説明

減圧乾燥装置

【課題】塗布膜に乾燥ムラが形成されることを抑えることができる減圧乾燥装置を提供する。
【解決手段】基板を格納するチャンバ2を備え、チャンバ2内部を大気圧より低い圧力に減圧することによって、チャンバ2内部に格納された基板上の塗布膜を乾燥させる減圧乾燥装置であって、チャンバ2は、チャンバ本体3とチャンバ蓋部4を有し、チャンバ本体3とチャンバ蓋部4とが当接することによってチャンバ2内部を密閉し、チャンバ蓋部4は天板41を有し、天板41のチャンバ2内部と反対側から天板41を覆う蓋形状保持部6が設けられ、蓋形状保持部6は、天板41との間に閉じた空間Rを形成し、この空間Rの圧力が大気圧以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された塗布膜を減圧環境下で乾燥させる減圧乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、基板上にレジスト液が塗布されたもの(塗布基板と称す)が使用されている。この塗布基板の生産工程では、まず、塗布装置により基板上にレジスト液が均一に塗布されることによって塗布膜が形成され、その後、たとえば減圧乾燥装置といった乾燥装置によって塗布膜の乾燥が行われる。
【0003】
この減圧乾燥装置は、例えば、下記特許文献1に示されるように、チャンバに基板が収容された状態で、チャンバを減圧させることにより基板上の塗布膜を乾燥させるようになっている。具体的には、基板がチャンバ内で支持ピンなどによって支持された状態でチャンバ内の大気が排気され、チャンバ内が減圧環境下になることにより、基板上の塗布膜に含まれる溶剤が揮発し、塗布膜が乾燥する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−329303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載された減圧乾燥装置では、塗布膜表面に乾燥ムラが発生するおそれがあるという問題があった。具体的には、減圧乾燥中、チャンバの内部と外部の気圧差が生じることが原因で、チャンバの外壁に荷重がかかって変形する。特に、チャンバの天板は基板上の塗布膜と対向しており、その天板に変形が生じると、天板と塗布膜の間の距離が変化し、そこでの気流に乱れが生じる。それが原因で、塗布膜に乾燥ムラが生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、減圧乾燥中にチャンバの天板が変形して塗布膜に乾燥ムラが形成されることを抑えることができる減圧乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の減圧乾燥装置は、基板を格納するチャンバを備え、チャンバ内部を大気圧より低い圧力に減圧することによって、チャンバ内部に格納された基板上の塗布膜を乾燥させる減圧乾燥装置であって、前記チャンバは、チャンバ本体とチャンバ蓋部を有し、前記チャンバ本体と前記チャンバ蓋部とが当接することによってチャンバ内部を密閉し、前記チャンバ蓋部は天板を有し、前記天板のチャンバ内部と反対側から前記天板を覆う蓋形状保持部が設けられ、前記蓋形状保持部は、前記天板との間に閉じた空間を形成し、前記閉じた空間の圧力が大気圧以下であることを特徴としている。
【0008】
上記減圧乾燥装置によれば、天板のチャンバ内部と反対側から天板を覆う蓋形状保持部が設けられ、蓋形状保持部は、天板との間に閉じた空間を形成することにより、天板が外気の環境から切り離されるため、外気における大気圧が、蓋形状保持部にかかる。また、天板には、前記閉じた空間とチャンバ内部との圧力差による荷重を受けるが、前記閉じた空間が大気圧以下に設定されており、減圧乾燥時はチャンバ内部が大気圧以下に減圧されているため、その圧力差は、天板が外気の大気圧を受ける場合に比べて小さくすることができる。したがって、蓋形状保持部を設けることにより、天板の変形を抑えられ、塗布膜の乾燥ムラを抑えることが可能である。
【0009】
また、前記蓋形状保持部は、ドーム形状とすると良い。
【0010】
このように蓋形状保持部をドーム形状にすることにより、蓋形状保持部の内部と外気との圧力差に起因して受ける荷重によって蓋形状保持部の壁面に発生する応力を分散させ、壁面の変形および破壊を起こしにくくすることができる。
【0011】
また、前記天板と前記蓋形状保持部の内壁との間に補強材を有する構成とすると良い。
【0012】
このように補強材を設けることにより、蓋形状保持部および天板の変形をさらに阻止し、塗布膜の乾燥ムラを抑えることが可能である。
【0013】
また、前記蓋形状保持部と前記天板とで形成される空間の圧力は、乾燥促進圧力と同等であるようにすると良い。
【0014】
このように蓋形状保持部と天板とで形成される空間の圧力が後述する乾燥促進圧力と同等であることによって、乾燥促進圧力と同等でない場合と比べて、チャンバ内で塗布膜の乾燥が行われている際の天板の表裏の圧力差がより少なくなる。この結果、天板の変形がより少ない状態で塗布膜の乾燥を行うことができ、乾燥ムラをより抑えることが可能である。
【0015】
また、前記蓋形状保持部は圧力制御部を有し、少なくとも基板上の塗布膜の減圧乾燥が完了するまでは、前記圧力制御部によって前記蓋形状保持部と前記天板とで形成される空間の圧力がチャンバ内部の圧力と同等となるように制御することもできる。
【0016】
このように、蓋形状保持部と天板とで形成される空間の圧力がチャンバの内部の圧力と同等となるように制御することにより、天板の表裏の圧力差による天板の変形をさらに防ぐことができ、塗布膜の乾燥ムラを抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の減圧乾燥装置によれば、減圧乾燥中にチャンバの天板が変形することを防ぎ、塗布膜に乾燥ムラが形成されることを抑えて基板の乾燥を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態における減圧乾燥装置の概略図である。
【図2】減圧乾燥装置の断面図であり、側面図である。
【図3】他の実施形態における蓋形状保持部の概略図である。
【図4】減圧乾燥装置の内部圧力の経時変化を表すグラフである。
【図5】他の実施形態における減圧乾燥装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0020】
本発明の一実施形態における減圧乾燥装置を図1に示す。減圧乾燥装置1は、チャンバ2、基板支持部5、および蓋形状保持部6を有している。減圧乾燥装置1外の図示しない搬送機構によって基板Wがチャンバ2内の基板支持部5に載置されると、次にチャンバ2が密閉状態となる。そして、真空ポンプ7を駆動させることにより、チャンバ2の内部が減圧され、基板Wの減圧乾燥が行われる。また、チャンバ2の天板にはこの天板を覆うように蓋形状保持部6が設けられている。
【0021】
チャンバ2はチャンバ本体3とこれに接離可能なチャンバ蓋部4とを有しており、チャンバ蓋部4がチャンバ本体3に当接することによりチャンバ2の内部に密閉空間が形成される。また、チャンバ2の内部には、基板支持部5が備えられており、基板支持部5が基板Wを支持した状態で、このチャンバ2の内部に密閉空間を形成し、真空ポンプ7により減圧環境に維持することによって、基板Wを乾燥できるようになっている。
【0022】
チャンバ本体3は、水平に載置された平板状の平板部31と、この平板部31の外周縁から上方に突出する側壁部32とを有しており、側壁部32が平板部31を隙間無く囲むよう配置されている。また、平板部31には基板支持部5が載置されている。また、側壁部32の上端面は、シール部材33を有しており、シール部材33が後述するチャンバ蓋部4に圧接されることにより、チャンバ2の内部が密閉されるようになっている。また、平板部31には、排気口34が備えられており、この排気口34とチャンバ2の外部の真空ポンプ7とが配管35を通じて接続されている。そして、チャンバ2の内部が密閉された状態で真空ポンプ7による排気が行われることにより、チャンバ2の内部が減圧環境となる。
【0023】
チャンバ蓋部4は、図示しない昇降機構を駆動制御することにより昇降動作可能に構成されており、チャンバ本体3に対して接離可能になっている。具体的には、チャンバ蓋部4は、チャンバ本体3の上方に離れた位置と、チャンバ本体3に当接する位置とに昇降動作可能に設定されており、チャンバ蓋部4がチャンバ本体3の上方に位置する状態ではチャンバ2が開状態となり、チャンバ蓋部4がチャンバ本体3に当接する位置ではチャンバ2が閉状態となる。すなわち、チャンバ2が閉状態の場合、チャンバ2の内部は密閉状態となる。
【0024】
このチャンバ蓋部4は、チャンバ本体3の平板部31と対面する天板41と、天板41の縁の全周にわたって設けられた側壁部42とを有しており、側壁部42は、全周にわたってチャンバ本体3の側壁部32に対向するように形成されている。
【0025】
天板41は、少なくともチャンバ2内部側の面が平坦な形状を有し、本実施形態では平板状である。また、後述する蓋形状保持部6を設けても減圧乾燥時に天板41が変形する場合、その変形を利用して、チャンバ2内部の圧力が後述する乾燥促進圧力である時に、少なくともチャンバ2内部側の面が変形によって平坦となるような形状としても良い。
【0026】
側壁部42は、チャンバ本体3の側壁部32と対向する面が平滑な平坦状に形成されている。そして、チャンバ2が閉状態では、側壁部42の平坦部分が、チャンバ本体3の側壁部32上に設けられたシール部材33に圧接されることにより、チャンバ2の内部に基板支持部5およびその上に載置された基板Wを収容する、密閉された空間を形成する。
【0027】
基板支持部5は、本実施形態では、複数の支持ピン51およびリフトピン52を有する。
【0028】
支持ピン51は、本実施形態では垂直方向に伸び、先端の尖った円柱状の形状を有し、それぞれの支持ピン51の先端が同一の高さになるよう、チャンバ本体3の平板部31に配列されている。基板Wをチャンバ2の内部で減圧乾燥させる際、各支持ピン51の先端が基板Wの裏面と当接することで、基板Wを水平に支持する。各支持ピン51の先端で基板Wを支持することにより、接触面積が小さい状態で基板Wを支持することができ、基板Wの中で基板支持部5と接触する部分とその他の部分との間に生じる温度差が起因する乾燥ムラを極小にすることができる。
【0029】
リフトピン52は、本実施形態では垂直方向に伸び、先端の尖った円柱状の形状を有し、チャンバ本体3の平板部31に設けられている。また、リフトピン52は図示しない昇降機構を備え、昇降機構を駆動制御することにより、リフトピン52が上昇端にある時はリフトピン52の先端は支持ピン51の先端より高い位置にあり、逆にリフトピン52が下降端にある時はリフトピン52の先端は支持ピン51の先端より低い位置にあるよう調整されている。これにより、減圧乾燥装置1外の図示しない搬送機構によって基板Wがチャンバ2内部に載置される際、または搬送機構によって基板Wがチャンバ2から搬出される際は、リフトピン52が上昇端へ移動し、リフトピン52が基板Wを支持する状態となる。また、基板Wを乾燥させる際にはリフトピン52が下降端に移動し、下降の途中で基板Wを支持ピン51に受け渡すことで、支持ピン51が基板Wを支持する状態となる。
【0030】
蓋形状保持部6は、チャンバ蓋部4の天板41のチャンバ2内部と反対側の面から天板41を覆うように載置、固定され、天板41を外気の環境から切り離し、大気圧の負荷の影響を抑えることができる。また、後述の通り蓋形状保持部6と天板41との間に空間を形成する。ここで、その空間の圧力を大気圧以下にした場合、その空間と外気との圧力差による荷重を蓋形状保持部6が受けることにより、その空間の圧力は維持され、そして、減圧乾燥時に天板41にかかる荷重が天板41に外気が直接触れている場合よりも少なくなり、天板41の変形を防ぐ。
【0031】
この蓋形状保持部6は、外壁部61を有している。外壁部61は、本実施形態では、鋼板などにより形成された、中空の球体を1つの平面で切り取った形状に近い、いわゆるドーム状の構造体である。外壁部61の厚みは全体にわたって均一であり、外壁部61の内側には凹部を形成する。この凹部が天板41に対向するように外壁部61が天板41に載置されることで外壁部61と天板41との間に閉じた空間Rを形成する。また、外壁部61には排気口63が備えられており、この排気口63と外壁部61の外部の真空ポンプ65とが配管64を通じて接続されている。この真空ポンプ65による排気が行われることにより、空間Rが大気圧以下の減圧環境となる。
【0032】
ここで、外壁部61がドーム状であることにより、空間Rと外気との圧力差に起因して外壁部61が荷重を受けた時にその荷重によって外壁部61の内部に発生する応力は、一部分に集中せずに分散する。その結果、角部を有する形状であった場合と比べて、外壁部61が変形、破壊を起こしにくくなる。また、本実施形態の通り外壁部61の厚みを全体にわたって均一にすることで、さらに応力が均等に分散される。ただし、外壁部61は凹部を形成する形状であれば、必ずしも厚みが均一である必要は無い。
【0033】
また、このようなドーム状の外壁部61を形成するにあたり、一般にタンクの底部などの形成に用いられる鏡板を用いると良い。こうすることにより、本発明の用途のために特別に鋼板をドーム状に加工する必要なく、低コストで外壁部61を形成、入手することができる。
【0034】
また、外壁部61は、1つで天板41の全面を覆うような大きさにすると良い。そうすることで、蓋形状保持部6による天板41の変形を抑える効果を天板41全面が受けることができる。なお、本実施形態では天板41が矩形、外壁部61が天板41と当接する部分の外形は円形であるため、蓋形状保持部6が天板41の全面を覆うことはできないが、天板41の短辺の長さと、外壁部61が天板41と当接する部分の径とを同等とすることにより、可能な限り大きな面積を覆うようにしている。
【0035】
また、天板41および外壁部61の変形をさらに抑えるために、空間R内に補強材62を設けても良い。補強材62は、例えば鋼材から形成されるブロックであり、空間R内に1個または複数個配置され、天板41および外壁部61に挟持される。各補強材62は天板41および外壁部61と当接する部分において、それぞれの形状に沿った形状をしており、その部分において天板41および外壁部61と溶接固定されている。このように、この補強材62を介して天板41と外壁部61とを連結することにより、天板41への荷重を外壁部61が支持し、天板41の変形を防ぐことが可能である。
【0036】
また、補強材62を外壁部61の中心軸に対して対称となるように放射状に配置すると良い。これによって、各補強材62が荷重を均等に受けるため、天板41および外壁部61の中に変形が起こりやすい箇所を発生させずに、全体的に天板41および外壁部61の強度を高めることができる。
【0037】
また、外壁部61をさらに変形に強くするために、図3に示すように、外壁部61の外側にも外壁部61と接するリブ66を取付け、補強しても良い。また、このリブ66は、外壁部61の中心軸に対して対称となるよう放射状に配置すると良い。これによって、各リブ66は荷重を均等に受けるため、外壁部61の中に変形が起こりやすい箇所を発生させずに、全体的に外壁部61の強度を高めることができる。
【0038】
このような蓋形状保持部6を天板41に設け、天板41のチャンバ2内部と反対側の面に空間Rを設けることにより、天板41は外気の環境から切り離され、外気における大気圧が、蓋形状保持部にかかる。これに加え、空間Rの圧力を大気圧以下にしたとき、外気と空間Rとの圧力差による荷重を外壁部61が受けて、この空間Rの圧力を大気圧以下で維持することが可能である。そして、空間Rの圧力が大気圧以下であった場合、チャンバ2の減圧時の天板41の表裏(チャンバ2内部と空間R)の圧力の差を天板41が直接外気と触れている場合の天板41の表裏(チャンバ2内部と外気(大気圧))の圧力の差と比べて小さくすることができる。このように、天板41の表裏の圧力の差を小さくすることによって、この圧力の差によって天板41が受ける荷重を軽減することができるため、天板41が変形を起こしにくくなる。そして、天板41が変形を起こしにくくなることによって、天板41と基板Wの間で気流の乱れが発生しにくくなるため、塗布膜の乾燥ムラを抑えることが可能である。
【0039】
また、本実施形態では、空間Rの圧力を大気圧(約0.1MPa)から60Paまでの間に設定しており、真空ポンプ65によって、空間Rの圧力をこの設定圧力で維持している。
【0040】
真空ポンプ65によって空間Rの圧力を設定圧力で維持する方法としては、空間Rの圧力をその設定圧力で維持することができる排気能力を有する真空ポンプ65を選定する方法や、配管64の途中に弁を設け、この弁の開閉具合で排気能力を調節する方法がある。また、これらとは別に、外壁部61とチャンバ蓋部4の天板41とを設定圧力の環境下で溶接し、排気口63、配管64および真空ポンプ65を設けずに完全に密閉することで、空間Rを設定圧力で維持する方法も考えられる。
【0041】
また、図示しない圧力センサにより空間Rの圧力を監視し、空間Rの圧力と設定圧力との差が所定の値を超えるとアラームを発生するようにしても良い。
【0042】
ここで、さらに空間Rの圧力の範囲を限定し、以下に説明する通りの乾燥促進圧力と同等に設定することにより、塗布膜の乾燥ムラを防ぐことがより容易となる。
【0043】
図4は、基板Wを減圧乾燥させる際のチャンバ2の内部の圧力の経時変化を表すグラフである。チャンバ2の内部に基板Wが載置されてから減圧乾燥が開始すると、しばらくの間は順調にチャンバ2の内部の圧力は下がり続けるが、チャンバ2の内部の圧力がある圧力に達すると(図4に示す時刻t1、圧力P1の状態)、圧力の低下のペースが急激に緩やかになる。これは、チャンバ2の内部の圧力がP1となってから塗布膜内の溶媒の揮発が活発になり、チャンバ2内が減圧されるのに対して溶媒の揮発が圧力を増加させる方向に働き、その結果、チャンバ2内の圧力の減圧量が少なくなるためである。そして、塗布膜内の溶媒がほぼ全て揮発し、減圧乾燥が完了すると(図4に示す時刻t2、圧力P2の状態)、チャンバ2の内部の圧力の低下のペースは再び早まる挙動を示す。
【0044】
ここで、本発明においてこのP1からP2までの範囲の圧力を乾燥促進圧力と呼ぶこととする。チャンバ2の内部の圧力がこの乾燥促進圧力であるとき、塗布膜の乾燥の進行は活発となるため、このときに天板41が変形して塗布膜の上方で気流に乱れが生じると、乾燥ムラとなりやすくなる。したがって、空間Rの圧力を乾燥促進圧力と同等に設定しておくことにより、塗布膜の乾燥の進行が活発であるときに天板41の変形が発生しにくくなり、乾燥ムラを防ぐことが容易となる。
【0045】
次に、本発明の他の実施形態について、図5を用いて説明する。
【0046】
図5に示す減圧乾燥装置71は、先述の減圧乾燥装置1と同じように、チャンバ72、チャンバ本体73、チャンバ蓋部74、基板支持部75、蓋形状保持部76、真空ポンプ77、および真空ポンプ78を備えている。それに加え、蓋形状保持部76の内側の空間R2の圧力を調節する圧力制御部80を有している。
【0047】
圧力制御部80は、真空ポンプ78による減圧量を調節する弁81、チャンバ72の内部の圧力を測定する圧力計82、空間R2の圧力を測定する圧力計83、および弁81を制御する制御装置84から構成されており、この圧力制御部80によって空間R2の圧力が調整され、チャンバ72の内部の圧力に追従することができる。具体的には、まず、減圧乾燥中のチャンバ72の内部の圧力、および空間R2の圧力がそれぞれ圧力計82、圧力計83によって測定され、それぞれの圧力の測定値が制御装置84に入力される。次に、両測定値の差分に基づき、蓋形状保持部76と真空ポンプ78との間に設けられた弁81の開閉具合が制御装置84によって制御されることにより、空間R2の圧力がチャンバ72の内部の圧力と等しくなるように調節される。
【0048】
上記動作によって少なくとも基板Wの塗布膜の減圧乾燥が完了するまでは空間R2の圧力がチャンバ72の内部の圧力と同等となるように追従することにより、減圧乾燥中、チャンバ蓋部74の天板が変形することを抑えられ、その結果、基板の上方で気流の乱れが発生せず、塗布膜の乾燥ムラを防ぐことが可能である。
【0049】
以上説明した減圧乾燥装置により、基板上の塗布膜の乾燥ムラの少ない減圧乾燥を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 減圧乾燥装置
2 チャンバ
3 チャンバ本体
4 チャンバ蓋部
5 基板支持部
6 蓋形状保持部
7 真空ポンプ
31 平板部
32 側壁部
33 シール部材
34 排気口
35 配管
41 天板
42 側壁部
51 支持ピン
52 リフトピン
61 外壁部
62 補強材
63 排気口
64 配管
65 真空ポンプ
66 リブ
71 減圧乾燥装置
72 チャンバ
73 チャンバ本体
74 チャンバ蓋部
75 基板支持部
76 蓋形状保持部
77 真空ポンプ
78 真空ポンプ
79 配管
80 圧力制御部
81 弁
82 圧力計
83 圧力計
84 制御装置
R 空間
R2 空間
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を格納するチャンバを備え、チャンバ内部を大気圧より低い圧力に減圧することによって、チャンバ内部に格納された基板上の塗布膜を乾燥させる減圧乾燥装置であって、
前記チャンバは、チャンバ本体とチャンバ蓋部を有し、前記チャンバ本体と前記チャンバ蓋部とが当接することによってチャンバ内部を密閉し、
前記チャンバ蓋部は天板を有し、前記天板のチャンバ内部と反対側から前記天板を覆う蓋形状保持部が設けられ、
前記蓋形状保持部は、前記天板との間に閉じた空間を形成し、前記閉じた空間の圧力が大気圧以下であることを特徴とする、減圧乾燥装置。
【請求項2】
前記蓋形状保持部は、ドーム形状であることを特徴とする、請求項1に記載の減圧乾燥装置。
【請求項3】
前記天板と前記蓋形状保持部の内壁との間に補強材を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の減圧乾燥装置。
【請求項4】
前記蓋形状保持部と前記天板とで形成される空間の圧力は、乾燥促進圧力と同等であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の減圧乾燥装置。
【請求項5】
前記蓋形状保持部は圧力制御部を有し、少なくとも基板上の塗布膜の減圧乾燥が完了するまでは、前記圧力制御部によって前記蓋形状保持部と前記天板とで形成される空間の圧力がチャンバ内部の圧力と同等となるように制御することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の減圧乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−29259(P2013−29259A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166128(P2011−166128)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】