減少した免疫反応性を有するAAVビリオン、およびその使用
【課題】免疫反応性が減少したAAV変異体を提供する。
【解決手段】免疫反応性が減少した組み換え型AAVビリオンの作製方法および使用方法が記載される。組み換え型AAVビリオンは、変異型キャプシドタンパク質を含むか、または、AAV−2に対して減少した免疫反応性を示す非霊長類の哺乳動物AAV血清型および単離体に由来する。1実施形態において、脊椎動物被験体(例えば、哺乳動物)の細胞または組織への、組み換え型AAVビリオンを用いた、異種性の核酸分子(HNA)の効率的な送達のための方法、および、この方法において使用するためのAAVベクターが提供される。
【解決手段】免疫反応性が減少した組み換え型AAVビリオンの作製方法および使用方法が記載される。組み換え型AAVビリオンは、変異型キャプシドタンパク質を含むか、または、AAV−2に対して減少した免疫反応性を示す非霊長類の哺乳動物AAV血清型および単離体に由来する。1実施形態において、脊椎動物被験体(例えば、哺乳動物)の細胞または組織への、組み換え型AAVビリオンを用いた、異種性の核酸分子(HNA)の効率的な送達のための方法、および、この方法において使用するためのAAVベクターが提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に、組み換え型アデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを細胞に送達するための組成物および方法に関する。特に、本発明は、免疫反応性が減少したrAAVビリオン(例えば、変異型rAAVビリオン)、ならびにその作製方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
科学者は、糖尿病、血友病および癌のようなヒト疾患に関連する遺伝子を頻繁に発見している。研究努力はまた、遺伝的障害に関連しないが、その代わりに多数の疾患を処置するために使用され得るタンパク質をコードする、エリスロポエチン(赤血球産生を増加させる)のような遺伝子を明らかにしている。しかし、遺伝子を同定および単離する試みにおける有意な進歩にも関わらず、生物薬剤学産業が直面する主要な障害は、治療有効量の遺伝子産物を安全かつ持続的に患者に送達する方法である。
【0003】
一般に、これらの遺伝子のタンパク質生成物は、培養細菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞または他の細胞において合成され、そして、直接注射によって患者に送達される。組換えタンパク質の注射は、効を奏しているが、いくつかの欠点に苦しんでいる。例えば、患者はしばしば、血流内のタンパク質の必要なレベルを維持するために、毎週、そして時には毎日の注射を必要とする。それでも、タンパク質の濃度は、生理学的レベルには維持されない−タンパク質のレベルは、通常、注射直後には異常に高く、注射前には最適なレベルからかなり低い。さらに、組換えタンパク質の注射による送達は、しばしば、このタンパク質を、体内の標的の細胞、組織または器官に送達し得ない。そして、タンパク質がその標的に首尾よく到達しても、このタンパク質は、非治療的レベルまで希釈され得る。さらに、この方法は不便であり、しばしば、患者の生活様式を制限する。
【0004】
これらの欠点は、特定のタンパク質の持続したレベルを患者に送達するための遺伝子治療法を開発することに対する要望を刺激している。これらの方法は、医師が、治療遺伝子のような核酸をコードするデオキシリボ核酸(DNA)を、患者に直接(インビボ遺伝子治療)、または患者もしくはドナーから単離した細胞内に(エキソビボ遺伝子治療)導入することを可能にするように設計される。次いで、導入された核酸は、患者自身の細胞、または移植された細胞に、所望のタンパク質生成物を産生するように命令する。従って、遺伝子の送達は、頻繁な注射に対する必要性を除去する。遺伝子治療はまた、医師が、治療のための特定の器官または細胞標的(例えば、筋肉、血球、脳細胞など)を選択することを可能にし得る。
【0005】
DNAは、いくつかの方法で患者の細胞に導入され得る。化学的方法(例えば、リン酸カルシウム沈降およびリポソーム媒介性のトランスフェクション)および物理的方法(例えば、エレクトロポレーション)を含む、トランスフェクション法が存在する。一般に、トランスフェクション法は、インビボ遺伝子送達に適さない。組み換え型ウイルスを使用する方法もまた存在する。現行のウイルス媒介性遺伝子送達ベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくものが挙げられる。レトロウイルスと同様に、そしてアデノウイルスとは異なり、AAVは、宿主細胞の染色体にそのゲノムを組み込む能力を有する。
【0006】
(アデノ随伴ウイルス媒介性の遺伝子治療)
AAVは、Dependovirus属に属するパルボウイルスであり、他のウイルスでは見られない、いくつかの魅力的な特徴を有する。例えば、AAVは、非分裂細胞を含む広範な宿主細胞に感染し得る。AAVはまた、異なる種に由来する細胞に感染し得る。重要なことに、AAVは、ヒトまたは動物の疾患のいずれにも関連せず、そして、組み込まれても、宿主細胞の生理学的特性を変更しないようである。さらに、AAVは、広範な物理的条件および化学的条件において安定であり、このことは、製造、保存および輸送の要件に役立つ。
【0007】
およそ4700ヌクレオチドを含有するAAVゲノムの直線状の単鎖DNA分子(AAV−2ゲノムは、4681ヌクレオチドから構成される)は、一般に、各端部で逆方向末端反復(ITR)により隣接される、内部非反復セグメントを含む。このITRは、約145ヌクレオチド長であり(AAV−1は、143ヌクレオチドのITRを有する)、複製起点としての機能、およびウイルスゲノムのパッケージングシグナルとしての機能を含む、複数の機能を有する。
【0008】
ゲノムの内部非反復部分は、AAV複製(rep)領域およびAAVキャプシド(cap)領域として知られる、2つの大きなオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。これらのORFは、それぞれ、複製およびキャプシドの遺伝子産物をコードする:複製およびキャプシドの遺伝子産物(すなわち、タンパク質)は、完全なAAVビリオンの複製、組み立ておよびパッケージングを可能にする。より具体的には、少なくとも4種のウイルスタンパク質のファミリーが、AAV rep領域から発現される:Rep 78、Rep 68、Rep 52およびRep 40(これらは全て、その見かけ上の分子量から命名されている)。AAV cap領域は、少なくとも3つのタンパク質をコードする:VP1、VP2およびVP3。
【0009】
自然状態では、AAVは、ヘルパーウイルス依存性のウイルスである。すなわち、AAVは、機能的に完全なAAVビリオンを形成するために、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス)と同時に感染する必要がある。ヘルパーウイルスと同時に感染しない場合、AAVは、ウイルスゲノムが宿主細胞の染色体内に挿入するか、またはエピソームの形態で存在する、潜伏状態を確立するが、感染性ビリオンは産生されない。後のヘルパーウイルスの感染により、この組み込まれたゲノムを「レスキュー」し、複製して、ウイルスキャプシドにパッケージングし、それによって、感染性ビリオンを再構成することが可能になる。AAVは、異なる種に由来する細胞に感染し得るが、ヘルパーウイルスは、宿主細胞と同じ種でなくてはならない。従って、例えば、ヒトAAVは、イヌアデノウイルスと同時感染したイヌ細胞内で複製する。
【0010】
核酸を含有する感染性組み換え型AAV(rAAV)を構築するために、適切な宿主細胞株が、核酸を含有するAAVベクターを用いてトランスフェクトされる。次いで、AAVのヘルパー機能および補助機能が、宿主細胞において発現される。これらの因子が一緒になると、野生型(wt)のAAVゲノムであるかのようにHNAが複製され、パッケージングされ、組み換え型ビリオンを形成する。患者の細胞が、得られたrAAVに感染すると、HNAが進入し、そして、患者の細胞内で発現される。患者の細胞は、rep遺伝子およびcap遺伝子、ならびにアデノウイルス補助機能遺伝子を欠失しているので、rAAVは、複製欠損型である;すなわち、これらは、そのゲノムをさらに複製およびパッケージングすることができない。同様に、rep遺伝子およびcap遺伝子の供給源がなければ、wtAAVは、患者の細胞において形成され得ない。
【0011】
ヒトならびに他の霊長類および哺乳動物に感染する、いくつかのAAV血清型が存在する。8つの主要な血清型(AAV−1〜AAV−8)が同定されており、このうち、2つの血清型が、最近アカゲザルから単離されたものである。非特許文献1。これらの血清型のうち、AAV−2が最もよく特徴付けられており、種々のインビトロアッセイおよびインビボアッセイにおいて、いくつかの細胞株、組織型および器官に導入遺伝子を首尾よく送達するために使用されている。AAVの種々の血清型は、モノクローナル抗体を用いてか、またはヌクレオチド配列分析を用いることによって、互いに区別され得る;例えば、AAV−1、AAV−2、AAV−3およびAAV−6は、ヌクレオチドレベルで82%同一であるが、AAV−4は他の血清型に対して75%〜78%同一である(非特許文献2)。ヌクレオチド配列の有意なバリエーションが、キャプシドタンパク質をコードするAAVゲノムの領域について注目されている。このような可変領域は、種々のAAV血清型のキャプシドタンパク質に対する血清学的反応性における差異の原因となり得る。
【0012】
所定のAAV血清型で最初に処置した後、抗AAVキャプシド中和抗体がしばしば作製され、これが、同じ血清型によるその後の処置を妨害する。例えば、非特許文献3は、抗AAV−2抗体が前から存在するマウスは、組み換え型AAV−2ビリオン中で第IX因子を投与された場合に、第IX因子の導入遺伝子を発現しないことを示し、これは、抗AAV−2抗体がrAAV−2ビリオンの形質導入をブロックしたことを示唆した。非特許文献4は、類似の結果を報告した。他にも、rAAV−2ビリオンの実験動物への再投与の成功は、免疫抑制の後にだけ達成されることが実証された(例えば、非特許文献4、前出を参照のこと)。
【0013】
従って、ヒト遺伝子治療のためにrAAVを用いることは、かなり問題がある。なぜならば、抗AAV抗体は、ヒト集団に蔓延しているからである。種々のAAV血清型によるヒトの感染は、幼児期に生じ、そして、胎内でさえ生じる可能性がある。実際、1つの研究が、一般集団の少なくとも80%が、AAV−2に感染していると推定した(非特許文献5)。抗AAV−2中和抗体は、少なくとも20〜40%のヒトにおいて発見されている。本発明者らの研究は、50人の血友病患者の群において、約40%がAAV−2中和能を有し、これは、1e13ウイルス粒子/ml、または約6e16ウイルス粒子/全血液量を凌ぐことを示した。さらに、高い抗AAV−2力価を有する群の大半はまた、他のAAV血清型(例えば、AAV−1、AAV−3、AAV−4、AAV−5およびAAV−6)に対しても有意な力価を有した。それゆえ、免疫反応性が減少したAAV変異体(例えば、前から存在する抗AAV抗体により中和されない変異体)の同定は、当該分野で優位な進歩である。このようなAAV変異体が、本明細書中に記載される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Gaoら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:11854−11859
【非特許文献2】Russellら(1998)J.Virol.72:309−319
【非特許文献3】Moskalenkoら、J.Virol.(2000)74:1761−1766
【非特許文献4】Halbertら、J.Virol.(1998)72:9795−9805
【非特許文献5】BernsおよびLinden(1995)Bioessays 17:237−245
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本発明は、新規AAV配列(例えば、対応するネイティブな血清型と比較して、減少した免疫反応性を組み換え型AAVビリオンに提供するが、細胞および組織に効率的に形質導入する能力を保持する、変異型AAV配列)の発見に基づく。免疫反応性が減少したrAAVビリオンは、自然感染によってか、または以前の遺伝子治療もしくは核酸免疫処置によってのいずれかで、以前にAAVに曝露されたことがあり、それゆえ、抗AAV抗体を発生している被験体に、異種性の核酸分子(HNA)を送達するために特に有用である。それゆえ、本明細書中に記載されるrAAVビリオンは、以前に種々のAAV血清型のいずれかに曝露されたことがある脊椎動物被験体において、以下にさらに記載されるような、広範な種々の障害を処置または予防するために有用である。その結果、本発明によれば、脊椎動物被験体(例えば、哺乳動物)の細胞または組織への、組み換え型AAVビリオンを用いた、HNAの効率的な送達のための方法、および、この方法において使用する
ためのAAVベクターが提供される。
【0016】
特定の好ましい実施形態において、本発明は、アンンチセンスRNA、リボザイム、またはタンパク質を発現する1つ以上の遺伝子をコードするHNAを送達するための、変更されたキャプシドタンパク質を含有するAAVビリオンの使用を提供し、この使用において、前記アンチセンスRNA、リボザイム、または1つ以上の遺伝子の発現は、哺乳動物被験体において生物学的効果を提供する。1つの実施形態において、HNAを含有するrAAVビリオンは、筋肉内(例えば、心筋、平滑筋および/または骨格筋)に直接注射される。別の実施形態において、HNAを含有するrAAVビリオンは、静脈内、動脈内もしくは他の血管内への注射によってか、または、隔離された肢還流のような技術を用いることによって、血管系へと投与される。
【0017】
さらなる実施形態において、ビリオンは、血液凝固タンパク質をコードする遺伝子を含み、十分な濃度で発現される場合、血液凝固障害に罹患する哺乳動物の血液凝固効率の改善のような治療効果を提供する。この血液凝固障害は、血液を凝固させる器官の能力に悪影響を及ぼす任意の障害であり得る。好ましくは、血液凝固障害は、血友病である。その結果、1つの実施形態において、血液凝固タンパク質をコードする遺伝子は、第VIII因子遺伝子(例えば、ヒト第VIII因子遺伝子)またはその誘導体である。別の実施形態において、血液凝固タンパク質をコードする遺伝子は、ヒト第IX因子(hF.IX)遺伝子のような第IX因子遺伝子である。
【0018】
従って、1つの実施形態において、本発明は、変異型AAVキャプシドタンパク質に関し、この変異型タンパク質は、AAVビリオン中に存在する場合に、対応する野生型ビリオンと比較して、減少した免疫反応性をこのビリオンに与える。この変異は、ネイティブなタンパク質に対して少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失または挿入を含み得る。例えば、1つの置換は、AAVビリオン表面のスパイク領域またはプラトー領域内である。
【0019】
特定の実施形態において、アミノ酸置換は、アミノ酸126、127、128、130、132、134、247、248、315、334、354、357、360、361、365、372、375、377、390、393、394、395、396、407、411、413、418、437、449、450、568、569および571からなる群より選択されるAAV−2 VP2キャプシドの位置に対応する位置に存在する1つ以上のアミノ酸の置換を含む。さらなる実施形態において、これらの位置の1つ以上において天然に存在するアミノ酸は、アラニンで置換される。さらなる実施形態において、このタンパク質は、AAV−2 VP2の360位に見られるアミノ酸に対応する位置に存在するアミノ酸の、ヒスチジンによる置換、および/またはAAV−2 VP2の571位に見られるアミノ酸に対応する位置に存在するアミノ酸の、リジンによる置換を含む。
【0020】
さらなる実施形態において、本発明は、上記の変異型タンパク質のいずれかをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0021】
さらなる実施形態において、本発明は、上記の変異型タンパク質のいずれかを含む組み換え型AAVビリオンに関する。この組み換え型AAVビリオンは、アンチセンスRNAもしくはリボザイムをコードする異種性核酸分子、または治療タンパク質をコードする異種性核酸分子を含み得、この治療タンパク質は、上記タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結されている。
【0022】
なおさらなる実施形態において、本発明は、脊椎動物被験体の細胞または組織に組み換え型AAVビリオンを送達する方法に関する。この方法は、
(a)上記のような組み換え型AAVビリオンを提供する工程;
(b)細胞または組織に組み換え型AAVビリオンを送達し、それによって、この上記タンパク質が治療効果を提供するレベルで発現される、工程
を包含する。
【0023】
特定の実施形態において、細胞または組織は、筋肉細胞または筋肉組織である。この筋肉細胞または筋肉組織は、骨格筋に由来するものであり得る。
【0024】
さらなる実施形態において、組み換え型AAVビリオンは、インビボで細胞または組織に送達される。
【0025】
特定の実施形態において、組み換え型AAVビリオンは、筋肉内注射によって、または血流内(例えば、静脈内または動脈内)に送達される。さらなる実施形態において、組み換え型AAVビリオンは、肝臓または脳に送達される。
【0026】
さらなる実施形態において、組み換え型AAVビリオンは、インビトロで上記細胞または組織に送達される。
【0027】
なおさらなる実施形態において、本発明は、脊椎動物被験体の細胞または組織に組み換え型AAVビリオンを送達する方法に関する。この方法は、
(a)組み換え型AAVビリオンを提供する工程であって、このAAVビリオンは、
(i)AAVビリオン中に存在する場合に、霊長類AAV−2の免疫反応性と比較して、減少した免疫反応性をこのビリオンに与える、非霊長類の哺乳動物アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質;および
(ii)治療タンパク質をコードする異種性核酸分子であって、このタンパク質は、このタンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結されている、異種性核酸分子
を含む、工程;
(b)組み換え型AAVビリオンを細胞または組織に送達し、それによって、上記タンパク質が治療効果を提供するレベルで発現される、工程
を包含する。
【0028】
特定の実施形態において、細胞または組織は、筋肉細胞または筋肉組織であり、例えば、筋肉細胞または筋肉組織は、骨格筋に由来するものである。
【0029】
組み換え型AAVビリオンは、インビボまたはインビトロで上記細胞または組織に送達され、そして、筋肉内注射によってか、または血流内(例えば、静脈内または動脈内)に、被験体に送達され得る。さらなる実施形態において、組み換え型AAVビリオンは、肝臓または脳に送達される。
【0030】
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
アデノ随伴ウイルス(AAV)のビリオン中に存在する場合に、対応する野生型のビリオンと比較して、減少した免疫反応性を該ビリオンに与える、変異型アデノ随伴ウイルスキャプシドタンパク質。
(項目2)
上記変異が、ネイティブなタンパク質に対して、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目3)
上記変異が、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、項目2に記載のタンパク質。
(項目4)
上記少なくとも1つのアミノ酸置換が、上記AAVビリオンの表面のスパイク領域またはプラトー領域にある、項目3に記載のタンパク質。
(項目5)
上記アミノ酸置換が、アミノ酸126、127、128、130、132、134、247、248、315、334、354、357、360、361、365、372、375、377、390、393、394、395、396、407、411、413、418、437、449、450、568、569および571からなる群より選択されるAAV−2 VP2キャプシドの位置に対応する位置に生じる1つ以上のアミノ酸の置換を含む、項目4に記載のタンパク質。
(項目6)
上記位置に天然に存在するアミノ酸が、アラニンで置換されている、項目5に記載のタンパク質。
(項目7)
上記タンパク質が、AAV−2 VP2の360位に見られるアミノ酸に対応する位置に存在するアミノ酸に対するヒスチジンの置換をさらに含む、項目6に記載のタンパク質。
(項目8)
上記タンパク質が、AAV−2 VP2の571位に見られるアミノ酸に対応する位置に存在するアミノ酸に対するリジンの置換を含む、項目5〜7のいずれかに記載のタンパク質。
(項目9)
項目1〜8のいずれかに記載の変異型タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
(項目10)
項目1〜8のいずれかに記載の変異型タンパク質を含む、組換え型AAVビリオン。
(項目11)
上記ビリオンが、アンチセンスRNAまたはリボザイムをコードする異種性核酸分子を含む、項目10に記載の組み換え型AAVビリオン。
(項目12)
上記ビリオンが、治療タンパク質をコードする異種性核酸分子を含み、該タンパク質は、該タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結されている、項目10に記載の組み換え型AAVビリオン。
(項目13)
脊椎動物被験体の細胞または組織に異種性核酸分子を送達するための、項目11または12のいずれかに記載の組み換え型AAVビリオンの使用であって、該使用により、該異種性核酸分子によりコードされるタンパク質が、治療効果を提供するレベルで発現される、使用。
(項目14)
上記細胞または組織が、筋肉細胞または筋肉組織である、項目13に記載の使用。
(項目15)
上記筋肉細胞または筋肉組織が、骨格筋由来である、項目14に記載の使用。
(項目16)
上記組み換え型AAVビリオンが、インビボで上記細胞または組織に送達される、項目13に記載の使用。
(項目17)
上記組み換え型AAVビリオンが、筋肉内注射により送達される、項目16に記載の使用。
(項目18)
上記組み換え型AAVビリオンが、インビトロで上記細胞または組織に送達される、項目13に記載の使用。
(項目19)
上記組み換え型AAVビリオンが、血流内に送達される、項目13に記載の使用。
(項目20)
上記組み換え型AAVビリオンが、静脈内送達される、項目19に記載の使用。
(項目21)
上記組換え型AAVビリオンが、動脈内送達される、項目19に記載の使用。
(項目22)
上記組み換え型AAVビリオンが、肝臓に送達される、項目13に記載の使用。
(項目23)
上記組み換え型AAVビリオンが、脳に送達される、項目13に記載の使用。
(項目24)
組み換え型AAVビリオンを、脊椎動物被験体の細胞または組織に送達する方法であって、該方法は、
(a)項目12に記載の組み換え型AAVビリオンを提供する工程;
(b)該組み換え型AAVビリオンを該細胞または組織に送達し、それによって、上記タンパク質が、治療効果を提供するレベルで発現される、工程
を包含する、方法。
(項目25)
脊椎動物被験体の細胞または組織にタンパク質をコードする異種性核酸を送達するための組み換え型アデノ随伴ウイルス(AAV)ビリオンの使用であって、該使用により、該タンパク質が治療効果を提供するレベルで発現され、該使用において、該組み換え型AAVビリオンは、
(i)AAVビリオン中に存在する場合に、霊長類のAAV−2の免疫反応性と比較して、減少した免疫反応性を該ビリオンに与える、非霊長類の哺乳動物AAVキャプシドタンパク質;および
(ii)治療タンパク質をコードし、該タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結された、異種性核酸分子
を含む、使用。
(項目26)
上記細胞または組織が、筋肉細胞または筋肉組織である、項目25に記載の使用。
(項目27)
上記筋肉細胞または筋肉組織が、骨格筋由来である、項目26に記載の方法。
(項目28)
上記組み換え型AAVビリオンが、インビボで上記細胞または組織に送達される、項目25に記載の使用。
(項目29)
上記組み換え型AAVビリオンが、筋肉内注射により送達される、項目26に記載の方法。
(項目30)
上記組み換え型AAVビリオンが、インビトロで上記細胞または組織に送達される、項目25に記載の使用。
(項目31)
上記組み換え型AAVビリオンが、血流内に送達される、項目25に記載の使用。
(項目32)
上記組み換え型AAVビリオンが、静脈内送達される、項目31に記載の使用。
(項目33)
上記組み換え型AAVが、動脈内送達される、項目31に記載の方法。
(項目34)
上記組み換え型AAVビリオンが、肝臓に送達される、項目25に記載の使用。
(項目35)
上記組み換え型AAVビリオンが、脳に送達される、項目25に記載の使用。
(項目36)
脊椎動物被験体の細胞または組織に組み換え型AAVビリオンを送達する方法であって、該方法は、
(a)組み換え型AAVビリオンを提供する工程であって、該AAVビリオンは、
(i)AAVビリオン中に存在する場合に、霊長類AAV−2の免疫反応性と比較して、減少した免疫反応性を該ビリオンに与える、非霊長類の哺乳動物アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質;および
(ii)治療タンパク質をコードする異種性核酸分子であって、該タンパク質は、該タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結されている、異種性核酸分子
を含む、工程;
(b)該組み換え型AAVビリオンを該細胞または組織に送達し、それによって、該タンパク質が治療効果を提供するレベルで発現される、工程
を包含する、方法。
本発明のこれらおよび他の実施形態は、本明細書中の開示を考慮すれば、当業者に容易に想到する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、全ウイルス表面上のAAV−2の非対称性構造単位(白三角)の位置を示す(Xieら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2002)99:10405−10410の図3aから取った)。AAVビリオン1個につき60の同一な非対称性構造単位が存在する。各AAV−2カプソメアにおいて、合計735のうちの少なくとも145アミノ酸が、程度の差はあれ、表面上で露出している。
【図2】図2は、AAV−2構造の非対称性単位(黒三角)内で、実施例に記載されるように変異したいくつかのアミノ酸の位置を示す。変異したアミノ酸を、黒色空間充填モデル(black space−filling model)として示すが、変異していないアミノ酸は、白い棒状モデル(white stick model)として示す。主要な表面特徴(スパイク、シリンダー、プラトー、キャニオン)の位置を示し、これらの特徴のおよその境界を、細い円形の黒線で示す。抗体結合に比較的近づきにくいと予測される「キャニオン」領域は、スパイクと、シリンダーとプラトーとの間の領域に位置する。数字2、3および5はそれぞれ、2倍対称軸、3倍対称軸および5倍対称軸を表す。
【図3】図3は、インビトロ形質導入に対して10倍を超える効果を有する変異の位置を示す。変異は、黒色空間充填のアミノ酸に位置し、野生型の形質導入の10%未満であった。数字2、3および5はそれぞれ、2倍対称軸、3倍対称軸および5倍対称軸を表す。
【図4】図4は、インビトロ形質導入に対して、10倍未満の効果を有する変異の位置を示す。変異は、黒色空間充填アミノ酸に位置し、野生型の形質導入の10%未満であった。数字2、3および5はそれぞれ、2倍対称軸、3倍対称軸および5倍対称軸を表す。2倍対称軸にかかる2つのデッドゾーンのおよその境界を示す。
【図5】図5は、ヘパリン結合を欠失したAAV−2キャプシド変異のいくつかの位置を示す。黒いアミノ酸は、本明細書において同定されたヘパリン欠損変異を示す。空間充填モデルとして示した黒いアミノ酸(347、350、356、375、395、448、451)は、表面上にある。空間充填モデルとして示した灰色のアミノ酸(495、592)は、表面の直ぐ下にある。数字2、3および5はそれぞれ、2倍対称軸、3倍対称軸および5倍対称軸を表す。ヘパリン結合に対して100倍以上の効果を有する変異を、円で囲う。
【図6】図6は、個々に変異している場合に、マウスモノクローナル抗体による中和に対する抵抗性を与える、AAV−2キャプシドの表面上のアミノ酸のいくつかの位置(黒色空間充填モデル)を示す。長方形のボックスは、抗体結合部位のおよそのサイズ(25Å×35Å)を表す。数字2、3および5はそれぞれ、2倍対称軸、3倍対称軸および5倍対称軸を表す。
【図7】図7は、複数の抗ヒト血清による中和に対する抵抗性を与える、AAV−2キャプシドの表面上のアミノ酸のいくつかの位置(黒色空間充填モデル)を示す。長方形のボックスは、抗体結合部位のおよそのサイズ(25Å×35Å)を表す。数字2、3および5はそれぞれ、2倍対称軸、3倍対称軸および5倍対称軸を表す。
【図8】図8は、野生型キャプシドを有するAAV−2と比較した、4つのAAV−2キャプシド変異のマウスモノクローナル抗体力価特性を示す。
【図9】図9は、AAV−2 VP2のアミノ酸配列(配列番号12)を示す。
【図10】図10は、AAV−2 VP1のアミノ酸配列(配列番号13)を示す。
【図11】図11は、AAV−2キャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3の相対位置を示す。図に示されるように、VP1、VP2およびVP3は、VP3を構成する、同じ533C末端アミノ酸を共有する。図に示されるように、本明細書中に記載される全てのキャプシド変異は、共有領域内にある。
【図12A】図12A〜12Bは、霊長類AAV−5からのAAV VP1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号14)およびヤギAAVからのAAV VP1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号15)の比較を示す。番号付けは、AAV−5全長配列に関するものである。
【図12B】図12A〜12Bは、霊長類AAV−5からのAAV VP1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号14)およびヤギAAVからのAAV VP1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号15)の比較を示す。番号付けは、AAV−5全長配列に関するものである。
【図13】図13は、霊長類AAV−5からのVP1のアミノ酸配列(配列番号16)およびヤギAAVからのVP1のアミノ酸配列(配列番号17)の比較を示す。アミノ酸の相違に影をつける。保存的変化を、明るい灰色で示し;非保存的変化を、暗い灰色で示す。
【図14A】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14B】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14C】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14D】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14E】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14F】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14G】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14H】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図15】図15(配列番号16および配列番号17)は、AAVキャプシドの表面に関して、AAV−5とヤギAAVとの間のアミノ酸相違の位置を示す。
【図16】図16は、AAV−2キャプシドの表面構造に基づく、AAV−5とヤギAAVとの間で異なる表面アミノ酸の予想位置を示す。3つの黒三角は、表面上に位置する可能性のある、AAV−2に関するヤギAAV内の挿入を表す。
【図17】図17は、種々のrAAV hFIXビリオンの筋肉内投与後の、IVIG処置SCIDマウスの筋肉の形質導入を示す。
【図18】図18は、種々のrAAV hFIXビリオンの尾静脈投与後の、IVIG処置SCIDマウスの肝臓の形質導入を示す。
【図19】図19は、組み換え型ヤギAAVをコードする組み換え型ヤギAAVベクターの静脈内投与後の、ヒト第IX因子(hFIX)の体内分布を示す。
【図20】図20A(配列番号25)および20B(配列番号26)は、それぞれ、ウシAAV VP1のAAV−C1からのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図21A】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21B】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21C】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21D】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21E】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21F】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21G】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21H】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、他に示されない限り、当該分野の技術範囲内の化学、生化学、組換えDNA技術および免疫学の従来の方法を使用する。このような技術は、文献に完全に説明されている。例えば、Fundamental Virology,第2版,vol.I&II(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編);Handbook of Experimental Immunology,Vols.I〜IV(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編,Blackwell Scientific Publications);T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,最新版);Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,1989);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan編,Academic Press,Inc.)を参照のこと。
【0033】
(1.定義)
本発明を記載する際に、以下の用語が使用され、これらは、以下に示されるように規定されることが意図される。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明確にそうでないと指示しない限り、複数の参照を含むことに注意しなければならない。従って、例えば、「ポリペプチド(a polypeptide)」に対する参照は、2つ以上のポリペプチドの混合物を含む、などである。
【0035】
以下のアミノ酸の略称が、本文全体において使用される:
アラニン :Ala(A) アルギニン :Arg(R)
アスパラギン:Asn(N) アスパラギン酸 :Asp(D)
システイン :Cys(C) グルタミン :Gln(Q)
グルタミン酸:Glu(E) グリシン :Gly(G)
ヒスチジン :His(H) イソロイシン :Ile(I)
ロイシン :Leu(L) リジン :Lys(K)
メチオニン :Met(M) フェニルアラニン:Phe(F)
プロリン :Pro(P) セリン :Ser(S)
スレオニン :Thr(T) トリプトファン :Trp(W)
チロシン :Tyr(Y) バリン :Val(V)。
【0036】
「ベクター」とは、適切な制御エレメントと結合した場合に複製可能であり、かつ細胞間で遺伝子配列を移し得る、任意の遺伝的エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなど)を意味する。従って、この用語は、クローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびに、ウイルスベクターを含む。
【0037】
「AAVベクター」とは、任意の動物種から単離された任意のアデノ随伴ウイルス血清型に由来するベクターを意味し、これらとしては、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−6、AAV−7、AAV−8、AAV−G1およびAAV−C1が挙げられるがこれらに限定されない。AAVベクターは、全体もしくは一部が欠失した、1つ以上のAAVの野生型遺伝子(好ましくは、rep遺伝子および/またはcap遺伝子)を有し得るが、機能的な隣接ITR配列は保持している。機能的ITR配列は、AAVビリオンのレスキュー、複製およびパッケージングに必須である。従って、AAVベクターは、本明細書において、ウイルスの複製およびパッケージングにシスで必要とされるこれらの配列(例えば、機能的ITR)を少なくとも含むと規定される。ITRは、野生型のヌクレオチド配列である必要はなく、これらの配列が、機能的なレスキュー、複製およびパッケージングを提供する限りは、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって、変更され得る。
【0038】
「AAVヘルパー機能」は、発現されて、AAV遺伝子産物を提供し、次いで、生産的なAAV複製にトランスで機能し得る、AAV由来のコード配列をいう。従って、AAVヘルパー機能は、主要なAAVオープンリーディングフレーム(ORF)である、repおよびcapの両方を含む。Rep発現産物は、多くの機能を有することが示されており、これらの中でもとりわけ、DNA複製のAAV起点の認識、結合およびニック;DNAヘリカーゼ活性;ならびにAAV(または他の異種性)プロモーターからの転写の調節が挙げられる。Cap発現産物は、必須のパッケージング機能を供給する。AAVヘルパー機能は、本明細書中において、AAVベクターから欠けているトランスのAAV機能を補完するために使用される。
【0039】
用語「AAVヘルパー構築物」は、一般に、目的のヌクレオチド配列の送達のための形質導入ベクターを生成するために使用されるAAVベクターから欠けているAAV機能を提供するヌクレオチド配列を含む、核酸分子をいう。AAVヘルパー構築物は、一般に、AAVのrep遺伝子および/またはcap遺伝子の一過性の発現を提供して、溶解性のAAV複製に必須の欠けているAAV機能を補完するために使用される;しかし、ヘルパー構築物は、AAV ITRを欠き、そして、それ自体では複製もパッケージングもできない。AAVヘルパー構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、またはビリオンの形態であり得る。Rep発現産物および/またはCap発現産物をコードする多数のAAVヘルパー構築物およびベクターが記載されている。例えば、米国特許第6,001,650号、同第5,139,941号および同第6,376,237号;Samulskiら(1989)J.Virol.63:3822−3828;ならびにMcCartyら(1991)J.Virol.65:2936−2945を参照のこと。
【0040】
用語「補助機能」は、非AAV由来のウイルスおよび/または細胞の機能をいい、この機能に、AAVの複製が依存している。従って、この用語は、AAVの複製に必要とされ得るタンパク質およびRNAを捕らえており、このようなタンパク質およびRNAとしては、AAV遺伝子の転写、段階特異的なAAV mRNAのスプライシング、AAV DNAの複製、Cap発現産物の合成、およびAAVキャプシドの組み立ての活性化に関与する部分が挙げられる。ウイルスベースの補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純疱疹ウイルス1型以外)およびワクシニアウイルスのような、公知のヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。
【0041】
用語「補助機能ベクター」は、一般に、補助機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸分子をいう。補助機能ベクターは、適切な宿主細胞内にトランスフェクトされ得、ここで、このベクターは、AAVビリオン産物を宿主細胞内で支持し得るものである。用語から明白に除外されるのは、感染性ウイルス粒子である。なぜならば、アデノウイルス粒子、ヘルペスウイルス粒子またはワクシニアウイルス粒子のような感染性ウイルス粒子は自然状態で存在するからである。従って、補助機能ベクターは、プラスミド、ファージ、トランスポゾンまたはコスミドの形態であり得る。
【0042】
アデノウイルス遺伝子の完全な相補体は、補助ヘルパー機能には必要ではないことが実証されている。特に、DNA複製および後期の遺伝子合成ができないアデノウイルス変異体は、AAV複製に許容されることが示されている。Itoら(1970)J.Gen.Virol.9:243;Ishibashiら(1971)Virology 45:317。同様に、E2B領域およびE3領域内の変異は、AAV複製を支持することが示されており、これは、E2B領域およびE3領域が、補助機能を提供することに関与しない可能性を示す。Carterら(1983)Virology 126:505。しかし、E1領域に障害があるか、またはE4領域を欠失したアデノウイルスは、AAV複製を支持できない。従って、E1A領域およびE4領域は、直接的または間接的のいずれかで、AAV複製に必要とされているようである。Laughlinら(1982)J.Virol.41:868;Janikら(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1925;Carterら(1983)Virology 126:505。他の特徴付けられたAd変異体としては以下が挙げられる:E1B(Laughlinら(1982),前出;Janikら(1981),前出;Ostroveら(1980)Virology 104:502);E2A(Handaら(1975)J.Gen.Virol.29:239;Straussら(1976)J.Virol.17:140;Myersら(1980)J.Virol.35:665;Jayら(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2927;Myersら(1981)J.Biol.Chem.256:567);E2B(Carter,Adeno−Associated Virus Helper Functions,I
CRC Handbook of Parvoviruses(P.Tijssen編,1990));E3(Carterら(1983),前出);およびE4(Carterら(1983),前出;Carter(1995))。E1Bコード領域に変異を有するアデノウイルスにより提供される補助機能の研究は、相反する結果を提供しているが、Samulskiら(1988)J.Virol.62:206−210は、最近、E1B55kはAAVビリオン産生に必要とされるが、E1B19kは必要とされないことを報告した。さらに、国際公報WO 97/17458およびMatshushitaら(1998)Gene Therapy 5:938−945は、種々のAd遺伝子をコードする補助機能ベクターを記載する。特に好ましい補助機能ベクターは、アデノウイルスのVA RNAコード領域、アデノウイルスのE4 ORF6コード領域、アデノウイルスのE2A 72kDコード領域、アデノウイルスのE1Aコード領域、およびインタクトなE1B55kコード領域を欠くアデノウイルスのE1B領域を含む。このようなベクターは、国際公報WO 01/83797に記載される。
【0043】
「組み換え型ウイルス」とは、例えば、異種性の核酸構築物を粒子に付加または挿入することによって、遺伝的に変更されたウイルスを意味する。
【0044】
「AAVビリオン」とは、野生型(wt)AAVウイルス粒子(AAVキャプシドタンパク質被膜に結合した直線状の単鎖AAV核酸ゲノムを含む)のような完全なウイルス粒子を意味する。この点に関して、いずれかの相補的なセンス鎖(例えば、「センス」または「アンチセンス」)の単鎖AAV核酸分子が、AAVビリオンの任意の1つにパッケージングされ得、そして、両方の鎖が同等に感染性である。
【0045】
「組み換え型AAVビリオン」または「rAAVビリオン」は、本明細書において、両側にAAV ITRが隣接している、目的の異種性ヌクレオチド配列をカプセル化するAAVタンパク質の殻を含む、感染性の複製欠損型ウイルスとして定義される。rAAVビリオンは、AAVベクター、AAVヘルパー機能、およびその中に導入された補助機能を有する適切な宿主細胞において産生される。この様式で、宿主細胞は、AAVベクター(目的の組み換え型ヌクレオチド配列を含む)を、その後の遺伝子送達のために、感染性の組み換え型ビリオン粒子内にパッケージングするために必要とされるAAVポリペプチドをコードできるようになる。
【0046】
「ヤギ組み換え型AAVビリオン」または「ヤギrAAVビリオン」は、ヤギキャプシドタンパク質(例えば、ヤギVP1)をコードする遺伝子を含むAAVヘルパー機能を用いて産生された、上記のようなrAAVビリオンである。
【0047】
「ウシ組み換え型AAVビリオン」または「ウシrAAVビリオン」は、ウシキャプシドタンパク質(例えば、ウシVP1)をコードする遺伝子を含むAAVヘルパー機能を用いて産生された、上記のようなrAAVビリオンである。
【0048】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外来DNAの取込みをいうために使用し、そして、外来性のDNAが細胞膜の内部に導入された場合、細胞は、「トランスフェクト」されている。多数のトランスフェクション技術が、当該分野で一般的に公知である。例えば、Grahamら(1973)Virology,52:456,Sambrookら(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York,Davisら(1986)Basic Methods in Molecular Biology,ElsevierおよびChuら(1981)Gene 13:197を参照のこと。このような技術は、1つ以上の外来性DNA成分(例えば、ヌクレオチド組込みベクターおよび他の核酸分子)を、適切な宿主細胞内に導入するために使用され得る。
【0049】
用語「宿主細胞」は、例えば、AAVヘルパー構築物、AAVベクタープラスミド、補助機能ベクターまたは他の移送DNAのレシピエントとして使用され得るか、または既に使用されている、微生物細胞、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞を意味する。この用語は、トランスフェクトされた最初の細胞の子孫を含む。従って、本明細書中で使用される「宿主細胞」は、一般に、外来性DNA配列でトランスフェクトされた細胞をいう。天然の変異、偶発的な変異、または意図的な変異が原因で、単一の親細胞の子孫が、形態学的もしくはゲノム的に完全に同一であるか、または、最初の親と全てのDNAが相補的である必要はない。
【0050】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞株」は、インビトロで連続的または持続的に増殖および分裂が可能な細胞の集団をいう。しばしば、細胞株は、単一の前駆細胞に由来するクローン性の集団である。さらに、このようなクローン性の集団の保存または移動の間に、自然発生的な変化または誘導的な変化が、核型に生じ得ることが、当該分野で公知である。従って、参照される細胞株に由来する細胞は、祖先の細胞もしくは培養物と精密に同一である必要はなく、そして、参照される細胞株は、このような変異体を含む。
【0051】
「相同性」は、2つのポリヌクレオチド部分間または2つのポリペプチド部分間の%同一性をいう。2つのDNA配列または2つのポリペプチド配列は、これらの配列が、これらの分子の規定される長さにわたって、少なくとも約50%、好ましくは、少なくとも約75%、より好ましくは、少なくとも約80%〜85%、好ましくは、少なくとも約90%、そして最も好ましくは、少なくとも約95%〜98%の配列同一性を示す場合に、互いに「実質的に相同」である。本明細書中で使用される場合、実質的に相同とは、また、特定のDNA配列またはポリペプチド配列に対して完全な同一性を示す配列をいう。
【0052】
一般に、「同一性」とは、それぞれ、2つのポリヌクレオチド配列または2つのポリペプチド配列の、正確なヌクレオチド−ヌクレオチドの対応、またはアミノ酸−アミノ酸の対応をいう。%同一性は、配列を整列させ、2つの整列した配列の間の正確なマッチ数を数え、短い方の配列の長さで割り、そして、結果に100を掛けることにより、2つの分子間の配列情報の直接比較によって決定され得る。ALIGN(Dayhoff,M.O.Atlas of Protein Sequence and Structure
M.O.Dayhoff編,補遺5.3:353−358,National Biomedical Research Foundation,Washington,DC)のような容易に利用可能なコンピュータプログラムを用いると、分析に役立ち得る。ALIGNは、ペプチド分析に、SmithおよびWaterman(Advance in Appl.Math.2:482−489,1981)の局部的相同性アルゴリズムを適合する。ヌクレオチド配列同一性を決定するためのプログラムは、Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8(Genetics Computer Group,Madison,WIから入手可能)において入手可能であり、例えば、BESTFITプログラム、FASTAプログラムおよびGAPプログラム(これらはまた、SmithおよびWatermanのアルゴリズムに依存する)が挙げられる。これらのプログラムは、製造業者により推奨され、そして、上で参照されたWisconsin Sequence Analysis Packageに記載される、デフォルトパラメーターを用いて、容易に利用される。例えば、特定のヌクレオチド配列の参照配列に対する%同一性は、デフォルトのスコア付け表および6ヌクレオチド位置のギャップペナルティを用い、SmithおよびWatermanの相同性アルゴリズムを用いて決定され得る。
【0053】
本発明の文脈において、%同一性を確立する別の方法は、John F.CollinsおよびShane S.Sturrokによって開発され、IntelliGenetics,Inc.(Mountain View,CA)によって配布されている、University of Edinburghに版権がある、MPSRCHパッケージプログラムを使用することである。このパッケージ一式から、Smith−Watermanアルゴリズムが採用され得る(ここで、スコア付け表について、デフォルトパラメーター(例えば、12のギャップオープンペナルティ、1のギャップ拡張ペナルティ、および6のギャップ)が使用される)。作成されたデータから、「マッチ」値が「配列同一性」を反映する。配列間の%同一性または%類似性を計算するための他の適切なプログラムは、一般に、当該分野で公知であり、例えば、別のアライメントプログラムは、デフォルトパラメーターと共に使用される、BLASTである。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメーターを用いて使用され得る:遺伝コード=標準;フィルタ=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリクス=BLOSUM62;記述=50配列;ソート=ハイスコア;データベース=冗長性なし、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、当該分野で周知である。
【0054】
あるいは、相同性は、相同な領域の間で安定な二重鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、その後の、単鎖特異的ヌクレアーゼを用いた消化、および消化したフラグメントのサイズ決定によって、決定され得る。実質的に相同なDNA配列は、例えば、特定の系について記載されたようなストリンジェントな条件下での、サザンハイブリダイゼーション実験において同定され得る。適切なハイブリダイゼーション条件を規定することは、当該分野の技術範囲内である。例えば、Sambrookら,前出;DNA Cloning,前出;Nucleic Acid Hybridization,前出を参照のこと。
【0055】
用語「縮重改変体(degenerate variant)」は、その縮重改変体が由来するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、その核酸配列中に変更を含むポリヌクレオチドを意図する。
【0056】
「コード配列」または選択されたポリペプチドを「コードする」配列は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合に、インビボで、ポリペプチドに転写され(DNAの場合)、翻訳され(mRNAの場合)る核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンにより決定される。転写終止配列は、コード配列の3’に位置し得る。
【0057】
用語「異種性」は、コード配列および制御配列のような核酸配列に関する場合、通常は一緒に結合せず、そして/または通常は特定の細胞に結合しない配列を意味する。従って、核酸構築物またはベクターの「異種性」領域は、自然状態では、他の分子と結合して見られない、別の核酸分子内にあるか、またはこの別の核酸分子に結合した、核酸のセグメントである。例えば、核酸構築物の異種性領域は、自然状態ではコード配列と結合して見られない配列により隣接されるコード配列を含み得る。異種性のコード配列の別の例は、コード配列自体が自然状態で見られない構築物(例えば、ネイティブな遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。同様に、通常は細胞内に存在しない構築物を用いて形質転換された細胞は、本発明の目的について、異種性であると考えられる。本明細書中で使用される場合、対立遺伝子の変異、または天然に生じる変異の事象は、異種性のDNAを生じない。
【0058】
「核酸」配列は、DNA配列またはRNA配列をいう。この用語は、DNAおよびRNAの任意の公知の塩基アナログを含む配列を捕らえ、例えば、以下が挙げられるがこれらに限定されない:4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシル−メチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチル−アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュード−ウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチル−グアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチル−シトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシ−アミノ−メチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン(queosine)、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン(oxybutoxosine)、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリン。
【0059】
用語DNA「制御配列」とは、まとめて、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終止配列、上流の調節ドメイン、複製起点、内部リボソーム進入部位(「IRES」)、エンハンサーなどをいい、これは、まとめて、レシピエント細胞におけるコード配列の複製、転写および翻訳を提供する。選択されたコード配列が、適切な宿主細胞において複製、転写、そして翻訳され得る限りは、これらの制御配列の全てが、常に存在する必要はない。
【0060】
用語「プロモーター」は、本明細書において、DNA調節配列を含むヌクレオチド領域をいうために、その通常の意味で使用される。ここで、この調節配列は、RNAポリメラーゼに結合して、下流(3’−方向)コード配列の転写を開始し得る遺伝子に由来する。転写プロモーターは、「誘導性プロモーター」(このプロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、補因子、調節性タンパク質などによって誘導される)、「抑制性プロモーター」(このプロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、補因子、調節性タンパク質などによって誘導される)および「構成的プロモーター」を含み得る。
【0061】
「作動可能に連結している」とは、構成要素が、その通常の機能を果たすように構成されている、エレメントの配列をいう。従って、コード配列に作動可能に連結された制御配列は、このコード配列の発現を達成し得る。制御配列は、その発現を命令するように機能しさえすれば、コード配列と連続している必要はない。従って、例えば、まだ翻訳されていないが、転写された介在配列が、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、このプロモーター配列は、依然として、コード配列に「作動可能に連結している」と考えられ得る。
【0062】
「単離された」とは、ヌクレオチド配列に関する場合、指示された分子が同じ型の他の生物学的高分子が実質的にない状態で存在することを意味する。従って、「特定のポリヌクレオチドをコードする単離された核酸分子」とは、目的のポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子をいうが、この分子は、組成物の基本特性には、悪影響を及ぼさない、いくつかの追加の塩基または部分を含み得る。
【0063】
本願全体を通じて、特定の拡散分子中のヌクレオチド配列の相対的な位置を記載する目的で、例えば、特定のヌクレオチド配列が、別の配列に対して「上流」、「下流」、「3’」または「5’」に場所を定めされると記載される場合、それは、当該分野で慣習的であるといわれる、DNA分子の「センス」鎖または「コード」鎖における配列の位置であると理解されるべきである。
【0064】
所定のAAVポリペプチドの「機能的ホモログ」または「機能的等価物」は、ネイティブなポリペプチド配列に由来する分子、ならびに、所望の結果を達成するように、参照AAV分子に類似の様式で機能する、組換え的に産生されたか、もしくは、化学的に合成されたポリペプチドを含む。従って、AAV Rep68またはRep78の機能的ホモログは、その組込み活性が残る限りは、これらのポリペプチドの誘導体およびアナログ(内部に、またはそのアミノ末端もしくはカルボキシ末端に生じる、任意の単一もしくは複数のアミノ酸の付加、置換および/または欠失を含む)を包含する。
【0065】
「効率的な形質導入が可能」とは、本発明の変異型構築物が、対応する野生型配列を用いて得られるトランスフェクション効率の1〜10%の範囲内のレベルで、インビトロおよび/またはインビボにて、細胞をトランスフェクトする能力を保持するrAAVベクターまたはビリオンを提供することを意味する。好ましくは、この変異体は、対応する野生型配列の10〜100%の範囲内のレベルで、細胞または組織にトランスフェクトする能力を保持する。変異型配列は、細胞および組織にトランスフェクトする能力が増強された構築物をも提供し得る。形質導入効率は、実施例において記載されるインビトロ形質導入アッセイを含む、当該分野で周知の技術を用いて、容易に決定される。
【0066】
「減少した免疫反応性」とは、変異型AAV構築物が、対応する野生型AAV構築物と比較して低減したレベルで抗AAV抗体と反応することを意味する。用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合、ポリクローナル調製物およびモノクローナル調製物の両方、ならびに、以下のものから得られた抗体を含む:ハイブリッド抗体分子(キメラ抗体分子)(例えば、Winterら(1991)Nature 349:293−299;および米国特許第4,816,567号を参照のこと);F(ab’)2フラグメントおよびF(ab)フラグメント;Fv分子(非共有結合性のヘテロ二量体、例えば、Inbarら(1972)Proc Natl Acad Sci USA 69:2659−2662;およびEhrlichら(1980)Biochem 19:4091−4096を参照のこと);単鎖Fv分子(sFv)(例えば、Hustonら(1988)Proc Natl Acad Sci USA 85:5879−5883を参照のこと);二量体および三量体の抗体フラグメント構築物;ミニボディ(minibody)(例えば、Packら(1992)Biochem 31:1579−1584;Cumberら(1992)J Immunology 149B:120−126を参照のこと);ヒト化抗体分子(例えば、Riechmannら(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyanら(1988)Science 239:1534−1536;および英国特許公開番号GB 2,276,169(1994年9月21日公開)を参照のこと);ならびに、このようなフラグメントが、親抗体分子の免疫学的結合特性を保持するような分子から得られた、任意の機能的フラグメント。
【0067】
本発明の変異型構築物は、対応する野生型AAV構築物に対して作製された上記の型の抗体のいずれかを用いる、インビトロおよび/またはインビボのアッセイを使用して決定すると、減少した免疫反応性を有し得る。好ましくは、変異型AAV構築物は、対応する野生型構築物よりも少なくとも1.5倍低いレベル、好ましくは、少なくとも2倍低いレベル(例えば、少なくとも5〜10倍低いレベル)、さらに、対応する野生型構築物よりも、少なくとも50〜100倍、もしくは少なくとも1000倍低いレベルで、このような抗体と反応する。
【0068】
好ましくは、変異型AAV構築物は、抗AAV中和抗体と、低減したレベルで反応する。例えば、変異型構築物は、本明細書中に記載されるインビトロ中和アッセイのような標準的なアッセイを用いて決定される場合、対応する野生型よりも、少なくとも1.5倍、中和により抵抗性であり、好ましくは、少なくとも2倍、中和により抵抗性であり、なおより好ましくは、少なくとも5〜10倍以上(例えば、少なくとも50〜100倍以上)、対応する野生型よりも、中和により抵抗性である。
【0069】
用語「被験体」、「個体」または「患者」は、本明細書中で交換可能に使用され、そして、脊椎動物、好ましくは、哺乳動物をいう。哺乳動物としては、マウス、げっ歯類、サル、ヒト、家畜動物、競技用動物およびペットが挙げられるがこれらに限定されない。
【0070】
用語組成物または薬剤の「有効量」または「治療有効量」とは、本明細書中で提供される場合、無毒性であるが、所望の応答を提供するのに十分な組成物または薬剤の量をいう。必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢および全身状態、処置される状態の重篤度、ならびに、目的の特定の高分子、投与様式などに依存して、被験体ごとで変動する。任意の個々の場合の適切な「有効」量は、慣用的な実験を用いて、当業者により決定され得る。
【0071】
疾患を「処置すること」または疾患の「処置」とは、以下が挙げられる:(1)疾患の予防、すなわち、疾患に曝露され得るか、もしくは、疾患に罹りやすいが、まだ疾患を経験していないか、もしくは疾患の症状を呈していない被験体において、疾患の臨床症状を発症させないようにすること、(2)疾患の阻害、すなわち、疾患またはその臨床症状の発症を停止すること、あるいは(3)疾患の軽減、すなわち、疾患またはその臨床症状を退行させること。
【0072】
(2.発明を実施する様式)
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、特定の処方またはプロセスのパラメーターに限定されず、従って、これらは当然ながら変動し得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される用語法は、本発明の特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、制限することは意図されないこともまた、理解されるべきである。
【0073】
本明細書中に記載されるものと類似もしくは等価な多数の方法および材料が、本発明の実施において使用され得るが、好ましい材料および方法は、本明細書中に記載される。
【0074】
本発明の中心は、対応する野生型ビリオンと比較して、減少した免疫反応性を示すrAAVビリオンの産生に有用な、新規変異型AAV配列の発見である。さらに、この変異は、好ましくは、対応する野生型の他の特性(例えば、DNAパッケージング、レセプター結合、クロマトグラフィーによる精製、ならびにインビトロおよびインビボで細胞に形質導入する能力)を保持する。好ましくは、このような特性は、対応するAAV野生型について測定された値の少なくとも1〜10%の範囲内である。より好ましくは、このような特性は、対応するAAV野生型について測定された値の10〜100%の範囲内である。最も好ましくは、このような特性は、対応するAAV野生型について測定された値の少なくとも100%以上である。従って、例えば、この変異がAAV−2キャプシド配列内にある場合、これらの特性の比較は、変異型キャプシド配列を有するAAV−2ビリオンと、AAV−2野生型キャプシドタンパク質配列を除いて変異型ビリオンと同じ構成要素を有するAAV−2ビリオンとの間である。
【0075】
上で説明したように、本発明のAAV変異体は、好ましくは、変異型ビリオンが投与される宿主に存在し得る中和抗体に対して、減少した免疫反応性を示す。このように、AAVに自然状態で感染した(すなわち、以前の自然感染によるもの)か、または、AAVに人工的に感染した(すなわち、以前の遺伝子治療または核酸免疫によるもの)被験体の細胞および組織は、新規または現行の疾患を処置または予防するために、組み換え型AAVビリオンでより効率的にトランスフェクトされ得る。
【0076】
中和について十分に研究された機構は、中和抗体が、感染に必要とされるレセプターに結合するために必要とされるウイルス上の領域を物理的にブロックすることである。他のウイルスを用いた以前の研究は、レセプターと中和抗体が、別個のセットのアミノ酸に結合すること、そして、中和抗体の結合に影響を与えるが、レセプター、またはウイルス感染に必要とされる他の機能には影響を与えない、ウイルスキャプシド上の特定の位置にある変異を同定することが可能であることを示している。中和抗体に抵抗性である野生型の複製ウイルスが選択される実験は、変異が、本明細書中に記載されるもののような単一のアミノ酸においてさえ、抗体の中和に対する抵抗性を有意に増加させ得ることを示している。
【0077】
AAV変異型ビリオンがAAV抗血清に結合できるかできないかは、部分的にキャプシドタンパク質(AAV cap遺伝子によりコードされる)の配列の機能である。従って、本発明は、免疫反応性を減少させるために(例えば、AAVビリオンのAAV抗血清に結合する能力を変更するために)、AAVビリオンの表面上で作成される、一重、二重、三重、四重およびそれ以上のアミノ酸の変更、ならびに、欠失および/または挿入を意図する。このような変異は、中和に対する抵抗性について評価され得、そして、必要に応じて、より劇的であるか、または多重の変更がなされ得る。
【0078】
結果として生じる機能的なrAAVビリオンを有する、変異に敏感なAAVビリオンの部分を同定する方法が、以下の実施例において記載される。実施例において詳述されるように、キャプシドの突出した形状(「スパイク」、「シリンダー」および「プラトー」として知られるキャプシドの部分を含む)に対する変異のようなウイルス表面上のアミノ酸に対する変異が好ましい。変異は、好ましくはVP2領域に対するものであり、より好ましくは、VP3領域に対するものであり、そして特に、図11に示されるように、VP1とVP2とVP3との間の重なり合う領域内である。特に好ましい変異は、VP2の80位〜598位(VP1のアミノ酸217〜735およびVP3のアミノ酸15〜533に対応する)の範囲内で見られる。
【0079】
代表的なVP2の配列を、本明細書中の図9(配列番号12)に示す。この主要な被膜タンパク質であるVP3は、VP1のアミノ酸203〜735に跨る。この変異は、ネイティブなタンパク質に対して、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む。代表的な変異としては、以下のアミノ酸からなる群より選択されるAAV−2 VP2キャプシドタンパク質の位置に対応する位置で生じる、アミノ酸の1つ以上の置換を含む:アミノ酸126、127、128、130、132、134、247、248、315、334、354、357、360、361、365、372、375、377、390、393、394、395、396、407、411、413、418、437、449、450、568、569および571。
【0080】
一般に、天然に存在するアミノ酸は、小さな側鎖を有する、そして/または無電荷であり、そしてそれゆえ、免疫原性が少ないアミノ酸で置換される。このようなアミノ酸としては、アラニン、バリン、グリシン、セリン、システイン、プロリンならびにこれらのアナログが挙げられるがこれらに限定されず、アラニンが好ましい。さらに、追加の変異が存在し得る。代表的な組み合わせとしては、直ぐ上で特定されたアミノ酸の任意の組み合わせ(例えば、アミノ酸360のヒスチジンへの変異とアミノ酸361のアラニンへの変異;アミノ酸334のアラニンへの変異とアミノ酸449のアラニンへの変異;アミノ酸334のアラニンへの変異とアミノ酸568のアラニンへの変異、アミノ酸568のアラニンへの変異とアミノ酸571のアラニンへの変異;アミノ酸334のアラニンへの変異とアミノ酸449のアラニンへの変異とアミノ酸568のアラニンへの変異;アミノ酸571のリジンへの変異と上で特定されたアミノ酸のいずれかの変異)が挙げられるがこれらに限定されない。上記の組み合わせは、単なる例示であり、当然ながら、多数の他の組み合わせが、本明細書中に提供される情報に基づき、容易に決定される。
【0081】
実施例にさらに記載されるように、キャプシド内の特定のアミノ酸は、ヘパリン結合部位に隣接している。この領域は、本明細書において「デッドゾーン」または「DZ」と呼ばれ、これらとしては、アミノ酸G128、N131、D132、H134、N245、N246、D356、D357、H372、G375、D391、D392、E393およびE394が挙げられる。デッドゾーン内のアミノ酸は、AAVの機能に重要であり、従って、中和抗体の結合のための標的でもある。この領域は、AAVの機能に重要なので、保存的アミノ酸置換(例えば、Hに対してQ、Eに対してD、Dに対してEまたはNなど)が、デッドゾーン領域において好まれ、多くの機能的なデッドゾーン変異体を生じる。
【0082】
キャプシドタンパク質に生じる種々のアミノ酸位置は、本明細書において、NCBI登録番号AF043303に記載され、本明細書中の図9に示されるAAV−2 VP2配列を参照して番号付けられる。図10は、AAV−2 VP1のアミノ酸配列を示す。しかし、AAV血清型のいずれかの対応する位置で生じるアミノ酸の変異が、本発明に包含されることが理解されるべきである。複数の種から単離された種々のAAV血清型からのキャプシドの配列が公知であり、例えば、Gaoら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA99:11854−11859;Rutledgeら(1998)J.Virol.72:309−319;NCBI登録番号NC001863;NC004828;NC001862;NC002077;NC001829;NC001729;U89790;U48704;AF369963;AF028705;AF028705;AF028704;AF513852;AF513851;AF063497;AF085716;AF43303;Y18065;AY186198;AY243026;AY243025;AY243024;AY243023;AY243022;AY243021;AY243020;AY243019;AY243018;AY243017;AY243016;AY243015;AY243014;AY243013;AY243012;AY243011;AY243010;AY243009;AY243008;AY243007;AY243006;AY243005;AY243004;AY243003;AY243002;AY243001;AY243000;AY242999;AY242998;およびAY242997に記載される。
【0083】
さらに、発明者らは、本明細書において、ヤギから単離された新規ヤギAAV(本明細書中で「AAV−G1」と呼ばれる)を発見した。このヤギAAV VP1配列は、AAV−5のVP1配列と高度に相同であるが、ネイティブなAAV−5の配列よりも、AAV抗体が存在することによる中和に対して、約100倍以上抵抗性である。より具体的には、603bpのrep、中央イントロンおよび全てのcapをコードする本明細書中に記載されるヤギAAVの2805bpのPCRフラグメントは、対応するAAV−5配列に対して94%の相同性を示す。親のrepに対するDNAおよびタンパク質の相同性は、それぞれ98%および99%である。ヤギVP1コード配列と、霊長類AAV−5 VP1コード配列との比較を、図12A〜12Bに示す。ヤギAAVのcap領域に対するDNAは、AAV−5のものと93%相同である。ヤギVP1 対 霊長類AAV−5に対するアミノ酸配列を図13に示す。ヤギ配列は、726アミノ酸のVP1タンパク質をコードするが、AAV−5 VP1は、724アミノ酸長である。さらに、これら配列は、94%の配列同一性および96%の配列類似性を示す。ヤギと霊長類AAV−5 VP1の配列の間には、43のアミノ酸の相違が存在する。VP1の直線状アミノ酸配列に関して、AAV−5とヤギAAVとの間のアミノ酸相違の分布は、高度に極性である。全てのアミノ酸の相違は、分散した様式で、もっぱらVP1のC末端超可変領域に生じる。AAV−5とヤギに関するこの領域は、AAV−5 VP1に関して番号付けすると、アミノ酸386からC末端までの約348アミノ酸を含む。他のAAV血清型における対応する超可変領域は、容易に同定可能であり、多数のAAV血清型からの領域を、本明細書中の図面に示す。
【0084】
特定の理論に束縛されないが、AAV−5とヤギAAVのVP1における全てのアミノ酸相違は、おそらく表面に露出された領域に生じるという事実は、キャプシドの進化が、新しい宿主の体液性免疫系によって、および/または反芻動物レセプターに対する順応によって、主に駆動されるということを示唆する。
【0085】
ヤギAAVからのVP1配列の、多数の他の霊長類VP1配列(AAV−1、AAV−2、AAV−3B、AAV−4、AAV−6、AAV−8およびAAV−5を含む)との比較を、図14A〜14Hに示す。結晶構造に基づく、種々のアミノ酸位置の接近可能性もまた、これらの図面に示す。さらに、アミノ酸の表面形状、結合および中和を減少させる単一変異の位置;ヘパリン結合部位;Mg2+接触の可能性;ホスホリパーゼA2ドメイン;ならびに、塩基接触およびDNA結合しやすい位置、リン酸基およびリボースと接触する可能性のある位置もまた示す。図面において認められ得るように、AAV−5およびヤギAAVは、AAV−2およびAAV−8の両方で異なる17位において、互いに同一である。
【0086】
同様に、本発明者らは、本明細書において、ウシから単離された、新規ウシAAV(本明細書中で「AAV−C1」と呼ばれる)を発見した。AAV−C1 VP1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、それぞれ図20Aおよび20Bに示す。図21A〜21Hは、AAV−C1に由来するVP1のアミノ酸配列の、霊長類AAV−1、AAV−2、AAV−3B、AAV−4、AAV−6、AAV−8、AAV−5およびヤギAAV(AAV−G1)に由来するVP1アミノ酸配列との比較を示す。結晶構造に基づく、種々のアミノ酸位置の接近可能性もまた、これらの図面に示す。さらに、アミノ酸の表面形状、結合および中和を減少する単一変異の位置;ヘパリン結合部位;Mg2+接触の可能性;ホスホリパーゼA2ドメイン;ならびに、塩基接触およびDNA結合しやすい位置、リン酸基およびリボースと接触する可能性のある位置もまた示す。
【0087】
図面において認められ得るように、AAV−C1からのVP1は、AAV−4とおよそ76%の同一性を示す。AAV−4とAAV−C1との間の配列の相違は、キャプシド全体にわたって分散している。AAV−C1 VP1は、AAV−5 VP1とおよそ54%の同一性を示し、Repタンパク質、AAV−5 VP1の最初の137アミノ酸、およびAAV−5 VP1の終止後の非翻訳領域において高い相同性を有する(図示せず)。従って、AAV−C1は、AAV−5とAAV−4との間の天然のハイブリッドであるようである。AAV−C1はまた、AAV−2およびAAV−8からのVP1とおよそ58%の配列同一性を示し、AAV−1およびAAV−6からのAP1とおよそ59%の配列同一性を示し、そして、AAV−3BからのVP1とおよそ60%の配列同一性を示した。
【0088】
実施例により詳細に記載されるように、ウシAAVは、ネイティブなAAV−2配列よりも、AAV抗体の存在による中和に対しておよそ16倍抵抗性である。従って、ヤギおよびウシの配列、ならびに他のこのような非霊長類哺乳動物配列が、霊長類AAV配列に対して(例えば、AAV−2およびAAV−5に対して)減少した免疫反応性を有する組み換え型AAVビリオンを生成するために使用され得る。さらに、非ヤギおよび非ウシのAAV単離体および株(例えば、AAV血清型のいずれか)から、減少した免疫反応性を有するAAVビリオンを提供するために変異され得るAAVキャプシドの領域は、本明細書中に提供されるヤギおよびウシのAAV配列、ならびに、他の単離体および血清型のものとの、これらの配列および免疫反応性特性の比較に基づいて、合理的に予測され得る。
【0089】
上記の議論および本明細書中に提供される実施例に基づいて、当業者は、減少した免疫反応性を有するAAVビリオンを生成するために野生型AAV配列に対して作成され得る変異を合理的に予測し得る。AAVキャプシド表面上に見られるアミノ酸、特に、超可変領域に見られるアミノ酸に対するアミノ酸の変化は、減少した免疫反応性を有するAAVビリオンを提供すると期待される。さらに、ヤギおよびウシのAAV配列によって提供された知識に基づいて、他の非霊長類哺乳動物AAVが、霊長類AAV(例えば、AAV−2およびAAV−5)に対して減少した免疫反応性を有する組み換え型AAVビリオンを調製する際に使用するための、非変異型AAV配列を提供するために同定され得る。例えば、以下の実施例に示されるように、中和抵抗性に関連し、AAV−2変異体とヤギAAVとの間に共通するAAV−2変異体における位置は、AAV−2の位置248、354、360、390、407、413および449に対する変更が含まれる。
【0090】
本発明のAAV変異体は、AAV cap遺伝子領域の部位指向型変異誘発により作製され得る。次いで、変異されたcap領域が、変異したヘルパー機能ベクターおよび任意の適切なトランスフェクション法(本明細書中に記載される三重トランスフェクション法を含む)を用いて、適切なヘルパー機能ベクター内にクローニングされ得、そしてrAAVベクターが作成され得る。本発明での使用に適切な変異体は、上に定義されるような、減少した免疫反応性により同定される。好ましくは、本発明の変異体は、抗AAV抗血清、好ましくは、抗AAV−2抗血清によって中和される能力が減少しているが、他の生物学的機能(例えば、インタクトなビリオンを組み立てる能力、ウイルスDNAをパッケージングする能力、細胞レセプターに結合する能力、および、細胞に形質導入する能力)を維持している。
【0091】
従って、本発明は、rAAVビリオンに組み込むために減少した免疫反応性を示す、変異型AAV配列、ならびに野生型の非霊長類哺乳動物AAV配列の同定および使用を含む。このようなrAAVビリオンは、「異種性の核酸」(「HNA」)を、脊椎動物被験体(例えば、哺乳動物)に送達するために使用され得る。上で説明したように、「組み換え型AAVビリオン」または「rAAVビリオン」は、「組み換え型AAV(rAAV)ベクター」をカプセル化するAAVタンパク質の殻(すなわち、キャプシド)から構成された感染性ウイルスであり、rAAVベクターは、HNAおよび1つ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)を含む。AAVベクターは、当該分野で公知の組換え技術を使用して構築され得、機能的ITRに隣接される1つ以上のHNAを含み得る。rAAVベクターのITRは、野生型のヌクレオチド配列である必要はなく、その配列が適切な機能(すなわち、AAVゲノムのレスキュー、複製およびパッケージング)を提供する限りは、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失もしくは置換によって変更され得る。
【0092】
組み換え型AAVビリオンは、当該分野で公知の種々の技術(三重トランスフェクション法(米国特許第6,001,650号に詳細に記載される)を含む)を用いて生成され得る。このシステムは、rAAVビリオン生成のために、3つのベクター(AAVヘルパー機能ベクター、補助機能ベクター、およびHNAを含むrAAVベクターが挙げられる)の使用を含む。しかし、当業者は、これらのベクターによりコードされる核酸配列が、種々の組み合わせで2つ以上のベクターにて提供され得ることを理解する。本明細書中で使用される場合、用語「ベクター」は、適切な制御エレメントに結合された場合に複製し得、かつ、細胞間で遺伝子配列を移動させ得る、任意の遺伝的エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオンなど)を含む。従って、この用語は、クローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを含む。
【0093】
AAVヘルパー機能ベクターは、生産的なAAVの複製およびカプセル化のためにトランスで機能する「AAVヘルパー機能」配列(すなわち、repおよびcap)をコードする。好ましくは、AAVヘルパー機能ベクターは、任意の検出可能な野生型AAVビリオン(すなわち、機能的なrep遺伝子およびcap遺伝子を含むAAVビリオン)を生じることなく、効率的なAAVベクターの生成を支持する。本発明での使用に適切なベクターの例としては、米国特許第6,001,650号に記載されるpHLP19、および米国特許第6,156,303号に記載されるpRep6cap6ベクターが挙げられる。
【0094】
補助機能ベクターは、非AAV由来のウイルス、および/または、AAVの複製が依存する細胞機能(すなわち、「補助機能」)ついてのヌクレオチド配列をコードする。補助機能としては、AAVの複製に必要とされる機能(AAV遺伝子の転写の活性化に関与する部分、段階特異的なAAV mRNAのスプライシングに関与する部分、AAV DNAの複製に関与する部分、cap発現産物の合成に関与する部分、およびAAVキャプシドの組み立てに関与する部分が挙げられるがこれらに限定されない)が挙げられる。ウイルスベースの補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純疱疹ウイルス1型以外)およびワクシニアウイルスのような任意の公知のヘルパーウイルスに由来し得る。好ましい実施形態において、補助機能プラスミドであるpLadeno5が使用される(pLadeno5に関する詳細については、米国特許第6,004,797号に記載される)。このプラスミドは、AAVベクターの生成のためのアデノウイルスの補助機能の完全なセットを提供するが、複製能をもつアデノウイルスを形成するために必須の成分を欠いている。
【0095】
異種性の核酸(HNA)を含むrAAVベクターは、種々のAAV血清型のいずれかに由来するITRを用いて構築され得る。HNAは、そうでなければ自然状態では一緒には見られない、一緒に結合された核酸配列を含み、この概念を、用語「異種」で規定する。この点を例示するために、HNAの例は、自然状態ではその遺伝子と結合した状態では見られないヌクレオチド配列により隣接された遺伝子である。HNAの別の例は、自然状態ではそれ自体が見られない遺伝子(例えば、ネイティブな遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。本明細書中で使用される場合、対立遺伝子の変化または天然に存在する変異的事象は、HNAを生じない。HNAは、アンチセンスRNA分子、リボザイム、またはポリペプチドをコードする遺伝子を含み得る。
【0096】
HNAは、HNAが、適切な条件下または所望の条件下で患者の標的細胞内で発現され得るように、異種性プロモーター(構成的、細胞特異的、または、誘導性)に作動可能に連結される。構成的プロモーター、細胞特異的プロモーターおよび誘導性プロモーターの多数の例が当該分野で公知であり、当業者は、特定の意図される用途のためのプロモーターを容易に選択し得る(例えば、筋肉細胞特異的な発現のための筋肉特異的な骨格α−アクチンプロモーターもしくは筋肉特異的なクレアチンキナーゼプロモーター/エンハンサーの選択、強いレベルの連続的もしくはほぼ連続的な発現のための、構成的CMVプロモーターの選択、または誘導的発現のための誘導性エクジソンプロモーターの選択)。誘導的な発現は、当業者が合成されるタンパク質の量を制御することを可能にする。この様式において、治療的生成物の濃度を変動させることが可能である。周知の誘導性プロモーターの他の例は、ステロイドプロモーター(例えば、エストロゲンプロモーターおよびアンドロゲンプロモーター)およびメタロチオネインプロモーターである。
【0097】
本発明は、1つ以上のアンチセンスRNA分子をコードするHNAを含む新規変異型ビリオンを含み、このrAAVビリオンは、好ましくは、哺乳動物の1つ以上の筋肉細胞または組織に投与される。癌のアンチセンス療法またはウイルス疾患の処置において、本発明で使用するために適切なアンチセンスRNA分子は、当該分野で記載されている。例えば、Hanら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4313−4317;Uhlmannら(1990)Chem.Rev.90:543−584;Heleneら(1990)Biochem.Biophys.Acta.1049:99−125;Agarawalら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7079−7083;およびHeikkilaら(1987)Nature 328:445−449を参照のこと。本発明はまた、本明細書中で開示される方法を用いる、リボザイムの送達を包含する。適切なリボザイムの議論については、例えば、Cechら(1992)J.Biol.Chem.267:17479−17482および米国特許第5,225,347号を参照のこと。
【0098】
本発明は、好ましくは、1つ以上のポリペプチドをコードするHNAを含む変異型rAAVビリオンを包含し、このrAAVビリオンは、好ましくは、哺乳動物の1つ以上の細胞または組織に投与される。従って、本発明は、哺乳動物被験体における疾患状態の処置または予防に有用な、1つ以上のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードするHNAの送達を包含する。このようなDNAおよび関連する疾患状態としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:グルコース−6−リン酸(グリコーゲン貯蔵欠乏症1A型に関連する)をコードするDNA;ホスホエノールピルビン酸−カルボキシキナーゼ(Pepck欠損症に関連する)をコードするDNA;ガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(ガラクトース血症に関連する)をコードするDNA;フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(フェニルケトン尿症に関連する)をコードするDNA;分枝鎖α−ケト酸デヒドロゲナーゼ(メープルシロップ尿症に関連する)をコードするDNA;フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ(チロシン血症1型に関連する)をコードするDNA;メチルマロニル−CoAムターゼ(メチルマロン酸血症に関連する)をコードするDNA;中位鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(中位鎖アセチルCoA欠損症に関連する)をコードするDNA;オルニチントランスカルバミラーゼ(オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症に関連する)をコードするDNA;アルギノコハク酸シンテターゼ(シトルリン血症に関連する)をコードするDNA;低密度リポタンパク質レセプタータンパク質(家族性高コレステロール血症に関連する)をコードするDNA;UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ(クリグラー−ナジャー病に関連する)をコードするDNA;アデノシンデアミナーゼ(重篤複合免疫不全疾患に関連する)をコードするDNA;ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(痛風およびレッシュ−ナイハン症候群に関連する)をコードするDNA;ビオチニダーゼ(ビオチニダーゼ欠損症に関連する)をコードするDNA;β−グルコセレブロシダーゼ(ゴーシェ病に関連する)をコードするDNA;β−グルクロニダーゼ(スライ症候群に関連する)をコードするDNA;ペルオキシソーム膜タンパク質70kDa(ツェルヴェーガー症候群に関連する)をコードするDNA;ポルホビリノーゲンデアミナーゼ(急性間欠性ポルフィリン症に関連する)をコードするDNA;α−1アンチトリプシン欠損症(気腫)の処置のためのα−1アンチトリプシンをコードするDNA;サラセミアまたは腎不全に起因する貧血の処置のためのエリスロポエチンをコードするDNA;虚血性疾患の処置のための、血管内皮増殖因子をコードするDNA、アンジオポエチン−1をコードするDNA、および繊維芽細胞増殖因子をコードするDNA;例えば、アテローム性動脈硬化症、血栓症または塞栓症において見られるような、血管閉塞の処置のための、トロンボモジュリンおよび組織因子経路インヒビターをコードするDNA;パーキンソン病の処置のための、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)をコードするDNAおよびチロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするDNA;うっ血性心不全の処置のための、β−アドレナリン作動性レセプターをコードするDNA、ホスホランバンのアンチセンス、もしくはホスホランバンの変異形態をコードするDNA、筋小胞体(小胞体)アデノシントリホスファターゼ−2(SERCA2)をコードするDNA、および心臓のアデニリルシクラーゼをコードするDNA;種々の癌の処置のための、p53のような腫瘍抑制遺伝子をコードするDNA;炎症性および免疫性の障害および癌の処置のための、種々のインターロイキンのうちの1つのようなサイトカインをコードするDNA;筋ジストロフィーの処置のための、ジストロフィンまたはミニジストロフィンをコードするDNA、およびウトロフィン(utrophin)またはミニウトロフィンをコードするDNA;ならびに、糖尿病の処置のための、インスリンをコードするDNA。
【0099】
本発明はまた、血液凝固タンパク質をコードする遺伝子を含む新規変異型ビリオンを含み、このタンパク質は、本発明の方法を使用して、血友病の処置のために、血友病を有する哺乳動物の細胞に送達され得る。従って、本発明は、血友病Bの処置のために第IX因子遺伝子を哺乳動物に送達すること、血友病Aの処置のために第VIII因子遺伝子を哺乳動物に送達すること、第VII因子欠損症の処置のために第VII因子遺伝子を送達すること、第X因子欠損症の処置のために第X因子遺伝子を送達すること、第XI因子欠損症の処置のために第XI因子遺伝子を送達すること、第XIII因子欠損症の処置のために第XIII因子遺伝子を送達すること、およびプロテインC欠損症の処置のためにプロテインCを送達することを包含する。上記の遺伝子の各々の、哺乳動物の細胞への送達は、まずこれらの遺伝子を含むrAAVビリオンを作製し、次いで、このrAAVビリオンを哺乳動物に投与することによって達成される。従って、本発明は、第IX因子、第VIII因子、第X因子、第VII因子、第XI因子、第XIII因子またはプロテインCのうちのいずれか1つをコードする遺伝子を含むrAAVビリオンを包含する。
【0100】
1つ以上のHNAを含む組換えビリオンの哺乳動物被験体への送達は、筋肉内注射によってか、または哺乳動物被験体の血流内への投与によってであり得る。この血流内への投与は、静脈内、動脈内、または任意の他の血管内に、外科手術の分野において周知の技術である肢隔離灌流(isolated limb perfusion)によって血流内に変異型ビリオンを注射することによってであり得る。この方法は、rAAVビリオンの投与前に、当業者が肢を全身循環から隔離することを本質的に可能にする。米国特許第6,177,403号に記載される、肢隔離灌流技術の改変物がまた、変異型ビリオンを隔離された肢の血管系に投与して、筋肉細胞または筋肉組織内への形質導入を強力に促進するために、当業者により採用され得る。さらに、特定の条件については、変異型ビリオンを被験体のCNSに送達することが望ましくあり得る。「CNS」とは、脊椎動物の脳および脊髄の全ての細胞および組織を意味する。従って、この用語は、神経細胞、グリア細胞、星状細胞、脳脊髄液(cereobrospinal fluid)(CSF)、間質性空間(interstitial space)、骨、軟骨などを含むが、これらに限定されない。インビトロで形質導入された組み換え型AAVビリオンまたは細胞は、例えば、脳室領域および線条(例えば、線条の尾状核または被殻)、脊髄および神経筋接合部、または小脳小葉内に、針、カテーテルまたは関連デバイスを用いて、当該分野で公知の神経外科的技術(例えば、定位注射(例えば、Steinら,J Virol 73:3424−3429,1999;Davidsonら,PNAS 97:3428−3432,2000;Davidsonら,Nat.Genet.3:219−223,1993;ならびにAliskyおよびDavidson,Hum.Gene Ther.11:2315−2329,2000を参照のこと))を使用して、注射によって、CNSまたは脳に直接送達され得る。
【0101】
特定の「治療効果」を達成するために必要とされるrAAVビリオンの用量(例えば、体重1kgあたりのベクターゲノムの単位用量(vg/kg))は、いくつかの因子(rAAVビリオンの投与経路、治療効果を達成するために必要とされる遺伝子(またはアンチセンスRNAまたはリボザイム)の発現レベル、処置される特定の疾患もしくは障害、rAAVビリオンに対する宿主の免疫応答、遺伝子(またはアンチセンスRNAまたはリボザイム)発現産物に対する宿主の免疫応答、ならびに遺伝子(またはアンチセンスRNAまたはリボザイム)産物の安定性を含むが、これらに限定されない)に基づいて変動する。当業者は、前述の因子、および当該分野で周知の他の因子に基づいて、特定の疾患もしくは障害を有する患者を処置するためのrAAVビリオンの用量範囲を容易に決定し得る。
【0102】
一般的に、「治療効果」とは、所望の結果または臨床的終点に向けて、疾患(または障害)の構成要素を変化させ、その結果、患者の疾患または障害が、臨床的な改善を示すのに十分な1つ以上のHNAの発現レベルを意味し、しばしば、この疾患または障害に関連する臨床的徴候もしくは症状の寛解により反映される。特定の疾患例として血友病を用いると、血友病についての「治療効果」は、血友病を罹患する哺乳動物の血液凝固効率の増加、として本明細書において定義され、この効率は、例えば、周知の終点もしくは技術(例えば、全血凝固時間または活性型プロトロンボプラスチン時間(prothromboplastin time)を測定するためのアッセイを使用すること)によって決定される。全血凝固時間または活性型プロトロンボプラスチン時間のいずれかの減少は、血液凝固効率の増加の指標である。血友病の重篤なケースにおいて、正常なレベルの1%未満の第VIII因子もしくは第IX因子を有する血友病患者は、非血友病患者についての約10分と比較して、60分を超える全血凝固時間を有する。第VIII因子または第IX因子の1%以上の発現は、血友病の動物モデルにおいて、全血凝固時間を減少することが示されており、従って、1%を超える第VIII因子または第IX因子の循環血漿濃度は、血液凝固効率の増加の所望の治療効果を達成する可能性がある。
【0103】
本発明の構築物は、代替的に、その生理学的機能または生化学的機能を解明するために、HNAを宿主細胞に送達するために使用され得る。HNAは、内因性遺伝子または異種性遺伝子のいずれかであり得る。エキソビボまたはインビボのアプローチのいずれかを使用すると、当業者は、機能未知の1つ以上のHNAを含む変異型ビリオンを実験動物に投与し、HNAを発現させ、そして、その後の任意の機能の変化を観察し得る。このような変化としては、以下が挙げられ得る:タンパク質−タンパク質相互作用、生化学経路における変更、細胞、組織、器官もしくは器官系の生理学的機能の変更、および/または遺伝子発現の刺激もしくはサイレンシング。
【0104】
あるいは、当業者は、機能既知または機能未知の遺伝子を過剰発現させて、インビボでのその効果を調べ得る。このような遺伝子は、実験動物に対して内因性であっても、自然状態では異種性(すなわち導入遺伝子)であってもよい。
【0105】
本発明の方法を使用することによって、当業者はまた、遺伝子発現を消滅もしくは有意に減少させ、それによって、遺伝子機能を決定する別の手段を採用し得る。このことを達成する1つの方法は、アンチセンスRNAを含有するrAAVビリオンを、実験動物に投与し、標的内因性遺伝子が「ノックアウト」されるように、このアンチセンスRNA分子を発現させ、次いで、その後の任意の生理学的変化もしくは生化学的変化を観察することによるものである。
【0106】
本発明の方法は、トランスジェニックマウスおよびノックアウトマウスのような、他の周知の技術と適合性であり、これらの技術を補完するために使用され得る。当業者は、遺伝子機能に関する有用な情報を得るための、本発明の方法と公知の技術の組み合わせを容易に決定し得る。
【0107】
一旦送達されると、多くの場合、単にHNAを発現するだけでは十分でない;その代わり、HNAの発現レベルを変えることがしばしば所望される。HNAの発現レベルを変えることにより、HNA発現生成物の用量が変わり、このことは、しばしば、HNAに関する機能的な情報を獲得および/または洗練するのに有用である。これは、例えば、HNAを含有するrAAVビリオンに異種誘導性のプロモーターを組み込むことによって達成され得、その結果、プロモーターが誘導されたときにのみHNAが発現する。いくつかの誘導性プロモーターはまた、HNA発現レベルを洗練するための能力を提供し得る;すなわち、誘導物質の濃度を変えることによって、HNAの発現生成物の濃度を微調整する。このことは、時折、「オン−オフ」システム(すなわち、任意の量の誘導物質が、同じレベルのHNA発現生成物を提供する、「全か無」の応答)を有することよりも有用である。誘導性プロモーターの多数の例は当該分野で公知であり、エクジソンプロモーター、ステロイドプロモーター(例えば、エストロゲンプロモーターおよびアンドロゲンプロモーター)およびメタロチオネインプロモーターが挙げられる。
【実施例】
【0108】
(3.実験)
以下は、本発明を実施するための具体的な実施形態の例である。これらの実施例は、例示目的のためだけに提供され、本発明の範囲を制限することは決して意図されない。
【0109】
使用される数(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するための努力がなされているが、いくらかの実験上の誤差および偏差が、当然ながら許容されるべきである。
【0110】
(実施例1 組み換え型AAV−LacZ変異型ビリオンの調製およびその特性)
β−ガラクトシダーゼ遺伝子を含有する組み換え型AAV−2ビリオン(rAAV−2 lacZ)を、米国特許第6,001,650号に記載される三重トランスフェクション手順を用いて調製した。β−galに対する完全なcDNA配列は、GenBank登録番号NC 000913(領域:相補体(362455..365529))の下で入
手可能である。
【0111】
(I.ベクターの構築)
(A.変異型AAVヘルパー機能ベクター)
AAV−2の構造(Xieら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2002)99:10405−10410を参照のこと)に基づいて、61の変異体を、オリゴヌクレオチド指向性部位特異的変異誘発により構築した。AAVの全表面は、正十二面体形状で整列する60の同一な非対称構造単位から構成される。これは、2つの重要な意味を持つ。第1に、作製される任意の単一のアミノ酸変異が、全てが非対称構造単位内の他のアミノ酸に対して同じ位置で、ウイルスの60の位置で見られることである。第2に、単一の非対称構造単位を研究することによって、このウイルスの全表面を理解し得ることである。
【0112】
AAV−2構造を、以下のように決定した。単量体AAV−2キャプシドタンパク質(VP1アミノ酸217〜735;VP2アミノ酸80〜598)についての座標を、Protein Data Bank(識別番号1LP3)から得た。この構造を、Swiss PDB Viewerバージョン3.7、Vector NTI 3D−Molバージョン8.0(Invitrogen,Inc)またはChime(MDL Information Systems,Inc)を用いて分析した。AAV−2キャプシドの多量体構造を、Virus Particle Explorer(VIPER)ウェブサイト上のオリゴマー生成プログラムを用いて作製したか、Swiss PDB viewerの座標変換機能を用いて、PBD(1LP3)のマトリクス座標を連結して作製したか、または、European Bioinformatics Instituteのタンパク質四元構造データベースからダウンロードした(ファイル名=1lp3)。AAV−2キャプシド多量体上の可能な抗体結合部位を、AAV−2キャプシドの非対称構造単位を構築することによって分析し、次いで、Swiss PDB Viewerを用いて、その構造に対して、または、AAV−2キャプシドの他の多量体単位に対して、IgG構造(マウスIgG2aモノクローナル抗体;PDB ID番号1IGT)を手動でドッキングさせた。IgGとAAV−2キャプシドとの間の距離、アミノ酸衝突、および接触面積は、Swiss PDB Viewerプログラム内の適切なツールを用いて評価され得る。
【0113】
いくつかの基準を当てはめて、約145個全ての外側の表面に露出されているアミノ酸(60の同一な非対称構造単位の各々の内部、図1を参照のこと)から、どのアミノ酸を変異させるかを選択した。変異は、外側の「表面に露出されている」アミノ酸においてのみ生じさせたが、外側表面の下、または内側表面上のアミノ酸に抗体結合を支配させることも可能である。変異させたアミノ酸は、抗体結合に対して最も接近可能であると予測された側鎖を有するアミノ酸であった。これは、「スパイク」、「シリンダー」および「プラトー」として知られる、キャプシドの突出した形態上のアミノ酸を含んだ。このような突出した形態は、しばしば、中和抗体の結合のための標的である。抗体を収容するほど十分に広くない領域(「キャニオン(canyon)」、「ディンプル(dimple)」、3重の対称軸の中心、5重の対称軸の中心)のアミノ酸は、変異させなかった。さらに、アミノ酸側鎖を、少なくとも20Å2の露出面積に基づいて選択した。なぜならば、抗原と抗体との間の接触面積の20Å2以上の減少(約600Å2〜900Å2の全接触面積のうち)は、抗体−抗原親和性に、そしてそれゆえ、抗体の中和力価に、無視できないほどの影響を有し得るからである。選択されたアミノ酸は、側鎖(ペプチド骨格だけではない)が露出されているものであった。ペプチド骨格のみが露出されていると、このようなアミノ酸に結合した抗体は、種々のアミノ酸を識別し得ないと考えられた。これは、全てのアミノ酸が、同じペプチド骨格を有するからである。最終的に、タンパク質抗原の比較的平坦な領域が、しばしば、抗体の比較的な領域と相互作用し、従って、変異のために選択されるアミノ酸は、比較的平坦な領域(スパイクの側面、シリンダーの頂部、プラトーの頂部)にあった。全ての上記の基準を、AAV−2の外側表面に位置する約145のキャプシドアミノ酸に当てはめることにより、他のアミノ酸に変更したときに、中和抗体の結合に最も影響を与える可能性がある、72の位置を選択した。これらのアミノ酸の位置を図2に示し、表1、4および5に列挙する。
【0114】
作製された(72の位置における)127の変異の大部分を、分子生物学の分野の当業者に公知の技術を用いて、単一のアミノ酸からアラニンに変更した。作製され得る全ての変異の中で、アラニンがタンパク質の構造に最も破壊しないこと決定されているので、アラニンを選択した。また、アラニンのみがメチル側鎖を有するので、他のアミノ酸の大半をアラニンに変更することは、抗体結合を妨害する傾向がある。すなわち、他のアミノ酸と比較して、アラニンは、最も免疫原性が低い。なぜならば、アラニンは、抗原/抗体接触領域に有意に寄与し、従って、抗原/抗体親和性に有意に寄与する側鎖を欠くからである。後に続く数字は、図9に示されるAAV−2 VP2配列に基づくことに注意されたい。2〜3の位置を、アラニン以外のアミノ酸に変化させた。例えば、既にアラニンがあった356位では、アルギニンを挿入した。アルギニンは、AAVの表面に残るのに十分に極性であり、抗体の結合に干渉し得るほど十分に大きい。抗体に接近可能な5つのグリシンがある。グリシンは、しばしば、ペプチド鎖が曲がり、従って、構造の重要な成分であり得る場所に見られる。グリシンの変異は、構造が劇的に変化し得る可能性に起因して、問題となり得る。従って、AAV−2表面上の5つのグリシンの各々は、これらを何に変えるかを決定するために、ケースバイケースの原則に基づいて考えた。グリシン128は、128位がアスパラギン酸であるAAV−5を除いて、AAV−1〜AAV−6において見られるので、G128はアスパラギン酸に変えた。グリシン191は、191位がセリンであるAAV−5を除いて、AAV−1〜AAV−6において見られるので、G191はセリンに変えた。グリシン329は、329位がアルギニンであるAAV−4を除いて、AAV−1〜AAV−6において見られるので、G329はアルギニンに変えた。グリシン375は、AAV−1〜AAV−6で保存されており、そして、プロリンがその位置で見られるペプチド鎖中のターンを保存し得ると考えられたので、G375はプロリンに変えた。グリシン449は、他のAAVにおいてはセリンまたはアスパラギンであるが、AAV−2においてはR448とR451(これらは、ヘパリン結合および形質導入に重要である)の間にあるので、G449はアラニンに変えた。従って、449位は、グリシンに最もサイズが近いアミノ酸に変異させた(すなわち、アラニン)。いくつかの場合、所望の変異に加えて、二重変異を単離した(S130A/N131A、N360H/S361A、S361A/N358K、S361A/S494P、S361A/R592K)。変異誘発の間に導入されたポリメラーゼの誤りの結果がおそらく存在したが、他の変異と同じようにアッセイした。
【0115】
AAVヘルパー機能ベクターを、pHLP19(米国特許第6,001,650号に記載される)、116の変異誘発オリゴデオキシヌクレオチド、およびインビトロ変異誘発キット(Quik Change XL,Stratagene,San Diego,CA)を用いて構築した。簡単に述べると、所望の変異配列の各々を含み、74〜83℃の間の融解温度(式:Tm=81.5+0.41(% G+C)−(675/N)−%ミスマッチ(この式において、Gはグアノシンであり、Cはシトシンであり、Nはプライマーのヌクレオチド長である)を用いて計算した)を有する2つの相補的なオリゴデオキシヌクレオチドを、別々にpHLP19と混合した。以下の条件を用いて、3サイクルのPCRを行なった:変性を95℃にて1分間行ない、アニーリングを60℃にて1分間行い、そして、伸長を68℃にて1分間行なった。次いで、2つの別々の反応物を混合し、以下の条件を用いる追加の18サイクルのPCRに供した:変性を95℃にて1分間行なっい、アニーリングを60℃にて1分間行い、そして伸長を68℃にて15分間行なった。PCR産物をDpnI制限酵素で消化して、完全にメチル化されたか、または半メチル化された(すなわち、非変異)プラスミドを破壊し、次いで、E.coli株XL−10(Stratagene)に形質転換した。各変異誘発反応から1つのコロニーをピックアップし、500ngのプラスミドDNAを調製し、そして、DNA配列決定に供した。変異原性オリゴデオキシヌクレオチドのサブセットを配列決定プライマーとして使用して、変異体の配列を確認した。各場合において、全キャプシド遺伝子を配列決定した。多くの変異体が、この方法で単離され得る。変異体が最初のラウンドのDNA配列決定により単離されなかった場合、1〜3個多いコロニーをピックアップし、そして500ngのプラスミドDNAを調製して、DNA配列決定に供した。
【0116】
(B.pLadeno5補助機能ベクター)
補助機能ベクターpLadeno5を以下のように構築した。精製したアデノウイルス血清型−2のDNA(Gibco/BRLから入手)から単離したE2a、E4およびVA RNA領域をコードするDNAフラグメントを、pAmpscriptと呼ばれるプラスミド内に連結した。pAmpscriptプラスミドを、以下のように組み立てた。オリゴヌクレオチド指向型変異誘発を用いて、ポリリンカーおよびpBSII s/k+(Stratageneから入手)に由来するα相補性発現カセットを含む623bpの領域を除去し、EcoRV部位で置き換えた。オリゴヌクレオチド指向型変異誘発に用いた変異原性オリゴの配列は、5’−CCGCTACAGGGCGCGATATCAGCTCACTCAA−3’(配列番号1)であった。
【0117】
ポリリンカー(以下の制限部位を含む:BamHI;KpnI;SrfI;XbaI;ClaI;Bstl 107I;SalI;PmeI;およびNdeI)を合成し、このリンカーのBamHI部位が、改変されたプラスミドのf1起点に近くなるように、上で作製したEcoRV部位に挿入して、pAmpscriptプラスミドを生じた。このポリリンカーの配列は、5’−GGATCCGGTACCGCCCGGGCTCTAGAATCGATGTATACGTCGACGTTTAAACCATATG−3’(配列番号2)であった。
【0118】
アデノウイルス血清型−2 E2aおよびVaのRNAの配列を含むDNAフラグメントを、pAmpscriptに直接クローニングした、特に、E2a領域を含む5962bpのSrfI−KpnI(部分)フラグメントを、pAmpscriptのSrfI部位とKpnI部位との間にクローニングした。この5962bpのフラグメントは、アデノウイルス血清型−2ゲノムの塩基対21,606〜27,568を含む。アデノウイルス血清型−2ゲノムの完全な配列は、GenBank番号9626158の下でアクセス可能である。
【0119】
アデノウイルス血清型−2 E4配列を含むDNAを、pAmpscriptポリリンカーに挿入する前に改変した。具体的には、PCR変異誘発を用いて、E4の近位にあるアデノウイルスの末端反復をSrfI部位で置き換えた。このSrfI部位の位置は、アデノウイルス血清型−2ゲノムの塩基対35,836〜35,844に相当する。変異誘発において用いたオリゴヌクレオチドの配列は、5’−AGAGGCCCGGGCGTTTTAGGGCGGAGTAACTTGC−3’(配列番号3)および5’−ACATACCCGCAGGCGTAGAGAC−3’(配列番号4)であった。上記の改変したE4遺伝子をSrfIおよびSpeIで切断することにより作製した3,192bpのE4フラグメントを、既にE2aおよびVAのRNA配列を含むpAmpscriptのSrfI部位とXbaI部位との間に連結し、pLadeno5プラスミドを生じた。3,192bpのフラグメントは、アデノウイルス血清型−2ゲノムの塩基対32,644〜35,836に相当する。
【0120】
(C.rAAV−2 hF.IXベクター)
rAAV−2 hF.IXベクターは、2つのAAV−2逆方向末端反復(米国特許第6,093,392号を参照のこと)の間に、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、hF.IXのエキソン1、hF.IXイントロン1の1.4kbフラグメント、hF.IXのエキソン2〜8、227bpのhF.IX 3’UTR、およびSV40後期ポリアデニル化配列を含む11,442bpのプラスミドである。hF.IXイントロン1の1.4kbのフラグメントは、イントロン1の5’末端(ヌクレオチド1098まで)と、エキソン2との接合点まで延びるヌクレオチド5882からの配列、から構成される。CMVの最初期プロモーターおよびSV40後期ポリアデニル化シグナル配列は、pCMV−Script(登録商標)(Stratageneカタログ、Stratagene,La Jolla,CAから入手可能)の公開配列から得られ得る。
【0121】
(D.rAAV−2 lacZベクター)
(組み換え型AAVプラスミドpVmLacZの構築)
1.4311bpのXbaI DNAフラグメントを、AAV rep/cap配列を含むpSUB201から切り出した。XbaI末端を、10bpのNotI合成オリゴヌクレオチド(5’−AGCGGCCGCT−3’)(配列番号5)と再度アニーリングして、プラスミド中間体pUC/ITR−NotIを生じた。このプラスミド中間体は、116bpの残留AAV配列により隔てられたAAV ITR(逆方向末端反復)およびNotIリンカーDNAの両方を有する。
【0122】
2.1319bpのNotI DNAフラグメントを、CMVプロモーターおよびhGHイントロン配列を含むp1.1cから切り出した。このDNA配列を、pUC/ITR−NotIのNotI部位に挿入して、中間体pSUB201Nを生じた。
【0123】
3.1668bpのPvuII(5131〜1493)ITR結合CMV発現カセットを、pSUB201Nから切り出し、pWee.1aのPvuII部位(12位)に挿入して、プラスミド中間体pWee.1bを生じた。pSUB201Nから1668bpのPvuIIフラグメントを切り出して、「A」パリンドローム領域の各ITRの外側から15bpを除去した。
【0124】
4.4737bpのNotI/EcoRV「AAV rep/cap」DNA配列を、pGN1909から切り出し、Klenow DNAポリメラーゼを用いて3’の陥没末端を埋めることによって、その末端を、平滑にした。AscIリンカーを両方の末端に連結し、その後、この「pGN1909/AscI」DNAフラグメントを、pWee.1bの骨格のAscI部位(2703)にクローニングして、中間体pWeel909(8188bp)を生じた。このプラスミドは、AAV rep/cap遺伝子骨格を有するITR結合CMV発現カセットを有する。
【0125】
5.3246bpのSmaI/DraI LacZ遺伝子を、pCMV−βから切り出し、AscIリンカーをこの平滑末端のフラグメントに連結した。このLacZ/AscIフラグメントをp1.1cのBssHII部位の間にクローニングして、p1.1cADHLacZを生じ、これは、CMVプロモーターにより駆動されるLacZ遺伝子を有する。
【0126】
6.4387bpのNotI DNAフラグメントを、CMVプロモーターにより駆動されるLacZ遺伝子を有するp1.1cADHLacZから切り出した。このフラグメントを、1314bpのp「CMVプロモーター/hGHイントロン」発現カセットを除去した後に、pWee1909のNotI部位の間に挿入した。得られた構築物pW1909ADHLacZは、CMVプロモーターの制御下にβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を有し、ITRに結合している。このプラスミドの骨格は、AAVヘルパー機能を提供する「rep」遺伝子および「cap」遺伝子を保有し、そしてこのβ−ラクタマーゼ(アンピシリン)遺伝子が、抗生物質に対する耐性を与える。
【0127】
7.「CMV/LacZ」カセットを含む4772bpのSseI DNAフラグメントを、pW1909ADHLacZから切り出し、pUC19のSseI部位に挿入して、Pre−pVLacZを生じた。この構築物はなお、各ITRの内側に約50bpの5’および3’のpSUB201配列の残留物を含む。
【0128】
8.Pre−pVLacZから2912bpのMscI「pUC/ΔITR」DNAフラグメントを切り出すことによって残留のpSUB201配列を除去し、これはまた、各ITRの「D」領域の約35bpも除去する。MscI制限部位、ITR「D」領域およびNotI部位を含む合成リンカー「145NA/NB」(5’−CCAACTCCATCACTAGGGGTTCCTGCGGCC−3’)(配列番号6)を用いて、「CMV/LacZ」発現カセットを有するpW1909ADHLacZから4384bpのNotIフラグメントをクローニングした。得られたプラスミドpVLacZは、アルコールデヒドロゲナーゼエンハンサー配列およびCMVプロモーターの制御下にβ−ガラクトシダーゼ配列を有し、これらは全て、AAV ITRに結合している。
【0129】
9.以下のように、LacZエレメントおよびポリリンカー配列をITR結合LacZ発現カセットから除去することによって、pVLacZをさらに改変した。534bpのEheI/AflIII LacZ/ポリリンカー配列を、pUC119から切り出し、この末端を、Klenow DNAポリメラーゼを用いて平滑化し、そしてこのプラスミドを、SseIリンカー(5’−CCTGCAGG−3’)(配列番号7)に連結して、pUC119/SseIを作製した。4666bpのSseIフラグメントを切り出すことによって、「AAVLacZ」DNA配列をpVLacZから除去した。このSseIフラグメントを、pUC119/SseIのSseI部位にクローニングして、pVmLacZを作製した。pVmLacZは、pUC119由来の骨格内のAAV ITRに結合したCMVプロモーター/ADHエンハンサー/β−ガラクトシダーゼ遺伝子を有し、これは、アンピシリン耐性を与え、高コピー数の複製起点を有する。
【0130】
(II.三重トランスフェクション手順)
種々の変異型AAVヘルパー機能ベクター(上記)、補助機能ベクターpLadeno5(米国特許第6,004,797号に記載される)、およびrAAV2−lacZベクターであるpVmLacZ(上記)を使用して、組み換え型ビリオンを生成した。
【0131】
簡単に述べると、ヒト胚性腎細胞タイプ293(American Type Culture Collection,カタログ番号CRL−1573)を、10%胎仔ウシ血清を補充したダルベッコ改変イーグル培地から構成される10mLの細胞培養培地中、3×106細胞/ディッシュの密度で、10cm組織培養処理滅菌ディッシュに播種し、そして、5% CO2の、37℃にて加湿した環境下でインキュベートした。一晩のインキュベーションの後、293細胞は約80%のコンフルエントであった。次いで、この293細胞をリン酸カルシウム沈殿法(当該分野で周知のトランスフェクション法)によりDNAでトランスフェクトした。滅菌ピペットチップを用いて、10μgの各ベクター(変異型pHLP19、pLadeno5およびpVm lacZ)を3mLの滅菌したポリスチレンスナップキャップチューブに加えた。1.0mLの300mM CaCl2(JRHグレード)を各チューブに加え、上下にピペッティングすることによって混合した。等量の2×HBS(274mM NaCl、10mM KCl、42mM HEPES、1.4mM Na2PO4、12mMデキストロース、pH7.05、JRHグレード)を2mLピペットを用いて加え、この溶液を上下に3回ピペッティングした。このDNA混合物を、直ちに293細胞に、一度に一滴で、ディッシュ全体に均一に加えた。次いで、この細胞を、5% CO2中、37℃で加湿した環境下で6時間インキュベートした。顆粒状の沈殿物が、トランスフェクトした細胞培養物中に見えた。6時間後、このDNA混合物を細胞から除去し、次いで、これに、胎仔ウシ血清を含まない新しい細胞培養培地を与え、さらに72時間インキュベートした。
【0132】
72時間後、これらの細胞を、固体二酸化炭素上での凍結および37℃の水浴での融解の3サイクルによって溶解した。トランスフェクトした細胞のこのような凍結−融解による溶解を、全キャプシド合成(ウェスタンブロッティングによる)、DNAパッケージング(Q−PCRによる)、ヘパリン結合、インビトロ形質導入(HeLa細胞またはHepG2細胞+アデノウイルス−2もしくはエトポシドについて)および抗体による中和に関して特徴付けた。
【0133】
(III.変異型ビリオンの特性)
(A.キャプシド合成アッセイ)
タンパク質の変異は、タンパク質を不安定にし、プロテアーゼによる分解に対して正常なものよりもより感受性にし得る。本明細書中に記載される変異により作成されるキャプシドのレベルを決定するために、粗製溶解物のウェスタンブロッティングを行った。1μlの各粗製溶解物を、20mM Tris、PH6.8、0.1% SDS中で、80℃にて5分間インキュベートすることによって変性させた。タンパク質を、10%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen,Inc.,Carlsbad,CA)を用いるSDS−PAGEにより分画し、次いで、以下のようにウェスタンブロッティングにより検出した。これらのタンパク質を、ナイロン膜(Hybond−P,Amersham Biosciences,Piscataway,N.J.)上に、電気泳動的にブロットした(Xcell IIブロットモジュール,Invitrogen,Carlsbad,CA)。この膜を、1:20希釈の抗AAV抗体(モノクローナルクローンB1,Maine Biotechnology Services,Inc.Portland,ME)でプローブし、次いで、1:12000希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したヒツジ抗マウス抗体(Amersham Biosciences,Piscataway,N.J.)でプローブした。B1抗体結合タンパク質を、ECL Plusウェスタンブロッティング検出システム(Amersham Biosciences,Piscataway,N.J.)を用いて検出した。この膜を、X線フィルム(Biomax MS,Kodak,Rochester,NY)に1〜5分間曝露し、そして、AlphaImager 3300(Alpha Innotech Corp.,San
Leandro,CA)を用いてシグナルを定量した。
【0134】
(B.DNAパッケージングアッセイ)
定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)を用いて、変異型キャプシドを有するAAV−2ビリオンによるDNAパッケージングを評価した。この手順において、PCR増幅の前に粗製溶解物をDNAse Iで消化して、誤った陽性シグナルを生じ得る(トランスフェクションにおいて使用された)任意のプラスミドを除去した。この粗製溶解物を、10mM Tris,pH8.0、10μg/ml酵母tRNA中100倍(5μlの粗製溶解物+495μlの緩衝液)に希釈した。この希釈物のアリコート(10μl)を、最終容量50μlの25mM Tris,pH8.0、1mM MgCl2中10単位のDNAse I(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)で、37℃にて60分間消化した。DNAse Iを95℃で30分間加熱することにより不活性化した。1μl(20μg)のプロテイナーゼK(Roche Molecular Biochemicals、Indianapolis、IN)を加え、55℃で30分間インキュベートした。プロテイナーゼKを、95℃で20分間加熱することによって不活性化した。この時点で、このサンプルを、10mM
Tris,pH8.0、10μg/ml酵母tRNA(必要に応じて)中に希釈した。10μlのDNAse IおよびプロテイナーゼKで処理したサンプルを、以下から構成される40μlのQ−PCRマスターミックスに加えた:
4μl H2O
5μl 9μM lacZプライマー#LZ−1883F(5’−TGCCACTCGCTTTAATGAT−3’(配列番号8)Operon,Inc.,Alameda,CA)
5μl 9μM lacZプライマー#LZ−1948R(5’−TCGCCGCACATCTGAACTT−3’(配列番号9)Operon,Inc.,Alameda,CA)
1μl 10μM lacZプローブ#LZ−1906T(5’−6FAM−AGCCTCCAGTACAGCGCGGCTGA−TAMRA−3’(配列番号10)Applied Biosystems,Inc.Foster City,CA)
25μl TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems,Inc.Foster City,CA)。
【0135】
Applied Biosystems model 7000 Sequence Detection Systemを以下のプログラムに従って用いて、Q−PCR増幅を行なった。Taqポリメラーゼを活性化するための50℃で2分間、およびDNAテンプレートを変性するための95℃で10分間の2つの初期インキュベーションが存在した。次いで、このDNAを、95℃にて15秒間、次いで60℃にて60秒間の、40サイクルのインキュベーションにより増幅した。61〜1,000,000のコピー数に及ぶ直線状にしたpVm lacZの4倍希釈物を用いて、標準曲線を作成した。各サンプル内のパッケージングされたrAAV−lacZゲノムのコピー数を、Applied Biosystems Prism 7000 Sequence Detection Systemバージョン1.0ソフトウェアを用いて、Q−PCRから得られたCt値から計算した。
【0136】
(C.ヘパリン結合アッセイ)
粗製溶解物中のウイルスのヘパリン結合を、以下のように実施した。野生型もしくは変異型のキャプシドを有するAAV−2ビリオンを含む20μlの粗製細胞溶解物を、ヘパリンビーズの50%スラリー(25μl)と混合した。このヘパリンビーズ(Ceramic Hyper−DM Hydrogel−Heparin,Biosepra,Cergy−Saint−Christophe,France)は、直径80μmであり、1000Åの孔を有し、AAV(直径約300Å)のヘパリンへのアクセスが可能であった。このビーズを、使用前に、リン酸緩衝化生理食塩水中で十分に洗浄した。このビーズおよびビリオンを、37℃で60分間インキュベートした。このビーズをペレット状にした。未結合のビリオンを含む上清を保存した。このビーズを、500μlのPBSで2回洗浄した。この上清を合せ、未結合のキャプシドタンパク質を10%の最終濃度のトリクロロ酢酸で沈殿させた。沈殿したタンパク質を、20mM Tris,pH6.8、0.1% SDS中で、80℃にて5分間インキュベーションすることにより変性させた。ヘパリンビーズに結合したビリオンを、そのビーズを20mM Tris,pH6.8、0.1% SDS中で、80℃にて5分間インキュベーションすることにより放出した。この様式で調製した全てのタンパク質サンプルを、10%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen,Inc.,Carlsbad,CA)を用いるSDS−PAGEにより分子量で分画し、次いで、以下のようにウェスタンブロッティングにより検出した。このタンパク質を、ナイロン膜(Hybond−P,Amersham Biosciences,Piscataway,N.J.)上に電気泳動的にブロットした。この膜を、1:20希釈の抗AAV抗体(モノクローナルクローンB1,Maine Biotechnology Services,Inc.Portland,ME)でプローブし、次いで、1:12000希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したヒツジ抗マウス抗体(Amersham Biosciences,Piscataway,N.J.)でプローブした。このB1抗体結合タンパク質を、ECL Plusウェスタンブロッティング検出システム(Amersham Biosciences,Piscataway,N.J.)を用いて検出した。この膜を、X線フィルム(Biomax MS,Kodak,Rochester,NY)に1〜5分間曝露し、そして、AlphaImager 3300(Alpha Innotech Corp.,San Leandro,CA)を用いてシグナルを定量した。
【0137】
(D.インビトロ形質導入アッセイ)
HeLa細胞(American Type Culture Collection,カタログ#CCL−2)を、1ウェルあたり5e4細胞で24ウェルディッシュにプレートした。この細胞を、10%胎仔ウシ血清(Gibco)およびペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco)中で、37℃にて24時間増殖させた。コントロールの野生型ウイルスおよび変異型ウイルスを含む粗製溶解物の10倍希釈物を、DME/10% FBS中で作製した。このウイルス希釈物を、野生型アデノウイルス−5(American Type Culture Collection,カタログ#VR−5)と共に細胞に加えた。使用したアデノウイルスの量は、1ウェルあたり0.1μlであり、これは、前もって力価測定して、rAAV−2 lacZのHeLa細胞への形質導入を最大限に刺激することが示された。37℃にて24時間後、この細胞を、2%ホルムアルデヒドおよび0.2%グルタルアルデヒドを用いて固定し、そして、PBS中1mg/ml(2.5mM)の5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルβ−Dガラクトピラノシド、2mM MgCl2、5mMフェリシアン化カリウム、5mMフェロシアン化カリウム、pH7.2を用いて、β−ガラクトシダーゼ活性について染色した。さらに24時間後、4つのランダムな顕微鏡視野内の青色細胞の数を計数し、各ウェルについて平均した。HeLa細胞およびアデノウイルス−5を用いる代わりに、HepG2細胞および20μMのエトポシドもまた使用され得、類似の結果が得られた。
【0138】
(E.抗体および血清の中和アッセイ)
HepG2細胞(American Type Culture Collection,カタログ#HB−8065)を、1ウェルあたり1.5e5細胞で24ウェルディッシュにプレートした。細胞を、10%の胎仔ウシ血清およびペニシリン−ストレプトマイシンを補充した(イーグルの)最小基本培地(KMEM)(ATCC)中で37℃にて24時間増殖させた。A20抗体(Maine Biotechnology,Portland,ME)の2倍希釈物をPBSを用いて作成した。1μlのウイルス調製物の粗製溶解物を15μlのKMEM/0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)と混合することによって、野生型および変異型のウイルスを希釈した。KMEM/0.1% BSAおよびPBSのサンプルを、ネガティブコントロールとして含めた。合計16μlのA20希釈物を、16μLのウイルスと混合し、37℃で1時間インキュベートした。10μlのウイルス/A20混合物を、3つの細胞のウェルの各々に添加した。37℃にて1時間インキュベートした後、エトポシド(ジメチルスルホキシド中20mMストック溶液、Calbiochem)を、20μMの最終濃度で各ウェルに添加した。24時間後、この細胞を、2%ホルムアルデヒドおよび0.2%グルタルアルデヒドを用いて固定し、そして、PBS中1mg/ml(2.5mM)の5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルβ−Dガラクトピラノシド、2mM MgCl2、5mMフェリシアン化カリウム、5mMフェロシアン化カリウム、pH7.2を用いて、β−ガラクトシダーゼ活性について染色した。さらに24時間後、4つのランダムな顕微鏡視野内の青色細胞の数を計数し、各ウェルについて平均した。抗体の中和力価を、抗体なしの形質導入と比較して、ウイルスの形質導入事象(すなわち、青色細胞)の数の50%減少を生じる抗体の希釈として規定する。
【0139】
血友病患者から収集したヒト血清による変異体の中和、または、10,000人を超えるドナーに由来する精製ヒトIgG(Panglobulin,ZLB Bioplasma AG,Berne,Switzerland)に対する中和を、同じ様式でアッセイした。精製ヒトIgGについて、10mg/mlの濃度を、希釈していない血清と同等と考えた。なぜならば、ヒト血清におけるIgGの濃度は、5〜13mg/mlに及ぶからである。
【0140】
(F.ELISA)
(a)A20 ELISA:
AAV−2を捕捉し、検出するためにモノクローナル抗体(A20)を使用するELISAキット(American Research Products,Belmont,MA)を用いて、粒子数を定量した。このキットを、製造業者の指示に従って使用した。光学密度を、450nmの波長のSpectramax 340PCプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)にて測定した。最大半減の光学密度の読みを生じるために必要とされるウイルスの濃度を計算し、異なるサンプルからの結果と比較するために使用した。
【0141】
(b)IgG/A20 ELISA:
マイクロタイタープレート(96ウェルEIA/RIA平底、高結合ポリスチレン、Costar,Corning,NY)を、0.1M重炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.2中100μl(10μg)のPanglobulinを用いて、20℃にて16時間コーティングした。プレートを、200μlのPBS、1% BSA、0.05% Tween−20で、20℃にて1時間ブロッキングした。1ウェルあたり3.08〜1.010ベクターゲノムの範囲で増加する量のCsCl勾配精製したネイティブ、または変異型のAAV−2を添加し、20℃にて16時間インキュベートした。未結合のウイルスを、PBS、0.1% Tween−20緩衝液のアリコート(200μl)を3回用いて洗い出した。AAV−2 ELISAキットからのA20−ビオチンを、1:50に希釈し、1ウェルあたり100μlを添加し、37℃で1時間インキュベートした。未結合のA20−ビオチンを、PBS、0.1% Tween−20緩衝液のアリコート(200μl)を3回用いて洗い出した。次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジンを1:20に希釈し、37℃で1時間インキュベートした。未結合のストレプトアビジン−HRPを、PBS、0.1% Tween−20緩衝液のアリコート(200μl)を3回用いて洗い出した。西洋ワサビペルオキシダーゼ基質(Immunopure TMB基質キット Pierce,Rockford,IL)を添加し、20℃で15分間インキュベートした。この反応を、100μlの2M硫酸で停止し、光学密度を、450nmの波長のSpectramax 340PCプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)にて測定した。最大半減の光学密度の読みを生じるために必要とされるウイルスの濃度を計算し、異なるサンプルからの結果と比較するために使用した。
【0142】
(c)IgG ELISA:
マイクロタイタープレート(96ウェルEIA/RIA平底、高結合ポリスチレン、Costar,Corning,NY)を、0.1M重炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.2中、1ウェルあたり3.08〜1.010ベクターゲノムの範囲で増加する量のCsCl勾配精製したネイティブもしくは変異型のAAV−2を用いて、20℃にて16時間コーティングした。プレートを、200μlのPBS、1% BSA、0.05% Tween−20で、20℃にて1時間ブロッキングした。未結合のウイルスを、PBS、0.1% Tween−20緩衝液のアリコート(200μl)を3回用いて洗い出した。パングロブリンを添加し、37℃で1時間インキュベートした。未結合のパングロブリンを、PBS、0.1% Tween−20緩衝液のアリコート(200μl)を3回用いて洗い出した。次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したロバ抗ヒトIgG(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。未結合の二次抗体を、PBS、0.1% Tween−20緩衝液のアリコート(200μl)を3回用いて洗い出した。西洋ワサビペルオキシダーゼ基質(Immunopure TMB基質キット Pierce,Rockford,IL)を添加し、20℃で15分間インキュベートした。この反応を、100μlの2M硫酸で停止し、光学密度を、450nmの波長のSpectramax 340PCプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)にて測定した。最大半減の光学密度の読みを生じるために必要とされるウイルスの濃度を計算し、異なるサンプルからの結果と比較するために使用した。
【0143】
本明細書中で記載した変異体のDNAパッケージング、ヘパリン結合および形質導入の特性を、表1にまとめる。本明細書中に記載される変異のいくつかの抗体中和特性を、表2および表3にまとめる。
【0144】
【表1−1】
【0145】
【表1−2】
【0146】
【表2−1】
【0147】
【表2−2】
【0148】
【表3】
見られ得るように、AAV−2の表面上の単一のアミノ酸の変更によって、61のうち32の変異が、キャプシド合成、DNAパッケージング、ヘパリン結合およびインビトロでの細胞の形質導入に関して、ほぼ正常な特性を有したと同定された。10の変異は、抗体による中和により抵抗性であった。
【0149】
変異は、キャプシドタンパク質を、野生型よりも5倍低いレベル〜8倍高いレベルにした。これらは、野生型よりも25倍低いレベル〜20倍高いレベルのDNAをパッケージングした。形質導入に関しては、28の変異が、少なくとも50%野生型と同等に形質導入し、16の変異が、野生型の10〜50%形質導入し、6の変異が、野生型の1〜10%形質導入し、そして、11の変異が、野生型の1%未満形質導入した(表1)。ヒト頸部癌腫由来のHeLa細胞もしくはヒト肝臓由来HepG2細胞の形質導入においてまたは、形質導入を増強するためにアデノウイルスもしくはエトポシドのいずれかを使用する場合は、有意差がなかった。いくつかの変異は、野生型の5倍以上までの形質導入活性を再現可能に有した(表1)。
【0150】
1%未満の形質導入活性を有する変異の多くは、ヘパリン結合部位(案)の片側の、単一の領域においてクラスター形成していた(表1、図4と図5を比較する)。特定の理論に束縛されないが、この変異は、タンパク質結合部位であり得る領域を覆う。形質導入に最も欠陥のある変異は、N131Aであった。N131の機能は記載されていないが、これは、42の既知のAAVサブタイプのうち40で保存されている。
【0151】
4つの変異(A356R、G375A、S361A/S494P、S361A/R592K)は、他のものよりも顕著にヘパリン結合に影響を与えた。これらの各々は、ヘパリン結合に重要なアミノ酸として以前に同定されていた、R347、R350、K390、R448およびR451の近くにある(図5)。
【0152】
野生型AAV−2キャプシドの形質導入活性の約10%以上を有する45の変異(Q126A、S127A、D190A、G191S、S247A、Q248A、S315A、T317A、T318A、Q320A、R322A、S331A、D332A、R334A、D335A、T354A、S355A、S355T、A356R、D357A、N359A、N360A、N360H/S361A、S361A、S361A/R592K、E362A、D377A、K390A、E393A、E394A、K395A、F396A、K407A、E411A、T413A、E418A、K419A、E437A、Q438A、G449A、N450A、Q452A、N568A、K569A、V571A)を、マウスA20モノクローナル抗体による中和についてスクリーニングした。4の変異(Q126A、S127A、S247A、Q248A)は、野生型キャプシドを有するAAV2よりもA20による中和に対して有意により抵抗性であった(表3を参照のこと)。これらの変異(Q126A、S127A、S247A、Q248A)の力価は、それぞれ、1:203、1:9、1:180および1:89であり(図8)、これは、野生型AAV−2キャプシドに対するA20モノクローナル抗体の中和力価(1:509)よりも、2.5倍、57倍、2.8倍、および5.7倍以上大きい。これらの4の変異は、AAV−2キャプシドの表面上で、互いに直ぐ隣接して位置している(図6)。
【0153】
A20による中和を減少する4の変異のうちの3(Q126A、S127A、Q248A)は、キャプシド合成、DNAパッケージング、ヘパリン結合および形質導入に関して、本質的に正常であった。変異S247Aによるキャプシド合成および形質導入は、野生型AAV−2キャプシドよりも4〜5倍低かった。従って、いくつかの重要な特性においては正常であるが、抗体中和に対する抵抗性が増加したウイルスを有する可能性がある。
【0154】
変異型rAAVビリオンのQ126A、S127A、S247A、Q248Aは、2つの異なるヒト細胞株(HeLaおよびHepG2)において形質導入効率を維持しながら、中和抗体に対して、予想外に2.5倍〜57倍の抵抗性を生じた。これらの4つのアミノ酸は、AAV−2の表面上で、互いに直ぐ隣接している(図6)。さらに、これらは、ペプチド競合および挿入性変異誘発実験に基づいて、A20抗体の結合への関与が示唆されている領域にある。これらの知見に基づいて、A20抗体が、AAV−2が細胞に形質導入するために必要な1つ以上の機能をブロックする可能性がある。以前の研究において、A20は、AAV−2のヘパリンへの結合をブロックしないことが示されている(Wobusら(2000)J.Virol.74:9281−93)。本明細書において報告される結果は、このデータを支持する。なぜならば、ヘパリン結合に影響を与える変異は、A20の結合に影響を与える変異から離れて位置するからである。A20はヘパリン結合をブロックしないが、AAV−2が細胞内に入るのを防止する。A20は、ヘパリンのような「ドッキングレセプター」への結合とは干渉しないが、その代わりに、AAV−2の「進入レセプター」への結合と干渉する可能性がある。AAV−2の形質導入に必要とされる2つのタンパク質が記載されており、これらは、進入レセプター:塩基性線維芽細胞増殖因子レセプター(bFGFR)およびαvβ5インテグリンであり得る。これらのレセプターが結合し得るAAV−2上の領域は、同定されていない。αvβ5インテグリン、bFGFRまたは両方が、形質導入に有意に(正常の1%未満)欠陥がある変異を高い濃度で有する、本明細書中で記載される局所的な領域に結合し得る可能性がある。最も形質導入に欠陥がある領域は、A20結合に影響を与える変異の近くに位置することに注意されたい。
【0155】
野生型AAV−2キャプシドの約10%以上の形質導入活性を有する同じ45の変異(Q126A、S127A、D190A、G191S、S247A、Q248A、S315A、T317A、T318A、Q320A、R322A、S331A、D332A、R334A、D335A、T354A、S355A、S355T、A356R、D357A、N359A、N360A、N360H/S361A、S361A、S361A/R592K、E362A、D377A、K390A、E393A、E394A、K395A、F396A、K407A、E411A、T413A、E418A、K419A、E437A、Q438A、G449A、N450A、Q452A、N568A、K569A、V571A)を、3つのヒト中和抗血清による中和についてスクリーニングした。野生型キャプシドを有するAAV2よりも、3つ全てのヒト抗血清による中和に抵抗性であった4の変異(R334A、N360H/S361A、E394A、N450A)を、最初のスクリーニングで同定した(表2を参照のこと)。これらの変異について試験した場合の抗血清の力価は、野生型AAV−2キャプシドに対する3つのヒト抗血清の中和力価の1.3倍〜3.6倍以上の範囲に及んだ(表3)。6の他の変異(N360A、E411A、T413A、G449A、N568A、V571A)は、試験した3つのうちの1つまたは2つの血清による中和に対する抵抗性のレベルが増加した(表2)。
【0156】
抗体中和抵抗性を与える変異の位置は、参考になる。第1に、マウスモノクローナル抗体に対して抵抗性を与える変異は、AAV−2キャプシドの表面上で、互いにすぐ近接して位置し、それゆえ、ヒト抗血清に対して抵抗性を与える変異は、より広い領域に渡って拡がっている(図7)。このことは、ヒト抗血清がポリクローナルであることを示唆しており、これは、驚くべきことではない。第2に、両方のセットの変異は、シリンダーが抗体結合のために容易にアクセス可能であるにも関わらず、プラトーおよびスパイクには位置するが、シリンダーには位置しない。第3に、中和に影響を与える変異は、AAV機能に重要な領域の近くにある。ヒト抗血清による中和に影響を与えるいくつかの変異(360位、394位、449位、450位)は、中和抗体による結合のための機能的に重要な標的である可能性が高い、ヘパリン結合部位の2アミノ酸以内に位置する。他の変異(126位、127位、247位、248位、334位、568位、571位)は、野生型の10%未満の形質導入活性を有する変異の多くを含む、プラトー(デッドゾーン)上の大きな領域の周辺に位置する(図4)。ヘパリン結合部位と同様に、この領域は、おそらく、重要な機能を有し、そして、中和抗体による結合のための機能的に重要な標的である可能性が高い。
【0157】
抗体中和に対する抵抗性を与える複数の変異が組み合わされる場合、抗体中和に対する累積的な抵抗性は、しばしば、特に、個々の変異が低いレベルの抵抗性を生じる場合に、倍数的に増加する。それゆえ、本明細書中に記載される変異が、1つのキャプシド内で合わされる場合、これらのキャプシドは、野生型のキャプシドと比較して、5倍〜1000倍以上抵抗性であり得るようである(表3)。1:1000以上のA20の希釈は、野生型AAV−2の3%未満を中和する。従って、A20による中和に対していくらかの抵抗性を提供する4つの単一のアミノ酸の組み合わせを有する変異は、希釈していないA20抗血清による中和に対してさえも、ほとんど完全に抵抗性であり得る。
【0158】
野生型の10%未満の形質導入活性を有する変異はまた、抗体中和に対しても抵抗性であり得るが、これらは、試験しなかった。なぜならば、本明細書中に記載されるように、中和アッセイは、野生型の約10%を超える形質導入活性を有する変異をアッセイするために使用される場合に、一番効果を発揮するからである(図3)。これは、力価が正確に計算され得るように、広範な範囲の抗体に対する中和を検出し得ることが望ましいからである。しかし、野生型の10%未満の形質導入活性を有する変異は、依然として、形質導入欠損変異が競合相手として使用される、本明細書中に記載されるアッセイの改変物を用いて、中和抗体に結合する能力について試験され得る。例えば、野生型「レポーター」rAAV−2 lacZウイルスは、任意のゲノムを欠く(「空のウイルス」)か形質導入欠損「競合」AAV−2、または別の遺伝子(例えば、緑色蛍光タンパク質)をパッケージングするAAV−2ウイルスと混合され得る。「競合」AAV−2が、中和からレポーターAAV−2を保護する場合、「競合」キャプシドは、中和抗体に結合し得るはずであり、従って、中和に対して抵抗性ではない。「競合」AAV−2が中和からレポーターAAV−2を保護しない場合、「競合」キャプシドは、中和抗体に結合し得ず、従って、正常な量のキャプシドを作ることが示されている限りは、中和に対して抵抗性であり得る。このように、形質導入欠損であるが、抗体中和に対して抵抗性である変異さえも、同定され得る。中和抗体の存在下で遺伝子を送達するためのビヒクルとして有用なこのような変異を作製するために、通常の形質導入活性を回復するが、なお中和に対して減少した感受性を保持する、アラニン以外のアミノ酸置換を発見することが望ましい。
【0159】
66以上の変異を作製し、上記のようなプロトコールを用いて試験した。追加の変異のDNAパッケージング、ヘパリン結合および形質導入の特性を、表4にまとめる。
【0160】
【表4−1】
【0161】
【表4−2】
【0162】
【表4−3】
【0163】
【表4−4】
表4に示すように、野生型キャプシドと比較して、増加した形質導入を有するいくつかの変異が得られた。例えば、変異S130T、N133A、D357E、H372N、R451K、G449A/N450A、R334A/N450A、R334A/G449A/N568A、R334A/N568A、G449A/N568Aは、増加した形質導入を示した。変異S130Tは、最もよく形質導入し、野生型のレベルの約11倍であった。これは、S(セリン)とT(トレオニン)との間の唯一の差はCH2基であるので、驚くべきことであった。また、表4に見られるように、組合せた変異は、通常、最低レベルの形質導入を有する単一の変異のレベルと同じレベルで形質導入された。
【0164】
キャプシド内の特性のアミノ酸は、ヘパリン結合部位と重なる。この領域は、本明細書において「デッドゾーン」または「DZ」と呼ばれる。デッドゾーン内の変異は、AAV−2レセプターの1つ(例えば、ヘパリン)になお結合するが、細胞に形質導入しないキャプシドを生じ得る。アミノ酸置換を、デッドゾーンのアミノ酸内に作製し、これらの置換を、アラニンでの同じアミノ酸の置換と比較した。結果を表5に示す。
【0165】
【表5−1】
【0166】
【表5−2】
【0167】
【表5−3】
上に示すように、置換がより保存的であれば、デッドゾーンの変異はより機能的であった。例えば、Qは、Hについての良好な置換基であった。Dは、Eについての良好な置換基であった。EまたはNは、Dについての良好な置換基であった。いくつかの固有の特性を有するグリシンは、置換することが難しかしいことは、驚くべきことではなかった。
【0168】
変異G375P(野生型の0.01%の形質導入)およびG375A(野生型の2.4%の形質導入)のヘパリン結合特性を比較した。変異G375Pは、50%でヘパリンに結合し、G375Aは、95%でヘパリンに結合した。375位は、デッドゾーンとヘパリン結合部位の機能の両方に必要とされ得る。G375A変異におけるグリシンのアラニンでの置換は、他のデッドゾーン変異と同じ表現型を生じる−−これは、正常にヘパリンに結合するが、正常な形質導入の10%未満を示す。しかし、G375P変異におけるグリシンのプロリンでの置換は、ヘパリン結合を欠損した変異(例えば、R347C/G449A/N450A)とより類似する表現型を生じる。特定の理論に束縛されないが、グリシンとアラニンとプロリンとの間の構造の差は、グリシンの側鎖が、デッドゾーンの機能に必要とされ得るこどを示唆する。なぜならば、アラニンでの置換は、形質導入を減少させるからである。アミン基を有さないプロリンでの置換が、ヘパリン結合に影響を与えるので、アミン基がヘパリン結合に必要とされ得る。あるいは、プロリン置換は、少し離れたヘパリン結合部位の構造を崩壊させ得る。ヘパリンに結合しなかった3の変異(R448A、R451A、R347C/G449A/N450A)が存在したが、これらは、ヘパリン結合に必要とされることが以前に知られている位置(347、448、451)であった。
【0169】
これらの変異のいくつかの、マウスモノクローナル抗体(A20)による中和活性、そしてまた、精製し、プールしたヒトIgGによる中和活性を決定した。プールしたヒトIgG調製物は、十分に特徴付けられており、市販されており、高度に精製されており、そして、米国(IgGを精製するために使用された血液の供給源であった)において見出されているほとんど全ての抗原特異性を表すと考えられているので、プールしたヒトIgG調製物を使用した。結果を表6に示す。
【0170】
【表6−1】
【0171】
【表6−2】
表に示すように、21の変異(S127A、G128A、D132N、R334A、T354A、N360H/S361A、W365A、K390A、E394K、K395A、K407A、T413K、E437A、G449A、N568A、K569A、V571A、R334A/G449A、R334A/N568A、N568A/V571A、R334A/G449A/N568A)は、ネイティブなAAV−2キャプシドと比較して、ヒトIgGの大きなプールによる中和に対して2〜10倍より抵抗性であった。予測されるように、プールしたヒトIgGによる中和に抵抗性であった変異のいくつかはまた、個々のヒト血清による中和に抵抗性であった(例えば、R334A、N360H/S361A、G449A、N568A、V571A)。特定の理論に束縛されないが、これらのアミノ酸を含むエピトープは、高い親和性または高頻度で、抗体に結合し得る。しかし、プールしたヒトIgGによる中和に抵抗性のいくつかの変異は、個々の血清に抵抗性であると同定されなかった。これは、おそらくは、これらのアミノ酸を含むエピトープが、ヒト集団においてより希にしか見出されないからである。さらに、いくつかの変異は、個々の血清による中和に対しては抵抗性であったが、プールしたヒトIgGによる中和に対しては抵抗性でなかった(例えば、E394A、N450A)。これらの場合、これらのアミノ酸を含むエピトープに結合する抗体は、その結合に影響を与える変異が、IgGの大きな複合混合物との関連で検出可能とならないように、親和性が低いか、または量が少ない可能性がある。
【0172】
図7に見られ得るように、これらの変異は、AAV−2の表面を横切る種々の位置に分散している。これらが覆う領域の大きさは、平均的なエピトープの大きさの2〜3倍であり、全てのヒトIgGの全体による中和には、少なくとも2〜3のエピトープが関与し得ることを示唆している。
【0173】
単一の中和抵抗性変異の組み合わせは、時折、複数の変異を含む単一の変異と比較して、かなり高い程度の中和抵抗性を生じた。しかし、この効果の度合いは、明白には、これらの中和抵抗性のレベルに対して倍数的に増加しない。
【0174】
マウスモノクローナル抗体A20による中和に抵抗性の2以上の変異をまた同定した:E411A(A20による中和に対して2.7倍抵抗性)およびV571K(A20による中和に対して217倍抵抗性)。V571K変異は、本発明者らにより「リジンスキャニング」と命名された概念に対する証拠を提供する。大きな側鎖を有するアミノ酸を、アラニンのようなより小さな側鎖を有するアミノ酸に変更することによって、抗体結合部位の一部を除去するのではなく、リジンスキャニングの概念は、小さな側鎖を有するアミノ酸(例えば、V571)を、大きな側鎖を有するリジンで置き換えることである。アラニン置換の場合と同じように、抗体結合部位の一部を除去するのではなく、リジンスキャニングの目的は、抗体結合と立体的に干渉し得るより大きなアミノ酸を挿入することである。リジンは、一般的にAAV−2の表面上に見られ、従って、一般に認められた置換であるようなので、リジンを選択した。しかし、アルギニン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシンまたはグルタミンにような他の大きなアミノ酸もまた、生物学的活性を損ねることなく、類似の効果を生じ得る。V571Aは、マウスA20抗体による中和に抵抗性ではないが、V571Kは、ネイティブなV571 AAV−2キャプシドによる中和よりも、A20による中和に対して、217倍より抵抗性であることに注意されたい。
【0175】
V571Kは、A20中和に抵抗性であるとして同定された4の他の変異(Q126A、S127A、S247A、Q248A;表3)の直ぐ側にある、プラトーに位置する。しかし、E411Aは、同じエピトープ内であるためにQ126A、S127A、S247A、Q248AおよびV571Kに十分に近いにも関わらず、スパイク上に位置する。A20エピトープ内にE411が含まれることは、A20が、プラトーおよびスパイクの両方に(すなわち、キャニオンを横切って)結合し得ることを証明する。分子モデリングは、AAV−2レセプターの1つである、塩基性FGFレセプター(PDB ID:1FQ9)が、(トランスフェリンレセプターがイヌパルボウイルスに結合すると考えられる方法と非常に類似する様式および位置で)AAV−2キャニオン内に非常によくフィットし得ることを示唆する。塩基性FGFレセプターがAAV−2キャニオンに結合する場合、キャニオンを横切るA20の結合は、塩基性FGFレセプターの結合をブロックし、そして塩基性FGFレセプターが媒介する可能性のある形質導入の工程である、進入をブロックすることによって、A20がAAV−2を中和するという観察を説明する。
【0176】
このプラトーおよびスパイクの領域は、レセプター結合を妨げることによって、他のAAVを中和する結合に結合し得る。例えば、AAV−5は、細胞内に進入するために、PDGFレセプターを必要とすることが示されている(Di Pasqualeら,Nature Medicine(2003)9:1306−1312)。PDGFレセプターの構造は公知ではないが、これは、アミノ酸配列が塩基性FGFレセプターに相同である。例えば、両方が、類似の反復性Ig様配列ドメインから構成され、従って、類似の三次元構造を有すると予測される。従って、PDGFレセプターは、AAV−5キャニオンに結合し得る可能性がある。
【0177】
V571KではなくV571Aは、プールしたヒトIgGによる中和に対して抵抗性である。逆に、V571AではなくV571Kは、マウスモノクローナルA20による中和に対して抵抗性である。ヒトIgGプール内の抗体が、V571に直接結合することが可能である。より小さいアラニン側鎖をバリン側鎖で置換することにより、ヒトIgGによる結合が少なくなり得る。リジン側鎖は、なお結合を生じさせるのに十分な疎水性接触を提供し得るが、結合を妨げるほど大きくない。A20は、V571に直接結合し得ない(このことは、結合またはA20による中和に対するV571A変異の効果が存在しないことを説明している)。しかし、A20は、明らかにV571の近傍に結合する。V571Kが、例えば、立体干渉によって、A20結合と間接的に干渉することが可能である。
【0178】
IgG ELISAもまた行なった。特にインビボにおいて、多くの中和の潜在的な機構が存在する。AAVの機能に必要とされていない領域におけるAAVに対するIgGの結合は、なお遺伝子を送達するAAVの能力の減少を生じ得る。例えば、マクロファージの主な機能は、抗体に結合する外来性生物に結合することである。抗体が結合した生物が、(Fcレセプターを介して)マクロファージに結合すると、この外来性の生物は、呑食されて、破壊される。抗体が、AAVを中和するために使用し得る別の潜在的な経路は、架橋によるものである。抗体は、二価であり、AAVは、1エピトープあたり(そして、おそらくは複数のエピトープあたり)60の抗体結合部位を有するようである。従って、科学文献において十分に実証されているように、特定の抗体およびウイルスの濃度において、AAVと抗体の架橋ネットワークが形成され得る。このような免疫複合体は、沈殿するか、標的器官に到達する前に、血管系内で留まるほど大きくなり得る。この理由のために、機能的に有意ではないAAVの領域上で、インビボにてAAVに結合する抗体は、機能的に有意な領域に結合する抗体と同じだけ減少した形質導入を生じ得る。結果を表7に示す。
【0179】
【表7】
表7に示すように、A20とヒトIgGのプールの両方に、ネイティブなAAV−2よりも10倍低く結合する1の変異(V571K)を同定した。全てのA20 ELISAにおいて、変異V571Kの結合は、10倍減少した。全てのヒトIgG ELISAにおいて、変異V571Kの結合は、10倍減少した。A20/IgGサンドイッチELISAの形式を使用する場合、変異V571Kの結合は、100倍減少した。位置(571)は、AAV−2キャプシドの表面上の126位、127位、247位および248位の直ぐ側である。126位、127位、247位および248位を、マウスモノクローナル抗体A20による中和のために重要であるとして同定した。従って、この領域は、マウスおよびヒトの両方において抗原性であり得る。
【0180】
まとめると、抗体による中和は減少したが、生物学的特性には最小限の影響しか与えなかった、AAV−2キャプシドの外側表面へのいくつかの変異を同定した。特に、127の変異を、IgG構造およびAAV−2構造の手動によるドッキングに基づいて、抗体結合に最もアクセス可能であると思われる72の位置(表面領域の55%)に作製した。単一のアラニン置換(57)、単一の非アラニン置換(41)、複数の変異(27)、および挿入(2)を作製した。全ての変異が、キャプシドタンパク質を生成し、野生型の10倍以内のレベルでDNAをパッケージングした。ヘパリン結合部位に近いか、またはヘパリン結合部位の中にある6の変異を除く全ての変異は、野生型と同様に、ヘパリンに結合した。98の単一変異のうちの42は、少なくとも野生型と同等に形質導入した。いくつかの変異は、増加した形質導入活性を有した。1つの変異(SからTへの変異)は、野生型よりも11倍高い形質導入活性を有した。組み合わせ(上または下)変異は、通常、形質導入の最も低いレベルを有する単一変異のレベルと同じレベルで形質導入した。
【0181】
10%未満の形質導入活性を有する、15の単一アラニン置換変異のうちの13が、ヘパリン結合部位と重なる領域(表面の10%)において、互いに近接していた。これらの「デッドゾーン(DZ)」変異は、正常な形質導入活性の0.001%〜10%を有したが、これらの全てが、野生型と同じ効率でヘパリンに結合した。DZ変異により形質導入は増加し得、そして、3つの場合において、保存的置換を作製することによって、野生型のレベルを回復し得た。
【0182】
5の変異は、ELISAにおいてマウスモノクローナル抗体(A20)への結合を減少し、そして、インビトロにおいてA20による中和に対して2.5倍〜217倍抵抗性であった。これらの5の変異は、互いに、そしてDZに対して近接していた。合計21の単一変異は、3つのヒト抗血清による中和に対して、または、精製したヒトIgGの大きなプール(IVIG,Panglobulin)による中和に対して、野生型と比較して2倍〜10倍抵抗性であった。変異の異なるセットは、異なるヒト血清に対する抵抗性を与えた。これらの変異の位置は、広範囲に及んだ。これらが覆う領域の大きさは、ヒト血清が、少なくとも2つのエピトープに結合することによって、AAV−2を中和することを示唆した。3の変異は、試験した全ての血清に対して抵抗性であったが、これらの3の変異の組み合わせは、IVIGによる中和に対する抵抗性を増加させなかった。全てのIVIG ELISAにおいて野生型よりも10倍低くIVIGに結合した1つ(VからK)の変異を同定した。しかし、この変異は、IVIG中和に対して抵抗性ではなかった。
【0183】
まとめると、「デッドゾーン」における変異は、形質導入には影響を与えるが、ヘパリン結合には影響を与えない。DZの周りの変異は、形質導入を増加し得るか、または抗体の結合を減少し得る。DZは、非常に酸性(酸性アミノ酸6、塩基性アミノ酸0)である。特定の理論に束縛されないが、これは、塩基性タンパク質(例えば、bFGFまたはbFGFレセプター)についての結合部位であり得る。デッドゾーンは、AAV−2上のヘパリン結合部位に隣接しているので、タンパク質がデッドゾーンに結合すると、このタンパク質もまたヘパリンに結合し得る。bFGFおよびbFGFレセプターの両方が、ヘパリンに結合する。
【0184】
(実施例2 変異型AAV−hF.IXを用いる、マウスにおける第IX因子の発現)
rAAV−F.IXを、rAAV−2 hF.IXベクターおよび上記の方法を用いて調製する。トランスフェクトした細胞の凍結−融解溶解物を沈殿させ、2サイクルの等密度遠心法によりrAAVビリオンを精製し;そして、rAAVビリオンを含む分画をプールし、透析し、濃縮する。濃縮したビリオンを処方し、滅菌濾過(0.22μM)し、ガラスバイアルに無菌的に充填する。ベクターゲノムを、「Real Time Quantitative Polymerase Chain Reaction」法(Real Time Quantitative PCR.Heid C.A.,Stevens J.,Livak K.J.およびWilliams P.M.1996.Genome Research 6:986−994.Cold Spring Harbor
Laboratory Press)により定量する。
【0185】
4〜6週齢の雌性マウスに、変異型rAAV−hF.IXビリオンを注射する。ケタミン(70mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)の腹腔内注射によりマウスを麻酔し、下肢部に1cmの長軸方向の切開をつくる。変異型組換えAAV−hF.IX(HEPES緩衝化生理食塩水、pH7.8中2×1011ウイルスベクターゲノム/kg)ビリオンを、Hamiltonシリンジを用いて、各脚の前脛骨筋(25μL)および大腿四頭筋(50μL)に注射する。4−0 Vicryl縫合糸で切開を閉じる。7日間隔で、ミクロヘマトクリット毛細管内の眼窩後神経叢から、血液サンプルを採取し、血漿を、ELISAによってhF.IXについてアッセイする。マウス血漿中のヒトF.IX抗原を、Walterら(Proc Natl Acad Sci USA(1996)3:3056−3061)により記載されたように、ELISAにより評価する。ELISAは、マウスF.IXとは交差反応しない。全てのサンプルを、二連で評価する。注射したマウスの筋肉から得られるタンパク質抽出物を、ロイペプチン(0.5mg/mL)を含有するPBS中に浸軟させ、その後、超音波処理して調製する。細胞の細片を遠心分離により除去し、1:10希釈のタンパク質抽出物を、ELISAにおいてhF.IXについて評価する。hF.IXの循環血漿濃度を、IM注射後の種々の時点(例えば、0週間、3週間、7週間および11週間)で、ELISAにより測定する。
【0186】
(実施例3 変異型AAV−cF.IXを用いる、イヌにおける血友病B処置)
イヌ第IX因子(cF.IX)遺伝子の触媒ドメインにおける点変異についてヘミ接合性の雄と、ホモ接合性の雌を含む、重篤な血友病Bを有するイヌの群を用いて、変異型rAAVビリオン(rAAV−cF.IX)により送達されるcF.IXの効果を試験する。重篤な血友病のイヌは、血漿cF.IXを欠き、その結果、全血凝固時間(WBCT)が60分を超えるまで増加し(正常なイヌは、6〜8分の間のWBCTを有する)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)が50〜80秒まで増加している(正常なイヌは、13〜18秒の間のaPPTを有する)。これらのイヌは、再発性の自然出血を被る。代表的には、有意な出血エピソードは、10mL/kgの正常なイヌ血漿の単回の静脈内注入により首尾よく管理される;時折、繰り返し注入が、出血の制御のために必要とされる。
【0187】
一般的な麻酔下で、血友病Bのイヌに、rAAV1−cF.IXビリオンを、1×1012vg/kgの用量で筋肉内注射する。これらの動物には、手順の間に、正常なイヌ血漿を与えない。
【0188】
全血凝固時間を、血漿中のcF.IXについて評価する。活性化部分トロンボプラスチン時間を測定する。凝固インヒビターのスクリーニングをまた実施する。処置した血友病のイヌおよび正常なイヌから得た血漿を等量で混合し、そして、37℃にて2時間インキュベートする。このインヒビタースクリーニングを、aPPT凝固時間が、コントロール(イミダゾール緩衝液と共にインキュベートした正常なイヌの血漿、および正常なイヌの血漿と共にインキュベートした、前処置した血友病のイヌの血漿)のものよりも3秒長い場合に陽性とスコア付けする。AAVベクターに対する中和抗体力価を評価する。
【0189】
(実施例4 変異型AAV−hF.IXを用いる、ヒトにおける血友病Bの処置)
(A.筋肉送達)
プロトコールの0日目に、患者に、hF.IX濃縮物を注入して、因子のレベルを約100%までにし、そして、超音波誘導の下で、変異型rAAV−h.FIXビリオンを、片側もしくは両側の前部大腿の外側広筋において10〜12部位に直接注射する。各部位の注射容量は、250〜500μLであり、これらの部位は、少なくとも2cm間隔が空いている。塩化エチルまたは、局所麻酔薬の共融混合物により皮膚への局所麻酔を施す。その後の筋肉生検を容易にするために、いくつかの注射部位の上にかかる皮膚に傷をつけて印をつけ、超音波により注射の座標を記録する。患者を、注射後24時間、病院内で観察する;この期間の間に慣用的な隔離措置を取り、ビリオンの水平感染の危険性を最小限にする。患者を退院させ、そして、退院後、3日間、外来診察室にて毎日見、次の8週間は、在宅血友病センターにて毎週見、そして、5ヶ月までは1月に2回見、そして、その年の残りは1ヶ月毎に見、そして、その後毎年追跡する。hF.IXの循環血漿レベルを、上記のようにELISAを用いて定量する。
【0190】
(B.肝臓送達)
標準的なシェルディンガー技術を用いて、総大腿動脈に、血管造影用導入シースを用いてカニューレ挿入する。次いで、100U/kgのヘパリンのIV注射により患者をヘパリン処理する。次いで、ピッグテールカテーテルを大動脈内に進め、腹部大動脈撮影を実施する。腹腔および肝臓の動脈解剖図を描写した後、標準的な選択的血管造影用カテーテル(Simmons,Sos−Omni,Cobraまたは類似のカテーテル)を用いて、適切なHAを選択する。患者内への挿入の前に、全てのカテーテルを、正常生理食塩水でフラッシュする。次いで、非イオン性造影物質(OmnipaqueまたはVisipaque)を用いて選択的な動脈図を実施する。このカテーテルを、0.035ワイヤ(Bentsen,angled Glide、または類似のワイヤ)から取り除く。次いで、6F ガイドシース(またはガイドカテーテル)を、このワイヤに沿って総HA内へと進める。次いで、このワイヤを、0.018ワイヤ(FlexT,Microvena Nitenolまたは類似のカテーテル)と交換し、6×2 Savvyバルーンをこのワイヤに沿って胃十二指腸の動脈から離れた適切なHA内へと進める。次いで、このワイヤを取り除き、バルーンカテーテル内に造影剤を手動で注入することによってカテーテルの先端の位置を確認し、そして、管腔を、15mlのヘパリン処理した正常生理食塩水(NS)でフラッシュして、造影剤を完全に取り除く。AAV−hFIXの注入の前に、このバルーンを、2atmまで膨張させて、HAの流動管腔を塞ぐ。8×10E10〜2×10E12の用量のAAV−hFIXを、およそ40ml以下の最終容量(用量および患者の体重に依存する)にし、次いで、自動容積測定注入ポンプを用いて、10〜12分にわたって注入する。次いで、3mlの正常生理食塩水(NS)を(AAV−hFIXと同じ速度で)注入し、カテーテルの空隙容量をなくす。バルーンを、2分間膨張させたままにし、2分後に、バルーンを収縮させ、カテーテルを取り除く。次いで、大腿穿刺部位の診断用動脈図撮影を、同側側の前部斜方突出部内で実施する。この穿刺部位を、標準的な方法(例えば、6F Closer(Perclose Inc.,Menlo Park,CA)または6F Angiosealのいずれかを用いる経皮閉鎖デバイスを利用すること)によってか、または、カテーテルの除去部位を15〜30分間、手で圧迫することによって、閉鎖する。
【0191】
(実施例5 新規ヤギAAVの単離および特徴付け)
(A.細胞培養およびウイルス単離)
パルボウイルスの混入の証拠を有するヒツジアデノウイルス調製物を、以下のようにヤギの回腸から単離した。組織を、Earles塩(PH7.2)およびゲントマイシン(gentomycin)を含むイーグルのMEM培地中でホモジナイズした。このホモジネートを、20分間の低速遠心分離(1,500×g)により清浄し、0.45μmデバイスを通して濾過滅菌した。上清(500μl)を、3回継代した胎性仔ヒツジ腎臓細胞の初代培養物を含む25cm2フラスコに播種し、胎仔ウシ血清(USA)およびラクトアルブミン加水分解物(USA)と共に、37℃にて、加湿した5%CO2インキュベーター内で1週間インキュベートした。細胞をトリプシン処理し、スプリットし、そして、再度上記のようにインキュベートし、そして、最終的に、典型的なアデノウイルス細胞変性効果(cytophatic effect)(CPE)についてアッセイした。CPEを示すフラスコを−70℃にて凍結し、溶解し、そして他の細胞型の上に重ねた。これらのフラスコを、その後インキュベートし、CPEについて試験した。
【0192】
使用した他の細胞型は、胎仔ヒツジ組織に由来する非不死化(8回継代)ヒツジ胎仔鼻甲介細胞、および長期の継代により維持されたMaden Darbyウシ腎臓細胞(160回の継代にて使用した)を含んだ。全ての組織培養において、ブタトリプシン(USA)を用い、ヒト細胞培養物またはヒト細胞製品は使用しなかった。
【0193】
(B.ウイルスDNA単離、ならびにAAV配列の同定および比較)
異なる細胞培養物および継代からの4つの調製物を、DNA抽出のために個々に処理した。ウイルスを含有する上清を、消化緩衝液(10mM Tris−HCl(PH8.0),10mM EDTA(PH8.0)および0.5%SDS)中のプロテイナーゼK(200μg)で処理し、37℃で1時間インキュベートした。フェノールクロロホルム抽出およびエタノール沈殿の後、ウイルスDNAをTE中に再懸濁した。
【0194】
各調製物のDNA含量を、PicoGreen DNA定量法(Molecular Probes,Eugene,OR)により決定し、これらの調製物を、20ng/μlに希釈し、その後のPCRアッセイのためにDNA濃度を標準化した。
【0195】
(オリゴヌクレオチドプライマー)
公知のAAVの間で高度に保存されているセグメントからの配列アライメントに基づいて、オリゴヌクレオチドプライマーを選択した。
フォワードプライマー1(GTGCCCTTCTACGGCTGCGTCAACTGGACCAATGAGAACTTTCC)(配列番号23)は、ヘリカーゼドメインに対して相補的であり、そしてリバースプライマー2(GGAATCGCAATGCCAATTTCCTGAGGCATTAC)(配列番号24)は、DNA結合ドメインに対して相補的であった。PCRフラグメントの予想サイズは1.5kbであった。
【0196】
(PCR増幅)
全ての反応を、自動Eppendorf Mastercycler Gradient熱サイクラー(PerkinElmer,Boston,MA)において、50μlで行なった。各反応混合物は、1×XL緩衝液II中に、200ngの鋳型DNA、各1μMのオリゴヌクレオチドプライマー、1mM Mn(Oac)2、各200μMのデオキシヌクレオチドトリホスフェート(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)、および1.0単位のrTthポリメラーゼ,XL(Applied Biosystems,Foster City,CA)を含んだ。Ampliwax PCR gem 100(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いてホットスタートを容易にした。
サイクリング条件は、以下の通りであった:94℃にて2分の変性、その後、94℃にて15秒の変性、45℃にて30秒のアニーリング、および72℃にて2分の伸長の35サイクルを続けた。
【0197】
PCR産物(10μl)を、1% NuSieveアガロースゲル(FMC BioProducts,Rockland,MN)内で電気泳動して分離し、エチジウムブロマイドで染色し、そして、UV光により可視化した。各ゲル上でDNA分子マーカーを用いて、反応生成物のサイズの決定を容易にした。
【0198】
アッセイの特異性を制御するために、AAV2配列を含むプラスミドからの100ngのDNAを用いてもまたPCRを実施した。
【0199】
(DNA配列決定)
PCR生成物を、1%低融点アガロースゲル(FMC BioProducts,Rockland,ME)にて精製し、この配列を、AAV−5配列から設計したプライマーを用いて決定した。
【0200】
配列データを、NTI vector suiteソフトウェアパッケージ(InforMax,Frederick,MD)を用いて分析した。
【0201】
異なる細胞培養物および継代からのウイルス調製物を、DNA抽出およびPCR分析のために、個々に処理した。フォワードプライマー1およびリバースプライマー2を使用するPCR増幅により、4つ全ての調製物におけるパルボウイルス様配列の存在が明らかとなった。配列分析により、AAV配列の存在が明らかとなった。AAV−5ゲノムのヌクレオチド2,207〜4,381に対応する、ヤギAAVのVP1 ORFは、ヒトから単離された霊長類AAV−5(J.Virol 1999;73:1309−1319)と、93%のヌクレオチド同一性(2,104/2,266、ギャップ 6/2,266)を有する(図12A〜12Bを参照のこと)。タンパク質の比較は、霊長類AAV−5とヤギAAVのVP1タンパク質の間で、94%の同一性(682/726)および96%の類似性(698/726)を示した(図13を参照のこと)。全てではないが、ほとんどの変異が、表面上に見えた(図15を参照のこと)。図16は、AAV−2キャプシドの表面構造に基づいて、AAV−5とヤギAAVとの間で異なる表面アミノ酸の予測位置を示す。3つの充填した三角形は、AAV−2に関する、ヤギAAV内の挿入を表し、これらは、表面上に位置するようである。
【0202】
特定の理論に束縛されないが、表面の変異は、おそらく、体液性免疫系および/または反芻動物レセプターへの適合に起因する選択的な圧力によって駆動されたものである。表面に露出していない領域に変化がないことは、細胞性免疫応答からの圧力を欠くことを意味し得る。ヤギウイルスにおけるこれらの変異した領域は、既存のヒト抗AAV5抗体に対する抵抗性を改善し得る。
【0203】
非保存領域における差を分析するために、ヤギAAV配列を他のAAV血清型と比較し、そして、これらの血清型を、互いに比較した。特に、図14A〜14Hは、霊長類AAV−1、AAV−2、AAV−3B、AAV−4、AAV−6、AAV−8、AAV−5およびヤギAAVに由来するVP1のアミノ酸配列の比較を示す。これらの配列において保存されているアミノ酸を、*で示し、結晶構造に基づく種々のアミノ酸位置のアクセス可能性を示す。Bは、アミノ酸が、内側表面と外側表面に間に埋もれていることを示す。Iは、アミノ酸が、内側表面上に見られることを示し、Oは、アミノ酸が外側表面上に見られることを示す。
【0204】
AAV−5とヤギAAVとの間の非保存領域は、43の変異を含む。これらの43の変異のうちの17は、AAV−2とAAV−8との間で保存されていない。これらの変異の1つのみが、ヤギAAVおよびAAV−8の同じアミノ酸に由来したものである。AAV−5とヤギAAVとの間の非保存領域は、348アミノ酸を含む。この非保存領域は、この領域が17の連なった変異を含むと分析されると、157のアミノ酸に圧縮される。
【0205】
表8〜11は、比較の結果を示す。
【0206】
【表8】
【0207】
【表9】
【0208】
【表10】
【0209】
【表11】
(実施例6 ヤギAAVの免疫反応性および他のAAVとの比較)
(A.霊長類AAV血清型の中和活性)
表12に示される霊長類AAV血清型の中和活性を、上記の方法を用いて評価した。免疫反応性を、精製し、プールしたヒトIgG(表12および表13においてIVIg8と命名した)を用いて決定した。
【0210】
表12および表13に示すように、多くの血清型は、臨床的に適切な濃度のプールしたヒトIgGにより中和された。AAV−4およびAAV−8は、AAV−3(AAV−5よりも中和に対して抵抗性)よりも中和に対して抵抗性である、AAV−1、AAV−2およびAAV−6よりもより中和に対して抵抗性であった。
【0211】
(B.ヤギAAV 対 霊長類AAV 血清型の中和活性)
ヤギAAVの中和活性を、上記の方法を用いて霊長類AAV−5と比較した。免疫反応性を、精製し、プールしたヒトIgG(表14においてIVIg8と命名した)を用いて決定した。表14に示すように、ヤギAAVは、AAV−5よりも中和に対してより大きい抵抗性を示した。表14はまた、上記の実施例において決定したように、ヤギAAVに関しての、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−6およびAAV−8の中和活性を示す。
【0212】
別の実験において、AAV−8に関するヤギAAVの中和活性を、3つの異なるヒトIgGの精製プール(それぞれ、表15および表16において、IVIg3、IVIg6およびIVIg8と命名した)を用いて試験した。これらの表に示すように、ヒトIgGの3つ全てのプールを使用しても、ヤギAAVは、AAV−8よりも中和に対してより抵抗性であった。
【0213】
【表12】
【0214】
【表13】
【0215】
【表14】
【0216】
【表15】
【0217】
【表16】
(実施例7 ヤギAAVの線条体ニューロンおよびグリア細胞に形質導入する能力、ならびに他のAAVとの比較)
種々のAAVが線条体ニューロンおよびグリア細胞に形質導入する能力を調べるために、以下の実験を行なった。解離させた線条体ニューロンの初代培養物を、胚日数18のSprague−Dawleyラット胚から調製した。解離させた線条体組織を、小さな片に刻み、そして、トリプシン中で30分間インキュベートした。次いで、この組織を、パスツールピペットを通してトリチュレートし、そして、細胞を、1ウェルあたり350,000細胞の密度にて、ポリ−D−リジンでコーティングした18mmの円形のカバーガラスを含む12ウェル培養ディッシュにプレートした。この培養培地は、2% B−27、0.5mM L−グルタミンおよび25mM L−グルタミン酸を補充した神経基礎培地であった。培養物を、37℃にて5% CO2内で維持し、そして、解離後、2〜3週間で、実験に使用した。この段階で、ドーパミン作動性ニューロンおよび線条体ニューロンを、形態学的に、そして、生物学的マーカーの発現により、区別する。
【0218】
線条体の培養物を、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(LacZ)を含み、実施例1に記載される三重トランスフェクション法を用いて調製した、AAV−2、AAV−4、AAV−5、AAV−6、AAV−8およびヤギAAVに由来するrAAVビリオン(104MOI)と共に、5日間培養した。ヤギAAVについて、pHLP19(米国特許第6,001,650号に記載される)に存在するキャプシドをコードする配列を、以下のようにして、ヤギVP1コード配列で置き換えた。簡単に述べると、プラスミドpHLP19を、SwaIおよびAgeI(New England Biolabs,Beverly,MA 01915−5599)で消化し、目的のフラグメントを、1%低融点アガロースゲル(FMC Bioproducts,Rockland,ME)にて精製し、そして、ヤギキャプシドを含有するPCRフラグメントと連結するために使用した。このヤギキャプシドPCRフラグメントを、フォワードプライマー:AAATCAGGTATGTCTTTTGTTGATCACCC(配列番号27)およびリバースプライマー:ACACGAATTAACCGGTTTATTGAGGGTATGCGACATGAATGGG(配列番号28)を用いて増幅した。このPCRフラグメントを、酵素AgeI(New
England Biolabs,Beverly,MA 01915−5599)で消化し、消化したプラスミドと連結するために使用した。
【0219】
β−galタンパク質の十分かつ持続的な発現が、ベクターを用いて形質導入した後に、線条体ニューロンにおいて見られた。発現効率は、AAV6で最も高く、AAV8、AAV2、AAV5、ヤギAAVおよびAAV4が続いた。AAV6は、ニューロンににだけ形質導入したが、AAV5媒介性の遺伝子移送は、ニューロンにおいては不十分であったが、グリア細胞には形質導入した。全ての他のベクターが、ニューロン細胞およびグリア細胞の両方に形質導入した。
【0220】
(実施例8 ヤギAAVの筋肉に形質導入する能力、および他のAAVとの比較)
IVIGの存在下または非存在下で、種々のAAVが筋肉に形質導入する能力を決定するために、以下の実験を行なった。雄性のSCIDマウス(15〜25g)に、ヤギrAAVビリオン、rAAV−1ビリオン、またはrAAV−8ビリオンの2e11ベクターゲノム(各群マウス5匹)を筋肉内注射した。上記ビリオンの各々は、ヒト第IX因子をコードする。これらのビリオンを、実施例1に記載した三重トランスフェクション法を用いて作製した。pHLP19中に存在するキャプシドコード配列を、上記のようにヤギVP1コード配列で置き換えた。ベクターの注射後1週間および2週間で、眼窩後血を回収し、血漿を抽出した。ベクター注射の24時間前に、IVIG(Carimune:ヒト血清のプールからの精製免疫グロブリン,ZLB Bioplasma,ロット番号03287−00117)で試験したマウスに、尾静脈を介して注射した(250μl)。hFIX ELISAを用いて、ヒトFIXを、血漿サンプル中で測定した。
【0221】
図17に示すように、ヤギrAAVビリオンは、筋肉に形質導入せず、rAAV−8ビリオンおよびrAAV−1ビリオンは、hFIXの同じ発現レベルを示した。AAV−1は、インビボにおいて、AAV−8よりも中和に対して抵抗性であった。
【0222】
(実施例9 ヤギAAVの肝臓に形質導入する能力、および他のAAVとの比較、ならびに、ヤギAAVビリオンにより送達された遺伝子から発現されるタンパク質の生体分布)
IVIGの存在下または非存在下で、種々のAAVが肝臓に形質導入する能力を決定するために、以下の実験を行なった。雄性のSCIDマウス(15〜25g)に、ヤギrAAVビリオンまたはrAAV−8ビリオンの5e11ベクターゲノム(各群マウス5匹)を尾静脈を介して注射した。これらのビリオンは、ヒト第IX因子(hFIX)をコードする遺伝子を含んだ。以下のrAAV−2ビリオンのデータは、別の実験からのものであった。特に、肝臓特異的プロモーター(Miaoら,Mol.Ther.(2000)1:522−532に記載される)の制御下にヒト第IX因子遺伝子を含む、プラスミドpAAV−hFIX16を用いて、ビリオンを作製した。プラスミドpAAV−hFIX16は、ヒト第IX因子ミニ遺伝子をコードする11,277bpのプラスミドである。この構築物において、FIX cDNAは、エキソン1とエキソン2との間に挟まれており、イントロン1が欠失している形態である。このcDNAは、FIXの発現の増加を示している。FIXは、ApoE肝臓制御領域(HCR)およびヒトα1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ならびにウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナル(gGH
PA)の転写制御下で発現する。プラスミドpAAV−hFIX16の骨格は、アンピシリン抵抗性を与えるβ−ラクタマーゼ遺伝子、細菌の複製起点、M13/F1複製起点、およびバクテリオファージλDNAのフラグメントを含む。λDNAは、プラスミド骨格のサイズを6,966bpまで増加させ、AAVベクター産生の間にそのパッケージングを防止する。
【0223】
上記の三重トランスフェクション法を用いて、組み換え型AAVビリオンを産生した。ヤギrAAVビリオンについて、プラスミドpHLP19中に存在するVP1コード配列を、上記のように、ヤギVP1コード配列で置き換えた。
【0224】
注射の後、注射後1週、2週、4週(各群マウス5匹)および8週(各群マウス2匹)に、眼窩後血を回収し、血漿を抽出した。ベクター注射の24時間前に、IVIG(Panglobulin:ヒト血清のプールからの精製免疫グロブリン,ZLB Bioplasma,ロット番号1838−00299)で試験したマウスに、尾静脈を介して注射した(250μl)。hFIX ELISAによって、ヒトFIXを、血漿サンプル中で測定した。
【0225】
図18に示すように、静脈内投与後の組み換え型ヤギAAVビリオンでの肝臓の形質導入は低かった。rAAV−2ビリオンを用いるよりも、rAAV−8ビリオンを用いた方がより高いhFIXの発現が見られ、そして、rAAV−2ビリオンは、ヤギrAAVビリオンよりも高い発現を示した。ヤギrAAVビリオンは、インビボにおいて、rAAV−2ビリオンよりも中和に対してより抵抗性であった。ヒトFIX発現は、120の既存のIVIG中和力価を持つrAAVを注射したマウスにおいて減少したが、hFIXの発現は、10の既存のIVIG中和力価を持つrAAV−2を注射したマウスにおいては完全にブロックされた。
【0226】
生体分布分析のために、ベクター注射の4週間後に、マウス(各群マウス2匹)を屠殺し、臓器を回収した。回収した臓器には、脳、精巣、筋肉(大腿四頭筋)、腎臓、脾臓、肺、心臓、および肝臓を含めた。hFIXを測定するために、異なる組織から抽出したDNAサンプルについて定量的PCRを行なった。図19に示すように、雄性SCIDマウス内の、尾静脈投与したヤギrAAVビリオンの生体分布は、ヤギrAAVビリオンが肺向性を有したことを示した。
【0227】
(実施例10 新規ウシAAVの単離および特徴付け)
パルボウイルスの混入の証拠が、当該分野で公知の方法を使用して、ウシの肺から単離したウシアデノウイルス(BAV)8型、Misk/67株(ATCC,Manassas,VAから入手可能、寄託番号VR−769)において見られた。この新しい単離対を、「AAV−C1」と名付けた。AAV−C1を、PCRにより部分的に増幅し、そして配列決定した。図20Aおよび20Bは、それぞれ、AAV−C1に由来するVP1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。AAV−C1に由来するVP1アミノ酸配列を、他のAAV VP1と比較した。特に、図21A〜21Hは、AAV−C1に由来するVP1アミノ酸配列の霊長類AAV−1、AAV−2、AAV−3B、AAV−4、AAV−6、AAV−8、AAV−5およびヤギAAVに由来するVP1のアミノ酸配列との比較を示す。これらの配列において保存されているアミノ酸を、*で示し、結晶構造に基づく種々のアミノ酸位置のアクセス可能性を示す。Bは、アミノ酸が、内側表面と外側表面との間に埋もれていることを示す。Iは、アミノ酸が、内側表面上に見られることを示し、Oは、アミノ酸が外側表面上に見られることを示す。
【0228】
AAV−C1に由来するVP1は、AAV−4とおよそ76%の同一性を示した。AAV−C1は、AAV−5 VP1とおよそ54%の同一性を示し、Repタンパク質、AAV−5 VP1の最初の137アミノ酸およびAAV−5 VP1の終止後の非翻訳領域(図示せず)において高い相同性を有した。従って、AAV−C1は、AAV−5とAAV−4との間で自然のハイブリッドであるようである。AAV−C1はまた、AAV−2およびAAV−8に由来するVP1とおよそ58%の配列同一性を示し、AAV−1およびAAV−6に由来するVP1とおよそ59%の配列同一性を示し、そして、AAV−3Bに由来するVP1とおよそ60%の配列同一性を示した。
【0229】
変化がもっぱらVP1のC末端超可変領域にあったAAV−5とヤギAAV(AAV−G1)との間の相違とは異なり、AAV−4とAAV−C1との間の配列の相違は、キャプシド全体に分散していた。AAV−4配列との類似性は、VP2の開始からキャプシドの終止までであった。AAV−C1は、哺乳動物AAVの最も相違するものの1つであるようであり、AAV−2との配列相同性は、およそ58%であった。特に、Schmidtらに記載されたウシAAVは、ウシアデノウイルス2型から部分的に増幅されたものである。AAV−C1およびSchmidtらに記載されたウシAAVに由来するヌクレオチド配列の比較は、12のヌクレオチド変化と5のアミノ酸差異を示した。これらの差は、334位(AAV−C1 VP1において、Hの代わりにQが存在する)、464位(AAV−C1 VP1において、Nの代わりにKが存在する)、465位(AAV−C1 VP1において、Kの代わりにTが存在する)、499位(AAV−C1 VP1において、Gの代わりにRが存在する)、および514位(AAV−C1 VP1において、Rの代わりにGが存在する)で生じた。
【0230】
AAV−C1の全キャプシドを、プラスミドにクローニングし、これを用いて、擬型AAV−2ベクターを生成した。さらなる特徴付けのために、pHLP19中に存在するキャプシド配列がウシキャプシド配列で置き換えられていること以外は、上記の三重トランスフェクション技術を用いて、LacZ遺伝子を含むAAV−C1ベクター(AAV−C1−LacZ)を生成した。AAV−C1−LacZの力価(vg/ml)を、上記のように定量的PCR(Q−PCR)を用いて計算した。表17に示すように、AAV−C1 LacZベクターを、効率よく生成し;Q−PCRにより高い力価のベクター(2.45e10vg/ml)を検出した。AAV−C1 LacZベクターは、インビトロにおいて十分な細胞の形質導入を示した(LacZを発現する細胞が、他のAAVと匹敵する数で存在した)。
【0231】
【表17】
(実施例11 ウシAAVの免疫反応性および他のAAVとの比較)
霊長類AAV−2に関するウシAAV−C1の中和活性を、実施例6において上述した方法を用いて評価した。免疫反応性を、精製し、プールしたヒトIgG(IVIG−8、Panglobulin ロット番号1838−00351,ZLB Bioplasma AG,Berne,Switzerland)を用いて決定した。インビトロでの中和アッセイは、AAV−C1が、AAV−2よりも、ヒトIVIGによる中和に対して16倍より抵抗性であったことを示した。AAV−2の50%以上の中和を示すIVIGの最低濃度(mg/ml)は、0.2mg/mlであったが、AAV−C1は、3.25mg/mlであった。
【0232】
従って、免疫反応性が減少した変異型AAVビリオンを作製する方法および使用する方法が記載される。本発明の好ましい実施形態がいくらか詳細に記載されてきたが、特許請求の範囲により規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、明らかなバリエーションがなされ得ることが理解される。
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に、組み換え型アデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを細胞に送達するための組成物および方法に関する。特に、本発明は、免疫反応性が減少したrAAVビリオン(例えば、変異型rAAVビリオン)、ならびにその作製方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
科学者は、糖尿病、血友病および癌のようなヒト疾患に関連する遺伝子を頻繁に発見している。研究努力はまた、遺伝的障害に関連しないが、その代わりに多数の疾患を処置するために使用され得るタンパク質をコードする、エリスロポエチン(赤血球産生を増加させる)のような遺伝子を明らかにしている。しかし、遺伝子を同定および単離する試みにおける有意な進歩にも関わらず、生物薬剤学産業が直面する主要な障害は、治療有効量の遺伝子産物を安全かつ持続的に患者に送達する方法である。
【0003】
一般に、これらの遺伝子のタンパク質生成物は、培養細菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞または他の細胞において合成され、そして、直接注射によって患者に送達される。組換えタンパク質の注射は、効を奏しているが、いくつかの欠点に苦しんでいる。例えば、患者はしばしば、血流内のタンパク質の必要なレベルを維持するために、毎週、そして時には毎日の注射を必要とする。それでも、タンパク質の濃度は、生理学的レベルには維持されない−タンパク質のレベルは、通常、注射直後には異常に高く、注射前には最適なレベルからかなり低い。さらに、組換えタンパク質の注射による送達は、しばしば、このタンパク質を、体内の標的の細胞、組織または器官に送達し得ない。そして、タンパク質がその標的に首尾よく到達しても、このタンパク質は、非治療的レベルまで希釈され得る。さらに、この方法は不便であり、しばしば、患者の生活様式を制限する。
【0004】
これらの欠点は、特定のタンパク質の持続したレベルを患者に送達するための遺伝子治療法を開発することに対する要望を刺激している。これらの方法は、医師が、治療遺伝子のような核酸をコードするデオキシリボ核酸(DNA)を、患者に直接(インビボ遺伝子治療)、または患者もしくはドナーから単離した細胞内に(エキソビボ遺伝子治療)導入することを可能にするように設計される。次いで、導入された核酸は、患者自身の細胞、または移植された細胞に、所望のタンパク質生成物を産生するように命令する。従って、遺伝子の送達は、頻繁な注射に対する必要性を除去する。遺伝子治療はまた、医師が、治療のための特定の器官または細胞標的(例えば、筋肉、血球、脳細胞など)を選択することを可能にし得る。
【0005】
DNAは、いくつかの方法で患者の細胞に導入され得る。化学的方法(例えば、リン酸カルシウム沈降およびリポソーム媒介性のトランスフェクション)および物理的方法(例えば、エレクトロポレーション)を含む、トランスフェクション法が存在する。一般に、トランスフェクション法は、インビボ遺伝子送達に適さない。組み換え型ウイルスを使用する方法もまた存在する。現行のウイルス媒介性遺伝子送達ベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくものが挙げられる。レトロウイルスと同様に、そしてアデノウイルスとは異なり、AAVは、宿主細胞の染色体にそのゲノムを組み込む能力を有する。
【0006】
(アデノ随伴ウイルス媒介性の遺伝子治療)
AAVは、Dependovirus属に属するパルボウイルスであり、他のウイルスでは見られない、いくつかの魅力的な特徴を有する。例えば、AAVは、非分裂細胞を含む広範な宿主細胞に感染し得る。AAVはまた、異なる種に由来する細胞に感染し得る。重要なことに、AAVは、ヒトまたは動物の疾患のいずれにも関連せず、そして、組み込まれても、宿主細胞の生理学的特性を変更しないようである。さらに、AAVは、広範な物理的条件および化学的条件において安定であり、このことは、製造、保存および輸送の要件に役立つ。
【0007】
およそ4700ヌクレオチドを含有するAAVゲノムの直線状の単鎖DNA分子(AAV−2ゲノムは、4681ヌクレオチドから構成される)は、一般に、各端部で逆方向末端反復(ITR)により隣接される、内部非反復セグメントを含む。このITRは、約145ヌクレオチド長であり(AAV−1は、143ヌクレオチドのITRを有する)、複製起点としての機能、およびウイルスゲノムのパッケージングシグナルとしての機能を含む、複数の機能を有する。
【0008】
ゲノムの内部非反復部分は、AAV複製(rep)領域およびAAVキャプシド(cap)領域として知られる、2つの大きなオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。これらのORFは、それぞれ、複製およびキャプシドの遺伝子産物をコードする:複製およびキャプシドの遺伝子産物(すなわち、タンパク質)は、完全なAAVビリオンの複製、組み立ておよびパッケージングを可能にする。より具体的には、少なくとも4種のウイルスタンパク質のファミリーが、AAV rep領域から発現される:Rep 78、Rep 68、Rep 52およびRep 40(これらは全て、その見かけ上の分子量から命名されている)。AAV cap領域は、少なくとも3つのタンパク質をコードする:VP1、VP2およびVP3。
【0009】
自然状態では、AAVは、ヘルパーウイルス依存性のウイルスである。すなわち、AAVは、機能的に完全なAAVビリオンを形成するために、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス)と同時に感染する必要がある。ヘルパーウイルスと同時に感染しない場合、AAVは、ウイルスゲノムが宿主細胞の染色体内に挿入するか、またはエピソームの形態で存在する、潜伏状態を確立するが、感染性ビリオンは産生されない。後のヘルパーウイルスの感染により、この組み込まれたゲノムを「レスキュー」し、複製して、ウイルスキャプシドにパッケージングし、それによって、感染性ビリオンを再構成することが可能になる。AAVは、異なる種に由来する細胞に感染し得るが、ヘルパーウイルスは、宿主細胞と同じ種でなくてはならない。従って、例えば、ヒトAAVは、イヌアデノウイルスと同時感染したイヌ細胞内で複製する。
【0010】
核酸を含有する感染性組み換え型AAV(rAAV)を構築するために、適切な宿主細胞株が、核酸を含有するAAVベクターを用いてトランスフェクトされる。次いで、AAVのヘルパー機能および補助機能が、宿主細胞において発現される。これらの因子が一緒になると、野生型(wt)のAAVゲノムであるかのようにHNAが複製され、パッケージングされ、組み換え型ビリオンを形成する。患者の細胞が、得られたrAAVに感染すると、HNAが進入し、そして、患者の細胞内で発現される。患者の細胞は、rep遺伝子およびcap遺伝子、ならびにアデノウイルス補助機能遺伝子を欠失しているので、rAAVは、複製欠損型である;すなわち、これらは、そのゲノムをさらに複製およびパッケージングすることができない。同様に、rep遺伝子およびcap遺伝子の供給源がなければ、wtAAVは、患者の細胞において形成され得ない。
【0011】
ヒトならびに他の霊長類および哺乳動物に感染する、いくつかのAAV血清型が存在する。8つの主要な血清型(AAV−1〜AAV−8)が同定されており、このうち、2つの血清型が、最近アカゲザルから単離されたものである。非特許文献1。これらの血清型のうち、AAV−2が最もよく特徴付けられており、種々のインビトロアッセイおよびインビボアッセイにおいて、いくつかの細胞株、組織型および器官に導入遺伝子を首尾よく送達するために使用されている。AAVの種々の血清型は、モノクローナル抗体を用いてか、またはヌクレオチド配列分析を用いることによって、互いに区別され得る;例えば、AAV−1、AAV−2、AAV−3およびAAV−6は、ヌクレオチドレベルで82%同一であるが、AAV−4は他の血清型に対して75%〜78%同一である(非特許文献2)。ヌクレオチド配列の有意なバリエーションが、キャプシドタンパク質をコードするAAVゲノムの領域について注目されている。このような可変領域は、種々のAAV血清型のキャプシドタンパク質に対する血清学的反応性における差異の原因となり得る。
【0012】
所定のAAV血清型で最初に処置した後、抗AAVキャプシド中和抗体がしばしば作製され、これが、同じ血清型によるその後の処置を妨害する。例えば、非特許文献3は、抗AAV−2抗体が前から存在するマウスは、組み換え型AAV−2ビリオン中で第IX因子を投与された場合に、第IX因子の導入遺伝子を発現しないことを示し、これは、抗AAV−2抗体がrAAV−2ビリオンの形質導入をブロックしたことを示唆した。非特許文献4は、類似の結果を報告した。他にも、rAAV−2ビリオンの実験動物への再投与の成功は、免疫抑制の後にだけ達成されることが実証された(例えば、非特許文献4、前出を参照のこと)。
【0013】
従って、ヒト遺伝子治療のためにrAAVを用いることは、かなり問題がある。なぜならば、抗AAV抗体は、ヒト集団に蔓延しているからである。種々のAAV血清型によるヒトの感染は、幼児期に生じ、そして、胎内でさえ生じる可能性がある。実際、1つの研究が、一般集団の少なくとも80%が、AAV−2に感染していると推定した(非特許文献5)。抗AAV−2中和抗体は、少なくとも20〜40%のヒトにおいて発見されている。本発明者らの研究は、50人の血友病患者の群において、約40%がAAV−2中和能を有し、これは、1e13ウイルス粒子/ml、または約6e16ウイルス粒子/全血液量を凌ぐことを示した。さらに、高い抗AAV−2力価を有する群の大半はまた、他のAAV血清型(例えば、AAV−1、AAV−3、AAV−4、AAV−5およびAAV−6)に対しても有意な力価を有した。それゆえ、免疫反応性が減少したAAV変異体(例えば、前から存在する抗AAV抗体により中和されない変異体)の同定は、当該分野で優位な進歩である。このようなAAV変異体が、本明細書中に記載される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Gaoら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:11854−11859
【非特許文献2】Russellら(1998)J.Virol.72:309−319
【非特許文献3】Moskalenkoら、J.Virol.(2000)74:1761−1766
【非特許文献4】Halbertら、J.Virol.(1998)72:9795−9805
【非特許文献5】BernsおよびLinden(1995)Bioessays 17:237−245
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本発明は、新規AAV配列(例えば、対応するネイティブな血清型と比較して、減少した免疫反応性を組み換え型AAVビリオンに提供するが、細胞および組織に効率的に形質導入する能力を保持する、変異型AAV配列)の発見に基づく。免疫反応性が減少したrAAVビリオンは、自然感染によってか、または以前の遺伝子治療もしくは核酸免疫処置によってのいずれかで、以前にAAVに曝露されたことがあり、それゆえ、抗AAV抗体を発生している被験体に、異種性の核酸分子(HNA)を送達するために特に有用である。それゆえ、本明細書中に記載されるrAAVビリオンは、以前に種々のAAV血清型のいずれかに曝露されたことがある脊椎動物被験体において、以下にさらに記載されるような、広範な種々の障害を処置または予防するために有用である。その結果、本発明によれば、脊椎動物被験体(例えば、哺乳動物)の細胞または組織への、組み換え型AAVビリオンを用いた、HNAの効率的な送達のための方法、および、この方法において使用する
ためのAAVベクターが提供される。
【0016】
特定の好ましい実施形態において、本発明は、アンンチセンスRNA、リボザイム、またはタンパク質を発現する1つ以上の遺伝子をコードするHNAを送達するための、変更されたキャプシドタンパク質を含有するAAVビリオンの使用を提供し、この使用において、前記アンチセンスRNA、リボザイム、または1つ以上の遺伝子の発現は、哺乳動物被験体において生物学的効果を提供する。1つの実施形態において、HNAを含有するrAAVビリオンは、筋肉内(例えば、心筋、平滑筋および/または骨格筋)に直接注射される。別の実施形態において、HNAを含有するrAAVビリオンは、静脈内、動脈内もしくは他の血管内への注射によってか、または、隔離された肢還流のような技術を用いることによって、血管系へと投与される。
【0017】
さらなる実施形態において、ビリオンは、血液凝固タンパク質をコードする遺伝子を含み、十分な濃度で発現される場合、血液凝固障害に罹患する哺乳動物の血液凝固効率の改善のような治療効果を提供する。この血液凝固障害は、血液を凝固させる器官の能力に悪影響を及ぼす任意の障害であり得る。好ましくは、血液凝固障害は、血友病である。その結果、1つの実施形態において、血液凝固タンパク質をコードする遺伝子は、第VIII因子遺伝子(例えば、ヒト第VIII因子遺伝子)またはその誘導体である。別の実施形態において、血液凝固タンパク質をコードする遺伝子は、ヒト第IX因子(hF.IX)遺伝子のような第IX因子遺伝子である。
【0018】
従って、1つの実施形態において、本発明は、変異型AAVキャプシドタンパク質に関し、この変異型タンパク質は、AAVビリオン中に存在する場合に、対応する野生型ビリオンと比較して、減少した免疫反応性をこのビリオンに与える。この変異は、ネイティブなタンパク質に対して少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失または挿入を含み得る。例えば、1つの置換は、AAVビリオン表面のスパイク領域またはプラトー領域内である。
【0019】
特定の実施形態において、アミノ酸置換は、アミノ酸126、127、128、130、132、134、247、248、315、334、354、357、360、361、365、372、375、377、390、393、394、395、396、407、411、413、418、437、449、450、568、569および571からなる群より選択されるAAV−2 VP2キャプシドの位置に対応する位置に存在する1つ以上のアミノ酸の置換を含む。さらなる実施形態において、これらの位置の1つ以上において天然に存在するアミノ酸は、アラニンで置換される。さらなる実施形態において、このタンパク質は、AAV−2 VP2の360位に見られるアミノ酸に対応する位置に存在するアミノ酸の、ヒスチジンによる置換、および/またはAAV−2 VP2の571位に見られるアミノ酸に対応する位置に存在するアミノ酸の、リジンによる置換を含む。
【0020】
さらなる実施形態において、本発明は、上記の変異型タンパク質のいずれかをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0021】
さらなる実施形態において、本発明は、上記の変異型タンパク質のいずれかを含む組み換え型AAVビリオンに関する。この組み換え型AAVビリオンは、アンチセンスRNAもしくはリボザイムをコードする異種性核酸分子、または治療タンパク質をコードする異種性核酸分子を含み得、この治療タンパク質は、上記タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結されている。
【0022】
なおさらなる実施形態において、本発明は、脊椎動物被験体の細胞または組織に組み換え型AAVビリオンを送達する方法に関する。この方法は、
(a)上記のような組み換え型AAVビリオンを提供する工程;
(b)細胞または組織に組み換え型AAVビリオンを送達し、それによって、この上記タンパク質が治療効果を提供するレベルで発現される、工程
を包含する。
【0023】
特定の実施形態において、細胞または組織は、筋肉細胞または筋肉組織である。この筋肉細胞または筋肉組織は、骨格筋に由来するものであり得る。
【0024】
さらなる実施形態において、組み換え型AAVビリオンは、インビボで細胞または組織に送達される。
【0025】
特定の実施形態において、組み換え型AAVビリオンは、筋肉内注射によって、または血流内(例えば、静脈内または動脈内)に送達される。さらなる実施形態において、組み換え型AAVビリオンは、肝臓または脳に送達される。
【0026】
さらなる実施形態において、組み換え型AAVビリオンは、インビトロで上記細胞または組織に送達される。
【0027】
なおさらなる実施形態において、本発明は、脊椎動物被験体の細胞または組織に組み換え型AAVビリオンを送達する方法に関する。この方法は、
(a)組み換え型AAVビリオンを提供する工程であって、このAAVビリオンは、
(i)AAVビリオン中に存在する場合に、霊長類AAV−2の免疫反応性と比較して、減少した免疫反応性をこのビリオンに与える、非霊長類の哺乳動物アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質;および
(ii)治療タンパク質をコードする異種性核酸分子であって、このタンパク質は、このタンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結されている、異種性核酸分子
を含む、工程;
(b)組み換え型AAVビリオンを細胞または組織に送達し、それによって、上記タンパク質が治療効果を提供するレベルで発現される、工程
を包含する。
【0028】
特定の実施形態において、細胞または組織は、筋肉細胞または筋肉組織であり、例えば、筋肉細胞または筋肉組織は、骨格筋に由来するものである。
【0029】
組み換え型AAVビリオンは、インビボまたはインビトロで上記細胞または組織に送達され、そして、筋肉内注射によってか、または血流内(例えば、静脈内または動脈内)に、被験体に送達され得る。さらなる実施形態において、組み換え型AAVビリオンは、肝臓または脳に送達される。
【0030】
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
アデノ随伴ウイルス(AAV)のビリオン中に存在する場合に、対応する野生型のビリオンと比較して、減少した免疫反応性を該ビリオンに与える、変異型アデノ随伴ウイルスキャプシドタンパク質。
(項目2)
上記変異が、ネイティブなタンパク質に対して、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目3)
上記変異が、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、項目2に記載のタンパク質。
(項目4)
上記少なくとも1つのアミノ酸置換が、上記AAVビリオンの表面のスパイク領域またはプラトー領域にある、項目3に記載のタンパク質。
(項目5)
上記アミノ酸置換が、アミノ酸126、127、128、130、132、134、247、248、315、334、354、357、360、361、365、372、375、377、390、393、394、395、396、407、411、413、418、437、449、450、568、569および571からなる群より選択されるAAV−2 VP2キャプシドの位置に対応する位置に生じる1つ以上のアミノ酸の置換を含む、項目4に記載のタンパク質。
(項目6)
上記位置に天然に存在するアミノ酸が、アラニンで置換されている、項目5に記載のタンパク質。
(項目7)
上記タンパク質が、AAV−2 VP2の360位に見られるアミノ酸に対応する位置に存在するアミノ酸に対するヒスチジンの置換をさらに含む、項目6に記載のタンパク質。
(項目8)
上記タンパク質が、AAV−2 VP2の571位に見られるアミノ酸に対応する位置に存在するアミノ酸に対するリジンの置換を含む、項目5〜7のいずれかに記載のタンパク質。
(項目9)
項目1〜8のいずれかに記載の変異型タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
(項目10)
項目1〜8のいずれかに記載の変異型タンパク質を含む、組換え型AAVビリオン。
(項目11)
上記ビリオンが、アンチセンスRNAまたはリボザイムをコードする異種性核酸分子を含む、項目10に記載の組み換え型AAVビリオン。
(項目12)
上記ビリオンが、治療タンパク質をコードする異種性核酸分子を含み、該タンパク質は、該タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結されている、項目10に記載の組み換え型AAVビリオン。
(項目13)
脊椎動物被験体の細胞または組織に異種性核酸分子を送達するための、項目11または12のいずれかに記載の組み換え型AAVビリオンの使用であって、該使用により、該異種性核酸分子によりコードされるタンパク質が、治療効果を提供するレベルで発現される、使用。
(項目14)
上記細胞または組織が、筋肉細胞または筋肉組織である、項目13に記載の使用。
(項目15)
上記筋肉細胞または筋肉組織が、骨格筋由来である、項目14に記載の使用。
(項目16)
上記組み換え型AAVビリオンが、インビボで上記細胞または組織に送達される、項目13に記載の使用。
(項目17)
上記組み換え型AAVビリオンが、筋肉内注射により送達される、項目16に記載の使用。
(項目18)
上記組み換え型AAVビリオンが、インビトロで上記細胞または組織に送達される、項目13に記載の使用。
(項目19)
上記組み換え型AAVビリオンが、血流内に送達される、項目13に記載の使用。
(項目20)
上記組み換え型AAVビリオンが、静脈内送達される、項目19に記載の使用。
(項目21)
上記組換え型AAVビリオンが、動脈内送達される、項目19に記載の使用。
(項目22)
上記組み換え型AAVビリオンが、肝臓に送達される、項目13に記載の使用。
(項目23)
上記組み換え型AAVビリオンが、脳に送達される、項目13に記載の使用。
(項目24)
組み換え型AAVビリオンを、脊椎動物被験体の細胞または組織に送達する方法であって、該方法は、
(a)項目12に記載の組み換え型AAVビリオンを提供する工程;
(b)該組み換え型AAVビリオンを該細胞または組織に送達し、それによって、上記タンパク質が、治療効果を提供するレベルで発現される、工程
を包含する、方法。
(項目25)
脊椎動物被験体の細胞または組織にタンパク質をコードする異種性核酸を送達するための組み換え型アデノ随伴ウイルス(AAV)ビリオンの使用であって、該使用により、該タンパク質が治療効果を提供するレベルで発現され、該使用において、該組み換え型AAVビリオンは、
(i)AAVビリオン中に存在する場合に、霊長類のAAV−2の免疫反応性と比較して、減少した免疫反応性を該ビリオンに与える、非霊長類の哺乳動物AAVキャプシドタンパク質;および
(ii)治療タンパク質をコードし、該タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結された、異種性核酸分子
を含む、使用。
(項目26)
上記細胞または組織が、筋肉細胞または筋肉組織である、項目25に記載の使用。
(項目27)
上記筋肉細胞または筋肉組織が、骨格筋由来である、項目26に記載の方法。
(項目28)
上記組み換え型AAVビリオンが、インビボで上記細胞または組織に送達される、項目25に記載の使用。
(項目29)
上記組み換え型AAVビリオンが、筋肉内注射により送達される、項目26に記載の方法。
(項目30)
上記組み換え型AAVビリオンが、インビトロで上記細胞または組織に送達される、項目25に記載の使用。
(項目31)
上記組み換え型AAVビリオンが、血流内に送達される、項目25に記載の使用。
(項目32)
上記組み換え型AAVビリオンが、静脈内送達される、項目31に記載の使用。
(項目33)
上記組み換え型AAVが、動脈内送達される、項目31に記載の方法。
(項目34)
上記組み換え型AAVビリオンが、肝臓に送達される、項目25に記載の使用。
(項目35)
上記組み換え型AAVビリオンが、脳に送達される、項目25に記載の使用。
(項目36)
脊椎動物被験体の細胞または組織に組み換え型AAVビリオンを送達する方法であって、該方法は、
(a)組み換え型AAVビリオンを提供する工程であって、該AAVビリオンは、
(i)AAVビリオン中に存在する場合に、霊長類AAV−2の免疫反応性と比較して、減少した免疫反応性を該ビリオンに与える、非霊長類の哺乳動物アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質;および
(ii)治療タンパク質をコードする異種性核酸分子であって、該タンパク質は、該タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結されている、異種性核酸分子
を含む、工程;
(b)該組み換え型AAVビリオンを該細胞または組織に送達し、それによって、該タンパク質が治療効果を提供するレベルで発現される、工程
を包含する、方法。
本発明のこれらおよび他の実施形態は、本明細書中の開示を考慮すれば、当業者に容易に想到する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、全ウイルス表面上のAAV−2の非対称性構造単位(白三角)の位置を示す(Xieら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2002)99:10405−10410の図3aから取った)。AAVビリオン1個につき60の同一な非対称性構造単位が存在する。各AAV−2カプソメアにおいて、合計735のうちの少なくとも145アミノ酸が、程度の差はあれ、表面上で露出している。
【図2】図2は、AAV−2構造の非対称性単位(黒三角)内で、実施例に記載されるように変異したいくつかのアミノ酸の位置を示す。変異したアミノ酸を、黒色空間充填モデル(black space−filling model)として示すが、変異していないアミノ酸は、白い棒状モデル(white stick model)として示す。主要な表面特徴(スパイク、シリンダー、プラトー、キャニオン)の位置を示し、これらの特徴のおよその境界を、細い円形の黒線で示す。抗体結合に比較的近づきにくいと予測される「キャニオン」領域は、スパイクと、シリンダーとプラトーとの間の領域に位置する。数字2、3および5はそれぞれ、2倍対称軸、3倍対称軸および5倍対称軸を表す。
【図3】図3は、インビトロ形質導入に対して10倍を超える効果を有する変異の位置を示す。変異は、黒色空間充填のアミノ酸に位置し、野生型の形質導入の10%未満であった。数字2、3および5はそれぞれ、2倍対称軸、3倍対称軸および5倍対称軸を表す。
【図4】図4は、インビトロ形質導入に対して、10倍未満の効果を有する変異の位置を示す。変異は、黒色空間充填アミノ酸に位置し、野生型の形質導入の10%未満であった。数字2、3および5はそれぞれ、2倍対称軸、3倍対称軸および5倍対称軸を表す。2倍対称軸にかかる2つのデッドゾーンのおよその境界を示す。
【図5】図5は、ヘパリン結合を欠失したAAV−2キャプシド変異のいくつかの位置を示す。黒いアミノ酸は、本明細書において同定されたヘパリン欠損変異を示す。空間充填モデルとして示した黒いアミノ酸(347、350、356、375、395、448、451)は、表面上にある。空間充填モデルとして示した灰色のアミノ酸(495、592)は、表面の直ぐ下にある。数字2、3および5はそれぞれ、2倍対称軸、3倍対称軸および5倍対称軸を表す。ヘパリン結合に対して100倍以上の効果を有する変異を、円で囲う。
【図6】図6は、個々に変異している場合に、マウスモノクローナル抗体による中和に対する抵抗性を与える、AAV−2キャプシドの表面上のアミノ酸のいくつかの位置(黒色空間充填モデル)を示す。長方形のボックスは、抗体結合部位のおよそのサイズ(25Å×35Å)を表す。数字2、3および5はそれぞれ、2倍対称軸、3倍対称軸および5倍対称軸を表す。
【図7】図7は、複数の抗ヒト血清による中和に対する抵抗性を与える、AAV−2キャプシドの表面上のアミノ酸のいくつかの位置(黒色空間充填モデル)を示す。長方形のボックスは、抗体結合部位のおよそのサイズ(25Å×35Å)を表す。数字2、3および5はそれぞれ、2倍対称軸、3倍対称軸および5倍対称軸を表す。
【図8】図8は、野生型キャプシドを有するAAV−2と比較した、4つのAAV−2キャプシド変異のマウスモノクローナル抗体力価特性を示す。
【図9】図9は、AAV−2 VP2のアミノ酸配列(配列番号12)を示す。
【図10】図10は、AAV−2 VP1のアミノ酸配列(配列番号13)を示す。
【図11】図11は、AAV−2キャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3の相対位置を示す。図に示されるように、VP1、VP2およびVP3は、VP3を構成する、同じ533C末端アミノ酸を共有する。図に示されるように、本明細書中に記載される全てのキャプシド変異は、共有領域内にある。
【図12A】図12A〜12Bは、霊長類AAV−5からのAAV VP1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号14)およびヤギAAVからのAAV VP1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号15)の比較を示す。番号付けは、AAV−5全長配列に関するものである。
【図12B】図12A〜12Bは、霊長類AAV−5からのAAV VP1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号14)およびヤギAAVからのAAV VP1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号15)の比較を示す。番号付けは、AAV−5全長配列に関するものである。
【図13】図13は、霊長類AAV−5からのVP1のアミノ酸配列(配列番号16)およびヤギAAVからのVP1のアミノ酸配列(配列番号17)の比較を示す。アミノ酸の相違に影をつける。保存的変化を、明るい灰色で示し;非保存的変化を、暗い灰色で示す。
【図14A】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14B】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14C】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14D】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14E】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14F】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14G】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図14H】図14A〜14Hは、以下のような抗体中和に対して感受性もしくは抵抗性のAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図15】図15(配列番号16および配列番号17)は、AAVキャプシドの表面に関して、AAV−5とヤギAAVとの間のアミノ酸相違の位置を示す。
【図16】図16は、AAV−2キャプシドの表面構造に基づく、AAV−5とヤギAAVとの間で異なる表面アミノ酸の予想位置を示す。3つの黒三角は、表面上に位置する可能性のある、AAV−2に関するヤギAAV内の挿入を表す。
【図17】図17は、種々のrAAV hFIXビリオンの筋肉内投与後の、IVIG処置SCIDマウスの筋肉の形質導入を示す。
【図18】図18は、種々のrAAV hFIXビリオンの尾静脈投与後の、IVIG処置SCIDマウスの肝臓の形質導入を示す。
【図19】図19は、組み換え型ヤギAAVをコードする組み換え型ヤギAAVベクターの静脈内投与後の、ヒト第IX因子(hFIX)の体内分布を示す。
【図20】図20A(配列番号25)および20B(配列番号26)は、それぞれ、ウシAAV VP1のAAV−C1からのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図21A】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21B】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21C】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21D】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21E】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21F】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21G】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【図21H】図21A〜21Hは、以下のような抗体中和に感受性もしくは抵抗性であるAAVからのVP1のアミノ酸配列の比較を示す:霊長類AAV−2(配列番号13)、霊長類AAV−3B(配列番号18)、霊長類AAV−6(配列番号19)、霊長類AAV−1(配列番号20)、霊長類AAV−8(配列番号21)、霊長類AAV−4(配列番号22)、ウシ(雌牛)AAV(「AAV−C1」(配列番号26)、霊長類AAV−5(配列番号16)およびヤギAAV(「AAV−C1」配列番号17)。パルボウイルスの列:*、ほぼ全てのパルボウイルスで保存されている。中和の列:#、ヒト血清による中和に対して抵抗性であるものと同定されたAAV−2キャプシドの単一の変異の位置。アクセス可能性の列:B、アミノ酸が内側表面と外側表面との間に埋もれている;I、アミノ酸が内側表面上に見られる;O、アミノ酸が外側表面上に見られる。表面特徴の列:C、シリンダー;P、プラトー;S、スパイク;Y、キャニオン。DNAの列:B、塩基と接触可能;D、DNA結合に必要とされる可能性があるが、直接はDNAと接触し得ない;P、リン酸基と接触可能;R、リボースと接触可能。その他の列:A、結合およびマウスモノクローナル抗体A20による中和を減少する単一の変異の位置;H、AAV−2内のヘパリン接触;M、Mg2+と接触可能;P、ホスホリパーゼA2ドメイン。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、他に示されない限り、当該分野の技術範囲内の化学、生化学、組換えDNA技術および免疫学の従来の方法を使用する。このような技術は、文献に完全に説明されている。例えば、Fundamental Virology,第2版,vol.I&II(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編);Handbook of Experimental Immunology,Vols.I〜IV(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編,Blackwell Scientific Publications);T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,最新版);Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,1989);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan編,Academic Press,Inc.)を参照のこと。
【0033】
(1.定義)
本発明を記載する際に、以下の用語が使用され、これらは、以下に示されるように規定されることが意図される。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明確にそうでないと指示しない限り、複数の参照を含むことに注意しなければならない。従って、例えば、「ポリペプチド(a polypeptide)」に対する参照は、2つ以上のポリペプチドの混合物を含む、などである。
【0035】
以下のアミノ酸の略称が、本文全体において使用される:
アラニン :Ala(A) アルギニン :Arg(R)
アスパラギン:Asn(N) アスパラギン酸 :Asp(D)
システイン :Cys(C) グルタミン :Gln(Q)
グルタミン酸:Glu(E) グリシン :Gly(G)
ヒスチジン :His(H) イソロイシン :Ile(I)
ロイシン :Leu(L) リジン :Lys(K)
メチオニン :Met(M) フェニルアラニン:Phe(F)
プロリン :Pro(P) セリン :Ser(S)
スレオニン :Thr(T) トリプトファン :Trp(W)
チロシン :Tyr(Y) バリン :Val(V)。
【0036】
「ベクター」とは、適切な制御エレメントと結合した場合に複製可能であり、かつ細胞間で遺伝子配列を移し得る、任意の遺伝的エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなど)を意味する。従って、この用語は、クローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびに、ウイルスベクターを含む。
【0037】
「AAVベクター」とは、任意の動物種から単離された任意のアデノ随伴ウイルス血清型に由来するベクターを意味し、これらとしては、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−6、AAV−7、AAV−8、AAV−G1およびAAV−C1が挙げられるがこれらに限定されない。AAVベクターは、全体もしくは一部が欠失した、1つ以上のAAVの野生型遺伝子(好ましくは、rep遺伝子および/またはcap遺伝子)を有し得るが、機能的な隣接ITR配列は保持している。機能的ITR配列は、AAVビリオンのレスキュー、複製およびパッケージングに必須である。従って、AAVベクターは、本明細書において、ウイルスの複製およびパッケージングにシスで必要とされるこれらの配列(例えば、機能的ITR)を少なくとも含むと規定される。ITRは、野生型のヌクレオチド配列である必要はなく、これらの配列が、機能的なレスキュー、複製およびパッケージングを提供する限りは、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって、変更され得る。
【0038】
「AAVヘルパー機能」は、発現されて、AAV遺伝子産物を提供し、次いで、生産的なAAV複製にトランスで機能し得る、AAV由来のコード配列をいう。従って、AAVヘルパー機能は、主要なAAVオープンリーディングフレーム(ORF)である、repおよびcapの両方を含む。Rep発現産物は、多くの機能を有することが示されており、これらの中でもとりわけ、DNA複製のAAV起点の認識、結合およびニック;DNAヘリカーゼ活性;ならびにAAV(または他の異種性)プロモーターからの転写の調節が挙げられる。Cap発現産物は、必須のパッケージング機能を供給する。AAVヘルパー機能は、本明細書中において、AAVベクターから欠けているトランスのAAV機能を補完するために使用される。
【0039】
用語「AAVヘルパー構築物」は、一般に、目的のヌクレオチド配列の送達のための形質導入ベクターを生成するために使用されるAAVベクターから欠けているAAV機能を提供するヌクレオチド配列を含む、核酸分子をいう。AAVヘルパー構築物は、一般に、AAVのrep遺伝子および/またはcap遺伝子の一過性の発現を提供して、溶解性のAAV複製に必須の欠けているAAV機能を補完するために使用される;しかし、ヘルパー構築物は、AAV ITRを欠き、そして、それ自体では複製もパッケージングもできない。AAVヘルパー構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、またはビリオンの形態であり得る。Rep発現産物および/またはCap発現産物をコードする多数のAAVヘルパー構築物およびベクターが記載されている。例えば、米国特許第6,001,650号、同第5,139,941号および同第6,376,237号;Samulskiら(1989)J.Virol.63:3822−3828;ならびにMcCartyら(1991)J.Virol.65:2936−2945を参照のこと。
【0040】
用語「補助機能」は、非AAV由来のウイルスおよび/または細胞の機能をいい、この機能に、AAVの複製が依存している。従って、この用語は、AAVの複製に必要とされ得るタンパク質およびRNAを捕らえており、このようなタンパク質およびRNAとしては、AAV遺伝子の転写、段階特異的なAAV mRNAのスプライシング、AAV DNAの複製、Cap発現産物の合成、およびAAVキャプシドの組み立ての活性化に関与する部分が挙げられる。ウイルスベースの補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純疱疹ウイルス1型以外)およびワクシニアウイルスのような、公知のヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。
【0041】
用語「補助機能ベクター」は、一般に、補助機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸分子をいう。補助機能ベクターは、適切な宿主細胞内にトランスフェクトされ得、ここで、このベクターは、AAVビリオン産物を宿主細胞内で支持し得るものである。用語から明白に除外されるのは、感染性ウイルス粒子である。なぜならば、アデノウイルス粒子、ヘルペスウイルス粒子またはワクシニアウイルス粒子のような感染性ウイルス粒子は自然状態で存在するからである。従って、補助機能ベクターは、プラスミド、ファージ、トランスポゾンまたはコスミドの形態であり得る。
【0042】
アデノウイルス遺伝子の完全な相補体は、補助ヘルパー機能には必要ではないことが実証されている。特に、DNA複製および後期の遺伝子合成ができないアデノウイルス変異体は、AAV複製に許容されることが示されている。Itoら(1970)J.Gen.Virol.9:243;Ishibashiら(1971)Virology 45:317。同様に、E2B領域およびE3領域内の変異は、AAV複製を支持することが示されており、これは、E2B領域およびE3領域が、補助機能を提供することに関与しない可能性を示す。Carterら(1983)Virology 126:505。しかし、E1領域に障害があるか、またはE4領域を欠失したアデノウイルスは、AAV複製を支持できない。従って、E1A領域およびE4領域は、直接的または間接的のいずれかで、AAV複製に必要とされているようである。Laughlinら(1982)J.Virol.41:868;Janikら(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1925;Carterら(1983)Virology 126:505。他の特徴付けられたAd変異体としては以下が挙げられる:E1B(Laughlinら(1982),前出;Janikら(1981),前出;Ostroveら(1980)Virology 104:502);E2A(Handaら(1975)J.Gen.Virol.29:239;Straussら(1976)J.Virol.17:140;Myersら(1980)J.Virol.35:665;Jayら(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2927;Myersら(1981)J.Biol.Chem.256:567);E2B(Carter,Adeno−Associated Virus Helper Functions,I
CRC Handbook of Parvoviruses(P.Tijssen編,1990));E3(Carterら(1983),前出);およびE4(Carterら(1983),前出;Carter(1995))。E1Bコード領域に変異を有するアデノウイルスにより提供される補助機能の研究は、相反する結果を提供しているが、Samulskiら(1988)J.Virol.62:206−210は、最近、E1B55kはAAVビリオン産生に必要とされるが、E1B19kは必要とされないことを報告した。さらに、国際公報WO 97/17458およびMatshushitaら(1998)Gene Therapy 5:938−945は、種々のAd遺伝子をコードする補助機能ベクターを記載する。特に好ましい補助機能ベクターは、アデノウイルスのVA RNAコード領域、アデノウイルスのE4 ORF6コード領域、アデノウイルスのE2A 72kDコード領域、アデノウイルスのE1Aコード領域、およびインタクトなE1B55kコード領域を欠くアデノウイルスのE1B領域を含む。このようなベクターは、国際公報WO 01/83797に記載される。
【0043】
「組み換え型ウイルス」とは、例えば、異種性の核酸構築物を粒子に付加または挿入することによって、遺伝的に変更されたウイルスを意味する。
【0044】
「AAVビリオン」とは、野生型(wt)AAVウイルス粒子(AAVキャプシドタンパク質被膜に結合した直線状の単鎖AAV核酸ゲノムを含む)のような完全なウイルス粒子を意味する。この点に関して、いずれかの相補的なセンス鎖(例えば、「センス」または「アンチセンス」)の単鎖AAV核酸分子が、AAVビリオンの任意の1つにパッケージングされ得、そして、両方の鎖が同等に感染性である。
【0045】
「組み換え型AAVビリオン」または「rAAVビリオン」は、本明細書において、両側にAAV ITRが隣接している、目的の異種性ヌクレオチド配列をカプセル化するAAVタンパク質の殻を含む、感染性の複製欠損型ウイルスとして定義される。rAAVビリオンは、AAVベクター、AAVヘルパー機能、およびその中に導入された補助機能を有する適切な宿主細胞において産生される。この様式で、宿主細胞は、AAVベクター(目的の組み換え型ヌクレオチド配列を含む)を、その後の遺伝子送達のために、感染性の組み換え型ビリオン粒子内にパッケージングするために必要とされるAAVポリペプチドをコードできるようになる。
【0046】
「ヤギ組み換え型AAVビリオン」または「ヤギrAAVビリオン」は、ヤギキャプシドタンパク質(例えば、ヤギVP1)をコードする遺伝子を含むAAVヘルパー機能を用いて産生された、上記のようなrAAVビリオンである。
【0047】
「ウシ組み換え型AAVビリオン」または「ウシrAAVビリオン」は、ウシキャプシドタンパク質(例えば、ウシVP1)をコードする遺伝子を含むAAVヘルパー機能を用いて産生された、上記のようなrAAVビリオンである。
【0048】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外来DNAの取込みをいうために使用し、そして、外来性のDNAが細胞膜の内部に導入された場合、細胞は、「トランスフェクト」されている。多数のトランスフェクション技術が、当該分野で一般的に公知である。例えば、Grahamら(1973)Virology,52:456,Sambrookら(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York,Davisら(1986)Basic Methods in Molecular Biology,ElsevierおよびChuら(1981)Gene 13:197を参照のこと。このような技術は、1つ以上の外来性DNA成分(例えば、ヌクレオチド組込みベクターおよび他の核酸分子)を、適切な宿主細胞内に導入するために使用され得る。
【0049】
用語「宿主細胞」は、例えば、AAVヘルパー構築物、AAVベクタープラスミド、補助機能ベクターまたは他の移送DNAのレシピエントとして使用され得るか、または既に使用されている、微生物細胞、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞を意味する。この用語は、トランスフェクトされた最初の細胞の子孫を含む。従って、本明細書中で使用される「宿主細胞」は、一般に、外来性DNA配列でトランスフェクトされた細胞をいう。天然の変異、偶発的な変異、または意図的な変異が原因で、単一の親細胞の子孫が、形態学的もしくはゲノム的に完全に同一であるか、または、最初の親と全てのDNAが相補的である必要はない。
【0050】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞株」は、インビトロで連続的または持続的に増殖および分裂が可能な細胞の集団をいう。しばしば、細胞株は、単一の前駆細胞に由来するクローン性の集団である。さらに、このようなクローン性の集団の保存または移動の間に、自然発生的な変化または誘導的な変化が、核型に生じ得ることが、当該分野で公知である。従って、参照される細胞株に由来する細胞は、祖先の細胞もしくは培養物と精密に同一である必要はなく、そして、参照される細胞株は、このような変異体を含む。
【0051】
「相同性」は、2つのポリヌクレオチド部分間または2つのポリペプチド部分間の%同一性をいう。2つのDNA配列または2つのポリペプチド配列は、これらの配列が、これらの分子の規定される長さにわたって、少なくとも約50%、好ましくは、少なくとも約75%、より好ましくは、少なくとも約80%〜85%、好ましくは、少なくとも約90%、そして最も好ましくは、少なくとも約95%〜98%の配列同一性を示す場合に、互いに「実質的に相同」である。本明細書中で使用される場合、実質的に相同とは、また、特定のDNA配列またはポリペプチド配列に対して完全な同一性を示す配列をいう。
【0052】
一般に、「同一性」とは、それぞれ、2つのポリヌクレオチド配列または2つのポリペプチド配列の、正確なヌクレオチド−ヌクレオチドの対応、またはアミノ酸−アミノ酸の対応をいう。%同一性は、配列を整列させ、2つの整列した配列の間の正確なマッチ数を数え、短い方の配列の長さで割り、そして、結果に100を掛けることにより、2つの分子間の配列情報の直接比較によって決定され得る。ALIGN(Dayhoff,M.O.Atlas of Protein Sequence and Structure
M.O.Dayhoff編,補遺5.3:353−358,National Biomedical Research Foundation,Washington,DC)のような容易に利用可能なコンピュータプログラムを用いると、分析に役立ち得る。ALIGNは、ペプチド分析に、SmithおよびWaterman(Advance in Appl.Math.2:482−489,1981)の局部的相同性アルゴリズムを適合する。ヌクレオチド配列同一性を決定するためのプログラムは、Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8(Genetics Computer Group,Madison,WIから入手可能)において入手可能であり、例えば、BESTFITプログラム、FASTAプログラムおよびGAPプログラム(これらはまた、SmithおよびWatermanのアルゴリズムに依存する)が挙げられる。これらのプログラムは、製造業者により推奨され、そして、上で参照されたWisconsin Sequence Analysis Packageに記載される、デフォルトパラメーターを用いて、容易に利用される。例えば、特定のヌクレオチド配列の参照配列に対する%同一性は、デフォルトのスコア付け表および6ヌクレオチド位置のギャップペナルティを用い、SmithおよびWatermanの相同性アルゴリズムを用いて決定され得る。
【0053】
本発明の文脈において、%同一性を確立する別の方法は、John F.CollinsおよびShane S.Sturrokによって開発され、IntelliGenetics,Inc.(Mountain View,CA)によって配布されている、University of Edinburghに版権がある、MPSRCHパッケージプログラムを使用することである。このパッケージ一式から、Smith−Watermanアルゴリズムが採用され得る(ここで、スコア付け表について、デフォルトパラメーター(例えば、12のギャップオープンペナルティ、1のギャップ拡張ペナルティ、および6のギャップ)が使用される)。作成されたデータから、「マッチ」値が「配列同一性」を反映する。配列間の%同一性または%類似性を計算するための他の適切なプログラムは、一般に、当該分野で公知であり、例えば、別のアライメントプログラムは、デフォルトパラメーターと共に使用される、BLASTである。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメーターを用いて使用され得る:遺伝コード=標準;フィルタ=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリクス=BLOSUM62;記述=50配列;ソート=ハイスコア;データベース=冗長性なし、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、当該分野で周知である。
【0054】
あるいは、相同性は、相同な領域の間で安定な二重鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、その後の、単鎖特異的ヌクレアーゼを用いた消化、および消化したフラグメントのサイズ決定によって、決定され得る。実質的に相同なDNA配列は、例えば、特定の系について記載されたようなストリンジェントな条件下での、サザンハイブリダイゼーション実験において同定され得る。適切なハイブリダイゼーション条件を規定することは、当該分野の技術範囲内である。例えば、Sambrookら,前出;DNA Cloning,前出;Nucleic Acid Hybridization,前出を参照のこと。
【0055】
用語「縮重改変体(degenerate variant)」は、その縮重改変体が由来するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、その核酸配列中に変更を含むポリヌクレオチドを意図する。
【0056】
「コード配列」または選択されたポリペプチドを「コードする」配列は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合に、インビボで、ポリペプチドに転写され(DNAの場合)、翻訳され(mRNAの場合)る核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンにより決定される。転写終止配列は、コード配列の3’に位置し得る。
【0057】
用語「異種性」は、コード配列および制御配列のような核酸配列に関する場合、通常は一緒に結合せず、そして/または通常は特定の細胞に結合しない配列を意味する。従って、核酸構築物またはベクターの「異種性」領域は、自然状態では、他の分子と結合して見られない、別の核酸分子内にあるか、またはこの別の核酸分子に結合した、核酸のセグメントである。例えば、核酸構築物の異種性領域は、自然状態ではコード配列と結合して見られない配列により隣接されるコード配列を含み得る。異種性のコード配列の別の例は、コード配列自体が自然状態で見られない構築物(例えば、ネイティブな遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。同様に、通常は細胞内に存在しない構築物を用いて形質転換された細胞は、本発明の目的について、異種性であると考えられる。本明細書中で使用される場合、対立遺伝子の変異、または天然に生じる変異の事象は、異種性のDNAを生じない。
【0058】
「核酸」配列は、DNA配列またはRNA配列をいう。この用語は、DNAおよびRNAの任意の公知の塩基アナログを含む配列を捕らえ、例えば、以下が挙げられるがこれらに限定されない:4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシル−メチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチル−アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュード−ウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチル−グアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチル−シトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシ−アミノ−メチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン(queosine)、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン(oxybutoxosine)、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリン。
【0059】
用語DNA「制御配列」とは、まとめて、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終止配列、上流の調節ドメイン、複製起点、内部リボソーム進入部位(「IRES」)、エンハンサーなどをいい、これは、まとめて、レシピエント細胞におけるコード配列の複製、転写および翻訳を提供する。選択されたコード配列が、適切な宿主細胞において複製、転写、そして翻訳され得る限りは、これらの制御配列の全てが、常に存在する必要はない。
【0060】
用語「プロモーター」は、本明細書において、DNA調節配列を含むヌクレオチド領域をいうために、その通常の意味で使用される。ここで、この調節配列は、RNAポリメラーゼに結合して、下流(3’−方向)コード配列の転写を開始し得る遺伝子に由来する。転写プロモーターは、「誘導性プロモーター」(このプロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、補因子、調節性タンパク質などによって誘導される)、「抑制性プロモーター」(このプロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、補因子、調節性タンパク質などによって誘導される)および「構成的プロモーター」を含み得る。
【0061】
「作動可能に連結している」とは、構成要素が、その通常の機能を果たすように構成されている、エレメントの配列をいう。従って、コード配列に作動可能に連結された制御配列は、このコード配列の発現を達成し得る。制御配列は、その発現を命令するように機能しさえすれば、コード配列と連続している必要はない。従って、例えば、まだ翻訳されていないが、転写された介在配列が、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、このプロモーター配列は、依然として、コード配列に「作動可能に連結している」と考えられ得る。
【0062】
「単離された」とは、ヌクレオチド配列に関する場合、指示された分子が同じ型の他の生物学的高分子が実質的にない状態で存在することを意味する。従って、「特定のポリヌクレオチドをコードする単離された核酸分子」とは、目的のポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子をいうが、この分子は、組成物の基本特性には、悪影響を及ぼさない、いくつかの追加の塩基または部分を含み得る。
【0063】
本願全体を通じて、特定の拡散分子中のヌクレオチド配列の相対的な位置を記載する目的で、例えば、特定のヌクレオチド配列が、別の配列に対して「上流」、「下流」、「3’」または「5’」に場所を定めされると記載される場合、それは、当該分野で慣習的であるといわれる、DNA分子の「センス」鎖または「コード」鎖における配列の位置であると理解されるべきである。
【0064】
所定のAAVポリペプチドの「機能的ホモログ」または「機能的等価物」は、ネイティブなポリペプチド配列に由来する分子、ならびに、所望の結果を達成するように、参照AAV分子に類似の様式で機能する、組換え的に産生されたか、もしくは、化学的に合成されたポリペプチドを含む。従って、AAV Rep68またはRep78の機能的ホモログは、その組込み活性が残る限りは、これらのポリペプチドの誘導体およびアナログ(内部に、またはそのアミノ末端もしくはカルボキシ末端に生じる、任意の単一もしくは複数のアミノ酸の付加、置換および/または欠失を含む)を包含する。
【0065】
「効率的な形質導入が可能」とは、本発明の変異型構築物が、対応する野生型配列を用いて得られるトランスフェクション効率の1〜10%の範囲内のレベルで、インビトロおよび/またはインビボにて、細胞をトランスフェクトする能力を保持するrAAVベクターまたはビリオンを提供することを意味する。好ましくは、この変異体は、対応する野生型配列の10〜100%の範囲内のレベルで、細胞または組織にトランスフェクトする能力を保持する。変異型配列は、細胞および組織にトランスフェクトする能力が増強された構築物をも提供し得る。形質導入効率は、実施例において記載されるインビトロ形質導入アッセイを含む、当該分野で周知の技術を用いて、容易に決定される。
【0066】
「減少した免疫反応性」とは、変異型AAV構築物が、対応する野生型AAV構築物と比較して低減したレベルで抗AAV抗体と反応することを意味する。用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合、ポリクローナル調製物およびモノクローナル調製物の両方、ならびに、以下のものから得られた抗体を含む:ハイブリッド抗体分子(キメラ抗体分子)(例えば、Winterら(1991)Nature 349:293−299;および米国特許第4,816,567号を参照のこと);F(ab’)2フラグメントおよびF(ab)フラグメント;Fv分子(非共有結合性のヘテロ二量体、例えば、Inbarら(1972)Proc Natl Acad Sci USA 69:2659−2662;およびEhrlichら(1980)Biochem 19:4091−4096を参照のこと);単鎖Fv分子(sFv)(例えば、Hustonら(1988)Proc Natl Acad Sci USA 85:5879−5883を参照のこと);二量体および三量体の抗体フラグメント構築物;ミニボディ(minibody)(例えば、Packら(1992)Biochem 31:1579−1584;Cumberら(1992)J Immunology 149B:120−126を参照のこと);ヒト化抗体分子(例えば、Riechmannら(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyanら(1988)Science 239:1534−1536;および英国特許公開番号GB 2,276,169(1994年9月21日公開)を参照のこと);ならびに、このようなフラグメントが、親抗体分子の免疫学的結合特性を保持するような分子から得られた、任意の機能的フラグメント。
【0067】
本発明の変異型構築物は、対応する野生型AAV構築物に対して作製された上記の型の抗体のいずれかを用いる、インビトロおよび/またはインビボのアッセイを使用して決定すると、減少した免疫反応性を有し得る。好ましくは、変異型AAV構築物は、対応する野生型構築物よりも少なくとも1.5倍低いレベル、好ましくは、少なくとも2倍低いレベル(例えば、少なくとも5〜10倍低いレベル)、さらに、対応する野生型構築物よりも、少なくとも50〜100倍、もしくは少なくとも1000倍低いレベルで、このような抗体と反応する。
【0068】
好ましくは、変異型AAV構築物は、抗AAV中和抗体と、低減したレベルで反応する。例えば、変異型構築物は、本明細書中に記載されるインビトロ中和アッセイのような標準的なアッセイを用いて決定される場合、対応する野生型よりも、少なくとも1.5倍、中和により抵抗性であり、好ましくは、少なくとも2倍、中和により抵抗性であり、なおより好ましくは、少なくとも5〜10倍以上(例えば、少なくとも50〜100倍以上)、対応する野生型よりも、中和により抵抗性である。
【0069】
用語「被験体」、「個体」または「患者」は、本明細書中で交換可能に使用され、そして、脊椎動物、好ましくは、哺乳動物をいう。哺乳動物としては、マウス、げっ歯類、サル、ヒト、家畜動物、競技用動物およびペットが挙げられるがこれらに限定されない。
【0070】
用語組成物または薬剤の「有効量」または「治療有効量」とは、本明細書中で提供される場合、無毒性であるが、所望の応答を提供するのに十分な組成物または薬剤の量をいう。必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢および全身状態、処置される状態の重篤度、ならびに、目的の特定の高分子、投与様式などに依存して、被験体ごとで変動する。任意の個々の場合の適切な「有効」量は、慣用的な実験を用いて、当業者により決定され得る。
【0071】
疾患を「処置すること」または疾患の「処置」とは、以下が挙げられる:(1)疾患の予防、すなわち、疾患に曝露され得るか、もしくは、疾患に罹りやすいが、まだ疾患を経験していないか、もしくは疾患の症状を呈していない被験体において、疾患の臨床症状を発症させないようにすること、(2)疾患の阻害、すなわち、疾患またはその臨床症状の発症を停止すること、あるいは(3)疾患の軽減、すなわち、疾患またはその臨床症状を退行させること。
【0072】
(2.発明を実施する様式)
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、特定の処方またはプロセスのパラメーターに限定されず、従って、これらは当然ながら変動し得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される用語法は、本発明の特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、制限することは意図されないこともまた、理解されるべきである。
【0073】
本明細書中に記載されるものと類似もしくは等価な多数の方法および材料が、本発明の実施において使用され得るが、好ましい材料および方法は、本明細書中に記載される。
【0074】
本発明の中心は、対応する野生型ビリオンと比較して、減少した免疫反応性を示すrAAVビリオンの産生に有用な、新規変異型AAV配列の発見である。さらに、この変異は、好ましくは、対応する野生型の他の特性(例えば、DNAパッケージング、レセプター結合、クロマトグラフィーによる精製、ならびにインビトロおよびインビボで細胞に形質導入する能力)を保持する。好ましくは、このような特性は、対応するAAV野生型について測定された値の少なくとも1〜10%の範囲内である。より好ましくは、このような特性は、対応するAAV野生型について測定された値の10〜100%の範囲内である。最も好ましくは、このような特性は、対応するAAV野生型について測定された値の少なくとも100%以上である。従って、例えば、この変異がAAV−2キャプシド配列内にある場合、これらの特性の比較は、変異型キャプシド配列を有するAAV−2ビリオンと、AAV−2野生型キャプシドタンパク質配列を除いて変異型ビリオンと同じ構成要素を有するAAV−2ビリオンとの間である。
【0075】
上で説明したように、本発明のAAV変異体は、好ましくは、変異型ビリオンが投与される宿主に存在し得る中和抗体に対して、減少した免疫反応性を示す。このように、AAVに自然状態で感染した(すなわち、以前の自然感染によるもの)か、または、AAVに人工的に感染した(すなわち、以前の遺伝子治療または核酸免疫によるもの)被験体の細胞および組織は、新規または現行の疾患を処置または予防するために、組み換え型AAVビリオンでより効率的にトランスフェクトされ得る。
【0076】
中和について十分に研究された機構は、中和抗体が、感染に必要とされるレセプターに結合するために必要とされるウイルス上の領域を物理的にブロックすることである。他のウイルスを用いた以前の研究は、レセプターと中和抗体が、別個のセットのアミノ酸に結合すること、そして、中和抗体の結合に影響を与えるが、レセプター、またはウイルス感染に必要とされる他の機能には影響を与えない、ウイルスキャプシド上の特定の位置にある変異を同定することが可能であることを示している。中和抗体に抵抗性である野生型の複製ウイルスが選択される実験は、変異が、本明細書中に記載されるもののような単一のアミノ酸においてさえ、抗体の中和に対する抵抗性を有意に増加させ得ることを示している。
【0077】
AAV変異型ビリオンがAAV抗血清に結合できるかできないかは、部分的にキャプシドタンパク質(AAV cap遺伝子によりコードされる)の配列の機能である。従って、本発明は、免疫反応性を減少させるために(例えば、AAVビリオンのAAV抗血清に結合する能力を変更するために)、AAVビリオンの表面上で作成される、一重、二重、三重、四重およびそれ以上のアミノ酸の変更、ならびに、欠失および/または挿入を意図する。このような変異は、中和に対する抵抗性について評価され得、そして、必要に応じて、より劇的であるか、または多重の変更がなされ得る。
【0078】
結果として生じる機能的なrAAVビリオンを有する、変異に敏感なAAVビリオンの部分を同定する方法が、以下の実施例において記載される。実施例において詳述されるように、キャプシドの突出した形状(「スパイク」、「シリンダー」および「プラトー」として知られるキャプシドの部分を含む)に対する変異のようなウイルス表面上のアミノ酸に対する変異が好ましい。変異は、好ましくはVP2領域に対するものであり、より好ましくは、VP3領域に対するものであり、そして特に、図11に示されるように、VP1とVP2とVP3との間の重なり合う領域内である。特に好ましい変異は、VP2の80位〜598位(VP1のアミノ酸217〜735およびVP3のアミノ酸15〜533に対応する)の範囲内で見られる。
【0079】
代表的なVP2の配列を、本明細書中の図9(配列番号12)に示す。この主要な被膜タンパク質であるVP3は、VP1のアミノ酸203〜735に跨る。この変異は、ネイティブなタンパク質に対して、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む。代表的な変異としては、以下のアミノ酸からなる群より選択されるAAV−2 VP2キャプシドタンパク質の位置に対応する位置で生じる、アミノ酸の1つ以上の置換を含む:アミノ酸126、127、128、130、132、134、247、248、315、334、354、357、360、361、365、372、375、377、390、393、394、395、396、407、411、413、418、437、449、450、568、569および571。
【0080】
一般に、天然に存在するアミノ酸は、小さな側鎖を有する、そして/または無電荷であり、そしてそれゆえ、免疫原性が少ないアミノ酸で置換される。このようなアミノ酸としては、アラニン、バリン、グリシン、セリン、システイン、プロリンならびにこれらのアナログが挙げられるがこれらに限定されず、アラニンが好ましい。さらに、追加の変異が存在し得る。代表的な組み合わせとしては、直ぐ上で特定されたアミノ酸の任意の組み合わせ(例えば、アミノ酸360のヒスチジンへの変異とアミノ酸361のアラニンへの変異;アミノ酸334のアラニンへの変異とアミノ酸449のアラニンへの変異;アミノ酸334のアラニンへの変異とアミノ酸568のアラニンへの変異、アミノ酸568のアラニンへの変異とアミノ酸571のアラニンへの変異;アミノ酸334のアラニンへの変異とアミノ酸449のアラニンへの変異とアミノ酸568のアラニンへの変異;アミノ酸571のリジンへの変異と上で特定されたアミノ酸のいずれかの変異)が挙げられるがこれらに限定されない。上記の組み合わせは、単なる例示であり、当然ながら、多数の他の組み合わせが、本明細書中に提供される情報に基づき、容易に決定される。
【0081】
実施例にさらに記載されるように、キャプシド内の特定のアミノ酸は、ヘパリン結合部位に隣接している。この領域は、本明細書において「デッドゾーン」または「DZ」と呼ばれ、これらとしては、アミノ酸G128、N131、D132、H134、N245、N246、D356、D357、H372、G375、D391、D392、E393およびE394が挙げられる。デッドゾーン内のアミノ酸は、AAVの機能に重要であり、従って、中和抗体の結合のための標的でもある。この領域は、AAVの機能に重要なので、保存的アミノ酸置換(例えば、Hに対してQ、Eに対してD、Dに対してEまたはNなど)が、デッドゾーン領域において好まれ、多くの機能的なデッドゾーン変異体を生じる。
【0082】
キャプシドタンパク質に生じる種々のアミノ酸位置は、本明細書において、NCBI登録番号AF043303に記載され、本明細書中の図9に示されるAAV−2 VP2配列を参照して番号付けられる。図10は、AAV−2 VP1のアミノ酸配列を示す。しかし、AAV血清型のいずれかの対応する位置で生じるアミノ酸の変異が、本発明に包含されることが理解されるべきである。複数の種から単離された種々のAAV血清型からのキャプシドの配列が公知であり、例えば、Gaoら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA99:11854−11859;Rutledgeら(1998)J.Virol.72:309−319;NCBI登録番号NC001863;NC004828;NC001862;NC002077;NC001829;NC001729;U89790;U48704;AF369963;AF028705;AF028705;AF028704;AF513852;AF513851;AF063497;AF085716;AF43303;Y18065;AY186198;AY243026;AY243025;AY243024;AY243023;AY243022;AY243021;AY243020;AY243019;AY243018;AY243017;AY243016;AY243015;AY243014;AY243013;AY243012;AY243011;AY243010;AY243009;AY243008;AY243007;AY243006;AY243005;AY243004;AY243003;AY243002;AY243001;AY243000;AY242999;AY242998;およびAY242997に記載される。
【0083】
さらに、発明者らは、本明細書において、ヤギから単離された新規ヤギAAV(本明細書中で「AAV−G1」と呼ばれる)を発見した。このヤギAAV VP1配列は、AAV−5のVP1配列と高度に相同であるが、ネイティブなAAV−5の配列よりも、AAV抗体が存在することによる中和に対して、約100倍以上抵抗性である。より具体的には、603bpのrep、中央イントロンおよび全てのcapをコードする本明細書中に記載されるヤギAAVの2805bpのPCRフラグメントは、対応するAAV−5配列に対して94%の相同性を示す。親のrepに対するDNAおよびタンパク質の相同性は、それぞれ98%および99%である。ヤギVP1コード配列と、霊長類AAV−5 VP1コード配列との比較を、図12A〜12Bに示す。ヤギAAVのcap領域に対するDNAは、AAV−5のものと93%相同である。ヤギVP1 対 霊長類AAV−5に対するアミノ酸配列を図13に示す。ヤギ配列は、726アミノ酸のVP1タンパク質をコードするが、AAV−5 VP1は、724アミノ酸長である。さらに、これら配列は、94%の配列同一性および96%の配列類似性を示す。ヤギと霊長類AAV−5 VP1の配列の間には、43のアミノ酸の相違が存在する。VP1の直線状アミノ酸配列に関して、AAV−5とヤギAAVとの間のアミノ酸相違の分布は、高度に極性である。全てのアミノ酸の相違は、分散した様式で、もっぱらVP1のC末端超可変領域に生じる。AAV−5とヤギに関するこの領域は、AAV−5 VP1に関して番号付けすると、アミノ酸386からC末端までの約348アミノ酸を含む。他のAAV血清型における対応する超可変領域は、容易に同定可能であり、多数のAAV血清型からの領域を、本明細書中の図面に示す。
【0084】
特定の理論に束縛されないが、AAV−5とヤギAAVのVP1における全てのアミノ酸相違は、おそらく表面に露出された領域に生じるという事実は、キャプシドの進化が、新しい宿主の体液性免疫系によって、および/または反芻動物レセプターに対する順応によって、主に駆動されるということを示唆する。
【0085】
ヤギAAVからのVP1配列の、多数の他の霊長類VP1配列(AAV−1、AAV−2、AAV−3B、AAV−4、AAV−6、AAV−8およびAAV−5を含む)との比較を、図14A〜14Hに示す。結晶構造に基づく、種々のアミノ酸位置の接近可能性もまた、これらの図面に示す。さらに、アミノ酸の表面形状、結合および中和を減少させる単一変異の位置;ヘパリン結合部位;Mg2+接触の可能性;ホスホリパーゼA2ドメイン;ならびに、塩基接触およびDNA結合しやすい位置、リン酸基およびリボースと接触する可能性のある位置もまた示す。図面において認められ得るように、AAV−5およびヤギAAVは、AAV−2およびAAV−8の両方で異なる17位において、互いに同一である。
【0086】
同様に、本発明者らは、本明細書において、ウシから単離された、新規ウシAAV(本明細書中で「AAV−C1」と呼ばれる)を発見した。AAV−C1 VP1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、それぞれ図20Aおよび20Bに示す。図21A〜21Hは、AAV−C1に由来するVP1のアミノ酸配列の、霊長類AAV−1、AAV−2、AAV−3B、AAV−4、AAV−6、AAV−8、AAV−5およびヤギAAV(AAV−G1)に由来するVP1アミノ酸配列との比較を示す。結晶構造に基づく、種々のアミノ酸位置の接近可能性もまた、これらの図面に示す。さらに、アミノ酸の表面形状、結合および中和を減少する単一変異の位置;ヘパリン結合部位;Mg2+接触の可能性;ホスホリパーゼA2ドメイン;ならびに、塩基接触およびDNA結合しやすい位置、リン酸基およびリボースと接触する可能性のある位置もまた示す。
【0087】
図面において認められ得るように、AAV−C1からのVP1は、AAV−4とおよそ76%の同一性を示す。AAV−4とAAV−C1との間の配列の相違は、キャプシド全体にわたって分散している。AAV−C1 VP1は、AAV−5 VP1とおよそ54%の同一性を示し、Repタンパク質、AAV−5 VP1の最初の137アミノ酸、およびAAV−5 VP1の終止後の非翻訳領域において高い相同性を有する(図示せず)。従って、AAV−C1は、AAV−5とAAV−4との間の天然のハイブリッドであるようである。AAV−C1はまた、AAV−2およびAAV−8からのVP1とおよそ58%の配列同一性を示し、AAV−1およびAAV−6からのAP1とおよそ59%の配列同一性を示し、そして、AAV−3BからのVP1とおよそ60%の配列同一性を示した。
【0088】
実施例により詳細に記載されるように、ウシAAVは、ネイティブなAAV−2配列よりも、AAV抗体の存在による中和に対しておよそ16倍抵抗性である。従って、ヤギおよびウシの配列、ならびに他のこのような非霊長類哺乳動物配列が、霊長類AAV配列に対して(例えば、AAV−2およびAAV−5に対して)減少した免疫反応性を有する組み換え型AAVビリオンを生成するために使用され得る。さらに、非ヤギおよび非ウシのAAV単離体および株(例えば、AAV血清型のいずれか)から、減少した免疫反応性を有するAAVビリオンを提供するために変異され得るAAVキャプシドの領域は、本明細書中に提供されるヤギおよびウシのAAV配列、ならびに、他の単離体および血清型のものとの、これらの配列および免疫反応性特性の比較に基づいて、合理的に予測され得る。
【0089】
上記の議論および本明細書中に提供される実施例に基づいて、当業者は、減少した免疫反応性を有するAAVビリオンを生成するために野生型AAV配列に対して作成され得る変異を合理的に予測し得る。AAVキャプシド表面上に見られるアミノ酸、特に、超可変領域に見られるアミノ酸に対するアミノ酸の変化は、減少した免疫反応性を有するAAVビリオンを提供すると期待される。さらに、ヤギおよびウシのAAV配列によって提供された知識に基づいて、他の非霊長類哺乳動物AAVが、霊長類AAV(例えば、AAV−2およびAAV−5)に対して減少した免疫反応性を有する組み換え型AAVビリオンを調製する際に使用するための、非変異型AAV配列を提供するために同定され得る。例えば、以下の実施例に示されるように、中和抵抗性に関連し、AAV−2変異体とヤギAAVとの間に共通するAAV−2変異体における位置は、AAV−2の位置248、354、360、390、407、413および449に対する変更が含まれる。
【0090】
本発明のAAV変異体は、AAV cap遺伝子領域の部位指向型変異誘発により作製され得る。次いで、変異されたcap領域が、変異したヘルパー機能ベクターおよび任意の適切なトランスフェクション法(本明細書中に記載される三重トランスフェクション法を含む)を用いて、適切なヘルパー機能ベクター内にクローニングされ得、そしてrAAVベクターが作成され得る。本発明での使用に適切な変異体は、上に定義されるような、減少した免疫反応性により同定される。好ましくは、本発明の変異体は、抗AAV抗血清、好ましくは、抗AAV−2抗血清によって中和される能力が減少しているが、他の生物学的機能(例えば、インタクトなビリオンを組み立てる能力、ウイルスDNAをパッケージングする能力、細胞レセプターに結合する能力、および、細胞に形質導入する能力)を維持している。
【0091】
従って、本発明は、rAAVビリオンに組み込むために減少した免疫反応性を示す、変異型AAV配列、ならびに野生型の非霊長類哺乳動物AAV配列の同定および使用を含む。このようなrAAVビリオンは、「異種性の核酸」(「HNA」)を、脊椎動物被験体(例えば、哺乳動物)に送達するために使用され得る。上で説明したように、「組み換え型AAVビリオン」または「rAAVビリオン」は、「組み換え型AAV(rAAV)ベクター」をカプセル化するAAVタンパク質の殻(すなわち、キャプシド)から構成された感染性ウイルスであり、rAAVベクターは、HNAおよび1つ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)を含む。AAVベクターは、当該分野で公知の組換え技術を使用して構築され得、機能的ITRに隣接される1つ以上のHNAを含み得る。rAAVベクターのITRは、野生型のヌクレオチド配列である必要はなく、その配列が適切な機能(すなわち、AAVゲノムのレスキュー、複製およびパッケージング)を提供する限りは、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失もしくは置換によって変更され得る。
【0092】
組み換え型AAVビリオンは、当該分野で公知の種々の技術(三重トランスフェクション法(米国特許第6,001,650号に詳細に記載される)を含む)を用いて生成され得る。このシステムは、rAAVビリオン生成のために、3つのベクター(AAVヘルパー機能ベクター、補助機能ベクター、およびHNAを含むrAAVベクターが挙げられる)の使用を含む。しかし、当業者は、これらのベクターによりコードされる核酸配列が、種々の組み合わせで2つ以上のベクターにて提供され得ることを理解する。本明細書中で使用される場合、用語「ベクター」は、適切な制御エレメントに結合された場合に複製し得、かつ、細胞間で遺伝子配列を移動させ得る、任意の遺伝的エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオンなど)を含む。従って、この用語は、クローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを含む。
【0093】
AAVヘルパー機能ベクターは、生産的なAAVの複製およびカプセル化のためにトランスで機能する「AAVヘルパー機能」配列(すなわち、repおよびcap)をコードする。好ましくは、AAVヘルパー機能ベクターは、任意の検出可能な野生型AAVビリオン(すなわち、機能的なrep遺伝子およびcap遺伝子を含むAAVビリオン)を生じることなく、効率的なAAVベクターの生成を支持する。本発明での使用に適切なベクターの例としては、米国特許第6,001,650号に記載されるpHLP19、および米国特許第6,156,303号に記載されるpRep6cap6ベクターが挙げられる。
【0094】
補助機能ベクターは、非AAV由来のウイルス、および/または、AAVの複製が依存する細胞機能(すなわち、「補助機能」)ついてのヌクレオチド配列をコードする。補助機能としては、AAVの複製に必要とされる機能(AAV遺伝子の転写の活性化に関与する部分、段階特異的なAAV mRNAのスプライシングに関与する部分、AAV DNAの複製に関与する部分、cap発現産物の合成に関与する部分、およびAAVキャプシドの組み立てに関与する部分が挙げられるがこれらに限定されない)が挙げられる。ウイルスベースの補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純疱疹ウイルス1型以外)およびワクシニアウイルスのような任意の公知のヘルパーウイルスに由来し得る。好ましい実施形態において、補助機能プラスミドであるpLadeno5が使用される(pLadeno5に関する詳細については、米国特許第6,004,797号に記載される)。このプラスミドは、AAVベクターの生成のためのアデノウイルスの補助機能の完全なセットを提供するが、複製能をもつアデノウイルスを形成するために必須の成分を欠いている。
【0095】
異種性の核酸(HNA)を含むrAAVベクターは、種々のAAV血清型のいずれかに由来するITRを用いて構築され得る。HNAは、そうでなければ自然状態では一緒には見られない、一緒に結合された核酸配列を含み、この概念を、用語「異種」で規定する。この点を例示するために、HNAの例は、自然状態ではその遺伝子と結合した状態では見られないヌクレオチド配列により隣接された遺伝子である。HNAの別の例は、自然状態ではそれ自体が見られない遺伝子(例えば、ネイティブな遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。本明細書中で使用される場合、対立遺伝子の変化または天然に存在する変異的事象は、HNAを生じない。HNAは、アンチセンスRNA分子、リボザイム、またはポリペプチドをコードする遺伝子を含み得る。
【0096】
HNAは、HNAが、適切な条件下または所望の条件下で患者の標的細胞内で発現され得るように、異種性プロモーター(構成的、細胞特異的、または、誘導性)に作動可能に連結される。構成的プロモーター、細胞特異的プロモーターおよび誘導性プロモーターの多数の例が当該分野で公知であり、当業者は、特定の意図される用途のためのプロモーターを容易に選択し得る(例えば、筋肉細胞特異的な発現のための筋肉特異的な骨格α−アクチンプロモーターもしくは筋肉特異的なクレアチンキナーゼプロモーター/エンハンサーの選択、強いレベルの連続的もしくはほぼ連続的な発現のための、構成的CMVプロモーターの選択、または誘導的発現のための誘導性エクジソンプロモーターの選択)。誘導的な発現は、当業者が合成されるタンパク質の量を制御することを可能にする。この様式において、治療的生成物の濃度を変動させることが可能である。周知の誘導性プロモーターの他の例は、ステロイドプロモーター(例えば、エストロゲンプロモーターおよびアンドロゲンプロモーター)およびメタロチオネインプロモーターである。
【0097】
本発明は、1つ以上のアンチセンスRNA分子をコードするHNAを含む新規変異型ビリオンを含み、このrAAVビリオンは、好ましくは、哺乳動物の1つ以上の筋肉細胞または組織に投与される。癌のアンチセンス療法またはウイルス疾患の処置において、本発明で使用するために適切なアンチセンスRNA分子は、当該分野で記載されている。例えば、Hanら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4313−4317;Uhlmannら(1990)Chem.Rev.90:543−584;Heleneら(1990)Biochem.Biophys.Acta.1049:99−125;Agarawalら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7079−7083;およびHeikkilaら(1987)Nature 328:445−449を参照のこと。本発明はまた、本明細書中で開示される方法を用いる、リボザイムの送達を包含する。適切なリボザイムの議論については、例えば、Cechら(1992)J.Biol.Chem.267:17479−17482および米国特許第5,225,347号を参照のこと。
【0098】
本発明は、好ましくは、1つ以上のポリペプチドをコードするHNAを含む変異型rAAVビリオンを包含し、このrAAVビリオンは、好ましくは、哺乳動物の1つ以上の細胞または組織に投与される。従って、本発明は、哺乳動物被験体における疾患状態の処置または予防に有用な、1つ以上のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードするHNAの送達を包含する。このようなDNAおよび関連する疾患状態としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:グルコース−6−リン酸(グリコーゲン貯蔵欠乏症1A型に関連する)をコードするDNA;ホスホエノールピルビン酸−カルボキシキナーゼ(Pepck欠損症に関連する)をコードするDNA;ガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(ガラクトース血症に関連する)をコードするDNA;フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(フェニルケトン尿症に関連する)をコードするDNA;分枝鎖α−ケト酸デヒドロゲナーゼ(メープルシロップ尿症に関連する)をコードするDNA;フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ(チロシン血症1型に関連する)をコードするDNA;メチルマロニル−CoAムターゼ(メチルマロン酸血症に関連する)をコードするDNA;中位鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(中位鎖アセチルCoA欠損症に関連する)をコードするDNA;オルニチントランスカルバミラーゼ(オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症に関連する)をコードするDNA;アルギノコハク酸シンテターゼ(シトルリン血症に関連する)をコードするDNA;低密度リポタンパク質レセプタータンパク質(家族性高コレステロール血症に関連する)をコードするDNA;UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ(クリグラー−ナジャー病に関連する)をコードするDNA;アデノシンデアミナーゼ(重篤複合免疫不全疾患に関連する)をコードするDNA;ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(痛風およびレッシュ−ナイハン症候群に関連する)をコードするDNA;ビオチニダーゼ(ビオチニダーゼ欠損症に関連する)をコードするDNA;β−グルコセレブロシダーゼ(ゴーシェ病に関連する)をコードするDNA;β−グルクロニダーゼ(スライ症候群に関連する)をコードするDNA;ペルオキシソーム膜タンパク質70kDa(ツェルヴェーガー症候群に関連する)をコードするDNA;ポルホビリノーゲンデアミナーゼ(急性間欠性ポルフィリン症に関連する)をコードするDNA;α−1アンチトリプシン欠損症(気腫)の処置のためのα−1アンチトリプシンをコードするDNA;サラセミアまたは腎不全に起因する貧血の処置のためのエリスロポエチンをコードするDNA;虚血性疾患の処置のための、血管内皮増殖因子をコードするDNA、アンジオポエチン−1をコードするDNA、および繊維芽細胞増殖因子をコードするDNA;例えば、アテローム性動脈硬化症、血栓症または塞栓症において見られるような、血管閉塞の処置のための、トロンボモジュリンおよび組織因子経路インヒビターをコードするDNA;パーキンソン病の処置のための、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)をコードするDNAおよびチロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするDNA;うっ血性心不全の処置のための、β−アドレナリン作動性レセプターをコードするDNA、ホスホランバンのアンチセンス、もしくはホスホランバンの変異形態をコードするDNA、筋小胞体(小胞体)アデノシントリホスファターゼ−2(SERCA2)をコードするDNA、および心臓のアデニリルシクラーゼをコードするDNA;種々の癌の処置のための、p53のような腫瘍抑制遺伝子をコードするDNA;炎症性および免疫性の障害および癌の処置のための、種々のインターロイキンのうちの1つのようなサイトカインをコードするDNA;筋ジストロフィーの処置のための、ジストロフィンまたはミニジストロフィンをコードするDNA、およびウトロフィン(utrophin)またはミニウトロフィンをコードするDNA;ならびに、糖尿病の処置のための、インスリンをコードするDNA。
【0099】
本発明はまた、血液凝固タンパク質をコードする遺伝子を含む新規変異型ビリオンを含み、このタンパク質は、本発明の方法を使用して、血友病の処置のために、血友病を有する哺乳動物の細胞に送達され得る。従って、本発明は、血友病Bの処置のために第IX因子遺伝子を哺乳動物に送達すること、血友病Aの処置のために第VIII因子遺伝子を哺乳動物に送達すること、第VII因子欠損症の処置のために第VII因子遺伝子を送達すること、第X因子欠損症の処置のために第X因子遺伝子を送達すること、第XI因子欠損症の処置のために第XI因子遺伝子を送達すること、第XIII因子欠損症の処置のために第XIII因子遺伝子を送達すること、およびプロテインC欠損症の処置のためにプロテインCを送達することを包含する。上記の遺伝子の各々の、哺乳動物の細胞への送達は、まずこれらの遺伝子を含むrAAVビリオンを作製し、次いで、このrAAVビリオンを哺乳動物に投与することによって達成される。従って、本発明は、第IX因子、第VIII因子、第X因子、第VII因子、第XI因子、第XIII因子またはプロテインCのうちのいずれか1つをコードする遺伝子を含むrAAVビリオンを包含する。
【0100】
1つ以上のHNAを含む組換えビリオンの哺乳動物被験体への送達は、筋肉内注射によってか、または哺乳動物被験体の血流内への投与によってであり得る。この血流内への投与は、静脈内、動脈内、または任意の他の血管内に、外科手術の分野において周知の技術である肢隔離灌流(isolated limb perfusion)によって血流内に変異型ビリオンを注射することによってであり得る。この方法は、rAAVビリオンの投与前に、当業者が肢を全身循環から隔離することを本質的に可能にする。米国特許第6,177,403号に記載される、肢隔離灌流技術の改変物がまた、変異型ビリオンを隔離された肢の血管系に投与して、筋肉細胞または筋肉組織内への形質導入を強力に促進するために、当業者により採用され得る。さらに、特定の条件については、変異型ビリオンを被験体のCNSに送達することが望ましくあり得る。「CNS」とは、脊椎動物の脳および脊髄の全ての細胞および組織を意味する。従って、この用語は、神経細胞、グリア細胞、星状細胞、脳脊髄液(cereobrospinal fluid)(CSF)、間質性空間(interstitial space)、骨、軟骨などを含むが、これらに限定されない。インビトロで形質導入された組み換え型AAVビリオンまたは細胞は、例えば、脳室領域および線条(例えば、線条の尾状核または被殻)、脊髄および神経筋接合部、または小脳小葉内に、針、カテーテルまたは関連デバイスを用いて、当該分野で公知の神経外科的技術(例えば、定位注射(例えば、Steinら,J Virol 73:3424−3429,1999;Davidsonら,PNAS 97:3428−3432,2000;Davidsonら,Nat.Genet.3:219−223,1993;ならびにAliskyおよびDavidson,Hum.Gene Ther.11:2315−2329,2000を参照のこと))を使用して、注射によって、CNSまたは脳に直接送達され得る。
【0101】
特定の「治療効果」を達成するために必要とされるrAAVビリオンの用量(例えば、体重1kgあたりのベクターゲノムの単位用量(vg/kg))は、いくつかの因子(rAAVビリオンの投与経路、治療効果を達成するために必要とされる遺伝子(またはアンチセンスRNAまたはリボザイム)の発現レベル、処置される特定の疾患もしくは障害、rAAVビリオンに対する宿主の免疫応答、遺伝子(またはアンチセンスRNAまたはリボザイム)発現産物に対する宿主の免疫応答、ならびに遺伝子(またはアンチセンスRNAまたはリボザイム)産物の安定性を含むが、これらに限定されない)に基づいて変動する。当業者は、前述の因子、および当該分野で周知の他の因子に基づいて、特定の疾患もしくは障害を有する患者を処置するためのrAAVビリオンの用量範囲を容易に決定し得る。
【0102】
一般的に、「治療効果」とは、所望の結果または臨床的終点に向けて、疾患(または障害)の構成要素を変化させ、その結果、患者の疾患または障害が、臨床的な改善を示すのに十分な1つ以上のHNAの発現レベルを意味し、しばしば、この疾患または障害に関連する臨床的徴候もしくは症状の寛解により反映される。特定の疾患例として血友病を用いると、血友病についての「治療効果」は、血友病を罹患する哺乳動物の血液凝固効率の増加、として本明細書において定義され、この効率は、例えば、周知の終点もしくは技術(例えば、全血凝固時間または活性型プロトロンボプラスチン時間(prothromboplastin time)を測定するためのアッセイを使用すること)によって決定される。全血凝固時間または活性型プロトロンボプラスチン時間のいずれかの減少は、血液凝固効率の増加の指標である。血友病の重篤なケースにおいて、正常なレベルの1%未満の第VIII因子もしくは第IX因子を有する血友病患者は、非血友病患者についての約10分と比較して、60分を超える全血凝固時間を有する。第VIII因子または第IX因子の1%以上の発現は、血友病の動物モデルにおいて、全血凝固時間を減少することが示されており、従って、1%を超える第VIII因子または第IX因子の循環血漿濃度は、血液凝固効率の増加の所望の治療効果を達成する可能性がある。
【0103】
本発明の構築物は、代替的に、その生理学的機能または生化学的機能を解明するために、HNAを宿主細胞に送達するために使用され得る。HNAは、内因性遺伝子または異種性遺伝子のいずれかであり得る。エキソビボまたはインビボのアプローチのいずれかを使用すると、当業者は、機能未知の1つ以上のHNAを含む変異型ビリオンを実験動物に投与し、HNAを発現させ、そして、その後の任意の機能の変化を観察し得る。このような変化としては、以下が挙げられ得る:タンパク質−タンパク質相互作用、生化学経路における変更、細胞、組織、器官もしくは器官系の生理学的機能の変更、および/または遺伝子発現の刺激もしくはサイレンシング。
【0104】
あるいは、当業者は、機能既知または機能未知の遺伝子を過剰発現させて、インビボでのその効果を調べ得る。このような遺伝子は、実験動物に対して内因性であっても、自然状態では異種性(すなわち導入遺伝子)であってもよい。
【0105】
本発明の方法を使用することによって、当業者はまた、遺伝子発現を消滅もしくは有意に減少させ、それによって、遺伝子機能を決定する別の手段を採用し得る。このことを達成する1つの方法は、アンチセンスRNAを含有するrAAVビリオンを、実験動物に投与し、標的内因性遺伝子が「ノックアウト」されるように、このアンチセンスRNA分子を発現させ、次いで、その後の任意の生理学的変化もしくは生化学的変化を観察することによるものである。
【0106】
本発明の方法は、トランスジェニックマウスおよびノックアウトマウスのような、他の周知の技術と適合性であり、これらの技術を補完するために使用され得る。当業者は、遺伝子機能に関する有用な情報を得るための、本発明の方法と公知の技術の組み合わせを容易に決定し得る。
【0107】
一旦送達されると、多くの場合、単にHNAを発現するだけでは十分でない;その代わり、HNAの発現レベルを変えることがしばしば所望される。HNAの発現レベルを変えることにより、HNA発現生成物の用量が変わり、このことは、しばしば、HNAに関する機能的な情報を獲得および/または洗練するのに有用である。これは、例えば、HNAを含有するrAAVビリオンに異種誘導性のプロモーターを組み込むことによって達成され得、その結果、プロモーターが誘導されたときにのみHNAが発現する。いくつかの誘導性プロモーターはまた、HNA発現レベルを洗練するための能力を提供し得る;すなわち、誘導物質の濃度を変えることによって、HNAの発現生成物の濃度を微調整する。このことは、時折、「オン−オフ」システム(すなわち、任意の量の誘導物質が、同じレベルのHNA発現生成物を提供する、「全か無」の応答)を有することよりも有用である。誘導性プロモーターの多数の例は当該分野で公知であり、エクジソンプロモーター、ステロイドプロモーター(例えば、エストロゲンプロモーターおよびアンドロゲンプロモーター)およびメタロチオネインプロモーターが挙げられる。
【実施例】
【0108】
(3.実験)
以下は、本発明を実施するための具体的な実施形態の例である。これらの実施例は、例示目的のためだけに提供され、本発明の範囲を制限することは決して意図されない。
【0109】
使用される数(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するための努力がなされているが、いくらかの実験上の誤差および偏差が、当然ながら許容されるべきである。
【0110】
(実施例1 組み換え型AAV−LacZ変異型ビリオンの調製およびその特性)
β−ガラクトシダーゼ遺伝子を含有する組み換え型AAV−2ビリオン(rAAV−2 lacZ)を、米国特許第6,001,650号に記載される三重トランスフェクション手順を用いて調製した。β−galに対する完全なcDNA配列は、GenBank登録番号NC 000913(領域:相補体(362455..365529))の下で入
手可能である。
【0111】
(I.ベクターの構築)
(A.変異型AAVヘルパー機能ベクター)
AAV−2の構造(Xieら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2002)99:10405−10410を参照のこと)に基づいて、61の変異体を、オリゴヌクレオチド指向性部位特異的変異誘発により構築した。AAVの全表面は、正十二面体形状で整列する60の同一な非対称構造単位から構成される。これは、2つの重要な意味を持つ。第1に、作製される任意の単一のアミノ酸変異が、全てが非対称構造単位内の他のアミノ酸に対して同じ位置で、ウイルスの60の位置で見られることである。第2に、単一の非対称構造単位を研究することによって、このウイルスの全表面を理解し得ることである。
【0112】
AAV−2構造を、以下のように決定した。単量体AAV−2キャプシドタンパク質(VP1アミノ酸217〜735;VP2アミノ酸80〜598)についての座標を、Protein Data Bank(識別番号1LP3)から得た。この構造を、Swiss PDB Viewerバージョン3.7、Vector NTI 3D−Molバージョン8.0(Invitrogen,Inc)またはChime(MDL Information Systems,Inc)を用いて分析した。AAV−2キャプシドの多量体構造を、Virus Particle Explorer(VIPER)ウェブサイト上のオリゴマー生成プログラムを用いて作製したか、Swiss PDB viewerの座標変換機能を用いて、PBD(1LP3)のマトリクス座標を連結して作製したか、または、European Bioinformatics Instituteのタンパク質四元構造データベースからダウンロードした(ファイル名=1lp3)。AAV−2キャプシド多量体上の可能な抗体結合部位を、AAV−2キャプシドの非対称構造単位を構築することによって分析し、次いで、Swiss PDB Viewerを用いて、その構造に対して、または、AAV−2キャプシドの他の多量体単位に対して、IgG構造(マウスIgG2aモノクローナル抗体;PDB ID番号1IGT)を手動でドッキングさせた。IgGとAAV−2キャプシドとの間の距離、アミノ酸衝突、および接触面積は、Swiss PDB Viewerプログラム内の適切なツールを用いて評価され得る。
【0113】
いくつかの基準を当てはめて、約145個全ての外側の表面に露出されているアミノ酸(60の同一な非対称構造単位の各々の内部、図1を参照のこと)から、どのアミノ酸を変異させるかを選択した。変異は、外側の「表面に露出されている」アミノ酸においてのみ生じさせたが、外側表面の下、または内側表面上のアミノ酸に抗体結合を支配させることも可能である。変異させたアミノ酸は、抗体結合に対して最も接近可能であると予測された側鎖を有するアミノ酸であった。これは、「スパイク」、「シリンダー」および「プラトー」として知られる、キャプシドの突出した形態上のアミノ酸を含んだ。このような突出した形態は、しばしば、中和抗体の結合のための標的である。抗体を収容するほど十分に広くない領域(「キャニオン(canyon)」、「ディンプル(dimple)」、3重の対称軸の中心、5重の対称軸の中心)のアミノ酸は、変異させなかった。さらに、アミノ酸側鎖を、少なくとも20Å2の露出面積に基づいて選択した。なぜならば、抗原と抗体との間の接触面積の20Å2以上の減少(約600Å2〜900Å2の全接触面積のうち)は、抗体−抗原親和性に、そしてそれゆえ、抗体の中和力価に、無視できないほどの影響を有し得るからである。選択されたアミノ酸は、側鎖(ペプチド骨格だけではない)が露出されているものであった。ペプチド骨格のみが露出されていると、このようなアミノ酸に結合した抗体は、種々のアミノ酸を識別し得ないと考えられた。これは、全てのアミノ酸が、同じペプチド骨格を有するからである。最終的に、タンパク質抗原の比較的平坦な領域が、しばしば、抗体の比較的な領域と相互作用し、従って、変異のために選択されるアミノ酸は、比較的平坦な領域(スパイクの側面、シリンダーの頂部、プラトーの頂部)にあった。全ての上記の基準を、AAV−2の外側表面に位置する約145のキャプシドアミノ酸に当てはめることにより、他のアミノ酸に変更したときに、中和抗体の結合に最も影響を与える可能性がある、72の位置を選択した。これらのアミノ酸の位置を図2に示し、表1、4および5に列挙する。
【0114】
作製された(72の位置における)127の変異の大部分を、分子生物学の分野の当業者に公知の技術を用いて、単一のアミノ酸からアラニンに変更した。作製され得る全ての変異の中で、アラニンがタンパク質の構造に最も破壊しないこと決定されているので、アラニンを選択した。また、アラニンのみがメチル側鎖を有するので、他のアミノ酸の大半をアラニンに変更することは、抗体結合を妨害する傾向がある。すなわち、他のアミノ酸と比較して、アラニンは、最も免疫原性が低い。なぜならば、アラニンは、抗原/抗体接触領域に有意に寄与し、従って、抗原/抗体親和性に有意に寄与する側鎖を欠くからである。後に続く数字は、図9に示されるAAV−2 VP2配列に基づくことに注意されたい。2〜3の位置を、アラニン以外のアミノ酸に変化させた。例えば、既にアラニンがあった356位では、アルギニンを挿入した。アルギニンは、AAVの表面に残るのに十分に極性であり、抗体の結合に干渉し得るほど十分に大きい。抗体に接近可能な5つのグリシンがある。グリシンは、しばしば、ペプチド鎖が曲がり、従って、構造の重要な成分であり得る場所に見られる。グリシンの変異は、構造が劇的に変化し得る可能性に起因して、問題となり得る。従って、AAV−2表面上の5つのグリシンの各々は、これらを何に変えるかを決定するために、ケースバイケースの原則に基づいて考えた。グリシン128は、128位がアスパラギン酸であるAAV−5を除いて、AAV−1〜AAV−6において見られるので、G128はアスパラギン酸に変えた。グリシン191は、191位がセリンであるAAV−5を除いて、AAV−1〜AAV−6において見られるので、G191はセリンに変えた。グリシン329は、329位がアルギニンであるAAV−4を除いて、AAV−1〜AAV−6において見られるので、G329はアルギニンに変えた。グリシン375は、AAV−1〜AAV−6で保存されており、そして、プロリンがその位置で見られるペプチド鎖中のターンを保存し得ると考えられたので、G375はプロリンに変えた。グリシン449は、他のAAVにおいてはセリンまたはアスパラギンであるが、AAV−2においてはR448とR451(これらは、ヘパリン結合および形質導入に重要である)の間にあるので、G449はアラニンに変えた。従って、449位は、グリシンに最もサイズが近いアミノ酸に変異させた(すなわち、アラニン)。いくつかの場合、所望の変異に加えて、二重変異を単離した(S130A/N131A、N360H/S361A、S361A/N358K、S361A/S494P、S361A/R592K)。変異誘発の間に導入されたポリメラーゼの誤りの結果がおそらく存在したが、他の変異と同じようにアッセイした。
【0115】
AAVヘルパー機能ベクターを、pHLP19(米国特許第6,001,650号に記載される)、116の変異誘発オリゴデオキシヌクレオチド、およびインビトロ変異誘発キット(Quik Change XL,Stratagene,San Diego,CA)を用いて構築した。簡単に述べると、所望の変異配列の各々を含み、74〜83℃の間の融解温度(式:Tm=81.5+0.41(% G+C)−(675/N)−%ミスマッチ(この式において、Gはグアノシンであり、Cはシトシンであり、Nはプライマーのヌクレオチド長である)を用いて計算した)を有する2つの相補的なオリゴデオキシヌクレオチドを、別々にpHLP19と混合した。以下の条件を用いて、3サイクルのPCRを行なった:変性を95℃にて1分間行ない、アニーリングを60℃にて1分間行い、そして、伸長を68℃にて1分間行なった。次いで、2つの別々の反応物を混合し、以下の条件を用いる追加の18サイクルのPCRに供した:変性を95℃にて1分間行なっい、アニーリングを60℃にて1分間行い、そして伸長を68℃にて15分間行なった。PCR産物をDpnI制限酵素で消化して、完全にメチル化されたか、または半メチル化された(すなわち、非変異)プラスミドを破壊し、次いで、E.coli株XL−10(Stratagene)に形質転換した。各変異誘発反応から1つのコロニーをピックアップし、500ngのプラスミドDNAを調製し、そして、DNA配列決定に供した。変異原性オリゴデオキシヌクレオチドのサブセットを配列決定プライマーとして使用して、変異体の配列を確認した。各場合において、全キャプシド遺伝子を配列決定した。多くの変異体が、この方法で単離され得る。変異体が最初のラウンドのDNA配列決定により単離されなかった場合、1〜3個多いコロニーをピックアップし、そして500ngのプラスミドDNAを調製して、DNA配列決定に供した。
【0116】
(B.pLadeno5補助機能ベクター)
補助機能ベクターpLadeno5を以下のように構築した。精製したアデノウイルス血清型−2のDNA(Gibco/BRLから入手)から単離したE2a、E4およびVA RNA領域をコードするDNAフラグメントを、pAmpscriptと呼ばれるプラスミド内に連結した。pAmpscriptプラスミドを、以下のように組み立てた。オリゴヌクレオチド指向型変異誘発を用いて、ポリリンカーおよびpBSII s/k+(Stratageneから入手)に由来するα相補性発現カセットを含む623bpの領域を除去し、EcoRV部位で置き換えた。オリゴヌクレオチド指向型変異誘発に用いた変異原性オリゴの配列は、5’−CCGCTACAGGGCGCGATATCAGCTCACTCAA−3’(配列番号1)であった。
【0117】
ポリリンカー(以下の制限部位を含む:BamHI;KpnI;SrfI;XbaI;ClaI;Bstl 107I;SalI;PmeI;およびNdeI)を合成し、このリンカーのBamHI部位が、改変されたプラスミドのf1起点に近くなるように、上で作製したEcoRV部位に挿入して、pAmpscriptプラスミドを生じた。このポリリンカーの配列は、5’−GGATCCGGTACCGCCCGGGCTCTAGAATCGATGTATACGTCGACGTTTAAACCATATG−3’(配列番号2)であった。
【0118】
アデノウイルス血清型−2 E2aおよびVaのRNAの配列を含むDNAフラグメントを、pAmpscriptに直接クローニングした、特に、E2a領域を含む5962bpのSrfI−KpnI(部分)フラグメントを、pAmpscriptのSrfI部位とKpnI部位との間にクローニングした。この5962bpのフラグメントは、アデノウイルス血清型−2ゲノムの塩基対21,606〜27,568を含む。アデノウイルス血清型−2ゲノムの完全な配列は、GenBank番号9626158の下でアクセス可能である。
【0119】
アデノウイルス血清型−2 E4配列を含むDNAを、pAmpscriptポリリンカーに挿入する前に改変した。具体的には、PCR変異誘発を用いて、E4の近位にあるアデノウイルスの末端反復をSrfI部位で置き換えた。このSrfI部位の位置は、アデノウイルス血清型−2ゲノムの塩基対35,836〜35,844に相当する。変異誘発において用いたオリゴヌクレオチドの配列は、5’−AGAGGCCCGGGCGTTTTAGGGCGGAGTAACTTGC−3’(配列番号3)および5’−ACATACCCGCAGGCGTAGAGAC−3’(配列番号4)であった。上記の改変したE4遺伝子をSrfIおよびSpeIで切断することにより作製した3,192bpのE4フラグメントを、既にE2aおよびVAのRNA配列を含むpAmpscriptのSrfI部位とXbaI部位との間に連結し、pLadeno5プラスミドを生じた。3,192bpのフラグメントは、アデノウイルス血清型−2ゲノムの塩基対32,644〜35,836に相当する。
【0120】
(C.rAAV−2 hF.IXベクター)
rAAV−2 hF.IXベクターは、2つのAAV−2逆方向末端反復(米国特許第6,093,392号を参照のこと)の間に、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、hF.IXのエキソン1、hF.IXイントロン1の1.4kbフラグメント、hF.IXのエキソン2〜8、227bpのhF.IX 3’UTR、およびSV40後期ポリアデニル化配列を含む11,442bpのプラスミドである。hF.IXイントロン1の1.4kbのフラグメントは、イントロン1の5’末端(ヌクレオチド1098まで)と、エキソン2との接合点まで延びるヌクレオチド5882からの配列、から構成される。CMVの最初期プロモーターおよびSV40後期ポリアデニル化シグナル配列は、pCMV−Script(登録商標)(Stratageneカタログ、Stratagene,La Jolla,CAから入手可能)の公開配列から得られ得る。
【0121】
(D.rAAV−2 lacZベクター)
(組み換え型AAVプラスミドpVmLacZの構築)
1.4311bpのXbaI DNAフラグメントを、AAV rep/cap配列を含むpSUB201から切り出した。XbaI末端を、10bpのNotI合成オリゴヌクレオチド(5’−AGCGGCCGCT−3’)(配列番号5)と再度アニーリングして、プラスミド中間体pUC/ITR−NotIを生じた。このプラスミド中間体は、116bpの残留AAV配列により隔てられたAAV ITR(逆方向末端反復)およびNotIリンカーDNAの両方を有する。
【0122】
2.1319bpのNotI DNAフラグメントを、CMVプロモーターおよびhGHイントロン配列を含むp1.1cから切り出した。このDNA配列を、pUC/ITR−NotIのNotI部位に挿入して、中間体pSUB201Nを生じた。
【0123】
3.1668bpのPvuII(5131〜1493)ITR結合CMV発現カセットを、pSUB201Nから切り出し、pWee.1aのPvuII部位(12位)に挿入して、プラスミド中間体pWee.1bを生じた。pSUB201Nから1668bpのPvuIIフラグメントを切り出して、「A」パリンドローム領域の各ITRの外側から15bpを除去した。
【0124】
4.4737bpのNotI/EcoRV「AAV rep/cap」DNA配列を、pGN1909から切り出し、Klenow DNAポリメラーゼを用いて3’の陥没末端を埋めることによって、その末端を、平滑にした。AscIリンカーを両方の末端に連結し、その後、この「pGN1909/AscI」DNAフラグメントを、pWee.1bの骨格のAscI部位(2703)にクローニングして、中間体pWeel909(8188bp)を生じた。このプラスミドは、AAV rep/cap遺伝子骨格を有するITR結合CMV発現カセットを有する。
【0125】
5.3246bpのSmaI/DraI LacZ遺伝子を、pCMV−βから切り出し、AscIリンカーをこの平滑末端のフラグメントに連結した。このLacZ/AscIフラグメントをp1.1cのBssHII部位の間にクローニングして、p1.1cADHLacZを生じ、これは、CMVプロモーターにより駆動されるLacZ遺伝子を有する。
【0126】
6.4387bpのNotI DNAフラグメントを、CMVプロモーターにより駆動されるLacZ遺伝子を有するp1.1cADHLacZから切り出した。このフラグメントを、1314bpのp「CMVプロモーター/hGHイントロン」発現カセットを除去した後に、pWee1909のNotI部位の間に挿入した。得られた構築物pW1909ADHLacZは、CMVプロモーターの制御下にβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を有し、ITRに結合している。このプラスミドの骨格は、AAVヘルパー機能を提供する「rep」遺伝子および「cap」遺伝子を保有し、そしてこのβ−ラクタマーゼ(アンピシリン)遺伝子が、抗生物質に対する耐性を与える。
【0127】
7.「CMV/LacZ」カセットを含む4772bpのSseI DNAフラグメントを、pW1909ADHLacZから切り出し、pUC19のSseI部位に挿入して、Pre−pVLacZを生じた。この構築物はなお、各ITRの内側に約50bpの5’および3’のpSUB201配列の残留物を含む。
【0128】
8.Pre−pVLacZから2912bpのMscI「pUC/ΔITR」DNAフラグメントを切り出すことによって残留のpSUB201配列を除去し、これはまた、各ITRの「D」領域の約35bpも除去する。MscI制限部位、ITR「D」領域およびNotI部位を含む合成リンカー「145NA/NB」(5’−CCAACTCCATCACTAGGGGTTCCTGCGGCC−3’)(配列番号6)を用いて、「CMV/LacZ」発現カセットを有するpW1909ADHLacZから4384bpのNotIフラグメントをクローニングした。得られたプラスミドpVLacZは、アルコールデヒドロゲナーゼエンハンサー配列およびCMVプロモーターの制御下にβ−ガラクトシダーゼ配列を有し、これらは全て、AAV ITRに結合している。
【0129】
9.以下のように、LacZエレメントおよびポリリンカー配列をITR結合LacZ発現カセットから除去することによって、pVLacZをさらに改変した。534bpのEheI/AflIII LacZ/ポリリンカー配列を、pUC119から切り出し、この末端を、Klenow DNAポリメラーゼを用いて平滑化し、そしてこのプラスミドを、SseIリンカー(5’−CCTGCAGG−3’)(配列番号7)に連結して、pUC119/SseIを作製した。4666bpのSseIフラグメントを切り出すことによって、「AAVLacZ」DNA配列をpVLacZから除去した。このSseIフラグメントを、pUC119/SseIのSseI部位にクローニングして、pVmLacZを作製した。pVmLacZは、pUC119由来の骨格内のAAV ITRに結合したCMVプロモーター/ADHエンハンサー/β−ガラクトシダーゼ遺伝子を有し、これは、アンピシリン耐性を与え、高コピー数の複製起点を有する。
【0130】
(II.三重トランスフェクション手順)
種々の変異型AAVヘルパー機能ベクター(上記)、補助機能ベクターpLadeno5(米国特許第6,004,797号に記載される)、およびrAAV2−lacZベクターであるpVmLacZ(上記)を使用して、組み換え型ビリオンを生成した。
【0131】
簡単に述べると、ヒト胚性腎細胞タイプ293(American Type Culture Collection,カタログ番号CRL−1573)を、10%胎仔ウシ血清を補充したダルベッコ改変イーグル培地から構成される10mLの細胞培養培地中、3×106細胞/ディッシュの密度で、10cm組織培養処理滅菌ディッシュに播種し、そして、5% CO2の、37℃にて加湿した環境下でインキュベートした。一晩のインキュベーションの後、293細胞は約80%のコンフルエントであった。次いで、この293細胞をリン酸カルシウム沈殿法(当該分野で周知のトランスフェクション法)によりDNAでトランスフェクトした。滅菌ピペットチップを用いて、10μgの各ベクター(変異型pHLP19、pLadeno5およびpVm lacZ)を3mLの滅菌したポリスチレンスナップキャップチューブに加えた。1.0mLの300mM CaCl2(JRHグレード)を各チューブに加え、上下にピペッティングすることによって混合した。等量の2×HBS(274mM NaCl、10mM KCl、42mM HEPES、1.4mM Na2PO4、12mMデキストロース、pH7.05、JRHグレード)を2mLピペットを用いて加え、この溶液を上下に3回ピペッティングした。このDNA混合物を、直ちに293細胞に、一度に一滴で、ディッシュ全体に均一に加えた。次いで、この細胞を、5% CO2中、37℃で加湿した環境下で6時間インキュベートした。顆粒状の沈殿物が、トランスフェクトした細胞培養物中に見えた。6時間後、このDNA混合物を細胞から除去し、次いで、これに、胎仔ウシ血清を含まない新しい細胞培養培地を与え、さらに72時間インキュベートした。
【0132】
72時間後、これらの細胞を、固体二酸化炭素上での凍結および37℃の水浴での融解の3サイクルによって溶解した。トランスフェクトした細胞のこのような凍結−融解による溶解を、全キャプシド合成(ウェスタンブロッティングによる)、DNAパッケージング(Q−PCRによる)、ヘパリン結合、インビトロ形質導入(HeLa細胞またはHepG2細胞+アデノウイルス−2もしくはエトポシドについて)および抗体による中和に関して特徴付けた。
【0133】
(III.変異型ビリオンの特性)
(A.キャプシド合成アッセイ)
タンパク質の変異は、タンパク質を不安定にし、プロテアーゼによる分解に対して正常なものよりもより感受性にし得る。本明細書中に記載される変異により作成されるキャプシドのレベルを決定するために、粗製溶解物のウェスタンブロッティングを行った。1μlの各粗製溶解物を、20mM Tris、PH6.8、0.1% SDS中で、80℃にて5分間インキュベートすることによって変性させた。タンパク質を、10%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen,Inc.,Carlsbad,CA)を用いるSDS−PAGEにより分画し、次いで、以下のようにウェスタンブロッティングにより検出した。これらのタンパク質を、ナイロン膜(Hybond−P,Amersham Biosciences,Piscataway,N.J.)上に、電気泳動的にブロットした(Xcell IIブロットモジュール,Invitrogen,Carlsbad,CA)。この膜を、1:20希釈の抗AAV抗体(モノクローナルクローンB1,Maine Biotechnology Services,Inc.Portland,ME)でプローブし、次いで、1:12000希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したヒツジ抗マウス抗体(Amersham Biosciences,Piscataway,N.J.)でプローブした。B1抗体結合タンパク質を、ECL Plusウェスタンブロッティング検出システム(Amersham Biosciences,Piscataway,N.J.)を用いて検出した。この膜を、X線フィルム(Biomax MS,Kodak,Rochester,NY)に1〜5分間曝露し、そして、AlphaImager 3300(Alpha Innotech Corp.,San
Leandro,CA)を用いてシグナルを定量した。
【0134】
(B.DNAパッケージングアッセイ)
定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)を用いて、変異型キャプシドを有するAAV−2ビリオンによるDNAパッケージングを評価した。この手順において、PCR増幅の前に粗製溶解物をDNAse Iで消化して、誤った陽性シグナルを生じ得る(トランスフェクションにおいて使用された)任意のプラスミドを除去した。この粗製溶解物を、10mM Tris,pH8.0、10μg/ml酵母tRNA中100倍(5μlの粗製溶解物+495μlの緩衝液)に希釈した。この希釈物のアリコート(10μl)を、最終容量50μlの25mM Tris,pH8.0、1mM MgCl2中10単位のDNAse I(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)で、37℃にて60分間消化した。DNAse Iを95℃で30分間加熱することにより不活性化した。1μl(20μg)のプロテイナーゼK(Roche Molecular Biochemicals、Indianapolis、IN)を加え、55℃で30分間インキュベートした。プロテイナーゼKを、95℃で20分間加熱することによって不活性化した。この時点で、このサンプルを、10mM
Tris,pH8.0、10μg/ml酵母tRNA(必要に応じて)中に希釈した。10μlのDNAse IおよびプロテイナーゼKで処理したサンプルを、以下から構成される40μlのQ−PCRマスターミックスに加えた:
4μl H2O
5μl 9μM lacZプライマー#LZ−1883F(5’−TGCCACTCGCTTTAATGAT−3’(配列番号8)Operon,Inc.,Alameda,CA)
5μl 9μM lacZプライマー#LZ−1948R(5’−TCGCCGCACATCTGAACTT−3’(配列番号9)Operon,Inc.,Alameda,CA)
1μl 10μM lacZプローブ#LZ−1906T(5’−6FAM−AGCCTCCAGTACAGCGCGGCTGA−TAMRA−3’(配列番号10)Applied Biosystems,Inc.Foster City,CA)
25μl TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems,Inc.Foster City,CA)。
【0135】
Applied Biosystems model 7000 Sequence Detection Systemを以下のプログラムに従って用いて、Q−PCR増幅を行なった。Taqポリメラーゼを活性化するための50℃で2分間、およびDNAテンプレートを変性するための95℃で10分間の2つの初期インキュベーションが存在した。次いで、このDNAを、95℃にて15秒間、次いで60℃にて60秒間の、40サイクルのインキュベーションにより増幅した。61〜1,000,000のコピー数に及ぶ直線状にしたpVm lacZの4倍希釈物を用いて、標準曲線を作成した。各サンプル内のパッケージングされたrAAV−lacZゲノムのコピー数を、Applied Biosystems Prism 7000 Sequence Detection Systemバージョン1.0ソフトウェアを用いて、Q−PCRから得られたCt値から計算した。
【0136】
(C.ヘパリン結合アッセイ)
粗製溶解物中のウイルスのヘパリン結合を、以下のように実施した。野生型もしくは変異型のキャプシドを有するAAV−2ビリオンを含む20μlの粗製細胞溶解物を、ヘパリンビーズの50%スラリー(25μl)と混合した。このヘパリンビーズ(Ceramic Hyper−DM Hydrogel−Heparin,Biosepra,Cergy−Saint−Christophe,France)は、直径80μmであり、1000Åの孔を有し、AAV(直径約300Å)のヘパリンへのアクセスが可能であった。このビーズを、使用前に、リン酸緩衝化生理食塩水中で十分に洗浄した。このビーズおよびビリオンを、37℃で60分間インキュベートした。このビーズをペレット状にした。未結合のビリオンを含む上清を保存した。このビーズを、500μlのPBSで2回洗浄した。この上清を合せ、未結合のキャプシドタンパク質を10%の最終濃度のトリクロロ酢酸で沈殿させた。沈殿したタンパク質を、20mM Tris,pH6.8、0.1% SDS中で、80℃にて5分間インキュベーションすることにより変性させた。ヘパリンビーズに結合したビリオンを、そのビーズを20mM Tris,pH6.8、0.1% SDS中で、80℃にて5分間インキュベーションすることにより放出した。この様式で調製した全てのタンパク質サンプルを、10%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen,Inc.,Carlsbad,CA)を用いるSDS−PAGEにより分子量で分画し、次いで、以下のようにウェスタンブロッティングにより検出した。このタンパク質を、ナイロン膜(Hybond−P,Amersham Biosciences,Piscataway,N.J.)上に電気泳動的にブロットした。この膜を、1:20希釈の抗AAV抗体(モノクローナルクローンB1,Maine Biotechnology Services,Inc.Portland,ME)でプローブし、次いで、1:12000希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したヒツジ抗マウス抗体(Amersham Biosciences,Piscataway,N.J.)でプローブした。このB1抗体結合タンパク質を、ECL Plusウェスタンブロッティング検出システム(Amersham Biosciences,Piscataway,N.J.)を用いて検出した。この膜を、X線フィルム(Biomax MS,Kodak,Rochester,NY)に1〜5分間曝露し、そして、AlphaImager 3300(Alpha Innotech Corp.,San Leandro,CA)を用いてシグナルを定量した。
【0137】
(D.インビトロ形質導入アッセイ)
HeLa細胞(American Type Culture Collection,カタログ#CCL−2)を、1ウェルあたり5e4細胞で24ウェルディッシュにプレートした。この細胞を、10%胎仔ウシ血清(Gibco)およびペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco)中で、37℃にて24時間増殖させた。コントロールの野生型ウイルスおよび変異型ウイルスを含む粗製溶解物の10倍希釈物を、DME/10% FBS中で作製した。このウイルス希釈物を、野生型アデノウイルス−5(American Type Culture Collection,カタログ#VR−5)と共に細胞に加えた。使用したアデノウイルスの量は、1ウェルあたり0.1μlであり、これは、前もって力価測定して、rAAV−2 lacZのHeLa細胞への形質導入を最大限に刺激することが示された。37℃にて24時間後、この細胞を、2%ホルムアルデヒドおよび0.2%グルタルアルデヒドを用いて固定し、そして、PBS中1mg/ml(2.5mM)の5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルβ−Dガラクトピラノシド、2mM MgCl2、5mMフェリシアン化カリウム、5mMフェロシアン化カリウム、pH7.2を用いて、β−ガラクトシダーゼ活性について染色した。さらに24時間後、4つのランダムな顕微鏡視野内の青色細胞の数を計数し、各ウェルについて平均した。HeLa細胞およびアデノウイルス−5を用いる代わりに、HepG2細胞および20μMのエトポシドもまた使用され得、類似の結果が得られた。
【0138】
(E.抗体および血清の中和アッセイ)
HepG2細胞(American Type Culture Collection,カタログ#HB−8065)を、1ウェルあたり1.5e5細胞で24ウェルディッシュにプレートした。細胞を、10%の胎仔ウシ血清およびペニシリン−ストレプトマイシンを補充した(イーグルの)最小基本培地(KMEM)(ATCC)中で37℃にて24時間増殖させた。A20抗体(Maine Biotechnology,Portland,ME)の2倍希釈物をPBSを用いて作成した。1μlのウイルス調製物の粗製溶解物を15μlのKMEM/0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)と混合することによって、野生型および変異型のウイルスを希釈した。KMEM/0.1% BSAおよびPBSのサンプルを、ネガティブコントロールとして含めた。合計16μlのA20希釈物を、16μLのウイルスと混合し、37℃で1時間インキュベートした。10μlのウイルス/A20混合物を、3つの細胞のウェルの各々に添加した。37℃にて1時間インキュベートした後、エトポシド(ジメチルスルホキシド中20mMストック溶液、Calbiochem)を、20μMの最終濃度で各ウェルに添加した。24時間後、この細胞を、2%ホルムアルデヒドおよび0.2%グルタルアルデヒドを用いて固定し、そして、PBS中1mg/ml(2.5mM)の5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルβ−Dガラクトピラノシド、2mM MgCl2、5mMフェリシアン化カリウム、5mMフェロシアン化カリウム、pH7.2を用いて、β−ガラクトシダーゼ活性について染色した。さらに24時間後、4つのランダムな顕微鏡視野内の青色細胞の数を計数し、各ウェルについて平均した。抗体の中和力価を、抗体なしの形質導入と比較して、ウイルスの形質導入事象(すなわち、青色細胞)の数の50%減少を生じる抗体の希釈として規定する。
【0139】
血友病患者から収集したヒト血清による変異体の中和、または、10,000人を超えるドナーに由来する精製ヒトIgG(Panglobulin,ZLB Bioplasma AG,Berne,Switzerland)に対する中和を、同じ様式でアッセイした。精製ヒトIgGについて、10mg/mlの濃度を、希釈していない血清と同等と考えた。なぜならば、ヒト血清におけるIgGの濃度は、5〜13mg/mlに及ぶからである。
【0140】
(F.ELISA)
(a)A20 ELISA:
AAV−2を捕捉し、検出するためにモノクローナル抗体(A20)を使用するELISAキット(American Research Products,Belmont,MA)を用いて、粒子数を定量した。このキットを、製造業者の指示に従って使用した。光学密度を、450nmの波長のSpectramax 340PCプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)にて測定した。最大半減の光学密度の読みを生じるために必要とされるウイルスの濃度を計算し、異なるサンプルからの結果と比較するために使用した。
【0141】
(b)IgG/A20 ELISA:
マイクロタイタープレート(96ウェルEIA/RIA平底、高結合ポリスチレン、Costar,Corning,NY)を、0.1M重炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.2中100μl(10μg)のPanglobulinを用いて、20℃にて16時間コーティングした。プレートを、200μlのPBS、1% BSA、0.05% Tween−20で、20℃にて1時間ブロッキングした。1ウェルあたり3.08〜1.010ベクターゲノムの範囲で増加する量のCsCl勾配精製したネイティブ、または変異型のAAV−2を添加し、20℃にて16時間インキュベートした。未結合のウイルスを、PBS、0.1% Tween−20緩衝液のアリコート(200μl)を3回用いて洗い出した。AAV−2 ELISAキットからのA20−ビオチンを、1:50に希釈し、1ウェルあたり100μlを添加し、37℃で1時間インキュベートした。未結合のA20−ビオチンを、PBS、0.1% Tween−20緩衝液のアリコート(200μl)を3回用いて洗い出した。次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジンを1:20に希釈し、37℃で1時間インキュベートした。未結合のストレプトアビジン−HRPを、PBS、0.1% Tween−20緩衝液のアリコート(200μl)を3回用いて洗い出した。西洋ワサビペルオキシダーゼ基質(Immunopure TMB基質キット Pierce,Rockford,IL)を添加し、20℃で15分間インキュベートした。この反応を、100μlの2M硫酸で停止し、光学密度を、450nmの波長のSpectramax 340PCプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)にて測定した。最大半減の光学密度の読みを生じるために必要とされるウイルスの濃度を計算し、異なるサンプルからの結果と比較するために使用した。
【0142】
(c)IgG ELISA:
マイクロタイタープレート(96ウェルEIA/RIA平底、高結合ポリスチレン、Costar,Corning,NY)を、0.1M重炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.2中、1ウェルあたり3.08〜1.010ベクターゲノムの範囲で増加する量のCsCl勾配精製したネイティブもしくは変異型のAAV−2を用いて、20℃にて16時間コーティングした。プレートを、200μlのPBS、1% BSA、0.05% Tween−20で、20℃にて1時間ブロッキングした。未結合のウイルスを、PBS、0.1% Tween−20緩衝液のアリコート(200μl)を3回用いて洗い出した。パングロブリンを添加し、37℃で1時間インキュベートした。未結合のパングロブリンを、PBS、0.1% Tween−20緩衝液のアリコート(200μl)を3回用いて洗い出した。次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したロバ抗ヒトIgG(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。未結合の二次抗体を、PBS、0.1% Tween−20緩衝液のアリコート(200μl)を3回用いて洗い出した。西洋ワサビペルオキシダーゼ基質(Immunopure TMB基質キット Pierce,Rockford,IL)を添加し、20℃で15分間インキュベートした。この反応を、100μlの2M硫酸で停止し、光学密度を、450nmの波長のSpectramax 340PCプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)にて測定した。最大半減の光学密度の読みを生じるために必要とされるウイルスの濃度を計算し、異なるサンプルからの結果と比較するために使用した。
【0143】
本明細書中で記載した変異体のDNAパッケージング、ヘパリン結合および形質導入の特性を、表1にまとめる。本明細書中に記載される変異のいくつかの抗体中和特性を、表2および表3にまとめる。
【0144】
【表1−1】
【0145】
【表1−2】
【0146】
【表2−1】
【0147】
【表2−2】
【0148】
【表3】
見られ得るように、AAV−2の表面上の単一のアミノ酸の変更によって、61のうち32の変異が、キャプシド合成、DNAパッケージング、ヘパリン結合およびインビトロでの細胞の形質導入に関して、ほぼ正常な特性を有したと同定された。10の変異は、抗体による中和により抵抗性であった。
【0149】
変異は、キャプシドタンパク質を、野生型よりも5倍低いレベル〜8倍高いレベルにした。これらは、野生型よりも25倍低いレベル〜20倍高いレベルのDNAをパッケージングした。形質導入に関しては、28の変異が、少なくとも50%野生型と同等に形質導入し、16の変異が、野生型の10〜50%形質導入し、6の変異が、野生型の1〜10%形質導入し、そして、11の変異が、野生型の1%未満形質導入した(表1)。ヒト頸部癌腫由来のHeLa細胞もしくはヒト肝臓由来HepG2細胞の形質導入においてまたは、形質導入を増強するためにアデノウイルスもしくはエトポシドのいずれかを使用する場合は、有意差がなかった。いくつかの変異は、野生型の5倍以上までの形質導入活性を再現可能に有した(表1)。
【0150】
1%未満の形質導入活性を有する変異の多くは、ヘパリン結合部位(案)の片側の、単一の領域においてクラスター形成していた(表1、図4と図5を比較する)。特定の理論に束縛されないが、この変異は、タンパク質結合部位であり得る領域を覆う。形質導入に最も欠陥のある変異は、N131Aであった。N131の機能は記載されていないが、これは、42の既知のAAVサブタイプのうち40で保存されている。
【0151】
4つの変異(A356R、G375A、S361A/S494P、S361A/R592K)は、他のものよりも顕著にヘパリン結合に影響を与えた。これらの各々は、ヘパリン結合に重要なアミノ酸として以前に同定されていた、R347、R350、K390、R448およびR451の近くにある(図5)。
【0152】
野生型AAV−2キャプシドの形質導入活性の約10%以上を有する45の変異(Q126A、S127A、D190A、G191S、S247A、Q248A、S315A、T317A、T318A、Q320A、R322A、S331A、D332A、R334A、D335A、T354A、S355A、S355T、A356R、D357A、N359A、N360A、N360H/S361A、S361A、S361A/R592K、E362A、D377A、K390A、E393A、E394A、K395A、F396A、K407A、E411A、T413A、E418A、K419A、E437A、Q438A、G449A、N450A、Q452A、N568A、K569A、V571A)を、マウスA20モノクローナル抗体による中和についてスクリーニングした。4の変異(Q126A、S127A、S247A、Q248A)は、野生型キャプシドを有するAAV2よりもA20による中和に対して有意により抵抗性であった(表3を参照のこと)。これらの変異(Q126A、S127A、S247A、Q248A)の力価は、それぞれ、1:203、1:9、1:180および1:89であり(図8)、これは、野生型AAV−2キャプシドに対するA20モノクローナル抗体の中和力価(1:509)よりも、2.5倍、57倍、2.8倍、および5.7倍以上大きい。これらの4の変異は、AAV−2キャプシドの表面上で、互いに直ぐ隣接して位置している(図6)。
【0153】
A20による中和を減少する4の変異のうちの3(Q126A、S127A、Q248A)は、キャプシド合成、DNAパッケージング、ヘパリン結合および形質導入に関して、本質的に正常であった。変異S247Aによるキャプシド合成および形質導入は、野生型AAV−2キャプシドよりも4〜5倍低かった。従って、いくつかの重要な特性においては正常であるが、抗体中和に対する抵抗性が増加したウイルスを有する可能性がある。
【0154】
変異型rAAVビリオンのQ126A、S127A、S247A、Q248Aは、2つの異なるヒト細胞株(HeLaおよびHepG2)において形質導入効率を維持しながら、中和抗体に対して、予想外に2.5倍〜57倍の抵抗性を生じた。これらの4つのアミノ酸は、AAV−2の表面上で、互いに直ぐ隣接している(図6)。さらに、これらは、ペプチド競合および挿入性変異誘発実験に基づいて、A20抗体の結合への関与が示唆されている領域にある。これらの知見に基づいて、A20抗体が、AAV−2が細胞に形質導入するために必要な1つ以上の機能をブロックする可能性がある。以前の研究において、A20は、AAV−2のヘパリンへの結合をブロックしないことが示されている(Wobusら(2000)J.Virol.74:9281−93)。本明細書において報告される結果は、このデータを支持する。なぜならば、ヘパリン結合に影響を与える変異は、A20の結合に影響を与える変異から離れて位置するからである。A20はヘパリン結合をブロックしないが、AAV−2が細胞内に入るのを防止する。A20は、ヘパリンのような「ドッキングレセプター」への結合とは干渉しないが、その代わりに、AAV−2の「進入レセプター」への結合と干渉する可能性がある。AAV−2の形質導入に必要とされる2つのタンパク質が記載されており、これらは、進入レセプター:塩基性線維芽細胞増殖因子レセプター(bFGFR)およびαvβ5インテグリンであり得る。これらのレセプターが結合し得るAAV−2上の領域は、同定されていない。αvβ5インテグリン、bFGFRまたは両方が、形質導入に有意に(正常の1%未満)欠陥がある変異を高い濃度で有する、本明細書中で記載される局所的な領域に結合し得る可能性がある。最も形質導入に欠陥がある領域は、A20結合に影響を与える変異の近くに位置することに注意されたい。
【0155】
野生型AAV−2キャプシドの約10%以上の形質導入活性を有する同じ45の変異(Q126A、S127A、D190A、G191S、S247A、Q248A、S315A、T317A、T318A、Q320A、R322A、S331A、D332A、R334A、D335A、T354A、S355A、S355T、A356R、D357A、N359A、N360A、N360H/S361A、S361A、S361A/R592K、E362A、D377A、K390A、E393A、E394A、K395A、F396A、K407A、E411A、T413A、E418A、K419A、E437A、Q438A、G449A、N450A、Q452A、N568A、K569A、V571A)を、3つのヒト中和抗血清による中和についてスクリーニングした。野生型キャプシドを有するAAV2よりも、3つ全てのヒト抗血清による中和に抵抗性であった4の変異(R334A、N360H/S361A、E394A、N450A)を、最初のスクリーニングで同定した(表2を参照のこと)。これらの変異について試験した場合の抗血清の力価は、野生型AAV−2キャプシドに対する3つのヒト抗血清の中和力価の1.3倍〜3.6倍以上の範囲に及んだ(表3)。6の他の変異(N360A、E411A、T413A、G449A、N568A、V571A)は、試験した3つのうちの1つまたは2つの血清による中和に対する抵抗性のレベルが増加した(表2)。
【0156】
抗体中和抵抗性を与える変異の位置は、参考になる。第1に、マウスモノクローナル抗体に対して抵抗性を与える変異は、AAV−2キャプシドの表面上で、互いにすぐ近接して位置し、それゆえ、ヒト抗血清に対して抵抗性を与える変異は、より広い領域に渡って拡がっている(図7)。このことは、ヒト抗血清がポリクローナルであることを示唆しており、これは、驚くべきことではない。第2に、両方のセットの変異は、シリンダーが抗体結合のために容易にアクセス可能であるにも関わらず、プラトーおよびスパイクには位置するが、シリンダーには位置しない。第3に、中和に影響を与える変異は、AAV機能に重要な領域の近くにある。ヒト抗血清による中和に影響を与えるいくつかの変異(360位、394位、449位、450位)は、中和抗体による結合のための機能的に重要な標的である可能性が高い、ヘパリン結合部位の2アミノ酸以内に位置する。他の変異(126位、127位、247位、248位、334位、568位、571位)は、野生型の10%未満の形質導入活性を有する変異の多くを含む、プラトー(デッドゾーン)上の大きな領域の周辺に位置する(図4)。ヘパリン結合部位と同様に、この領域は、おそらく、重要な機能を有し、そして、中和抗体による結合のための機能的に重要な標的である可能性が高い。
【0157】
抗体中和に対する抵抗性を与える複数の変異が組み合わされる場合、抗体中和に対する累積的な抵抗性は、しばしば、特に、個々の変異が低いレベルの抵抗性を生じる場合に、倍数的に増加する。それゆえ、本明細書中に記載される変異が、1つのキャプシド内で合わされる場合、これらのキャプシドは、野生型のキャプシドと比較して、5倍〜1000倍以上抵抗性であり得るようである(表3)。1:1000以上のA20の希釈は、野生型AAV−2の3%未満を中和する。従って、A20による中和に対していくらかの抵抗性を提供する4つの単一のアミノ酸の組み合わせを有する変異は、希釈していないA20抗血清による中和に対してさえも、ほとんど完全に抵抗性であり得る。
【0158】
野生型の10%未満の形質導入活性を有する変異はまた、抗体中和に対しても抵抗性であり得るが、これらは、試験しなかった。なぜならば、本明細書中に記載されるように、中和アッセイは、野生型の約10%を超える形質導入活性を有する変異をアッセイするために使用される場合に、一番効果を発揮するからである(図3)。これは、力価が正確に計算され得るように、広範な範囲の抗体に対する中和を検出し得ることが望ましいからである。しかし、野生型の10%未満の形質導入活性を有する変異は、依然として、形質導入欠損変異が競合相手として使用される、本明細書中に記載されるアッセイの改変物を用いて、中和抗体に結合する能力について試験され得る。例えば、野生型「レポーター」rAAV−2 lacZウイルスは、任意のゲノムを欠く(「空のウイルス」)か形質導入欠損「競合」AAV−2、または別の遺伝子(例えば、緑色蛍光タンパク質)をパッケージングするAAV−2ウイルスと混合され得る。「競合」AAV−2が、中和からレポーターAAV−2を保護する場合、「競合」キャプシドは、中和抗体に結合し得るはずであり、従って、中和に対して抵抗性ではない。「競合」AAV−2が中和からレポーターAAV−2を保護しない場合、「競合」キャプシドは、中和抗体に結合し得ず、従って、正常な量のキャプシドを作ることが示されている限りは、中和に対して抵抗性であり得る。このように、形質導入欠損であるが、抗体中和に対して抵抗性である変異さえも、同定され得る。中和抗体の存在下で遺伝子を送達するためのビヒクルとして有用なこのような変異を作製するために、通常の形質導入活性を回復するが、なお中和に対して減少した感受性を保持する、アラニン以外のアミノ酸置換を発見することが望ましい。
【0159】
66以上の変異を作製し、上記のようなプロトコールを用いて試験した。追加の変異のDNAパッケージング、ヘパリン結合および形質導入の特性を、表4にまとめる。
【0160】
【表4−1】
【0161】
【表4−2】
【0162】
【表4−3】
【0163】
【表4−4】
表4に示すように、野生型キャプシドと比較して、増加した形質導入を有するいくつかの変異が得られた。例えば、変異S130T、N133A、D357E、H372N、R451K、G449A/N450A、R334A/N450A、R334A/G449A/N568A、R334A/N568A、G449A/N568Aは、増加した形質導入を示した。変異S130Tは、最もよく形質導入し、野生型のレベルの約11倍であった。これは、S(セリン)とT(トレオニン)との間の唯一の差はCH2基であるので、驚くべきことであった。また、表4に見られるように、組合せた変異は、通常、最低レベルの形質導入を有する単一の変異のレベルと同じレベルで形質導入された。
【0164】
キャプシド内の特性のアミノ酸は、ヘパリン結合部位と重なる。この領域は、本明細書において「デッドゾーン」または「DZ」と呼ばれる。デッドゾーン内の変異は、AAV−2レセプターの1つ(例えば、ヘパリン)になお結合するが、細胞に形質導入しないキャプシドを生じ得る。アミノ酸置換を、デッドゾーンのアミノ酸内に作製し、これらの置換を、アラニンでの同じアミノ酸の置換と比較した。結果を表5に示す。
【0165】
【表5−1】
【0166】
【表5−2】
【0167】
【表5−3】
上に示すように、置換がより保存的であれば、デッドゾーンの変異はより機能的であった。例えば、Qは、Hについての良好な置換基であった。Dは、Eについての良好な置換基であった。EまたはNは、Dについての良好な置換基であった。いくつかの固有の特性を有するグリシンは、置換することが難しかしいことは、驚くべきことではなかった。
【0168】
変異G375P(野生型の0.01%の形質導入)およびG375A(野生型の2.4%の形質導入)のヘパリン結合特性を比較した。変異G375Pは、50%でヘパリンに結合し、G375Aは、95%でヘパリンに結合した。375位は、デッドゾーンとヘパリン結合部位の機能の両方に必要とされ得る。G375A変異におけるグリシンのアラニンでの置換は、他のデッドゾーン変異と同じ表現型を生じる−−これは、正常にヘパリンに結合するが、正常な形質導入の10%未満を示す。しかし、G375P変異におけるグリシンのプロリンでの置換は、ヘパリン結合を欠損した変異(例えば、R347C/G449A/N450A)とより類似する表現型を生じる。特定の理論に束縛されないが、グリシンとアラニンとプロリンとの間の構造の差は、グリシンの側鎖が、デッドゾーンの機能に必要とされ得るこどを示唆する。なぜならば、アラニンでの置換は、形質導入を減少させるからである。アミン基を有さないプロリンでの置換が、ヘパリン結合に影響を与えるので、アミン基がヘパリン結合に必要とされ得る。あるいは、プロリン置換は、少し離れたヘパリン結合部位の構造を崩壊させ得る。ヘパリンに結合しなかった3の変異(R448A、R451A、R347C/G449A/N450A)が存在したが、これらは、ヘパリン結合に必要とされることが以前に知られている位置(347、448、451)であった。
【0169】
これらの変異のいくつかの、マウスモノクローナル抗体(A20)による中和活性、そしてまた、精製し、プールしたヒトIgGによる中和活性を決定した。プールしたヒトIgG調製物は、十分に特徴付けられており、市販されており、高度に精製されており、そして、米国(IgGを精製するために使用された血液の供給源であった)において見出されているほとんど全ての抗原特異性を表すと考えられているので、プールしたヒトIgG調製物を使用した。結果を表6に示す。
【0170】
【表6−1】
【0171】
【表6−2】
表に示すように、21の変異(S127A、G128A、D132N、R334A、T354A、N360H/S361A、W365A、K390A、E394K、K395A、K407A、T413K、E437A、G449A、N568A、K569A、V571A、R334A/G449A、R334A/N568A、N568A/V571A、R334A/G449A/N568A)は、ネイティブなAAV−2キャプシドと比較して、ヒトIgGの大きなプールによる中和に対して2〜10倍より抵抗性であった。予測されるように、プールしたヒトIgGによる中和に抵抗性であった変異のいくつかはまた、個々のヒト血清による中和に抵抗性であった(例えば、R334A、N360H/S361A、G449A、N568A、V571A)。特定の理論に束縛されないが、これらのアミノ酸を含むエピトープは、高い親和性または高頻度で、抗体に結合し得る。しかし、プールしたヒトIgGによる中和に抵抗性のいくつかの変異は、個々の血清に抵抗性であると同定されなかった。これは、おそらくは、これらのアミノ酸を含むエピトープが、ヒト集団においてより希にしか見出されないからである。さらに、いくつかの変異は、個々の血清による中和に対しては抵抗性であったが、プールしたヒトIgGによる中和に対しては抵抗性でなかった(例えば、E394A、N450A)。これらの場合、これらのアミノ酸を含むエピトープに結合する抗体は、その結合に影響を与える変異が、IgGの大きな複合混合物との関連で検出可能とならないように、親和性が低いか、または量が少ない可能性がある。
【0172】
図7に見られ得るように、これらの変異は、AAV−2の表面を横切る種々の位置に分散している。これらが覆う領域の大きさは、平均的なエピトープの大きさの2〜3倍であり、全てのヒトIgGの全体による中和には、少なくとも2〜3のエピトープが関与し得ることを示唆している。
【0173】
単一の中和抵抗性変異の組み合わせは、時折、複数の変異を含む単一の変異と比較して、かなり高い程度の中和抵抗性を生じた。しかし、この効果の度合いは、明白には、これらの中和抵抗性のレベルに対して倍数的に増加しない。
【0174】
マウスモノクローナル抗体A20による中和に抵抗性の2以上の変異をまた同定した:E411A(A20による中和に対して2.7倍抵抗性)およびV571K(A20による中和に対して217倍抵抗性)。V571K変異は、本発明者らにより「リジンスキャニング」と命名された概念に対する証拠を提供する。大きな側鎖を有するアミノ酸を、アラニンのようなより小さな側鎖を有するアミノ酸に変更することによって、抗体結合部位の一部を除去するのではなく、リジンスキャニングの概念は、小さな側鎖を有するアミノ酸(例えば、V571)を、大きな側鎖を有するリジンで置き換えることである。アラニン置換の場合と同じように、抗体結合部位の一部を除去するのではなく、リジンスキャニングの目的は、抗体結合と立体的に干渉し得るより大きなアミノ酸を挿入することである。リジンは、一般的にAAV−2の表面上に見られ、従って、一般に認められた置換であるようなので、リジンを選択した。しかし、アルギニン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシンまたはグルタミンにような他の大きなアミノ酸もまた、生物学的活性を損ねることなく、類似の効果を生じ得る。V571Aは、マウスA20抗体による中和に抵抗性ではないが、V571Kは、ネイティブなV571 AAV−2キャプシドによる中和よりも、A20による中和に対して、217倍より抵抗性であることに注意されたい。
【0175】
V571Kは、A20中和に抵抗性であるとして同定された4の他の変異(Q126A、S127A、S247A、Q248A;表3)の直ぐ側にある、プラトーに位置する。しかし、E411Aは、同じエピトープ内であるためにQ126A、S127A、S247A、Q248AおよびV571Kに十分に近いにも関わらず、スパイク上に位置する。A20エピトープ内にE411が含まれることは、A20が、プラトーおよびスパイクの両方に(すなわち、キャニオンを横切って)結合し得ることを証明する。分子モデリングは、AAV−2レセプターの1つである、塩基性FGFレセプター(PDB ID:1FQ9)が、(トランスフェリンレセプターがイヌパルボウイルスに結合すると考えられる方法と非常に類似する様式および位置で)AAV−2キャニオン内に非常によくフィットし得ることを示唆する。塩基性FGFレセプターがAAV−2キャニオンに結合する場合、キャニオンを横切るA20の結合は、塩基性FGFレセプターの結合をブロックし、そして塩基性FGFレセプターが媒介する可能性のある形質導入の工程である、進入をブロックすることによって、A20がAAV−2を中和するという観察を説明する。
【0176】
このプラトーおよびスパイクの領域は、レセプター結合を妨げることによって、他のAAVを中和する結合に結合し得る。例えば、AAV−5は、細胞内に進入するために、PDGFレセプターを必要とすることが示されている(Di Pasqualeら,Nature Medicine(2003)9:1306−1312)。PDGFレセプターの構造は公知ではないが、これは、アミノ酸配列が塩基性FGFレセプターに相同である。例えば、両方が、類似の反復性Ig様配列ドメインから構成され、従って、類似の三次元構造を有すると予測される。従って、PDGFレセプターは、AAV−5キャニオンに結合し得る可能性がある。
【0177】
V571KではなくV571Aは、プールしたヒトIgGによる中和に対して抵抗性である。逆に、V571AではなくV571Kは、マウスモノクローナルA20による中和に対して抵抗性である。ヒトIgGプール内の抗体が、V571に直接結合することが可能である。より小さいアラニン側鎖をバリン側鎖で置換することにより、ヒトIgGによる結合が少なくなり得る。リジン側鎖は、なお結合を生じさせるのに十分な疎水性接触を提供し得るが、結合を妨げるほど大きくない。A20は、V571に直接結合し得ない(このことは、結合またはA20による中和に対するV571A変異の効果が存在しないことを説明している)。しかし、A20は、明らかにV571の近傍に結合する。V571Kが、例えば、立体干渉によって、A20結合と間接的に干渉することが可能である。
【0178】
IgG ELISAもまた行なった。特にインビボにおいて、多くの中和の潜在的な機構が存在する。AAVの機能に必要とされていない領域におけるAAVに対するIgGの結合は、なお遺伝子を送達するAAVの能力の減少を生じ得る。例えば、マクロファージの主な機能は、抗体に結合する外来性生物に結合することである。抗体が結合した生物が、(Fcレセプターを介して)マクロファージに結合すると、この外来性の生物は、呑食されて、破壊される。抗体が、AAVを中和するために使用し得る別の潜在的な経路は、架橋によるものである。抗体は、二価であり、AAVは、1エピトープあたり(そして、おそらくは複数のエピトープあたり)60の抗体結合部位を有するようである。従って、科学文献において十分に実証されているように、特定の抗体およびウイルスの濃度において、AAVと抗体の架橋ネットワークが形成され得る。このような免疫複合体は、沈殿するか、標的器官に到達する前に、血管系内で留まるほど大きくなり得る。この理由のために、機能的に有意ではないAAVの領域上で、インビボにてAAVに結合する抗体は、機能的に有意な領域に結合する抗体と同じだけ減少した形質導入を生じ得る。結果を表7に示す。
【0179】
【表7】
表7に示すように、A20とヒトIgGのプールの両方に、ネイティブなAAV−2よりも10倍低く結合する1の変異(V571K)を同定した。全てのA20 ELISAにおいて、変異V571Kの結合は、10倍減少した。全てのヒトIgG ELISAにおいて、変異V571Kの結合は、10倍減少した。A20/IgGサンドイッチELISAの形式を使用する場合、変異V571Kの結合は、100倍減少した。位置(571)は、AAV−2キャプシドの表面上の126位、127位、247位および248位の直ぐ側である。126位、127位、247位および248位を、マウスモノクローナル抗体A20による中和のために重要であるとして同定した。従って、この領域は、マウスおよびヒトの両方において抗原性であり得る。
【0180】
まとめると、抗体による中和は減少したが、生物学的特性には最小限の影響しか与えなかった、AAV−2キャプシドの外側表面へのいくつかの変異を同定した。特に、127の変異を、IgG構造およびAAV−2構造の手動によるドッキングに基づいて、抗体結合に最もアクセス可能であると思われる72の位置(表面領域の55%)に作製した。単一のアラニン置換(57)、単一の非アラニン置換(41)、複数の変異(27)、および挿入(2)を作製した。全ての変異が、キャプシドタンパク質を生成し、野生型の10倍以内のレベルでDNAをパッケージングした。ヘパリン結合部位に近いか、またはヘパリン結合部位の中にある6の変異を除く全ての変異は、野生型と同様に、ヘパリンに結合した。98の単一変異のうちの42は、少なくとも野生型と同等に形質導入した。いくつかの変異は、増加した形質導入活性を有した。1つの変異(SからTへの変異)は、野生型よりも11倍高い形質導入活性を有した。組み合わせ(上または下)変異は、通常、形質導入の最も低いレベルを有する単一変異のレベルと同じレベルで形質導入した。
【0181】
10%未満の形質導入活性を有する、15の単一アラニン置換変異のうちの13が、ヘパリン結合部位と重なる領域(表面の10%)において、互いに近接していた。これらの「デッドゾーン(DZ)」変異は、正常な形質導入活性の0.001%〜10%を有したが、これらの全てが、野生型と同じ効率でヘパリンに結合した。DZ変異により形質導入は増加し得、そして、3つの場合において、保存的置換を作製することによって、野生型のレベルを回復し得た。
【0182】
5の変異は、ELISAにおいてマウスモノクローナル抗体(A20)への結合を減少し、そして、インビトロにおいてA20による中和に対して2.5倍〜217倍抵抗性であった。これらの5の変異は、互いに、そしてDZに対して近接していた。合計21の単一変異は、3つのヒト抗血清による中和に対して、または、精製したヒトIgGの大きなプール(IVIG,Panglobulin)による中和に対して、野生型と比較して2倍〜10倍抵抗性であった。変異の異なるセットは、異なるヒト血清に対する抵抗性を与えた。これらの変異の位置は、広範囲に及んだ。これらが覆う領域の大きさは、ヒト血清が、少なくとも2つのエピトープに結合することによって、AAV−2を中和することを示唆した。3の変異は、試験した全ての血清に対して抵抗性であったが、これらの3の変異の組み合わせは、IVIGによる中和に対する抵抗性を増加させなかった。全てのIVIG ELISAにおいて野生型よりも10倍低くIVIGに結合した1つ(VからK)の変異を同定した。しかし、この変異は、IVIG中和に対して抵抗性ではなかった。
【0183】
まとめると、「デッドゾーン」における変異は、形質導入には影響を与えるが、ヘパリン結合には影響を与えない。DZの周りの変異は、形質導入を増加し得るか、または抗体の結合を減少し得る。DZは、非常に酸性(酸性アミノ酸6、塩基性アミノ酸0)である。特定の理論に束縛されないが、これは、塩基性タンパク質(例えば、bFGFまたはbFGFレセプター)についての結合部位であり得る。デッドゾーンは、AAV−2上のヘパリン結合部位に隣接しているので、タンパク質がデッドゾーンに結合すると、このタンパク質もまたヘパリンに結合し得る。bFGFおよびbFGFレセプターの両方が、ヘパリンに結合する。
【0184】
(実施例2 変異型AAV−hF.IXを用いる、マウスにおける第IX因子の発現)
rAAV−F.IXを、rAAV−2 hF.IXベクターおよび上記の方法を用いて調製する。トランスフェクトした細胞の凍結−融解溶解物を沈殿させ、2サイクルの等密度遠心法によりrAAVビリオンを精製し;そして、rAAVビリオンを含む分画をプールし、透析し、濃縮する。濃縮したビリオンを処方し、滅菌濾過(0.22μM)し、ガラスバイアルに無菌的に充填する。ベクターゲノムを、「Real Time Quantitative Polymerase Chain Reaction」法(Real Time Quantitative PCR.Heid C.A.,Stevens J.,Livak K.J.およびWilliams P.M.1996.Genome Research 6:986−994.Cold Spring Harbor
Laboratory Press)により定量する。
【0185】
4〜6週齢の雌性マウスに、変異型rAAV−hF.IXビリオンを注射する。ケタミン(70mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)の腹腔内注射によりマウスを麻酔し、下肢部に1cmの長軸方向の切開をつくる。変異型組換えAAV−hF.IX(HEPES緩衝化生理食塩水、pH7.8中2×1011ウイルスベクターゲノム/kg)ビリオンを、Hamiltonシリンジを用いて、各脚の前脛骨筋(25μL)および大腿四頭筋(50μL)に注射する。4−0 Vicryl縫合糸で切開を閉じる。7日間隔で、ミクロヘマトクリット毛細管内の眼窩後神経叢から、血液サンプルを採取し、血漿を、ELISAによってhF.IXについてアッセイする。マウス血漿中のヒトF.IX抗原を、Walterら(Proc Natl Acad Sci USA(1996)3:3056−3061)により記載されたように、ELISAにより評価する。ELISAは、マウスF.IXとは交差反応しない。全てのサンプルを、二連で評価する。注射したマウスの筋肉から得られるタンパク質抽出物を、ロイペプチン(0.5mg/mL)を含有するPBS中に浸軟させ、その後、超音波処理して調製する。細胞の細片を遠心分離により除去し、1:10希釈のタンパク質抽出物を、ELISAにおいてhF.IXについて評価する。hF.IXの循環血漿濃度を、IM注射後の種々の時点(例えば、0週間、3週間、7週間および11週間)で、ELISAにより測定する。
【0186】
(実施例3 変異型AAV−cF.IXを用いる、イヌにおける血友病B処置)
イヌ第IX因子(cF.IX)遺伝子の触媒ドメインにおける点変異についてヘミ接合性の雄と、ホモ接合性の雌を含む、重篤な血友病Bを有するイヌの群を用いて、変異型rAAVビリオン(rAAV−cF.IX)により送達されるcF.IXの効果を試験する。重篤な血友病のイヌは、血漿cF.IXを欠き、その結果、全血凝固時間(WBCT)が60分を超えるまで増加し(正常なイヌは、6〜8分の間のWBCTを有する)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)が50〜80秒まで増加している(正常なイヌは、13〜18秒の間のaPPTを有する)。これらのイヌは、再発性の自然出血を被る。代表的には、有意な出血エピソードは、10mL/kgの正常なイヌ血漿の単回の静脈内注入により首尾よく管理される;時折、繰り返し注入が、出血の制御のために必要とされる。
【0187】
一般的な麻酔下で、血友病Bのイヌに、rAAV1−cF.IXビリオンを、1×1012vg/kgの用量で筋肉内注射する。これらの動物には、手順の間に、正常なイヌ血漿を与えない。
【0188】
全血凝固時間を、血漿中のcF.IXについて評価する。活性化部分トロンボプラスチン時間を測定する。凝固インヒビターのスクリーニングをまた実施する。処置した血友病のイヌおよび正常なイヌから得た血漿を等量で混合し、そして、37℃にて2時間インキュベートする。このインヒビタースクリーニングを、aPPT凝固時間が、コントロール(イミダゾール緩衝液と共にインキュベートした正常なイヌの血漿、および正常なイヌの血漿と共にインキュベートした、前処置した血友病のイヌの血漿)のものよりも3秒長い場合に陽性とスコア付けする。AAVベクターに対する中和抗体力価を評価する。
【0189】
(実施例4 変異型AAV−hF.IXを用いる、ヒトにおける血友病Bの処置)
(A.筋肉送達)
プロトコールの0日目に、患者に、hF.IX濃縮物を注入して、因子のレベルを約100%までにし、そして、超音波誘導の下で、変異型rAAV−h.FIXビリオンを、片側もしくは両側の前部大腿の外側広筋において10〜12部位に直接注射する。各部位の注射容量は、250〜500μLであり、これらの部位は、少なくとも2cm間隔が空いている。塩化エチルまたは、局所麻酔薬の共融混合物により皮膚への局所麻酔を施す。その後の筋肉生検を容易にするために、いくつかの注射部位の上にかかる皮膚に傷をつけて印をつけ、超音波により注射の座標を記録する。患者を、注射後24時間、病院内で観察する;この期間の間に慣用的な隔離措置を取り、ビリオンの水平感染の危険性を最小限にする。患者を退院させ、そして、退院後、3日間、外来診察室にて毎日見、次の8週間は、在宅血友病センターにて毎週見、そして、5ヶ月までは1月に2回見、そして、その年の残りは1ヶ月毎に見、そして、その後毎年追跡する。hF.IXの循環血漿レベルを、上記のようにELISAを用いて定量する。
【0190】
(B.肝臓送達)
標準的なシェルディンガー技術を用いて、総大腿動脈に、血管造影用導入シースを用いてカニューレ挿入する。次いで、100U/kgのヘパリンのIV注射により患者をヘパリン処理する。次いで、ピッグテールカテーテルを大動脈内に進め、腹部大動脈撮影を実施する。腹腔および肝臓の動脈解剖図を描写した後、標準的な選択的血管造影用カテーテル(Simmons,Sos−Omni,Cobraまたは類似のカテーテル)を用いて、適切なHAを選択する。患者内への挿入の前に、全てのカテーテルを、正常生理食塩水でフラッシュする。次いで、非イオン性造影物質(OmnipaqueまたはVisipaque)を用いて選択的な動脈図を実施する。このカテーテルを、0.035ワイヤ(Bentsen,angled Glide、または類似のワイヤ)から取り除く。次いで、6F ガイドシース(またはガイドカテーテル)を、このワイヤに沿って総HA内へと進める。次いで、このワイヤを、0.018ワイヤ(FlexT,Microvena Nitenolまたは類似のカテーテル)と交換し、6×2 Savvyバルーンをこのワイヤに沿って胃十二指腸の動脈から離れた適切なHA内へと進める。次いで、このワイヤを取り除き、バルーンカテーテル内に造影剤を手動で注入することによってカテーテルの先端の位置を確認し、そして、管腔を、15mlのヘパリン処理した正常生理食塩水(NS)でフラッシュして、造影剤を完全に取り除く。AAV−hFIXの注入の前に、このバルーンを、2atmまで膨張させて、HAの流動管腔を塞ぐ。8×10E10〜2×10E12の用量のAAV−hFIXを、およそ40ml以下の最終容量(用量および患者の体重に依存する)にし、次いで、自動容積測定注入ポンプを用いて、10〜12分にわたって注入する。次いで、3mlの正常生理食塩水(NS)を(AAV−hFIXと同じ速度で)注入し、カテーテルの空隙容量をなくす。バルーンを、2分間膨張させたままにし、2分後に、バルーンを収縮させ、カテーテルを取り除く。次いで、大腿穿刺部位の診断用動脈図撮影を、同側側の前部斜方突出部内で実施する。この穿刺部位を、標準的な方法(例えば、6F Closer(Perclose Inc.,Menlo Park,CA)または6F Angiosealのいずれかを用いる経皮閉鎖デバイスを利用すること)によってか、または、カテーテルの除去部位を15〜30分間、手で圧迫することによって、閉鎖する。
【0191】
(実施例5 新規ヤギAAVの単離および特徴付け)
(A.細胞培養およびウイルス単離)
パルボウイルスの混入の証拠を有するヒツジアデノウイルス調製物を、以下のようにヤギの回腸から単離した。組織を、Earles塩(PH7.2)およびゲントマイシン(gentomycin)を含むイーグルのMEM培地中でホモジナイズした。このホモジネートを、20分間の低速遠心分離(1,500×g)により清浄し、0.45μmデバイスを通して濾過滅菌した。上清(500μl)を、3回継代した胎性仔ヒツジ腎臓細胞の初代培養物を含む25cm2フラスコに播種し、胎仔ウシ血清(USA)およびラクトアルブミン加水分解物(USA)と共に、37℃にて、加湿した5%CO2インキュベーター内で1週間インキュベートした。細胞をトリプシン処理し、スプリットし、そして、再度上記のようにインキュベートし、そして、最終的に、典型的なアデノウイルス細胞変性効果(cytophatic effect)(CPE)についてアッセイした。CPEを示すフラスコを−70℃にて凍結し、溶解し、そして他の細胞型の上に重ねた。これらのフラスコを、その後インキュベートし、CPEについて試験した。
【0192】
使用した他の細胞型は、胎仔ヒツジ組織に由来する非不死化(8回継代)ヒツジ胎仔鼻甲介細胞、および長期の継代により維持されたMaden Darbyウシ腎臓細胞(160回の継代にて使用した)を含んだ。全ての組織培養において、ブタトリプシン(USA)を用い、ヒト細胞培養物またはヒト細胞製品は使用しなかった。
【0193】
(B.ウイルスDNA単離、ならびにAAV配列の同定および比較)
異なる細胞培養物および継代からの4つの調製物を、DNA抽出のために個々に処理した。ウイルスを含有する上清を、消化緩衝液(10mM Tris−HCl(PH8.0),10mM EDTA(PH8.0)および0.5%SDS)中のプロテイナーゼK(200μg)で処理し、37℃で1時間インキュベートした。フェノールクロロホルム抽出およびエタノール沈殿の後、ウイルスDNAをTE中に再懸濁した。
【0194】
各調製物のDNA含量を、PicoGreen DNA定量法(Molecular Probes,Eugene,OR)により決定し、これらの調製物を、20ng/μlに希釈し、その後のPCRアッセイのためにDNA濃度を標準化した。
【0195】
(オリゴヌクレオチドプライマー)
公知のAAVの間で高度に保存されているセグメントからの配列アライメントに基づいて、オリゴヌクレオチドプライマーを選択した。
フォワードプライマー1(GTGCCCTTCTACGGCTGCGTCAACTGGACCAATGAGAACTTTCC)(配列番号23)は、ヘリカーゼドメインに対して相補的であり、そしてリバースプライマー2(GGAATCGCAATGCCAATTTCCTGAGGCATTAC)(配列番号24)は、DNA結合ドメインに対して相補的であった。PCRフラグメントの予想サイズは1.5kbであった。
【0196】
(PCR増幅)
全ての反応を、自動Eppendorf Mastercycler Gradient熱サイクラー(PerkinElmer,Boston,MA)において、50μlで行なった。各反応混合物は、1×XL緩衝液II中に、200ngの鋳型DNA、各1μMのオリゴヌクレオチドプライマー、1mM Mn(Oac)2、各200μMのデオキシヌクレオチドトリホスフェート(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)、および1.0単位のrTthポリメラーゼ,XL(Applied Biosystems,Foster City,CA)を含んだ。Ampliwax PCR gem 100(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いてホットスタートを容易にした。
サイクリング条件は、以下の通りであった:94℃にて2分の変性、その後、94℃にて15秒の変性、45℃にて30秒のアニーリング、および72℃にて2分の伸長の35サイクルを続けた。
【0197】
PCR産物(10μl)を、1% NuSieveアガロースゲル(FMC BioProducts,Rockland,MN)内で電気泳動して分離し、エチジウムブロマイドで染色し、そして、UV光により可視化した。各ゲル上でDNA分子マーカーを用いて、反応生成物のサイズの決定を容易にした。
【0198】
アッセイの特異性を制御するために、AAV2配列を含むプラスミドからの100ngのDNAを用いてもまたPCRを実施した。
【0199】
(DNA配列決定)
PCR生成物を、1%低融点アガロースゲル(FMC BioProducts,Rockland,ME)にて精製し、この配列を、AAV−5配列から設計したプライマーを用いて決定した。
【0200】
配列データを、NTI vector suiteソフトウェアパッケージ(InforMax,Frederick,MD)を用いて分析した。
【0201】
異なる細胞培養物および継代からのウイルス調製物を、DNA抽出およびPCR分析のために、個々に処理した。フォワードプライマー1およびリバースプライマー2を使用するPCR増幅により、4つ全ての調製物におけるパルボウイルス様配列の存在が明らかとなった。配列分析により、AAV配列の存在が明らかとなった。AAV−5ゲノムのヌクレオチド2,207〜4,381に対応する、ヤギAAVのVP1 ORFは、ヒトから単離された霊長類AAV−5(J.Virol 1999;73:1309−1319)と、93%のヌクレオチド同一性(2,104/2,266、ギャップ 6/2,266)を有する(図12A〜12Bを参照のこと)。タンパク質の比較は、霊長類AAV−5とヤギAAVのVP1タンパク質の間で、94%の同一性(682/726)および96%の類似性(698/726)を示した(図13を参照のこと)。全てではないが、ほとんどの変異が、表面上に見えた(図15を参照のこと)。図16は、AAV−2キャプシドの表面構造に基づいて、AAV−5とヤギAAVとの間で異なる表面アミノ酸の予測位置を示す。3つの充填した三角形は、AAV−2に関する、ヤギAAV内の挿入を表し、これらは、表面上に位置するようである。
【0202】
特定の理論に束縛されないが、表面の変異は、おそらく、体液性免疫系および/または反芻動物レセプターへの適合に起因する選択的な圧力によって駆動されたものである。表面に露出していない領域に変化がないことは、細胞性免疫応答からの圧力を欠くことを意味し得る。ヤギウイルスにおけるこれらの変異した領域は、既存のヒト抗AAV5抗体に対する抵抗性を改善し得る。
【0203】
非保存領域における差を分析するために、ヤギAAV配列を他のAAV血清型と比較し、そして、これらの血清型を、互いに比較した。特に、図14A〜14Hは、霊長類AAV−1、AAV−2、AAV−3B、AAV−4、AAV−6、AAV−8、AAV−5およびヤギAAVに由来するVP1のアミノ酸配列の比較を示す。これらの配列において保存されているアミノ酸を、*で示し、結晶構造に基づく種々のアミノ酸位置のアクセス可能性を示す。Bは、アミノ酸が、内側表面と外側表面に間に埋もれていることを示す。Iは、アミノ酸が、内側表面上に見られることを示し、Oは、アミノ酸が外側表面上に見られることを示す。
【0204】
AAV−5とヤギAAVとの間の非保存領域は、43の変異を含む。これらの43の変異のうちの17は、AAV−2とAAV−8との間で保存されていない。これらの変異の1つのみが、ヤギAAVおよびAAV−8の同じアミノ酸に由来したものである。AAV−5とヤギAAVとの間の非保存領域は、348アミノ酸を含む。この非保存領域は、この領域が17の連なった変異を含むと分析されると、157のアミノ酸に圧縮される。
【0205】
表8〜11は、比較の結果を示す。
【0206】
【表8】
【0207】
【表9】
【0208】
【表10】
【0209】
【表11】
(実施例6 ヤギAAVの免疫反応性および他のAAVとの比較)
(A.霊長類AAV血清型の中和活性)
表12に示される霊長類AAV血清型の中和活性を、上記の方法を用いて評価した。免疫反応性を、精製し、プールしたヒトIgG(表12および表13においてIVIg8と命名した)を用いて決定した。
【0210】
表12および表13に示すように、多くの血清型は、臨床的に適切な濃度のプールしたヒトIgGにより中和された。AAV−4およびAAV−8は、AAV−3(AAV−5よりも中和に対して抵抗性)よりも中和に対して抵抗性である、AAV−1、AAV−2およびAAV−6よりもより中和に対して抵抗性であった。
【0211】
(B.ヤギAAV 対 霊長類AAV 血清型の中和活性)
ヤギAAVの中和活性を、上記の方法を用いて霊長類AAV−5と比較した。免疫反応性を、精製し、プールしたヒトIgG(表14においてIVIg8と命名した)を用いて決定した。表14に示すように、ヤギAAVは、AAV−5よりも中和に対してより大きい抵抗性を示した。表14はまた、上記の実施例において決定したように、ヤギAAVに関しての、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−6およびAAV−8の中和活性を示す。
【0212】
別の実験において、AAV−8に関するヤギAAVの中和活性を、3つの異なるヒトIgGの精製プール(それぞれ、表15および表16において、IVIg3、IVIg6およびIVIg8と命名した)を用いて試験した。これらの表に示すように、ヒトIgGの3つ全てのプールを使用しても、ヤギAAVは、AAV−8よりも中和に対してより抵抗性であった。
【0213】
【表12】
【0214】
【表13】
【0215】
【表14】
【0216】
【表15】
【0217】
【表16】
(実施例7 ヤギAAVの線条体ニューロンおよびグリア細胞に形質導入する能力、ならびに他のAAVとの比較)
種々のAAVが線条体ニューロンおよびグリア細胞に形質導入する能力を調べるために、以下の実験を行なった。解離させた線条体ニューロンの初代培養物を、胚日数18のSprague−Dawleyラット胚から調製した。解離させた線条体組織を、小さな片に刻み、そして、トリプシン中で30分間インキュベートした。次いで、この組織を、パスツールピペットを通してトリチュレートし、そして、細胞を、1ウェルあたり350,000細胞の密度にて、ポリ−D−リジンでコーティングした18mmの円形のカバーガラスを含む12ウェル培養ディッシュにプレートした。この培養培地は、2% B−27、0.5mM L−グルタミンおよび25mM L−グルタミン酸を補充した神経基礎培地であった。培養物を、37℃にて5% CO2内で維持し、そして、解離後、2〜3週間で、実験に使用した。この段階で、ドーパミン作動性ニューロンおよび線条体ニューロンを、形態学的に、そして、生物学的マーカーの発現により、区別する。
【0218】
線条体の培養物を、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(LacZ)を含み、実施例1に記載される三重トランスフェクション法を用いて調製した、AAV−2、AAV−4、AAV−5、AAV−6、AAV−8およびヤギAAVに由来するrAAVビリオン(104MOI)と共に、5日間培養した。ヤギAAVについて、pHLP19(米国特許第6,001,650号に記載される)に存在するキャプシドをコードする配列を、以下のようにして、ヤギVP1コード配列で置き換えた。簡単に述べると、プラスミドpHLP19を、SwaIおよびAgeI(New England Biolabs,Beverly,MA 01915−5599)で消化し、目的のフラグメントを、1%低融点アガロースゲル(FMC Bioproducts,Rockland,ME)にて精製し、そして、ヤギキャプシドを含有するPCRフラグメントと連結するために使用した。このヤギキャプシドPCRフラグメントを、フォワードプライマー:AAATCAGGTATGTCTTTTGTTGATCACCC(配列番号27)およびリバースプライマー:ACACGAATTAACCGGTTTATTGAGGGTATGCGACATGAATGGG(配列番号28)を用いて増幅した。このPCRフラグメントを、酵素AgeI(New
England Biolabs,Beverly,MA 01915−5599)で消化し、消化したプラスミドと連結するために使用した。
【0219】
β−galタンパク質の十分かつ持続的な発現が、ベクターを用いて形質導入した後に、線条体ニューロンにおいて見られた。発現効率は、AAV6で最も高く、AAV8、AAV2、AAV5、ヤギAAVおよびAAV4が続いた。AAV6は、ニューロンににだけ形質導入したが、AAV5媒介性の遺伝子移送は、ニューロンにおいては不十分であったが、グリア細胞には形質導入した。全ての他のベクターが、ニューロン細胞およびグリア細胞の両方に形質導入した。
【0220】
(実施例8 ヤギAAVの筋肉に形質導入する能力、および他のAAVとの比較)
IVIGの存在下または非存在下で、種々のAAVが筋肉に形質導入する能力を決定するために、以下の実験を行なった。雄性のSCIDマウス(15〜25g)に、ヤギrAAVビリオン、rAAV−1ビリオン、またはrAAV−8ビリオンの2e11ベクターゲノム(各群マウス5匹)を筋肉内注射した。上記ビリオンの各々は、ヒト第IX因子をコードする。これらのビリオンを、実施例1に記載した三重トランスフェクション法を用いて作製した。pHLP19中に存在するキャプシドコード配列を、上記のようにヤギVP1コード配列で置き換えた。ベクターの注射後1週間および2週間で、眼窩後血を回収し、血漿を抽出した。ベクター注射の24時間前に、IVIG(Carimune:ヒト血清のプールからの精製免疫グロブリン,ZLB Bioplasma,ロット番号03287−00117)で試験したマウスに、尾静脈を介して注射した(250μl)。hFIX ELISAを用いて、ヒトFIXを、血漿サンプル中で測定した。
【0221】
図17に示すように、ヤギrAAVビリオンは、筋肉に形質導入せず、rAAV−8ビリオンおよびrAAV−1ビリオンは、hFIXの同じ発現レベルを示した。AAV−1は、インビボにおいて、AAV−8よりも中和に対して抵抗性であった。
【0222】
(実施例9 ヤギAAVの肝臓に形質導入する能力、および他のAAVとの比較、ならびに、ヤギAAVビリオンにより送達された遺伝子から発現されるタンパク質の生体分布)
IVIGの存在下または非存在下で、種々のAAVが肝臓に形質導入する能力を決定するために、以下の実験を行なった。雄性のSCIDマウス(15〜25g)に、ヤギrAAVビリオンまたはrAAV−8ビリオンの5e11ベクターゲノム(各群マウス5匹)を尾静脈を介して注射した。これらのビリオンは、ヒト第IX因子(hFIX)をコードする遺伝子を含んだ。以下のrAAV−2ビリオンのデータは、別の実験からのものであった。特に、肝臓特異的プロモーター(Miaoら,Mol.Ther.(2000)1:522−532に記載される)の制御下にヒト第IX因子遺伝子を含む、プラスミドpAAV−hFIX16を用いて、ビリオンを作製した。プラスミドpAAV−hFIX16は、ヒト第IX因子ミニ遺伝子をコードする11,277bpのプラスミドである。この構築物において、FIX cDNAは、エキソン1とエキソン2との間に挟まれており、イントロン1が欠失している形態である。このcDNAは、FIXの発現の増加を示している。FIXは、ApoE肝臓制御領域(HCR)およびヒトα1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ならびにウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナル(gGH
PA)の転写制御下で発現する。プラスミドpAAV−hFIX16の骨格は、アンピシリン抵抗性を与えるβ−ラクタマーゼ遺伝子、細菌の複製起点、M13/F1複製起点、およびバクテリオファージλDNAのフラグメントを含む。λDNAは、プラスミド骨格のサイズを6,966bpまで増加させ、AAVベクター産生の間にそのパッケージングを防止する。
【0223】
上記の三重トランスフェクション法を用いて、組み換え型AAVビリオンを産生した。ヤギrAAVビリオンについて、プラスミドpHLP19中に存在するVP1コード配列を、上記のように、ヤギVP1コード配列で置き換えた。
【0224】
注射の後、注射後1週、2週、4週(各群マウス5匹)および8週(各群マウス2匹)に、眼窩後血を回収し、血漿を抽出した。ベクター注射の24時間前に、IVIG(Panglobulin:ヒト血清のプールからの精製免疫グロブリン,ZLB Bioplasma,ロット番号1838−00299)で試験したマウスに、尾静脈を介して注射した(250μl)。hFIX ELISAによって、ヒトFIXを、血漿サンプル中で測定した。
【0225】
図18に示すように、静脈内投与後の組み換え型ヤギAAVビリオンでの肝臓の形質導入は低かった。rAAV−2ビリオンを用いるよりも、rAAV−8ビリオンを用いた方がより高いhFIXの発現が見られ、そして、rAAV−2ビリオンは、ヤギrAAVビリオンよりも高い発現を示した。ヤギrAAVビリオンは、インビボにおいて、rAAV−2ビリオンよりも中和に対してより抵抗性であった。ヒトFIX発現は、120の既存のIVIG中和力価を持つrAAVを注射したマウスにおいて減少したが、hFIXの発現は、10の既存のIVIG中和力価を持つrAAV−2を注射したマウスにおいては完全にブロックされた。
【0226】
生体分布分析のために、ベクター注射の4週間後に、マウス(各群マウス2匹)を屠殺し、臓器を回収した。回収した臓器には、脳、精巣、筋肉(大腿四頭筋)、腎臓、脾臓、肺、心臓、および肝臓を含めた。hFIXを測定するために、異なる組織から抽出したDNAサンプルについて定量的PCRを行なった。図19に示すように、雄性SCIDマウス内の、尾静脈投与したヤギrAAVビリオンの生体分布は、ヤギrAAVビリオンが肺向性を有したことを示した。
【0227】
(実施例10 新規ウシAAVの単離および特徴付け)
パルボウイルスの混入の証拠が、当該分野で公知の方法を使用して、ウシの肺から単離したウシアデノウイルス(BAV)8型、Misk/67株(ATCC,Manassas,VAから入手可能、寄託番号VR−769)において見られた。この新しい単離対を、「AAV−C1」と名付けた。AAV−C1を、PCRにより部分的に増幅し、そして配列決定した。図20Aおよび20Bは、それぞれ、AAV−C1に由来するVP1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。AAV−C1に由来するVP1アミノ酸配列を、他のAAV VP1と比較した。特に、図21A〜21Hは、AAV−C1に由来するVP1アミノ酸配列の霊長類AAV−1、AAV−2、AAV−3B、AAV−4、AAV−6、AAV−8、AAV−5およびヤギAAVに由来するVP1のアミノ酸配列との比較を示す。これらの配列において保存されているアミノ酸を、*で示し、結晶構造に基づく種々のアミノ酸位置のアクセス可能性を示す。Bは、アミノ酸が、内側表面と外側表面との間に埋もれていることを示す。Iは、アミノ酸が、内側表面上に見られることを示し、Oは、アミノ酸が外側表面上に見られることを示す。
【0228】
AAV−C1に由来するVP1は、AAV−4とおよそ76%の同一性を示した。AAV−C1は、AAV−5 VP1とおよそ54%の同一性を示し、Repタンパク質、AAV−5 VP1の最初の137アミノ酸およびAAV−5 VP1の終止後の非翻訳領域(図示せず)において高い相同性を有した。従って、AAV−C1は、AAV−5とAAV−4との間で自然のハイブリッドであるようである。AAV−C1はまた、AAV−2およびAAV−8に由来するVP1とおよそ58%の配列同一性を示し、AAV−1およびAAV−6に由来するVP1とおよそ59%の配列同一性を示し、そして、AAV−3Bに由来するVP1とおよそ60%の配列同一性を示した。
【0229】
変化がもっぱらVP1のC末端超可変領域にあったAAV−5とヤギAAV(AAV−G1)との間の相違とは異なり、AAV−4とAAV−C1との間の配列の相違は、キャプシド全体に分散していた。AAV−4配列との類似性は、VP2の開始からキャプシドの終止までであった。AAV−C1は、哺乳動物AAVの最も相違するものの1つであるようであり、AAV−2との配列相同性は、およそ58%であった。特に、Schmidtらに記載されたウシAAVは、ウシアデノウイルス2型から部分的に増幅されたものである。AAV−C1およびSchmidtらに記載されたウシAAVに由来するヌクレオチド配列の比較は、12のヌクレオチド変化と5のアミノ酸差異を示した。これらの差は、334位(AAV−C1 VP1において、Hの代わりにQが存在する)、464位(AAV−C1 VP1において、Nの代わりにKが存在する)、465位(AAV−C1 VP1において、Kの代わりにTが存在する)、499位(AAV−C1 VP1において、Gの代わりにRが存在する)、および514位(AAV−C1 VP1において、Rの代わりにGが存在する)で生じた。
【0230】
AAV−C1の全キャプシドを、プラスミドにクローニングし、これを用いて、擬型AAV−2ベクターを生成した。さらなる特徴付けのために、pHLP19中に存在するキャプシド配列がウシキャプシド配列で置き換えられていること以外は、上記の三重トランスフェクション技術を用いて、LacZ遺伝子を含むAAV−C1ベクター(AAV−C1−LacZ)を生成した。AAV−C1−LacZの力価(vg/ml)を、上記のように定量的PCR(Q−PCR)を用いて計算した。表17に示すように、AAV−C1 LacZベクターを、効率よく生成し;Q−PCRにより高い力価のベクター(2.45e10vg/ml)を検出した。AAV−C1 LacZベクターは、インビトロにおいて十分な細胞の形質導入を示した(LacZを発現する細胞が、他のAAVと匹敵する数で存在した)。
【0231】
【表17】
(実施例11 ウシAAVの免疫反応性および他のAAVとの比較)
霊長類AAV−2に関するウシAAV−C1の中和活性を、実施例6において上述した方法を用いて評価した。免疫反応性を、精製し、プールしたヒトIgG(IVIG−8、Panglobulin ロット番号1838−00351,ZLB Bioplasma AG,Berne,Switzerland)を用いて決定した。インビトロでの中和アッセイは、AAV−C1が、AAV−2よりも、ヒトIVIGによる中和に対して16倍より抵抗性であったことを示した。AAV−2の50%以上の中和を示すIVIGの最低濃度(mg/ml)は、0.2mg/mlであったが、AAV−C1は、3.25mg/mlであった。
【0232】
従って、免疫反応性が減少した変異型AAVビリオンを作製する方法および使用する方法が記載される。本発明の好ましい実施形態がいくらか詳細に記載されてきたが、特許請求の範囲により規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、明らかなバリエーションがなされ得ることが理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異型アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質を含むAAAビリオンであって、該変異は、ネイティブなタンパク質に対する少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、該アミノ酸置換は、
アミノ酸318のアラニンでの置換、
アミノ酸331のアラニンでの置換、
アミノ酸396のアラニンでの置換、
アミノ酸419のアラニンでの置換、
アミノ酸450のアラニンでの置換、
アミノ酸451のリジンでの置換、
アミノ酸452のアラニンでの置換、
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸450のアラニンでの置換の組み合わせ、
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸568のアラニンでの置換の組み合わせ、
アミノ酸361のアラニンでの置換とアミノ酸592のリジンでの置換の組み合わせ、および
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸449のアラニンでの置換とアミノ酸568のアラニンでの置換の組み合わせ
からなる群より選択される、AAV−2 VP2キャプシドの位置に対応する位置に存在するアミノ酸の置換を含む、AAVビリオン。
【請求項2】
前記タンパク質が、AAV−2 VP2の360位に見られるアミノ酸に対応する位置に存在するアミノ酸に対するヒスチジンの置換をさらに含む、請求項1に記載のAAVビリオン。
【請求項3】
前記タンパク質が、AAV−2 VP2の571位に見られるアミノ酸に対応する位置に存在するアミノ酸に対するリジンの置換を含む、請求項1に記載のAAVビリオン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の変異型タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の変異型タンパク質を含む、組換え型AAVビリオン。
【請求項6】
前記ビリオンが、アンチセンスRNAまたはリボザイムをコードする異種性核酸分子を含む、請求項5に記載の組み換え型AAVビリオン。
【請求項7】
前記ビリオンが、治療タンパク質をコードする異種性核酸分子を含み、該核酸分子は、該タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結されている、請求項5に記載の組み換え型AAVビリオン。
【請求項8】
脊椎動物被験体の細胞または組織に異種性核酸分子を送達するための、請求項6または7のいずれかに記載の組み換え型AAVビリオンを含む組成物であって、該送達により、該異種性核酸分子によりコードされるタンパク質が、治療効果を提供するレベルで発現されることを特徴とする、組成物。
【請求項9】
前記細胞または組織が、筋肉細胞または筋肉組織である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記筋肉細胞または筋肉組織が、骨格筋由来である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組み換え型AAVビリオンが、インビボで前記細胞または組織に送達されるものであることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記組み換え型AAVビリオンが、筋肉内注射により送達されることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組み換え型AAVビリオンが、インビトロで前記細胞または組織に送達されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
前記組み換え型AAVビリオンが、血流内に送達されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
前記組み換え型AAVビリオンが、静脈内送達されることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組換え型AAVビリオンが、動脈内送達されることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記組み換え型AAVビリオンが、肝臓に送達されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項18】
前記組み換え型AAVビリオンが、脳に送達されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項19】
請求項7に記載の組み換え型AAVビリオンを含む組成物であって、該組み換え型AAVビリオンは細胞または組織に送達されるのに適しており、該送達によって、前記タンパク質が、治療効果を提供するレベルで発現される、組成物。
【請求項20】
脊椎動物被験体の細胞または組織にタンパク質をコードする異種性核酸を送達するための、組み換え型アデノ随伴ウイルス(AAV)ビリオンを含む組成物であって、該送達により、該タンパク質が治療効果を提供するレベルで発現され、該組み換え型AAVビリオンは、
(i)AAVビリオン中に存在する場合に、霊長類のAAV−2の免疫反応性と比較して、減少した免疫反応性を該ビリオンに与える、非霊長類の哺乳動物変異型AAVキャプシドタンパク質;および
(ii)治療タンパク質をコードし、該タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結された、異種性核酸分子
を含み、
該変異は、ネイティブなタンパク質に対する少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、該アミノ酸置換は、
アミノ酸318のアラニンでの置換、
アミノ酸331のアラニンでの置換、
アミノ酸396のアラニンでの置換、
アミノ酸419のアラニンでの置換、
アミノ酸450のアラニンでの置換、
アミノ酸451のリジンでの置換、
アミノ酸452のアラニンでの置換、
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸450のアラニンでの置換の組み合わせ、
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸568のアラニンでの置換の組み合わせ、
アミノ酸361のアラニンでの置換とアミノ酸592のリジンでの置換の組み合わせ、および
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸449のアラニンでの置換とアミノ酸568のアラニンでの置換の組み合わせ
からなる群より選択される、AAV−2 VP2キャプシドの位置に対応する位置に存在するアミノ酸の置換を含む、
組成物。
【請求項21】
前記細胞または組織が、筋肉細胞または筋肉組織である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記筋肉細胞または筋肉組織が、骨格筋由来である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記組み換え型AAVビリオンが、インビボで前記細胞または組織に送達されるものであることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
前記組み換え型AAVビリオンが、筋肉内注射により送達されることを特徴とする、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記組み換え型AAVビリオンが、インビトロで前記細胞または組織に送達されることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項26】
前記組み換え型AAVビリオンが、血流内に送達されることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項27】
前記組み換え型AAVビリオンが、静脈内送達されることを特徴とする、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記組み換え型AAVが、動脈内送達されることを特徴とする、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記組み換え型AAVビリオンが、肝臓に送達されることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項30】
前記組み換え型AAVビリオンが、脳に送達されることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項31】
組み換え型AAVビリオンを含む組成物であって、該AAVビリオンは、
(i)AAVビリオン中に存在する場合に、霊長類AAV−2の免疫反応性と比較して、減少した免疫反応性を該ビリオンに与える、非霊長類の哺乳動物変異型アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質;および
(ii)治療タンパク質をコードする異種性核酸分子であって、該タンパク質は、該タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結されている、異種性核酸分子
を含み
該組み換え型AAVビリオンは、細胞または組織に送達されるのに適しており、該送達によって、該タンパク質が治療効果を提供するレベルで発現され、
該変異は、ネイティブなタンパク質に対する少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、該アミノ酸置換は、
アミノ酸318のアラニンでの置換、
アミノ酸331のアラニンでの置換、
アミノ酸396のアラニンでの置換、
アミノ酸419のアラニンでの置換、
アミノ酸450のアラニンでの置換、
アミノ酸451のリジンでの置換、
アミノ酸452のアラニンでの置換、
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸450のアラニンでの置換の組み合わせ、
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸568のアラニンでの置換の組み合わせ、
アミノ酸361のアラニンでの置換とアミノ酸592のリジンでの置換の組み合わせ、および
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸449のアラニンでの置換とアミノ酸568のアラニンでの置換の組み合わせ
からなる群より選択される、AAV−2 VP2キャプシドの位置に対応する位置に存在するアミノ酸の置換を含む、
組成物。
【請求項32】
明細書中に記載の、変異型アデノ随伴ウイルスキャプシドタンパク質。
【請求項1】
変異型アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質を含むAAAビリオンであって、該変異は、ネイティブなタンパク質に対する少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、該アミノ酸置換は、
アミノ酸318のアラニンでの置換、
アミノ酸331のアラニンでの置換、
アミノ酸396のアラニンでの置換、
アミノ酸419のアラニンでの置換、
アミノ酸450のアラニンでの置換、
アミノ酸451のリジンでの置換、
アミノ酸452のアラニンでの置換、
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸450のアラニンでの置換の組み合わせ、
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸568のアラニンでの置換の組み合わせ、
アミノ酸361のアラニンでの置換とアミノ酸592のリジンでの置換の組み合わせ、および
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸449のアラニンでの置換とアミノ酸568のアラニンでの置換の組み合わせ
からなる群より選択される、AAV−2 VP2キャプシドの位置に対応する位置に存在するアミノ酸の置換を含む、AAVビリオン。
【請求項2】
前記タンパク質が、AAV−2 VP2の360位に見られるアミノ酸に対応する位置に存在するアミノ酸に対するヒスチジンの置換をさらに含む、請求項1に記載のAAVビリオン。
【請求項3】
前記タンパク質が、AAV−2 VP2の571位に見られるアミノ酸に対応する位置に存在するアミノ酸に対するリジンの置換を含む、請求項1に記載のAAVビリオン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の変異型タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の変異型タンパク質を含む、組換え型AAVビリオン。
【請求項6】
前記ビリオンが、アンチセンスRNAまたはリボザイムをコードする異種性核酸分子を含む、請求項5に記載の組み換え型AAVビリオン。
【請求項7】
前記ビリオンが、治療タンパク質をコードする異種性核酸分子を含み、該核酸分子は、該タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結されている、請求項5に記載の組み換え型AAVビリオン。
【請求項8】
脊椎動物被験体の細胞または組織に異種性核酸分子を送達するための、請求項6または7のいずれかに記載の組み換え型AAVビリオンを含む組成物であって、該送達により、該異種性核酸分子によりコードされるタンパク質が、治療効果を提供するレベルで発現されることを特徴とする、組成物。
【請求項9】
前記細胞または組織が、筋肉細胞または筋肉組織である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記筋肉細胞または筋肉組織が、骨格筋由来である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組み換え型AAVビリオンが、インビボで前記細胞または組織に送達されるものであることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記組み換え型AAVビリオンが、筋肉内注射により送達されることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組み換え型AAVビリオンが、インビトロで前記細胞または組織に送達されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
前記組み換え型AAVビリオンが、血流内に送達されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
前記組み換え型AAVビリオンが、静脈内送達されることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組換え型AAVビリオンが、動脈内送達されることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記組み換え型AAVビリオンが、肝臓に送達されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項18】
前記組み換え型AAVビリオンが、脳に送達されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項19】
請求項7に記載の組み換え型AAVビリオンを含む組成物であって、該組み換え型AAVビリオンは細胞または組織に送達されるのに適しており、該送達によって、前記タンパク質が、治療効果を提供するレベルで発現される、組成物。
【請求項20】
脊椎動物被験体の細胞または組織にタンパク質をコードする異種性核酸を送達するための、組み換え型アデノ随伴ウイルス(AAV)ビリオンを含む組成物であって、該送達により、該タンパク質が治療効果を提供するレベルで発現され、該組み換え型AAVビリオンは、
(i)AAVビリオン中に存在する場合に、霊長類のAAV−2の免疫反応性と比較して、減少した免疫反応性を該ビリオンに与える、非霊長類の哺乳動物変異型AAVキャプシドタンパク質;および
(ii)治療タンパク質をコードし、該タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結された、異種性核酸分子
を含み、
該変異は、ネイティブなタンパク質に対する少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、該アミノ酸置換は、
アミノ酸318のアラニンでの置換、
アミノ酸331のアラニンでの置換、
アミノ酸396のアラニンでの置換、
アミノ酸419のアラニンでの置換、
アミノ酸450のアラニンでの置換、
アミノ酸451のリジンでの置換、
アミノ酸452のアラニンでの置換、
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸450のアラニンでの置換の組み合わせ、
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸568のアラニンでの置換の組み合わせ、
アミノ酸361のアラニンでの置換とアミノ酸592のリジンでの置換の組み合わせ、および
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸449のアラニンでの置換とアミノ酸568のアラニンでの置換の組み合わせ
からなる群より選択される、AAV−2 VP2キャプシドの位置に対応する位置に存在するアミノ酸の置換を含む、
組成物。
【請求項21】
前記細胞または組織が、筋肉細胞または筋肉組織である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記筋肉細胞または筋肉組織が、骨格筋由来である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記組み換え型AAVビリオンが、インビボで前記細胞または組織に送達されるものであることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
前記組み換え型AAVビリオンが、筋肉内注射により送達されることを特徴とする、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記組み換え型AAVビリオンが、インビトロで前記細胞または組織に送達されることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項26】
前記組み換え型AAVビリオンが、血流内に送達されることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項27】
前記組み換え型AAVビリオンが、静脈内送達されることを特徴とする、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記組み換え型AAVが、動脈内送達されることを特徴とする、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記組み換え型AAVビリオンが、肝臓に送達されることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項30】
前記組み換え型AAVビリオンが、脳に送達されることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項31】
組み換え型AAVビリオンを含む組成物であって、該AAVビリオンは、
(i)AAVビリオン中に存在する場合に、霊長類AAV−2の免疫反応性と比較して、減少した免疫反応性を該ビリオンに与える、非霊長類の哺乳動物変異型アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質;および
(ii)治療タンパク質をコードする異種性核酸分子であって、該タンパク質は、該タンパク質のインビボ転写および翻訳を命令し得る制御エレメントに作動可能に連結されている、異種性核酸分子
を含み
該組み換え型AAVビリオンは、細胞または組織に送達されるのに適しており、該送達によって、該タンパク質が治療効果を提供するレベルで発現され、
該変異は、ネイティブなタンパク質に対する少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、該アミノ酸置換は、
アミノ酸318のアラニンでの置換、
アミノ酸331のアラニンでの置換、
アミノ酸396のアラニンでの置換、
アミノ酸419のアラニンでの置換、
アミノ酸450のアラニンでの置換、
アミノ酸451のリジンでの置換、
アミノ酸452のアラニンでの置換、
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸450のアラニンでの置換の組み合わせ、
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸568のアラニンでの置換の組み合わせ、
アミノ酸361のアラニンでの置換とアミノ酸592のリジンでの置換の組み合わせ、および
アミノ酸334のアラニンでの置換とアミノ酸449のアラニンでの置換とアミノ酸568のアラニンでの置換の組み合わせ
からなる群より選択される、AAV−2 VP2キャプシドの位置に対応する位置に存在するアミノ酸の置換を含む、
組成物。
【請求項32】
明細書中に記載の、変異型アデノ随伴ウイルスキャプシドタンパク質。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図14G】
【図14H】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【図21E】
【図21F】
【図21G】
【図21H】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図14G】
【図14H】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【図21E】
【図21F】
【図21G】
【図21H】
【公開番号】特開2010−273690(P2010−273690A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196261(P2010−196261)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【分割の表示】特願2006−517511(P2006−517511)の分割
【原出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(500544200)アビジェン, インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【分割の表示】特願2006−517511(P2006−517511)の分割
【原出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(500544200)アビジェン, インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】
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