説明

渦電流センサおよび信号処理

動的近接センサとして使用し、特にターボ機械のブレード先端のタイミングおよびクリアランスを監視するための渦電流センサであって、その渦電流センサは近接領域内に磁界を生成し、かつ導電性物体がその領域を通過する際に上記磁界により生成された渦電流の効果を検出するのに使用する共通コイル(6)を有する。コイルは、長方形または他の細長断面の巻型に巻かれ、そのため、コイル自体も細長断面となる。このことにより、細長断面の物体(タービンブレード先端(11)など)の通過を検知するのに使用される時の装置の分解能を改善することができる。この時、センサコイルは、短い方の横断面寸法が各物体の短い方の横断面寸法と位置合わせされて配向される。さらに、ブレード先端タイミングの「トリガ」点を導出するためにそのような装置からの信号波形を処理する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流センサおよび物体の通過を検出するための動的近接センサとしてのそのようなセンサの使用に関する。本発明は、特に、ターボ機械、より詳細には、ガスタービンエンジン内のファン、圧縮機、タービンのブレードに関して、ブレード先端のタイミングおよびブレード先端のクリアランスを監視するためのそのようなセンサの使用に関する。しかしながら、原則として、本発明は、例えば、車両のステアリング機構内の摺動ラックの歯を含むさまざまな種類の機械で回転または線形運動に関わらず、ロータ、ベアリング、ギアなどのさまざまな可動部品の監視に適用できる。
【背景技術】
【0002】
稼働中のガスタービンエンジンのブレードは、運転中に動的にブレードを監視することは困難であるので、運転と運転の間に頻繁に検査する必要がある。しかしながら、ブレードを運転中に監視することで、ブレードを抑え気味ではなく、より実際の機械的制限の近くで、このためより高レベルの効率で運転することができる。このような監視はさらに、ブレードの故障を招く恐れのある任意の事象をとらえることもでき、したがって、安全性を改善することができる。一般に、このような監視は兆候および寿命使用量の診断を改善し、したがってより計画的なメンテナンスによって潜在的に全体の寿命コストを低減し、エンジンの有効性を増大させることができる。
【0003】
FOD(異物損傷)よるガスタービンのロータブレードの劣化、砂または水などによる腐食、LCF(低サイクル疲労)、HCF(高サイクル疲労)は、全てブレードの寿命を制限する。現在では、これは、エンジンの休止時間の間に頻繁に検査することで監視されなければならない。しかしながら、この監視の少なくとも一部に対応する1つの方法は、先端のタイミングを使用によるものである。この方法は、個々のブレード先端が選択された位置またはロータケーシングの周囲の位置に到着する到着時間を測定し、到着時間の変動を使用してブレードの振動状態や振幅を計算し、そこから個々のブレードの物理的状態(「調子」)に関する推論が導出される。この方法は、ブレードが取り付けられるディスクまたはドラムの亀裂やブレードの動的挙動により現れる可能性のある他の状態を監視するのに使用されてもよい。先端タイミング計測は、プログラムの開発時にファンおよび圧縮機両方の装着試験(rig test)に使用されてきた。この計測は、ケーシングアセンブリ内に取り付けられた光プローブを使用する。光プローブは、通過するブレードの先端に狭い幅のレーザ光線を照射する。各ブレード先端が光線の光路に入る時、光は関連する光検出器に反射され、それに応じてブレード先端の到着時間が得られる。しかしながら、光学系は汚れによる汚染に弱く、光発信機または光受信機のいずれかが遮られた場合には作動しなくなるので、このシステムには問題がある。したがって、実際には、これらのシステムは頻繁にクリーニングする必要がある。この理由のためにシステムは稼働中の使用に適さない。光学系自体がきれいに保たれても、ブレード先端が汚染されて、的確に光を反射させることができない場合、適切な光信号の受信に関して問題が生じる可能性がある。部品間の光路が遮られない必要があるので、部品がロータケーシングの内面に取り付けられなければならない(部品を損傷させ、および/またはガス経路を遮る可能性がある)、またはプローブを通すためにケーシングに適切な開口部が開けられなければならない(構造物および/またはガスの機密性を損なう可能性がある)ということである。さらに、これらのシステムには制限された運転温度範囲があり、(タービンのブレード先端タイミングを含む)エンジンの高温領域での使用に適さない。
【0004】
ターボ機械のブレード先端タイミングに提案されてきた別のクラスのセンサは、渦電流センサである。このタイプのセンサは、対象物体が通過する領域に磁界を生成するという原理に基づいている。対象物体が導電性材料であれば(一般に、ガスタービンエンジンのファン、圧縮機、タービンのブレードは導電性材料である)、各物体が磁界に入る時に渦電流は各物体の表面で発生される。これらの渦電流は順に、二次磁界を生成する。二次磁界は、センサのコイルにより検出され、ブレード先端タイミングを求めるために上述した光システムの反射と同じように物体の到着時間を判断するのに使用されることが可能である。渦電流センサは、光プローブのように頻繁にクリーニングする必要がなく、ガスタービンロータの先端タイミングに使用される時に光プローブと同じような運転温度の制限の影響を受けない。さらに、渦電流センサは必要に応じて、そのような構造物が主に強磁性材料製でない場合、センサが生成する磁界がそのような構造物を通過可能なように、ロータケーシングの外側もしくは少なくともロータケーシングとブレード先端に近接するケーシングの内側の周囲に設けられる従来の犠牲摩擦ストリップとの間に取り付けられる場合もある。また、渦電流センサの出力はある程度通過する対象物体と検知コイルとの間の距離に依存するため、このタイプのセンサはブレード先端のクリアランスおよび先端のタイミングに関する情報を提供できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一次磁界が永久磁石により生成され、物体を通過する際に渦電流により誘起される一次磁界の変動が関連コイルにより検知される「受動」型、および一次磁界が1つ以上のコイルにより生成され、物体を通過する際に得られる渦電流により生成される磁界が同一または異なるコイルにより検知される直流交流駆動の「能動」型などの種々の形態の渦電流センサが既知であるが、本発明は、より詳細には、一次磁界の生成と二次磁界の検知との両方に同じコイルが使用される交流式センサに関する。このタイプのセンサは、構造的に小型かつ軽量であり、動きの速いロータブレードなどと使用するのに十分に高い周波数応答を有するためである。しかしながら、このタイプの利用可能なセンサは、従来型の円形断面の巻型にコイルが巻かれたものであるが、上述の光システムに比べて分解能が低いことがわかっている。つまり、光ビームの直径(典型的には1から3mm)がブレード先端の厚さ(典型的には3から5mm)以下であるので、幅の狭いレーザ光線により画定される領域に典型的なブレード先端が出入りするのに対して光プローブの応答はほぼ瞬間的であり、光システムは、典型的には、ブレードのそれぞれの通過に応答してほぼ方形波の信号を出力し、信号の前縁が各到着時間を正確に確定する。渦電流センサを使用して十分な分解能を達成するには、同様に狭く画定された磁束領域が必要である。しかしながら、磁束領域は、コイル直径よりも大きい。さらに、磁束が軸方向にコイルから延びる範囲はコイルの直径に比例するため、コイルサイズでセンサの範囲が決まる。典型的な稼働中のターボ機械のファンブレードは、ケーシングとブレード先端との間に約5から7mmの隙間を有する。渦電流センサは、コイル直径の約半分の範囲を有する。これは、このタイプの利用可能なセンサは、ブレード通過を検出できるためには直径10から14mmの領域内にコイルを有する必要があるということであるが、このことが分解能を低下させる。すなわち、磁束はブレードの先端の厚さに比べて広範囲に延び、渦電流センサにより得られる出力は、光システムの場合に比べて、立上りおよび立下りエッジが実質的に遅く、実質的に長い時間周期に及ぶ信号となってしまう。このことが、同じ精度でそれぞれの到着時間を確定するのを困難にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は利用可能な渦電流センサの上述した欠点に対処することを目的とし、この態様では、本発明は細長断面の1つ以上の導電性物体の領域の通過を監視するための装置にある。上記装置は、上記領域内に磁界を生成し、かつ上記領域を通過するそのような物体内で上記磁界により生成される渦電流の効果を検出するのに使用する共通コイルを備え、上記コイルは細長断面で、各物体が上記領域を通過する際に上記コイルの短い方の横断面寸法の向きが各物体の短い方の横断面寸法とほぼ位置合わせされて配置される渦電流を備える。
【0007】
この点において、そのようなセンサのコイルが細長断面、つまり長方形断面もしくは楕円形断面の巻型に巻かれている場合、装置の範囲は、細長コイルと巻線の数が同じで、直径が細長コイルの長い方の横断面寸法に等しい円形コイルを有する装置の範囲と等しいが、各領域を通過する(ターボ機械のブレードの先端などの)それ自体が細長断面である物体の検出に関しては、細長コイルの短い方の横断面寸法の向きが物体の通過時に物体の短い方の横断面寸法とほぼ位置合わせされる場合には、その分解能は円形コイルに比べてかなり改善されることが分かっている。好ましくはセンサコイルの短い方の横断面寸法は、各物体の短い方の横断面寸法と略同一であり、好ましくはそれ未満である。この点において、「物体」とはより正確には、コイルにより生成された磁界により画定される領域を通過する物体の一部を指す。
【0008】
本発明はまた、細長断面の1つ以上の導電性物体の領域の通過を監視する方法にある。上記方法は、上記領域内に磁界を生成するのに使用し、かつ上記領域を通過するそのような物体内で上記磁界により生成される渦電流の効果を検出するのに共通コイルを備え、上記コイルは細長断面で、各物体が上記領域を通過する際に上記コイルの短い方の横断面寸法の向きが各物体の短い方の横断面寸法とほぼ位置合わせされて配置される渦電流センサを操作するステップを含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、ターボ機械のブレード先端のタイミングのために渦電流センサを使用することに伴う別の問題に関する。つまり従来の光システムに勝る渦電流センサの利点は、渦電流センサがブレード先端のクリアランスおよび先端のタイミングに関する情報を提供できる点にあることは上述した。一般に、ターボ機械のロータに嵌合されるブレードの長さは、ブレードごとにわずかに異なる傾向があり、渦電流センサの信号はブレード先端とコイルとの間の距離に依存するので、得られる信号振幅はブレードごとに異なる傾向がある。これが実際にはブレード先端のクリアランスの変動を判断するのに有用であるが、到着時間の情報の抽出が不正確になる可能性がある。したがって、以下でより詳細に説明するように、本発明はさらに、谷で分けられたピークを持つ複数の連続波を有する信号波形を処理する方法にある。方法は、各波形に対して、各々のピークの振幅と関連する谷の振幅とを取り出すステップと、上記ピークの振幅と谷の振幅との間が特定の割合の振幅を算出するステップと、上記割合の振幅に対応する各波形の立上りまたは立下りエッジの時間的位置を判断するステップとを含む。
【0010】
ここで、添付図面を参照して、例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従って使用される渦電流センサの好適な一実施形態の軸方向断面図であり、図2のラインI−Iに沿った断面図である。
【図2】図1のセンサの端面図である。
【図3】説明を容易にするためにコイルが省略された、図1に対して直角方向に見た図1および図2のセンサの側面図である。
【図4】典型的なファンブレード先端の端面図であり、先端タイミングに使用される時のブレード角および軌道に関する図1から図3のセンサの最適な配置を示す図である。
【図5】本発明の別の態様に従って、波形から先端タイミング情報の抽出を示す図である。
【図6】本発明に従って先端タイミングおよび先端クリアランスのデータを導出するためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図3では、図示されたセンサは、装置の所要の運転温度範囲に応じて、成型プラスチックまたはセラミック製の本体1を有する。この本体は、一端部に、例えば、ロータブレードのリングを囲むターボ機械のケーシングなどに装置を固定するためのボルトなどを受承するための取り付け孔3を備える円形フランジ部2を有する。本体1は、フランジ部2から前方に延びて、本体部とエンドプレート5との間に配設された巻型4を備えるボビン部で終わる。特に、図2の破線で示されるように、図1から図3に示された巻型の寸法を比較すると、巻型4は、この例では、長い辺と短い辺の寸法が約2:1の長方形断面である。この巻型に、図1でのみ概略的に示されるようなコイル6が巻回される。したがって、コイル6も長方形断面となる。典型的には、装置の所要の運転温度範囲に応じて、樹脂被覆された銅線または酸化物もしくはセラミック被覆されたニッケル線からなるコイルが巻かれる。コイルのコアは、本体1のプラスチックまたはセラミック材料となるので、本実施形態では、強磁性コアではない。本体1の孔およびスロット7から10は、導線(図示せず)がコイル6を遠隔の電源や処理電子機器に接続するための手段になる。
【0013】
このセンサの使用時に、例えば、ガスタービンエンジン内のファン、圧縮機および/またはタービンのブレードの先端タイミングおよび/または先端クリアランスを監視するために、当業者には理解できるが、コイル6は交流電流により駆動されて、コイルの周囲でエンドプレート5の前方の領域に広がる交流磁界を生成する。ターボ機械のブレードの通過周波数が典型的には10KHz程度であるブレード先端タイミングに使用するために、コイルは1MHz程度の周波数で駆動されることになる。各々の導電性ブレード先端がこの磁界が広がる領域を通過する際に、各先端の表面に渦電流が誘起される。これらの渦電流は、順にセンサコイル6内に二次電圧を誘起する二次磁界を生成する。これがコイルの誘導性リアクタンスを変化させる。この点においては、コイルとブレード先端との間の相互作用は疎結合の変圧器の巻線間の相互関係と類似している。コイル6は一定電流で駆動され、その電圧は監視されて、(整流した時に)各々が各ブレード先端のセンサ通過を示す一連の波形を有する信号が出力される。
【0014】
図示されたセンサのターボ機械の先端タイミングの分解能を最大限に引き出すために、巻型4のコイル6の短い方の横断面寸法が、磁界を通過する各ブレード先端の一部の厚さ方向に位置合わせされるように、言い換えれば、各翼弦位置のブレード先端のキャンバ線に垂直に位置合わせされるようにセンサが取り付けられる。これは、図4で概略的に示されている。図4では、ファンブレード11の先端は真横から見て典型的な入射角αを有し、センサを通過する移動(回転)方向は矢印Rで示されている。先端がセンサを通過する時のブレード先端のキャンバ線(破線で示された)に対するセンサのコイル6(エンドプレート5と共に示されている)の最適な配置は、この図面内では重ね合わせられている。
【0015】
図5では、図1から図3に関して上述された種類の渦電流センサが、上述したように図4を参照してブレード先端タイミングに使用される時のその渦電流センサからの典型的な処理出力信号の波形が示されている。この波形は、ターボファンエンジンの生産工程において、ファンケーシングに嵌合された実験的なセンサを試行して得られたトレースから一部抜き出したものである。図に見られるように、上記波形は一連の波(図面ではWからWの3つの波のみが示されている)を有し、その各々が個々のファンブレード先端のセンサ通過を表している。波形のピーク振幅は変動すると予想され、これはブレードごとの先端クリアランスの変動を示す(ファンの多回転で見た場合の完全なトレースでは、例えば、振動の影響および/またはブレードの温度変化に起因する回転ごとの個々のブレードの先端クリアランスの変動を示す)。広範な温度範囲にわたって運転する場合、温度に伴うコイル6の抵抗の変化に起因するこれらのピーク振幅の変動も考えられる。このような場合、コイルの温度は、例えばサーモカップルを使用して監視されて適切に補正が加えられる。しかしながら、このような波形から正確な先端タイミングの情報を抽出するためには、「トリガ」点として働くための各波形上の一致位置を選択して、次の振動モードなどの算出のために到着時間を確定する必要がある。
【0016】
仮に各波形のピーク振幅が各々の「トリガ」点と見なされる場合、若干不正確さにつながる可能性がある。つまり、波形上に高周波のノイズがあれば、任意の特定の波形における実際の振幅の最も高い点の時間的位置は「実」ピークの両側の時間範囲で生じる可能性があるということであり、「実」振幅はピーク領域ではゆっくりと変化しているので、この時間範囲は「実」ピークに対する偽時間的位置の選択を行う機会としては、かなり大きくなる可能性がある。一方、各波形の「トリガ」点を規定するのに固定振幅値が選択される場合も、不正確さにつながる可能性がある。これは、ピーク振幅と波形の全幅との両方がブレードごとに、また個々のブレードの回転ごとに変動するためであり、その結果、さまざまな波形に対する固定振幅値が発生する時間的位置は、波形の全体の形状におけるさまざまな相対位置で発生することになる。
【0017】
本発明で採用されたこの問題に対する解決策は、以下の通りである。各波形に対して実際のピーク振幅とその前の谷の最小振幅との両方が、それらが発生する実際の時間的位置に関係なく取り出される。次に、谷とピークとの間の所定の割合(図示された例では50%)の振幅が算出され、この振幅が発生する波形上の時間的位置が判断される。これらの各「トリガ」位置は、図5では波WからWの立下りエッジで発生するTからTで示されている。あるいは、これらの「トリガ」位置は、各波形に対して同じエッジが選ばれるのであれば各波形の立上りに適用されてもよい。各波形の立上りおよび立下りは、典型的には、ブレード先端の形状が非対称であるためピークに対して非対称である。
【0018】
「トリガ」点を規定するこの方法の効果は、各波形の全体の形状に対する「トリガ」点の時間的位置決めの一致度をより高めることである。測定されたピークと谷の振幅には、ノイズがあるために「実」振幅に比べて幾分誤差がある場合があるが、そのような誤差の影響は、各波形に合わせた方法で波の急激な立下り(または立上り)エッジ領域で発生する各「トリガ」点の振幅を選択することにより最小限に抑えられる。この領域では、エッジに沿った振幅の任意の誤差割合は時間的位置のごくわずかな誤差割合に反映される。
【0019】
上述したように各波形の「トリガ」点を規定するのに必要な処理は、アナログ電子機器を使用して容易にリアルタイムで達成される。また、図5では、パルスPからPなどを有する方形波形が生成されて、「トリガ」点に一致されているのが示されている。この方形波形は、例えば、本明細書の導入部で説明された光検知システムからの矩形波信号を処理するために開発された既存の機器/ソフトウェアを使用して、先端タイミング情報のさらなる処理のためのより便利な形となる。
【0020】
上述の信号処理方法は本発明から独立した態様であり、本発明の第1の態様の他の種類の渦電流センサ、容量性もしくはインダクタンスタイプの近接センサ、または実際に同じ一般的な種類の波形を生成する任意の形態の機器により生成される波形からの情報を抽出するのに有用であると考えられる。
【0021】
このような波形からブレード先端タイミングのための「トリガ」点を規定する代替の方法は、高帯域の生信号をデジタル化し、データをフィルタリングし、カーブフィッティングして、後でブレードの到着時間を判断するのに使用されるピークを見つける方法である。生信号のサンプリング周波数は、生データを取り込むために十分に高い(少なくともkHz程度)ものでなければならず、データは処理されるために保存されなければならない。ほぼリアルタイムのブレードの調子の監視情報が必要である場合には、プロセッサの周波数は十分に高いものでなければならず、何時間も監視する場合必要な記憶容量は大きくなる。一方、本発明の信号処理方法は、それぞれの谷/ピークを決めて、リアルタイムのアナログ電子機器を使用して、デジタル化または拡張データ記憶を必要とせずに対応する「トリガ」点を判断することができる。それぞれの通過ブレードからの「トリガ」点のみが記憶されなければならない唯一の値であり、このことでファイルサイズがかなり小さくなり、あまり記憶容量を必要とせずにデータに相当する分の日数を記録することができる。
【0022】
図5は、本発明のガスタービンエンジン60から先端タイミングおよび先端クリアランスデータを導出するためのシステムの概略図である。符号61は、図1から図3を参照して上述された種類の渦電流センサで、図4を参照して説明されたように設定された渦電流センサを指し、符号62はセンサドライバおよび図5を参照して上述されたような波形やトリガ点を導出するためのトリガ/信号処理電子機器を指し、それと一緒に関連する電源63を示す。先端クリアランスデータは、ユニット62から直接出力され、そのユニットからのブレード到着時間のパルス信号は、各ロータシャフトの完全な回転を検知する別の従来の装置65からの信号と共に先端タイミングデータの処理および分析のためにコンピュータ64に送られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長断面の1つ以上の導電性物体の領域に磁界を生成し、かつ前記領域を通過するそのような物体内の前記磁界により生成される渦電流の効果を検出するのに使用する共通コイルを備え、前記コイルが細長断面であり、各物体が前記領域を通過する際に前記コイルの短い方の横断面寸法の向きが各物体の短い方の横断面寸法とほぼ位置合わせされて配置される渦電流センサを備える、前記領域の通過を監視するための装置。
【請求項2】
前記コイルの短い方の横断面寸法が、各物体の短い方の横断面寸法と略同一である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コイルの短い方の横断面寸法が、各物体の短い方の横断面寸法未満である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記コイルが、略矩形または楕円形断面のコイルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記コイルに交流電流を印加するための手段と、物体を通過する際の渦電流の発生に起因する前記コイルの誘導性リアクタンスの変化を検出するための手段とをさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
ブレード先端の通過を監視するように構成された、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置を内部に備えるターボ機械。
【請求項7】
細長断面の1つ以上の導電性物体の領域に磁界を生成し、かつ前記領域を通過するそのような物体内の前記磁界により生成される渦電流の効果を検出するのに共通コイルを備え、前記コイルが細長断面であり、各物体が前記領域を通過する際に前記コイルの短い方の横断面寸法の向きが各物体の短い方の横断面寸法とほぼ位置合わせされて配置される渦電流センサを操作するステップを含む前記領域の通過を監視する、方法。
【請求項8】
請求項2から5のいずれか一項に記載の装置の使用により実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ターボ機械のブレード先端のタイミングおよび/またはクリアランスを監視する際の請求項7または8に記載の方法の使用。
【請求項10】
谷で分けられたピークを有する複数の連続波を備える信号波形を処理する方法であって、各波形に対して、各々のピークの振幅と関連する谷の振幅とを取り出すステップと、前記ピークの振幅と谷の振幅との間が特定の割合の振幅を算出するステップと、前記割合の振幅に対応する各波形の立上りまたは立下りエッジの時間的位置を判断するステップとを含む、方法。
【請求項11】
方形波形を前記時間的位置に一致させるステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記信号波形が、渦電流センサから導出されたものである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記信号波形が、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置の渦電流センサから導出されたものである、請求項13に記載の方法。
【請求項14】
ターボ機械のブレード先端タイミングを監視する際の請求項10から13のいずれか一項に記載の方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−531954(P2010−531954A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514114(P2010−514114)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002233
【国際公開番号】WO2009/004319
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(501352882)キネテイツク・リミテツド (93)