説明

温室の換気装置

【課題】 開口部たる窓枠に換気窓の駆動用リンクに干渉することなく網を展張でき、しかもこの展張作業を温室の室内側から行うことができるようにした温室の換気装置を提供すること。
【解決手段】 屋根面,側面又は妻面に設けた窓枠1と、窓枠1に対向して開閉自在に設けた換気窓2と、窓枠1の内側中央に架設したガイド支柱3と、ガイド支柱3に移動自在に取付けたスライダー5と、換気窓2とスライダー5との間に結合したリンク6と、スライダー5に結合されて当該スライダー5を引き上げながら換気窓2を開かせる開用ロープ7とを備えている温室の換気装置において、窓枠1の内側中央に上記ガイド支柱3と対向してガイドフレーム10を架設し、当該ガイドフレーム10に軸方向に沿って形成したガイドスリット11内に上記リンク6をスライド自在に挿入し、同じく上記ガイドスリット11内に上記換気窓2に結合した閉じ用ロープ8を挿入させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニールハウス等の温室の妻面,側面又は屋根面等に形成した温室の換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビニールハウス等の温室内は育成する植物に対して適温に設定する必要があり、そのため、ハウスの妻面、側面又は屋根面に開口部たる窓枠に対向して開閉自在な換気窓を形成し、この換気窓の開閉によって温室内の空気を換気させる換気装置が設けられている。
【0003】
更に、上記開口部を開口した時この開口部から害虫が温室内に侵入するのを防止したり、又は温室内で飼育している蜜蜂等が外部に逃げるのを防止する網を開口部たる窓枠に展張するのが普通である。
【0004】
上記の換気装置としては、例えば、特許文献1に開示されたようなものが開発されている。
【0005】
この換気装置は、温室の妻面に設けた窓枠と、窓枠に対向して開閉自在に設けた換気窓と、窓枠の内側中央に架設したガイド支柱と、ガイド支柱に移動自在に取付けたスライダーと、換気窓とスライダーの両側部との間に結合したリンクと、スライダーに結合されて当該スライダーを引き上げながら換気窓を開かせる開用ロープと、換気窓に結合されてスライダーを引き下げながらこの換気窓を閉じさせる閉用ローブとを備えている。
【0006】
そして、温室内の下方から開閉ロープを引張ると、スライダーがガイド支柱に沿って引き上げられ、このスライダーと連動してリンクを介して換気窓が開く。この全開又は半開した状態の換気窓を閉じる時は同じく温室内下方で閉用ロープを引張り込むと、換気窓が閉じ方向に引き寄せられ、スライダーはこの換気窓に連動してリンクを介して下降する。
【特許文献1】実開平4‐94080号公報(図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示されている温室の換気装置では機能上得に欠陥があるわけではないが、次のような改善が望まれている。
【0008】
即ち、開口部たる窓枠には網が展張されていないので、換気窓が開いている時には外部から害虫が温室内に侵入して育成している植物を喰いあらすおそれがあり、又、逆に温室内で飼育している蜜蜂等が外部に逃げ出してしまうおそれがある。
【0009】
そこで、上記害虫の侵入や蜜蜂等が逃げるのを防止するために開口部たる窓枠に網を展すれば良いが、この場合スライダーの両側部に結合したリンクが窓枠を貫通して換気窓に結合しているため、このリンクが展張しょうとする網と干渉してしまい、窓枠の全域に亘って展張することが出来ない不具合がある。
【0010】
更にリンクと干渉しない位置のみに網を展張する場合においても、展張の作業は温室の室内から行った方が作業性が向上し、雨天等の天気条件にもかかわらず行うことができ、外部より室内側の方が安全であるが、上記従来の換気装置では温室の室内側から網の展張を行う手段が無く、別途この取付手段を設ける必要があり、構造が複雑化し、加工性,組付姓,経済性において不利である。
【0011】
そこで、本発明の目的は、開口部たる窓枠に換気窓の駆動用リンクに干渉することなく網を展張でき、しかもこの展張作業を温室の室内側から行うことができるようにした温室の換気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明の手段は、屋根面,側面又は妻面に設けた窓枠と、窓枠に対向して開閉自在に設けた換気窓と、窓枠の内側中央に架設したガイド支柱と、ガイド支柱に移動自在に取付けたスライダーと、換気窓とスライダーとの間に結合したリンクと、スライダーに結合されて当該スライダーを引き上げながら換気窓を開かせる開用ロープとを備えている温室の換気装置において、窓枠の内側中央に上記ガイド支柱と対向してガイドフレームを架設し、当該ガイドフレームに軸方向に沿って形成したガイドスリット内に上記リンクをスライド自在に挿入し、同じく上記ガイドスリット内に上記換気窓に結合した閉じ用ロープを挿入させたことを特徴とする。
【0013】
この場合、窓枠の内側に当該窓枠を構成する枠体に沿って蟻溝を形成し、上記蟻溝に係止線条を介して温室の室内より網の外周を定着させるのが好ましい。
【0014】
この場合、ガイド支柱とガイドフレームとが窓枠の内側中央上下に起立する上下一対のブラケットを介して架設され、各ブラケットに回転自在に軸支したシープを介して開用ロープと閉用ロープとが温室の室内下方に引寄せられるようにするのが好ましい。
【0015】
同じく、換気窓の内側端部中央に引掛用ブラケットを突設し、他方スライダーに上記引掛用ブラケットに対応するフックを設け、換気窓の全閉時にフックを引掛用ブラケットに係止させるようにしても良い。
【0016】
同じく、リンクは、換気窓を形成する枠体の中央に設けた支持材に回転自在に結合した二又のアームと、スライダーに回転自在に軸支されて上記アームの基端に結合した駆動アームとで構成されているのが好ましい。
【0017】
同じく、ガイド支柱に複数個所切欠きを形成し、スライダーに上記切欠きの一つと選択的に係合するラッチを設け、ラッチがいずれかの切欠きと係合した時当該切欠きの位置でスライダーを停止させることにより換気窓を全開,半開,全閉させるようにしても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、次の効果が得られる。
【0019】
1)各請求項の発明によれば、換気窓の開閉用のリンクがガイドフレームに形成したガイドスリット内にスライド自在に挿入され、しかもこのガイドスリットの部位には網が展張されていないので、このリンクが網と干渉することなくガイドフレームの両側における窓枠の全域に網を展張できる。
【0020】
2)請求項2の発明によれば、窓枠の室内側である内側に当該窓枠を構成する枠体に沿って蟻溝が形成されているのでこの蟻溝を利用して温室内から網の展張作業が行える。従って、この展張作業は、雨,雪,風の天気に影響されることなく行え、又、外部の障害物に影響されずに行うことができるから安全であり、作業性も向上する。
【0021】
3)請求項3の発明によれば、シーブを介して開用ロープと閉用ロープを引寄せて行うため、この牽引操作がスムースに行える。
【0022】
4)請求項4の発明によれば、換気窓の全閉時にフックが換気窓側のブラケットに係止されるので、風や振動が換気窓に作用してもこの換気窓が開くのを防止できる。
【0023】
5)請求項5の発明によれば、リンクが回転自在な二又のアームとこれに結合した回転自在な駆動アームとで構成されているから、換気窓の開閉に伴って各アームが回転方向に変位し、換気窓をスムースに開閉できる。
【0024】
6)請求項6の発明によれば、ガイド支柱に複数個の切欠きを形成し、この切欠き位置でスライダーを停止できるので、換気窓を全開位置から全閉位置に亘って換気窓の開き量を調整でき、従って温室内の温度,湿度をその都度調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図にもとづいて説明するが、本発明の換気装置は、ビニールハウス等の温室における妻面,側面,屋根面のいずれか又は全部に設けるものである。
【0026】
図1乃至図4は、妻面に設けた実施の形態を示し、図5は、屋根面に設けた実施の形態を示す。
【0027】
図5の実施の形態は、構造が妻面に設けたものと同じであるので、同一の構造は同一の符号を符すことで詳細は省略する。
【0028】
以下妻面に設けた換気装置を図1乃至図4にもとづいて説明するが、本発明の温室の換気装置Aは、従来と同じく、妻面に設けた開口部たる窓枠1と、窓枠1に対向してヒンジにより開閉自在に設けた換気窓2と、窓枠1のハウス内である内側中央に架設したガイド支柱3と、ガイド支柱3に移動自在に取付けたスライダー5と、換気窓2とスライダー5との間に結合したリンク6と、スライダー5に結合されて当該スライダー5を引き上げながら換気窓2を開かせる開用ロープ7と、換気窓2を閉じ方向に引張る閉用ロープ8とを備えている。
【0029】
そして、本発明では、更に窓枠1に展張した網9とを備え、更に窓枠1の内側に当該窓枠1を構成する枠体1Aに沿って蟻溝a,b,c,dを形成し、同じく窓枠1の内側中央に上記ガイド支柱3と対向してガイドフレーム10を架設し、当該ガイドフレーム10に軸方向に沿って形成したガイドスリット11内に上記リンク6をスライド自在に挿入し、同じく上記ガイドスリット11内に上記換気窓2の端部中央に結合した閉じ用ロープ8を挿入させ、更に上記蟻溝a,b,c,dに係止線条12を介して温室の室内より上記網9の外周を定着させている。
【0030】
更に、ガイド支柱3とガイドフレーム10とが窓枠1の内側中央上下に起立する上下一対のブラケット13,14を介して架設され、各ブラケット13,14の端部中央に軸24,25を介して回転自在に軸支したシーブ15,16を介して開用ロープ7と閉用ロープ8とが温室の室内下方に引寄せられるようになっている。
【0031】
図2および図3に示すように、換気窓2を形成する枠体2Aの内側端部中央に引掛用ブラケット17を突設し、他方スライダー5に上記引掛用ブラケット17に対応するフック18を設け、換気窓2の全閉時にフック18を引掛用ブラケット17に係止させ、風,振動が換気窓2に作用してもこの換気窓2がかってに開かないようにしている。
【0032】
リンク6は、換気窓2を形成する枠体2Aの中央に設けた支持材19,20に回転自在に結合したV字状に延びる二又のアーム21,21と、スライダー5に回転自在に軸支されて上記アーム21,21の基端21Aに結合した駆動アーム22とで構成されている。
【0033】
更に、図2および図4に示すように、ガイド支柱3に複数個所切欠き23を形成し、スライダー5内に上記切欠き23の一つと選択的に係合するラッチ(図示せず)を設け、ラッチがいずれかの切欠き23と係合した時当該切欠き23の位置でスライダー5を停止させることにより換気窓2を全開,半開,全閉させるようにしている。
【0034】
窓枠1は、図3に示すように、枠体1Aで長方体に形成され、この枠体1Aの室内側である内側にはこの枠体1Aに沿って蟻溝a,b,c,dが形成され、更にこの枠体1Aの室外側である外側にも枠体1Aに沿って他の蟻溝eが形成され、内側の各蟻溝a,b,c,dには係止線条12を介して網9の周囲を定着して窓枠1の内側に網9を展張している。
【0035】
同じく、図2に示すように、この網9の中央はガイドフレーム10の両側に設けた蟻溝f,fに係止線条12を介して定着させており、更に上記外側の蟻溝eにはビニールハウス自体に展張した透明シートを定着させている。
【0036】
換気窓2は、図1に示すように、枠体2Aにより窓枠1に対応して長方体状に形成し、各枠体2Aの外側と各支持材19,20にはこの枠体2Aと支持材19,20に沿って蟻溝gには係止線条12を介して透明シートSを定着させている。
【0037】
窓枠1における上下一対の枠体1A,1Aの内側上下中央にブラケット13,14を起立し、このブラケット13,14にガイド支柱3とガイドフレーム10を間隔あけて二段に取付けている。
【0038】
スライダー5は、内側のローラを介してガイド支柱3に移動自在に取付けられ、このスライダー5の上端に設けたブラケット26に開用ロープ7の端部が結合され、このロープ26は、ブラケット13に設けたシーブ15に巻かれながら室内下方に延びている。
【0039】
図4に示すように、スライダー5には軸27を介して回転自在に結合した駆動アーム22と傾斜するフック18とが設けられており、駆動アーム22に基端21Aが結合されたアーム21,21の先端は換気窓2側の二つの支持材19,20にそれぞれブラケット28,29を介して回転自在に結合されている。
【0040】
閉用ロープ8を結合する換気窓2側のブラケット17は、図2に示すようにコ字状のフレーム17Aとフレーム17A中央の支持片17Bとフレーム17Aに架設したロッド17Cとからなり、支持片17Bに閉用ロープ8の端部が結合され、換気窓2の全閉時にロッド17Cにスライダー5側のフック18が係合するようになっている。
【0041】
次に作動について説明すると、換気窓2が閉じている状態において、温室の室内下方から開用ロープ7を引張り込むと、強制的にフック18がブラケット17のロッド17Cからはずれると共にスライダー5がガイド支柱3に沿って上昇する。この時、スライダー5側の駆動アーム22がガイドスリット11に沿って上昇し、これにより二又アーム21,21が角度を変位させながら押し上げられ、その結果、二又アーム21,21を介して換気窓2が押し開かれる。
【0042】
この時スライダー5を任意の切欠き23の位置を停止するとこの切欠き23の位置に対応して半開又は全開状態となって停止する。
【0043】
他方全開,半開状態の換気窓2を閉じる場合には閉用ロープ8を温室内下方から引張ると、換気窓2自体が閉じ方向に引き寄せられ、これに連動してリンク6が角度を変位して下方に引き寄せられ、同様にスライダー5もガイド支柱3に沿って下降する。
【0044】
全閉位置では、図4に示すように、換気窓2の枠体2Aが窓枠1の枠体1Aに当接して全閉となり、この時自動的にフック18がブラケット17におけるロッド17Cに係合し、全閉状態を維持させる。
【0045】
図5には換気装置Aを温室の屋根面に取付けた状態が示されているが、この換気装置Aは、取付け位置が屋根面にあるだけで、構造,作用,効果は図1のものと同じである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】温室の妻面に設けた換気装置の斜視図である。
【図2】図1の一部拡大斜視図である。
【図3】図1の一部拡大分解斜視図である。
【図4】図1のリンク機構の作動状態を示す拡大側面図である。
【図5】温室の屋根面に設けた換気装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 窓枠
2 換気窓
2A 枠体
3 ガイド支柱
5 スライダー
6 リンク
7 開用ロープ
8 閉用ロープ
9 網
10 ガイドフレーム
11 ガイドスリット
12 係止線条
13,14,17 ブラケット
15,16 シーブ
18 フック
19,20 支持材
21 アーム
22 駆動アーム
23 切欠き
a,b,c,d 蟻溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根面,側面又は妻面に設けた窓枠と、窓枠に対向して開閉自在に設けた換気窓と、窓枠の内側中央に架設したガイド支柱と、ガイド支柱に移動自在に取付けたスライダーと、換気窓とスライダーとの間に結合したリンクと、スライダーに結合されて当該スライダーを引き上げながら換気窓を開かせる開用ロープとを備えている温室の換気装置において、窓枠の内側中央に上記ガイド支柱と対向してガイドフレームを架設し、当該ガイドフレームに軸方向に沿って形成したガイドスリット内に上記リンクをスライド自在に挿入し、同じく上記ガイドスリット内に上記換気窓に結合した閉じ用ロープを挿入させたことを特徴とする温室の換気装置。
【請求項2】
窓枠の内側に当該窓枠を構成する枠体に沿って蟻溝を形成し、上記蟻溝に係止線条を介して温室の室内より網の外周を定着させたことを特徴とする請求項1に記載の温室の換気装置。
【請求項3】
ガイド支柱とガイドフレームとが窓枠の内側中央上下に起立する上下一対のブラケットを介して架設され、各ブラケットに回転自在に軸支したシーブを介して開用ロープと閉用ロープとが温室の室内下方に引寄せられている請求項1又は2に記載の温室の換気装置。
【請求項4】
換気窓の内側端部中央に引掛用ブラケットを突設し、他方スライダーに上記引掛用ブラケットに対応するフックを設け、換気窓の全閉時にフックを引掛用ブラケットに係止させるようにしている請求項1,2又は3に記載の温室の換気装置。
【請求項5】
リンクは換気窓を形成する枠体の中央に設けた支持材に回転自在に結合した二又のアームと、スライダーに回転自在に軸支されて上記アームの基端に結合した駆動アームとで構成されている請求項1,2,3又は4に記載の温室の換気装置。
【請求項6】
ガイド支柱に複数個所切欠きを形成し、スライダーに上記切欠きの一つと選択的に係合するラッチを設け、ラッチかいずれかの切欠きと係合した時当該切欠きの位置でスライダーを停止させることにより換気窓を全開,半開,全閉させるようにしている請求項1,2,3,4又は5に記載の温室の換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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