説明

減衰性塗料

【課題】減衰性付与成分によって高められた減衰性能を所定の温度範囲においてバランスよく発揮させることの容易な減衰性塗料を提供する。
【解決手段】減衰性塗料には、塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、塗膜に対して減衰性を付与する減衰性付与成分とが含有されている。減衰性付与成分は、ベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、及び正リン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物である。樹脂粒子は、20〜30℃の範囲のガラス転移点を有する第1の樹脂粒子と、45〜55℃の範囲のガラス転移点を有する第2の樹脂粒子とを含有する。その第2の樹脂粒子は、第1の樹脂粒子100質量部に対して300〜600質量部の範囲で含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動エネルギー、衝撃エネルギー等のエネルギーを減衰する減衰性塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物等は、各種樹脂材料に減衰性を付与する減衰性付与成分として知られている(特許文献1参照)。さらに、こうした減衰性付与成分と、塗膜を形成する樹脂成分とを含有する減衰性塗料が知られている(例えば特許文献2,3参照)。この減衰性塗料から得られる塗膜では、減衰性付与成分の作用によって、減衰性能が高められている。
【特許文献1】国際公開第97/42844号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/28394号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/40391号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近では、環境に対する影響を配慮して、水系分散媒中に樹脂粒子が分散している水系樹脂分散液を減衰性塗料として使用する試みがなされている。こうした減衰性塗料には、水系樹脂分散液に、減衰性を付与する減衰性付与成分を含有させることで、その減衰性塗料から得られる塗膜の減衰性能が高められる。ところで、そうした塗膜の発揮する減衰性能は、減衰性付与成分を含有した塗膜の温度に依存する。このため、減衰性塗料では、塗膜の形成された物品が使用される温度範囲において、減衰性能がバランスよく発揮されるように構成することが好適である。
【0004】
本発明は、減衰性付与成分によって高められた減衰性能が所定の温度範囲において調整できることを見出すことでなされたものである。本発明の目的は、減衰性付与成分によって高められた減衰性能を所定の温度範囲においてバランスよく発揮させることの容易な減衰性塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、前記塗膜に対して減衰性を付与する減衰性付与成分とを含有する減衰性塗料であって、前記減衰性付与成分は、ベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、及び正リン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物であり、前記樹脂粒子として、20〜30℃の範囲のガラス転移点を有する第1の樹脂粒子と、45〜55℃の範囲のガラス転移点を有する第2の樹脂粒子とを含有するとともに、前記第2の樹脂粒子は、前記第1の樹脂粒子100質量部に対して300〜600質量部の範囲で含有することを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の減衰性塗料において、前記第1の樹脂粒子及び第2の樹脂粒子を構成する高分子材料がアクリル系樹脂であることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の減衰性塗料において、前記減衰性付与成分の含有量が、前記第1の樹脂粒子、第2の樹脂粒子及び前記減衰性付与成分の合計量に対して、1〜20質量%であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、減衰性付与成分によって高められた減衰性能を所定の温度範囲においてバランスよく発揮させることが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態における減衰性塗料には、塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、塗膜に対して減衰性を付与する減衰性付与成分とが含有されている。樹脂粒子は、20〜30℃の範囲のガラス転移点を有する第1の樹脂粒子と、45〜55℃の範囲のガラス転移点を有する第2の樹脂粒子とを含む。減衰性塗料には、第2の樹脂粒子が第1の樹脂粒子100質量部に対して300〜600質量部の範囲で含有される。
【0009】
第1の樹脂粒子及び第2の樹脂粒子のガラス転移点は、動的粘弾性分析(DMA)により測定されたガラス転移点温度をいう。具体的には、各樹脂粒子を構成する高分子材料について、動的粘弾性分析を10Hzの条件で行った際の損失正接のピーク温度をいう。
【0010】
第1又は第2の樹脂粒子を構成する高分子材料の具体例としては、アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルを単量体とする単独重合体、これらの単独重合体の混合物、並びにこれらの単量体が重合した共重合体が挙げられる。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、2−エチルヘキシルエステル、エトキシエチルエステル等が挙げられる。なお、これらの高分子材料は、上述したガラス転移点の範囲に含まれる変性体であってもよい。
【0011】
第1の樹脂粒子及び第2の樹脂粒子は、それぞれ単独種の高分子材料から形成されていてもよいし、それぞれ複数種の高分子材料から形成されていてもよい。また、異なる高分子材料から構成された複数種の第1の樹脂粒子を含有させてもよいし、異なる高分子材料から構成された複数種の第2の樹脂粒子を含有させてもよい。樹脂粒子は、第1及び第2の樹脂粒子のみから構成することが最も好ましいが、第1及び第2の樹脂粒子のガラス転移点の範囲外のガラス転移点を有する第3の樹脂粒子を含有させてもよい。この場合、減衰性塗料中に含まれる樹脂粒子の全体の質量に対して、第1及び第2の樹脂粒子の占める割合が例えば90質量%以上であることが好ましい。第1及び第2の樹脂粒子は、相溶性が良好であるため、減衰性が発揮され易いという観点から、アクリル系樹脂から構成することが好ましい。
【0012】
減衰性塗料には、第2の樹脂粒子が第1の樹脂粒子100質量部に対して300〜600質量部の範囲で含有される。第2の樹脂粒子は、第1の樹脂粒子100質量部に対して320〜540質量部の範囲で含有されることが好ましい。第2の樹脂粒子が第1の樹脂粒子100質量部に対して300質量部未満の範囲で含有される場合、所定の温度範囲において高温側の減衰性能が十分に発揮されない。一方、第2の樹脂粒子が第1の樹脂粒子100質量部に対して600質量部を超える範囲で含有される場合、所定の温度範囲において低温側の減衰性能が十分に発揮されない。
【0013】
樹脂粒子を分散する水系分散媒としては、水、及び水と一価アルコールとの混合液が挙げられる。一価アルコールとしては、メタノール、エタノール等が挙げられる。水系樹脂分散液は、例えば乳化剤を含有した水溶液中に単量体及び重合開始剤を滴下する乳化重合等の周知の方法に従って得ることができる。
【0014】
減衰性付与成分は、塗膜中の双極子モーメント量を増大させることによって、振動エネルギー、衝撃エネルギー、音のエネルギー等のエネルギー(但し、光エネルギー及び電気エネルギーを除く)を効率的に熱エネルギーへ変換するために含有される。減衰性付与成分は、ベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、及び正リン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
【0015】
ベンゾチアジル系化合物としては、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DCHBSA)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(OBS)、及びN,N−ジイソプロピルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DPBS)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0016】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、ベンゼン環にアゾール基が結合したベンゾトリアゾールを母核とし、これにフェニル基が結合したものであって、2−[2′−ハイドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラハイドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(2HPMMB)、2−(2′−ハイドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2HMPB)、2−(2′−ハイドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(2HBMPCB)、2−(2′−ハイドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(2HDBPCB)、及び2−(2′−ハイドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2HOPB)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0017】
ジフェニルアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(ECDPA)、及びオクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(OCDPA)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0018】
正リン酸エステル系化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、及び2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0019】
減衰性付与成分の中でも、ベンゾチアジル系化合物は、塗膜の形成された物品であって、20℃付近から60℃付近までの温度範囲で主に使用される物品において、減衰性能をバランスよく発揮させることが可能となる。
【0020】
減衰性付与成分の含有量は、第1及び第2の樹脂粒子並びに減衰性付与成分の合計量に対して、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。減衰性付与成分の含有量が1質量%未満であると、優れた減衰性を付与することが困難になるおそれがある。一方、減衰性付与成分の含有量が20質量%を超える場合、減衰性能の向上率が低下する傾向にあるとともに、塗膜の強度が低下するおそれがある。
【0021】
減衰性塗料には、その他の成分として、充填剤、ゲル化剤、発泡剤、発泡助剤、分散剤、粘度調整剤、増粘剤、流動改良剤、硬化剤、消泡剤、造膜助剤、沈降防止剤等を必要に応じて配合することが可能である。減衰性塗料には、減衰性能を高めるという観点から、充填剤をさらに配合することが好適である。充填剤としては、マイカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ、珪藻土、ゼオライト、フェライト、カーボン等が挙げられる。充填剤の配合量は、樹脂粒子と充填剤との合計量に対して例えば1〜80質量%が好適である。ゲル化剤としては、有機ゲル化剤と無機ゲル化剤とに分類され、有機ゲル化剤としてはでんぷん、でんぷん誘導体等が挙げられ、無機ゲル化剤としては硝酸アンモニウム、硝酸カルシウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム等が挙げられる。
【0022】
減衰性塗料は、水系樹脂分散液、減衰性付与成分等を攪拌機等の公知の混合手段によって混合することによって調製することができる。減衰性塗料を使用するには、減衰性塗料を適用箇所に塗布した後、減衰性塗料を乾燥させることにより、塗膜を形成させる。減衰性塗料の塗布方法は、減衰性塗料の流動性に応じて適宜選択すればよく、スリット等から減衰性塗料を吐出させるとともに適用箇所に塗布する方法の他、エアスプレーガン、エアレススプレーガン、刷毛塗り等の塗布手段を用いることが可能である。
【0023】
減衰性塗料から形成される塗膜には、上述した減衰性付与成分が含有されている。このため、振動エネルギー、衝撃エネルギー、音のエネルギー等のエネルギー(但し、光エネルギー及び電気エネルギーを除く)が塗膜に伝わった際に、減衰性付与成分と塗膜を構成する樹脂材料の分子鎖との相互作用によって、そうしたエネルギーが熱エネルギーに変換されると推測される。こうした減衰性塗料の減衰性能、すなわち減衰性塗料から得られる塗膜の減衰性能は、塗膜の損失係数によって示される。つまり、塗膜の損失係数が高ければ高いほど、塗膜の減衰性能が優れることが示される。塗膜の損失係数は、周知の中央加振法損失係数測定装置によって測定することができる。
【0024】
塗膜に含まれる減衰性付与成分は、所定の温度範囲において減衰性能を高める。そして、塗膜を構成する樹脂材料は、所定範囲のガラス転移点を有する第1及び第2の樹脂粒子が上述した比率の範囲で含まれる樹脂材料である。このため、例えば20℃、40℃、及び60℃の各温度における損失係数の値が調整される。すなわち、20℃、40℃、及び60℃の各温度における損失係数のうち、20℃の損失係数が最も低く、60℃の損失係数が最も高い場合、上述した樹脂粒子の含有によって、60℃の損失係数の低下を極力抑制しつつ、20℃の損失係数を高めることが可能である。
【0025】
減衰性塗料は、振動エネルギーを減衰する制振塗料、衝撃エネルギーを減衰する衝撃吸収塗料等として利用することができる。制振塗料の適用分野としては、例えば自動車、建造物、家電機器、産業機械等が挙げられる。衝撃吸収塗料の適用分野としては、例えば靴、グローブ、各種防具、グリップ、ヘッドギア等のスポーツ用品、ギプス、マット、サポーター等の医療用品、壁材、床材、フェンス等の建材、各種緩衝材、各種内装材等が挙げられる。
【0026】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 減衰性塗料に含有される水系樹脂分散液には、樹脂粒子として、20〜30℃の範囲のガラス転移点を有する第1の樹脂粒子と、45〜55℃の範囲のガラス転移点を有する第2の樹脂粒子とが含有されている。こうした第2の樹脂粒子は、第1の樹脂粒子100質量部に対して300〜600質量部の範囲で含有される。このため、上述した減衰性付与成分によって高められた減衰性能は、所定の温度範囲において調整される。従って、減衰性付与成分によって高められた減衰性能を、所定の温度範囲においてバランスよく発揮させることが容易となる。
【0027】
(2) 第1及び第2の樹脂粒子を構成する高分子材料は、アクリル系樹脂であることが好ましい。このように構成した場合、塗膜中において高分子材料の相溶性が良好であるため、塗膜の減衰性能が上述した減衰性付与成分によって高まり易くなる。また、高分子材料の相溶性が高まることで、形状安定性に優れる塗膜を形成することができる。
【0028】
(3) 減衰性付与成分の含有量は、第1及び第2の樹脂粒子並びに減衰性付与成分の合計量に対して1〜20質量%であることが好ましい。このように構成した場合、減衰性能が十分に発揮され易くなる。また、樹脂粒子から形成される塗膜の強度が確保され易い。このため、塗膜全体について外力による変形を抑制することができる結果、塗膜の減衰性能が長期にわたって発揮され易くなる。また、塗膜の圧縮変形を抑制することができる結果、塗膜の形成時における厚さが維持され易い。このため、塗膜の形成時の厚さに応じた減衰性能が発揮され易くなる。
【0029】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記第2の樹脂粒子は、前記第1の樹脂粒子100質量部に対して320〜540質量部の範囲で含有される減衰性塗料。
【0030】
・ 前記減衰性付与成分は、ベンゾチアジル系化合物である減衰性塗料。このように構成した場合、塗膜の形成された物品であって、20℃付近から60℃付近までの温度範囲で主に使用される物品において、減衰性能をバランスよく発揮させることが可能となる。そうした温度範囲であれば、車両用、建造物等の用途に最適である。
【実施例】
【0031】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜4)
水系樹脂分散液に対して、減衰性付与成分等を所定量配合して攪拌機によって混合することにより、表1に示す減衰性塗料を調製した。表1において、水系樹脂分散液(A)は、メタクリル酸メチル/アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体エマルション(不揮発分50.0質量%、水50質量%、ガラス転移点(Tg)30℃)であり、水系樹脂分散液(B)は、アクリル系エマルション(不揮発分55.0質量%、水45.0質量%、ガラス転移点(Tg)50℃)である。また、減衰性付与成分は、N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(CBS)である。
【0032】
なお、表1における減衰性塗料の配合量を示す数値の単位は、質量部であり、各実施例には、充填剤、分散剤、増粘剤、界面活性剤、消泡剤、架橋剤、ゲル化剤及び発泡剤が同量配合されている。
【0033】
(比較例1〜3)
各比較例では、表2に示す配合に変更した以外は各実施例と同様にして減衰性塗料を調製した。なお、表2における減衰性塗料の配合量を示す数値の単位は、質量部であり、各比較例には、充填剤、分散剤、増粘剤、界面活性剤、消泡剤、架橋剤、ゲル化剤及び発泡剤が各実施例と同量配合されている。
【0034】
<減衰性能の評価>
各例の減衰性塗料を鋼板(厚さ0.8mm)に塗布した後、140℃で50分間加熱乾燥することにより塗膜を形成し、これらの塗膜を試験片とした。なお、鋼板に対する塗膜の厚みは、同一となるように塗布量を調整した。各例の試験片について、中央加振法損失係数測定装置(CF5200タイプ、小野測器(株)製)を用いて、20℃、40℃及び60℃における損失係数を測定した。その測定結果を表1及び表2に併記する。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

表1及び表2において、「損失係数の合計値」欄には、20℃、40℃、及び60℃の各温度における損失係数の合計値を示している。また、「損失係数の最大値と最小値との差」欄には、20℃、40℃、及び60℃の各温度における損失係数の値のうち、最大値と最小値との差の絶対値を示している。
【0037】
表1及び表2の結果から明らかなように、各実施例における損失係数の合計値は、各比較例における損失係数の合計値よりも高い値である。更に、各実施例における損失係数の最大値と最小値との差は、各比較例における損失係数の最大値と最小値との差よりも低い値である。よって、各実施例の減衰性塗料は、減衰性付与成分によって高められた減衰性能を所定の温度範囲においてバランスよく発揮される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜を形成する樹脂粒子が水系分散媒に分散した水系樹脂分散液と、
前記塗膜に対して減衰性を付与する減衰性付与成分とを含有する減衰性塗料であって、
前記減衰性付与成分は、ベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、及び正リン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物であり、
前記樹脂粒子として、20〜30℃の範囲のガラス転移点を有する第1の樹脂粒子と、45〜55℃の範囲のガラス転移点を有する第2の樹脂粒子とを含有するとともに、
前記第2の樹脂粒子は、前記第1の樹脂粒子100質量部に対して300〜600質量部の範囲で含有することを特徴とする減衰性塗料。
【請求項2】
前記第1の樹脂粒子及び第2の樹脂粒子を構成する高分子材料がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の減衰性塗料。
【請求項3】
前記減衰性付与成分の含有量が、前記第1の樹脂粒子、第2の樹脂粒子及び前記減衰性付与成分の合計量に対して、1〜20質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の減衰性塗料。

【公開番号】特開2008−248186(P2008−248186A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93859(P2007−93859)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】