減肉検出方法
【課題】サポート部材や補強部材等の付着物により検査部位が露出していない場合でも、検査部位に発生した減肉部の有無を判定する減肉検出方法を提供する。
【解決手段】所定の間隔を有して超音波の送信側探触子11及び受信側探触子12を、検査部位14の健全厚みを有する試験体36の表面に配置し、送信側探触子11から試験体36に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子12に届く超音波を受信して健全部エコーを得る第1工程と、間隔を有して送信側探触子11及び受信側探触子12を検査部位14の両側に配置し、送信側探触子11から検査部位14に進入して複数回のスキップを行い受信側探触子14に届く超音波を受信して検査部エコーを求める第2工程と、第1工程で得られた健全部エコーと第2工程で得られた検査部エコーの発生位置を比較してその相違から検査部位14に発生している減肉部17の有無を判定する第3工程とを有する。
【解決手段】所定の間隔を有して超音波の送信側探触子11及び受信側探触子12を、検査部位14の健全厚みを有する試験体36の表面に配置し、送信側探触子11から試験体36に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子12に届く超音波を受信して健全部エコーを得る第1工程と、間隔を有して送信側探触子11及び受信側探触子12を検査部位14の両側に配置し、送信側探触子11から検査部位14に進入して複数回のスキップを行い受信側探触子14に届く超音波を受信して検査部エコーを求める第2工程と、第1工程で得られた健全部エコーと第2工程で得られた検査部エコーの発生位置を比較してその相違から検査部位14に発生している減肉部17の有無を判定する第3工程とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種プラントの板材や管材に腐食等により発生する減肉部の有無を検査する減肉検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種プラントの板材や管材に腐食等により発生する減肉の検査は、例えば、超音波垂直探触子を用いて行われている(超音波垂直探傷試験)。しかし、超音波垂直探触子を用いる方法では、超音波垂直探触子を検査部位の表面に接触させて操作するため、被検体の検査部位の上方に超音波垂直探触子を操作するための空間が必要となる。このため、例えば、管材がラックと呼ばれるH形鋼で支持されている場合における管材とラックの接触部分、板材で当て板(補強板)やサポート材が溶接されている部分では、検査部位の表面に超音波垂直探触子を接触させることができず、検査ができなかった。
【0003】
そこで、図12(A)に示すように、板材100で当て板101が溶接されている直下部分を検査部位102として、検査部位102に発生している減肉部103の有無を検査する場合、板材100の表面に当て板101を跨ぐように超音波の送、受信子104、105を一定の距離WAだけ開けて配置し、送、受信子104、105を、送、受信子104、105間の距離WAを一定に保って、送、受信子104、105間を結ぶ線分に直交する方向に移動させながら、図12(B)に示すように、表面波Rが送信子104から検査部位102を通過して受信子105に到達するまでの伝搬時間を測定し、予め求めておいた送、受信子104、105間の距離WAに対応して決まる表面波の基準伝播時間tWA(すなわち、減肉部103が存在しない健全状態の検査部位を表面波が通過するときの伝搬時間)と比較する。ここで、検査部位102に減肉部103が発生していると、表面波は減肉部103の表面に沿って進行するため表面波の行程が長くなって、表面波の伝搬時間tWBは、基準伝搬時間よりΔt長くなるので、表面波の伝搬時間差Δtの発生の有無から、検査部位102に発生している減肉部103の有無を判定する表面波透過法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、図13(A)に示すように、板材106で当て板107が溶接されている部分を検査部位108として、検査部位108の裏面側に発生している減肉部109を検査する場合、板材106の表面に当て板107を跨ぐように超音波の送、受信子110、111を配置し、送、受信子110、111を、送、受信子110、111間の距離を一定に保って、送、受信子110、111間を結ぶ線分に直交する方向に移動させながら、図13(B)に示すように、超音波Sを、送信子110から検査部位108に一定の入射角度で進入させ、検査部位108の裏及び表で複数回反射させた後に受信子111に到達して得られる透過エコー高さH´を求める。ここで、検査部位108に減肉部109が発生していると、減肉部109に入射した超音波は減肉部109の底面で反射され行程が変化して受信子111に届かなくなるため、受信子111で受信される超音波の強度が低下する。このため、透過エコー高さH´を、予め求めておいた送、受信子110、111間の距離及び検査部位108の厚みに対応して決まる基準透過エコーの高さHと比較して、透過エコー高さH´と基準透過エコーの高さHとの間にエコー高さの差ΔHが生じると、検査部位108に減肉部109が存在すると判定する斜角透過法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−5905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、表面波透過法では、検査部位(被検体)の表面が大きく荒れている場合、表面波が大きく減衰し測定が困難になり、検査部位の表面性状により測定精度が大きく左右されるという問題がある。また、表面波の伝搬時間(伝播距離)の差を求めるため、検査部位の表面に発生した減肉部しか検査できないという問題がある。
一方、斜角透過法では、検査部位の裏及び表で複数回反射して受信子に届く超音波を受信して透過エコー高さを求めるため、検査部位の表裏面の面性状により測定精度が大きく左右されるという問題がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、サポート部材や補強部材等の付着物により検査部位が露出していない場合でも、検査部位に発生した減肉部の有無を判定できる減肉検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る減肉検出方法は、所定の間隔を有して超音波の送信側探触子及び受信側探触子となる対となる横波斜角探触子を、検査部位の健全厚みを有する試験体の表面に配置し、前記送信側探触子から前記試験体に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い前記受信側探触子に届く超音波を受信して健全部エコーを得る第1工程と、
前記間隔を有して前記送信側探触子及び前記受信側探触子を前記検査部位の両側に配置し、該送信側探触子から該検査部位に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い該受信側探触子に届く超音波を受信して検査部エコーを求める第2工程と、
前記第1工程で得られた前記健全部エコーと前記第2工程で得られた前記検査部エコーの発生位置を比較してその相違から前記検査部位に発生している減肉部の有無を判定する第3工程とを有する。
【0009】
本発明に係る減肉検出方法において、前記第3工程での減肉部の有無の判定には、前記健全部エコーと前記検査部エコーの発生位置の相違の他、前記検査部エコーの高さも考慮して行うことが好ましい。
【0010】
本発明に係る減肉検出方法において、前記減肉部の検出は前記送信側探触子及び前記受信側探触子の中央部で行うことが好ましい。
ここで、奇数回の前記スキップを介して超音波が前記受信側探触子に届く距離に前記間隔を設定し、前記検査部位の裏面に発生している前記減肉部を検知してもよい。
また、偶数回の前記スキップを介して超音波が前記受信側探触子に届く距離に前記間隔を設定し、前記検査部位の表面に発生している前記減肉部を検知してもよい。
【0011】
本発明に係る減肉検出方法において、前記健全部エコーと前記検査部エコーの発生位置の差から前記減肉部の深さを求めることができる。
【0012】
本発明に係る減肉検出方法において、前記送信側探触子及び前記受信側探触子の入射角は同一であって、それぞれ45度以上かつ75度以下のものを使用することが好ましい。
【0013】
本発明に係る減肉検出方法において、前記検査部位の表面上で前記送信側探触子及び前記受信側探触子を、前記間隔を一定に保って、該送信側探触子及び該受信側探触子間を結ぶ線分に直交する方向に移動させて、前記減肉部の範囲を測定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る減肉検出方法においては、所定の間隔を有して超音波の送信側探触子及び受信側探触子となる対となる横波斜角探触子を配置するので、サポート部材や補強部材等の付着物が検査部位の表面に存在して検査部位が露出していない場合でも検査できる。また、送信側探触子から検査部位に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子に届く超音波を受信するので、検査部位を広範囲に設定できる。更に、健全部エコーと検査部エコーの発生位置を比較してその相違から検査部位に発生している減肉部の有無を判定するので、検査部位の表裏面の面性状の影響を受け難く、検査部位に発生した減肉部の有無の判定を精度よく行うことができる。
【0015】
本発明に係る減肉検出方法において、第3工程での減肉部の有無の判定を、健全部エコーと検査部エコーの発生位置の相違の他、検査部エコーの高さも考慮して行う場合、送信側探触子と受信側探触子の間に発生した減肉部を確実に検出することができる。
【0016】
本発明に係る減肉検出方法において、減肉部の検出を送信側探触子及び受信側探触子の中央部で行う場合、減肉部の有無を健全部エコーと検査部エコーの発生位置の相違から判定できる。
ここで、奇数回のスキップを介して超音波が受信側探触子に届く距離に間隔を設定し、検査部位の裏面(底面)に発生している減肉部を検知する場合、健全部エコーを形成する超音波の行程の一部を、減肉部の裏面と検査部位の表面との間の超音波の反射の行程で置き換えることができる。また、偶数回のスキップを介して超音波が受信側探触子に届く距離に間隔を設定し、検査部位の表面に発生している減肉部を検知する場合、健全部エコーを形成する超音波の行程の一部を、減肉部の底面と検査部位の裏面との間の超音波の反射の行程で置き換えることができ、検査部エコーを健全部エコーの直近に発生させることができる。
【0017】
本発明に係る減肉検出方法において、健全部エコーと検査部エコーの発生位置の差から減肉部の深さを求める場合、減肉部の深さを正確かつ容易に求めることができる。
【0018】
本発明に係る減肉検出方法において、送信側探触子及び受信側探触子の入射角が同一であって、それぞれ45度以上かつ75度以下のものを使用する場合、送、受信側探触子間の間隔及び検査部位の厚みに応じて、健全部エコーと検査部エコーを容易に求めることができる。
【0019】
本発明に係る減肉検出方法において、検査部位の表面上で送信側探触子及び受信側探触子を、間隔を一定に保って、送信側探触子及び受信側探触子間を結ぶ線分に直交する方向に移動させて、減肉部の範囲を測定する場合、検査部位内の減肉部の分布を容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る減肉検出方法で使用する減肉検出装置の説明図である。
【図2】(A)は健全部エコーの発生を示す説明図、(B)は健全部エコーの発生位置を示す模式図である。
【図3】(A)、(B)は第2工程における送信側探触子及び受信側探触子の移動方法を示す説明図である。
【図4】(A)は減肉部が存在するときの超音波の路程の説明図、(B)は減肉部が存在する際に得られる検査部エコーと健全部エコーとの発生位置の関係を示す模式図である。
【図5】(A)は減肉部を送信側探触子及び受信側探触子の中央部にして、スキップ数が偶数回となるように送信側探触子及び受信側探触子の間隔を調整したときの超音波の路程の説明図、(B)は検査部エコーと健全部エコーとの発生位置の関係を示す模式図である。
【図6】減肉部により超音波の路程長さが変化する際の説明図である。
【図7】(A)、(B)、(C)はそれぞれ本発明の第2の実施の形態に係る減肉検出方法で使用する減肉検出装置の測定治具の正面図、一部省略平面図、一部省略断面図である。
【図8】(A)、(B)は実施例1の減肉検出の説明図である。
【図9】(A)、(B)は実施例1の透過エコーの説明図、(C)は減肉部の二次元分布図である。
【図10】(A)、(B)は実施例2の減肉検出の説明図である。
【図11】(A)、(B)は実施例2の透過エコーの説明図、(C)は減肉部の二次元分布図である。
【図12】(A)は従来例に係る減肉検出方法の説明図、(B)は表面波の伝搬時間の変化を示す説明図である。
【図13】(A)は従来例に係る減肉検出方法の説明図、(B)は透過エコー高さの変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
【0022】
本発明の第1の実施の形態に係る減肉検出方法で使用する減肉検出装置10は、図1に示すように、対となる横波斜角探触子からなる超音波の送信側探触子11及び受信側探触子12と、送信側探触子11及び受信側探触子12を被検体の一例である板材13の検査部位14の両側に所定の間隔Ysを有して配置すると共に、検査部位14の表面上で送信側探触子11及び受信側探触子12を、送信側探触子11と受信側探触子12との間の間隔Ysを一定に保って、しかも送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に移動させる測定治具15と、送信側探触子11から検査部位14に横波を入射させる駆動信号を送信側探触子11に入力し、検査部位14の裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子12に届く超音波が受信された際に受信側探触子12から出力されるエコー信号を取出す超音波探傷器16とを有している。なお、超音波探傷器16には従来の超音波探傷器が使用できるので、詳細な説明は省略する。
【0023】
更に、減肉検出装置10は、図2(A)に示すように、板材13と同材質で検査部位14の健全厚みと同一の厚みを有する板状の試験体36の表面に所定の間隔Ysを有して送信側探触子11及び受信側探触子12を配置し、送信側探触子11から試験体36を通過して受信側探触子12に届き超音波探傷器16を介して取出されたるエコー信号から健全部エコーを求めて記憶する健全部エコー記憶機能、間隔Ysを有して送信側探触子11及び受信側探触子12を板材13の検査部位14に配置し、送信側探触子11から検査部位14を通過して受信側探触子12に届き超音波探傷器16を介して取出されたるエコー信号から検査部エコーを求める検査部エコー検知機能と、健全部エコーと検査部エコーの発生位置を比較してその相違から検査部位14に発生している減肉部の有無を判定する第1の減肉判定機能を備えた解析手段18を有している。
【0024】
ここで、測定治具15は、伸縮可能で任意の長さに固定可能な棒部材19と、棒部材19の両側にそれぞれ設けられ、送信側探触子11及び受信側探触子12をそれぞれ保持して送信側探触子11、受信側探触子12の各接触面24a、24bを板材13の検査部位14の表面に向けて一定の押圧力で付勢する探触子ホルダー20a、20bと、棒部材19の両側で探触子ホルダー20a、20bと干渉しない位置に取付けられ、棒部材19の軸心方向と平行な方向に車軸方向を向けた対となる車輪21と、一方の車輪21の回転数から棒部材19の移動距離を測定し、測定信号を解析手段18に出力するエンコーダ22とを有している。
【0025】
このような構成とすることで、送信側探触子11、受信側探触子12の各接触面24a、24bを板材13の検査部位14の表面に接触媒質(例えば、水、グリセリン、グリース等の音波を通し易い物質)を介して押圧状態で保持することができると共に、検査部位14の表面上で送信側探触子11及び受信側探触子12を、送信側探触子11、受信側探触子12間の間隔Ysを一定に保って、しかも送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に移動させることができる。
【0026】
送信側探触子11、受信側探触子12はそれぞれ、信号の入出力用の信号ケーブル23a、23bが接続された超音波振動素子A、Bと、超音波振動素子A、Bと接触し超音波振動素子A、Bから発射された横波を取出す導波部材(図示せず)と、一面が導波部材と接触し他面が板材13の検査部位14の表面と接触する接触面24a、24bとなる接触部(図示せず)と、超音波振動素子A、B、導波部材、及び接触部を収納する探触子ケース25a、25bとを有している。ここで、超音波振動素子A、Bの周波数は、3MHz以上、好ましくは3.5MHz以上で、7MHz以下、好ましくは5MHz以下とするのがよい。また、超音波振動素子A、Bが円形の場合、その直径は、探傷カバー範囲(減肉部17の二次元サイズ)の点から、4mm以上、好ましくは6mm以上で、15mm以下、好ましくは13mm以下とするのがよい。
【0027】
なお、送信側探触子11では、送信側探触子11を検査部位14に接触させた際に、接触面24aを介して検査部位14に一定の入射角、例えば、接触面24aに立てた垂線との角度θが45°以上、好ましくは50°以上で、75°以下、好ましくは70°以下の角度範囲で進入するように探触子ケース25a内における超音波振動素子A、Bと導波部材の角度及び位置が調整されている。また、受信側探触子12では、受信側探触子12を検査部位14に接触させた際に、検査部位14の表面を介して接触面24bに一定の入射角、例えば、接触面24bに立てた垂線との角度φが45°以上、好ましくは50°以上で、75°以下、好ましくは70°以下の角度範囲で入射するように探触子ケース25b内における超音波振動素子A、Bと導波部材の角度及び位置が調整されている。
【0028】
更に、解析手段18には、健全部エコーと検査部エコーの発生位置の相違及び検査部エコーの高さから減肉部17の有無の判定を行う第2の減肉判定機能と、健全部エコーと検査部エコーの発生位置の差から減肉部17の深さを求める減肉深さ検出機能と、エンコーダ22から出力される棒部材19の移動距離の測定信号と検査部エコーを基に減肉部17の範囲を測定する減肉部分布測定機能が設けられている。なお、解析手段18は、例えば、上記の各機能を発現するプログラムをマイクロコンピュータに搭載して形成することができる。
【0029】
本発明の第1の実施の形態に係る減肉検出方法は、図1に示す測定治具15を用いて、図2(A)に示すように、所定の間隔Ysを有して横波の超音波の送信側探触子11及び受信側探触子12を、板材13の検査部位14の健全厚みを有する試験体36の表面に配置し、送信側探触子11から試験体36に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子12に届く超音波を受信して健全部エコーを得る第1工程と、図1に示すように、測定治具15を用いて所定の間隔Ysを有して送信側探触子11及び受信側探触子12を板材13の検査部位14に配置し、送信側探触子11から検査部位14に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子12に届く超音波を受信して検査部エコーを求める第2工程と、健全部エコーと検査部エコーの発生位置を比較してその相違から検査部位14に発生している減肉部の有無を判定する第3工程とを有している。以下、詳細に説明する。
【0030】
(第1工程)
図2(A)に示すように、送信側探触子11からは、試験体36に一定の入射角θ(送信側探触子11の接触面24aに立てた垂線との角度が45°以上、好ましくは50°以上で、75°以下、好ましくは70°以下の角度範囲)で超音波が進入する。一方、受信側探触子12には、試験体36の裏面で反射して表面に向かう超音波の中で、受信側探触子12の接触面24bに一定の入射角φ(受信側探触子12の接触面24bに立てた垂線との角度が45°以上、好ましくは50°以上で、75°以下、好ましくは70°以下の角度範囲)で入射する超音波が受信される。なお、入射角θ、φは同一となる。
【0031】
ここで、図2(A)に示すように、送信側探触子11から試験体36(厚みt)の表面に角度θで進入し裏面で反射して表面に戻る過程を1スキップと称すると、送信側探触子11から試験体36に進入した超音波がS回のスキップを行なって入射角度φ(=θ)で受信側探触子12に入射した場合、送信側探触子11から発射されて受信側探触子12に到達するS回のスキップの路程Wsと、送信側探触子11、12間の間隔Ysは、次の関係を満たす。
Ws=S・2t/cosθ
Ys=S・2t・tanθ
【0032】
また、図2(A)に示すように、送信側探触子11からは、入射角度θを中心として前後の角度範囲で超音波が試験体36に入射し、試験体36からは、入射角φ(=θ)を中心として前後の角度範囲で超音波が送信側探触子12に入射するので、路程Wsとは別の路程の超音波も受信側探触子12で受信される。ここで、送信側探触子11から試験体36の表面に角度θsnで進入し裏面と表面で反射するSn回のスキップを行なって入射角度θsnで受信側探触子12に入射した場合、次の関係が得られる。
Wns=Sn・2t/cosθsn
θsn=tan−1(Ys/2t・Sn)
【0033】
従って、スキップ数Sを設定して、すなわち間隔Ysを決めて送信側探触子11及び受信側探触子12を試験体36の表面に配置した場合、複数の透過エコーからなる健全部エコーが得られる。受信側探触子12から出力されるエコー信号から求めた健全部エコーWs及びWnsを図2(B)にまとめて示す。なお、図2(B)では、エコー高さが最大のWsに対して短ビーム路程側に発生する健全部エコーをW−1s、W−2s、Wsに対して長ビーム路程側に発生する健全部エコーを順にW+1s、W+2s、W+3sとしている。
【0034】
ここで、健全部エコーとして複数の透過エコーが分離して求められるように、試験体36(板材13)の厚みtは、4mm以上が好ましい。なお、試験体36(板材13)の厚みtの最大値は、使用する横波の強さによって決まるが、市販の超音波探傷器を用いる場合、20mm程度となる。
また、スキップ数Sを設定して、すなわち間隔Ysを決めて送信側探触子11及び受信側探触子12を配置した場合、減肉部17の有無の判定可能な測定範囲は、送信側探触子11、12を結ぶ線分上で、送信側探触子11を起点としてYs/2Sの点からYs−Ys/2Sの点までの範囲となる。ここで、判定可能な測定範囲の最大長は、使用する超音波の強さによって決まるが、市販の超音波探傷器を用いる場合、400mm程度となる。
【0035】
ここで、減肉部17の発生の有無を判定する検査部位14の広さが設定されると、送信側探触子11から試験体36に入射する超音波の入射角θ、及び試験体36から受信側探触子12に入射する超音波の入射角φ(=θ)が決まっているので、健全部エコーが得られる条件としてスキップ数Sが決まり、送信側探触子11と受信側探触子12の間隔Ysが決まる。なお、検査部位14の裏面に発生している減肉部17を検知しようとする場合は、スキップ数Sが3回以上になるように送信側探触子11、12間の間隔Ysを設定して、そのときの健全部エコーを求めることが望ましい。また、検査部位14の表面に発生している減肉部17を検知しようとする場合は、スキップ数Sを4回以上になるように送信側探触子11、12間の間隔Ysを設定して、そのときの健全部エコーを求めることが望ましい。
【0036】
(第2工程)
図1に示すように、板材13の検査部位14の表面に送信側探触子11及び受信側探触子12を配置し、送信側探触子11と受信側探触子12との間隔(探触子間距離)Ysを一定に保って探傷(移動)する。この際、送信側探触子11が配置される測定範囲の一方の端から内側(受信側探触子12側)方向にYs/Sまでの範囲と、受信側探触子12が配置される測定範囲の他方の端から外側(反送信側探触子11側)方向にYs/Sまでの範囲については、送信側探触子11と受信側探触子12をそれぞれ探傷(移動)カバー範囲が重複するように走査させる。
【0037】
例えば、図3(A)に示すように、検査部位14の検査範囲の一方側にそれぞれ配置した送信側探触子11及び受信側探触子12を、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に沿って送信側探触子11から受信側探触子12に向かう方向に同時にYs/Sだけ移動させた後、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に沿って検査範囲の他方側に向けて予め設定した距離だけ同時に移動させてから、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に沿って受信側探触子12から送信側探触子11に向かう方向に同時にYs/Sだけ移動させ、更に送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に沿って検査範囲の他方側に向けて予め設定した距離だけ同時に移動する単位走査を、送信側探触子11及び受信側探触子12が検査部位14の検査範囲の他方側に到達するまで繰り返す。
【0038】
あるいは、図3(B)に示すように、検査部位14の検査範囲の一方側にそれぞれ配置した送信側探触子11及び受信側探触子12を、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に沿って同時に検査範囲の他方側に移動させた後、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に沿って送信側探触子11から受信側探触子12に向かう方向に同時に予め設定した距離、例えばYs/2Sだけ移動させてから、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に沿って同時に検査範囲の一方側に移動させ、次いで、送信側探触子11及び受信側探触子12を、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に沿って送信側探触子11から受信側探触子12に向かう方向に同時に予め設定した距離、例えばYs/2Sだけ移動させた後、更に送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に沿って同時に検査範囲の他方側に移動する。
【0039】
これによって、送信側探触子11からYs/2Sだけ内側の位置より、受信側探触子12からYs/2Sだけ内側の位置(送信側探触子11からYs−Ys/2Sだけ内側の位置)までの範囲に存在する減肉部17を見落とすことなく検出できる。そして、送信側探触子11から検査部位14に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子12に届く超音波を受信し、超音波探傷器16を介して出力される横波の透過エコー信号は、一定の時間間隔で解析手段18に入力される。また、解析手段18には、エンコーダ22から送信側探触子11、12の移動距離の測定信号が入力される。
【0040】
(第3工程)
解析手段18では、送信側探触子11から検査部位14に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子12に届く超音波を受信して検査部エコーが求められ、検査部エコーの発生位置と記憶している健全部エコーの発生位置との比較が行われる。送信側探触子11から送信され検査部位14を通過して受信側探触子12で受信される超音波の路程上に減肉部17が存在しないときは、受信側探触子12で受信して得られる検査部エコーの発生位置は健全部エコーの発生位置と一致する。一方、図4(A)に示すように、送信側探触子11から送信され検査部位14を通過して受信側探触子12で受信される超音波の路程上で検査部位14の裏面に減肉部17が存在するときは、減肉部17の底面と検査部位14の表面との間で超音波の反射が生じ、健全部エコーとは異なる位置に検査部エコーが発生する。図4(B)に、検査部エコーを健全部エコーと対比させて示す。そして、健全部エコーとは異なる位置に検査部エコーが発生した場合、検査部位14に減肉部17が存在すると判定する。
【0041】
また、送信側探触子11、12の移動距離に対応して変化する検査部エコーの振幅値と送信側探触子11、12の移動距離の関係から、検査部エコーの振幅の二次元分布を求める。検査部位14に減肉部17が存在しないと、検査部エコーの振幅の二次元分布は健全部エコーの振幅の二次元分布となり、検査部位14に減肉部17が存在すると、検査部エコーの振幅の二次元分布は健全部エコーの振幅の二次元分布と異なる。従って、検査部位14内での検査部エコーの振幅の二次元分布の変化から、減肉部17の分布(二次元分布)が求められる。
なお、減肉部17の分布(二次元分布)を求めるには、板材13の検査部位14の表面で少なくとも直交する2方向において超音波探触子11、12の走査を行う必要がある。すなわち、板材13の検査部位14の表面における超音波探触子11、12の走査方向を決めて第1〜第3工程を実行してX方向測定を行い、続いて、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分の方向がX方向測定における超音波探触子11、12の走査方向と平行になるように送信側探触子11及び受信側探触子12を検査部位14の表面に配置し超音波探触子11、12の走査方向がX方向測定の際の走査方向と直交するように第1〜第3工程を実行してY方向測定を行う。そして、X方向測定の結果とY方向測定の結果を重ね合わせることにより、減肉部17の分布(二次元分布)を求める。そして、X方向測定、Y方向測定において、送信側探触子11と受信側探触子12との間隔Ysが同一であれば、Y方向測定における第1工程は省略できる。
【0042】
ここで、検査部位14の表面に送信側探触子11及び受信側探触子12を配置する際、減肉部17が送信側探触子11及び受信側探触子12の中央部となるように送信側探触子11及び受信側探触子12の位置を調整して、減肉部17の発生位置(減肉部17が検査部位14の表、裏面のいずれの側に存在するか)の判定及び減肉深さの測定を行う場合について説明する。例えば、図4(A)のように、検査部位14の裏面に減肉部17が存在している場合、図5(A)に示すように、スキップ数Sが偶数回となるように送信側探触子11と受信側探触子12の間隔Ysを調節しても図5(B)に示すように、健全部エコーのWsとW−1sとの間に検査部エコーはほとんど生じないが、図4(A)に示すように、スキップ数が奇数回となるように送信側探触子11と受信側探触子12の間隔Ysを調節すると、図4(B)に示すように、健全部エコーのWsとW−1sとの間に検査部エコーが発生するので、減肉部17の発生位置を判別することができる。
【0043】
例えば、図6に示すように、送信側探触子11から送信され検査部位14を通過して受信側探触子12で受信される超音波の路程上で検査部位14の裏面に深さdの減肉部17が存在するようにすると、検査部位14の表面で反射し反射角θで検査部位14の裏面に入射して反射し反射角θで検査部位14の表面に入射する超音波のスキップは、検査部位14の表面で反射し反射角θ´で減肉部17の底面に入射して反射し反射角θ´で検査部位14の表面に入射する超音波のスキップに代わる。このとき、検査部エコーの路程は、健全部エコーの路程に対して2t/cosθ−2(t−d)/cosθ´だけ路程が短くなるので、検査部エコーの路程と健全部エコーの路程の差が、検査部エコーの発生位置と健全部エコーの発生位置の差Δとなる。そして、厚みtは既知の値で、Δの値は測定から得られ、θ、θ´は路程Ws(スキップ数S)及び間隔Ysにより決まる値なので、減肉部17の深さdは
d=(1−cosθ´/cosθ)t−Δcosθ´/2
から求めることができる。
【0044】
本発明の第2の実施の形態に係る減肉検出方法で使用する減肉検出装置26は、図7(A)、(B)、(C)に示すように、被検体の一例である管材27の検査部位28に発生する減肉部の有無を判定するもので、第1の実施の形態に係る減肉検出方法で使用する減肉検出装置10と比較して、測定治具29の構成が異なっていることが特徴となっている。このため、測定治具29に関してのみ説明し、同一の構成部材には同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
測定治具29は、中央部で屈折可能で任意の屈折角度に固定可能なアーム30と、アーム30の両側にそれぞれ設けられ、送信側探触子11、受信側探触子12を保持して送信側探触子11、受信側探触子12の接触面24a、24bを管材27の検査部位28の表面に向けて一定の押圧力で付勢する探触子ホルダー31と、各探触子ホルダー31の側部に取付けられ、送信側探触子11、受信側探触子12間を結ぶ線分と平行な方向に車軸を向けた対となる車輪32と、一方の車輪32の回転数からアーム30の移動距離を測定し、測定信号を解析手段18に出力する図示しないエンコーダとを有している。
【0046】
ここで、各探触子ホルダー31は、送信側探触子11(受信側探触子12)を中央部に保持する探触子保持部33と、各探触子保持部33を中央部に回転可能に収納し、両側部が管材27の検査部位28の表面に当接するVブロック34と、アーム30の両側に設けられ、探触子保持部33を管材27の検査部位28の表面に向けて一定の押圧力で付勢することで送信側探触子11の接触面24a(受信側探触子12の接触面24b)を検査部位28の表面に当接させる付勢機構35とを有している。
【0047】
このような構成とすることで、送信側探触子11、受信側探触子12を管材27の検査部位28の表面に接触媒質を介して接触状態で保持することができると共に、検査部位28の表面上で送信側探触子11、受信側探触子12を、送信側探触子11、12間の距離を一定に保って、しかも送信側探触子11、12間を結ぶ線分に直交する方向に移動させることができる。
【0048】
更に、図7に示す送信側探触子11、受信側探触子12の一方、例えば受信側探触子12を保持している探触子ホルダー31を基準にして、送信側探触子11を保持している探触子ホルダー31のVブロック34を検査部位28の表面上で移動させると、受信側探触子12を保持している探触子ホルダー31を基準にしてアーム30も回転し、アーム30の回転に伴ってアーム30の両側に付勢機構35を介して取付けられた探触子保持部33も回転する。このため、探触子ホルダー31の移動に合わせて、送信側探触子11、受信側探触子12の方向を変えることができる。
【0049】
これによって、送信側探触子11と受信側探触子12を結ぶ線分が管材27の軸方向と平行になるように送信側探触子11、受信側探触子12を配置して、送信側探触子11、受信側探触子12を管材27の円周方向に移動させることができ、管材27の円周方向に減肉部が発生しているかを判定できる。また、送信側探触子11と受信側探触子12を結ぶ線分が管材27の軸方向と直交するように送信側探触子11、受信側探触子12を配置して、送信側探触子11、受信側探触子12を管材27の軸方向に移動させることができ、管材27の軸方向に減肉部が発生しているかを判定できる。更に、送信側探触子11と受信側探触子12を結ぶ線分が管材27の軸方向と交差するように送信側探触子11、受信側探触子12を配置して、送信側探触子11、受信側探触子12を管材27の表面を螺旋状に移動させることで、管材27を円周方向及び軸方向同時に検査して減肉部の発生の有無を判定できる。
なお、本発明の第2の実施の形態に係る減肉検出方法は、第1の実施の形態に係る減肉検出方法と同様に行うことができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
図8(A)に示すように、長さ400mm、幅が100mm、厚さが15mmの板材の裏面側の中央部に直径が4mm、深さが4mmの人工的な減肉部を形成した。そして、図8(A)に示すように板材の表面で板材の幅方向の一方側の位置1に、長手方向に沿って300mm離して対となる横波斜角探触子を配置し、一方の横波斜角探触子を送信側探触子、他方の横波斜角探触子を受信側探触子に用いて、図8(B)に示すように、板材の裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子に届く超音波を受信して健全部エコーを得た。
【0051】
次いで、板材の表面上で送信側探触子、受信側探触子を、図8(A)の位置1から位置4まで、送信側探触子と受信側探触子間の距離を一定に保って送信側探触子、受信側探触子を結ぶ線分に直交する方向(板材の幅方向)に移動させながら、送信側探触子から板材内に進入させ板材内を伝搬する超音波を受信側探触子で受信し、検査部エコーを求めた。
板材の表面上で送信側探触子と受信側探触子が図8(A)の位置1から位置2の手前まで移動する間、及び位置2を通過して位置4に到る間に得られる検査部エコーの発生位置は、位置1で求めた健全部エコーの発生位置に一致し、送信側探触子と受信側探触子が位置2に到達した際に得られる検査部エコーの発生位置のみが異なった。送信側探触子と受信側探触子を図8(A)の位置2に配置した際に得られた検査部エコーを健全部エコーと重ね合わせて図9(A)に示す。また、送信側探触子と受信側探触子を図8(A)の位置3に配置した際に得られた検査部エコーを健全部エコーと重ね合わせて図9(B)に示す。また、図9(C)に検査部エコーの振幅の二次元分布を示す。
【0052】
図9(A)から、送信側探触子から受信側探触子に到達する超音波の路程上に減肉部が存在すると、検査部エコーは健全部エコーの発生位置とは異なる位置に発生することが分かる。一方、図9(B)から、送信側探触子から受信側探触子に到達する超音波の路程上に減肉部が存在しないと、検査部エコーと健全部エコーは一致することが分かる。また、図9(C)の分布図からも、減肉部が存在しない場所の検査部エコーに対応する縞模様は健全部エコーに対応する縞模様と同一で、減肉部が存在する場所には、健全部エコーに対応する縞模様とは異なる場所に縞模様の発生が認められる。従って、予め検査部位の厚みに対応して決まる健全部エコーを求めておき、検査部位の検査で得られた検査部エコーと比較し、検査部エコーの発生位置が異なると、検査部位に減肉部が存在すると判定できる。
【0053】
(実施例2)
図10(A)に示すように、長さ400mm、幅が100mm、厚さが15mmの板材の裏面側の中央部に直径が8mm、深さが8mmの人工的な減肉部を形成した。
そして、図10(A)に示すように板材の表面で板材の幅方向の一方側の位置1に、長手方向に沿って300mm離して対となる横波斜角探触子を配置し、一方の横波斜角探触子を送信側探触子、他方の横波斜角探触子を受信側探触子に用いて、図10(B)に示すように、板材の裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子に届く超音波を受信して健全部エコーを得た。
【0054】
次いで、板材の表面上で送信側探触子、受信側探触子を、図10(A)の位置1から位置4まで、送信側探触子と受信側探触子間の距離を一定に保って送信側探触子、受信側探触子を結ぶ線分に直交する方向(板材の幅方向)に移動させながら、送信側探触子から板材内に進入させ板材内を伝搬する超音波を受信側探触子で受信し、検査部エコーを求めた。
板材の表面上で送信側探触子と受信側探触子が図10(A)の位置1から位置2の手前まで移動する間、及び位置2通過して位置4に到る間に得られる検査部エコーの発生位置は、位置1で求めた健全部エコーの発生位置に一致し、送信側探触子と受信側探触子が位置2に到達した際に得られる検査部エコーの発生位置のみが異なった。送信側探触子と受信側探触子を図10(A)の位置2に配置した際に得られた検査部エコーを健全部エコーと重ね合わせて図11(A)に示す。また、送信側探触子と受信側探触子を図10(A)の位置3に配置した際に得られた検査部エコーを健全部エコーと重ね合わせて図11(B)に示す。また、図11(C)に検査部エコーの振幅の二次元分布を示す。
【0055】
図11(A)から、送信側探触子から受信側探触子に到達する超音波の路程上に減肉部が存在すると、検査部エコーは健全部エコーの発生位置とは異なる位置に発生することが分かる。一方、図11(B)から、送信側探触子から受信側探触子に到達する超音波の路程上に減肉部が存在しないと、検査部エコーと健全部エコーは一致することが分かる。また、図11(C)の分布図からも、減肉部が存在しない場所の検査部エコーに対応する縞模様は健全部エコーに対応する縞模様と同一で、減肉部が存在する場所には、健全部エコーに対応する縞模様とは異なる場所に縞模様の発生が認められる。従って、予め検査部位の厚みに対応して決まる健全部エコーを求めておき、検査部位の検査で得られた検査部エコーと比較し、検査部エコーの発生位置が異なると、検査部位に減肉部が存在すると判定できる。
【0056】
また、図9(A)と図11(A)の比較、図9(C)と図11(C)の比較から、深さ4mmの減肉部が存在した場合の健全部エコーと検査部エコーとの発生位置の差は、深さ8mmの減肉部が存在した場合の健全部エコーと検査部エコーとの発生位置の差より小さいことが分かる。従って健全部エコーと検査部エコーとの発生位置の差を求めることで、減肉部の深さを知ることができることが分かる。
【0057】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、第3工程での減肉部の有無の判定に、健全部エコーと検査部エコーの発生位置の相違を用いたが、減肉部の有無の判定に、健全部エコーと検査部エコーの発生位置の相違の他、検査部エコーの高さも考慮して行うこともできる。これによって、減肉部が送信側探触子から受信側探触子の中央部以外の場所に存在すること、検査部位の厚みが全体的に薄くなっていることが判定できる。
【符号の説明】
【0058】
10:減肉検出装置、11:送信側探触子、12:受信側探触子、13:板材、14:検査部位、15:測定治具、16:超音波探傷器、17:減肉部、18:解析手段、19:棒部材、20a、20b:探触子ホルダー、21:車輪、22:エンコーダ、23a、23b:信号ケーブル、24a、24b:接触面、25a、25b:探触子ケース、26:減肉検出装置、27:管材、28:検査部位、29:測定治具、30:アーム、31:探触子ホルダー、32:車輪、33:探触子保持部、34:Vブロック、35:付勢機構、36:試験体
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種プラントの板材や管材に腐食等により発生する減肉部の有無を検査する減肉検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種プラントの板材や管材に腐食等により発生する減肉の検査は、例えば、超音波垂直探触子を用いて行われている(超音波垂直探傷試験)。しかし、超音波垂直探触子を用いる方法では、超音波垂直探触子を検査部位の表面に接触させて操作するため、被検体の検査部位の上方に超音波垂直探触子を操作するための空間が必要となる。このため、例えば、管材がラックと呼ばれるH形鋼で支持されている場合における管材とラックの接触部分、板材で当て板(補強板)やサポート材が溶接されている部分では、検査部位の表面に超音波垂直探触子を接触させることができず、検査ができなかった。
【0003】
そこで、図12(A)に示すように、板材100で当て板101が溶接されている直下部分を検査部位102として、検査部位102に発生している減肉部103の有無を検査する場合、板材100の表面に当て板101を跨ぐように超音波の送、受信子104、105を一定の距離WAだけ開けて配置し、送、受信子104、105を、送、受信子104、105間の距離WAを一定に保って、送、受信子104、105間を結ぶ線分に直交する方向に移動させながら、図12(B)に示すように、表面波Rが送信子104から検査部位102を通過して受信子105に到達するまでの伝搬時間を測定し、予め求めておいた送、受信子104、105間の距離WAに対応して決まる表面波の基準伝播時間tWA(すなわち、減肉部103が存在しない健全状態の検査部位を表面波が通過するときの伝搬時間)と比較する。ここで、検査部位102に減肉部103が発生していると、表面波は減肉部103の表面に沿って進行するため表面波の行程が長くなって、表面波の伝搬時間tWBは、基準伝搬時間よりΔt長くなるので、表面波の伝搬時間差Δtの発生の有無から、検査部位102に発生している減肉部103の有無を判定する表面波透過法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、図13(A)に示すように、板材106で当て板107が溶接されている部分を検査部位108として、検査部位108の裏面側に発生している減肉部109を検査する場合、板材106の表面に当て板107を跨ぐように超音波の送、受信子110、111を配置し、送、受信子110、111を、送、受信子110、111間の距離を一定に保って、送、受信子110、111間を結ぶ線分に直交する方向に移動させながら、図13(B)に示すように、超音波Sを、送信子110から検査部位108に一定の入射角度で進入させ、検査部位108の裏及び表で複数回反射させた後に受信子111に到達して得られる透過エコー高さH´を求める。ここで、検査部位108に減肉部109が発生していると、減肉部109に入射した超音波は減肉部109の底面で反射され行程が変化して受信子111に届かなくなるため、受信子111で受信される超音波の強度が低下する。このため、透過エコー高さH´を、予め求めておいた送、受信子110、111間の距離及び検査部位108の厚みに対応して決まる基準透過エコーの高さHと比較して、透過エコー高さH´と基準透過エコーの高さHとの間にエコー高さの差ΔHが生じると、検査部位108に減肉部109が存在すると判定する斜角透過法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−5905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、表面波透過法では、検査部位(被検体)の表面が大きく荒れている場合、表面波が大きく減衰し測定が困難になり、検査部位の表面性状により測定精度が大きく左右されるという問題がある。また、表面波の伝搬時間(伝播距離)の差を求めるため、検査部位の表面に発生した減肉部しか検査できないという問題がある。
一方、斜角透過法では、検査部位の裏及び表で複数回反射して受信子に届く超音波を受信して透過エコー高さを求めるため、検査部位の表裏面の面性状により測定精度が大きく左右されるという問題がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、サポート部材や補強部材等の付着物により検査部位が露出していない場合でも、検査部位に発生した減肉部の有無を判定できる減肉検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る減肉検出方法は、所定の間隔を有して超音波の送信側探触子及び受信側探触子となる対となる横波斜角探触子を、検査部位の健全厚みを有する試験体の表面に配置し、前記送信側探触子から前記試験体に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い前記受信側探触子に届く超音波を受信して健全部エコーを得る第1工程と、
前記間隔を有して前記送信側探触子及び前記受信側探触子を前記検査部位の両側に配置し、該送信側探触子から該検査部位に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い該受信側探触子に届く超音波を受信して検査部エコーを求める第2工程と、
前記第1工程で得られた前記健全部エコーと前記第2工程で得られた前記検査部エコーの発生位置を比較してその相違から前記検査部位に発生している減肉部の有無を判定する第3工程とを有する。
【0009】
本発明に係る減肉検出方法において、前記第3工程での減肉部の有無の判定には、前記健全部エコーと前記検査部エコーの発生位置の相違の他、前記検査部エコーの高さも考慮して行うことが好ましい。
【0010】
本発明に係る減肉検出方法において、前記減肉部の検出は前記送信側探触子及び前記受信側探触子の中央部で行うことが好ましい。
ここで、奇数回の前記スキップを介して超音波が前記受信側探触子に届く距離に前記間隔を設定し、前記検査部位の裏面に発生している前記減肉部を検知してもよい。
また、偶数回の前記スキップを介して超音波が前記受信側探触子に届く距離に前記間隔を設定し、前記検査部位の表面に発生している前記減肉部を検知してもよい。
【0011】
本発明に係る減肉検出方法において、前記健全部エコーと前記検査部エコーの発生位置の差から前記減肉部の深さを求めることができる。
【0012】
本発明に係る減肉検出方法において、前記送信側探触子及び前記受信側探触子の入射角は同一であって、それぞれ45度以上かつ75度以下のものを使用することが好ましい。
【0013】
本発明に係る減肉検出方法において、前記検査部位の表面上で前記送信側探触子及び前記受信側探触子を、前記間隔を一定に保って、該送信側探触子及び該受信側探触子間を結ぶ線分に直交する方向に移動させて、前記減肉部の範囲を測定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る減肉検出方法においては、所定の間隔を有して超音波の送信側探触子及び受信側探触子となる対となる横波斜角探触子を配置するので、サポート部材や補強部材等の付着物が検査部位の表面に存在して検査部位が露出していない場合でも検査できる。また、送信側探触子から検査部位に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子に届く超音波を受信するので、検査部位を広範囲に設定できる。更に、健全部エコーと検査部エコーの発生位置を比較してその相違から検査部位に発生している減肉部の有無を判定するので、検査部位の表裏面の面性状の影響を受け難く、検査部位に発生した減肉部の有無の判定を精度よく行うことができる。
【0015】
本発明に係る減肉検出方法において、第3工程での減肉部の有無の判定を、健全部エコーと検査部エコーの発生位置の相違の他、検査部エコーの高さも考慮して行う場合、送信側探触子と受信側探触子の間に発生した減肉部を確実に検出することができる。
【0016】
本発明に係る減肉検出方法において、減肉部の検出を送信側探触子及び受信側探触子の中央部で行う場合、減肉部の有無を健全部エコーと検査部エコーの発生位置の相違から判定できる。
ここで、奇数回のスキップを介して超音波が受信側探触子に届く距離に間隔を設定し、検査部位の裏面(底面)に発生している減肉部を検知する場合、健全部エコーを形成する超音波の行程の一部を、減肉部の裏面と検査部位の表面との間の超音波の反射の行程で置き換えることができる。また、偶数回のスキップを介して超音波が受信側探触子に届く距離に間隔を設定し、検査部位の表面に発生している減肉部を検知する場合、健全部エコーを形成する超音波の行程の一部を、減肉部の底面と検査部位の裏面との間の超音波の反射の行程で置き換えることができ、検査部エコーを健全部エコーの直近に発生させることができる。
【0017】
本発明に係る減肉検出方法において、健全部エコーと検査部エコーの発生位置の差から減肉部の深さを求める場合、減肉部の深さを正確かつ容易に求めることができる。
【0018】
本発明に係る減肉検出方法において、送信側探触子及び受信側探触子の入射角が同一であって、それぞれ45度以上かつ75度以下のものを使用する場合、送、受信側探触子間の間隔及び検査部位の厚みに応じて、健全部エコーと検査部エコーを容易に求めることができる。
【0019】
本発明に係る減肉検出方法において、検査部位の表面上で送信側探触子及び受信側探触子を、間隔を一定に保って、送信側探触子及び受信側探触子間を結ぶ線分に直交する方向に移動させて、減肉部の範囲を測定する場合、検査部位内の減肉部の分布を容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る減肉検出方法で使用する減肉検出装置の説明図である。
【図2】(A)は健全部エコーの発生を示す説明図、(B)は健全部エコーの発生位置を示す模式図である。
【図3】(A)、(B)は第2工程における送信側探触子及び受信側探触子の移動方法を示す説明図である。
【図4】(A)は減肉部が存在するときの超音波の路程の説明図、(B)は減肉部が存在する際に得られる検査部エコーと健全部エコーとの発生位置の関係を示す模式図である。
【図5】(A)は減肉部を送信側探触子及び受信側探触子の中央部にして、スキップ数が偶数回となるように送信側探触子及び受信側探触子の間隔を調整したときの超音波の路程の説明図、(B)は検査部エコーと健全部エコーとの発生位置の関係を示す模式図である。
【図6】減肉部により超音波の路程長さが変化する際の説明図である。
【図7】(A)、(B)、(C)はそれぞれ本発明の第2の実施の形態に係る減肉検出方法で使用する減肉検出装置の測定治具の正面図、一部省略平面図、一部省略断面図である。
【図8】(A)、(B)は実施例1の減肉検出の説明図である。
【図9】(A)、(B)は実施例1の透過エコーの説明図、(C)は減肉部の二次元分布図である。
【図10】(A)、(B)は実施例2の減肉検出の説明図である。
【図11】(A)、(B)は実施例2の透過エコーの説明図、(C)は減肉部の二次元分布図である。
【図12】(A)は従来例に係る減肉検出方法の説明図、(B)は表面波の伝搬時間の変化を示す説明図である。
【図13】(A)は従来例に係る減肉検出方法の説明図、(B)は透過エコー高さの変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
【0022】
本発明の第1の実施の形態に係る減肉検出方法で使用する減肉検出装置10は、図1に示すように、対となる横波斜角探触子からなる超音波の送信側探触子11及び受信側探触子12と、送信側探触子11及び受信側探触子12を被検体の一例である板材13の検査部位14の両側に所定の間隔Ysを有して配置すると共に、検査部位14の表面上で送信側探触子11及び受信側探触子12を、送信側探触子11と受信側探触子12との間の間隔Ysを一定に保って、しかも送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に移動させる測定治具15と、送信側探触子11から検査部位14に横波を入射させる駆動信号を送信側探触子11に入力し、検査部位14の裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子12に届く超音波が受信された際に受信側探触子12から出力されるエコー信号を取出す超音波探傷器16とを有している。なお、超音波探傷器16には従来の超音波探傷器が使用できるので、詳細な説明は省略する。
【0023】
更に、減肉検出装置10は、図2(A)に示すように、板材13と同材質で検査部位14の健全厚みと同一の厚みを有する板状の試験体36の表面に所定の間隔Ysを有して送信側探触子11及び受信側探触子12を配置し、送信側探触子11から試験体36を通過して受信側探触子12に届き超音波探傷器16を介して取出されたるエコー信号から健全部エコーを求めて記憶する健全部エコー記憶機能、間隔Ysを有して送信側探触子11及び受信側探触子12を板材13の検査部位14に配置し、送信側探触子11から検査部位14を通過して受信側探触子12に届き超音波探傷器16を介して取出されたるエコー信号から検査部エコーを求める検査部エコー検知機能と、健全部エコーと検査部エコーの発生位置を比較してその相違から検査部位14に発生している減肉部の有無を判定する第1の減肉判定機能を備えた解析手段18を有している。
【0024】
ここで、測定治具15は、伸縮可能で任意の長さに固定可能な棒部材19と、棒部材19の両側にそれぞれ設けられ、送信側探触子11及び受信側探触子12をそれぞれ保持して送信側探触子11、受信側探触子12の各接触面24a、24bを板材13の検査部位14の表面に向けて一定の押圧力で付勢する探触子ホルダー20a、20bと、棒部材19の両側で探触子ホルダー20a、20bと干渉しない位置に取付けられ、棒部材19の軸心方向と平行な方向に車軸方向を向けた対となる車輪21と、一方の車輪21の回転数から棒部材19の移動距離を測定し、測定信号を解析手段18に出力するエンコーダ22とを有している。
【0025】
このような構成とすることで、送信側探触子11、受信側探触子12の各接触面24a、24bを板材13の検査部位14の表面に接触媒質(例えば、水、グリセリン、グリース等の音波を通し易い物質)を介して押圧状態で保持することができると共に、検査部位14の表面上で送信側探触子11及び受信側探触子12を、送信側探触子11、受信側探触子12間の間隔Ysを一定に保って、しかも送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に移動させることができる。
【0026】
送信側探触子11、受信側探触子12はそれぞれ、信号の入出力用の信号ケーブル23a、23bが接続された超音波振動素子A、Bと、超音波振動素子A、Bと接触し超音波振動素子A、Bから発射された横波を取出す導波部材(図示せず)と、一面が導波部材と接触し他面が板材13の検査部位14の表面と接触する接触面24a、24bとなる接触部(図示せず)と、超音波振動素子A、B、導波部材、及び接触部を収納する探触子ケース25a、25bとを有している。ここで、超音波振動素子A、Bの周波数は、3MHz以上、好ましくは3.5MHz以上で、7MHz以下、好ましくは5MHz以下とするのがよい。また、超音波振動素子A、Bが円形の場合、その直径は、探傷カバー範囲(減肉部17の二次元サイズ)の点から、4mm以上、好ましくは6mm以上で、15mm以下、好ましくは13mm以下とするのがよい。
【0027】
なお、送信側探触子11では、送信側探触子11を検査部位14に接触させた際に、接触面24aを介して検査部位14に一定の入射角、例えば、接触面24aに立てた垂線との角度θが45°以上、好ましくは50°以上で、75°以下、好ましくは70°以下の角度範囲で進入するように探触子ケース25a内における超音波振動素子A、Bと導波部材の角度及び位置が調整されている。また、受信側探触子12では、受信側探触子12を検査部位14に接触させた際に、検査部位14の表面を介して接触面24bに一定の入射角、例えば、接触面24bに立てた垂線との角度φが45°以上、好ましくは50°以上で、75°以下、好ましくは70°以下の角度範囲で入射するように探触子ケース25b内における超音波振動素子A、Bと導波部材の角度及び位置が調整されている。
【0028】
更に、解析手段18には、健全部エコーと検査部エコーの発生位置の相違及び検査部エコーの高さから減肉部17の有無の判定を行う第2の減肉判定機能と、健全部エコーと検査部エコーの発生位置の差から減肉部17の深さを求める減肉深さ検出機能と、エンコーダ22から出力される棒部材19の移動距離の測定信号と検査部エコーを基に減肉部17の範囲を測定する減肉部分布測定機能が設けられている。なお、解析手段18は、例えば、上記の各機能を発現するプログラムをマイクロコンピュータに搭載して形成することができる。
【0029】
本発明の第1の実施の形態に係る減肉検出方法は、図1に示す測定治具15を用いて、図2(A)に示すように、所定の間隔Ysを有して横波の超音波の送信側探触子11及び受信側探触子12を、板材13の検査部位14の健全厚みを有する試験体36の表面に配置し、送信側探触子11から試験体36に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子12に届く超音波を受信して健全部エコーを得る第1工程と、図1に示すように、測定治具15を用いて所定の間隔Ysを有して送信側探触子11及び受信側探触子12を板材13の検査部位14に配置し、送信側探触子11から検査部位14に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子12に届く超音波を受信して検査部エコーを求める第2工程と、健全部エコーと検査部エコーの発生位置を比較してその相違から検査部位14に発生している減肉部の有無を判定する第3工程とを有している。以下、詳細に説明する。
【0030】
(第1工程)
図2(A)に示すように、送信側探触子11からは、試験体36に一定の入射角θ(送信側探触子11の接触面24aに立てた垂線との角度が45°以上、好ましくは50°以上で、75°以下、好ましくは70°以下の角度範囲)で超音波が進入する。一方、受信側探触子12には、試験体36の裏面で反射して表面に向かう超音波の中で、受信側探触子12の接触面24bに一定の入射角φ(受信側探触子12の接触面24bに立てた垂線との角度が45°以上、好ましくは50°以上で、75°以下、好ましくは70°以下の角度範囲)で入射する超音波が受信される。なお、入射角θ、φは同一となる。
【0031】
ここで、図2(A)に示すように、送信側探触子11から試験体36(厚みt)の表面に角度θで進入し裏面で反射して表面に戻る過程を1スキップと称すると、送信側探触子11から試験体36に進入した超音波がS回のスキップを行なって入射角度φ(=θ)で受信側探触子12に入射した場合、送信側探触子11から発射されて受信側探触子12に到達するS回のスキップの路程Wsと、送信側探触子11、12間の間隔Ysは、次の関係を満たす。
Ws=S・2t/cosθ
Ys=S・2t・tanθ
【0032】
また、図2(A)に示すように、送信側探触子11からは、入射角度θを中心として前後の角度範囲で超音波が試験体36に入射し、試験体36からは、入射角φ(=θ)を中心として前後の角度範囲で超音波が送信側探触子12に入射するので、路程Wsとは別の路程の超音波も受信側探触子12で受信される。ここで、送信側探触子11から試験体36の表面に角度θsnで進入し裏面と表面で反射するSn回のスキップを行なって入射角度θsnで受信側探触子12に入射した場合、次の関係が得られる。
Wns=Sn・2t/cosθsn
θsn=tan−1(Ys/2t・Sn)
【0033】
従って、スキップ数Sを設定して、すなわち間隔Ysを決めて送信側探触子11及び受信側探触子12を試験体36の表面に配置した場合、複数の透過エコーからなる健全部エコーが得られる。受信側探触子12から出力されるエコー信号から求めた健全部エコーWs及びWnsを図2(B)にまとめて示す。なお、図2(B)では、エコー高さが最大のWsに対して短ビーム路程側に発生する健全部エコーをW−1s、W−2s、Wsに対して長ビーム路程側に発生する健全部エコーを順にW+1s、W+2s、W+3sとしている。
【0034】
ここで、健全部エコーとして複数の透過エコーが分離して求められるように、試験体36(板材13)の厚みtは、4mm以上が好ましい。なお、試験体36(板材13)の厚みtの最大値は、使用する横波の強さによって決まるが、市販の超音波探傷器を用いる場合、20mm程度となる。
また、スキップ数Sを設定して、すなわち間隔Ysを決めて送信側探触子11及び受信側探触子12を配置した場合、減肉部17の有無の判定可能な測定範囲は、送信側探触子11、12を結ぶ線分上で、送信側探触子11を起点としてYs/2Sの点からYs−Ys/2Sの点までの範囲となる。ここで、判定可能な測定範囲の最大長は、使用する超音波の強さによって決まるが、市販の超音波探傷器を用いる場合、400mm程度となる。
【0035】
ここで、減肉部17の発生の有無を判定する検査部位14の広さが設定されると、送信側探触子11から試験体36に入射する超音波の入射角θ、及び試験体36から受信側探触子12に入射する超音波の入射角φ(=θ)が決まっているので、健全部エコーが得られる条件としてスキップ数Sが決まり、送信側探触子11と受信側探触子12の間隔Ysが決まる。なお、検査部位14の裏面に発生している減肉部17を検知しようとする場合は、スキップ数Sが3回以上になるように送信側探触子11、12間の間隔Ysを設定して、そのときの健全部エコーを求めることが望ましい。また、検査部位14の表面に発生している減肉部17を検知しようとする場合は、スキップ数Sを4回以上になるように送信側探触子11、12間の間隔Ysを設定して、そのときの健全部エコーを求めることが望ましい。
【0036】
(第2工程)
図1に示すように、板材13の検査部位14の表面に送信側探触子11及び受信側探触子12を配置し、送信側探触子11と受信側探触子12との間隔(探触子間距離)Ysを一定に保って探傷(移動)する。この際、送信側探触子11が配置される測定範囲の一方の端から内側(受信側探触子12側)方向にYs/Sまでの範囲と、受信側探触子12が配置される測定範囲の他方の端から外側(反送信側探触子11側)方向にYs/Sまでの範囲については、送信側探触子11と受信側探触子12をそれぞれ探傷(移動)カバー範囲が重複するように走査させる。
【0037】
例えば、図3(A)に示すように、検査部位14の検査範囲の一方側にそれぞれ配置した送信側探触子11及び受信側探触子12を、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に沿って送信側探触子11から受信側探触子12に向かう方向に同時にYs/Sだけ移動させた後、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に沿って検査範囲の他方側に向けて予め設定した距離だけ同時に移動させてから、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に沿って受信側探触子12から送信側探触子11に向かう方向に同時にYs/Sだけ移動させ、更に送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に沿って検査範囲の他方側に向けて予め設定した距離だけ同時に移動する単位走査を、送信側探触子11及び受信側探触子12が検査部位14の検査範囲の他方側に到達するまで繰り返す。
【0038】
あるいは、図3(B)に示すように、検査部位14の検査範囲の一方側にそれぞれ配置した送信側探触子11及び受信側探触子12を、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に沿って同時に検査範囲の他方側に移動させた後、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に沿って送信側探触子11から受信側探触子12に向かう方向に同時に予め設定した距離、例えばYs/2Sだけ移動させてから、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に沿って同時に検査範囲の一方側に移動させ、次いで、送信側探触子11及び受信側探触子12を、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に沿って送信側探触子11から受信側探触子12に向かう方向に同時に予め設定した距離、例えばYs/2Sだけ移動させた後、更に送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分に直交する方向に沿って同時に検査範囲の他方側に移動する。
【0039】
これによって、送信側探触子11からYs/2Sだけ内側の位置より、受信側探触子12からYs/2Sだけ内側の位置(送信側探触子11からYs−Ys/2Sだけ内側の位置)までの範囲に存在する減肉部17を見落とすことなく検出できる。そして、送信側探触子11から検査部位14に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子12に届く超音波を受信し、超音波探傷器16を介して出力される横波の透過エコー信号は、一定の時間間隔で解析手段18に入力される。また、解析手段18には、エンコーダ22から送信側探触子11、12の移動距離の測定信号が入力される。
【0040】
(第3工程)
解析手段18では、送信側探触子11から検査部位14に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子12に届く超音波を受信して検査部エコーが求められ、検査部エコーの発生位置と記憶している健全部エコーの発生位置との比較が行われる。送信側探触子11から送信され検査部位14を通過して受信側探触子12で受信される超音波の路程上に減肉部17が存在しないときは、受信側探触子12で受信して得られる検査部エコーの発生位置は健全部エコーの発生位置と一致する。一方、図4(A)に示すように、送信側探触子11から送信され検査部位14を通過して受信側探触子12で受信される超音波の路程上で検査部位14の裏面に減肉部17が存在するときは、減肉部17の底面と検査部位14の表面との間で超音波の反射が生じ、健全部エコーとは異なる位置に検査部エコーが発生する。図4(B)に、検査部エコーを健全部エコーと対比させて示す。そして、健全部エコーとは異なる位置に検査部エコーが発生した場合、検査部位14に減肉部17が存在すると判定する。
【0041】
また、送信側探触子11、12の移動距離に対応して変化する検査部エコーの振幅値と送信側探触子11、12の移動距離の関係から、検査部エコーの振幅の二次元分布を求める。検査部位14に減肉部17が存在しないと、検査部エコーの振幅の二次元分布は健全部エコーの振幅の二次元分布となり、検査部位14に減肉部17が存在すると、検査部エコーの振幅の二次元分布は健全部エコーの振幅の二次元分布と異なる。従って、検査部位14内での検査部エコーの振幅の二次元分布の変化から、減肉部17の分布(二次元分布)が求められる。
なお、減肉部17の分布(二次元分布)を求めるには、板材13の検査部位14の表面で少なくとも直交する2方向において超音波探触子11、12の走査を行う必要がある。すなわち、板材13の検査部位14の表面における超音波探触子11、12の走査方向を決めて第1〜第3工程を実行してX方向測定を行い、続いて、送信側探触子11及び受信側探触子12間を結ぶ線分の方向がX方向測定における超音波探触子11、12の走査方向と平行になるように送信側探触子11及び受信側探触子12を検査部位14の表面に配置し超音波探触子11、12の走査方向がX方向測定の際の走査方向と直交するように第1〜第3工程を実行してY方向測定を行う。そして、X方向測定の結果とY方向測定の結果を重ね合わせることにより、減肉部17の分布(二次元分布)を求める。そして、X方向測定、Y方向測定において、送信側探触子11と受信側探触子12との間隔Ysが同一であれば、Y方向測定における第1工程は省略できる。
【0042】
ここで、検査部位14の表面に送信側探触子11及び受信側探触子12を配置する際、減肉部17が送信側探触子11及び受信側探触子12の中央部となるように送信側探触子11及び受信側探触子12の位置を調整して、減肉部17の発生位置(減肉部17が検査部位14の表、裏面のいずれの側に存在するか)の判定及び減肉深さの測定を行う場合について説明する。例えば、図4(A)のように、検査部位14の裏面に減肉部17が存在している場合、図5(A)に示すように、スキップ数Sが偶数回となるように送信側探触子11と受信側探触子12の間隔Ysを調節しても図5(B)に示すように、健全部エコーのWsとW−1sとの間に検査部エコーはほとんど生じないが、図4(A)に示すように、スキップ数が奇数回となるように送信側探触子11と受信側探触子12の間隔Ysを調節すると、図4(B)に示すように、健全部エコーのWsとW−1sとの間に検査部エコーが発生するので、減肉部17の発生位置を判別することができる。
【0043】
例えば、図6に示すように、送信側探触子11から送信され検査部位14を通過して受信側探触子12で受信される超音波の路程上で検査部位14の裏面に深さdの減肉部17が存在するようにすると、検査部位14の表面で反射し反射角θで検査部位14の裏面に入射して反射し反射角θで検査部位14の表面に入射する超音波のスキップは、検査部位14の表面で反射し反射角θ´で減肉部17の底面に入射して反射し反射角θ´で検査部位14の表面に入射する超音波のスキップに代わる。このとき、検査部エコーの路程は、健全部エコーの路程に対して2t/cosθ−2(t−d)/cosθ´だけ路程が短くなるので、検査部エコーの路程と健全部エコーの路程の差が、検査部エコーの発生位置と健全部エコーの発生位置の差Δとなる。そして、厚みtは既知の値で、Δの値は測定から得られ、θ、θ´は路程Ws(スキップ数S)及び間隔Ysにより決まる値なので、減肉部17の深さdは
d=(1−cosθ´/cosθ)t−Δcosθ´/2
から求めることができる。
【0044】
本発明の第2の実施の形態に係る減肉検出方法で使用する減肉検出装置26は、図7(A)、(B)、(C)に示すように、被検体の一例である管材27の検査部位28に発生する減肉部の有無を判定するもので、第1の実施の形態に係る減肉検出方法で使用する減肉検出装置10と比較して、測定治具29の構成が異なっていることが特徴となっている。このため、測定治具29に関してのみ説明し、同一の構成部材には同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
測定治具29は、中央部で屈折可能で任意の屈折角度に固定可能なアーム30と、アーム30の両側にそれぞれ設けられ、送信側探触子11、受信側探触子12を保持して送信側探触子11、受信側探触子12の接触面24a、24bを管材27の検査部位28の表面に向けて一定の押圧力で付勢する探触子ホルダー31と、各探触子ホルダー31の側部に取付けられ、送信側探触子11、受信側探触子12間を結ぶ線分と平行な方向に車軸を向けた対となる車輪32と、一方の車輪32の回転数からアーム30の移動距離を測定し、測定信号を解析手段18に出力する図示しないエンコーダとを有している。
【0046】
ここで、各探触子ホルダー31は、送信側探触子11(受信側探触子12)を中央部に保持する探触子保持部33と、各探触子保持部33を中央部に回転可能に収納し、両側部が管材27の検査部位28の表面に当接するVブロック34と、アーム30の両側に設けられ、探触子保持部33を管材27の検査部位28の表面に向けて一定の押圧力で付勢することで送信側探触子11の接触面24a(受信側探触子12の接触面24b)を検査部位28の表面に当接させる付勢機構35とを有している。
【0047】
このような構成とすることで、送信側探触子11、受信側探触子12を管材27の検査部位28の表面に接触媒質を介して接触状態で保持することができると共に、検査部位28の表面上で送信側探触子11、受信側探触子12を、送信側探触子11、12間の距離を一定に保って、しかも送信側探触子11、12間を結ぶ線分に直交する方向に移動させることができる。
【0048】
更に、図7に示す送信側探触子11、受信側探触子12の一方、例えば受信側探触子12を保持している探触子ホルダー31を基準にして、送信側探触子11を保持している探触子ホルダー31のVブロック34を検査部位28の表面上で移動させると、受信側探触子12を保持している探触子ホルダー31を基準にしてアーム30も回転し、アーム30の回転に伴ってアーム30の両側に付勢機構35を介して取付けられた探触子保持部33も回転する。このため、探触子ホルダー31の移動に合わせて、送信側探触子11、受信側探触子12の方向を変えることができる。
【0049】
これによって、送信側探触子11と受信側探触子12を結ぶ線分が管材27の軸方向と平行になるように送信側探触子11、受信側探触子12を配置して、送信側探触子11、受信側探触子12を管材27の円周方向に移動させることができ、管材27の円周方向に減肉部が発生しているかを判定できる。また、送信側探触子11と受信側探触子12を結ぶ線分が管材27の軸方向と直交するように送信側探触子11、受信側探触子12を配置して、送信側探触子11、受信側探触子12を管材27の軸方向に移動させることができ、管材27の軸方向に減肉部が発生しているかを判定できる。更に、送信側探触子11と受信側探触子12を結ぶ線分が管材27の軸方向と交差するように送信側探触子11、受信側探触子12を配置して、送信側探触子11、受信側探触子12を管材27の表面を螺旋状に移動させることで、管材27を円周方向及び軸方向同時に検査して減肉部の発生の有無を判定できる。
なお、本発明の第2の実施の形態に係る減肉検出方法は、第1の実施の形態に係る減肉検出方法と同様に行うことができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
図8(A)に示すように、長さ400mm、幅が100mm、厚さが15mmの板材の裏面側の中央部に直径が4mm、深さが4mmの人工的な減肉部を形成した。そして、図8(A)に示すように板材の表面で板材の幅方向の一方側の位置1に、長手方向に沿って300mm離して対となる横波斜角探触子を配置し、一方の横波斜角探触子を送信側探触子、他方の横波斜角探触子を受信側探触子に用いて、図8(B)に示すように、板材の裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子に届く超音波を受信して健全部エコーを得た。
【0051】
次いで、板材の表面上で送信側探触子、受信側探触子を、図8(A)の位置1から位置4まで、送信側探触子と受信側探触子間の距離を一定に保って送信側探触子、受信側探触子を結ぶ線分に直交する方向(板材の幅方向)に移動させながら、送信側探触子から板材内に進入させ板材内を伝搬する超音波を受信側探触子で受信し、検査部エコーを求めた。
板材の表面上で送信側探触子と受信側探触子が図8(A)の位置1から位置2の手前まで移動する間、及び位置2を通過して位置4に到る間に得られる検査部エコーの発生位置は、位置1で求めた健全部エコーの発生位置に一致し、送信側探触子と受信側探触子が位置2に到達した際に得られる検査部エコーの発生位置のみが異なった。送信側探触子と受信側探触子を図8(A)の位置2に配置した際に得られた検査部エコーを健全部エコーと重ね合わせて図9(A)に示す。また、送信側探触子と受信側探触子を図8(A)の位置3に配置した際に得られた検査部エコーを健全部エコーと重ね合わせて図9(B)に示す。また、図9(C)に検査部エコーの振幅の二次元分布を示す。
【0052】
図9(A)から、送信側探触子から受信側探触子に到達する超音波の路程上に減肉部が存在すると、検査部エコーは健全部エコーの発生位置とは異なる位置に発生することが分かる。一方、図9(B)から、送信側探触子から受信側探触子に到達する超音波の路程上に減肉部が存在しないと、検査部エコーと健全部エコーは一致することが分かる。また、図9(C)の分布図からも、減肉部が存在しない場所の検査部エコーに対応する縞模様は健全部エコーに対応する縞模様と同一で、減肉部が存在する場所には、健全部エコーに対応する縞模様とは異なる場所に縞模様の発生が認められる。従って、予め検査部位の厚みに対応して決まる健全部エコーを求めておき、検査部位の検査で得られた検査部エコーと比較し、検査部エコーの発生位置が異なると、検査部位に減肉部が存在すると判定できる。
【0053】
(実施例2)
図10(A)に示すように、長さ400mm、幅が100mm、厚さが15mmの板材の裏面側の中央部に直径が8mm、深さが8mmの人工的な減肉部を形成した。
そして、図10(A)に示すように板材の表面で板材の幅方向の一方側の位置1に、長手方向に沿って300mm離して対となる横波斜角探触子を配置し、一方の横波斜角探触子を送信側探触子、他方の横波斜角探触子を受信側探触子に用いて、図10(B)に示すように、板材の裏及び表で反射する複数回のスキップを行い受信側探触子に届く超音波を受信して健全部エコーを得た。
【0054】
次いで、板材の表面上で送信側探触子、受信側探触子を、図10(A)の位置1から位置4まで、送信側探触子と受信側探触子間の距離を一定に保って送信側探触子、受信側探触子を結ぶ線分に直交する方向(板材の幅方向)に移動させながら、送信側探触子から板材内に進入させ板材内を伝搬する超音波を受信側探触子で受信し、検査部エコーを求めた。
板材の表面上で送信側探触子と受信側探触子が図10(A)の位置1から位置2の手前まで移動する間、及び位置2通過して位置4に到る間に得られる検査部エコーの発生位置は、位置1で求めた健全部エコーの発生位置に一致し、送信側探触子と受信側探触子が位置2に到達した際に得られる検査部エコーの発生位置のみが異なった。送信側探触子と受信側探触子を図10(A)の位置2に配置した際に得られた検査部エコーを健全部エコーと重ね合わせて図11(A)に示す。また、送信側探触子と受信側探触子を図10(A)の位置3に配置した際に得られた検査部エコーを健全部エコーと重ね合わせて図11(B)に示す。また、図11(C)に検査部エコーの振幅の二次元分布を示す。
【0055】
図11(A)から、送信側探触子から受信側探触子に到達する超音波の路程上に減肉部が存在すると、検査部エコーは健全部エコーの発生位置とは異なる位置に発生することが分かる。一方、図11(B)から、送信側探触子から受信側探触子に到達する超音波の路程上に減肉部が存在しないと、検査部エコーと健全部エコーは一致することが分かる。また、図11(C)の分布図からも、減肉部が存在しない場所の検査部エコーに対応する縞模様は健全部エコーに対応する縞模様と同一で、減肉部が存在する場所には、健全部エコーに対応する縞模様とは異なる場所に縞模様の発生が認められる。従って、予め検査部位の厚みに対応して決まる健全部エコーを求めておき、検査部位の検査で得られた検査部エコーと比較し、検査部エコーの発生位置が異なると、検査部位に減肉部が存在すると判定できる。
【0056】
また、図9(A)と図11(A)の比較、図9(C)と図11(C)の比較から、深さ4mmの減肉部が存在した場合の健全部エコーと検査部エコーとの発生位置の差は、深さ8mmの減肉部が存在した場合の健全部エコーと検査部エコーとの発生位置の差より小さいことが分かる。従って健全部エコーと検査部エコーとの発生位置の差を求めることで、減肉部の深さを知ることができることが分かる。
【0057】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、第3工程での減肉部の有無の判定に、健全部エコーと検査部エコーの発生位置の相違を用いたが、減肉部の有無の判定に、健全部エコーと検査部エコーの発生位置の相違の他、検査部エコーの高さも考慮して行うこともできる。これによって、減肉部が送信側探触子から受信側探触子の中央部以外の場所に存在すること、検査部位の厚みが全体的に薄くなっていることが判定できる。
【符号の説明】
【0058】
10:減肉検出装置、11:送信側探触子、12:受信側探触子、13:板材、14:検査部位、15:測定治具、16:超音波探傷器、17:減肉部、18:解析手段、19:棒部材、20a、20b:探触子ホルダー、21:車輪、22:エンコーダ、23a、23b:信号ケーブル、24a、24b:接触面、25a、25b:探触子ケース、26:減肉検出装置、27:管材、28:検査部位、29:測定治具、30:アーム、31:探触子ホルダー、32:車輪、33:探触子保持部、34:Vブロック、35:付勢機構、36:試験体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を有して超音波の送信側探触子及び受信側探触子となる対となる横波斜角探触子を、検査部位の健全厚みを有する試験体の表面に配置し、前記送信側探触子から前記試験体に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い前記受信側探触子に届く超音波を受信して健全部エコーを得る第1工程と、
前記間隔を有して前記送信側探触子及び前記受信側探触子を前記検査部位の両側に配置し、該送信側探触子から該検査部位に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い該受信側探触子に届く超音波を受信して検査部エコーを求める第2工程と、
前記第1工程で得られた前記健全部エコーと前記第2工程で得られた前記検査部エコーの発生位置を比較してその相違から前記検査部位に発生している減肉部の有無を判定する第3工程とを有することを特徴とする減肉検出方法。
【請求項2】
請求項1記載の減肉検出方法において、前記第3工程での減肉部の有無の判定には、前記健全部エコーと前記検査部エコーの発生位置の相違の他、前記検査部エコーの高さも考慮して行うことを特徴とする減肉検出方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の減肉検出方法において、前記減肉部の検出は前記送信側探触子及び前記受信側探触子の中央部で行うことを特徴とする減肉検出方法。
【請求項4】
請求項3記載の減肉検出方法において、奇数回の前記スキップを介して超音波が前記受信側探触子に届く距離に前記間隔を設定し、前記検査部位の裏面に発生している前記減肉部を検知することを特徴とする減肉検出方法。
【請求項5】
請求項3記載の減肉検出方法において、偶数回の前記スキップを介して超音波が前記受信側探触子に届く距離に前記間隔を設定し、前記検査部位の表面に発生している前記減肉部を検知することを特徴とする減肉検出方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の減肉検出方法において、前記健全部エコーと前記検査部エコーの発生位置の差から前記減肉部の深さを求めることを特徴とする減肉検出方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の減肉検出方法において、前記送信側探触子及び前記受信側探触子の入射角は同一であって、それぞれ45度以上かつ75度以下のものを使用することを特徴とする減肉検出方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の減肉検出方法において、前記検査部位の表面上で前記送信側探触子及び前記受信側探触子を、前記間隔を一定に保って、該送信側探触子及び該受信側探触子間を結ぶ線分に直交する方向に移動させて、前記減肉部の範囲を測定することを特徴とする減肉検出方法。
【請求項1】
所定の間隔を有して超音波の送信側探触子及び受信側探触子となる対となる横波斜角探触子を、検査部位の健全厚みを有する試験体の表面に配置し、前記送信側探触子から前記試験体に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い前記受信側探触子に届く超音波を受信して健全部エコーを得る第1工程と、
前記間隔を有して前記送信側探触子及び前記受信側探触子を前記検査部位の両側に配置し、該送信側探触子から該検査部位に進入して裏及び表で反射する複数回のスキップを行い該受信側探触子に届く超音波を受信して検査部エコーを求める第2工程と、
前記第1工程で得られた前記健全部エコーと前記第2工程で得られた前記検査部エコーの発生位置を比較してその相違から前記検査部位に発生している減肉部の有無を判定する第3工程とを有することを特徴とする減肉検出方法。
【請求項2】
請求項1記載の減肉検出方法において、前記第3工程での減肉部の有無の判定には、前記健全部エコーと前記検査部エコーの発生位置の相違の他、前記検査部エコーの高さも考慮して行うことを特徴とする減肉検出方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の減肉検出方法において、前記減肉部の検出は前記送信側探触子及び前記受信側探触子の中央部で行うことを特徴とする減肉検出方法。
【請求項4】
請求項3記載の減肉検出方法において、奇数回の前記スキップを介して超音波が前記受信側探触子に届く距離に前記間隔を設定し、前記検査部位の裏面に発生している前記減肉部を検知することを特徴とする減肉検出方法。
【請求項5】
請求項3記載の減肉検出方法において、偶数回の前記スキップを介して超音波が前記受信側探触子に届く距離に前記間隔を設定し、前記検査部位の表面に発生している前記減肉部を検知することを特徴とする減肉検出方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の減肉検出方法において、前記健全部エコーと前記検査部エコーの発生位置の差から前記減肉部の深さを求めることを特徴とする減肉検出方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の減肉検出方法において、前記送信側探触子及び前記受信側探触子の入射角は同一であって、それぞれ45度以上かつ75度以下のものを使用することを特徴とする減肉検出方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の減肉検出方法において、前記検査部位の表面上で前記送信側探触子及び前記受信側探触子を、前記間隔を一定に保って、該送信側探触子及び該受信側探触子間を結ぶ線分に直交する方向に移動させて、前記減肉部の範囲を測定することを特徴とする減肉検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−190794(P2010−190794A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36913(P2009−36913)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(591053856)新日本非破壊検査株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(591053856)新日本非破壊検査株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
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