の蒸発をもたらし、系からの熱の除去を起こす。従って、本発明のプロセスの利点は、発酵プロセスの間に発生する熱の除去の要求を少なくすることである。
【0010】
発酵温度を所定の値に保つために、系に追加の熱を提供する必要があるかもしれない。低品質の廃熱がこの追加熱の提供に使用される時、本発明のプロセスは、効率的方法プロセスにて行われ得る。適切な低品質廃熱は、発酵プロセス自体から、その手順の中に更にある濃縮過程から、又は他の入手可能源から派生するだろう。その為、1つの態様では、本発明のプロセスは低品質廃熱によってもたらされ得る。本明細書の記載において、述べられている低品質廃熱は、100℃未満、更に特には70℃未満の温度を有する熱有用ストリームから派生する熱をいう。発酵温度よりも5〜25℃、更に特には5〜15℃高い供給温度を有するストリームの使用は特に魅力的である。
【0011】
発酵プロセスは該技術分野で記載されており、そこでは、水よりも高い揮発性を有する反応物を除去するために減圧が適用されており、例えば凝縮器を使用して、共蒸発された水が部分的に凝縮され反応容器に返されることが記されている。本明細書は水が除去されることを言及しており、それは実際に除去されるのであり、蒸発され、凝縮され、そして反応器に直接返されることはないことを意味していることは当業者に明らかだろう。
【0012】
本発明のさらなる特徴は、水が他の方法、例えばサイドストリーム等、を経由して除去される発酵システムと比較して、増加した発酵生成物収率が得られるであろうことである。これは、基質のグラムあたりの所望生成物の収率と、発酵媒体のリットルあたりの所望生成物の収率とのいずれかまたは両方にあてはまるだろう。これは、他の方法、例えばサイドストリーム等、を経由した除去とは対照的に、蒸発を経由する余剰水の除去は、減圧の適用の結果として、発酵生成物の除去と同時に起こらないためである。また、本発明のプロセスでは蒸発を経由して水が除去されるため、反応器から除去される水ストリームが追加の精製を要求しないだろう。
【0013】
更に、本発明のプロセスは改良された発酵品質をもたらすであろうことを見出した。微生物を阻害する、あるいは最終生成物に異臭、異風味、または他の望ましくない特性を起こす低沸点である混入物質の蒸発を減圧の適用がもたらすだろうと考えられているいずれの説にも制限されることを望まない。
【0014】
本発明の方法は、塩である、又は水の沸点よりも高い沸点を有する発酵生成物の形成に適用できる。該発酵生成物が水の沸点よりも低い沸点を有するならば、減圧下で水と共に蒸発され、そして除去されてしまうだろう。これは、減少した水の含有量及び増加した生成物収率を有する発酵ブロスの提供という本発明の根底にある問題を解決しない。
【0015】
該発明のプロセスは、多くの種類の発酵プロセスに応用される。特に嫌気条件下で行われる発酵プロセスに適していることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0016】
該発明のプロセスを経由して製造される適切な生成物は、乳酸、酢酸、プロピオン酸、及びコハク酸等の有機酸(あるいはその塩)、ブタノール、及びエリスリトール等のアルコール、及び、ビタミンのような生物起源の多数の他成分を含む。主生成物として有機酸の製造が好ましく、乳酸及びコハク酸(またはこれらの塩)の製造に用いるのが特に好ましい。
【0017】
該発明のプロセスでは、発酵生成物又は発酵が目的とされており主な発酵製品として示されている製品が、塩であり、及び/又は、水の沸点より高い沸点を有することを意図している。即ち、これらは、液体又は固体の形態で発酵媒体に残るだろう。これは、塩でなくかつ水の沸点よりも低い沸点を有する副生成物の形成を除外せず、その為、真空の利用により、発酵プロセスの間にその全てまたは一部が除去される。主発酵生成物(又は製品)の合計収率は、通常、変換された基質のグラムあたりの生成物のグラムとして計算して、少なくとも20重量%、特には少なくとも30重量%、さらに特には少なくとも50重量%である。発酵の性質に基づき、主発酵生成物(又は製品)の合計収率は、変換される基質のグラムあたりの生成物のグラムとして計算して、少なくとも60重量%であり、時々少なくとも80重量%であり、更に特には少なくとも80重量%であり、またさらには少なくとも90重量%である。
【0018】
本発明はエタノールの製造を目的とする発酵プロセスを対象とするものでなく、エタノールと二酸化炭素の合計は、変換される基質の量を元に計算して、生成物の70重量%以上になることが記される。本発明は水素が主生成物である発酵プロセスを対象とするものでないことが記される。
【0019】
上記した通り、発酵は大気圧より低い圧力下で行われる。該プロセスが行われ得る最小圧力は、発酵温度によって決定される。該圧力は、少なくとも、発酵媒体がその沸点またはそれ未満にある程の高さであるべきである。発酵媒体の温度がその沸点より高いと、発酵媒体が蒸発し、温度は媒体がその沸点になるまで下がるだろう。言いかえれば、該発明のプロセスの為の最小圧力は、発酵温度での液体の蒸気圧である。
【0020】
反応媒体の沸点は液体の蒸気圧が液体の周りの外圧に等しくなる温度である。沸騰は液体中のどこかにある分子が気相に逃げる過程であり、液体に気泡の形成をもたらす。沸点は飽和温度として示されてもよく、すなわち、液体が与えられた圧力にて熱エネルギーで満たされ、何らかのエネルギーの追加が相転換をもたらす温度である。
【0021】
発酵は個々の基準で選択される発酵温度に影響されるだろう。考察は所望の生成物の最大収率や最大転換を含む。適切な条件を選択することは当業者の思考範囲内にある。例えば、プロセスの開始時での発展とプロセスの最後近くでの収率を最適化するために、発酵プロセスの間に温度が変化してもよい。これは、発酵圧力の変化をもたらすだろう。
【0022】
ちなみに、驚いたことに発酵媒体が沸騰する圧力で本発明のプロセスを行うことができるとわかったことを記しておくべきである。一見したところ、微生物は沸騰している媒体に囲まれていることによって不利益に影響しない。従って、該圧力に関する本発明のある特定の態様は、発酵が行われる温度で水性発酵媒体が沸騰するように選択されるべきことである。
【0023】
大気圧で行われるプロセスに比較して水の蒸発を増やすために、該発明のプロセスに適用される圧力は大気圧より低い。例えば、該圧力は20mbarと950mbarの間、更に特には40と500mbarの間となるように選択されればよい。
【0024】
該発明のプロセスでは、水は、発酵の開始時に反応器に存在している液体の体積の少なくとも20%の量で、発酵の間に蒸発され反応器から除去される。取り除かれる水の量が少ないと、本発明に関する利益がそれに伴う費用に調和する程度まで得られない。除去されることが望まれる水の量は多くの特性に基づくだろう。1つの特性は、基質ストリームの濃度である。基質が比較的薄い形態でもたらされるなら、例えばセルロース加水分解物に関する、基質がより濃縮された形態でもたらされるときよりも多くの水を取り除くのが望ましい。希釈ストリームが発酵中に加えられるなら、例えば、塩基のようなpH調整剤の希釈ストリーム、その様なストリームが提供されないとき、あるいはより濃縮されたストリームが提供されるときよりも多くの水を取り除くのが望ましい。除去される水の上限値は反応容器に残っている水の量に基づくだろう。反応器の混合を適切に行うのに十分な量であるべきである。除去されるべき水の適切な量を決定することは、上記を考慮にいれて、当業者の思考の範囲内にある。
【0025】
これらの様々なパラメータに基づき、発酵中に除去される水の量は発酵の開始時に反応器に存在する液体の体積の少なくとも40%であってよく、更に特には少なくとも50%である。希釈基質ストリームまたは他の液体が反応器に供給される場合には、その水の量はより多くなり、例えば、少なくとも75%、またはある場合には少なくとも100%である。
【0026】
通常、該発明のプロセスで除去される水の量は、該圧力が減少される間の時間と、発酵媒体に供給される熱の量を選択することによって制限される。望ましい量の水が除去されるような発酵条件を選択することは、上記を考慮に入れて、当業者の思考の範囲内にある。
【0027】
本発明の一態様には、以下にさらに詳細に説明する通り、水が発酵の間に加えられる。該態様では、圧力に関して、反応器から蒸発によって除去される水の体積が、発酵中に加えられる水の合計の少なくとも1%、特には少なくとも5%、更に特には少なくとも10%であるように選択されるべきことが好ましい。該態様において、除去される水の体積は大抵、発酵中に添加された水の合計の多くて50%である。
【0028】
いくつかの発酵プロセスにて、例えばpH調整剤を添加するために、またはフェドバッチプロセスに取り込むために、水溶液が発酵中に加えられる。いくつかの場合に発酵中に加えられる水の量は非常に大きいため、これらのプロセスにおいて水の除去は特に関係するだろう。例として、高い基質濃度は発酵を阻害するが、例えば固体であるためにその生成物は発酵を阻害しないという状況が言及される。
【0029】
一態様では、本発明は酸の塩を含有する生成物を製造するための発酵プロセスに関連する。これらの発酵プロセスでは、微生物が酸を製造し、そして塩基性溶液が発酵媒体に添加されて問題となる微生物に必要である範囲にpHを維持し、酸を全部または部分的にその対応する塩に変換する。該塩基の追加は望ましくない大量の水の添加と同時に起こるだろう。
【0030】
該発明のプロセスを経由して製造される酸はカルボン酸、特には2〜8個の炭素原子を有するモノ-、ジ-、及びトリカルボン酸から選ばれるカルボン酸を包含する。例えば、乳酸、プロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、α-ケトグルタル酸、オキサロ酢酸、酢酸、及びアクリル酸、またはこれらの塩が含まれる。現時点において、乳酸、コハク酸、又はこれらの塩を製造することを目的とした発酵プロセスが好ましいと考えられる。
【0031】
該発明の一態様では、発酵過程が使用され、そこでは目的とする生成物はその塩の形であり、又は水の沸点より大きい沸点を有しており、一方で主な副生成物は水の沸点より低い沸点を有する。この場合、減圧下での発酵の実行は、かなりの量の望ましくない副生成物の除去を確実にする。このタイプの発酵の例は混合酸発酵であり、酸の形成、特には酢酸の形成がエタノールの製造と同時に起こる。
【0032】
上記の通り、発酵中に、酸の形成がpHの減少をもたらす。これに対処し微生物が働ける範囲にpHを維持するために、典型的には塩基性溶液が発酵中に加えられる。適切な塩基性溶液は、(水)酸化カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、(水)酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、炭酸マグネシウム、重炭酸ナトリウム、及び重炭酸カリウムの1以上を含有する溶液を含む。塩基の溶解性に基づき、上述した塩基性溶液は、塩基が完全に溶解され該溶液は固体成分を含有しないという意味で、真の溶液であるだろう。しかし、該塩基性溶液は、溶解された塩基に加えて固体粒子を含む、懸濁液であってもよい。本明細書にある溶液という用語は両方の態様を包含することを意図している。
【0033】
通常、塩基性溶液はブロスのpHを3と9の間、更に特には5.5と約7.0の間に調整するのに効果的な量で添加される。
【0034】
マグネシウム塩の溶液、特に水酸化マグネシウムの溶液は、適切なポンプ能力を与えるために比較的薄い必要がある。従って、この場合、塩基性溶液の濃度は比較的低く、その結果として比較的多量の水が加えられる。
【0035】
従って、一態様では、該発明は、pHを所望の範囲に維持するためにマグネシウム塩の塩基性溶液が使用される、酸の発酵製品のためのプロセスに関する。
【0036】
乳酸の製造は本発明の好ましい態様である。従って、一態様では、本発明は、乳酸を製造するためのプロセスに関し、該プロセスでは、炭水化物源が発酵条件下で乳酸の製造に適する微生物と水性発酵ブロス中で接触させられて乳酸発酵生成物を形成し、塩基性溶液が発酵中に発酵ブロスに添加されてpHを所望の範囲に維持する。
【0037】
発酵乳酸製品は該技術分野で周知である。以下の記載は単なる一般的な説明として与えられる。
【0038】
例えば乳酸製造における炭水化物源は、通常、糖類、(液化した)デンプン、糖蜜、又は乳清、グルコース、フルクトース、又はガラクトース、又は、スクロース又はラクトース等の二糖、バイオ廃棄物、木材、わらのような植物源の加水分解物にあるヘキソース及びペントース等の1以上を包含する。
【0039】
適切な微生物は、L. デルブルッキー、バチルス・コアグランス、バチルス・サーモアミロボランス、バチルス・スミシー、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス、及びエシェリキア・コリ等のラクトバチルスspを包含する。
【0040】
各微生物は自身の最適なpH及び温度範囲を有している。使用される圧力は該微生物の為の最適温度に基づく。
【0041】
望むなら、炭水化物源を微生物によって処理され得る成分に変換するのを促すために、酵素が発酵過程で加えられてもよい。
【0042】
本発明での使用に適する発酵プロセスを得るための基質、微生物、及び反応条件の適切な組合せを選択することは当業者の思考の範囲内である。
【0043】
本発明の一態様では、発酵は同時的な糖化かつ発酵(SSF)プロセスであり、飼料が微生物及び酵素と接触される。
【0044】
同時的な糖化かつ発酵プロセスでは、低価格飼料源が酵素過程に供されて糖を製造し、同時に、微生物を使用して最終発酵生成物、例えば乳酸に発酵される。SSFプロセスでは酵素反応から派生する望ましくない副生成物が揮発によって少なくとも部分的に系から除去されるため、該プロセスは減圧下での発酵のための魅力的な候補であることが見出された。
【0045】
低価格飼料源はデンプン及びデンプンの部分的加水分解物から選択されればよく、後者は液化されたデンプン、マルトデキストリン、またはマルトオリゴ糖としても知られている。発酵媒体に添加される適切な酵素は、α-アミラーゼ、又はグルコアミラーゼ、又はプルラナーゼの1以上を包含する。また、該低価格飼料源は、バイオ廃棄物のようなセルロース含有物質から選択されてもよい。この場合、適する酵素はセルラーゼを包含する。
【0046】
従って、一態様では、本発明は、低価格飼料源が同時的な糖化かつ発酵プロセスに供される、乳酸またはその塩の製造方法に関し、該方法は、低価格飼料を糖成分に変換し得る酵素を少なくとも含む媒体中で低価格飼料源を糖化すること、同時に微生物を使用して糖成分を発酵すること、任意で媒体から乳酸を単離することを含み、該発酵プロセスは、大気圧よりも低く、反応媒体がその沸点にあるような値以上の圧力で、発酵温度において行われる。
【0047】
適するSSFプロセスにおける更なる情報としては、特に、低価格飼料源がデンプン及びデンプンの部分的加水分解物から選ばれるプロセスであり、後者は液化されたデンプン、マルトデキストリン、またはマルトオリゴ糖としても知られており、発酵媒体に添加される適切な酵素はα-アミラーゼ、又はグルコアミラーゼ、又はプルラナーゼの1以上を包含し、参考文献はWO03095659であり、当該開示は引用文献によってここに組み込まれる。
【0048】
通常、減圧の使用は発酵の特性や条件に影響しない。従って、本発明は、発酵生成物の水の含有量を減らすこと、及び生産収率を増加することが望まれる如何なる発酵プロセスにも適用される。
【0049】
本発明を採用することによって特定の発酵過程がうまく適合され得るか否かを決定するのは当業者の思考の範囲内にある。さらなる説明は必要でない。
【実施例】
【0050】
本発明は以下の実施例によって説明されるが、下記の実施例に又は下記の実施例によって制限されるものではない。
【実施例1】
【0051】
7リットルの攪拌型発酵槽は、頭部の空間に接続された外部冷却器を装備された。冷却器は低温保持装置で4℃に維持された。発酵槽及び冷却器は真空ポンプで真空にされ得た。発酵槽にはスクロース1000g及び脱塩水2700gを含む発酵媒体が供給された。リン酸ジアンモニウム及び硫酸ジアンモニウムが窒素源として添加された。ビタミン及び微量元素が該技術分野における慣習として加えられた。
【0052】
乳酸産生微生物の10%接種菌体が発酵媒体に加えられ、発酵媒体は55℃の反応温度にされた。該微生物は乳酸を産生した。媒体のpHは継続的に測定され、水酸化マグネシウムの懸濁液を加えることにより6.4の値に維持された。
【0053】
24時間後、上記発酵媒体の圧力は下げられ、120mbarの値にされた。発酵媒体の温度は55℃に維持された。発酵中、発酵媒体が沸騰したことが観察された。しかし、該乳酸製造プロファイルは大気圧条件での発酵と同程度であるようだった。6時間で、1800mlの水が蒸発され、外部冷却器に凝縮された。発酵は継続された。全ての糖が消耗されたとき、発酵ブロスは体積3200mlを有していた。従来の大気中発酵に比較すると、減圧での発酵の実施は多くて50%まで発酵液体の体積の減少をもたらした。さらに、発酵収率は、最終発酵ブロスのリットルあたりの固体の乳酸マグネシウムのグラムで、増加していたことがわかった。
【0054】
該実施例では、発酵の開始時に反応器に存在する液体の体積を元に計算して、発酵中に蒸発され反応器から除去された水の量は67%である。
【実施例2】
【0055】
70リットルのステンレス鋼攪拌型発酵槽は、頭部の空間に接続された外部プレートとフレーム冷却器と濃縮回収器とを装備された。発酵槽及び冷却器は多動メンブレン真空ポンプで真空にされ得た。発酵槽は二重に取り囲まれ、加熱浴槽で所定の温度に維持された。発酵槽にはスクロース18kg及び脱塩水50Lを含む発酵媒体が供給された。リン酸ジアンモニウム及び硫酸ジアンモニウムが窒素源として添加された。ビタミン及び微量元素が該技術分野における慣習として加えられた。
【0056】
乳酸産生微生物の接種菌体5.8Lが発酵媒体に加えられ、発酵媒体は55℃の反応温度にされた。該微生物は乳酸を産生した。媒体のpHは継続的に測定され、20.7重量%の水酸化マグネシウム懸濁液を加えることにより6.4の値に維持された。
【0057】
18時間後、上記発酵媒体の圧力は下げられ、110〜125mbarの値にされた。この圧力は真空ポンプに接続されたデジタル真空メーターに依って維持された。発酵媒体の温度は加熱浴槽に接続された温度プローブによって55℃に維持された。冷却器は冷却水により20℃に維持された。発酵中、発酵媒体が沸騰したことが観察された。100mlの消泡剤が加えられ発泡を減らした。14時間後、32Lの水が蒸発され、外部冷却器に凝縮された。乳酸製造プロファイルは大気条件での発酵と同程度に残っていた。全ての糖が消耗されたとき、発酵ブロスは体積66Lを有していた。従来の大気中発酵に比較すると、減圧(真空)での発酵の実施は約43%まで発酵ブロスの液体体積の減少をもたらした。発酵収率は、最終発酵ブロスのリットルあたりの固体の乳酸マグネシウムのグラムで、増加していたことがわかった。減圧下で行われた該発酵プロセスで生産された乳酸の合計量は、大気条件で行われた比較プロセスによってもたらされた合計量と同程度であった。
【0058】
該実施例では、発酵の開始時に反応器に存在する液体の体積を元に計算して、発酵中に蒸発され反応器から除去された水の量は64%である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵プロセスにおいて、炭水化物源が発酵条件下にて微生物と水性発酵ブロス中で接触させられて、塩である、または水の沸点よりも高い沸点を有する生成物である発酵生成物を形成し、該発酵プロセスが、大気圧よりも低く、かつ、反応媒体がその沸点にある値以上の圧力で、発酵温度において行われ、水を、発酵の開始時に反応器に存在する液体の体積の少なくとも20%である量で、発酵中に蒸発させ、そして反応器から除去させる、発酵プロセス。
【請求項2】
前記圧力が、発酵が行われる温度で水性発酵ブロスが沸騰するように選ばれる、請求項1に記載の発酵プロセス。
【請求項3】
水が前記発酵中に加えられ、前記圧力が、蒸発され反応器から除去される水の体積が発酵中に加えられる水の合計体積の少なくとも1%、特には少なくとも5%、さらに特には少なくとも10%であるように選ばれる、請求項1または2記載の発酵プロセス。
【請求項4】
炭水化物源が発酵条件下にて微生物と水性発酵ブロス中で接触させられて酸性発酵生成物を形成し、塩基性溶液が発酵中に前記発酵ブロスに加えられてpHを所定の範囲に保持する、請求項1〜3のいずれか1項記載の発酵プロセス。
【請求項5】
前記酸性発酵生成物が、2〜8個の炭素原子を有するモノ-、ジ-、及びトリカルボン酸、特には、乳酸、プロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、α-ケトグルタル酸、オキサロ酢酸、及び酢酸、またはこれらの塩から選ばれる1以上のカルボン酸を包含する、請求項4記載の発酵プロセス。
【請求項6】
前記酸性発酵生成物が、乳酸、またはコハク酸、またはそれらの塩を包含する、請求項5記載の発酵プロセス。
【請求項7】
前記酸性発酵生成物が、乳酸、またはその塩を包含する、請求項6記載の発酵プロセス。
【請求項8】
前記塩基性溶液が、(水)酸化カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、(水)酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムの1以上、特には水酸化マグネシウムを含有する、請求項4〜7記載の発酵プロセス。
【請求項9】
前記発酵プロセスが同時的な糖化かつ発酵プロセスであり、飼料が微生物及び酵素と接触される、請求項1〜8記載の発酵プロセス。

【公表番号】特表2013−507139(P2013−507139A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533629(P2012−533629)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065395
【国際公開番号】WO2011/045365
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(504421730)ピュラック バイオケム ビー. ブイ. (6)
【Fターム(参考)】