減衰移相マスクブランク及びフォトマスク
【課題】 照射波長300nm以下でのリトグラフィーにおいて用いる埋め込み型の減衰移相マスクブランク、及び同マスクブランクのイオンビーム蒸着による作製方法を提供する。
【解決手段】 マスクブランクを基板及び薄膜系から構成し、該薄膜系をMg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属及び化合物の混合物から選択される1または2以上の金属または金属化合物を含む透過制御下位層と、Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物あるいはこれらの混合物を含む移相制御下位層から構成する。
【解決手段】 マスクブランクを基板及び薄膜系から構成し、該薄膜系をMg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属及び化合物の混合物から選択される1または2以上の金属または金属化合物を含む透過制御下位層と、Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物あるいはこれらの混合物を含む移相制御下位層から構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照射波長が300nmあるいはそれ未満のリトグラフィーにおいて用いられる移相マスクブランク、及びかかる移相マスクブランクの作製方法に関する。
【0002】
本出願は、米国特許出願No.10/655,593、欧州特許出願No.04001359.1及びNo.04008566.4を基礎とする優先権主張出願である。上記優先権主張の基礎となる出願はそれら出願の内容を参照に供するため本願に添付されている。
【背景技術】
【0003】
リトグラフィー機器の分解能、コントラスト及び焦点深度を、通常のバイナリマスク技術を用いて達成できる水準以上まで拡げる手段として移相マスクに対する関心が高まっている。
【0004】
数例の移相技術が知られているが、その中でもSolid State Technology、1992年1月号、43頁に掲載されているBurn J.Linによって提唱された(埋め込み型)減衰移相マスクが、作製の容易性とそれに伴って低コストに抑えられる利点から広く受け入れられている。尚、この文献における教示は参照すべきものとしてここに挙げた。
【0005】
移相マスクについては数種の技術的変形が提案されている。第一の変形例では、所望の移相を生ずるためにエッチングによって石英基板中へ結合された僅かに透明な層、例えば極めて薄いクロム層が基板へ設けられる(レビンソン型、硬質型、または交番型移相マスク)。この方法には、両層の蒸着及びエッチング処理に高度な制御技術が要求される。
【0006】
別の変形例では、基板上へ移相特性及び減衰特性をもつ1または2以上の層を処理することによって移相マスクが得られる。1層によって180°の移相と入射光の減衰が与えられる単層の移相マスクが案出されている。尚、単層マスクの他に、二層及び多層の減衰移相マスクブランクについても言及されている。
【0007】
フォトマスクの特徴サイズを小さくする要求が高まるにつれ、マスクブランクの製造及び加工において蒸着層の膜厚の均質性が次第に重要となっている。例えば限定された移相、透過率及び/または反射性等の規定された光学特性をもつ層を蒸着するためには、計算された層厚からの局部的逸脱が回避されなければならない。これは、そのような局部的逸脱が生ずるとマスクブランクの直径全域に亘って光学特性が非均質となるためである。それゆえ、層厚が均質になるように制御することが益々重要になっている。
【0008】
さらに、前述のフォトマスクには実質的に欠陥があってはならない。フォトマスクに欠陥があると、フォトマスク中のピンホール等の欠陥が生じ、これによってIC装置に欠陥がひき起こされる。マスクブランク上への欠陥生成を防止する作業はフォトマスクの外形サイズの縮小化によってさらに難しくなっている。例えば、65nm及び45nmノード(すなわちウェハー上の特徴サイズがそれぞれ65nm及び45nm)の場合、フォトマスクは100nmの特徴サイズをもつ構造物を用いてパターン化されるので、粒径が0.5μm以上の表面欠陥があってはならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、必要な光学特性及び薬品安定性を備えて容易かつ安定して製造可能であり、かつ表面欠陥がなく蒸着層が均質である特徴を併せ持つ、300nm以下の照射波長に対応する新規なマスクブランクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第一の観点として、基板及び薄膜系から構成され、かつほぼ180°の移相及び300nm以下の波長をもつ照射光において少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能な、埋め込み型の減衰移相マスクブランクを作製するための二元(dual)イオンビーム蒸着方法に関し、この方法は基板上へ、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属及び金属化合物の混合物から選択される1または2以上の金属または金属化合物を含む透過制御層と、
Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物、あるいはそれらの混合物を含む移相制御層を蒸着することから構成され、及び
前記薄層系の少なくとも1層は、
(a)一次イオンビームを用いる一グループのガスからのイオンによるSi、Al、Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pbの1または2以上を含む混合物、合金または化合物のうちの1ターゲットのイオンビーム蒸着、及び
(b)一グループのガスを含む補助供給源からの二次イオンビームを用いた前記基板に対するボンバードによって蒸着されることを特徴とする。
【0011】
本発明は、第二の観点として、薄膜系が、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属及び金属化合物の混合物から選択される1または2以上の金属及び/または金属化合物を含む透過制御下位層、及び
Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物、及び/またはこれらの混合物を含む移相制御下位層から構成される、基板及び前記薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクに関し、
前記透過制御下位層及び/または前記移相制御下位層は多くても2%の平均膜厚均質度を有し、
前記マスクブランクは、ほぼ180°の移相及び波長300nm以下の照射光において少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする。
【0012】
本発明は、第三の観点として、薄膜系が、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれら金属及び金属の窒化物の混合物から選択される1または2以上の金属及び/または金属窒化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層、及び
Ge、Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物、またはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層から構成される、基板及び前記薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクに関し、
前記移相マスクは、ほぼ180°の移相及び波長約248nmの照射光において少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能なであることを特徴とする。
【0013】
本発明は、第四の観点として、薄膜系が、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれらの混合物から選択される1または2以上の金属及び/または金属窒化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb及びこれら金属の組合せから選択される金属の金属酸化物を含量として少なくとも90原子%含むコントラスト層、及び
Ge、Si及び/またはAlの酸化物または窒化物、及び/またはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層から構成される、基板及び前記薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクに関し、
前記マスクブランクは、ほぼ180°の移相及び波長300nm以下の照射光において少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明は、第五の観点として、基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクであって、前記薄膜系は、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれらの混合物から選択される1または2以上の金属または金属窒化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層、
Si及び/またはAlを含む移相制御下位層、及び
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、炭化物及び硼化物、及びこれらの混合物から選択される金属及び/または化合物を含む、前記移相制御下位層上へ設けられた厚さが多くても5nmである保護層から構成され、及び
前記マスクブランクは、ほぼ180°の移相及び波長300nm以下の照射光において少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする、前記埋め込み型の減衰移相マスクブランクに関する。
【0015】
本発明は、第六の観点として、基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクであって、前記薄膜系は、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの組合せから選択される金属の酸化物の1または2以上を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層、及び
Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物、またはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層から構成され、
前記移相マスクブランクは、ほぼ180°の移相及び波長300nm以下の照射光において少なくとも20%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする、前記埋め込み型の減衰移相マスクブランクに関する。
【0016】
本発明の上記及び他の観点、目的、特徴及び利点は、添付図面を参照して以下に詳細に述べられた説明及び発明によって明らかとなろう。
【0017】
尚、前記全般的説明及び下記詳細な説明は単に本発明の例示に過ぎず、特許請求の範囲において求められる本願発明の性質及び特徴を理解するための外観あるいは枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
当該技術分野において公知なように、「フォトマスクブランク」あるいは「マスクブランク」は、構造化、パターン化あるいは影像化後のフォトマスクブランクを記述するのに用いられる用語である「フォトマスク」あるいは「マスク」と異なる。本願ではかかる用語上の約定に従うように試みられているものの、当業者にはそのような区別化は本発明の重要な観点ではないことが認識されよう。それゆえ、本願では用語「フォトマスクブランク」あるいは「マスクブランク」は最も広義に用いられ、影像化されたフォトマスクブランク及び未影像化のフォトマスクブランク双方が包含されることを理解されたい。
【0019】
語句「ほぼ180°の移相をもつ」とは、移相マスクブランクが構造体の境界部分において光を相殺し、該境界におけるコントラストを増大させるに十分な入射光の移相を与えることを意味する。好ましくは160〜190°、より好ましくは170〜185°の移相が与えられる。
【0020】
前記マスクブランクの層系において第一層の第二層に対する相対位置を記述するために用いる場合、語句「〜の下へ」及び「〜の上へ」は下記意味を有する。語句「〜の下へ」は、前記第一層が前記第二層よりもマスクブランク基板へより近接して設けられることを意味し、及び語句「〜の上へ」は前記第一層が基板から前記第二層よりもさらに離れて設けられることを意味する。
【0021】
さらに、特に明示的に述べられていない限り、語句「〜の下へ」又は「〜の上へ」は、「〜の直ぐ下へ」、及び「〜の下であるが、少なくともさらに1層が前記2層の間に設けられる」、あるいは「〜の直ぐ上へ」、及び「〜の上であるが少なくともさらに1層が前記2層の間に設けられる」ことも意味している。
【0022】
本発明に従ったマスクブランクは、波長300nm以下の照射光において少なくとも0.001%、好ましくは少なくとも0.5%の透過率を有する。
【0023】
図1aは本発明に従ったイオンビームスパッタリング(IBS)またはイオンビーム蒸着(IBD)によってフォトマスクブランクを製造するための蒸着装置10の例示的構成を概略的に示した図である。前記装置10にはポンプ装置を用いて抜気可能な真空室12が含まれている。
【0024】
蒸着粒子源あるいはより具体的にはイオン蒸着源20によって第一粒子あるいはイオンビーム22が生成される。前記蒸着イオン源20は高周波(HF)イオン源であるが、他の型式のイオン源を用いることも可能である。蒸着イオン源20の入口26からスパッタガス24が取り込まれ、このガスは前記蒸着イオン源20内部で誘導結合された電磁界によって加速された電子と原子衝突を起こしてイオン化される。好ましくは湾曲状の3本の格子イオン抽出集合体28を用いて前記第一イオンビーム22中に含まれる一次イオンが加速され、それら一次イオンは該集合体によってターゲット40へ向けて集束される。
【0025】
前記一次イオンは蒸着イオン源20から抽出されてターゲットあいはスパッタターゲット40へ当たることにより、原子のカスケード衝突が起こり、ターゲット原子が追い出される。このようにターゲットをスパッタリングあるいは蒸発させる処理はスパッタ処理と呼ばれている。スパッタターゲット40としては、蒸着対象となる層によるが、例えば後述のタンタル、チタン、珪素、クロム、または他の金属、あるいは化合物がある。前記蒸着装置には、真空処理を中断させることなくスパッタ処理を別のターゲットへ変更できるように、複数の異なるスパッタターゲットを備えることが可能である。前記スパッタ処理及び前記層の蒸着は好ましくは適する真空条件下で実施される。
【0026】
一次イオン質量がターゲット原子質量と同等である場合、ターゲット原子への運動量移動が最大となる。希ガスは取扱易いため、スパッタガス24としてアルゴンあるいはキセノンが用いられる。スパッタリングにおけるキセノンの使用によって蒸着層の厚さ均質度が向上するため、スパッタガスとして好ましくはキセノンが用いられる。
【0027】
スパッタされたイオン42の少なくとも一部がターゲット40から基板50へ向かって出てくる。これらスパッタされたイオン42は従来の蒸着法よりずっと高エネルギーを伴って基板へぶつかり、基板50上に高度に安定かつ緻密な層あるいは膜が蒸着あるいは成長形成される。
【0028】
特に、スパッタされる原子、例えば金属原子の平均エネルギーは前記第一イオンビーム22のエネルギー及び/または入射角によって調節あるいは制御される。前記第一イオンビーム22のターゲット垂線44に対する入射角は該ターゲット40を旋回することによって調節される。
【0029】
基板50は3軸回転装置中に回転可能に取り付けられている。スパッタされるイオンの基板50の垂線54に対する入射角αは第一軸を中心として基板50を旋回させることによって調節される。前記入射角を一様に調節することにより、内膜構造及び機械的パラメータ、特に膜応力を制御し、これによりスパッタリングを向上させることができる。
さらに、基板50を回転の第二軸を表す前記垂線54に対して垂直に回転させて蒸着均質度をさらに向上させることが可能である。
前記基板はさらに、該基板をビームの外へ移動させて例えば蒸着直前の基板50のクリーニングを可能とすることができるように第三軸を中心に回転あるいは旋回可能である。
【0030】
さらに、前記装置10には補助粒子源あるいは補助イオン源60が含まれている。この補助粒子/イオン源の操作原理は蒸着源20のそれと同様である。例えば基板50及び/または基板50上へ蒸着された膜の平滑化、状態調節、ドープ化及び/またはその他処理のため、第二粒子またはイオンビーム62が基板50へと向けられる。さらに、活性及び/または不活性ガス64をガス注入口66を介して導入することも可能である。
前記第二イオンビーム62は好ましくは真っ直ぐな3本の格子抽出系68によって加速される。
【0031】
図1bは前記補助蒸着源の概略図を示す。前記蒸着源と同様に、この補助蒸着源には3本の格子、すなわち所謂アクセル格子68a、所謂デセル格子68b及び所謂グラウンド68cが含まれている。アクセル格子68aとデセル格子68b間においてイオンは加速され、それら格子のグラウンド68cへの通路の第二部分においてイオンは減速される。これにより、前記イオンビームの発散を左右することが可能となる。
好ましくは、補助蒸着源60を用いて酸素及び窒素等の活性ガスが前記系へ導入される。
【0032】
前記第二イオンビーム62は実質的に基板50全体を覆うので基板面積全体に亘って均質なイオン分布あるいは処理が得られる。図1から分かるように、基板50は第二イオンビーム62の軸65に対して角度bだけ傾いている。
【0033】
公知技術においては、前記第二イオンビーム62は特に、
−酸素、窒素、炭素及び/または他のイオンを用いたフィルムのドープ、
−例えば酸素プラズマを用いた蒸着前の基板のクリーニング、及び
−膜の平滑化による膜のインタフェース品質の改善に使用されている。
【0034】
しかしながら、本発明によれば、前記第二あるいは二次イオンビームを用いて蒸着層の厚さの均質度を向上するために用いられる。特に、Si、Al、Mg及びGe等の軽金属をスパッタリングする場合、あるいは前記補助蒸着源を用いてスパッタリングされた金属層をO及び/またはN等の元素でドープして前記金属の酸化物、窒化物あるいはオキシ窒化物を生成する場合、通常の手段を用いて層厚が極めて均質な層をスパッタリングしてターゲット角度を変え、あるいはスパッタガスを変えて均質性を改善することは困難であり、また不可能でもあることがわかっている。一般的に、スパッタリングされた金属のより多くの原子はマスクブランクの中央側へ蒸着され、マスクブランクの側面あるいは側部へ蒸着される原子はより少ないため、前記中央部分の蒸着層の厚さはマスクブランクの側部よりも厚くなる。しかしながら、補助蒸着源のイオンビームを調節してかかる影響を補償できることを見出した。補助蒸着源のイオンビームを用いて所定の方法でスパッタリングされた層をエッチングすること、すなわちマスクブランクの側部よりも強固であるマスクブランクの中央部分をその層が最終的にマスクブランクの全面に亘って極めて均質な層厚となる程度までエッチングすることが可能である。
【0035】
この結果を得るためには、蒸着に用いられる第一あるいは一次イオンビームを発生させるパラメータ及び前記補助蒸着源の第二あるいは二次イオンビームを発生させるパラメータを変更することが必要である。前記変更によってイオンビームの配置の統計的分布、すなわち幾何学的形状及びイオンビームのエネルギーに影響が及び補償効果が導き出される。
【0036】
前記一次及び二次イオンビームを調節するためには、数個に及ぶパラメータの調整が必要とされる。
まず第一に、前記補償効果にとって、エッチング速度に対する蒸着速度が重要である。蒸着源のイオンビームによる蒸着速度は主として蒸着源IBのイオンの流れによって決まり、補助蒸着源のイオンビームを用いたエッチング速度は主として補助蒸着源IAのイオンの流れによって決まる。
さらに、イオンビームの形状、すなわちスパッタリングされたイオンの統計的分布は下記パラメータによって決まる。
−一次イオンの質量、
−一次イオンビームα及び二次イオンビームβの基板に対する入射角、
−蒸着源及び補助蒸着源のアクセル格子へ印加される電圧及び電流、
−蒸着源及び補助蒸着源のデセル格子へ印加される電圧。
【0037】
蒸着源からの一次イオンのターゲットに対するボンバードによって発生される原子ビームは、さらに密度、純度及びターゲット形状によっても影響を受ける。反復スパッタリング処理中に、スパッタされた原子の侵食によってターゲットの形状変化がひき起こされる。図15a及び図15bに示すように、Si層及びTa層の厚さは、反復スパッタリング試験全体に亘って測定した場合、出発値から少し変動している。この変動はターゲットの侵食に起因するものである。従って、好ましくはある程度のスパッタリング試験を行った後、例えばマスクブランクを20個スパッタした後で較正が繰り返し行われる。しかしながら、この回数は蒸着された層の厚さによって左右される。
【0038】
蒸着源のイオンビーム及び補助蒸着源のイオンビームを調節するためのパラメータの決定に際しては、好ましくはDOE(Design of Experiment)法が用いられる。このDOE法及びそれを実行するためのソフトウェアは市販されており、現状において公知である。かかるパラメータとDOEを実行するために用いられる該パラメータの範囲の組合せは適切に選択されなければならない。
【0039】
本発明の好ましい実施態様においては、DOEを行うに際しては好ましくは下記パラメータ及び範囲が用いられる。
−好ましくは100〜500mA、より好ましくは200〜300mAの蒸着源(IBD)電流、
−好ましくは50〜300mA、より好ましくは80〜200mAの補助蒸着源(IBD)電流、
−好ましくは500〜1500V、より好ましくは1000〜1500Vの蒸着源(UBD)電圧、
−好ましくは50〜150Vの補助蒸着源(UBA)電圧、
−好ましくは100〜300Vの蒸着源(USD)のサプレッサ(デセル格子、発散)電圧、
−好ましくは100〜500V、より好ましくは150〜300Vの補助蒸着源(USA)のサプレッサ電圧。
好ましくは前記DOEには、好ましくは35〜50°の固定ターゲット角及び45〜60°の固定取付け角が用いられる。
【0040】
前記蒸着層のエッチングは蒸着処理と同時に、あるいは蒸着層の蒸着終了後に実施可能である。エッチングが蒸着終了後に実施される場合、エッチングは好ましくは補助蒸着源中において希ガス等の活性ガス中で実施される。
【0041】
エッチングが蒸着処理中に実施され、及び金属または半金属(semimetal)の酸化物または窒化物がスパッタされる場合は、好ましくは元素金属または半金属のターゲットが用いられ、また補助蒸着源の注入口を介して酸素及び/または窒素が導入される。
【0042】
元素金属または半金属、またはそれらの混合物がスパッタされる場合、そのような金属または半金属のターゲット及び補助蒸着源中にはアルゴンまたはキセノン等の希ガスが用いられる。
【0043】
スパッタリングターゲットとしては、元素を含むターゲット、あるいは化合物を含むターゲットの使用が可能である。蒸着層中に金属または半金属の酸化物、窒化物またはオキシ窒化物が含まれる場合は、かかる金属または半金属の酸化物、窒化物またはオキシ窒化物をターゲット材として用いることが可能である。しかしながら、金属あるいは半金属から成るターゲットを用いること、また酸素及び/または窒素を活性スパッタガスとして導入することも可能である。SiO2の蒸着の場合、好ましくはSiから成るターゲットが用いられ、また活性スパッタガスとして酸素が導入される。蒸着層に窒素が含まれる場合は、好ましくは活性スパッタガスとして窒素が導入される。
【0044】
スパッタガスとしては、好ましくはアルゴンまたはキセノン等の不活性ガスが用いられる。これら不活性ガスは、酸素、窒素、一酸化窒素、二酸化窒素及び酸化二窒素あるいはそれらの混合物等の活性ガスと混合されてもよい。活性ガスはスパッタされたイオンと反応して蒸着層の一部になり得るガスである。本発明の好ましい実施態様では、移相制御層のスパッタリングにおいて不活性ガスと酸素の混合ガスが付加的スパッタリングガスとして用いられる。
【0045】
二層あるいは多層のマスクブランクを製造する場合、好ましくは蒸着装置の単一室内において超高真空状態を中断することなくすべての層が蒸着される。二層あるいは多層の移相マスクブランクを製造する場合には、特に好ましくは真空状態を中断させることなく移相層の層が蒸着される。これにより、マスクブランクからの表面欠陥の汚染除去を行うことが回避され、実質的に欠陥のないマスクブランクを得ることが可能となる。かかるスパッタリング技術は、数個のターゲットからのスパッタリングを可能ならしめるスパッタ器具を用いることにより実現可能である。欠陥密度が低く及び/または層厚に関して高度に均質な層をもつ高品質な移相マスクの製造が達成される。
さらに、基板と該基板上へ設けられた薄膜系から成る、波長300nm未満のリトグラフィー用の埋め込み型減衰マスクブランクが提供される。
【0046】
本発明に従ったマスクブランクに用いる基板材は、好ましくは高純度の溶融珪素、フッ素ドープされた溶融珪素(F−SiO2)、フッ化カルシウム等から作製される。
【0047】
前記移相系の他に、前記薄膜系には1または2以上の反射防止層、バリヤまたは保護層、検査制御またはコントラスト層、及び/または吸収層または吸収体層が含まれていてもよい。かかる吸収層として、例えばクロム層またはTaN層を設けることが可能である。「クロム」吸収体層にはクロムに加えてO及び/またはNが含まれていてもよい。
【0048】
マスクブランクの薄膜系から粒径0.5μm以上の欠陥を無くすることが可能である。前記薄膜系に生ずる粒径0.3〜0.5μmの範囲内の欠陥は、好ましくは多くても50まで、より好ましくは多くても20である。フォトマスク上の特徴サイズが小さくなると共に、サイズ500nm以上の欠陥は問題となるため、かかる欠陥が存在してはならない。粒径が0.3〜0.5μmの範囲内である欠陥に関しては、多くの用途において許容可能なマスクブランク当りの限界欠陥数は50以下である。
【0049】
さらに、本発明の特定の実施態様においては、マスクブランクには多くても5オングストロームまでの表面粗さ(RMS)があってもよい。本発明に従った補助蒸着源を用いることにより、特にSiO2層の表面粗さが改善される。図12a〜12cは、補助蒸着源を使用していない比較例(図12a及び12b)及び本発明実施例(図12c)に従ったSiO2層のAFM測定された表面粗さを示した図である。
【0050】
本発明の第二の観点に従った前記薄膜系の前記層及び下位層の1層、数層、あるいは全層の膜厚の平均均質度は多くても2%、好ましくは多くても1%、より好ましくは多くても0.5%である。高度に均質な膜厚をもつ移相系を設けることによりマスクブランクのすべての位置における移相及び透過率が極めて均質である移相マスクブランクが得られる。特に、前記移相マスクブランクの移相の偏差を移相平均値から多くても±2°、より好ましくは多くても±1.5°とすることができ、また前記移相マスクブランクの透過率の偏差を平均透過率から多くても±0.5%とすることが可能である。
【0051】
前記移相マスクブランクには二層あるいは多層の移相系から成る移相系が含まれる。なお、ここでの語句「多層の」とは、少なくとも3層以上のあらゆる個数の層が含まれる。前記移相系の各層には一般的に種々機能あるいは機能性をもたせることができる。
【0052】
本発明に従った移相マスクブランクの少なくとも二層移相系には透過制御下位層及び移相制御下位層が含まれる。
【0053】
移相機能と減衰機能を少なくとも別個の2層へ実質的に分離することは、照射波長300nm以下に対応した減衰移相マスクブランクにとって特に有利である。かかる減衰移相マスクブランクにおいては、前記下位層の組成を変えることを必要とせず単に前記透過制御下位層の厚さを変えることで容易にその透過性を調節することが可能である。前記マスクブランクの移相は、マスクブランクの透過性を実質的に変えることなく移相下位層の厚さを変えることによって容易に調節可能である。マスクブランクの移相の調節は、マスクブランクをエッチング処理へ適合させるためにしばしば必要とされる。このようなエッチング処理においては、基板はしばしば所定の深さまでエッチングされて移相系へさらに付加的移相が加えられる。マスクブランクをこのエッチングに適合させるために、移相を正確に180°ではなく、エッチング処理によって。約175°〜180°の範囲内の一定数値へ設定することが必要とされる。
従って、前記移相マスクブランクは基板及び移相系から構成され、該移相系はマスクブランクの透過性を実質的に低下させない移相制御下位層及び/またはマスクブランクの移相を実質的に変化させない透過制御下位層から構成される。
【0054】
前記語句「マスクブランクの移相を実質的に変化させない」とは、マスクブランクの移相が移相全体のうちの多くても15°、好ましくは多くても約10°、最も好ましくは多くても約5°までであることを意味する。
本発明において、前記語句「マスクブランクの透過性を実質的に低下させることなく」とは、移相制御下位層が低下させる透過率が多くても約10%、好ましくは多くても約5%までであることを意味する。
【0055】
図2aに示すように、本発明の一実施態様に従ったマスクブランクには基板1が含まれ、該基板上には移相系2が設けられている。前記移相系2は透過制御下位層3と移相制御下位層4から構成されている。好ましくは、同じく図2aに示されているように、前記透過制御下位層3は基板1上の移相層の第一下位層として設けられ、また前記移相制御下位層4は移相層の第二下位層として前記透過制御下位層上へ設けられている。しかしながら、他の実施態様において、前記移相制御下位層を基板上の移相層の第一下位層として設け、前記透過制御下位層を移相層の第二下位層として前記移相制御下位層上へ設けることも可能である。前記移相系上には、一般的に吸収層6が設けられる。図2aに示した移相マスクブランクを図2cに示した影像化、パターン化、あるいは構造化されたフォトマスクへ作り変える際には、好ましくは前記移相系の2段階エッチング処理が用いられる。図2dに示すように、まず塩素及び酸素を混合して用いるドライエッチング処理等の第一エッチング処理によって前記吸収層6がエッチングされる。次いで、前記移相系2の第一下位層、好ましくは移相制御下位層が例えばフッ素を基剤とするドライエッチング剤等の第二エッチング剤を用いてパターン化される。最終工程において、前記移相系2の第二下位層3、好ましくは透過制御下位層が、好ましくは例えば塩素ドライエッチング剤等のさらに別のエッチング剤を用いてパターン化される。前記第一エッチング剤は前記最終のエッチング剤と同一剤でもあるいは異なる剤でもよい。
【0056】
前記移相制御下位層には、Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物、またはそれらの混合物から選択される材料が含まれる。本発明のいくつかの実施態様に従って、前記移相制御下位層には、Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物、またはそれらの混合物から選択される材料が含量として少なくとも90原子%、好ましくは少なくとも95原子%含まれる。
【0057】
本発明の一実施態様では、前記移相層は本質的に照射光波長において約0.3以下、より好ましくは0.05以下の消衰係数をもつ1または2以上の材料あるいはそれら材料の混合物から成る。
【0058】
前記移相制御下位層には、Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Sn、Pb及びこれらの混合物から選択される金属が少量含まれていてもよい。しかしながら、これら金属が含まれると前記移相制御下位層の透過率が低下する傾向があるため、これら金属の混入は好ましくは多くても5原子%だけに限られる。いくつかの実施態様では、前記移相制御下位層には上記金属は殆ど含まれない。さらに、上記金属を特に5原子%以上含む移相制御下位層は欠陥程度の高いマスクブランクを生じやすい。従って、かかる金属の特に5原子%以上の混入は欠陥程度の低い移相マスクブランク薄膜系を得る観点において好ましくない。
【0059】
本発明の一実施態様では、前記移相制御下位層にはSi、Al及び/またはGeの酸化物及び/またはオキシ窒化物、及び/またはこれらの混合物が含量として少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%含まれる。さらに別の実施態様では、窒素が含量として多くても約10原子%、より好ましくは多くても約5原子%、移相制御下位層へ加えられる。
【0060】
本発明の一実施態様では、前記移相制御層は殆どSiO2から成っている。
【0061】
前記移相制御下位層は300nm以下の範囲内の照射光波長において約180°の移相、あるいはいずれか他の必要な移相を与えるように適合した厚さをもつ。
【0062】
所定の移相を得るために必要な移相制御下位層の厚さは、移相下位層が形成される材料の屈折率n及び消衰係数kに依存する。一般的には、屈折率の高い材料を用いることにより、屈折率の低い材料よりも大きな移相下位層蒸着厚当りの移相が得られる。
【0063】
前記透過制御下位層は、Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属と化合物の混合物から選択される1または2以上の金属または金属化合物が含まれる。
【0064】
本発明の一実施態様に従って、前記透過制御下位層には比較的不透明度の高い材料が少なくとも1種含まれ、またMg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれら金属または窒化物の2以上の混合物から選択される材料が含まれる。本発明の特定の実施態様では、前記透過制御下位層にはTa、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Cr、Mo及びWから選択される金属が含まれる。好ましくは、前記透過制御下位層には前述した金属及び化合物が含量として少なくとも90原子%、より好ましくは少なくとも95原子%含まれる。さらに別の実施態様では、前記透過制御下位層は、Nb、Ta、Ti、Cr、Mo、W、V、Nb、Zn、Zr、Hf、Si、Ge、Sn、Pb、Mn、Fe、Co、Ni、La、Mg、及びこれら金属あるいはこれら金属の窒化物の2以上の混合物から選択される少なくとも1種の材料から成る。これに関し前記1種の材料とは、例えばTi、TaまたはHfの層等の元素金属1種、あるいはTaN、TiNまたはHfN等の金属窒化物1種を意味する。
【0065】
前記透過制御下位層は前記移相系の透過率を所望の数値へ適合させるに十分な厚さをもち、その厚さは透過制御下位層を成す材料に殆ど依存している。この厚さは下記式から算出可能である。
dTc=−1/αλ×In(T/100)
上記式中、Tは%で表した所望の透過率、αλは照射波長λにおける吸収係数、そしてdTcは透過制御下位層の計算された厚さを表す。前記吸収係数αには下記式に従った消衰係数kとの相関関係がある。
α=4πkλ/λ
【0066】
本発明の一実施態様に従って、前記透過制御層が基板上へ直接設けられ、該層によってエッチング停止機能、すなわち石英基板に対する高度なエッチング選択性が与えられる。そのため、移相マスクの石英基板中への過度のエッチングを容易に防止することが可能である。本発明のこの実施態様に従って、前記透過制御下位層には好ましくは少なくとも約8nm、最も好ましくは少なくとも約10nmの厚さが付与される。この厚さが約8nm未満であると、前記透過制御下位層のエッチング停止機能は不十分となる。
【0067】
本発明のこの実施態様においては、好ましくは前記透過制御下位層へ移相制御下位層とは異なるエッチング選択性が付与される。移相制御層がフッ素含有成分を用いてエッチングされる場合、透過制御層は、好ましくはCl2、Cl2+O2、CCl4、CH2Cl2等の塩素ベースのガスを用いたドライエッチング法、あるいは酸、アルカリ等を用いたウェットエッチング法によってエッチングされる。但し、好ましくはドライエッチング法が用いられる。フッ素含有成分を用いるエッチング法としては、好ましくはCHF3、CF4、SF6、C2F6及びこれらの混合物等のフッ素系ガスを用いるリアクティブイオンエッチング(RIE)が用いられる。
【0068】
本発明の第4の観点に従って、「検査制御層」あるいは「コントラスト層」を含む移相マスクブランクが提供される。この観点における一実施態様を図3a及び3cに概略的に示すが、この実施態様ではコントラスト層7が透過制御下位層3上に位置している。
【0069】
マスクブランクに対し照明波長より長い波長において検査処理を行う。例えば、193nm対応リトグラフィー用のマスクブランクは通常例えば257nm及び356nmの検査波長において検査される。このような波長での検査を可能とするためには、193nm対応リトグラフィー用のマスクブランクには照射波長における必要な透過性及び移相が備えられているだけでなく、該マスクブランクは検査波長における一定の最大透過率及び反射率にも適合しなければならない。
【0070】
本発明に従って、「検査制御」または「コントラスト」層によって特に例えば257nm及び/または356nm等の検査波長におけるコントラストが向上される。前記層により、反射率の向上、すなわち検査波長及び/または照射波長において移相マスクブランクへ反射防止特性が付与され、あるいは所定範囲内の検査波長における透過性が補助的に制御される。
【0071】
かかるコントラスト層は通常、照射波長において移相系の透過率及び/または移相を変化させるため、照射波長において要求される移相及び透過率を確保するためには移相制御下位層の厚さと透過制御下位層の厚さが適合しなければならない。すなわち、移相制御下位層の厚さを、前記コントラスト層によって移相が増加する量だけ減じなければならず、及び/または透過制御下位層の厚さを前記コントラスト層が透過率を増加させる量だけ減じなければならない。
【0072】
本発明の一実施態様に従って、基板上へ透過制御下位層が設けられ、該透過制御下位層上へ移相制御下位層が設けられ、また該移相制御下位層上へコントラスト層が設けられる。本発明のさらに別の実施態様では、基板上へ透過制御下位層が設けられ、該透過制御下位層上へコントラスト層が設けられ、そして該コントラスト層上へ移相制御下位層が設けられる。
【0073】
コントラスト層には好ましくは、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの組合せから選択される金属の酸化物を含量として90原子%含ませることが可能である。本発明の特定の実施態様においては、透過制御層にはTa、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Cr、Mo及びWから選択される金属が含まれる。
【0074】
ここで述べている本発明の第四の観点に従って、透過制御下位層には好ましくはY、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物及び混合物から選択される1または2以上の金属及び/または金属窒化物が含量として少なくとも90原子%含まれ、また移相制御下位層には好ましくはGe、Si及び/またはAlの酸化物または窒化物及び/またはこれらの混合物が含量として少なくとも90原子%含まれる。
【0075】
本発明の特定の実施態様では、透過制御下位層には上記金属、例えばTaが含量として少なくとも90原子%、好ましくは少なくとも95原子%含まれる。この場合、コントラスト層には、好ましくは前記透過制御下位層に用いられた金属と同じ金属の酸化物、例えばTa2O5が含量として少なくとも90原子%、より好ましくは少なくとも95原子%含まれる。しかしながら、Cr2O3等の他の金属酸化物を含ませることも可能である。
【0076】
本発明の一実施態様では、移相制御下位層にはSiO2が含量として少なくとも95原子%含まれ、及び/または透過制御下位層にはTa及び/またはTa窒化物が含量として少なくとも95原子%含まれ、及び/またはコントラスト層にはTa2O5が含量として少なくとも95原子%含まれる。
【0077】
本発明のさらに別の実施態様では、コントラスト層には透過制御下位層及び/または移相制御下位層と同じエッチング選択性が付与される。従って、エッチング工程数は好ましくはコントラスト層の挿入によって増加されない。
【0078】
本発明のいくつかの実施態様において、本発明によるマスクブランクは、1または2以上の検査波長において多くても50%の透過率をもち、及び/または1または2以上の検査波長において多くても20%の反射率をもつ。
【0079】
コントラスト層は好ましくは多くても30nm、より好ましくは多くても20nmの厚さを有する。
【0080】
本発明の第五の観点に従って、マスクブランクには「バリヤ層」、あるいは厚さが多くても5nmである「保護層」8が含まれる。この観点に従った一実施態様が図3b及び3cに示されており、この図において保護層8は移相制御下位層上に位置している。
【0081】
前記移相制御下位層にSi及び/またはAlが含まれる場合、該移相制御下位層はアルカリ、酸、あるいは他の攻撃的クリーニング剤へ晒された時に分解され易い。しかしながら、前記移相制御下位層の厚さがクリーニング処理によって減じられる場合は、移相マスクブランクの移相性が変化する可能性があるため、そのようなクリーニング処理は好ましくない。ここでの第五の観点に従って、透過制御下位層は通常基板上へ設けられ、移相制御下位層は該透過制御下位層上へ設けられる。前記保護層によってウェットエッチング処理中に、Si及び/またはAl含有層もさらに保護される。
さらに、前記保護層は、193nm対応リトグラフィー用のフォトマスクに生ずる、フォトマスクのクリーニング中に結晶の生成によって起こると考えられる所謂「ヘーズ(haze)」効果の防止にも役立つ。また、Si及び/またはAl含有層へ保護層を蒸着させることにより、該Si及び/またはAl含有層上への結晶の沈積を防止することも可能である。
【0082】
本発明のいくつの実施態様において、前記保護層の厚さは多くても4nm、好ましくは多くても2nmである。概して、保護層の厚さが少なくとも0.2nmあればアルカリ、酸、及びその他の攻撃的クリーニング剤に対する保護機能を層系へ付与するためには十分であるが、本発明のいくつかの実施態様においては、アルカリクリーニング剤の作用性によっては、前記保護層の厚さは少なくとも0.5nm、さらには0.7nmまで付与されている。
【0083】
本発明の別の実施態様によれば、前記保護層を付与することにより作製されるマスクブランク及びフォトマスクの光学特性に対して影響が起こることはない。ここで光学特性とは例えばマスクブランクの移相性、透過性、及び反射特性のことである。
【0084】
前記保護層へ、該保護層の直ぐ上の層のエッチング選択性と異なるエッチング選択性を持たせてもよい。この場合、保護層は前記Si及び/またはAl含有層上に残し、必要なエッチング工程数を増やさないため、該保護層には前記Si及び/またはAl含有層と同一のエッチング選択性を付与すべきである。前記保護層にはさらに、該保護層の直ぐ上の層と同じエッチング選択性をもたせることも可能である。
【0085】
保護層をSi及び/またはAlを含む移相制御下位層及び/またはSi及び/またはAlを含むさらに別の層上へ設けることも可能であり、また保護層へMg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、炭化物硼化物、及びこれらの混合物から選択される金属及び/または化合物を含ませることも可能である。本発明の特定の実施態様では、透過制御層にはTa、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Cr、Mo及びWから選択される金属が含まれる。前記保護層には、好ましくはMg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb及びこれらの組合せから選択される金属の酸化物あるいは窒化物が含量として少なくとも90原子%含まれる。
【0086】
この第五の観点に従って、透過制御下位層にはY、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物及び混合物から選択される金属または金属窒化物を含量として少なくとも90原子%含ませることができる。また、移相制御下位層にはSiの酸化物及び/または窒化物を含量として少なくとも90原子%含ませることができる。
【0087】
本発明の第六の観点は、波長300nm以下の照射光において少なくとも20%の光透過率を与える高透過性マスクブランクに関する。この第六の観点におけるマスクブランクのいくつかの実施態様において、該マスクブランクの透過率は少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも5である。しかしながら、透過率が20%であるマスクブランクが作製される場合であっても、移相系の厚さが減じられていることから薄膜系全体の厚さを減じることができる点において、この第六の観点に従ったマスクブランクには利点がある。
【0088】
この第六の観点に従って、透過制御下位層には、好ましくはY、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれら金属の組合せから選択される金属の酸化物が含量として少なくとも90原子%含まれる。
【0089】
またこの第六の観点に従って、移相制御下位層には、Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物、あるいはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含ませることが可能である。
【0090】
本発明のこの第六の観点における一実施態様に従って、基板上へ下記層が交互に設けられて成る反射性の向上された高透過性マスクブランクが提供される。
−Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれら金属の組合せから選択される金属の酸化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層、
−Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層、
−Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれら金属の組合せから選択される金属の酸化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層、
−Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層。
【0091】
本発明の異なる観点を相互に適切に組み合わせること、例えば1または数層の保護層及び/またはコントラスト層をマスクブランク中に設けて別の観点としてのマスクブランクを提供することも可能である。さらに、前記第六の観点における一実施態様として概説したように、本発明は1層だけの移相制御下位層及び/または1層だけの透過制御下位層をもつ移相系には限定されない。2以上の透過制御下位層及び/または移相制御下位層が本発明に従ったマスクブランク中に存在してもよい。かかる2以上の透過制御下位層及び/または移相制御下位層は同一材料から成っていてもよく、あるいは異なる材料から成っていてもよい。さらに、前記両層は均質な材料で作製してもよく、あるいはこれら層の組成を基板からの間隔に基づいて徐々に変えてもよい。
【0092】
本発明はまた、上述したようにマスクブランクを構造化することによって作製された構造化フォトマスク及びかかるフォトマスクの作製方法にも関する。
【試験例】
【0093】
上記説明及び下記実施例において、温度はすべて摂氏に変換しないまま記載されている。上記及び以下において引用されるすべての出願、特許及び刊行物の開示内容はすべて参考とすべきものである。
【0094】
以下において、本発明の好ましい実施態様に従って設計及び作製されたマスクブランクについて説明する。
【0095】
例示的膜設計及び透過率調節
Woollam VASE型分光楕円偏光測定器を用いた楕円偏光測定により157nm及び193nmにおけるn値及びk値を得た。典型例として、分光走査は55及び65度において実施した。方法適合性を向上させるため透過率データを取得した。
【0096】
図4はTa及びSiO2の分散曲線を示した図である。図4の縦軸は左から右へTa及びSiO2の測定された単層分散曲線を示す。図の上列は屈折率nを示し、下列は消衰係数kを示している。
【0097】
これら材料及びSiO2基板のリトグラフィー波長157、193、及び248nmにおける分散値を表1に列記する。
【0098】
【表1】
【0099】
上記表1の分散データを用いて下記計算を行った。すべてのシミュレーションは、数計算用のMatlabを用いる薄膜用に広く用いられているA.Macleod、「薄膜光学フィルター」、第2版、1986年、Bristol,Adam Hilgerに記載の行列アルゴリズムに基づいている。これらのシミュレーションの結果を図5〜7に示す。
【0100】
図5aに減衰された157nm(6%透過率)対応型及び高透過性である193nm(20%透過率)対応型の移相マスクブランクについての設計を示し、図5bに減衰(6%透過率)型及び高透過248nm(20%透過率)対応型移相マスクブランクについての設計を示す。図5a中、実線は波長157nm対応移相マスクブランクについての移相下位層の透過率と膜厚との相関に相当し、破線は波長193nm対応移相マスクブランクについての移相下位層の膜厚の関数で表した透過率に相当する。図5b中、上側グラフは高透過性型の移相下位層の膜厚の関数で表した透過率に相当し、下側グラフは波長248nm対応減衰移相マスクブランクの透過率に相当する。図5a及び5b中、膜厚ゼロは無被覆の基板に相当する。基板上にはTa層が設けられている。これらグラフは、透過制御下位層として機能するタンタル層の膜厚の増加につれて透過率が指数関数的に減少することを示している。Ta層上にはSiO2層が移相制御下位層として設けられる。図5a及び5bの各グラフにおいて、透過制御下位層の移相制御下位層との界面は細い縦線で示されている。誘電性SiO2層は干渉によって生じた平均透過率値周囲において典型的な振幅を示している。空気との最終界面において所望の透過率値が得られる。このような移相制御下位層は移相マスクブランクの透過率を実質的に変化させないが、生ずる透過率値に対して副次的に寄与する。膜厚ゼロについての透過率値は1であるが、分解能の向上のため切り捨てられる。
【0101】
図6a及び6bには移相が膜厚の関数として示されている。膜厚ゼロは移相ゼロに相当する。図6aにおいて、タンタル層の移相は当初僅かに負であるが、その後僅かに上昇し、界面において再びゼロに近づく。従って、移相マスクブランクの全移相に対する寄与はごく僅かである。図6bにおいて、タンタル層は248nm対応移相マスクブランクへ小さな正の移相をひき起こす。しかしながら、タンタル透過制御層によってひき起こされる移相は二酸化珪素層の大きな位相変異に比較すれば小さい。従って、近似的には誘電層によって、干渉作用が重畳される膜厚の増加に伴う位相角の直線的増大がもたらされる。空気との最終界面において所望角度である180°が得られる。
【0102】
図5及び6は、157nm、193nm、及び248nm対応の移相マスクブランクによって透過率及び位相角の制御が広範に独立して可能となることを示している。異なる波長及び透過率要求に対する適合は個々の下位層の厚さを別々に調節することによって可能であろう。
【0103】
図7a〜7eには5つの移相系についての透過率の可調性が示されている。x軸はSiO2膜厚であり、y軸はそれぞれTa及びTa2O5の膜厚である。垂直に近い実線はSiO2層の厚さと180°の移相を起こすTaあるいはTa2O5層のすべての組合せを示している。水平に近いグラフは異なる下位層厚に対応したそれぞれの透過率値を示す。線の振動は干渉作用によって生ずるものである。かかる振動作用によって透過率は相当量変動し得るが、これら作用によって移相制御下位層の透過率が実質的に高められることはあっても該透過率が実質的に低下されることはない。波長300nm以下の照射波長においては殆どの材料の透過率は極めて低いので、透過率をより高める上述した振動のような作用はむしろ利点となる。
【0104】
図7a〜7eにおいて、横方向の振動線は異なる透過率それぞれについてのTa、Ta2O5及びSiO2の可能な膜厚の組合せを示している。前記横方向の線に交差する縦線はそれぞれ180°の移相を生ずるTa、Ta2O5及びSiO2の組合せを示している。前記縦線と前記横方向の線が交差するタンタル層の一定の膜厚及びSiO2層の一定の厚さを表す点において、180°の移相を伴う一定透過率のための移相系が確立される。TaあるいはTa2O5層の最小厚を10nmと仮定すると、157nm系については28%まで(図6a)、193nm系については28%まで(図6b)、また248nm系については30%まで(図6c)透過率を調節することが可能である。Ta2O5を用いる高透過率系(図7d及び7e)においては、透過率は50%まで達成可能である。いずれの場合においても、波長減衰型高透過率移相マスクブランクの作製が可能である。
【0105】
蒸着試験例
(A)蒸着装置
図1に模式的に図示した二元イオンビームスパッタリング装置を用いてすべての層に対して蒸着を行った。すべての蒸着において、特にVeeco Nexus LDDイオンビーム蒸着装置が使用された。
【0106】
(B)蒸着パラメータ
厳密な蒸着パラメータは、ソフトウェアとしてSAS Institute Inc、SAS Campus Drive,Cary,ノースカロライナ27513,USA.IBD作製のJMP、レリーズ5.0.1aを用いたDOEによって決定し、固定パラメータとしてTW及びFWを導入し、また変数としてUBD、USD、IBA、UBA及びUSAを導入した。
【0107】
表2に実施例及び比較例に従って用いられる材料のスパッタリングについての一般的蒸着パラメータを示す。
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
実施例1及び比較例1(157nm対応PSM)
図2において概略的に述べた移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTaから成る透過制御下位層を蒸着し、また該透過制御下位層上へSiO2から成る移相制御下位層を蒸着して作製した。これら蒸着された層の厚さは表5に示されている。また前記移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0112】
【表5】
【0113】
実施例1及び比較例は反復実施した。
【0114】
実施例2(193nm対応PSM)
図2において概略的に説明した移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTaから成る透過制御下位層を蒸着し、また該透過制御下位層上へSiO2から成る移相制御下位層を蒸着して作製した。これら蒸着された層の厚さは表6に示されている。また前記移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0115】
【表6】
【0116】
実施例3(248nm対応PSM、図2)
図2において概略的に説明した移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTaから成る透過制御下位層を蒸着し、また該透過制御下位層上へSiO2から成る移相制御下位層を蒸着して作製した。これら蒸着された層の厚さは表7に示されている。また前記移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0117】
【表7】
【0118】
実施例4(コントラスト層を有する193nm対応PSM)
図3aにおいて概略的に説明した移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTaから成る透過制御下位層を蒸着し、また該透過制御下位層上へTa2O5から成るコントラスト層を蒸着し、さらに該コントラスト層上へSiO2から成る移相制御下位層を蒸着して製造した。これら蒸着された層の厚さは表8に示されている。また前記移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0119】
【表8】
【0120】
図9a及び9bには、コントラスト層を含む例示的マスクブランクの検査性能における向上(実施例4a及び4b)が、かかるコントラスト層をもたないマスクブランク(実施例2a及び2b)との比較において示されている。図9aは193nmにおいて6%の透過率をもつ照射波長193nm対応のマスクブランクについての反射率及び透過率を示し、図9bは193nmにおいて20%の透過率をもつ照射波長193nm対応のマスクブランクについての反射率及び透過率を示す。いずれの場合においても、コントラスト層を含むマスクブランクの反射率及び透過率(実線)は、コントラスト層をもたないマスクブランクのそれら(破線)に比べて向上されている。さらに、193nmにおける反射率もコントラスト層によって向上されている。
【0121】
図18a及び18bは実施例4a及び4bに従ったコントラスト層の厚さの照射波長及び検査波長における反射率に対する影響を示した図である。厚さが10nm未満であるコントラスト層によっても必要な反射率は十分達成される。厚さゼロは、コントラスト層をもたない移相系、すなわち移相制御下位層及び透過制御下位層をもつ移相系に相当する。
【0122】
図17a及び17bは実施例4a(SEM写真)に従ったマスクブランクに対するドライエッチング試験の結果を示した図である。ピッチサイズは500nm(図17a)及び200nm(図17b)である。結果は実線、破線及び一点鎖線で示されている。100nmだけの特徴サイズであっても側壁角度及びエッチング停止能は極めて良好である。前記コントラスト層のエッチングは移相制御下位層の場合と同様にドライエッチング処理、すなわちエッチング剤としてフッ素を用いたドライエッチング処理によって実施した。従って、コントラスト層の追加によるエッチング処理工程の増加はない。
【0123】
実施例5(保護層を有する193nm対応PSM)
図3cにおいて概略的に説明した移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTaから成る透過制御下位層を蒸着し、また該透過制御下位層上へTa2O5から成るコントラスト層を蒸着し、また該コントラスト層上へSiO2から成る移相制御下位層を蒸着し、さらに該移相制御下位層上へTa2O5から成る保護層(厚さ1nm)を蒸着して作製した。これら蒸着された層の厚さは実施例4aのそれら厚さと対応するものである。また前記移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0124】
実施例4aに従ったマスクブランクのSiO2層上へ、前記Cr吸収層の蒸着前に上記略述した蒸着パラメータを用いて1層を蒸着した。次いでこのマスクブランクに対してクロムドライエッチ処理(Cl+O2)を行った。
【0125】
図21a及び21bは、クロムドライエッチチング処理後の実施例4に従ったマスクブランクの光学特性をクロム層蒸着前の実施例4に従ったマスクブランクと比較した図である。前記マスクブランクのすれすれ入射X線反射曲線(GIXR、図21a)及びスペクトル曲線(n&k、図21b)はクロム蒸着前及びCr除去後において同一である。この結果より、クロムドライエッチチング処理によって薄い保護層が除去されていないことが示される。
【0126】
実施例6(157nm及び193nm対応高透過性PSM)
図2において概略的に説明した移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTa2O5から成る透過制御下位層を蒸着し、また該透過制御下位層上へSiO2から成る移相制御下位層を蒸着して作製した。これら蒸着された層の厚さは表9に示されている。また前記移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0127】
【表9】
【0128】
本実施例による移相マスクブランクの透過率は20%であるが、これらマスクブランクの薄膜系がより薄いことから、薄膜系の全厚を実施例1b(移相系の厚さ125nm)及び実施例2b(移相系の厚さ163nm)の場合より減ずることが可能である。
【0129】
実施例7(透過率20%の193nm対応PSM)
図3dにおいて概略的に説明した移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTa2O5から成る第一透過制御下位層(厚さ12nm)を蒸着し、また該第一透過制御下位層上へSiO2から成る第一移相制御下位層(厚さ12nm)を蒸着し、また該第一移相制御下位層上へTa2O5から成る第二透過制御下位層(厚さ22nm)を蒸着し、また該第二透過制御下位層上へSiO2から成る第二移相制御下位層(厚さ92nm)を蒸着して作製した。また前記第二移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0130】
実施例2bの移相系の全厚(163nm)と比較した場合、実施例7に従ったマスクブランクの移相系の全厚(138nm)は実施例6bのマスクブランクよりもさらに減少されている。しかしながら、実施例7に従ったマスクブランクの反射率は照射波長193nmにおいて極めて低く(<4%)、さらに検査波長256nmにおける反射率(<20%)も透過率(<50%)も十分低い。この実施例7に従ったマスクブランクの反射率及び透過率は図22a及び22bに示されている。
【0131】
移相及び透過率の均質度
N&K分光計を用いた厚さ適合により前記実施例について分析した。固定拡散値を用いて、分光計により測定された反射率及び透過率データから膜厚を算出した。この方法は一般的には金属層よりも誘電層についてより正確な方法である。金属層についての適合品質を向上させるため、予め擦過入射型X線反射計を用いて測定された一定膜厚を用いて拡散適合を実施した。
【0132】
図10a〜10dはタンタル層を用いた実施例1及び比較例1に従ったマスクブランクにおける結果を示した図である。
【0133】
図11aは140mm×140mmの面積中で測定したタンタル層厚の断面形プロットを示した図である。コーナー部分を含んだ範囲/平均均質度値は5.4%であり、コーナー部分を除いた前記数値は2.9%である。
【0134】
図11bはSiO2層についての同様な断面形プロットを示した図である。この場合コーナー部分を含んだ範囲/平均均質度値は6.5%であり、コーナー部分を除いた同値は3.2%である。
【0135】
欠陥レベルの測定
高分解能レーザスキャナー欠陥検査装置を用いて欠陥レベルを測定した。この測定では、マスクブランクの両面がレーザビームを用いてライン毎に走査される。次いで反射及び透過された迷光が2台の光電子倍増管を用いて検出される。ソフトウェアを用いて4つの測定信号から出てくる粒子のクラス、位置及びサイズが計算される。この結果は位置図及びサイズヒストグラムの形式で表示される。前記位置図において、粒径は3つのクラス、すなわち約0.2〜0.5μmの粒子、0.5〜1μmの粒子、及び1μm以上の粒子へと減じられる。点は約0.2〜0.5μmの粒子を示し、白丸及び四角はそれより粒径の大きい粒子を示している。
【0136】
図13a及び13bは本願実施例に従った移相マスクブランクの粒子レベルを示した図である。図13aには移相系の粒子地図が示され、図13bには吸収性クロム層で被覆された移相層の粒子地図が示されている。図14a及び14bは一連の実施例について前記粒子レベルに対するクリーニング工程の影響を示した図である。
【0137】
薬品耐久性試験
本願実施例に従ったマスクブランクの種々クリーニング剤に対する薬品耐久性について試験し、市販の移相マスクブランクとの比較を行った。
図20a〜20cはこれら試験の結果を示した図である。各図におけるそれぞれの上側グラフはクリーニング剤処理後におけるマスクブランクの移相の変化を示し、また下側のグラフはクリーニング剤処理後におけるマスクブランク透過率の変化を示している。
【0138】
図20bは、酸性クリーニング剤(H2SO4/H2O2、90℃)を用いた数回のクリーニングサイクル前後における実施例1に従ったマスクブランクの移相変化及び透過率変化を示している。各クリーニングサイクル後に透過率及び移相は僅かに変化するが、これらの変化は猶移相マスクブランクに要求される規格の範囲内である。実施例2及び3に従った移相マスクブランクに対して同一の酸性クリーニング剤処理を行った場合の結果も同様である。従って、本発明に従った移相マスクブランクの酸性クリーニング剤に対する薬品耐久性は優れていることが示される。
【0139】
図20bは、標準アルカリクリーニング剤(NH4/H2O2)を用いた数回のクリーニングサイクル前後における実施例2に従ったマスクブランク(図中PSM193−6)、実施例4に従ったマスクブランク(図中PSM193−6P)、及び市販の珪化モリブデン移相マスクブランク(MoSi、193nm対応型、図では透過率6%)の位相変化及び透過率変化を示した図である。MoSiマスクブランクの移相及び透過率はかかるクリーニングによって変化しているが、実施例2及び4に従ったマスクブランクにおいては全く変化が認められなかった。また実施例1、3及び5に従ったマスクブランクに対して同一のクリーニングサイクルを施しても同様な結果(移相及び透過率に変化なし)が得られた。従って、本発明に従った移相マスクブランクは標準アルカリクリーニング剤に対して優れた薬品耐久性があることが示された。
【0140】
図20は、さらに別のアルカリクリーニング剤(KOH、50℃におけるpH12)を用いた数回のクリーニングサイクル前後における実施例2に従ったマスクブランク(図中PSM193−6)及び実施例4に従ったマスクブランク(図中PSM193−6P)の位相変化及び透過率変化を示した図である。
【0141】
実施例2に従ったマスクブランクの移相及び透過率は前記クリーニングによって僅かに変化しているが、実施例4に従ったマスクブランクでは全く変化が認められなかった。従って、アルカリクリーニング剤に対する薬品耐久性が既に優れている本発明のマスクブランクにおいてSiO2層上へ保護層を設けることにより薬品耐久性がさらに向上されることが分かる。
【0142】
上述した実施例において用いられた本発明における上記反応物及び/または操作条件の全般あるいは特定のものを代替することによっても、上述した実施例を同様な結果を伴って反復実施することが可能である。
【0143】
当業者は上記記載に基づいて本発明の必須な特徴を容易に見出すことができ、また本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本発明の種々変形及び変更を行って種々用途及び条件へ適合させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1(a)】本発明に従った好ましいマスクブランク作製装置の概略図である。
【図1(b)】本発明に従ったマスクブランク作製装置の補助蒸着源の概略図である。
【図2(a)】本発明の一実施態様に従った減衰移相マスクブランクの略断面図である。
【図2(b)】本発明の一実施態様に従ったフォトマスクの略断面図である。
【図2(c)】本発明の一実施態様に従ったフォトマスクの略断面図である。
【図2(d)】この実施態様に従ってフォトマスクを作製する際に使用可能なドライエッチチング処理を示した図である。
【図3(a)】本発明のさらに別の実施態様に従ったコントラスト層を備えるマスクブランク略断面図である。
【図3(b)】本発明のさらに別の実施態様に従った保護層を備えるマスクブランク略断面図である。
【図3(c)】本発明のさらに別の実施態様に従ったコントラスト層及び保護層を備えるマスクブランク略断面図である。
【図3(d)】本発明のさらに別の実施態様に従った4層の移相系を備えるマスクブランク略断面図である。
【図4】Ta及びSiO2の分散曲線を示した図である。
【図5(a)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの透過率を透過制御下位相及び移相制御下位層の厚さの関数として表したシミュレーションを示した図である。
【図5(b)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの透過率を透過制御下位相及び移相制御下位層の厚さの関数で表したシミュレーションを示した図である。
【図6(a)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの移相を移相制御下位層及び透過制御下位層の厚さの関数で表したシミュレーションを示した図である。
【図6(b)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの移相を移相制御下位層及び透過制御下位層の厚さの関数で表したシミュレーションを示した図である。
【図7(a)】本発明の一実施態様に従った例示的減衰移相マスクブランクの透過率の照射波長157nm、193nm及び248nmに対応する透過制御下位層及び移相制御下位層の厚さに依存した変動のシミュレーションを示した図である。
【図7(b)】本発明の一実施態様に従った例示的減衰移相マスクブランクの透過率の照射波長157nm、193nm及び248nmに対応する透過制御下位層及び移相制御下位層の厚さに依存した変動のシミュレーションを示した図である。
【図7(c)】本発明の一実施態様に従った例示的減衰移相マスクブランクの透過率の照射波長157nm、193nm及び248nmに対応する透過制御下位層及び移相制御下位層の厚さに依存した変動のシミュレーションを示した図である。
【図7(d)】本発明の一実施態様に従った例示的減衰移相マスクブランクの透過率の照射波長157nm、193nm及び248nmに対応する透過制御下位層及び移相制御下位層の厚さに依存した変動のシミュレーションを示した図である。
【図7(e)】本発明の一実施態様に従った例示的減衰移相マスクブランクの透過率の照射波長157nm、193nm及び248nmに対応する透過制御下位層及び移相制御下位層の厚さに依存した変動のシミュレーションを示した図である。
【図8】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの波長と依存関係にある光学密度(振動線)を示した図である。
【図9(a)】本発明のいくつかの実施態様に従ったマスクブランクについてのスペクトル反射率及び透過率曲線を示した図である。
【図9(b)】本発明のいくつかの実施態様に従ったマスクブランクについてのスペクトル反射率及び透過率曲線を示した図である。
【図10(a)】比較例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクの透過率均質度を示した図である。
【図10(b)】本発明の実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクの透過率均質度を示した図である。
【図10(c)】比較例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクTa層の厚さ均質度を示した図である。
【図10(d)】本発明の実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクTa層の厚さ均質度を示した図である。
【図11(a)】比較例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクSiO2層の厚さ均質度を示した図である。
【図11(b)】本発明の実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクSiO2層の厚さ均質性を示した図である。
【図12(a)】比較例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクSiO2膜のAFM測定表面を示した図である。
【図12(b)】比較例2に従った157nm対応減衰移相マスクブランクSiO2膜のAFM測定表面を示した図である。
【図12(c)】本発明の実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクSiO2膜のAFM測定表面を示した図である。
【図13(a)】実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクの欠陥地図を示した図である。
【図13(b)】実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクの欠陥地図を示した図である。
【図14(a)】実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクの粒子分析、すなわち欠陥量を示した図である。
【図14(b)】実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクの粒子分析、すなわち欠陥量を示した図である。
【図15(a)】ターゲット侵食によって生じたTa及びSiO2膜の長時間膜厚ドリフトを示した図である。
【図15(b)】ターゲット侵食によって生じたTa及びSiO2膜の長時間膜厚ドリフトを示した図である。
【図16】本発明の一実施態様に従ったエッチング後のマスクブランクのSEM写真である。
【図17(a)】本発明の別の一実施態様に従ったエッチング後のマスクブランクのSEM写真である。
【図17(b)】本発明の別の実施態様に従ったエッチング後のマスクブランクのSEM写真である。
【図18(a)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクに対するコントラスト層の影響についての計算結果を示した図である。
【図18(b)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクに対するコントラスト層の影響についての計算結果を示した図である。
【図19】Ta層のレーザ耐久性を示した図である。
【図20(a)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの耐薬品性を示した図である。
【図20(b)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの耐薬品性を示した図である。
【図20(c)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの耐薬品性を示した図である。
【図21(a)】本発明の一実施態様に従った保護層を備えるマスクブランクのクロム吸収体ドライエッチング前後におけるGIXR曲線とn&k曲線の比較を示した図である。
【図21(b)】本発明の一実施態様に従った保護層を備えるマスクブランクのクロム吸収体ドライエッチング前後におけるGIXR曲線とn&k曲線の比較を示した図である。
【図22(a)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの検査波長256nmにおける反射率及び透過率を示した図である。
【図22(b)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの検査波長256nmにおける反射率及び透過率を示した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は照射波長が300nmあるいはそれ未満のリトグラフィーにおいて用いられる移相マスクブランク、及びかかる移相マスクブランクの作製方法に関する。
【0002】
本出願は、米国特許出願No.10/655,593、欧州特許出願No.04001359.1及びNo.04008566.4を基礎とする優先権主張出願である。上記優先権主張の基礎となる出願はそれら出願の内容を参照に供するため本願に添付されている。
【背景技術】
【0003】
リトグラフィー機器の分解能、コントラスト及び焦点深度を、通常のバイナリマスク技術を用いて達成できる水準以上まで拡げる手段として移相マスクに対する関心が高まっている。
【0004】
数例の移相技術が知られているが、その中でもSolid State Technology、1992年1月号、43頁に掲載されているBurn J.Linによって提唱された(埋め込み型)減衰移相マスクが、作製の容易性とそれに伴って低コストに抑えられる利点から広く受け入れられている。尚、この文献における教示は参照すべきものとしてここに挙げた。
【0005】
移相マスクについては数種の技術的変形が提案されている。第一の変形例では、所望の移相を生ずるためにエッチングによって石英基板中へ結合された僅かに透明な層、例えば極めて薄いクロム層が基板へ設けられる(レビンソン型、硬質型、または交番型移相マスク)。この方法には、両層の蒸着及びエッチング処理に高度な制御技術が要求される。
【0006】
別の変形例では、基板上へ移相特性及び減衰特性をもつ1または2以上の層を処理することによって移相マスクが得られる。1層によって180°の移相と入射光の減衰が与えられる単層の移相マスクが案出されている。尚、単層マスクの他に、二層及び多層の減衰移相マスクブランクについても言及されている。
【0007】
フォトマスクの特徴サイズを小さくする要求が高まるにつれ、マスクブランクの製造及び加工において蒸着層の膜厚の均質性が次第に重要となっている。例えば限定された移相、透過率及び/または反射性等の規定された光学特性をもつ層を蒸着するためには、計算された層厚からの局部的逸脱が回避されなければならない。これは、そのような局部的逸脱が生ずるとマスクブランクの直径全域に亘って光学特性が非均質となるためである。それゆえ、層厚が均質になるように制御することが益々重要になっている。
【0008】
さらに、前述のフォトマスクには実質的に欠陥があってはならない。フォトマスクに欠陥があると、フォトマスク中のピンホール等の欠陥が生じ、これによってIC装置に欠陥がひき起こされる。マスクブランク上への欠陥生成を防止する作業はフォトマスクの外形サイズの縮小化によってさらに難しくなっている。例えば、65nm及び45nmノード(すなわちウェハー上の特徴サイズがそれぞれ65nm及び45nm)の場合、フォトマスクは100nmの特徴サイズをもつ構造物を用いてパターン化されるので、粒径が0.5μm以上の表面欠陥があってはならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、必要な光学特性及び薬品安定性を備えて容易かつ安定して製造可能であり、かつ表面欠陥がなく蒸着層が均質である特徴を併せ持つ、300nm以下の照射波長に対応する新規なマスクブランクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第一の観点として、基板及び薄膜系から構成され、かつほぼ180°の移相及び300nm以下の波長をもつ照射光において少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能な、埋め込み型の減衰移相マスクブランクを作製するための二元(dual)イオンビーム蒸着方法に関し、この方法は基板上へ、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属及び金属化合物の混合物から選択される1または2以上の金属または金属化合物を含む透過制御層と、
Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物、あるいはそれらの混合物を含む移相制御層を蒸着することから構成され、及び
前記薄層系の少なくとも1層は、
(a)一次イオンビームを用いる一グループのガスからのイオンによるSi、Al、Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pbの1または2以上を含む混合物、合金または化合物のうちの1ターゲットのイオンビーム蒸着、及び
(b)一グループのガスを含む補助供給源からの二次イオンビームを用いた前記基板に対するボンバードによって蒸着されることを特徴とする。
【0011】
本発明は、第二の観点として、薄膜系が、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属及び金属化合物の混合物から選択される1または2以上の金属及び/または金属化合物を含む透過制御下位層、及び
Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物、及び/またはこれらの混合物を含む移相制御下位層から構成される、基板及び前記薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクに関し、
前記透過制御下位層及び/または前記移相制御下位層は多くても2%の平均膜厚均質度を有し、
前記マスクブランクは、ほぼ180°の移相及び波長300nm以下の照射光において少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする。
【0012】
本発明は、第三の観点として、薄膜系が、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれら金属及び金属の窒化物の混合物から選択される1または2以上の金属及び/または金属窒化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層、及び
Ge、Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物、またはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層から構成される、基板及び前記薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクに関し、
前記移相マスクは、ほぼ180°の移相及び波長約248nmの照射光において少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能なであることを特徴とする。
【0013】
本発明は、第四の観点として、薄膜系が、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれらの混合物から選択される1または2以上の金属及び/または金属窒化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb及びこれら金属の組合せから選択される金属の金属酸化物を含量として少なくとも90原子%含むコントラスト層、及び
Ge、Si及び/またはAlの酸化物または窒化物、及び/またはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層から構成される、基板及び前記薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクに関し、
前記マスクブランクは、ほぼ180°の移相及び波長300nm以下の照射光において少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明は、第五の観点として、基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクであって、前記薄膜系は、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれらの混合物から選択される1または2以上の金属または金属窒化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層、
Si及び/またはAlを含む移相制御下位層、及び
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、炭化物及び硼化物、及びこれらの混合物から選択される金属及び/または化合物を含む、前記移相制御下位層上へ設けられた厚さが多くても5nmである保護層から構成され、及び
前記マスクブランクは、ほぼ180°の移相及び波長300nm以下の照射光において少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする、前記埋め込み型の減衰移相マスクブランクに関する。
【0015】
本発明は、第六の観点として、基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクであって、前記薄膜系は、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの組合せから選択される金属の酸化物の1または2以上を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層、及び
Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物、またはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層から構成され、
前記移相マスクブランクは、ほぼ180°の移相及び波長300nm以下の照射光において少なくとも20%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする、前記埋め込み型の減衰移相マスクブランクに関する。
【0016】
本発明の上記及び他の観点、目的、特徴及び利点は、添付図面を参照して以下に詳細に述べられた説明及び発明によって明らかとなろう。
【0017】
尚、前記全般的説明及び下記詳細な説明は単に本発明の例示に過ぎず、特許請求の範囲において求められる本願発明の性質及び特徴を理解するための外観あるいは枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
当該技術分野において公知なように、「フォトマスクブランク」あるいは「マスクブランク」は、構造化、パターン化あるいは影像化後のフォトマスクブランクを記述するのに用いられる用語である「フォトマスク」あるいは「マスク」と異なる。本願ではかかる用語上の約定に従うように試みられているものの、当業者にはそのような区別化は本発明の重要な観点ではないことが認識されよう。それゆえ、本願では用語「フォトマスクブランク」あるいは「マスクブランク」は最も広義に用いられ、影像化されたフォトマスクブランク及び未影像化のフォトマスクブランク双方が包含されることを理解されたい。
【0019】
語句「ほぼ180°の移相をもつ」とは、移相マスクブランクが構造体の境界部分において光を相殺し、該境界におけるコントラストを増大させるに十分な入射光の移相を与えることを意味する。好ましくは160〜190°、より好ましくは170〜185°の移相が与えられる。
【0020】
前記マスクブランクの層系において第一層の第二層に対する相対位置を記述するために用いる場合、語句「〜の下へ」及び「〜の上へ」は下記意味を有する。語句「〜の下へ」は、前記第一層が前記第二層よりもマスクブランク基板へより近接して設けられることを意味し、及び語句「〜の上へ」は前記第一層が基板から前記第二層よりもさらに離れて設けられることを意味する。
【0021】
さらに、特に明示的に述べられていない限り、語句「〜の下へ」又は「〜の上へ」は、「〜の直ぐ下へ」、及び「〜の下であるが、少なくともさらに1層が前記2層の間に設けられる」、あるいは「〜の直ぐ上へ」、及び「〜の上であるが少なくともさらに1層が前記2層の間に設けられる」ことも意味している。
【0022】
本発明に従ったマスクブランクは、波長300nm以下の照射光において少なくとも0.001%、好ましくは少なくとも0.5%の透過率を有する。
【0023】
図1aは本発明に従ったイオンビームスパッタリング(IBS)またはイオンビーム蒸着(IBD)によってフォトマスクブランクを製造するための蒸着装置10の例示的構成を概略的に示した図である。前記装置10にはポンプ装置を用いて抜気可能な真空室12が含まれている。
【0024】
蒸着粒子源あるいはより具体的にはイオン蒸着源20によって第一粒子あるいはイオンビーム22が生成される。前記蒸着イオン源20は高周波(HF)イオン源であるが、他の型式のイオン源を用いることも可能である。蒸着イオン源20の入口26からスパッタガス24が取り込まれ、このガスは前記蒸着イオン源20内部で誘導結合された電磁界によって加速された電子と原子衝突を起こしてイオン化される。好ましくは湾曲状の3本の格子イオン抽出集合体28を用いて前記第一イオンビーム22中に含まれる一次イオンが加速され、それら一次イオンは該集合体によってターゲット40へ向けて集束される。
【0025】
前記一次イオンは蒸着イオン源20から抽出されてターゲットあいはスパッタターゲット40へ当たることにより、原子のカスケード衝突が起こり、ターゲット原子が追い出される。このようにターゲットをスパッタリングあるいは蒸発させる処理はスパッタ処理と呼ばれている。スパッタターゲット40としては、蒸着対象となる層によるが、例えば後述のタンタル、チタン、珪素、クロム、または他の金属、あるいは化合物がある。前記蒸着装置には、真空処理を中断させることなくスパッタ処理を別のターゲットへ変更できるように、複数の異なるスパッタターゲットを備えることが可能である。前記スパッタ処理及び前記層の蒸着は好ましくは適する真空条件下で実施される。
【0026】
一次イオン質量がターゲット原子質量と同等である場合、ターゲット原子への運動量移動が最大となる。希ガスは取扱易いため、スパッタガス24としてアルゴンあるいはキセノンが用いられる。スパッタリングにおけるキセノンの使用によって蒸着層の厚さ均質度が向上するため、スパッタガスとして好ましくはキセノンが用いられる。
【0027】
スパッタされたイオン42の少なくとも一部がターゲット40から基板50へ向かって出てくる。これらスパッタされたイオン42は従来の蒸着法よりずっと高エネルギーを伴って基板へぶつかり、基板50上に高度に安定かつ緻密な層あるいは膜が蒸着あるいは成長形成される。
【0028】
特に、スパッタされる原子、例えば金属原子の平均エネルギーは前記第一イオンビーム22のエネルギー及び/または入射角によって調節あるいは制御される。前記第一イオンビーム22のターゲット垂線44に対する入射角は該ターゲット40を旋回することによって調節される。
【0029】
基板50は3軸回転装置中に回転可能に取り付けられている。スパッタされるイオンの基板50の垂線54に対する入射角αは第一軸を中心として基板50を旋回させることによって調節される。前記入射角を一様に調節することにより、内膜構造及び機械的パラメータ、特に膜応力を制御し、これによりスパッタリングを向上させることができる。
さらに、基板50を回転の第二軸を表す前記垂線54に対して垂直に回転させて蒸着均質度をさらに向上させることが可能である。
前記基板はさらに、該基板をビームの外へ移動させて例えば蒸着直前の基板50のクリーニングを可能とすることができるように第三軸を中心に回転あるいは旋回可能である。
【0030】
さらに、前記装置10には補助粒子源あるいは補助イオン源60が含まれている。この補助粒子/イオン源の操作原理は蒸着源20のそれと同様である。例えば基板50及び/または基板50上へ蒸着された膜の平滑化、状態調節、ドープ化及び/またはその他処理のため、第二粒子またはイオンビーム62が基板50へと向けられる。さらに、活性及び/または不活性ガス64をガス注入口66を介して導入することも可能である。
前記第二イオンビーム62は好ましくは真っ直ぐな3本の格子抽出系68によって加速される。
【0031】
図1bは前記補助蒸着源の概略図を示す。前記蒸着源と同様に、この補助蒸着源には3本の格子、すなわち所謂アクセル格子68a、所謂デセル格子68b及び所謂グラウンド68cが含まれている。アクセル格子68aとデセル格子68b間においてイオンは加速され、それら格子のグラウンド68cへの通路の第二部分においてイオンは減速される。これにより、前記イオンビームの発散を左右することが可能となる。
好ましくは、補助蒸着源60を用いて酸素及び窒素等の活性ガスが前記系へ導入される。
【0032】
前記第二イオンビーム62は実質的に基板50全体を覆うので基板面積全体に亘って均質なイオン分布あるいは処理が得られる。図1から分かるように、基板50は第二イオンビーム62の軸65に対して角度bだけ傾いている。
【0033】
公知技術においては、前記第二イオンビーム62は特に、
−酸素、窒素、炭素及び/または他のイオンを用いたフィルムのドープ、
−例えば酸素プラズマを用いた蒸着前の基板のクリーニング、及び
−膜の平滑化による膜のインタフェース品質の改善に使用されている。
【0034】
しかしながら、本発明によれば、前記第二あるいは二次イオンビームを用いて蒸着層の厚さの均質度を向上するために用いられる。特に、Si、Al、Mg及びGe等の軽金属をスパッタリングする場合、あるいは前記補助蒸着源を用いてスパッタリングされた金属層をO及び/またはN等の元素でドープして前記金属の酸化物、窒化物あるいはオキシ窒化物を生成する場合、通常の手段を用いて層厚が極めて均質な層をスパッタリングしてターゲット角度を変え、あるいはスパッタガスを変えて均質性を改善することは困難であり、また不可能でもあることがわかっている。一般的に、スパッタリングされた金属のより多くの原子はマスクブランクの中央側へ蒸着され、マスクブランクの側面あるいは側部へ蒸着される原子はより少ないため、前記中央部分の蒸着層の厚さはマスクブランクの側部よりも厚くなる。しかしながら、補助蒸着源のイオンビームを調節してかかる影響を補償できることを見出した。補助蒸着源のイオンビームを用いて所定の方法でスパッタリングされた層をエッチングすること、すなわちマスクブランクの側部よりも強固であるマスクブランクの中央部分をその層が最終的にマスクブランクの全面に亘って極めて均質な層厚となる程度までエッチングすることが可能である。
【0035】
この結果を得るためには、蒸着に用いられる第一あるいは一次イオンビームを発生させるパラメータ及び前記補助蒸着源の第二あるいは二次イオンビームを発生させるパラメータを変更することが必要である。前記変更によってイオンビームの配置の統計的分布、すなわち幾何学的形状及びイオンビームのエネルギーに影響が及び補償効果が導き出される。
【0036】
前記一次及び二次イオンビームを調節するためには、数個に及ぶパラメータの調整が必要とされる。
まず第一に、前記補償効果にとって、エッチング速度に対する蒸着速度が重要である。蒸着源のイオンビームによる蒸着速度は主として蒸着源IBのイオンの流れによって決まり、補助蒸着源のイオンビームを用いたエッチング速度は主として補助蒸着源IAのイオンの流れによって決まる。
さらに、イオンビームの形状、すなわちスパッタリングされたイオンの統計的分布は下記パラメータによって決まる。
−一次イオンの質量、
−一次イオンビームα及び二次イオンビームβの基板に対する入射角、
−蒸着源及び補助蒸着源のアクセル格子へ印加される電圧及び電流、
−蒸着源及び補助蒸着源のデセル格子へ印加される電圧。
【0037】
蒸着源からの一次イオンのターゲットに対するボンバードによって発生される原子ビームは、さらに密度、純度及びターゲット形状によっても影響を受ける。反復スパッタリング処理中に、スパッタされた原子の侵食によってターゲットの形状変化がひき起こされる。図15a及び図15bに示すように、Si層及びTa層の厚さは、反復スパッタリング試験全体に亘って測定した場合、出発値から少し変動している。この変動はターゲットの侵食に起因するものである。従って、好ましくはある程度のスパッタリング試験を行った後、例えばマスクブランクを20個スパッタした後で較正が繰り返し行われる。しかしながら、この回数は蒸着された層の厚さによって左右される。
【0038】
蒸着源のイオンビーム及び補助蒸着源のイオンビームを調節するためのパラメータの決定に際しては、好ましくはDOE(Design of Experiment)法が用いられる。このDOE法及びそれを実行するためのソフトウェアは市販されており、現状において公知である。かかるパラメータとDOEを実行するために用いられる該パラメータの範囲の組合せは適切に選択されなければならない。
【0039】
本発明の好ましい実施態様においては、DOEを行うに際しては好ましくは下記パラメータ及び範囲が用いられる。
−好ましくは100〜500mA、より好ましくは200〜300mAの蒸着源(IBD)電流、
−好ましくは50〜300mA、より好ましくは80〜200mAの補助蒸着源(IBD)電流、
−好ましくは500〜1500V、より好ましくは1000〜1500Vの蒸着源(UBD)電圧、
−好ましくは50〜150Vの補助蒸着源(UBA)電圧、
−好ましくは100〜300Vの蒸着源(USD)のサプレッサ(デセル格子、発散)電圧、
−好ましくは100〜500V、より好ましくは150〜300Vの補助蒸着源(USA)のサプレッサ電圧。
好ましくは前記DOEには、好ましくは35〜50°の固定ターゲット角及び45〜60°の固定取付け角が用いられる。
【0040】
前記蒸着層のエッチングは蒸着処理と同時に、あるいは蒸着層の蒸着終了後に実施可能である。エッチングが蒸着終了後に実施される場合、エッチングは好ましくは補助蒸着源中において希ガス等の活性ガス中で実施される。
【0041】
エッチングが蒸着処理中に実施され、及び金属または半金属(semimetal)の酸化物または窒化物がスパッタされる場合は、好ましくは元素金属または半金属のターゲットが用いられ、また補助蒸着源の注入口を介して酸素及び/または窒素が導入される。
【0042】
元素金属または半金属、またはそれらの混合物がスパッタされる場合、そのような金属または半金属のターゲット及び補助蒸着源中にはアルゴンまたはキセノン等の希ガスが用いられる。
【0043】
スパッタリングターゲットとしては、元素を含むターゲット、あるいは化合物を含むターゲットの使用が可能である。蒸着層中に金属または半金属の酸化物、窒化物またはオキシ窒化物が含まれる場合は、かかる金属または半金属の酸化物、窒化物またはオキシ窒化物をターゲット材として用いることが可能である。しかしながら、金属あるいは半金属から成るターゲットを用いること、また酸素及び/または窒素を活性スパッタガスとして導入することも可能である。SiO2の蒸着の場合、好ましくはSiから成るターゲットが用いられ、また活性スパッタガスとして酸素が導入される。蒸着層に窒素が含まれる場合は、好ましくは活性スパッタガスとして窒素が導入される。
【0044】
スパッタガスとしては、好ましくはアルゴンまたはキセノン等の不活性ガスが用いられる。これら不活性ガスは、酸素、窒素、一酸化窒素、二酸化窒素及び酸化二窒素あるいはそれらの混合物等の活性ガスと混合されてもよい。活性ガスはスパッタされたイオンと反応して蒸着層の一部になり得るガスである。本発明の好ましい実施態様では、移相制御層のスパッタリングにおいて不活性ガスと酸素の混合ガスが付加的スパッタリングガスとして用いられる。
【0045】
二層あるいは多層のマスクブランクを製造する場合、好ましくは蒸着装置の単一室内において超高真空状態を中断することなくすべての層が蒸着される。二層あるいは多層の移相マスクブランクを製造する場合には、特に好ましくは真空状態を中断させることなく移相層の層が蒸着される。これにより、マスクブランクからの表面欠陥の汚染除去を行うことが回避され、実質的に欠陥のないマスクブランクを得ることが可能となる。かかるスパッタリング技術は、数個のターゲットからのスパッタリングを可能ならしめるスパッタ器具を用いることにより実現可能である。欠陥密度が低く及び/または層厚に関して高度に均質な層をもつ高品質な移相マスクの製造が達成される。
さらに、基板と該基板上へ設けられた薄膜系から成る、波長300nm未満のリトグラフィー用の埋め込み型減衰マスクブランクが提供される。
【0046】
本発明に従ったマスクブランクに用いる基板材は、好ましくは高純度の溶融珪素、フッ素ドープされた溶融珪素(F−SiO2)、フッ化カルシウム等から作製される。
【0047】
前記移相系の他に、前記薄膜系には1または2以上の反射防止層、バリヤまたは保護層、検査制御またはコントラスト層、及び/または吸収層または吸収体層が含まれていてもよい。かかる吸収層として、例えばクロム層またはTaN層を設けることが可能である。「クロム」吸収体層にはクロムに加えてO及び/またはNが含まれていてもよい。
【0048】
マスクブランクの薄膜系から粒径0.5μm以上の欠陥を無くすることが可能である。前記薄膜系に生ずる粒径0.3〜0.5μmの範囲内の欠陥は、好ましくは多くても50まで、より好ましくは多くても20である。フォトマスク上の特徴サイズが小さくなると共に、サイズ500nm以上の欠陥は問題となるため、かかる欠陥が存在してはならない。粒径が0.3〜0.5μmの範囲内である欠陥に関しては、多くの用途において許容可能なマスクブランク当りの限界欠陥数は50以下である。
【0049】
さらに、本発明の特定の実施態様においては、マスクブランクには多くても5オングストロームまでの表面粗さ(RMS)があってもよい。本発明に従った補助蒸着源を用いることにより、特にSiO2層の表面粗さが改善される。図12a〜12cは、補助蒸着源を使用していない比較例(図12a及び12b)及び本発明実施例(図12c)に従ったSiO2層のAFM測定された表面粗さを示した図である。
【0050】
本発明の第二の観点に従った前記薄膜系の前記層及び下位層の1層、数層、あるいは全層の膜厚の平均均質度は多くても2%、好ましくは多くても1%、より好ましくは多くても0.5%である。高度に均質な膜厚をもつ移相系を設けることによりマスクブランクのすべての位置における移相及び透過率が極めて均質である移相マスクブランクが得られる。特に、前記移相マスクブランクの移相の偏差を移相平均値から多くても±2°、より好ましくは多くても±1.5°とすることができ、また前記移相マスクブランクの透過率の偏差を平均透過率から多くても±0.5%とすることが可能である。
【0051】
前記移相マスクブランクには二層あるいは多層の移相系から成る移相系が含まれる。なお、ここでの語句「多層の」とは、少なくとも3層以上のあらゆる個数の層が含まれる。前記移相系の各層には一般的に種々機能あるいは機能性をもたせることができる。
【0052】
本発明に従った移相マスクブランクの少なくとも二層移相系には透過制御下位層及び移相制御下位層が含まれる。
【0053】
移相機能と減衰機能を少なくとも別個の2層へ実質的に分離することは、照射波長300nm以下に対応した減衰移相マスクブランクにとって特に有利である。かかる減衰移相マスクブランクにおいては、前記下位層の組成を変えることを必要とせず単に前記透過制御下位層の厚さを変えることで容易にその透過性を調節することが可能である。前記マスクブランクの移相は、マスクブランクの透過性を実質的に変えることなく移相下位層の厚さを変えることによって容易に調節可能である。マスクブランクの移相の調節は、マスクブランクをエッチング処理へ適合させるためにしばしば必要とされる。このようなエッチング処理においては、基板はしばしば所定の深さまでエッチングされて移相系へさらに付加的移相が加えられる。マスクブランクをこのエッチングに適合させるために、移相を正確に180°ではなく、エッチング処理によって。約175°〜180°の範囲内の一定数値へ設定することが必要とされる。
従って、前記移相マスクブランクは基板及び移相系から構成され、該移相系はマスクブランクの透過性を実質的に低下させない移相制御下位層及び/またはマスクブランクの移相を実質的に変化させない透過制御下位層から構成される。
【0054】
前記語句「マスクブランクの移相を実質的に変化させない」とは、マスクブランクの移相が移相全体のうちの多くても15°、好ましくは多くても約10°、最も好ましくは多くても約5°までであることを意味する。
本発明において、前記語句「マスクブランクの透過性を実質的に低下させることなく」とは、移相制御下位層が低下させる透過率が多くても約10%、好ましくは多くても約5%までであることを意味する。
【0055】
図2aに示すように、本発明の一実施態様に従ったマスクブランクには基板1が含まれ、該基板上には移相系2が設けられている。前記移相系2は透過制御下位層3と移相制御下位層4から構成されている。好ましくは、同じく図2aに示されているように、前記透過制御下位層3は基板1上の移相層の第一下位層として設けられ、また前記移相制御下位層4は移相層の第二下位層として前記透過制御下位層上へ設けられている。しかしながら、他の実施態様において、前記移相制御下位層を基板上の移相層の第一下位層として設け、前記透過制御下位層を移相層の第二下位層として前記移相制御下位層上へ設けることも可能である。前記移相系上には、一般的に吸収層6が設けられる。図2aに示した移相マスクブランクを図2cに示した影像化、パターン化、あるいは構造化されたフォトマスクへ作り変える際には、好ましくは前記移相系の2段階エッチング処理が用いられる。図2dに示すように、まず塩素及び酸素を混合して用いるドライエッチング処理等の第一エッチング処理によって前記吸収層6がエッチングされる。次いで、前記移相系2の第一下位層、好ましくは移相制御下位層が例えばフッ素を基剤とするドライエッチング剤等の第二エッチング剤を用いてパターン化される。最終工程において、前記移相系2の第二下位層3、好ましくは透過制御下位層が、好ましくは例えば塩素ドライエッチング剤等のさらに別のエッチング剤を用いてパターン化される。前記第一エッチング剤は前記最終のエッチング剤と同一剤でもあるいは異なる剤でもよい。
【0056】
前記移相制御下位層には、Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物、またはそれらの混合物から選択される材料が含まれる。本発明のいくつかの実施態様に従って、前記移相制御下位層には、Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物、またはそれらの混合物から選択される材料が含量として少なくとも90原子%、好ましくは少なくとも95原子%含まれる。
【0057】
本発明の一実施態様では、前記移相層は本質的に照射光波長において約0.3以下、より好ましくは0.05以下の消衰係数をもつ1または2以上の材料あるいはそれら材料の混合物から成る。
【0058】
前記移相制御下位層には、Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Sn、Pb及びこれらの混合物から選択される金属が少量含まれていてもよい。しかしながら、これら金属が含まれると前記移相制御下位層の透過率が低下する傾向があるため、これら金属の混入は好ましくは多くても5原子%だけに限られる。いくつかの実施態様では、前記移相制御下位層には上記金属は殆ど含まれない。さらに、上記金属を特に5原子%以上含む移相制御下位層は欠陥程度の高いマスクブランクを生じやすい。従って、かかる金属の特に5原子%以上の混入は欠陥程度の低い移相マスクブランク薄膜系を得る観点において好ましくない。
【0059】
本発明の一実施態様では、前記移相制御下位層にはSi、Al及び/またはGeの酸化物及び/またはオキシ窒化物、及び/またはこれらの混合物が含量として少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%含まれる。さらに別の実施態様では、窒素が含量として多くても約10原子%、より好ましくは多くても約5原子%、移相制御下位層へ加えられる。
【0060】
本発明の一実施態様では、前記移相制御層は殆どSiO2から成っている。
【0061】
前記移相制御下位層は300nm以下の範囲内の照射光波長において約180°の移相、あるいはいずれか他の必要な移相を与えるように適合した厚さをもつ。
【0062】
所定の移相を得るために必要な移相制御下位層の厚さは、移相下位層が形成される材料の屈折率n及び消衰係数kに依存する。一般的には、屈折率の高い材料を用いることにより、屈折率の低い材料よりも大きな移相下位層蒸着厚当りの移相が得られる。
【0063】
前記透過制御下位層は、Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属と化合物の混合物から選択される1または2以上の金属または金属化合物が含まれる。
【0064】
本発明の一実施態様に従って、前記透過制御下位層には比較的不透明度の高い材料が少なくとも1種含まれ、またMg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれら金属または窒化物の2以上の混合物から選択される材料が含まれる。本発明の特定の実施態様では、前記透過制御下位層にはTa、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Cr、Mo及びWから選択される金属が含まれる。好ましくは、前記透過制御下位層には前述した金属及び化合物が含量として少なくとも90原子%、より好ましくは少なくとも95原子%含まれる。さらに別の実施態様では、前記透過制御下位層は、Nb、Ta、Ti、Cr、Mo、W、V、Nb、Zn、Zr、Hf、Si、Ge、Sn、Pb、Mn、Fe、Co、Ni、La、Mg、及びこれら金属あるいはこれら金属の窒化物の2以上の混合物から選択される少なくとも1種の材料から成る。これに関し前記1種の材料とは、例えばTi、TaまたはHfの層等の元素金属1種、あるいはTaN、TiNまたはHfN等の金属窒化物1種を意味する。
【0065】
前記透過制御下位層は前記移相系の透過率を所望の数値へ適合させるに十分な厚さをもち、その厚さは透過制御下位層を成す材料に殆ど依存している。この厚さは下記式から算出可能である。
dTc=−1/αλ×In(T/100)
上記式中、Tは%で表した所望の透過率、αλは照射波長λにおける吸収係数、そしてdTcは透過制御下位層の計算された厚さを表す。前記吸収係数αには下記式に従った消衰係数kとの相関関係がある。
α=4πkλ/λ
【0066】
本発明の一実施態様に従って、前記透過制御層が基板上へ直接設けられ、該層によってエッチング停止機能、すなわち石英基板に対する高度なエッチング選択性が与えられる。そのため、移相マスクの石英基板中への過度のエッチングを容易に防止することが可能である。本発明のこの実施態様に従って、前記透過制御下位層には好ましくは少なくとも約8nm、最も好ましくは少なくとも約10nmの厚さが付与される。この厚さが約8nm未満であると、前記透過制御下位層のエッチング停止機能は不十分となる。
【0067】
本発明のこの実施態様においては、好ましくは前記透過制御下位層へ移相制御下位層とは異なるエッチング選択性が付与される。移相制御層がフッ素含有成分を用いてエッチングされる場合、透過制御層は、好ましくはCl2、Cl2+O2、CCl4、CH2Cl2等の塩素ベースのガスを用いたドライエッチング法、あるいは酸、アルカリ等を用いたウェットエッチング法によってエッチングされる。但し、好ましくはドライエッチング法が用いられる。フッ素含有成分を用いるエッチング法としては、好ましくはCHF3、CF4、SF6、C2F6及びこれらの混合物等のフッ素系ガスを用いるリアクティブイオンエッチング(RIE)が用いられる。
【0068】
本発明の第4の観点に従って、「検査制御層」あるいは「コントラスト層」を含む移相マスクブランクが提供される。この観点における一実施態様を図3a及び3cに概略的に示すが、この実施態様ではコントラスト層7が透過制御下位層3上に位置している。
【0069】
マスクブランクに対し照明波長より長い波長において検査処理を行う。例えば、193nm対応リトグラフィー用のマスクブランクは通常例えば257nm及び356nmの検査波長において検査される。このような波長での検査を可能とするためには、193nm対応リトグラフィー用のマスクブランクには照射波長における必要な透過性及び移相が備えられているだけでなく、該マスクブランクは検査波長における一定の最大透過率及び反射率にも適合しなければならない。
【0070】
本発明に従って、「検査制御」または「コントラスト」層によって特に例えば257nm及び/または356nm等の検査波長におけるコントラストが向上される。前記層により、反射率の向上、すなわち検査波長及び/または照射波長において移相マスクブランクへ反射防止特性が付与され、あるいは所定範囲内の検査波長における透過性が補助的に制御される。
【0071】
かかるコントラスト層は通常、照射波長において移相系の透過率及び/または移相を変化させるため、照射波長において要求される移相及び透過率を確保するためには移相制御下位層の厚さと透過制御下位層の厚さが適合しなければならない。すなわち、移相制御下位層の厚さを、前記コントラスト層によって移相が増加する量だけ減じなければならず、及び/または透過制御下位層の厚さを前記コントラスト層が透過率を増加させる量だけ減じなければならない。
【0072】
本発明の一実施態様に従って、基板上へ透過制御下位層が設けられ、該透過制御下位層上へ移相制御下位層が設けられ、また該移相制御下位層上へコントラスト層が設けられる。本発明のさらに別の実施態様では、基板上へ透過制御下位層が設けられ、該透過制御下位層上へコントラスト層が設けられ、そして該コントラスト層上へ移相制御下位層が設けられる。
【0073】
コントラスト層には好ましくは、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの組合せから選択される金属の酸化物を含量として90原子%含ませることが可能である。本発明の特定の実施態様においては、透過制御層にはTa、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Cr、Mo及びWから選択される金属が含まれる。
【0074】
ここで述べている本発明の第四の観点に従って、透過制御下位層には好ましくはY、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物及び混合物から選択される1または2以上の金属及び/または金属窒化物が含量として少なくとも90原子%含まれ、また移相制御下位層には好ましくはGe、Si及び/またはAlの酸化物または窒化物及び/またはこれらの混合物が含量として少なくとも90原子%含まれる。
【0075】
本発明の特定の実施態様では、透過制御下位層には上記金属、例えばTaが含量として少なくとも90原子%、好ましくは少なくとも95原子%含まれる。この場合、コントラスト層には、好ましくは前記透過制御下位層に用いられた金属と同じ金属の酸化物、例えばTa2O5が含量として少なくとも90原子%、より好ましくは少なくとも95原子%含まれる。しかしながら、Cr2O3等の他の金属酸化物を含ませることも可能である。
【0076】
本発明の一実施態様では、移相制御下位層にはSiO2が含量として少なくとも95原子%含まれ、及び/または透過制御下位層にはTa及び/またはTa窒化物が含量として少なくとも95原子%含まれ、及び/またはコントラスト層にはTa2O5が含量として少なくとも95原子%含まれる。
【0077】
本発明のさらに別の実施態様では、コントラスト層には透過制御下位層及び/または移相制御下位層と同じエッチング選択性が付与される。従って、エッチング工程数は好ましくはコントラスト層の挿入によって増加されない。
【0078】
本発明のいくつかの実施態様において、本発明によるマスクブランクは、1または2以上の検査波長において多くても50%の透過率をもち、及び/または1または2以上の検査波長において多くても20%の反射率をもつ。
【0079】
コントラスト層は好ましくは多くても30nm、より好ましくは多くても20nmの厚さを有する。
【0080】
本発明の第五の観点に従って、マスクブランクには「バリヤ層」、あるいは厚さが多くても5nmである「保護層」8が含まれる。この観点に従った一実施態様が図3b及び3cに示されており、この図において保護層8は移相制御下位層上に位置している。
【0081】
前記移相制御下位層にSi及び/またはAlが含まれる場合、該移相制御下位層はアルカリ、酸、あるいは他の攻撃的クリーニング剤へ晒された時に分解され易い。しかしながら、前記移相制御下位層の厚さがクリーニング処理によって減じられる場合は、移相マスクブランクの移相性が変化する可能性があるため、そのようなクリーニング処理は好ましくない。ここでの第五の観点に従って、透過制御下位層は通常基板上へ設けられ、移相制御下位層は該透過制御下位層上へ設けられる。前記保護層によってウェットエッチング処理中に、Si及び/またはAl含有層もさらに保護される。
さらに、前記保護層は、193nm対応リトグラフィー用のフォトマスクに生ずる、フォトマスクのクリーニング中に結晶の生成によって起こると考えられる所謂「ヘーズ(haze)」効果の防止にも役立つ。また、Si及び/またはAl含有層へ保護層を蒸着させることにより、該Si及び/またはAl含有層上への結晶の沈積を防止することも可能である。
【0082】
本発明のいくつの実施態様において、前記保護層の厚さは多くても4nm、好ましくは多くても2nmである。概して、保護層の厚さが少なくとも0.2nmあればアルカリ、酸、及びその他の攻撃的クリーニング剤に対する保護機能を層系へ付与するためには十分であるが、本発明のいくつかの実施態様においては、アルカリクリーニング剤の作用性によっては、前記保護層の厚さは少なくとも0.5nm、さらには0.7nmまで付与されている。
【0083】
本発明の別の実施態様によれば、前記保護層を付与することにより作製されるマスクブランク及びフォトマスクの光学特性に対して影響が起こることはない。ここで光学特性とは例えばマスクブランクの移相性、透過性、及び反射特性のことである。
【0084】
前記保護層へ、該保護層の直ぐ上の層のエッチング選択性と異なるエッチング選択性を持たせてもよい。この場合、保護層は前記Si及び/またはAl含有層上に残し、必要なエッチング工程数を増やさないため、該保護層には前記Si及び/またはAl含有層と同一のエッチング選択性を付与すべきである。前記保護層にはさらに、該保護層の直ぐ上の層と同じエッチング選択性をもたせることも可能である。
【0085】
保護層をSi及び/またはAlを含む移相制御下位層及び/またはSi及び/またはAlを含むさらに別の層上へ設けることも可能であり、また保護層へMg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、炭化物硼化物、及びこれらの混合物から選択される金属及び/または化合物を含ませることも可能である。本発明の特定の実施態様では、透過制御層にはTa、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Cr、Mo及びWから選択される金属が含まれる。前記保護層には、好ましくはMg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb及びこれらの組合せから選択される金属の酸化物あるいは窒化物が含量として少なくとも90原子%含まれる。
【0086】
この第五の観点に従って、透過制御下位層にはY、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物及び混合物から選択される金属または金属窒化物を含量として少なくとも90原子%含ませることができる。また、移相制御下位層にはSiの酸化物及び/または窒化物を含量として少なくとも90原子%含ませることができる。
【0087】
本発明の第六の観点は、波長300nm以下の照射光において少なくとも20%の光透過率を与える高透過性マスクブランクに関する。この第六の観点におけるマスクブランクのいくつかの実施態様において、該マスクブランクの透過率は少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも5である。しかしながら、透過率が20%であるマスクブランクが作製される場合であっても、移相系の厚さが減じられていることから薄膜系全体の厚さを減じることができる点において、この第六の観点に従ったマスクブランクには利点がある。
【0088】
この第六の観点に従って、透過制御下位層には、好ましくはY、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれら金属の組合せから選択される金属の酸化物が含量として少なくとも90原子%含まれる。
【0089】
またこの第六の観点に従って、移相制御下位層には、Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物、あるいはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含ませることが可能である。
【0090】
本発明のこの第六の観点における一実施態様に従って、基板上へ下記層が交互に設けられて成る反射性の向上された高透過性マスクブランクが提供される。
−Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれら金属の組合せから選択される金属の酸化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層、
−Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層、
−Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれら金属の組合せから選択される金属の酸化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層、
−Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層。
【0091】
本発明の異なる観点を相互に適切に組み合わせること、例えば1または数層の保護層及び/またはコントラスト層をマスクブランク中に設けて別の観点としてのマスクブランクを提供することも可能である。さらに、前記第六の観点における一実施態様として概説したように、本発明は1層だけの移相制御下位層及び/または1層だけの透過制御下位層をもつ移相系には限定されない。2以上の透過制御下位層及び/または移相制御下位層が本発明に従ったマスクブランク中に存在してもよい。かかる2以上の透過制御下位層及び/または移相制御下位層は同一材料から成っていてもよく、あるいは異なる材料から成っていてもよい。さらに、前記両層は均質な材料で作製してもよく、あるいはこれら層の組成を基板からの間隔に基づいて徐々に変えてもよい。
【0092】
本発明はまた、上述したようにマスクブランクを構造化することによって作製された構造化フォトマスク及びかかるフォトマスクの作製方法にも関する。
【試験例】
【0093】
上記説明及び下記実施例において、温度はすべて摂氏に変換しないまま記載されている。上記及び以下において引用されるすべての出願、特許及び刊行物の開示内容はすべて参考とすべきものである。
【0094】
以下において、本発明の好ましい実施態様に従って設計及び作製されたマスクブランクについて説明する。
【0095】
例示的膜設計及び透過率調節
Woollam VASE型分光楕円偏光測定器を用いた楕円偏光測定により157nm及び193nmにおけるn値及びk値を得た。典型例として、分光走査は55及び65度において実施した。方法適合性を向上させるため透過率データを取得した。
【0096】
図4はTa及びSiO2の分散曲線を示した図である。図4の縦軸は左から右へTa及びSiO2の測定された単層分散曲線を示す。図の上列は屈折率nを示し、下列は消衰係数kを示している。
【0097】
これら材料及びSiO2基板のリトグラフィー波長157、193、及び248nmにおける分散値を表1に列記する。
【0098】
【表1】
【0099】
上記表1の分散データを用いて下記計算を行った。すべてのシミュレーションは、数計算用のMatlabを用いる薄膜用に広く用いられているA.Macleod、「薄膜光学フィルター」、第2版、1986年、Bristol,Adam Hilgerに記載の行列アルゴリズムに基づいている。これらのシミュレーションの結果を図5〜7に示す。
【0100】
図5aに減衰された157nm(6%透過率)対応型及び高透過性である193nm(20%透過率)対応型の移相マスクブランクについての設計を示し、図5bに減衰(6%透過率)型及び高透過248nm(20%透過率)対応型移相マスクブランクについての設計を示す。図5a中、実線は波長157nm対応移相マスクブランクについての移相下位層の透過率と膜厚との相関に相当し、破線は波長193nm対応移相マスクブランクについての移相下位層の膜厚の関数で表した透過率に相当する。図5b中、上側グラフは高透過性型の移相下位層の膜厚の関数で表した透過率に相当し、下側グラフは波長248nm対応減衰移相マスクブランクの透過率に相当する。図5a及び5b中、膜厚ゼロは無被覆の基板に相当する。基板上にはTa層が設けられている。これらグラフは、透過制御下位層として機能するタンタル層の膜厚の増加につれて透過率が指数関数的に減少することを示している。Ta層上にはSiO2層が移相制御下位層として設けられる。図5a及び5bの各グラフにおいて、透過制御下位層の移相制御下位層との界面は細い縦線で示されている。誘電性SiO2層は干渉によって生じた平均透過率値周囲において典型的な振幅を示している。空気との最終界面において所望の透過率値が得られる。このような移相制御下位層は移相マスクブランクの透過率を実質的に変化させないが、生ずる透過率値に対して副次的に寄与する。膜厚ゼロについての透過率値は1であるが、分解能の向上のため切り捨てられる。
【0101】
図6a及び6bには移相が膜厚の関数として示されている。膜厚ゼロは移相ゼロに相当する。図6aにおいて、タンタル層の移相は当初僅かに負であるが、その後僅かに上昇し、界面において再びゼロに近づく。従って、移相マスクブランクの全移相に対する寄与はごく僅かである。図6bにおいて、タンタル層は248nm対応移相マスクブランクへ小さな正の移相をひき起こす。しかしながら、タンタル透過制御層によってひき起こされる移相は二酸化珪素層の大きな位相変異に比較すれば小さい。従って、近似的には誘電層によって、干渉作用が重畳される膜厚の増加に伴う位相角の直線的増大がもたらされる。空気との最終界面において所望角度である180°が得られる。
【0102】
図5及び6は、157nm、193nm、及び248nm対応の移相マスクブランクによって透過率及び位相角の制御が広範に独立して可能となることを示している。異なる波長及び透過率要求に対する適合は個々の下位層の厚さを別々に調節することによって可能であろう。
【0103】
図7a〜7eには5つの移相系についての透過率の可調性が示されている。x軸はSiO2膜厚であり、y軸はそれぞれTa及びTa2O5の膜厚である。垂直に近い実線はSiO2層の厚さと180°の移相を起こすTaあるいはTa2O5層のすべての組合せを示している。水平に近いグラフは異なる下位層厚に対応したそれぞれの透過率値を示す。線の振動は干渉作用によって生ずるものである。かかる振動作用によって透過率は相当量変動し得るが、これら作用によって移相制御下位層の透過率が実質的に高められることはあっても該透過率が実質的に低下されることはない。波長300nm以下の照射波長においては殆どの材料の透過率は極めて低いので、透過率をより高める上述した振動のような作用はむしろ利点となる。
【0104】
図7a〜7eにおいて、横方向の振動線は異なる透過率それぞれについてのTa、Ta2O5及びSiO2の可能な膜厚の組合せを示している。前記横方向の線に交差する縦線はそれぞれ180°の移相を生ずるTa、Ta2O5及びSiO2の組合せを示している。前記縦線と前記横方向の線が交差するタンタル層の一定の膜厚及びSiO2層の一定の厚さを表す点において、180°の移相を伴う一定透過率のための移相系が確立される。TaあるいはTa2O5層の最小厚を10nmと仮定すると、157nm系については28%まで(図6a)、193nm系については28%まで(図6b)、また248nm系については30%まで(図6c)透過率を調節することが可能である。Ta2O5を用いる高透過率系(図7d及び7e)においては、透過率は50%まで達成可能である。いずれの場合においても、波長減衰型高透過率移相マスクブランクの作製が可能である。
【0105】
蒸着試験例
(A)蒸着装置
図1に模式的に図示した二元イオンビームスパッタリング装置を用いてすべての層に対して蒸着を行った。すべての蒸着において、特にVeeco Nexus LDDイオンビーム蒸着装置が使用された。
【0106】
(B)蒸着パラメータ
厳密な蒸着パラメータは、ソフトウェアとしてSAS Institute Inc、SAS Campus Drive,Cary,ノースカロライナ27513,USA.IBD作製のJMP、レリーズ5.0.1aを用いたDOEによって決定し、固定パラメータとしてTW及びFWを導入し、また変数としてUBD、USD、IBA、UBA及びUSAを導入した。
【0107】
表2に実施例及び比較例に従って用いられる材料のスパッタリングについての一般的蒸着パラメータを示す。
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
実施例1及び比較例1(157nm対応PSM)
図2において概略的に述べた移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTaから成る透過制御下位層を蒸着し、また該透過制御下位層上へSiO2から成る移相制御下位層を蒸着して作製した。これら蒸着された層の厚さは表5に示されている。また前記移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0112】
【表5】
【0113】
実施例1及び比較例は反復実施した。
【0114】
実施例2(193nm対応PSM)
図2において概略的に説明した移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTaから成る透過制御下位層を蒸着し、また該透過制御下位層上へSiO2から成る移相制御下位層を蒸着して作製した。これら蒸着された層の厚さは表6に示されている。また前記移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0115】
【表6】
【0116】
実施例3(248nm対応PSM、図2)
図2において概略的に説明した移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTaから成る透過制御下位層を蒸着し、また該透過制御下位層上へSiO2から成る移相制御下位層を蒸着して作製した。これら蒸着された層の厚さは表7に示されている。また前記移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0117】
【表7】
【0118】
実施例4(コントラスト層を有する193nm対応PSM)
図3aにおいて概略的に説明した移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTaから成る透過制御下位層を蒸着し、また該透過制御下位層上へTa2O5から成るコントラスト層を蒸着し、さらに該コントラスト層上へSiO2から成る移相制御下位層を蒸着して製造した。これら蒸着された層の厚さは表8に示されている。また前記移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0119】
【表8】
【0120】
図9a及び9bには、コントラスト層を含む例示的マスクブランクの検査性能における向上(実施例4a及び4b)が、かかるコントラスト層をもたないマスクブランク(実施例2a及び2b)との比較において示されている。図9aは193nmにおいて6%の透過率をもつ照射波長193nm対応のマスクブランクについての反射率及び透過率を示し、図9bは193nmにおいて20%の透過率をもつ照射波長193nm対応のマスクブランクについての反射率及び透過率を示す。いずれの場合においても、コントラスト層を含むマスクブランクの反射率及び透過率(実線)は、コントラスト層をもたないマスクブランクのそれら(破線)に比べて向上されている。さらに、193nmにおける反射率もコントラスト層によって向上されている。
【0121】
図18a及び18bは実施例4a及び4bに従ったコントラスト層の厚さの照射波長及び検査波長における反射率に対する影響を示した図である。厚さが10nm未満であるコントラスト層によっても必要な反射率は十分達成される。厚さゼロは、コントラスト層をもたない移相系、すなわち移相制御下位層及び透過制御下位層をもつ移相系に相当する。
【0122】
図17a及び17bは実施例4a(SEM写真)に従ったマスクブランクに対するドライエッチング試験の結果を示した図である。ピッチサイズは500nm(図17a)及び200nm(図17b)である。結果は実線、破線及び一点鎖線で示されている。100nmだけの特徴サイズであっても側壁角度及びエッチング停止能は極めて良好である。前記コントラスト層のエッチングは移相制御下位層の場合と同様にドライエッチング処理、すなわちエッチング剤としてフッ素を用いたドライエッチング処理によって実施した。従って、コントラスト層の追加によるエッチング処理工程の増加はない。
【0123】
実施例5(保護層を有する193nm対応PSM)
図3cにおいて概略的に説明した移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTaから成る透過制御下位層を蒸着し、また該透過制御下位層上へTa2O5から成るコントラスト層を蒸着し、また該コントラスト層上へSiO2から成る移相制御下位層を蒸着し、さらに該移相制御下位層上へTa2O5から成る保護層(厚さ1nm)を蒸着して作製した。これら蒸着された層の厚さは実施例4aのそれら厚さと対応するものである。また前記移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0124】
実施例4aに従ったマスクブランクのSiO2層上へ、前記Cr吸収層の蒸着前に上記略述した蒸着パラメータを用いて1層を蒸着した。次いでこのマスクブランクに対してクロムドライエッチ処理(Cl+O2)を行った。
【0125】
図21a及び21bは、クロムドライエッチチング処理後の実施例4に従ったマスクブランクの光学特性をクロム層蒸着前の実施例4に従ったマスクブランクと比較した図である。前記マスクブランクのすれすれ入射X線反射曲線(GIXR、図21a)及びスペクトル曲線(n&k、図21b)はクロム蒸着前及びCr除去後において同一である。この結果より、クロムドライエッチチング処理によって薄い保護層が除去されていないことが示される。
【0126】
実施例6(157nm及び193nm対応高透過性PSM)
図2において概略的に説明した移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTa2O5から成る透過制御下位層を蒸着し、また該透過制御下位層上へSiO2から成る移相制御下位層を蒸着して作製した。これら蒸着された層の厚さは表9に示されている。また前記移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0127】
【表9】
【0128】
本実施例による移相マスクブランクの透過率は20%であるが、これらマスクブランクの薄膜系がより薄いことから、薄膜系の全厚を実施例1b(移相系の厚さ125nm)及び実施例2b(移相系の厚さ163nm)の場合より減ずることが可能である。
【0129】
実施例7(透過率20%の193nm対応PSM)
図3dにおいて概略的に説明した移相マスクブランクを、上記概説した標準的蒸着パラメータを用いて、及び石英基板上へTa2O5から成る第一透過制御下位層(厚さ12nm)を蒸着し、また該第一透過制御下位層上へSiO2から成る第一移相制御下位層(厚さ12nm)を蒸着し、また該第一移相制御下位層上へTa2O5から成る第二透過制御下位層(厚さ22nm)を蒸着し、また該第二透過制御下位層上へSiO2から成る第二移相制御下位層(厚さ92nm)を蒸着して作製した。また前記第二移相制御下位層上には標準的なクロム吸収層(厚さ50nm)を蒸着した。
【0130】
実施例2bの移相系の全厚(163nm)と比較した場合、実施例7に従ったマスクブランクの移相系の全厚(138nm)は実施例6bのマスクブランクよりもさらに減少されている。しかしながら、実施例7に従ったマスクブランクの反射率は照射波長193nmにおいて極めて低く(<4%)、さらに検査波長256nmにおける反射率(<20%)も透過率(<50%)も十分低い。この実施例7に従ったマスクブランクの反射率及び透過率は図22a及び22bに示されている。
【0131】
移相及び透過率の均質度
N&K分光計を用いた厚さ適合により前記実施例について分析した。固定拡散値を用いて、分光計により測定された反射率及び透過率データから膜厚を算出した。この方法は一般的には金属層よりも誘電層についてより正確な方法である。金属層についての適合品質を向上させるため、予め擦過入射型X線反射計を用いて測定された一定膜厚を用いて拡散適合を実施した。
【0132】
図10a〜10dはタンタル層を用いた実施例1及び比較例1に従ったマスクブランクにおける結果を示した図である。
【0133】
図11aは140mm×140mmの面積中で測定したタンタル層厚の断面形プロットを示した図である。コーナー部分を含んだ範囲/平均均質度値は5.4%であり、コーナー部分を除いた前記数値は2.9%である。
【0134】
図11bはSiO2層についての同様な断面形プロットを示した図である。この場合コーナー部分を含んだ範囲/平均均質度値は6.5%であり、コーナー部分を除いた同値は3.2%である。
【0135】
欠陥レベルの測定
高分解能レーザスキャナー欠陥検査装置を用いて欠陥レベルを測定した。この測定では、マスクブランクの両面がレーザビームを用いてライン毎に走査される。次いで反射及び透過された迷光が2台の光電子倍増管を用いて検出される。ソフトウェアを用いて4つの測定信号から出てくる粒子のクラス、位置及びサイズが計算される。この結果は位置図及びサイズヒストグラムの形式で表示される。前記位置図において、粒径は3つのクラス、すなわち約0.2〜0.5μmの粒子、0.5〜1μmの粒子、及び1μm以上の粒子へと減じられる。点は約0.2〜0.5μmの粒子を示し、白丸及び四角はそれより粒径の大きい粒子を示している。
【0136】
図13a及び13bは本願実施例に従った移相マスクブランクの粒子レベルを示した図である。図13aには移相系の粒子地図が示され、図13bには吸収性クロム層で被覆された移相層の粒子地図が示されている。図14a及び14bは一連の実施例について前記粒子レベルに対するクリーニング工程の影響を示した図である。
【0137】
薬品耐久性試験
本願実施例に従ったマスクブランクの種々クリーニング剤に対する薬品耐久性について試験し、市販の移相マスクブランクとの比較を行った。
図20a〜20cはこれら試験の結果を示した図である。各図におけるそれぞれの上側グラフはクリーニング剤処理後におけるマスクブランクの移相の変化を示し、また下側のグラフはクリーニング剤処理後におけるマスクブランク透過率の変化を示している。
【0138】
図20bは、酸性クリーニング剤(H2SO4/H2O2、90℃)を用いた数回のクリーニングサイクル前後における実施例1に従ったマスクブランクの移相変化及び透過率変化を示している。各クリーニングサイクル後に透過率及び移相は僅かに変化するが、これらの変化は猶移相マスクブランクに要求される規格の範囲内である。実施例2及び3に従った移相マスクブランクに対して同一の酸性クリーニング剤処理を行った場合の結果も同様である。従って、本発明に従った移相マスクブランクの酸性クリーニング剤に対する薬品耐久性は優れていることが示される。
【0139】
図20bは、標準アルカリクリーニング剤(NH4/H2O2)を用いた数回のクリーニングサイクル前後における実施例2に従ったマスクブランク(図中PSM193−6)、実施例4に従ったマスクブランク(図中PSM193−6P)、及び市販の珪化モリブデン移相マスクブランク(MoSi、193nm対応型、図では透過率6%)の位相変化及び透過率変化を示した図である。MoSiマスクブランクの移相及び透過率はかかるクリーニングによって変化しているが、実施例2及び4に従ったマスクブランクにおいては全く変化が認められなかった。また実施例1、3及び5に従ったマスクブランクに対して同一のクリーニングサイクルを施しても同様な結果(移相及び透過率に変化なし)が得られた。従って、本発明に従った移相マスクブランクは標準アルカリクリーニング剤に対して優れた薬品耐久性があることが示された。
【0140】
図20は、さらに別のアルカリクリーニング剤(KOH、50℃におけるpH12)を用いた数回のクリーニングサイクル前後における実施例2に従ったマスクブランク(図中PSM193−6)及び実施例4に従ったマスクブランク(図中PSM193−6P)の位相変化及び透過率変化を示した図である。
【0141】
実施例2に従ったマスクブランクの移相及び透過率は前記クリーニングによって僅かに変化しているが、実施例4に従ったマスクブランクでは全く変化が認められなかった。従って、アルカリクリーニング剤に対する薬品耐久性が既に優れている本発明のマスクブランクにおいてSiO2層上へ保護層を設けることにより薬品耐久性がさらに向上されることが分かる。
【0142】
上述した実施例において用いられた本発明における上記反応物及び/または操作条件の全般あるいは特定のものを代替することによっても、上述した実施例を同様な結果を伴って反復実施することが可能である。
【0143】
当業者は上記記載に基づいて本発明の必須な特徴を容易に見出すことができ、また本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本発明の種々変形及び変更を行って種々用途及び条件へ適合させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1(a)】本発明に従った好ましいマスクブランク作製装置の概略図である。
【図1(b)】本発明に従ったマスクブランク作製装置の補助蒸着源の概略図である。
【図2(a)】本発明の一実施態様に従った減衰移相マスクブランクの略断面図である。
【図2(b)】本発明の一実施態様に従ったフォトマスクの略断面図である。
【図2(c)】本発明の一実施態様に従ったフォトマスクの略断面図である。
【図2(d)】この実施態様に従ってフォトマスクを作製する際に使用可能なドライエッチチング処理を示した図である。
【図3(a)】本発明のさらに別の実施態様に従ったコントラスト層を備えるマスクブランク略断面図である。
【図3(b)】本発明のさらに別の実施態様に従った保護層を備えるマスクブランク略断面図である。
【図3(c)】本発明のさらに別の実施態様に従ったコントラスト層及び保護層を備えるマスクブランク略断面図である。
【図3(d)】本発明のさらに別の実施態様に従った4層の移相系を備えるマスクブランク略断面図である。
【図4】Ta及びSiO2の分散曲線を示した図である。
【図5(a)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの透過率を透過制御下位相及び移相制御下位層の厚さの関数として表したシミュレーションを示した図である。
【図5(b)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの透過率を透過制御下位相及び移相制御下位層の厚さの関数で表したシミュレーションを示した図である。
【図6(a)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの移相を移相制御下位層及び透過制御下位層の厚さの関数で表したシミュレーションを示した図である。
【図6(b)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの移相を移相制御下位層及び透過制御下位層の厚さの関数で表したシミュレーションを示した図である。
【図7(a)】本発明の一実施態様に従った例示的減衰移相マスクブランクの透過率の照射波長157nm、193nm及び248nmに対応する透過制御下位層及び移相制御下位層の厚さに依存した変動のシミュレーションを示した図である。
【図7(b)】本発明の一実施態様に従った例示的減衰移相マスクブランクの透過率の照射波長157nm、193nm及び248nmに対応する透過制御下位層及び移相制御下位層の厚さに依存した変動のシミュレーションを示した図である。
【図7(c)】本発明の一実施態様に従った例示的減衰移相マスクブランクの透過率の照射波長157nm、193nm及び248nmに対応する透過制御下位層及び移相制御下位層の厚さに依存した変動のシミュレーションを示した図である。
【図7(d)】本発明の一実施態様に従った例示的減衰移相マスクブランクの透過率の照射波長157nm、193nm及び248nmに対応する透過制御下位層及び移相制御下位層の厚さに依存した変動のシミュレーションを示した図である。
【図7(e)】本発明の一実施態様に従った例示的減衰移相マスクブランクの透過率の照射波長157nm、193nm及び248nmに対応する透過制御下位層及び移相制御下位層の厚さに依存した変動のシミュレーションを示した図である。
【図8】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの波長と依存関係にある光学密度(振動線)を示した図である。
【図9(a)】本発明のいくつかの実施態様に従ったマスクブランクについてのスペクトル反射率及び透過率曲線を示した図である。
【図9(b)】本発明のいくつかの実施態様に従ったマスクブランクについてのスペクトル反射率及び透過率曲線を示した図である。
【図10(a)】比較例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクの透過率均質度を示した図である。
【図10(b)】本発明の実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクの透過率均質度を示した図である。
【図10(c)】比較例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクTa層の厚さ均質度を示した図である。
【図10(d)】本発明の実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクTa層の厚さ均質度を示した図である。
【図11(a)】比較例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクSiO2層の厚さ均質度を示した図である。
【図11(b)】本発明の実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクSiO2層の厚さ均質性を示した図である。
【図12(a)】比較例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクSiO2膜のAFM測定表面を示した図である。
【図12(b)】比較例2に従った157nm対応減衰移相マスクブランクSiO2膜のAFM測定表面を示した図である。
【図12(c)】本発明の実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクSiO2膜のAFM測定表面を示した図である。
【図13(a)】実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクの欠陥地図を示した図である。
【図13(b)】実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクの欠陥地図を示した図である。
【図14(a)】実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクの粒子分析、すなわち欠陥量を示した図である。
【図14(b)】実施例1に従った157nm対応減衰移相マスクブランクの粒子分析、すなわち欠陥量を示した図である。
【図15(a)】ターゲット侵食によって生じたTa及びSiO2膜の長時間膜厚ドリフトを示した図である。
【図15(b)】ターゲット侵食によって生じたTa及びSiO2膜の長時間膜厚ドリフトを示した図である。
【図16】本発明の一実施態様に従ったエッチング後のマスクブランクのSEM写真である。
【図17(a)】本発明の別の一実施態様に従ったエッチング後のマスクブランクのSEM写真である。
【図17(b)】本発明の別の実施態様に従ったエッチング後のマスクブランクのSEM写真である。
【図18(a)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクに対するコントラスト層の影響についての計算結果を示した図である。
【図18(b)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクに対するコントラスト層の影響についての計算結果を示した図である。
【図19】Ta層のレーザ耐久性を示した図である。
【図20(a)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの耐薬品性を示した図である。
【図20(b)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの耐薬品性を示した図である。
【図20(c)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの耐薬品性を示した図である。
【図21(a)】本発明の一実施態様に従った保護層を備えるマスクブランクのクロム吸収体ドライエッチング前後におけるGIXR曲線とn&k曲線の比較を示した図である。
【図21(b)】本発明の一実施態様に従った保護層を備えるマスクブランクのクロム吸収体ドライエッチング前後におけるGIXR曲線とn&k曲線の比較を示した図である。
【図22(a)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの検査波長256nmにおける反射率及び透過率を示した図である。
【図22(b)】本発明の一実施態様に従ったマスクブランクの検査波長256nmにおける反射率及び透過率を示した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板及び薄膜系から構成され、波長300nm以下の照射光においてほぼ180°の移相及び少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能な埋め込み型の減衰移相マスクブランクを作製するための二元イオンビーム蒸着方法であって、前記方法は前記基板上へ、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属及び化合物の混合物から選択される1または2以上の金属または金属化合物を含む透過制御下位層と、
Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物あるいはこれらの混合物を含む移相制御下位層を蒸着することから構成され、
前記薄膜系の少なくとも1層は、
(a)一次イオンビームを用いる一グループのガスからのイオンを用いたSi、Al、Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pbの1または2以上の混合物、合金または化合物から成るターゲットの一次イオンビーム蒸着により、及び
(b)一グループのガスを含む補助蒸着源からの二次イオンビームを用いた前記基板に対するボンバードによって蒸着されることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
前記一次イオンビーム及び前記二次イオンビームに関するパラメータが、前記層の厚さの平均均質度が多くても2%となるように調節されることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項3】
前記薄膜系の少なくとも2層が一次イオンビームを用いる一グループのガスからのイオンを用いたSi、Al、Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pbの1または2以上の混合物、合金または化合物から成るターゲットからのイオンビーム蒸着によって蒸着されることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項4】
前記薄膜系の少なくとも2層が一グループのガスを含む補助蒸着源からの二次イオンビームを用いた前記基板に対するボンバードによって蒸着されることを特徴とする請求項3項記載の方法。
【請求項5】
前記薄膜系の少なくとも2層が、蒸着処理中に真空状態が中断されることなく蒸着されることを特徴とする請求項3項記載の方法。
【請求項6】
前記基板上への、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物及び窒化物、及びこれら金属及び化合物の混合物から選択される金属及び/または金属化合物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層の蒸着が含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項7】
前記基板上への、
Ta、Ta酸化物、Ta窒化物及び/またはこれらの混合物を含む透過制御下位層の蒸着が含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項8】
前記基板上への、
Ge、Si及び/またはAlの酸化物またはオキシ窒化物、あるいはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層の蒸着が含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項9】
基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相フォトマスクブランクであって、
前記薄膜系は、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属及び化合物の混合物から選択される金属または金属化合物を含む透過制御下位層と、
Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物あるいはこれらの混合物を含む移相制御下位層から構成され、
前記透過制御下位層及び前記移相制御下位層は多くても2%の平均膜厚均質度をもち、及び
前記マスクブランクは波長300nm以下の照射光においてほぼ180°の移相と少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする前記フォトマスクブランク。
【請求項10】
前記透過制御下位層及び前記移相制御下位層が多くても1%の平均膜厚均質度をもつことを特徴とする請求項9項記載のマスクブランク。
【請求項11】
基板及び薄膜系から構成され、前記薄膜系が、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属及び化合物の混合物から選択される金属または金属化合物から殆どなる層と、
Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物あるいはこれらの混合物を含量として少なくとも95原子%含む層から構成されることを特徴とする請求項9項記載のマスクブランク。
【請求項12】
波長157nm、193nmあるいは248nmにおいて5〜30%の透過率をもつことを特徴とする請求項9項記載のマスクブランク。
【請求項13】
基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクであって、前記薄膜系は、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれら金属及び窒化物の混合物から選択される1または2以上の金属及び/または金属窒化物を含む透過制御下位層と、
Ge、Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物あるいはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層から構成され、及び
前記移相マスクは波長約248nmの照射光においてほぼ180°の移相と少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする前記マスクブランク。
【請求項14】
前記移相制御下位層にSiO2が含量として少なくとも95原子%含まれることを特徴とする請求項13項記載のマスクブランク。
【請求項15】
前記透過制御下位層にY、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれらの混合物から選択される金属または金属窒化物が含量として少なくとも95原子%含まれることを特徴とする請求項13項記載のマスクブランク。
【請求項16】
基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクであって、前記薄膜系は、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれらの混合物から選択される1または2以上の金属及び/または金属窒化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層と、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの混合物から選択される1または2以上の金属の酸化物を含量として少なくとも90原子%含むコントラスト層と、
Ge、Si及び/またはAlの酸化物または窒化物、及び/またはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層から構成され、及び
前記マスクブランクは波長300nm以下の照射光においてほぼ180°の移相と少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする前記マスクブランク。
【請求項17】
前記基板上へ前記透過制御下位層が設けられ、前記透過制御下位層上へ前記コントラスト層が設けられ、さらに前記コントラスト層上へ前記移相制御下位層が設けられることを特徴とする請求項16項記載のマスクブランク。
【請求項18】
前記基板上へ前記透過制御下位層が設けられ、前記透過制御下位層上へ前記移相制御下位層が設けられ、さらに前記移相制御下位層上へ前記コントラスト層が設けられることを特徴とする請求項16項記載のマスクブランク。
【請求項19】
前記移相制御下位層にSiO2が含量として少なくとも95原子%含まれることを特徴とする請求項16項記載のマスクブランク。
【請求項20】
前記透過制御下位層にTa及び/またはTa窒化物が含量とて少なくとも95原子%含まれることを特徴とする請求項16項記載のマスクブランク。
【請求項21】
前記コントラスト層にTa2O5が含量として少なくとも95原子%含まれることを特徴とする請求項16項記載のマスクブランク。
【請求項22】
基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクであって、前記薄膜系は、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれらの混合物から選択される1または2以上の金属または金属窒化物を含量として少なくとも95原子%含む透過制御下位層と、
Si及び/またはAlを含む移相制御下位層と、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、炭化物、硼化物、及びこれらの混合物から選択される金属または化合物を含む、前記移相制御下位層上へ設けられた多くても5nmの厚さをもつ保護層から構成され、
前記マスクブランクは波長300nm以下の照射光においてほぼ180°の移相と少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする前記マスクブランク。
【請求項23】
前記透過制御下位層が前記基板上へ設けられ、及び前記移相制御下位層が前記透過制御下位層上へ設けられることを特徴とする請求項22項記載のマスクブランク。
【請求項24】
前記移相制御下位層にSiの酸化物及び/または窒化物が含量として少なくとも90原子%含まれることを特徴とする請求項22項記載のマスクブランク。
【請求項25】
前記コントラスト層にAl、Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの混合物から選択される金属の酸化物が含量として少なくとも90原子%含まれることを特徴とする請求項22項記載のマスクブランク。
【請求項26】
基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクであって、前記薄膜系は、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの混合物から選択される金属の1または2以上の酸化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層と、
Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層から構成され、及び
前記移相マスクブランクは波長300nm以下の照射光においてほぼ180°の移相と少なくとも20%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする前記マスクブランク。
【請求項27】
前記薄膜系が、順に、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの混合物から選択される金属の1または2以上の酸化物を含量として少なくとも90原子%含む第一透過制御下位層、
Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物を含量として少なくとも90原子%含む第一移相制御下位層、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの混合物から選択される金属の1または2以上の酸化物を含量として少なくとも90原子%含む第二透過制御下位層、及び
Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物を含量として少なくとも90原子%含む第二移相制御下位層から構成されることを特徴とする請求項26項記載のマスクブランク。
【請求項1】
基板及び薄膜系から構成され、波長300nm以下の照射光においてほぼ180°の移相及び少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能な埋め込み型の減衰移相マスクブランクを作製するための二元イオンビーム蒸着方法であって、前記方法は前記基板上へ、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属及び化合物の混合物から選択される1または2以上の金属または金属化合物を含む透過制御下位層と、
Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物あるいはこれらの混合物を含む移相制御下位層を蒸着することから構成され、
前記薄膜系の少なくとも1層は、
(a)一次イオンビームを用いる一グループのガスからのイオンを用いたSi、Al、Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pbの1または2以上の混合物、合金または化合物から成るターゲットの一次イオンビーム蒸着により、及び
(b)一グループのガスを含む補助蒸着源からの二次イオンビームを用いた前記基板に対するボンバードによって蒸着されることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
前記一次イオンビーム及び前記二次イオンビームに関するパラメータが、前記層の厚さの平均均質度が多くても2%となるように調節されることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項3】
前記薄膜系の少なくとも2層が一次イオンビームを用いる一グループのガスからのイオンを用いたSi、Al、Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pbの1または2以上の混合物、合金または化合物から成るターゲットからのイオンビーム蒸着によって蒸着されることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項4】
前記薄膜系の少なくとも2層が一グループのガスを含む補助蒸着源からの二次イオンビームを用いた前記基板に対するボンバードによって蒸着されることを特徴とする請求項3項記載の方法。
【請求項5】
前記薄膜系の少なくとも2層が、蒸着処理中に真空状態が中断されることなく蒸着されることを特徴とする請求項3項記載の方法。
【請求項6】
前記基板上への、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物及び窒化物、及びこれら金属及び化合物の混合物から選択される金属及び/または金属化合物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層の蒸着が含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項7】
前記基板上への、
Ta、Ta酸化物、Ta窒化物及び/またはこれらの混合物を含む透過制御下位層の蒸着が含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項8】
前記基板上への、
Ge、Si及び/またはAlの酸化物またはオキシ窒化物、あるいはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層の蒸着が含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項9】
基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相フォトマスクブランクであって、
前記薄膜系は、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属及び化合物の混合物から選択される金属または金属化合物を含む透過制御下位層と、
Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物あるいはこれらの混合物を含む移相制御下位層から構成され、
前記透過制御下位層及び前記移相制御下位層は多くても2%の平均膜厚均質度をもち、及び
前記マスクブランクは波長300nm以下の照射光においてほぼ180°の移相と少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする前記フォトマスクブランク。
【請求項10】
前記透過制御下位層及び前記移相制御下位層が多くても1%の平均膜厚均質度をもつことを特徴とする請求項9項記載のマスクブランク。
【請求項11】
基板及び薄膜系から構成され、前記薄膜系が、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、硼化物及び炭化物、及びこれら金属及び化合物の混合物から選択される金属または金属化合物から殆どなる層と、
Ge、Si及び/またはAlの硼化物、炭化物、酸化物及び/または窒化物あるいはこれらの混合物を含量として少なくとも95原子%含む層から構成されることを特徴とする請求項9項記載のマスクブランク。
【請求項12】
波長157nm、193nmあるいは248nmにおいて5〜30%の透過率をもつことを特徴とする請求項9項記載のマスクブランク。
【請求項13】
基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクであって、前記薄膜系は、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれら金属及び窒化物の混合物から選択される1または2以上の金属及び/または金属窒化物を含む透過制御下位層と、
Ge、Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物あるいはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層から構成され、及び
前記移相マスクは波長約248nmの照射光においてほぼ180°の移相と少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする前記マスクブランク。
【請求項14】
前記移相制御下位層にSiO2が含量として少なくとも95原子%含まれることを特徴とする請求項13項記載のマスクブランク。
【請求項15】
前記透過制御下位層にY、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれらの混合物から選択される金属または金属窒化物が含量として少なくとも95原子%含まれることを特徴とする請求項13項記載のマスクブランク。
【請求項16】
基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクであって、前記薄膜系は、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれらの混合物から選択される1または2以上の金属及び/または金属窒化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層と、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの混合物から選択される1または2以上の金属の酸化物を含量として少なくとも90原子%含むコントラスト層と、
Ge、Si及び/またはAlの酸化物または窒化物、及び/またはこれらの混合物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層から構成され、及び
前記マスクブランクは波長300nm以下の照射光においてほぼ180°の移相と少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする前記マスクブランク。
【請求項17】
前記基板上へ前記透過制御下位層が設けられ、前記透過制御下位層上へ前記コントラスト層が設けられ、さらに前記コントラスト層上へ前記移相制御下位層が設けられることを特徴とする請求項16項記載のマスクブランク。
【請求項18】
前記基板上へ前記透過制御下位層が設けられ、前記透過制御下位層上へ前記移相制御下位層が設けられ、さらに前記移相制御下位層上へ前記コントラスト層が設けられることを特徴とする請求項16項記載のマスクブランク。
【請求項19】
前記移相制御下位層にSiO2が含量として少なくとも95原子%含まれることを特徴とする請求項16項記載のマスクブランク。
【請求項20】
前記透過制御下位層にTa及び/またはTa窒化物が含量とて少なくとも95原子%含まれることを特徴とする請求項16項記載のマスクブランク。
【請求項21】
前記コントラスト層にTa2O5が含量として少なくとも95原子%含まれることを特徴とする請求項16項記載のマスクブランク。
【請求項22】
基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクであって、前記薄膜系は、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の窒化物、及びこれらの混合物から選択される1または2以上の金属または金属窒化物を含量として少なくとも95原子%含む透過制御下位層と、
Si及び/またはAlを含む移相制御下位層と、
Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、これら金属の酸化物、窒化物、炭化物、硼化物、及びこれらの混合物から選択される金属または化合物を含む、前記移相制御下位層上へ設けられた多くても5nmの厚さをもつ保護層から構成され、
前記マスクブランクは波長300nm以下の照射光においてほぼ180°の移相と少なくとも0.001%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする前記マスクブランク。
【請求項23】
前記透過制御下位層が前記基板上へ設けられ、及び前記移相制御下位層が前記透過制御下位層上へ設けられることを特徴とする請求項22項記載のマスクブランク。
【請求項24】
前記移相制御下位層にSiの酸化物及び/または窒化物が含量として少なくとも90原子%含まれることを特徴とする請求項22項記載のマスクブランク。
【請求項25】
前記コントラスト層にAl、Mg、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの混合物から選択される金属の酸化物が含量として少なくとも90原子%含まれることを特徴とする請求項22項記載のマスクブランク。
【請求項26】
基板及び薄膜系から構成される埋め込み型の減衰移相マスクブランクであって、前記薄膜系は、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの混合物から選択される金属の1または2以上の酸化物を含量として少なくとも90原子%含む透過制御下位層と、
Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物を含量として少なくとも90原子%含む移相制御下位層から構成され、及び
前記移相マスクブランクは波長300nm以下の照射光においてほぼ180°の移相と少なくとも20%の光透過率をもつフォトマスクの製造が可能であることを特徴とする前記マスクブランク。
【請求項27】
前記薄膜系が、順に、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの混合物から選択される金属の1または2以上の酸化物を含量として少なくとも90原子%含む第一透過制御下位層、
Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物を含量として少なくとも90原子%含む第一移相制御下位層、
Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn、Pb、及びこれらの混合物から選択される金属の1または2以上の酸化物を含量として少なくとも90原子%含む第二透過制御下位層、及び
Si及び/またはAlの酸化物及び/またはオキシ窒化物を含量として少なくとも90原子%含む第二移相制御下位層から構成されることを特徴とする請求項26項記載のマスクブランク。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図2(d)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図3(d)】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図7(d)】
【図7(e)】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図10(c)】
【図10(d)】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図12(a)】
【図12(b)】
【図12(c)】
【図13(a)】
【図13(b)】
【図14(a)】
【図14(b)】
【図15(a)】
【図15(b)】
【図16】
【図17(a)】
【図17(b)】
【図18(a)】
【図18(b)】
【図19】
【図20(a)】
【図20(b)】
【図20(c)】
【図21(a)】
【図21(b)】
【図22(a)】
【図22(b)】
【図1(b)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図2(d)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図3(d)】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図7(d)】
【図7(e)】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図10(c)】
【図10(d)】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図12(a)】
【図12(b)】
【図12(c)】
【図13(a)】
【図13(b)】
【図14(a)】
【図14(b)】
【図15(a)】
【図15(b)】
【図16】
【図17(a)】
【図17(b)】
【図18(a)】
【図18(b)】
【図19】
【図20(a)】
【図20(b)】
【図20(c)】
【図21(a)】
【図21(b)】
【図22(a)】
【図22(b)】
【公表番号】特表2007−504497(P2007−504497A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525130(P2006−525130)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009919
【国際公開番号】WO2005/024518
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009919
【国際公開番号】WO2005/024518
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】
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