説明

減衰性塗料

【課題】減衰性能を発揮させることのできる減衰性塗料を提供する。
【解決手段】減衰性塗料には、塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、塗膜に対して減衰性を付与する減衰性付与成分とが含有され、同減衰性塗料は、正リン酸エステル系化合物、芳香族第二級アミン系化合物、及び含ハロゲン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも一種である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動エネルギー、衝撃エネルギー等のエネルギーを減衰する減衰性能を発揮する減衰性塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばベンゾチアジル基を有する化合物等は、各種樹脂材料に減衰性を付与する減衰性付与成分として知られている(特許文献1参照)。さらに、こうした減衰性付与成分と、塗膜を形成する樹脂成分とを含有する減衰性塗料が知られている(例えば特許文献2,3参照)。この減衰性塗料から得られる塗膜は、減衰性付与成分の作用によって、減衰性能を発揮する。
【特許文献1】国際公開第97/42844号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/28394号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/40391号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近では、環境に対する影響を配慮して、水系分散媒中に樹脂粒子が分散している水系樹脂分散液、すなわち水性塗料が広く用いられている。一方、こうした水性塗料から形成される塗膜において減衰性能が発揮される新たな減衰性塗料が所望されている。
【0004】
本発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、減衰性能を発揮させることのできる減衰性塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、前記塗膜に対して減衰性を付与する減衰性付与成分とを含有する減衰性塗料であって、前記減衰性付与成分は、正リン酸エステル系化合物、芳香族第二級アミン系化合物、及び含ハロゲン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも一種であることを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記減衰性付与成分が正リン酸エステル系化合物であることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記正リン酸エステル系化合物がトリフェニルホスフェートであることを要旨とする。
【0007】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記減衰性付与成分の含有量が該減衰性付与成分と前記樹脂粒子との合計量に対して、5質量%以下であることを要旨とする。
【0008】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記減衰性付与成分が水系分散媒に分散した分散液を、前記水系樹脂分散液に配合してなることを要旨とする。
【0009】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記樹脂粒子が、アクリル系樹脂及びアクリル/スチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種の高分子材料から構成されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、減衰性能を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態における減衰性塗料には、塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、塗膜に対して減衰性を付与する減衰性付与成分とが含有されている。減衰性付与成分は、正リン酸エステル系化合物、芳香族第二級アミン系化合物、及び含ハロゲン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも一種である。
【0012】
正リン酸エステル系化合物としては、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、及び2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0013】
芳香族第二級アミン系化合物としては、例えばp−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N´−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン及び4,4´−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0014】
含ハロゲンリン酸エステル化合物としては、例えばトリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート及びトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0015】
減衰性付与成分の中でも、塗膜の減衰性能を高める作用に優れることから、好ましくは正リン酸エステル系化合物、より好ましくはトリフェニルホスフェートである。
減衰性付与成分の含有量は、樹脂粒子と減衰性付与成分との合計量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。減衰性付与成分の含有量が20質量%を超える場合、減衰性能の向上率が低下する傾向にあるため、不経済となるおそれがある。さらに、減衰性付与成分の含有量は、樹脂粒子と減衰性付与成分との合計量に対して、好ましくは1質量%以上であり、最も好ましくは1〜5質量%である。減衰性付与成分の含有量が1質量%未満であると、優れた減衰性を付与することが困難になるおそれがある。
【0016】
減衰性付与成分が固体状である場合には、水系樹脂分散液に対する分散を容易にするという観点から、減衰性付与成分が水系分散媒に分散した分散液を、水系樹脂分散液に配合することが好ましい。
【0017】
減衰性付与成分を分散させる水系分散媒としては、水、及び水とアルコールの混合液が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール等が挙げられる。分散液中におけるトリフェニルホスフェートの含有量は、分散液の取り扱い性、分散液の安定性等を考慮すると、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは15〜60質量%である。
【0018】
分散液に分散される減衰性付与成分は固体状でも液状でもよい。減衰性付与成分の粒子径は製造の容易性及び分散安定性が得られ易いという観点から、1〜100μmであることが好適である。
【0019】
この分散液は、例えば以下に示す(A)〜(C)の方法で調製することができる。
方法(A):減衰性付与成分を粉砕して得られた固体粒子を、水系分散媒に分散剤を用いて分散する。
【0020】
方法(B):減衰性付与成分を水系分散媒に配合し、水系分散媒中の減衰性付与成分を粉砕するとともに分散剤を用いて分散する。
方法(C):水に対して相溶性を有する有機溶媒に、減衰性付与成分を溶解した減衰性付与成分の溶液を調製する。その溶液を水系分散媒に混合することによって、水系分散媒中に減衰性付与成分を析出させるとともに、析出した減衰性付与成分を水系分散媒に分散剤を用いて分散させる。水系分散媒に対して相溶性を有する有機溶媒としては、メタノール、エタノール等が挙げられる。なお、水系分散媒に相溶した有機溶媒は、分散液にスチームを通過させることによって除去してもよい。
【0021】
各方法で用いる分散剤としては、減衰性付与成分の種類等に応じて、適宜選択すればよく、各種界面活性剤が好適に用いられる。界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸塩、アルキルアリール硫酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系界面活性剤、アルキル四級アミン塩等のカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、及びカルボン酸型、スルホン酸型等の両性界面活性剤が挙げられる。分散液中における分散剤の配合量は、減衰性付与成分の分散状態等を考慮して、適宜調整すればよく、例えば0.01〜20質量%の範囲が好適である。分散液には、充填剤、粘度調整剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤等を必要に応じて配合することもできる。分散液は、各種ホモジナイザー等の公知の攪拌・分散装置を用いることができる。
【0022】
水系樹脂分散液に含有される樹脂粒子を構成する高分子材料としては、例えばアクリル系樹脂、アクリル/スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル/アクリル系樹脂、エチレン/酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン共重合ゴム、スチレン/ブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、及びイソプレンゴムから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。なお、これらの高分子材料は変性体であってもよい。
【0023】
樹脂粒子は、単独種の高分子材料から形成されていてもよいし、複数種の高分子材料から形成されていてもよい。さらに、水系樹脂分散液には、これらの高分子材料から構成される樹脂粒子を単独で含有させてもよいし、複数種の樹脂粒子を含有させてもよい。
【0024】
これらの高分子材料の中でも、上述した減衰性付与成分によって高い減衰性能が発揮され易いという観点から、アクリル系樹脂及びアクリル/スチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。アクリル系樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルを単量体とする単独重合体、これらの単独重合体の混合物、並びにこれらの単量体が重合した共重合体が挙げられる。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、2−エチルヘキシルエステル、エトキシエチルエステル等が挙げられる。アクリル/スチレン系樹脂としては、上記アクリル系樹脂を形成する単量体と、スチレン単量体との共重合体が挙げられる。
【0025】
樹脂粒子を分散している水系分散媒としては、水、及び水とアルコールとの混合液が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール等が挙げられる。水系樹脂分散液は、例えば乳化剤を含有した水溶液中に単量体及び重合開始剤を滴下する乳化重合等の周知の方法に従って得ることができる。
【0026】
減衰性塗料には、その他の成分として、充填剤、ゲル化剤、発泡剤、発泡助剤、分散剤、粘度調整剤、増粘剤、流動改良剤、硬化剤、消泡剤、造膜助剤、沈降防止剤等を必要に応じて配合することが可能である。減衰性塗料には、減衰性能を高めるという観点から、充填剤をさらに配合することが好適である。充填剤としては、マイカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ、珪藻土、ゼオライト、フェライト、カーボン等が挙げられる。ゲル化剤としては、有機ゲル化剤と無機ゲル化剤とに分類され、有機ゲル化剤としてはでんぷん、でんぷん誘導体等が挙げられ、無機ゲル化剤としては硝酸アンモニウム、硝酸カルシウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム等が挙げられる。充填剤の配合量は、樹脂粒子と充填剤との合計量に対して例えば1〜80質量%が好適である。
【0027】
減衰性塗料は、水系樹脂分散液と減衰性付与成分とを攪拌機等の公知の混合手段によって混合することによって調製することができる。
こうした減衰性塗料の減衰性能、すなわち減衰性塗料から得られる塗膜の減衰性能は、塗膜の損失係数によって示される。つまり、塗膜の損失係数が高ければ高いほど、塗膜の減衰性能が優れることが示される。塗膜の損失係数は、周知の中央加振法損失係数測定装置によって測定することができる。
【0028】
この減衰性塗料は、振動エネルギーを減衰する制振塗料、衝撃エネルギーを減衰する衝撃吸収塗料等として利用することができる。制振塗料の適用分野としては、例えば自動車、建材、家電機器、産業機械等が挙げられる。衝撃吸収塗料の適用分野としては、例えば靴、グローブ、各種防具、グリップ、ヘッドギア等のスポーツ用品、ギプス、マット、サポーター等の医療用品、壁材、床材、フェンス等の建材、各種緩衝材、各種内装材等が挙げられる。
【0029】
減衰性塗料を使用するには、減衰性塗料を適用箇所に塗布した後、減衰性塗料を乾燥させることにより、塗膜を形成させる。減衰性塗料の塗布方法は、減衰性塗料の流動性に応じて適宜選択すればよく、スリット等から減衰性塗料を吐出させるとともに適用箇所に塗布する方法の他、エアスプレーガン、エアレススプレーガン、刷毛塗り等の塗布手段を用いることが可能である。
【0030】
減衰性塗料から形成される塗膜には、上述した減衰性付与成分が含有されている。このため、振動エネルギー、衝撃エネルギー、音のエネルギー等のエネルギー(但し、光エネルギー及び電気エネルギーを除く)が塗膜に伝わった際に、減衰性付与成分と塗膜を構成する高分子の分子鎖との相互作用によって、そうしたエネルギーが熱エネルギーに変換されると推測される。このように、正リン酸エステル系化合物、芳香族第二級アミン系化合物、及び含ハロゲン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する塗膜では、振動エネルギー等を減衰する減衰性能が発揮される。
【0031】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 減衰性塗料には、正リン酸エステル系化合物、芳香族第二級アミン系化合物、及び含ハロゲン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも一種の減衰性付与成分が含有されているため、減衰性能を発揮させることができる。
【0032】
(2) 減衰性付与成分として好ましくは正リン酸エステル系化合物、より好ましくはトリフェニルホスフェートを配合することにより、塗膜の減衰性能を高めることがさらに容易である。
【0033】
(3) 減衰性付与成分の含有量を、同減衰性付与成分と樹脂粒子との合計量に対して、5質量%以下にすることにより、塗膜の減衰性能を高めることができるとともに、塗膜の強度等の機械的な物性が維持され易い。さらに、減衰性付与成分の配合によるコストの増大を最小限に抑えることができる。
【0034】
(4) 減衰性付与成分を分散液として配合した減衰性塗料では、同減衰性塗料中における減衰性付与成分の分散性が改善されると推測され、塗膜の減衰性能を高めることがさらに容易である。さらに、減衰性付与成分の配合量に見合った減衰性能が発揮され易くなるため、減衰性付与成分の配合量を削減することも可能である。
【0035】
(5) 上述した減衰性付与成分を、アクリル系樹脂及びアクリル/スチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂粒子が分散した水系樹脂分散液に配合した場合には、塗膜の減衰性能が発揮され易い。さらに、こうした水系樹脂分散液に対しては、塗膜の減衰性能をより高めるという観点から、正リン酸エステル系化合物を配合することが好ましく、トリフェニルホスフェートを配合することがより好ましい。
【実施例】
【0036】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜5)
アクリル系エマルション(樹脂粒子:メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、及びアクリル酸2−エチルヘキシルを含む単量体を重合した重合体52.5質量%、水等47.5質量%)に対して、減衰性付与成分を配合し、攪拌機によって混合することにより、表1に示す減衰性塗料を調製した。なお、各実施例の減衰性塗料には、充填剤、分散剤等が所定の配合率で配合されている。表1に示される減衰性付与成分の種類欄の略号は以下の化合物を表すとともに、減衰性付与成分の配合量は樹脂粒子と減衰性付与成分との合計量に対する質量%で表している。
【0037】
A−1:トリフェニルホスフェート
A−2:トリブチルホスフェート
B−1:N−フェニル−1−ナフチルアミン
B−2:p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン
C−1:トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート
(比較例1〜3)
比較例1は、上記実施例で使用したアクリル系エマルションを水系樹脂分散液とする塗料である。比較例2,3は、上記減衰性付与成分を配合せずに、添加剤としてそれぞれベンズイミダゾール系化合物及びヒンダードフェノール系化合物を配合した塗料である。なお、各比較例の塗料には、充填剤、分散剤等が上記実施例と同じ配合率で配合されている。表1に示される添加剤の種類欄の略号は以下の化合物を表すとともに、添加剤の配合量は樹脂粒子と添加剤との合計量に対する質量%で表している。
【0038】
R−1:2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩
R−2:N,N´−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]
(実施例6,7)
表2に示すように実施例6,7では、減衰性付与成分A−1の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして減衰性塗料を調製した。
【0039】
(実施例8,9)
表2に示すように実施例8では減衰性付与成分A−1を、粉体として配合せずに分散液として配合した以外は、実施例1と同様にして減衰性塗料を調製した。なお、分散液の分散媒は水であり、分散液中において減衰性付与成分は平均粒径1.0μmの固体粒子として存在している。その固体粒子の濃度は38質量%であり、分散液には、分散剤としての界面活性剤が固体粒子に対して約5%含有されている。実施例9では、減衰性付与成分の種類を変更した以外は、実施例8と同様にして減衰性塗料を調製した。表2に示される減衰性付与成分の種類欄の略号は以下の化合物を表すとともに、減衰性付与成分の配合量は樹脂粒子と減衰性付与成分との合計量に対する質量%で表している。
【0040】
B−3:4,4´−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
(実施例10)
水系樹脂分散液をアクリル/スチレン系エマルション(樹脂粒子:メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びスチレンを含む単量体を重合した重合体52.5質量%、水等47.5質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にして減衰性塗料を調製した。
【0041】
(比較例4)
比較例4は、上記実施例10で使用したアクリル/スチレン系エマルションを水系樹脂分散液とする塗料である。なお、比較例4の塗料には、充填剤、分散剤等が上記実施例と同じ配合率で配合されている。
【0042】
<減衰性能の評価>
各実施例の減衰性塗料及び各比較例の塗料を鋼板(厚さ0.8mm)に塗布した後、140℃で25分間加熱乾燥することにより塗膜を形成し、これらの塗膜を試験片とした。なお、鋼板に対する塗膜の厚みは、同一となるように塗布量を調整した。各例の試験片について、中央加振法損失係数測定装置(CF5200タイプ、小野測器(株)製)を用いて、20℃、30℃、40℃、50℃及び60℃における損失係数、及び損失係数のピーク値を測定した。各温度における損失係数、並びに損失係数のピーク値及びピーク温度を表1及び表2に併記する。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

表1の結果から明らかなように、実施例1〜5における損失係数のピーク値は、比較例1における同ピーク値よりも高まっていることから、各実施例の減衰性塗料では減衰性付与成分の配合によって、減衰性能が発揮されていることがわかる。これに対して、比較例2,3に示されるように、ベンズイミダゾール系化合物及びヒンダードフェノール系化合物を配合した場合、損失係数のピーク値は比較例1における同ピーク値よりも、低下するため、それら化合物の配合では減衰性能が発揮されないことがわかる。
【0045】
図1には実施例1,6,7及び比較例1について、減衰性付与成分の配合量と損失係数のピーク値との関係を示している。図1の結果から明らかなように、配合量の増大に伴って損失係数のピーク値が高まり、そのピーク値は5質量%でほぼ一定の水準に達していることがわかる。
【0046】
表2に示される実施例8,9の結果から明らかなように、減衰性付与成分を分散液として配合しても減衰性能が発揮される。そして、図2に示されるように実施例8における損失係数は、実施例1における損失係数よりも高まっていることから、分散液として配合すれば減衰性能をさらに発揮させることができる。また、表2に示される実施例10及び比較例4の結果から明らかなように、水系樹脂分散液の種類を変更しても、減衰性能が発揮されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1,6,7及び比較例1における減衰性付与成分の配合量と損失係数のピーク値との関係を示すグラフ。
【図2】実施例1及び8における温度と損失係数との関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、
前記塗膜に対して減衰性を付与する減衰性付与成分とを含有する減衰性塗料であって、
前記減衰性付与成分は、
正リン酸エステル系化合物、芳香族第二級アミン系化合物、及び含ハロゲン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする減衰性塗料。
【請求項2】
前記減衰性付与成分が正リン酸エステル系化合物である請求項1に記載の減衰性塗料。
【請求項3】
前記正リン酸エステル系化合物がトリフェニルホスフェートである請求項2に記載の減衰性塗料。
【請求項4】
前記減衰性付与成分の含有量が該減衰性付与成分と前記樹脂粒子との合計量に対して、5質量%以下である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の減衰性塗料。
【請求項5】
前記減衰性付与成分が水系分散媒に分散した分散液を、前記水系樹脂分散液に配合してなる請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の減衰性塗料。
【請求項6】
前記樹脂粒子が、アクリル系樹脂及びアクリル/スチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種の高分子材料から構成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の減衰性塗料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−262137(P2007−262137A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85707(P2006−85707)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】