説明

減圧変形防止容器

【課題】 内容物が容器の胴壁を透過して放出したときに、容器内が減圧し、変形することを防止するようにした減圧変形防止容器を提供すること。
【解決手段】 口筒部と首部を具えた容器であって、首部には、円周の一部に平面部を切り欠いて形成される切欠壁部が形成され、切欠壁部の平面部の中心には、横方向に向かい開口を穿設した弁係合筒が設けられ、弁係合筒に弁部材が装着され、容器内が減圧したときに、弁部材により容器内に外気が吸入されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器、とくに容器内の減圧に対して容器の変形を防止する減圧変形防止容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リモネン含有物品を安定的に保存するための包装容器として、保香性やガスバリア性に優れた樹脂を素材とした積層フィルムを、袋状の容器とすること、或いはシートまたはフィルムを用いて成形したチューブ、ボトル等を得ることは、従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−282638
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、PETボトルの場合には、リモネン含有物品に対するガスバリア性が不十分であって、長時間使用していると、ボトル胴部が減圧により変形するという問題があった。
【0004】
本発明は、上記の問題を解決することを課題として、内容物が容器の胴壁を透過して放出したときに、容器内が減圧し、変形することを防止するようにした減圧変形防止容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するため、減圧変形防止容器として、口筒部と首部を具えた容器であって、首部には、円周の一部に平面部を切り欠いて形成される切欠壁部が形成され、切欠壁部の平面部の中心には、横方向に向かい開口を穿設した弁係合筒が設けられ、弁係合筒に弁部材が装着され、容器内が減圧したときに、弁部材により容器内に外気が吸入されることを特徴とする構成を採用する。
【0006】
減圧変形防止容器の別実施例として、口筒部に弁部ジョイントを装着した容器であって、弁部ジョイントは、容器本体の口筒部と係合する係合筒部と、首筒部と、取付キャップを螺着する口筒部とを具え、首筒部には、外周の一部から横方向に向かい突設される弁係合筒が設けられ、弁係合筒内周の内方端には、中心に首筒部内方に開口する係合孔を穿設した係合壁が設けられ、弁係合筒に弁部材が装着され、容器内が減圧したときに、弁部材により容器内に外気が吸入されることを特徴とする構成を採用する。
【0007】
弁部材の実施例として、弁部材が、柔軟性のある素材で形成される弁と、弁部材を弁係合筒に装着する弁押さえとからなり、弁押さえは、弁係合筒に装着する係合筒と、空気孔が穿設された弁支持筒とを具えていることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0008】
容器本体、またはジョイントに、外気を容器内に吸気する弁部材を装着することにより、内容液に含まれるリモネンなどの成分が時間の経過とともに、容器壁面を透過して容器の外に放出しても、弁部材により容器内に外気を吸気できるので、内圧を一定にすることができ、減圧による容器の変形を防止することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の容器について、実施例をあげて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1において、Aは容器本体、Bは容器本体Aの首部に装着される弁部材、Cは容器本体Aの口筒部に螺着する取付キャップ、Dは取付キャップCを介して容器本体Aに装着される液体噴出器である。
【0011】
図1、2に示すように、容器本体Aは、口筒部1と首部2、胴部3とからなり、口筒部1には、ねじ4が螺設されている。
首部2には、円周の一部に平面部5aを切り欠いて形成される切欠壁部5が形成されている。
【0012】
切欠壁部5の平面部5aの中心には、横方向に向かい開口6を穿設した弁部材Bを装着する弁係合筒7が配設されている。
弁係合筒7の外周には、係合突条8が設けられている。
【0013】
弁部材Bは、ゴム、エラストマー等の軟材質、または柔軟性のある合成樹脂で形成される弁B1と、該B1を装着するとともに、容器本体Aの首部2の弁係合筒7に装着する弁押さえB2とからなっている。
弁B1は、弁筒10と、弁筒10の一端に連設されるフランジ11と、弁筒10のフランジ11の反対側に、内方に傾斜する弁部12が形成されている。
【0014】
弁押さえB2は、押さえ壁15と、内周が容器本体Aの首部2の弁係合筒7外周に係合する係合筒16とを具えており、係合筒16の内周には、首部2の弁係合筒7の係合突条8と係合する係合部17が配設されている。
【0015】
押さえ壁15の中心には、空気孔18が穿設され、空気孔18の内周には、連結片19を介して、弁B1の弁筒10の弁部12内周が摺接し、弁部12が弁動する弁軸筒20が配設されている。
【0016】
取付キャップCは、図1に示すように、側周壁25内周に設けたねじと、容器本体Aの口筒部1のねじ4とを螺合させ、取付キャップCおよび液体噴出器Dを容器本体Aの上部に装着するものであり、詳細な説明は省略する。
【0017】
液体噴出器Dは、トリガー26を引くことで、内部のポンプにより、容器本体A内の内容液を吸上げパイプ27で吸上げ、噴霧ノズル28より噴出するものであればよく、また、内容液を噴霧することにより、容器内の内容液を吸上げ、容器内が減圧した際に、外部より容器内に空気を導入する従来の噴霧器でもよく、詳細な説明は省略する。
【0018】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
弁B1の弁筒10内周に、フランジ11側から弁押さえB2の弁軸筒20外周先端を挿入し、弁筒10の弁部12内周に弁軸筒20を摺動させながら、弁B1を弁押さえB2に取付け、弁部材Bとし、該弁部材Bを容器本体Aの弁係合筒7に装着する。
【0019】
弁部材Bを弁係合筒7に装着することにより、弁B1のフランジ11が、弁押さえB2の押さえ壁15下面と弁係合筒7の筒先端面とで挟持され、弁B1が弁係合筒7内にズレ込むことを防止している。
【0020】
次に、容器本体A内に、リモネンなど透過し易い成分を含んだ内容液を充填した後、取付キャップCにより液体噴出器Dを容器本体Aの口筒部1に装着させ、本実施例の液体噴出容器とする。
【0021】
内容液に含まれるリモネンなどの成分は、時間の経過とともに気化し、容器壁面を透過して容器外に放出するため、容器内は減圧するが、本実施例の容器では、容器内が減圧すると、弁部材Bの弁B1の弁筒10の先端の弁部12が変形し、弁押さえB2の弁軸筒20外周との間に間隙を瞬間的に形成し、弁押さえB2の空気孔18から外気を容器本体Aの弁係合筒7の開口6より容器内に吸気して容器内の内圧を一定にすることができ、減圧による容器の変形を防止することができる。
【0022】
上記実施例では、液体噴出器Dのトリガー26を操作することにより、容器本体A内の内容液を噴霧ノズル28より噴出するものとしたが、本発明の容器の噴出器としては、例えば押し下げポンプ式としてもよく、液体噴出器自体の構成は、上記実施例の構成に限定されない。
【0023】
また、液体噴出器D、および取付キャップCの代わりに、図2に示した容器本体Aの口筒部1に螺合して容器内を密封する蓋体を装着し、詰め替え用容器とすることもできる。
詰め替え容器として、時間の経過とともに気化して容器を透過する成分の内容液でも、容器内が負圧になっても弁部材Bにより容器内に外気が吸気されるので、減圧によって容器自体が変形することを防止することができる。
【実施例2】
【0024】
次に、実施例1において、容器本体と取付キャップの間に弁部ジョイントを装着するようにした第2実施例について説明する。
実施例1と同様の構成部分は、同一の符号をもって図示し、以下相違点を中心に説明する。
【0025】
図3において、Eは容器本体、Fは容器本体Eに装着される弁部ジョイント、Cは弁部ジョイントFに螺着する取付キャップ、Dは取付キャップCを介して弁部ジョイントFに装着される液体噴出器である。
容器本体Eは、口筒部30と胴部31とからなり、口筒部には、ねじ32が螺設されている。
【0026】
図3、4に示すように、弁部ジョイントFは、ジョイントF1と、ゴム、エラストマー等の軟材質、または柔軟性のある合成樹脂で形成される弁B1と、弁B1を装着するとともに、ジョイントF1に装着する弁押さえF2とからなっている。
【0027】
ジョイントF1は、外周にねじ35を螺設した口筒部36と首筒部37と、首筒部37の外周の一部から横方向に向かい突設される弁係合筒38と、首筒部37の下端に連設される係合筒部39とを具えており、係合筒部39の内周には、容器本体Eの口筒部30に螺合するねじ40が螺設されている。
【0028】
弁係合筒38の内周の内側端には、中央に首筒部37の内方に開口するとともに、弁B1、および弁押さえF2の先端部を、首筒部37の内方に挿入させる係合孔41を穿設した係合壁42が形成され、内周の外側には、係合部43が配設されている。
【0029】
弁押さえF2は、外周がジョイントF1の弁係合筒38内周に係合する係合筒45と、係合筒45の内周の内側端に、中央に空気孔46が穿設された押さえ壁47とを具えている。
空気孔46の内周には、連結片48を介して、弁B1の弁部12が弁動するとともに、弁B1の先端部とともに弁係合筒38の係合孔41内方に挿入される弁軸49が配設されている。
係合筒45の外周には、ジョイントF1の弁係合筒38内周の係合部43に係合する係合突条50が配設されている。
【0030】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
弁B1の弁筒10内周にフランジ11側から弁押さえF2の弁軸49外周先端を挿入し、弁B1を弁押さえF2に取付けた後、弁押さえF2をジョイントF1の弁係合筒38内に装着し、弁部ジョイントFとする。
【0031】
ジョイントF1の弁係合筒38内に弁押さえF2を装着することにより、弁B1のフランジ11が、弁押さえF2の押さえ壁47下面と弁係合筒38の係合壁42上面とで挟持され、弁B1がジョイントF1内にズレ込むことを防止している。
【0032】
次に、容器本体E内にリモネンなどの気化して容器を透過し易い成分を含んだ内容液を充填した後、容器本体Eの口筒部30と弁部ジョイントFの係合筒部39とを螺合させた後、取付キャップCにより液体噴出器Dを弁部ジョイントFの口筒部36に装着させ、本実施例の液体噴出容器とする。
【0033】
本実施例の容器では、内容液の気化により容器本体E内が減圧すると、弁部ジョイントFの弁B1の弁筒10の先端の弁部12が変形し、弁押さえF2の弁軸49外周との間に間隙を瞬間的に形成し、弁押さえF2の空気孔46から外気をジョイントF1内から容器内に吸気して容器内の内圧を一定にすることができ、減圧による容器の変形を防止することができる。
【0034】
また、液体噴出器Dおよび取付キャップCの代わりに、図4に示したジョイントF1の口筒部36に螺合して容器内を密封する蓋体を装着し、詰め替え用容器とすることもできる。
その他、第1実施例と同一の作用効果を得ることができる。
【0035】
前記各実施例では、弁部材を容器本体の首部、または口筒部に装着したジョイントに設けるようにしているが、容器本体の胴部、または底部に配設するようにしてもよく、実施例の配設位置に限定されない。
【0036】
また、各実施例では、弁部材を、弁と弁押さえとから構成し、弁係合筒に装着するようにし、弁押さえの弁軸筒20、または弁軸49にフランジを具えた弁を取着するようにしているが、弁体をゴム、エラストマー等の軟材質のチューブとして、空気孔を設けた弁支持筒に被覆するようにしてもよく、実施例に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
内容液に含まれるリモネンなどの成分により、容器内が減圧しても、容器自体またはジョイントに設けた弁で容器内に外気を吸気して容器内の内圧を一定に保つことができ、容器をある程度の期間放置しても変形を防止することができる容器として、トリガー式液体噴出容器やポンプ式液体容器など、またはそれらの詰め替え容器として消費者が安心して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施例の減圧変形防止容器の断面立面図である。
【図2】容器本体の首部の説明図で、(a)は要部斜視図、(b)は図1のX−X線の上面図である。
【図3】本発明の第2実施例の減圧変形防止容器の断面立面図である。
【図4】弁部ジョイントの説明図で、(a)は要部斜視図、(b)は図3のX−X線の上面図である。
【符号の説明】
【0039】
A、E 容器本体
B 弁部材
B1 弁
B2、F2 弁押さえ
C 取付キャップ
D 液体噴出器
F 弁部ジョイント
F1 ジョイント
1、30、36 口筒部
2 首部
3、31 胴部
4、32、35、40 ねじ
5 切欠壁部
5a 平面部
6 開口
7、38 弁係合筒
8、50 係合突条
10 弁筒
11 フランジ
12 弁部
15、47 押さえ壁
16、45 係合筒
17、43 係合部
18、46 空気孔
19、48 連結片
20 弁軸筒
25 側周壁
26 トリガー
27 吸上げパイプ
28 噴霧ノズル
37 首筒部
39 係合筒部
41 係合孔
42 係合壁
49 弁軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口筒部と首部を具えた容器であって、
首部には、円周の一部に平面部を切り欠いて形成される切欠壁部が形成され、
切欠壁部の平面部の中心には、横方向に向かい開口を穿設した弁係合筒が設けられ、
弁係合筒に弁部材が装着され、
容器内が減圧したときに、弁部材により容器内に外気が吸入されることを特徴とする減圧変形防止容器。
【請求項2】
口筒部に弁部ジョイントを装着した容器であって、
弁部ジョイントは、容器本体の口筒部と係合する係合筒部と、首筒部と、取付キャップを螺着する口筒部とを具え、
首筒部には、外周の一部から横方向に向かい突設される弁係合筒が設けられ、
弁係合筒内周の内方端には、中心に首筒部内方に開口する係合孔を穿設した係合壁が設けられ、
弁係合筒に弁部材が装着され、
容器内が減圧したときに、弁部材により容器内に外気が吸入されることを特徴とする減圧変形防止容器。
【請求項3】
弁部材が、柔軟性のある素材で形成される弁と、弁部材を弁係合筒に装着する弁押さえとからなり、
弁押さえは、弁係合筒に装着する係合筒と、空気孔が穿設された弁支持筒とを具えていることを特徴とする請求項1、2記載の減圧変形防止容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−137659(P2008−137659A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322642(P2006−322642)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】