説明

温室シートの回転伝達装置

【課題】 コイルバネの鉤部に接する入力軸と出力軸の各当接片の摩耗・削損を未然に防止して円滑な回転伝達を維持すること。
【解決手段】 コイルバネ20の鉤部21・22内面と直接する入力軸当接片33にステンレス板50を被着し、またコイルバネ20の鉤部21・22外面と直接する出力軸当接片43にステンレス板51を被着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な回転力を維持する温室シートの回転伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温室シートの回転伝達装置において、ケース内面に密接して配置されるコイルバネの一端部から回転可能に挿入される入力軸は、シートの巻取回転力により、突出した当接片がコイルバネの鉤部を押圧してバネを縮径する方向に作用し、また入力軸に対設した出力軸は、コイルバネの縮径によって回転が伝達されるとともに、シートの巻取軸の荷重によって回転すると当接片が鉤部を押圧してコイルバネを拡径する方向に作用する(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−112356号公報(図1)
【特許文献2】特開2003−199440号公報(図16、図18)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術は、入力軸の当接片がコイルバネの鉤部の内側面に位置するとともに出力軸に突出した当接片がコイルバネの鉤部の外側面に位置し、各軸の回転時にコイルバネ鉤部が夫々の当接片の外面又は内面に直接する仕組みであり、シートの巻き取り・巻き戻しの都度、コイルバネ鉤部が入力軸と出力軸の当接片に密着する。ところで、従来からコイルバネは強靭なピアノ線で形成されているのに対し、入力軸と出力軸は殆どが亜鉛ダイカスト法によっている。ダイカストは鋳造後の寸法が正確で仕上げ加工を殆ど要さず、機械的性質に優れて量産に好適するため、他の素材を用いるよりも製品を安価に提供できる利点があるからにほかならない。しかしながら亜鉛よりもピアノ線のほうが堅牢な性質を有しているため長期使用を繰り返すにつれて入力軸と出力軸の各当接片は摩耗ないし削損し、コイルバネの縮径と拡径の作動にも影響して遂には回転力の伝達損失を生じ、シートの巻き取り・巻き戻しが円滑になされなくなるといった問題に発展する懸念がある。そこで入力軸と出力軸にピアノ線に対向し得る素材を用いれば問題はないものの、上記したようにコスト面での優位性からこれに代わる素材の使用は考慮されないのが実情といえる。
【0004】
本発明はこのような従来技術に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、入力軸と出力軸に特別な加工を施すことなく従来同様の鋳造方法で製造されるが、コイルバネとの衝当が繰り返されても入力軸と出力軸に突設した各当接片が摩耗・削損することがなく、それゆえコイルバネの作動にも何ら影響をすることがないので長期使用を繰り返してもシートの巻き取り・巻き戻しに不具合を生ずることがない温室シートの回転伝達装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために本発明の請求項1では、筒状のケースと、両端部に鉤部を形成し前記ケース内に圧接状に挿入されるコイルバネと、コイルバネの一方から挿入され当接片がコイルバネの鉤部内側に位置してコイルバネを縮径する入力軸と、コイルバネの他方から挿入されて入力軸と対設するとともに当接片がコイルバネの鉤部外側に位置する出力軸からなる温室シートの回転伝達装置において、コイルバネの鉤部内面と直接する入力軸当接片にステンレス板を被着し、またコイルバネの鉤部外面と直接する出力軸当接片にステンレス板を被着してなる温室シートの回転伝達装置を主旨とする。
【0006】
請求項2の発明では、上記した入力軸及び出力軸の当接片に被着するステンレス板を、各当接片の内側に沿って配置することを特徴とする。
【0007】
また請求項3の発明では、入力軸及び出力軸の当接片に被着するステンレス板を、各当接片の外側に沿って配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明における入力軸と出力軸は、従来同様亜鉛ダイカスト法で製作でき、しかもコイルバネと直接する夫々の当接片をステンレス板で被着したため、ピアノ線からなるコイルバネとの衝当を繰り返しても当接片の摩耗・削損は回避でき、したがって従来のように当接片の不具合による回転損失を生ずるおそれがなく、長く正常な回転伝達をすることができるとともに、ステンレス板は入力軸と出力軸の一部に被着すればすむので左程のコスト高となることもなく、製品を安価に提供できる実益もある。
【0009】
請求項2のように、ステンレス板を入・出力軸の各当接片の内側に沿って被着するときは、あらかじめステンレス板を当接片に沿った状態に屈曲形成しておけばよく、そして取り付けはステンレス板の弾性を利用することで当接片に食いつき状となって被着するので手間がかゝらない。
【0010】
請求項3のように、ステンレス板を入・出力軸の各当接片の外側に沿って被着するときは、あらかじめステンレス板を当接片に沿った状態に屈曲形成できる利点に加えステンレス板の厚み分、若干当接片の厚みも増すが、ステンレス板の厚みは0.5ミリ弱で十分であるため入・出力軸の作動に影響せず、またコイルバネとステンレス板の直接する面積が大となるので各当接片の外側が保護されるという副次的効果も所期される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図面を参照して本発明実施の形態を説明すると、図1及び図2において、10は両端を開口した筒状のケースであって、その内側にコイルバネ20が挿入される。コイルバネ20は外径がケース10の内径よりも大となるように巻回され、ケース10に挿入するとその外周面がケース10の内周面を圧接する。コイルバネ20の一方と他方の端部には夫々鉤部21、22が内方屈曲状に形成されている。
【0012】
30はケース10の一方の開口から挿入される入力軸で、40はケース10の他方の開口から挿入され、入力軸30と対設する出力軸である。入力軸30と出力軸40の主体部31、41は略筒状で、各主体部31、41の先端側にはフランジ32、42を介して当接片33、43が突出している。入力軸30の当接片33は後述するように端面円弧状で出力軸40の当接片43は中央が半円状の扇形であり、当接片33と43とは対向し、出力軸40の当接片43には突起Tが形成され、この突起Tは入力軸30の主体部31に形成した凹孔Hと嵌合し、故に入力軸30と出力軸40の相対回転する摺動時に軸心ずれは生じない。
【0013】
50は入力軸30の当接片33に被着したステンレス板であり、当接片33の内側に沿って配置される。ステンレス板50の両端部50aは、当接片33におけるコイルバネ20の鉤部21・22の内面と衝当する両端部33aをカバーするためやゝ逆方向に屈曲形成されている。ステンレス板50は弾性を有して当接片33に食いつき状に密着する。
【0014】
51は出力軸40の当接片43に被着したステンレス板であり、当接片43の内側に沿って配置され、ステンレス板51の両端部51aは、当接片43におけるコイルバネ20の外面と衝当する両端部43aをカバーする位置いっぱいまで形成されている。この場合もステンレス板51は弾性を有して当接片43に食いっき状に密着する。なおステンレス板50、51の厚みは、いずれも0.5ミリ弱程度である。
【0015】
図3はコイルバネ20と、入力軸当接片33との組み合わせを示すもので、(a)のように入力軸30が回転しない状態では円弧状の当接片33はコイルバネ20の鉤部21・22の間にあって両鉤部とは密着しないが、回転すると(b)のように当接片33の片方の端部33aが鉤部21の内面側を押圧してコイルバネ20を巻回方向に巻き締めるためコイルバネ20は縮径される。従来であると当接片が直接鉤部21に衝当するが、図示のように当接片33の端部33aにはステンレス板50を被着しているので、このステンレス板50が鉤部21と直接するため当接片33の摩耗・削損は避けられる。また入力軸30が上記とは逆の方向に回転すると当接片33の他方の端部33aが鉤部22を押圧するが、この場合もステンレス板50が存在するため鉤部22の内面に端部33aが直接することはなく当接片33の摩耗・削損は未然に防止される。
【0016】
図4はコイルバネ20と出力軸当接片43との組み合わせを示すもので、(a)のように出力軸40に回転荷重が作用しない状態では出力軸40はコイルバネ20の鉤部21・22の間にあって両鉤部とは密着しないが、出力軸40に回転荷重が加わると(b)のように当接片43の片方の端部43aが鉤部21の外面側を押圧し、コイルバネ20を巻き戻し方向に付勢して拡径し、ケース10の内面に大きい摩擦力で圧接するとともに出力軸40の回転は停止する。この時コイルバネ20の鉤部21は、ステンレス板51が直接するため、長期使用を繰り返しても当接片端部43aの摩耗・削損は回避される。
【0017】
図5(a)は入力軸30の当接片33の外側に沿ってステンレス板50を被着した他の実施形態を示すもので、この場合もステンレス板50の両端部は当接片33の端部33aまで十分にカバーすること勿論であり、入力軸30の回転によって当接片33がコイルバネ20の鉤部21の内面に臨んでも、ステンレス板50が鉤部21と直接するため当接片端部33aの摩耗・削損は避けられる。
【0018】
図5(b)は出力軸40の当接片43の外側に沿ってステンレス板51を被着した実施形態を示すもので、この場合はステンレス板50の両端部がコイルバネ鉤部21の外面に臨む当接片43の端部43aを抱持状にカバーし、したがってステンレス板51が鉤部21に直接するので当接片端部43aの摩耗・削損は未然に防止される。
【0019】
本発明は、入力軸30と出力軸40の各当接片33、43におけるコイルバネ20の鉤部21、22と接する夫々の端部33a、43aをステンレス板50、51でカバーすることを主旨とするものであるから、両当接片33・43の形状、ステンレス板50、51の形状、取り付け手段等に限定されるものではなく、また厳密なステンレス板だけでなくステンレス板と同効物質の素材で構成することも本発明の自由な実施の範疇に属すること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の回転伝達装置を示す分解図である。
【図2】本発明の概略断面図である。
【図3】(a)、(b)は本発明の入力軸の作動状態を示す説明図である。
【図4】(a)、(b)は本発明の出力軸の作動状態を示す説明図である。
【図5】(a)は入力軸当接片にステンレス板を被着した他の例を示す説明図、(b)は出力軸当接片にステンレス板を被着した他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
10 ケース
20 コイルバネ
21、22 鉤部
30 入力軸
31 主体部
33 当接片
33a 端部
40 出力軸
41 主体部
43 当接片
43a 端部
50、51 ステンレス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースと、両端部に鉤部を形成し前記ケース内に圧接状に挿入されるコイルバネと、コイルバネの一方から挿入され当接片がコイルバネの鉤部内側に位置してコイルバネを縮径する入力軸と、コイルバネの他方から挿入されて入力軸と対設するとともに当接片がコイルバネの鉤部外側に位置する出力軸からなる温室シートの回転伝達装置において、コイルバネの鉤部内面と直接する入力軸当接片にステンレス板を被着し、またコイルバネの鉤部外面と直接する出力軸当接片にステンレス板を被着することを特徴とする温室シートの回転伝達装置。
【請求項2】
入力軸及び出力軸の当接片に被着するステンレス板を、各当接片の内側に沿って配置することを特徴とする請求項1記載の温室シートの回転伝達装置。
【請求項3】
入力軸及び出力軸の当接片に被着するステンレス板を、各当接片の外側に沿って配置することを特徴とする請求項1記載の温室シートの回転伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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