説明

減量加工方法

【課題】 特に、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維と減量速度の異なる繊維素材との組み合わせにおいて充分な風合変化が得られる減量加工方法を提供する。
【解決手段】 ポリトリメチレンテレフタレート系繊維からなる布帛にアルカリ剤を付与し、次いで熱処理することによる減量加工方法であって、マイクロ波により熱処理することを特徴とする減量加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の減量加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維をアルカリ減量する方法について開示されており、アルカリ剤をパッド処理することにより特にポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートの如く減量速度の異なる組み合わせの場合、両者間に減量差が生じにくいことが記載されている。
しかしながら、例えば、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートの交織では、両者間の減量差は依然として大きく減量による風合変化が不充分なものであった。
【0003】
【特許文献1】特開2005−015967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決し、特にポリトリメチレンテレフタレート系繊維と減量速度の異なる繊維素材との組み合わせにおいて充分な風合変化が得られる減量方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するため、鋭意検討の結果、本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の通りである。
(1)ポリトリメチレンテレフタレート系繊維からなる布帛にアルカリ剤を付与し、次いで熱処理することによる減量加工方法であって、マイクロ波により熱処理することを特徴とする減量加工方法。
(2)布帛が、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維とポリエチレンテレフタレート系繊維が混用されたものであることを特徴とする上記(1)に記載の減量加工方法。
(3)ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の減量加工方法。
(4)潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維が、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートから構成されることを特徴とする上記(3)に記載の減量加工方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の減量加工方法は、特に減量速度の異なる繊維素材との組み合わせにおいて充分な風合変化が得られる減量加工方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について以下に具体的に説明する。
本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維とは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル系繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0008】
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の好ましい特性としては、強度は2〜5cN/dtex、好ましくは2.5〜4.5cN/dtex、さらには3〜4.5cN/dtexの範囲が好ましい。伸度は30〜60%、好ましくは35〜55%、さらには40〜55%の範囲が好ましい。初期引張抵抗度は30cN/dtex以下、好ましくは10〜30cN/dtex、さらには12〜28cN/dtex、特に15〜25cN/dtexの範囲が好ましい。10%伸長時の弾性回復率は70%以上、好ましくは80%以上、さらには90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0009】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に重縮合せしめることにより製造される。この製造過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に製造した後、ブレンド(ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は、質量%で50%以上である。)したり、複合紡糸(鞘芯、サイドバイサイド等)してもよい。
【0010】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等が挙げられる。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
さらに、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0011】
本発明においてポリトリメチレンテレフタレート系繊維の紡糸については、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)の何れを採用しても良い。
又、繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブーメラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
トータル繊度は20〜550dtexが好ましく、より好ましくは30〜220dtexであり、また、単糸繊度は0.1〜12dtexが好ましく、特に0.1〜6dtexが柔軟な風合いが得られるので好ましい。
さらに糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸等の紡績糸、単糸繊度が0.1〜6dtex程度のマルチフィラメント原糸(極細糸を含む)、甘撚糸〜強撚糸、混繊糸、仮撚糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸等がある。
【0012】
本発明においては、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であると優れたストレッチ性、ストレッチバック性を発揮するので好ましい。
潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、少なくとも二種のポリエステル成分で構成(具体的には、複合紡糸によってサイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されたものが多い)され、その少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分の複合比(一般的に質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は限定されない。
このような、潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、具体的には、特開2001−40537号公報に開示されているようなポリトリメチレンテレフタレートを一成分とするものがある。
この繊維は、二種のポリエステルポリマーが、サイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合された複合繊維であり、サイドバイサイド型の場合、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比は、好ましくは1.00〜2.00であり、偏芯芯鞘型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比は、3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。
【0013】
具体的なポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよく、他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい)と、ポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよく、他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい)、並びにポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよく、他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)とが好ましく、特に捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されたものが好ましい。
【0014】
上記特開2001−40537号公報以外にも、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−81640号公報等には、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを並列的あるいは偏芯的に配置したサイドバイサイド型又は偏芯鞘芯型に複合紡糸したものが開示されている。特に、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
【0015】
本発明での、かかる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、初期引張抵抗度が10〜30cN/dtex、好ましくは20〜30cN/dtex、より好ましくは20〜27cN/dtexの範囲である。初期引張抵抗度が30cN/dtexを越えると、ソフトな風合を損なうことがあり、10cN/dtex未満のものは製造が困難である。又、顕在捲縮の伸縮伸長率は10〜100%、好ましくは10〜80%、より好ましくは10〜60%の範囲である。顕在捲縮の伸縮伸長率が10%未満では、ストレッチバック性が不充分となることがあり、100%を越える繊維の製造は困難である。さらに、顕在捲縮の伸縮弾性率は80〜100%、好ましくは85〜100%、より好ましくは85〜97%の範囲である。顕在捲縮の伸縮弾性率が80%未満では、ストレッチバック性が不充分となることがあり、100%を越える繊維の製造は困難である。
【0016】
さらに好ましい特性としては、100℃における熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4cN/dtex、最も好ましくは0.1〜0.3cN/dtexの範囲である。100℃における熱収縮応力が0.1cN/dtex未満では、ストレッチバック性が不充分となることがあり、0.5cN/dtexを越える繊維の製造は困難である。
又、熱水処理後の伸縮伸長率は、好ましくは100〜250%、より好ましくは150〜250%、最も好ましくは180〜250%の範囲である。熱水処理後の伸縮伸長率が100%未満では、ストレッチバック性が不充分となることがあり、250%を越える繊維の製造は困難である。熱水処理後の伸縮弾性率は、好ましくは90〜100%、より好ましくは95〜100%である。熱水処理後の伸縮弾性率が90%未満では、ストレッチバック性が不充分となる場合がある。
【0017】
このような特性を有する潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維としては、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された複合繊維があげられる。
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.50(dl/g)であることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.45(dl/g)、最も好ましくは0.15〜0.45(dl/g)である。例えば、高粘度側の固有粘度を0.70〜1.30(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.50〜1.10(dl/g)から選択するのが好ましい。
低粘度側の固有粘度は0.80(dl/g)以上が好ましく、より好ましくは0.85〜1.00(dl/g)、最も好ましくは0.90〜1.00(dl/g)である。
この複合繊維自体の固有粘度、すなわち、平均固有粘度は0.70〜1.20(dl/g)が好ましく、0.80〜1.20(dl/g)がより好ましく、0.85〜1.15(dl/g)がさらに好ましく、0.90〜1.10(dl/g)が最も好ましい。
【0018】
本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸した糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである
繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブーメラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
トータル繊度は20〜550dtexが好ましく、より好ましくは30〜220dtexであり、また、単糸繊度は0.1〜12dtexが好ましく、特に0.1〜6dtexが柔軟な風合いが得られるので好ましい。
【0019】
さらに糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸等の紡績糸、単糸繊度が0.1〜6dtex程度のマルチフィラメント原糸(極細糸を含む)、甘撚糸〜強撚糸、混繊糸、仮撚糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸等がある。
特に、潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、仮撚加工糸であるとさらに優れたストレッチ性、ストレッチバック性を発揮するので好ましい。仮撚加工糸はいわゆる2ヒーターの仮撚加工糸(セットタイプ)よりも、いわゆる1ヒーターの仮撚加工糸(ノンセットタイプ)を用いる方が、ストレッチ性、ストレッチバック性から好ましい。さらに仮撚加工糸は、好ましくは2000m/分以上、より好ましくは2500〜4000m/分の巻取り速度で引取って得られる部分配向未延伸糸(POY)を延伸仮撚した仮撚加工糸が好ましい。
【0020】
仮撚加工糸は、無撚でもよいが、必要に応じて仮撚方向と同方向又は異方向に追撚したり、仮撚加工糸を双糸又は三子以上で合撚されたものやS仮撚加工糸とZ仮撚加工糸を合撚してもよい。特に追撚したり、合撚する場合、仮撚加工糸には、前述した部分配向未延伸糸(POY)を延伸仮撚した仮撚加工糸を用いると好ましい。
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の仮撚加工糸や潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の原糸及び仮撚加工糸は、熱リラックス等の手段により潜在捲縮を顕在化させて用いることが、ストレッチバック性を高めるためには好ましく、例えば、先染め糸(チーズ染め、かせ染め、プレバルキー後にチーズ染め、かせ染め等)として用いる方法がある。
本発明においては、かかるポリトリメチレンテレフタレート系繊維からなる布帛にアルカリ剤を付与し、次いで熱処理することによって減量加工する方法において、マイクロ波により熱処理することを特徴とするものである。
【0021】
アルカリ剤を付与し、次いで熱処理する方法としては、例えばアルカリ剤をパッドにより付与した後、次いで乾熱又は湿熱により熱処理することが知られているが、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維のようにアルカリ減量速度の遅い繊維素材では、減量率を高めることが困難であり、特にポリエチレンテレフタレート系繊維のように減量速度の速い繊維素材との組み合わせにおいてはその減量差が大きく希望する風合変化(ソフト風合)が充分に得られないものである。
又、潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維が例えばアルカリ減量速度の異なる、例えばポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートで構成される複合繊維を用いた布帛では、風合変化が少なくさらに伸長特性の変化(伸長特性の低下)が大きい欠点もあり、本発明のマイクロ波による熱処理によりこれらの欠点が大きく改善される。
マイクロ波による熱処理は、正確な温度コントロールが可能であり、例えば、熱処理温度としては100℃前後にコントロールされる。
【0022】
本発明では、マイクロ波による熱処理と、乾熱又は湿熱による熱処理を組み合わせてもよく、特にスチームを充満させたチャンバー内でマイクロ波によって熱処理したり、かかるマイクロ波による熱処理に引き続いてさらにスチームだけにより熱処理する方法が処理ムラ発生防止面から好ましい。又、これらの熱処理に際して、布帛はローラー間を走行させながら及び/又は布帛をコンベアベルト上に堆積させた状態で、連続的にマイクロ波による熱処理や乾熱、湿熱により熱処理する方法がある。
本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維からなる布帛としては、織物、編物、不織布があるが、特に織物に効果的である。又、布帛はポリトリメチレンテレフタレート系繊維100%のものに加えて、上述したようにポリエチレンテレフタレート系繊維のように減量速度の異なる素材との組み合わせ(例えばポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートで構成される複合繊維のようにサイドバイサイドや鞘芯型の複合繊維、混紡、カバリング、交撚、混繊等の糸複合、交編織等の機上複合さらには複合繊維、糸複合、機上複合の組み合わせ)において効果的である。
【0023】
減量速度の異なる素材との組み合わせとしては、ポリエチレンテレフタレート系繊維以外にも綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース、竹、アセテート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン、アクリル等の各種人造繊維、ポリ乳酸系繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いのサイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等の複合繊維が挙げられる。
布帛の減量率としては、好ましくは5質量%以上、特に10質量%以上、30質量%以下、特に20質量%以下が好ましい。アルカリ剤としては、苛性ソーダや苛性カリ等が代表的であり、有機アミンや第四級アンモニウム塩等の減量促進剤を用いてもよく、熱処理温度は80℃以上、特に95℃以上、130℃以下、特に120℃以下が好ましく、熱処理時間は通常0.5〜10分、好ましくは1〜5分であるが、熱処理温度並びに時間は、希望する減量率に応じて適宜選定すればよい。
【実施例】
【0024】
本発明を実施例などに基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
本発明における測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
式中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒に溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cは、g/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0025】
(2)初期引張抵抗度
JIS−L−1013:化学繊維フィラメント糸試験方法初期引張抵抗度の試験方法、に準じ、試料の単位繊度当たり0.0882cN/dtexの初荷重を掛けて引張試験を行い、得られた荷重−伸長曲線から初期引張抵抗度(cN/dtex)を算出する。試料10点を採取して測定し、その平均値を求める。
(3)伸縮伸長率及び伸縮弾性率
JIS−L−1090:合成繊維フィラメントかさ高加工糸試験方法の伸縮性試験方法A法、に準じて測定を行い、伸縮伸長率(%)及び伸縮弾性率(%)を算出する。試料10点を採取して測定しその平均値を求める。
顕在捲縮の伸縮伸長率及び伸縮弾性率は、巻き取りパッケージから解舒した試料を、温度20±2℃、相対湿度65±2%の環境下で24時間放置後に測定を行う。熱水処理後の伸縮伸長率及び伸縮弾性率は、無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥した試料を用いる。
(4)熱収縮応力
熱応力測定装置(カネボウエンジニアリング社製、商品名KE−2)を用い、試料を20cmの長さに切り取り、両端を結んで輪を作り測定装置に装填し、初荷重0.044cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で収縮応力を測定し、得られた温度に対する熱収縮応力の変化曲線から100℃における熱収縮応力を読み取る。
【0026】
[実施例1]
固有粘度[η]0.9のポリトリメチレンテレフタレートを用い、3000m/minの紡糸速度で紡糸して破断伸度105%のPOYを得た。次いで、仮撚加工機;村田機械製作所(株)製の33H仮撚機を用いて、仮撚加工糸の破断伸度が35%となるように延伸倍率を設定し、仮撚ヒーター出口の糸条温度160℃、仮撚数3200T/mで延伸仮撚加工を行い、110dtex/48fの1ヒーターの延伸仮撚糸を得た。
この仮撚糸を緯糸に用い、経糸には110dtex/48fのポリエチレンテレフタレート延伸仮撚糸を用いて、経密度141本/2.54cm、緯密度92本/2.54cmのギャバ組織の生機を得た。
次いで、常法により精錬、乾燥、プレセット後、カセイソーダ90g/リットルの液をパッドした後、スチームを充満させたチャンバー内でマイクロ波(出力1kW)によって熱処理を行った(温度102℃、時間3分)。減量率は約10%であった。引き続き常法により染色、ファイナルセットした。
得られた織物の風合は非常にソフトであった。
【0027】
[比較例1]
実施例1において、マイクロ波による熱処理を行わずにスチームのみによる熱処理(温度100℃、時間3分)を行った以外は実施例1同様にして得られた織物の風合は実施例1の織物に対比して硬い風合のものであった。
[実施例2]
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得た。
次いで、得られた未延伸糸を、ホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が84dtexとなるように設定して延撚し、84dtex/36fのサイドバイサイド型の複合繊維を得た。
得られた複合繊維の固有粘度は、高粘度側が[η]=0.90、低粘度側が[η]=0.70であった。又、初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率及び伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率及び伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力は、各々23cN/dtex、25%及び89%、204%及び99%、0.21cN/dtexであった。
引き続き、この延伸糸を石川製作所製IVF−338にて第1ヒーター温度160℃、仮撚数3200T/mで仮撚加工を行い仮撚加工糸を得た。
この仮撚加工糸を緯糸に用いた以外は実施例1同様にして得られた織物の風合は実施例1同様にソフトであった。
【0028】
[実施例3]
実施例2において固有粘度の異なるポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを用いた以外実施例2同様にして84dtex/36fのサイドバイサイド型の複合繊維を得た。
得られた複合繊維の固有粘度は、ポリトリメチレンテレフタレート側が[η]=0.98、ポリエチレンテレフタレート側が[η]=0.60であった。又、初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率及び伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率及び伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力は、各々71cN/dtex、1%及び100%、70%及び95%、0.08cN/dtexであった。
この複合繊維を緯糸に用いた以外は実施例1同様にして得られた織物の風合は実施例1同様にソフトであった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の減量加工方法は、特にポリトリメチレンテレフタレート系繊維と減量速度の異なる繊維素材との組み合わせにおいて充分な風合変化が得られるものであり、特に織物(婦人服等アウターや裏地等)の減量加工方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維からなる布帛にアルカリ剤を付与し、次いで熱処理することによる減量加工方法であって、マイクロ波により熱処理することを特徴とする減量加工方法。
【請求項2】
布帛が、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維とポリエチレンテレフタレート系繊維が混用されたものであることを特徴とする請求項1に記載の減量加工方法。
【請求項3】
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であることを特徴とする請求項1又は2に記載の減量加工方法。
【請求項4】
潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維が、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートから構成されることを特徴とする請求項3に記載の減量加工方法。

【公開番号】特開2006−328588(P2006−328588A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154041(P2005−154041)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】