説明

減圧成形型

【課題】簡単な構成で、第二シール部材の両端部を第一シール部材に対して確実に当接させてシールしてキャビティ内の減圧度を確実に維持することができる減圧成形型を提供する。
【解決手段】減圧成形型は、下型1、上型2、スライド3、第一シール部材4、第一シール部材4のシール面40に端部5aが当接される第二シール部材5とを備えており、キャビティ6内を減圧した状態で成形材料を射出充填するものであって、少なくとも、第一シール部材4のシール面40が平面状に成形されているか、または、第二シール部材5が断面矩形に成形されており、第二シール部材5の、少なくとも第一シール部材4に当接される端部5aが、第一シール部材4と比較して柔らかい弾性体により構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧成形型に関し、特に、相対向して開閉可能に設けられた第一成形型および第二成形型と、該第一成形型と第二成形型の開閉方向とは異なる方向に移動されるスライドと、前記第一成形型と第二成形型およびスライドとの型合わせ面をシールする第一シール部材と、該第一シール部材に対して端部が当接されて前記第一成形型および第二成形型とスライドとの型合わせ面をシールする第二シール部材とを備え、前記第一成形型、第二成形型、およびスライドによって形成されたキャビティ内を減圧した状態で成形材料を射出充填する減圧成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト成形においては、成形材料である溶湯のエアー巻き込みを抑制して鋳造品質を向上させるために、成形型のキャビティ内を減圧した状態で溶湯をキャビティ内に射出充填する減圧ダイカスト法が従来から行われている。そして、この減圧ダイカストに用いられる成形型(減圧成形型)では、キャビティ内を減圧するときに成形型外から空気などがキャビティ内にリークすることなくその減圧度を維持するために、成形型の型合わせ面にシール部材を設けることが知られている。
【0003】
ところで、減圧成形型のなかには、成形する製品の形状などによって、図6〜8に参照されるように、相対向して開閉可能に設けられた第一成形型1および第二成形型2の開閉方向Yとは異なる方向Xに移動されるスライド3を有するものがある。この場合には、第一成形型1と第二成形型2およびスライド3との型合わせ面をシールするために第一シール部材4が設けられるとともに、第二成形型2とスライド3との型合わせ面をシールするために第二シール部材5が設けられ、第二シール部材5は、その端部5aが第一シール部材4のシール面40に対して当接されることにより端部5aとシール面40との間をシールするよう構成されている。このような減圧成形型の従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1には、固定型(第一成形型)と移動型(第二成形型)との間にシールリング(第一シール部材)を設け、また、移動中子(スライド)と移動型との間に、移動中子の移動型に当接する面に両端部が露出するようにコの字状に形成されたシール部材(第二シール部材)を配置することが開示されている。そして、特許文献1では、固定型と移動型と移動中子とを型合わせしたときに、シール部材の両端部がシールリングに重なり連結する(当接させる)ことにより、閉曲線をなすことが記載されている。なお、第一シール部材と第二シール部材は一般に、ゴムなどの弾性体により構成されており、同じゴム硬さで、同径の断面円形の所謂Oリングが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−211918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図9(第一シール部材4’が紙面に対して垂直に延びている状態で示した部分拡大断面図である)に示すように、第二シール部材5’は、一般に所定の長さに切断するだけであり、その端面が平坦でない。そのため、上記特許文献1にあっては、固定型と移動型と移動中子とを当接させたときに、シール部材(第二シール部材5’)の両端部(5a’)とシールリング(第一シール部材4’のシール面40’)とを確実に連結することが困難であり、両者5a’、40’の間に生じる隙間から空気などがキャビティ内にリークするため、減圧度を維持することが困難であるという問題があった。
【0007】
そして、一般にシール部材は、成形回数を重ねるにしたがって老朽化し、この老朽化に伴って収縮する。上記特許文献1にあっては、特にシールリング(第一シール部材4’)とシール部材(第二シール部材5’)とがともに断面円形で、同径で、同じゴム硬さで構成されているためにシール部材(第二シール部材5’)の両端部(5a’)とシールリング(第一シール部材4’のシール面40’)との当接する面積が少なく、したがって、シール部材(第二シール部材5’)が収縮すると、シール部材(第二シール部材5’)の両端部(5a’)とシールリング(第一シール部材4’のシール面40’)とを確実に連結することが困難な事態となるという問題があった。そして、特許文献1に開示された成形型にあっては、このような事態を防止するために、シール部材の収縮を監視し、必要に応じて交換するなど、メンテナンスに要する手間が煩雑であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、第二シール部材の両端部を第一シール部材に対して確実に当接させてシールしてキャビティ内の減圧度を確実に維持することができ、もって、溶湯のエアー巻き込みを確実に抑制して鋳造品質を向上させることができる減圧成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、上記目的を達成するため、相対向して開閉可能に設けられた第一成形型および第二成形型と、該第一成形型と第二成形型の開閉方向とは異なる方向に移動されるスライドと、前記第一成形型と第二成形型およびスライドとの型合わせ面をシールする第一シール部材と、該第一シール部材に対して端部が当接されて前記第一成形型および第二成形型とスライドとの型合わせ面をシールする第二シール部材とを備え、前記第一成形型、第二成形型、およびスライドによって形成されたキャビティ内を減圧した状態で成形材料を射出充填する減圧成形型であって、少なくとも、前記第一シール部材のシール面が平面状に成形されるか、前記第二シール部材が断面矩形に成形されており、前記第二シール部材の、少なくとも前記第一シール部材に当接される端部が、前記第一シール部材と比較して柔らかい弾性体により構成されていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明において、前記第一シール部材の幅が前記第二シール部材の幅よりも大きくなるように成形されていることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、上記目的を達成するため、請求項1または2のいずれかに記載の発明において、前記第二シール部材の、少なくとも前記第一シール部材に当接される端部がゴム硬さHs(アスカC)=50以下であることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、上記目的を達成するため、相対向して開閉可能に設けられた第一成形型および第二成形型と、該第一成形型と第二成形型の開閉方向とは異なる方向に移動されるスライドと、前記第一成形型と第二成形型およびスライドとの型合わせ面をシールする第一シール部材と、該第一シール部材に対して端部が当接されて前記第一成形型および第二成形型とスライドとの型合わせ面をシールする第二シール部材とを備え、前記第一成形型、第二成形型、およびスライドによって形成されたキャビティ内を減圧した状態で成形材料を射出充填する減圧成形型であって、少なくとも、前記第一シール部材のシール面が平面状に成形されるか、前記第二シール部材が断面矩形に成形されており、前記第一シール部材の幅が前記第二シール部材の幅よりも大きくなるように形成されていることを特徴とするものである。
請求項5の発明は、上記目的を達成するため、請求項4に記載の発明において、前記第二シール部材の端部に、前記第一シール部材の幅方向に延びており該第一シール部材に当接される当接部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、第一シール部材を、シール面が平面状となるような断面形状に成形するか、第二シール部材を断面矩形に成形するかの少なくともいずれか一方を採用し、さらに、第二シール部材の、少なくとも第一シール部材に当接される両端部を、第一シール部材よりも柔らかい弾性体により構成することにより、各成形型を型合わせして第二シール部材の両端部を第一シール部材に当接させたときに、第二シール部材の端部が確実に潰れて隙間が生じることがないため、第一シール部材と第二シール部材の端部との間を確実にシールしてキャビティ内の減圧度を維持することができる。
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の発明において、第一シール部材の幅を第二シール部材の幅よりも大きくなるように成形することにより、各成形型を型合わせしたときに、第二シール部材の両端面が第一シール部材のシール面に確実に当接されるため、第一シール部材と第二シール部材の端部との間を確実にシールしてキャビティ内の減圧度を維持することができる。
請求項3の発明によれば、請求項1または2のいずれかに記載の発明において、前記第二シール部材の、少なくとも前記第一シール部材に当接される端部がゴム硬さHs(アスカC)=50以下であることにより、各成形型を型合わせして第二シール部材の両端部を第一シール部材に当接したときに、第二シール部材の端部が確実に潰れて隙間が生じることがなく、第一シール部材と第二シール部材の端部との間を確実にシールしてキャビティ内の減圧度を維持することが具現化できる。なお、第二シール部材の、少なくとも第一シール部材に当接される端部は、さらに、不連続な気泡を有する発泡ゴムにより構成することもできる。
請求項4の発明によれば、第一シール部材を、シール面が平面状となるような断面形状に成形するか、第二シール部材を断面矩形に成形するかの少なくともいずれか一方を採用し、さらに、第一シール部材の幅を第二シール部材の幅よりも大きくなるように成形することにより、各成形型を型合わせして第二シール部材の両端部を第一シール部材に当接したときに、第二シール部材の両端面が第一シール部材のシール面に確実に当接されるため、第一シール部材と第二シール部材の端部との間を確実にシールしてキャビティ内の減圧度を維持することができる。なお、第二シール部材は、その端面の周縁角部が面取り加工されていることが望ましい。
請求項5の発明によれば、請求項4に記載の発明において、第二シール部材の端部に、第一シール部材の幅方向に延びており該第一シール部材に当接される当接部を形成することにより、各成形型を型合わせしたときに、第二シール部材の当接部が確実に第一シール部材と当接して隙間が生じることがないため、第一シール部材と第二シール部材の端部との間を確実にシールしてキャビティ内の減圧度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による減圧成形型を説明するために、その要部を拡大して示した第一の実施の形態の断面図である。
【図2】本発明による減圧成形型を説明するために、その要部を拡大して示した第二の実施の形態の断面図である。
【図3】図2に示した第二の実施の形態の変形例を説明するために示した要部の拡大断面図である。
【図4】図3の状態から型締して第一シール部材に第二シールの端部が当接した状態を説明するために示した要部の拡大断面図である。
【図5】本発明による減圧成形型を説明するために、その要部を拡大して示した第3の実施の形態の断面図である。
【図6】本発明による減圧成形型の概略を説明するために概念的に示した縦断正面図である。
【図7】本発明による減圧成形型の概略を説明するために、図6の第二成形型を取り除いた状態を示した平面図である。
【図8】本発明による減圧成形型の概略を説明するために、図6のスライドを取り除くとともに第二成形型を縦断面で示した側面図である。
【図9】従来の減圧成形型を説明するために、その要部を拡大して示した断面図である。
【図10】断面円形の第一シール部材に対して異なる断面形状と硬さの第二シール部材の端面を当接させた場合の、時間経過に伴う減圧度の変化(リーク速度)をそれぞれ示したグラフである。
【図11】断面矩形の第一シール部材に対して異なる断面形状と硬さの第二シール部材の端面を当接させた場合の、時間経過に伴う減圧度の変化(リーク速度)をそれぞれ示したグラフである。
【図12】第一シール部材(硬さHs=55)に対して、第二シール部材の硬さを変化させた場合の、リーク速度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に、本発明の減圧成形型の基本的な構成の実施の一形態を図6〜8に基づいて説明する。ここで説明する減圧成形型の基本的な構成は、特に記述する場合を除いて、以下に説明する本発明の要部の各実施の形態に共通で使用することができる。なお、図において同じ符号は、同様または相当する部分を示すものとする。
本発明の減圧成形型は、概略、相対向して開閉可能に設けられた第一成形型1および第二成形型2と、この第一成形型1と第二成形型2の開閉方向とは異なる方向に移動されるスライド3と、第一成形型1と第二成形型2との型合わせ面をシールする第一シール部材4と、この第一シール部材4に対して端部5aが当接されて第一成形型1および第二成形型2とスライド3との型合わせ面をシールする第二シール部材5とを備えており、第一成形型1、第二成形型2、およびスライド3によって形成されたキャビティ6内を減圧した状態で成形材料を射出充填するものである。
【0013】
この実施の形態における第一成形型1と第二成形型2は、下型と上型により構成されている。以下の説明では、第一成形型を下型1と、第二成形型を上型2ということとするが、第一および第二成形型1、2は、例えば開閉方向が水平となるなど、配置によって下型および上型以外の場合もある。図6〜図8に示した実施の形態における下型1は、キャビティ6を形成するためのキャビティ面が型彫されており、このキャビティ面は、上型2によって開閉される下型1の上面1aと、スライド3によって開閉される下型1の側面1bとが開放している。
【0014】
上型2は、下型1とスライド3とを覆い得る大きさを有する略板状に成形されている。この実施の形態では、上型2が型締ラムなどの型開閉手段に支持されており、下型1に対して上型2が近接(型閉じ)および遠退(型開き)するよう昇降移動可能に構成されている。したがって、下型1に対する上型2の開閉方向は、図6において矢印Yで示すように鉛直方向となる。
【0015】
スライド3は、下型1のキャビティ面の側方開放部を覆い得る大きさを有する略板状に成形されている。そして、スライド3は、スライド型締ラムなどのスライド開閉手段に支持されており、下型1に対してスライド3が近接(型閉じ)および遠退(型開き)するよう図6における水平方向に移動可能に構成されている。したがって、スライド3の下型1に対する開閉方向は、図6において矢印Xで示すように水平方向となる。また、スライド3は、下型1に対して型合わせしたときに、その上面3aが下型の上面1aと同じ高さとなるように設定されている。
【0016】
この実施の形態では、上型2の下面であって、第一シール部材4を収容するための環状溝20がキャビティ面の上方開放部を取り囲むように形成されている。第一シ−ル部材4は、環状溝20と対応して、環状に成形されている。下型1とスライド3の上面1a、3aは、上型2に設けられた第一シール部材4のシール面40と当接されるため、平滑に成形されている。図1に示した実施の形態における第一シール部材4は、その断面が矩形に成形されており、下型1とスライド3の上面1a、3aに接するシール面40が平面状となっている。しかしながら、後述する実施例で説明するように、本発明による第一シール部材4には、断面円形に成形された場合も含まれる。
【0017】
一方、この実施の形態では、スライド3の下型1と対向する側面に、第二シール部材5を収容するためのU字状溝30がキャビティ面の側方開放部を取り囲むように形成されており、第二シ−ル部材5は、U字状溝30と対応して、U字状に成形されている。下型1のスライド3と対向する側面1bは、U字状の第二シール部材5のシール面50と当接されるため、平滑に成形されている。そして、第二シール部材5は、下型1およびスライド3と上型2とを型合わせしたときに、その端部5aが第一シール部材4のシール面40に当接されるように、スライド3の上面3aに位置するU字状溝30の開放端から所定の長さ(例えば1〜2mm)だけ突出するよう成形されている。この実施の形態における第二シール部材5は、後述する実施例で説明するように、断面が矩形に成形されて下型1の側面1bに接するシール面50が平面状となっている。しかしながら、後述する実施例で説明するように、本発明による第二シール部材5には、断面円形に成形された場合も含まれる。
【0018】
このように構成された減圧成形型は、スライド開閉手段によりスライド3を下型1に対して近接させてその側面3bを下型1の側面1bと型合わせして、型開閉手段により上型2を下型1とスライド3に対して近接させて、下型1の上面1aとスライド3の上面3aを型合わせすることにより、それぞれの型合わせ面がシールされて、内部にキャビティ6が形成される。そして、減圧成形型は、図6および図8に示すように、減圧手段と接続される通路7がキャビティ6に連通するように設けられており、また、所定量の溶融金属(溶湯)を射出充填するためのプランジャ装置(図示は省略した)が接続されており、通路7を介して減圧手段によってキャビティ6内を減圧した状態で、溶湯をキャビティ6内に射出充填することにより、所定形状の製品を成形する。
【0019】
次に、本発明による減圧成形型の要部の第一の実施の形態を図1に基づいて詳細に説明する。なお、図1では、上型2とスライド3の部分拡大断面図であり、紙面に対して第一シール部材4が垂直に延びており、下型1はスライド3の奥に隠れて見えない状態となっている。
この実施の形態における減圧成形型は、概略、少なくとも、第一シール部材4のシール面40が平面状に成形されているか、または、第二シール部材5が断面矩形に成形されており、第二シール部材5の、少なくとも第一シール部材4に当接される端部5aが、第一シール部材4と比較して柔らかい弾性体により構成されている。
【0020】
この実施の形態においては、環状の第一シール部材4が、その断面を矩形に成形されている。したがって、第一シール部材4の下型1およびスライド3の上面1a、3aに対するシール面40は、平面状に形成されている。一方、U字状の第二シール部材5の、少なくとも第一シール部材4に当接される端部(図1における二点鎖線から先端の部分)5aは、その断面が円形または矩形に成形されており、第一シ−ル部材4と比較して柔らかい材質により構成されている。なお、第一シール部材4は、例えば、弾性体としてフッ素ゴムやシリコンゴムなどにより構成することができ、その硬さとしてゴム硬度Hs=55〜80とすることができる。また、第二シール部材5の先端の部分5a以外の中間部も第一シール部材4と同じ材質、同じゴム硬度とすることができ、その先端の部分5aと同様または異ならせて、断面を円形または矩形に成形することができる。そして、第二シール部材5の先端の部分5aの部分については、例えば、不連続な気泡を有する発泡ゴムを上述した中間部に接着するなどして構成することができ、その硬さとしてゴム硬度Hs(アスカC)=20〜50とすることができる。なお、本発明は、上述したように第二シール部材5の先端の部分5aのみを第一シール部材4と比較して柔らかい弾性体により構成することに限定されることなく、第二シール部材5全体を第一シール部材4と比較して柔らかい弾性体により構成することもできる。さらに、本発明は、上述した実施の形態に限定されることはなく、後述する実施例で説明するように、環状の第一シール部材4の断面を円形に成形するとともに、U字状の第二シール部材5の少なくとも先端5aの部分を断面矩形に成形する場合も含まれる。つまり、環状の第一シール部材4のシール面40を平面状に成形した場合には、U字状の第二シール部材5は断面円形でもよく、U字状の第二シール部材5を断面矩形に成形した場合には、第一シール部材4のシール面40を平面状に成形しなくてもよく、さらには、環状の第一シール部材4のシール面40を平面状に成形し且つU字状の第二シール部材5を断面矩形に成形することもできる。いずれの場合にも、第一シ−ル部材4の幅(径)は、第二シール部材5の径(幅)よりも大きくなるように設定されている。
【0021】
このように構成された減圧成形型では、スライド3を下型1に対して近接させてその側面3bを下型1の側面1bと型合わせすると、U字状の第二シール部材5のU字状溝30に収容されている部分が下型1の側面1bとスライド3の側面3bとの間の型合わせ面をシールすることとなる。このとき、U字状の第二シール部材5の両先端5aの部分は、U字状溝40から上方に所定の長さ(例えば1〜2mm程度)だけ突出している。次いで、上型2を下降させて下型1およびスライド3と型合わせすると、環状の第一シール部材4が下型1とスライドの上面1a、3aと上型2の下面との間の型合わせ面をシールすることとなる。このとき、U字状の第二シール部材5の両先端の部分5aが第一シール部材4のシール面40と当接されることとなる。
【0022】
ここで、図1に示した実施の形態では、第一シール部材4のシール面40が平面状に成形されている場合には、第一シール部材4のシール面40の第二シール部材の端部5aの端面が当接される面積が増加する。また、第二シール部材5が断面矩形に成形されている場合には、その幅が断面円形の第二シール部材5の径と同じあっても、第二シール部材5の端部5aの端面の第一シール部材4のシール面40に対して当接される面積が増加する。また、U字状の第二シール部材5の両先端5aの部分が第一シール部材4と比較して柔らかい弾性体により構成されていることにより、第5シール部材の端部5aの端面が第一シール部材4のシール面40に当接されて潰されるように弾性変形し、密着することとなる。そして、第一シール部材4のシール面40の幅(径)が第二シール部材5の径(幅)よりも大きくなるように成形されている場合には、当接されることにより潰されるように弾性変形した第二シール部材5の端部5aの、第一シール部材4のシール面40に対する面積がさらに増大する。これらの結果、第二シール部材5の端面が平坦でない場合(図9を参照)であっても、第一シール部材4のシール面40との間に隙間が生じることがなく、したがって、キャビティ6内に空気などがリークするのを防止して減圧度を維持することができる。
【0023】
なお、第一シール部材4が断面円形に成形されるなどしてそのシール面40が平面状でない場合であっても、第2シール部材5の断面を矩形に成形することにより、第二シール部材5の少なくとも端部5aが第一シール部材4よりも柔らかい材質の弾性体により構成されているため、この端部5aが第一シール部材4の平面状でないシール面40に当接されてその曲面に応じて潰れるよう弾性変形することとなり、第一シール部材4のシール面40と第二シール部材5の端面との間に隙間が生じることがなく、したがって、キャビティ6内に空気などがリークするのを防止して減圧度を維持することができる。
【0024】
次に、本発明による減圧成形型の要部の第二の実施の形態を図2〜図4に基づいて詳細に説明する。上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
この実施の形態における減圧成形型は、概略、少なくとも、第一シール部材4のシール面40が平面状に成形されるか、第二シール部材5が断面矩形に成形されており、第一シール部材4の幅が第二シール5の幅よりも広くなるように形成されている。
【0025】
この実施の形態における第一シール部材4は、上述した第一の実施の形態と同様に、環状で、その断面が矩形に成形されており、下型1とスライド3の上面1a、3aに接するシール面40が平面状となっている。そして、この実施の形態における第一シール部材4も、上述した第一の実施の形態と同様に、その幅(径)が第二シール部材5の径(幅)よりも大きくなるように設定されている。しかしながら、この実施の形態における第一シール部材4は、上述した第一の実施の形態と比較してさらにシール面40の幅が大きく(広く)なっている。このことを言い換えれば、上述した第一の実施の形態における第一シール部材4は、その幅(径)が第二シール部材5の径(幅)よりも大きいが、この第二の実施の形態と比較して、シール面40の幅が小さく(狭く)なっている。なお、後述する実施例で説明するように、本発明には、断面円形に成形された第一シール部材4も含まれることは、第一の実施の形態と同様である。
【0026】
また、この第二の実施の形態における第二シール部材5も、下型1およびスライド3と上型2とを型合わせしたときに、その端部5aが第一シール部材4のシール面40に当接されるように、スライド3の上面3aに位置するU字状溝30の開放端から所定の長さ(たとえば1〜2mm程度)だけ突出するよう成形されている。そして、第二シール部材5は、後述する実施例で説明するように、その端面を含む断面が矩形に成形されているか、または、断面円形に成形されていることは、第一の実施の形態と同様である。
【0027】
このように構成された減圧成形型では、スライド3を下型1に対して近接させてその側面3bを下型1の側面1bと型合わせすると、U字状の第二シール部材5のU字状溝30に収容されている部分が下型1の側面1bとスライド3の側面3bとの間の型合わせ面をシールすることとなる。このとき、U字状の第二シール部材5の両先端5aの部分は、U字状溝30から上方に所定の長さだけ突出している。次いで、上型2を下降させて下型1およびスライド3と型合わせすると、その型合わせ面が環状の第一シール部材4によりシールされることとなる。
【0028】
このとき、U字状の第二シール部材5の両先端5aの部分が第一シール部材4のシール面40と当接されることとなるが、環状の第一シール部材4は、その幅(径)が第二シール5の径(幅)よりも大きく(広く)なるように形成されていることにより、第二シール部材5の端部5aが当接された第一シール部材4のシール面40は、第二シール部材5の端面が平坦でない場合であっても、第一シール部材4の幅広のシール面40は、当接された第二シール部材5の両先端5aの部分を充分に包み込むように密着するため(図4を参照)、第一シール部材4のシール面40との間に隙間が生じることがなく、したがって、キャビティ6内に空気などがリークするのを防止して減圧度を維持することができる。
【0029】
ここで、図3は、上述した第二の実施の形態の変形例を示したものである。この変形例では、第一シール部材4のシール面40に当接される第二シール部材5の端面の周縁角部5bが面取り加工されている。そのため、各成形型1、2、3を型合わせして第二シール部材5の端面の周縁角部5bが面取り加工された端部5aを第一シール部材4のシール面40に当接させると、図4に示すように、第一シール部材4のシール面40が第二シール部材5の端面をさらに充分に包み込むように密着するため、第一シール部材4のシール面40との間に隙間が生じることが確実になくなり、したがって、キャビティ6内に空気などがリークするのを防止して減圧度を維持することができる。
【0030】
次に、本発明の減圧成形型の第3の実施の形態を、図5に基づいて説明する。上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
この実施の形態における減圧成形型は、概略、上述した第二の実施の形態に加えて、第二シール部材5の端部5aに、第一シール部材4の幅方向に延びておりこの第一シール部材4のシール面40に当接される当接部55が形成されている。
【0031】
この第3の実施の形態においても、第二の実施の形態と同様に、第一シール部材4は、断面が矩形に成形されており、シール面40が平面状となっている。第一シール部材4の幅は、図5に示した実施の形態の場合、図1に示した第一の実施の形態と同様に設定されている。一方、第二シール部材は、当接部55が設けられた端部5aを除いて、上述した実施の形態と同様に、断面が矩形または円形に成形されており、その径(幅)は第一シール部材4の幅(径)よりも小さく(狭く)設定されている。第二シール部材5の端部5aに設けられる当接部55は、それ以外の部分から第一シート部材4の幅と同じ長さとなるようにその幅方向に突出している。なお、第二シール部材5の当接部55以外の部分の断面形状が矩形の場合、当接部55の断面(図5における縦断面)形状を矩形としても円形としてもよく、第二シール部材5の当接部55以外の部分の断面形状が円形の場合、当接部55は断面円形でも断面矩形でもよいが、第一シ−ル部材4のシール面40に対する接地面積が高くなることから断面矩形であることが望ましい。この実施の形態におけるスライド3の第二シール部材5を収容するU字状溝30の上端部は、第二シール部材5の当接部55と対応するように凹部30aが形成されている。
【0032】
このように構成された減圧成形型では、スライド3を下型1に対して近接させてその側面3bを下型1の側面1bと型合わせすると、U字状の第二シール部材5のU字状溝30に収容されている部分が下型1の側面1bとスライド3の側面3bとの間の型合わせ面をシールすることとなる。このとき、U字状の第二シール部材5の両端部5aの当接部55は、下型1の側面に沿って水平方向に延びており、その上面がU字状溝30の凹部30aから上方に所定の長さだけ突出している。次いで、上型2を下降させて下型1およびスライド3と型合わせすると、その上面1a、3aを環状の第一シール部材4がシールすることとなる。
【0033】
このとき、U字状の第二シール部材5の両端部5aの当接部55が第一シール部材4のシール面40と当接されることとなるが、環状の第一シール部材4は、その幅(径)が第二シール5の当接部55以外の部分の径(幅)よりも大きく(広く)なるように形成されており、且つ、U字状の第二シール部材5の両端部5aの当接部55がそれ以外の部分から第一シール部材4のシール面40の幅方向に延びるよう突出していることにより、第二シール部材5のシール面40に対する当接する面積がさらに増大し、第一シール部材4のシール面40との間に隙間が生じることがなく、したがって、キャビティ6内に空気などがリークするのを防止して減圧度を維持することができる。
【0034】
次に、上述した第一の実施の形態および第二の実施の形態の実施例を図10および図11に基づいて説明する。図10では、第一シール部材4が断面円形で、ゴム硬度Hs=55であり、第二シール部材5が、断面矩形でゴム硬度Hs(アスカC)=25の場合(実線で示した)、断面円形でゴム硬度Hs=55の場合(一点鎖線で示した)、断面矩形でゴム硬度Hs=71の場合(二点鎖線で示した)の、時間経過に伴う真空度の変化、すなわちリーク速度を示したものである。また、この実施例では第二シール部材5の幅または径に対する第一シール部材1の径を120〜200%程度としている(例えば、第二シール部材5の幅または径を8.0mmとした場合、第一シール部材4のシール面40の径は、9.6〜16.0mmである)。なお、図10中Bで示した点は、キャビティ6内を減圧した状態で、図6および図8に示した通路7に接続された減圧手段のバルブを閉じた時点を示す。
【0035】
図10から明らかであるように、第二シール部材5の断面が矩形であってもゴム硬度が第一シール部材4よりも硬い(Hs=71)場合(二点鎖線)には、キャビティ6内を減圧している時点で既にリークしており、キャビティ6内を充分に減圧することすらできず、バルブを閉じた時点で短時間でキャビティ6内が大気圧に戻っている。また、第二シール部材5の面が円形であってもゴム硬度が第一シール部材4と同じ(Hs=55)である場合(一点鎖線)には、キャビティ6を減圧している時点でのリークは二点鎖線で示した場合と比較すると少なく、また、バルブを閉じた時点Bでキャビティ6が大気圧に戻る速さも緩やかではある。しかしながら、この一点鎖線で示した場合も、キャビティ6の減圧度が低く(Torrの数値が高く)、キャビティ6が大気圧に戻ることとなる。
【0036】
これに対して、第二シール部材5が断面矩形であり、そのゴム硬度が第一シール部材4と比較して柔らかい(Hs(アスカC)=25)場合(実線で示した本発明の場合)、通路7を介して減圧手段によりキャビティ6内が確実に減圧され、また、バルブを閉じた時点B以後も、キャビティ6内の減圧を比較的長い時間維持することができている。このことから、本発明では、第一シール部材4のシール面40と第二シール部材5の端面との間が確実にシールされているものと判断することができる。
【0037】
図11では、第一シール部材4が断面矩形で、そのゴム硬度Hs(アスカC)=35の場合を示している。第二シール部材5は、図10と同様に、断面矩形でゴム硬度Hs(アスカC)=25の場合(実線で示した)、断面円形でゴム硬度Hs=55の場合(一点鎖線で示した)、断面矩形でゴム硬度Hs=71の場合(二点鎖線で示した)の、時間経過に伴う真空度の変化、すなわちリーク速度を示したものである。また、この実施例でも、第二シール部材5の幅または径に対する第一シール部材4の幅を120〜200%程度としている(例えば、第二シール部材5の幅または径を8.0mmとした場合、第一シール部材4の幅は、9.6〜16.0mmである)。
【0038】
図11から明らかであるように、第二シール部材5の断面が矩形であってもゴム硬度が第一シール部材4よりも硬い(Hs=71)場合(二点鎖線)には、キャビティ6内を減圧している時点で図10と比較して、キャビティ6内の減圧度とバルブを閉じた時点Bからの大気圧に戻る速度は改良されている。また、第二シール部材5の断面が円形であってもゴム硬度が第一シール部材4よりも硬い(Hs=55)場合(一点鎖線)も、キャビティ6内を減圧している時点でのリークは二点鎖線で示した場合と同様であり、また、バルブを閉じた時点Bでキャビティ6内が大気圧に戻る速さも僅かに緩やかではある。しかしながら、二点鎖線で示した場合と一点鎖線で示した場合では、いずれも、キャビティ6内の減圧度が低く(Torrの数値が高く)、キャビティ6内が大気圧に戻ることとなる。
【0039】
これに対して、第二シール部材5が断面矩形であり、ゴム硬度が第一シール部材4と比較して柔らかい(Hs=25)場合(実線で示した本発明の場合)、通路7を介して減圧手段によりキャビティ6内が確実に減圧され、また、バルブを閉じた時点B以後も、キャビティ6内の減圧をさらに長時間維持することができている。このことから、本発明では、第一シール部材4のシール面40と第二シール部材5の端面との間が確実にシールされているものと判断することができる。
【0040】
次に、上述した実施の形態において、第二シール部材の硬さを変化させた場合の、リーク速度の変化を図12に基づいて説明する。なお、図12は、第一シール部材4が断面円形で、硬さHs=55(アスカCに換算して約79である)の場合を示したものである。また、図12においては、第二シール部材5の両先端5aの部分をスライド3の上面3aから突出させる長さが、1mmの場合と2mmの場合とをそれぞれ示した。図12において横軸で示された第二シール部材5の硬さHs(アスカC)=50以下では、リーク速度が僅かに上昇するだけであるのに対して、Hs(アスカC)=50を超えると、第一シール部材4の断面形状やその硬さに関わらずリーク速度が急激に上昇することが知見された。そこで、本発明では、第二シール部材5の、少なくとも第一シール部材4のシール面40に当接される端部のゴム硬さを、リーク速度が遅い(シール性能がよい)Hs(アスカC)=50以下とすることとした。
【0041】
本発明の減圧成形型は、上述した実施の形態を適宜組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1:下型(第一成形型)、 2:上型(第二成形型)、 3:スライド、 4:第一シール部材、 5:第二シール部材、 5a:第二シール部材の端部、 6:キャビティ、 40:第一シール部材のシール面、 50、第二シール部材のシール面、 55:当接部、 X:下型とスライドの移動方向、 Y:下型およびスライドと上型との開閉方向、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向して開閉可能に設けられた第一成形型および第二成形型と、
該第一成形型と第二成形型の開閉方向とは異なる方向に移動されるスライドと、
前記第一成形型と第二成形型およびスライドとの型合わせ面をシールする第一シール部材と、
該第一シール部材に対して端部が当接されて前記第一成形型および第二成形型とスライドとの型合わせ面をシールする第二シール部材とを備え、
前記第一成形型、第二成形型、およびスライドによって形成されたキャビティ内を減圧した状態で成形材料を射出充填する減圧成形型であって、
少なくとも、前記第一シール部材のシール面が平面状に成形されるか、前記第二シール部材が断面矩形に成形されており、
前記第二シール部材の、少なくとも前記第一シール部材に当接される端部が、前記第一シール部材と比較して柔らかい弾性体により構成されていることを特徴とする減圧成形型。
【請求項2】
前記第一シール部材の幅が前記第二シール部材の幅よりも大きくなるように成形されていることを特徴とする請求項1に記載の減圧成形型。
【請求項3】
前記第二シール部材の、少なくとも前記第一シール部材に当接される端部がゴム硬さHs(アスカC)=50以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の減圧成形型。
【請求項4】
相対向して開閉可能に設けられた第一成形型および第二成形型と、
該第一成形型と第二成形型の開閉方向とは異なる方向に移動されるスライドと、
前記第一成形型と第二成形型およびスライドとの型合わせ面をシールする第一シール部材と、
該第一シール部材に対して端部が当接されて前記第一成形型および第二成形型とスライドとの型合わせ面をシールする第二シール部材とを備え、
前記第一成形型、第二成形型、およびスライドによって形成されたキャビティ内を減圧した状態で成形材料を射出充填する減圧成形型であって、
少なくとも、前記第一シール部材のシール面が平面状に成形されるか、前記第二シール部材が断面矩形に成形されており、
前記第一シール部材の幅が前記第二シールの幅よりも広くなるように形成されていることを特徴とする減圧成形型。
【請求項5】
前記第二シール部材の端部に、前記第一シール部材の幅方向に延びており該第一シール部材に当接される当接部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の減圧成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−86151(P2013−86151A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230712(P2011−230712)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】