説明

温室の屋根構造

【課題】合成樹脂製フィルムを屋根材として用いた温室において、フィルムの張り具合を容易に調節する。
【解決手段】温室の屋根は、フィルム定着用パイプ同士の間に、フィルムを下方から支えるだけのフィルム支持用パイプが2本以上位置する様に構成される。フィルム定着用パイプ3は、左右の柱5,6から斜め上方に伸びる様に配置された傾斜部材7,8によって構成される三角形状枠部の上にスライド支持金具11,12を介してスライド可能に設置される。また、スライド支持金具11,12間のほぼ真ん中辺りには、突出量調節可能に螺合されたネジ棒部材21と、ネジ棒部材21の上端に取り付けられ、フィルム定着用パイプ3の中程を上方から押さえる押さえ金具22とが取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製フィルムを張って構成される温室の屋根構造に係り、詳しくは、フィルムを被覆した後にテンションを調節することのできる温室の屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示す様に、フレーム毎に設置した取付レールに固定された縦ガイドレールの間にシートを展張したビニールハウスが知られている(特許文献1)。この特許文献1のビニールハウスは、フレームの間の中央にテンション用中央枠が設けられている。このテンション用中央枠は固定構造となっており、タンバックルを操作することによって張り具合を調節することができる様に掛け渡されたベルトが備えられている。このベルトは、シートの内面側に形成した袋の中に通されている。この結果、タンバックルを操作してベルトを引っ張ることで、シートをしっかりと張った状態にすることができる様になっている。
【0003】
また、図6に示す様に、連棟型温室において、アルミ押型材で形成した谷樋部材に、温室用フィルムの一端を定着したフィルム定着部材を係止するための係止部を突設しておき、フィルム定着部材の裏面に係止部に係合する爪を備えさせ、谷樋部材に突設した位置決め部とフィルム定着部の位置決め部とを引き寄せる様にボルトを締めることによってフィルムの張り具合を調節する様にしたものが提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平7−111831号公報(図3〜5,10,14)
【特許文献2】特開2006−187224号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が提案するテンション調節方法では、袋付きの特殊なシートが必要になるという問題がある。
【0005】
特許文献2の提案では、当該文献の段落0034にも記載されている様に、「同時に複数台の増力装置付引寄金具を使用して、1台毎に少しずつ幅寄せを行うようにして引寄せるという作業を複数台の増力装置付引寄金具に対して繰り返し行うことが必要」となり、テンションを付与する作業に多大な手間を要するという問題がある。
【0006】
そこで、本願は、屋根材として合成樹脂製フィルムを用いる温室において、フィルムの張り具合を容易に調節することができる様にすることを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の温室の屋根構造は、棟の長さ方向に所定間隔で多数配置されるアーチパイプによって構成された屋根に合成樹脂製フィルムを張って構成される温室において、以下の構成を採用したことを特徴とする。
(1−1)前記多数のアーチパイプは、上面にフィルム定着金具が取り付けられたフィルム定着用パイプと、フィルムを下方から支えるだけのフィルム支持用パイプとから構成され、前記フィルム定着用パイプ同士の間には、棟の長手方向に少なくとも1本以上のフィルム支持用パイプが位置する様に構成されていること。
(1−2)前記フィルム定着用パイプは、左右の柱から斜め上方に伸びる様に配置された傾斜部材によって構成される三角形状枠部の上に設置されていること。
(1−3)前記傾斜部材は、前記フィルム定着用パイプの両端をスライド可能に掛け渡すためのスライド支持金具と、該スライド支持金具間のほぼ真ん中辺りに突出量調節可能に螺合されたネジ棒部材と、該ネジ棒部材の上端に取り付けられ、フィルム定着用パイプの中程を上方から押さえる押さえ金具とを備えていること。
【0008】
本発明の温室の屋根構造によれば、フィルム定着用パイプのフィルム定着金具に屋根構成用の合成樹脂フィルムを定着した後、ネジ棒部材を回転させてフィルム定着用パイプの中程を下方へ引き下げる。このとき、フィルム定着用パイプの両端は、スライド支持金具によってスライドする。こうしてフィルム定着用パイプを下方に引き下げると、途中のフィルム支持用パイプの上面に合成樹脂フィルムの下面がしっかりと当接し、フィルムにテンションが付与される。
【0009】
ここで、途中のフィルム支持用パイプを上方へ押し上げることによっても同様の状態となるものの、例えば、フィルム定着用パイプ間に2本以上のフィルム支持用パイプが設置されている場合には、押し上げたフィルム支持用パイプの隣のフィルム支持用パイプにおいてはフィルムがパイプから離れることとなり、十分な張り具合にすることができない。従って、フィルム支持用パイプを押し上げる様に構成する場合は、全てのフィルム支持用パイプを押上可能な構造とすると共に、各フィルム支持用パイプの押上量を少しずつ調節しなければならず、従来技術に似た手間が必要になる。
【0010】
本発明は、フィルム支持用パイプを押し上げるのではなく、フィルム定着用パイプを引き下げる構造としたことにより、引き下げ操作によってフィルムは中間位置のフィルム支持用パイプの上面にしっかりと押し付けられるから、テンション付与作業の手間を減少することができる。また、中間のフィルム支持用パイプが2本以上存在する場合には、アーチパイプを上下動させるための機構の設置数を少なくすることができる。
【0011】
ここで、本発明の温室の屋根構造においては、さらに、以下の構成をも採用することができる。
(2−1)前記スライド支持金具は、U字状に曲げられて、前記傾斜部材の側面を挟む様にして取り付け得るU字部品と、該U字部品の曲がり部分に固定された筒状部品とから構成され、前記傾斜部材を棟の長さ方向に貫通する軸に対して回動可能な状態に取り付けられていること。
【0012】
かかる構成をも採用することにより、テンション調節の作業を行う際のフィルム定着用パイプの動きがスムーズになり、フィルムに対して無理な力が加わるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、合成樹脂製フィルムを屋根材として用いた温室において、フィルムの張り具合を容易に調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態について図1〜図4を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
実施形態の温室は、棟の長さ方向に所定間隔で多数配置されるアーチパイプによって構成された屋根に合成樹脂製フィルムを張って構成される。この屋根1は、図1に示す様に、上面にフィルム定着金具2が取り付けられたフィルム定着用パイプ3と、フィルムを下方から支えるだけのフィルム支持用パイプ4とから構成され、フィルム定着用パイプ3,3同士の間には、棟の長手方向に2本以上のフィルム支持用パイプ4が位置する様に構成されている。
【0016】
図2に示す様に、フィルム定着用パイプ3は、左右の柱5,6から斜め上方に伸びる様に配置された傾斜部材7,8によって構成される三角形状枠部の上に設置される。この傾斜部材7,8の両端には、フィルム定着用パイプ3の両端をスライド可能に掛け渡すためのスライド支持金具11,12と、スライド支持金具11,12間のほぼ真ん中辺りに突出量調節可能に螺合されたネジ棒部材21と、ネジ棒部材21の上端に取り付けられ、フィルム定着用パイプ3の中程を上方から押さえる押さえ金具22とが取り付けられている。
【0017】
傾斜部材7,8は、鋼製の角パイプで構成されている。また、各アーチパイプ3,4は鋼管で構成されている。また、左右の傾斜部材7,8の接合部分には、棟木9が棟の長さ方向に連続する様に取り付けられている。フィルム定着金具2は、フィルム定着用パイプ3の上面に上向きで、、棟木9の頂上に左右外向きで、谷樋10の上部に上向きで、それぞれ取り付けられている。
【0018】
スライド支持金具11,12は、鋼板をU字状に曲げられて傾斜部材の側面を挟む様にして取り付け得るU字部品11a,12aと、U字部品の曲がり部分に溶接固定された筒状部品11b,12bとから構成される。筒状部品11b,12bには、鋼製パイプを用いる。そして、スライド支持金具11,12は、傾斜部材7,8に対して、棟の長さ方向に貫通する軸の周りに回動可能な状態となる様にボルトで取り付けられている。
【0019】
ネジ棒部材21は、下端に六角部21aを備えた長いボルト21bで構成され、傾斜部材7,8の裏面に溶接固定されたナット7a,8aに螺合されている。このナット7a,8aが取り付けられる部分には、鋼製のコ字状プレート7c,8cが補強用としてボルトで固定されている。
【0020】
押さえ金具22は、鋼板を山形に曲げた山形プレート22aと、鋼板を台形に折り曲げた台形プレート22bとをボルトで締めて組み立てたものとなっている。
【0021】
本実施形態においては、フィルム定着用パイプ3のフィルム定着金具2に屋根構成用の合成樹脂フィルムを定着した後、ネジ棒部材21を突出量を減らす方向に回転させる。このとき、フィルム定着用パイプ3の両端は、スライド支持金具11,12の回動と、筒状部品に沿ったスライドによって無理なく曲率を変化させる。そして、フィルム定着用パイプ3が全体として下方に引き下げられる。この結果、途中のフィルム支持用パイプ4の上面にはフィルムの下面がしっかりと当接し、フィルムにテンションが付与される。
【0022】
以上、発明を実施するための最良の形態としての一実施形態を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態の温室の屋根の概略斜視図である。
【図2】実施形態の温室の屋根構造を示す正面図である。
【図3】実施形態におけるスライド支持金具を示し(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図4】実施形態におけるネジ部材及び押さえ金具を示す正面図である。
【図5】特許文献1の説明図である。
【図6】特許文献2の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1・・・屋根
2・・・フィルム定着金具
3・・・フィルム定着用パイプ
4・・・フィルム支持用パイプ
5,6・・・柱
7,8・・・傾斜部材
7a,8a・・・ナット
7c,8c・・・コ字状プレート
9・・・棟木
10・・・谷樋
11,12・・・スライド支持金具
11a,12a・・・U字部品
11b,12b・・・筒状部品
21・・・ネジ棒部材
21a・・・六角部
21b・・・長いボルト
22・・・押さえ金具
22a・・・山形プレート
22b・・・台形プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棟の長さ方向に所定間隔で多数配置されるアーチパイプによって構成された屋根に合成樹脂製フィルムを張って構成される温室において、以下の構成を採用したことを特徴とする温室の屋根構造。
(1−1)前記多数のアーチパイプは、上面にフィルム定着金具が取り付けられたフィルム定着用パイプと、フィルムを下方から支えるだけのフィルム支持用パイプとから構成され、前記フィルム定着用パイプ同士の間には、棟の長手方向に少なくとも1本以上のフィルム支持用パイプが位置する様に構成されていること。
(1−2)前記フィルム定着用パイプは、左右の柱から斜め上方に伸びる様に配置された傾斜部材によって構成される三角形状枠部の上に設置されていること。
(1−3)前記傾斜部材は、前記フィルム定着用パイプの両端をスライド可能に掛け渡すためのスライド支持金具と、該スライド支持金具間のほぼ真ん中辺りに突出量調節可能に螺合されたネジ棒部材と、該ネジ棒部材の上端に取り付けられ、フィルム定着用パイプの中程を上方から押さえる押さえ金具とを備えていること。
【請求項2】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1記載の温室の屋根構造。
(2−1)前記スライド支持金具は、U字状に曲げられて、前記傾斜部材の側面を挟む様にして取り付け得るU字部品と、該U字部品の曲がり部分に固定された筒状部品とから構成され、前記傾斜部材を棟の長さ方向に貫通する軸に対して回動可能な状態に取り付けられていること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−148208(P2009−148208A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329431(P2007−329431)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【特許番号】特許第4105219号(P4105219)
【特許公報発行日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(592160618)イシグロ農材株式会社 (5)
【Fターム(参考)】