説明

温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造

【課題】温室構造において、アーチパイプにねじれの位置となる方向へ力がかかった場合でもしっかりと固定することのできるアーチ部材のねじれ防止構造を提供する。
【解決手段】曲率の異なる2つのアーチパイプ4,5と棟方向へ配置した横パイプ2とを連結した温室構造において、前記2つのアーチパイプのうちの小アーチパイプ5と前記横パイプ2とを交差状態で連結する一方、大アーチパイプ4と前記横パイプ2との間に平面視略二等辺三角形状の頬杖部材Cを介設し、この頬杖部材Cは、前記大アーチパイプ4を包持する平面視略U字状の包持部50と、同包持部50を頂点として伸延する腕部51とを備え、前記腕部51が前記小アーチパイプ4と前記横パイプ2とが連結された固定部を跨ぐように配設されていることを特徴とする温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用のビニルハウスに代表される温室構造は、アルミや鉄鋼製のパイプ材を組上げ、このパイプ材に沿って合成樹脂フィルムからなるシート材を張設することで構成されている。
【0003】
具体的な温室構造の一例として、棟方向に間隔をあけて並立するように配置された多数のほぼ同形・同大のアーチパイプと、前記アーチ形パイプに沿って棟方向へ配置した横パイプとを配設して組み立てたものが知られている。
【0004】
ところで近年では、前述のシート材を構成する合成樹脂フィルムとして、塩ビ系フィルムよりも耐候性に富むPO系フィルムが多く使用される傾向にある。
【0005】
このPO系フィルムは、伸縮性が少なく高い強度を有するため、アーチパイプの本数を減らした場合でもシート材が破損しにくく、また減らしたアーチパイプの分だけ温室内の影を少なくすることができるという長所を有している。
【0006】
しかしながら、アーチパイプの本数を減らすと、温室構造が強度的に脆弱化するという問題がある。
【0007】
そこで、曲率の異なる2つのアーチパイプを、曲率半径方向に所定の間隙を開けて連結してアーチ部材を形成し、このアーチ部材を用いて温室構造を構築するパイプハウスの補強方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
このアーチ部材を用いた温室構造によれば、温室構造の強度を高めることができるとしている。
【特許文献1】特開2007−300826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のアーチ部材は、構成する各アーチパイプがねじれの位置となるような力を受けると、構造的に弱いという問題があった。
【0010】
しかも、各アーチパイプの断面が円形である場合、アーチパイプ同士がねじれの位置の方向へ動きやすく、強度の観点から更なる改良が求められていた。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、アーチパイプにねじれの位置となる方向へ力がかかった場合でも、十分な強度を生起させることができ、しかも、アーチパイプの断面が円形状であってもしっかりと固定することのできる温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に記載の本発明では、曲率の異なる2つのアーチパイプを、曲率半径方向に所定の間隙を開けて連結してアーチ部材を形成し、同アーチ部材を棟方向に間隔をあけて複数並立すると共に、この複数のアーチ部材と棟方向へ配置した横パイプとを連結した温室構造において、前記2つのアーチパイプのうちの第1のアーチパイプと前記横パイプとを交差状態で連結する一方、第2のアーチパイプと前記横パイプとの間に平面視略二等辺三角形状の頬杖部材を介設し、この頬杖部材は、前記第2のアーチパイプを包持する平面視略U字状の包持部と、同包持部を頂点として伸延する腕部とを備え、前記腕部が前記第1のアーチパイプと前記横パイプとが連結された固定部を跨ぐように配設されていることを特徴とする温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造とした。
【0013】
また、本発明は、以下の点にも特徴を有する。
(1)前記腕部には、伸延方向へ向けて複数条のリブを設けていること。
(2)前記固定部は、第1のアーチパイプを包持する一対のU字状保持部材と、前記U字状保持部材の開口側端部を挿通させる孔部と、前記横パイプを係止する凹状係止部とが形成されたプレート状部材とを備え、前記開口側端部に螺刻した雄ネジを、前記孔部に挿通した状態で雌ネジ部材と螺合させて、前記第1のアーチパイプと前記横パイプとを交差状態で連結固定したこと。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造では、曲率の異なる2つのアーチパイプを、曲率半径方向に所定の間隙を開けて連結してアーチ部材を形成し、同アーチ部材を棟方向に間隔をあけて複数並立すると共に、この複数のアーチ部材と棟方向へ配置した横パイプとを連結した温室構造において、前記2つのアーチパイプのうちの第1のアーチパイプと前記横パイプとを交差状態で連結する一方、第2のアーチパイプと前記横パイプとの間に平面視略二等辺三角形状の頬杖部材を介設し、この頬杖部材は、前記第2のアーチパイプを包持する平面視略U字状の包持部と、同包持部を頂点として伸延する腕部とを備え、前記腕部が前記第1のアーチパイプと前記横パイプとが連結された固定部を跨ぐように配設されていることとしたため、アーチパイプにねじれの位置となる方向へ力がかかった場合でも、十分な強度を生起させることができ、しかも、アーチパイプの断面が円形状であってもしっかりと固定することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造では、前記腕部には、伸延方向へ向けて複数条のリブを設けていることとしたため、腕部の強度を向上させて、アーチ部材のねじれをさらに防止することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造では、前記固定部は、第1のアーチパイプを包持する一対のU字状保持部材と、前記U字状保持部材の開口側端部を挿通させる孔部と、前記横パイプを係止する凹状係止部とが形成されたプレート状部材とを備え、前記開口側端部に螺刻した雄ネジを、前記孔部に挿通した状態で雌ネジ部材と螺合させて、前記第1のアーチパイプと前記横パイプとを交差状態で連結固定したため、シンプルな構成で比較的種々の径のパイプを交差状態で保持することができ、また、組み立てた温室構造の強度計算を容易とすることができ、しかも、アーチパイプの断面が円形状であってもさらにしっかりと固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、曲率の異なる2つのアーチパイプを、曲率半径方向に所定の間隙を開けて連結してアーチ部材を形成し、同アーチ部材を棟方向に間隔をあけて複数並立すると共に、この複数のアーチ部材と棟方向へ配置した横パイプとを連結した温室構造において、前記2つのアーチパイプのうちの第1のアーチパイプと前記横パイプとを交差状態で連結する一方、第2のアーチパイプと前記横パイプとの間に平面視略二等辺三角形状の頬杖部材を介設し、この頬杖部材は、前記第2のアーチパイプを包持する平面視略U字状の包持部と、同包持部を頂点として伸延する腕部とを備え、前記腕部が前記第1のアーチパイプと前記横パイプとが連結された固定部を跨ぐように配設されていることを特徴とする温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造を提供するものである。
【0018】
上述の温室構造は、例えばビニルハウスの如く、棟方向に間隔をあけて並立するように配置された多数のほぼ同形・同大のアーチ部材と、同アーチ部材に沿って棟方向へ配置した横パイプとを配設して組み立てたものと解することができる。
【0019】
そして、本発明は、このアーチ部材のねじれ方向への強度を向上させる役割を果たすものである。
【0020】
ここでアーチ部材や、同アーチ部材を構成する各アーチパイプの形状は、特に限定されるものではなく、半円弧型や切妻型、門型など一般的な温室構造に用いられる形状であれば良い。
【0021】
また、アーチ部材を構成するアーチパイプは、一本のパイプを折曲して形成したものであっても良く、また、複数本のパイプを継いで形成したものであっても良い。
【0022】
また、曲率を違えた2つのアーチパイプは、曲率の大きいパイプが第1のアーチパイプで曲率の小さなパイプが第2のアーチパイプであっても良く、また、曲率の小さなパイプが第1のアーチパイプで曲率の大きなパイプが第2のアーチパイプであっても良い。すなわち、いずれが第1のアーチパイプまたは第2のアーチパイプであっても良い。
【0023】
また、第2のアーチパイプと横パイプとの間に介設した頬杖部材が備える腕部には、伸延方向へ向けて複数条のリブを設けるのが好ましい。腕部は、アーチパイプのねじれ方向への力を支える部材として機能するものであり、この腕部にリブを設けることによって、腕部の強度を向上させることができ、アーチパイプのねじれ方向への変形をより防止することができる。
【0024】
また、前記固定部は、第1のアーチパイプを包持する一対のU字状保持部材と、前記U字状保持部材の開口側端部を挿通させる孔部と、前記横パイプを係止する凹状係止部とが形成されたプレート状部材とを備え、前記開口側端部に螺刻した雄ネジを、前記孔部に挿通した状態で雌ネジ部材と螺合させて、前記第1のアーチパイプと前記横パイプとを交差状態で連結固定するのが好ましい。
【0025】
このような構成とすることにより、横パイプを第1のアーチパイプにしっかりと固定することができ、第2のアーチパイプがねじれ方向へ変形するのを効果的に防止することができる。
【0026】
また、第1のアーチパイプや横パイプの断面が円形状であっても、両パイプを交差状態で強固に固定することができる。
【0027】
以下、本実施形態に係る温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造について、図面を用いながら説明する。図1は、本実施形態に係るアーチ部材のねじれ防止構造を備えた温室Aを示す斜視説明図である。
【0028】
図1に示すように、温室Aは、所定の骨組材によって正面視蒲鉾状の形状に組上げられており、骨組材に沿って合成樹脂フィルムからなるシート材(図示せず)を張設して構築している。
【0029】
すなわち、温室Aは、屋根を形成する複数のアーチ部材1を、構築する温室Aの長手方向へ適宜間隔を隔てて立設するとともに、各アーチ部材1間に、複数の長手状の横パイプ2を連結固定して構成している。
【0030】
また、温室Aの内部には、ハウス用栽培装置6が配設されており、移動装置8を操作することにより、梁材7に沿って温室Aの間口方向へ栽培機9を移動可能に構成している。
【0031】
アーチ部材1は、曲率の小さい大アーチパイプ4と、曲率の大きい小アーチパイプ5との2つの曲率の異なるアーチパイプを備えており、この大小アーチパイプ4,5を曲率半径方向に所定の間隙を開けて、連結部材3により連結して形成している。
【0032】
また、前述の横パイプ2は、アーチ部材1の間隙間を挿通させて棟方向へ伸延するよう固定している。
【0033】
また、各アーチ部材1と横パイプ2との交点P、交点Q、交点Rには、本実施形態に特徴的な構成であるアーチ部材のねじれ防止構造が備えられている。なお、説明の便宜上、まず交点Pにおけるアーチ部材のねじれ防止構造の構成について説明し、その後交点Q及び交点Rにおけるアーチ部材のねじれ防止構造の構成について説明する。
【0034】
図2及び図3に示すように、交点Pにおけるアーチ部材のねじれ防止構造は、横パイプ2、大小アーチパイプ4,5の3本のパイプと、横パイプ2及び小アーチパイプ5を交差状態で連結固定する連結金具Bと、大アーチパイプ4が小アーチパイプ5に対してねじれの位置の方向へ移動するのを規制する頬杖部材Cとで構成している。なお、図2における(a)は交点Pの平面図、(b)は交点Pの斜視図、また、図3は、交点Pの分解斜視図である。
【0035】
横パイプ2と小アーチパイプ5とは、一対(2つ)のU字状保持部材40と、同U字状保持部材40を挿通するプレート状部材20とで構成した連結金具Bによって交差状に連結固定されている。
【0036】
U字状保持部材40は、所定の曲率を有する半円弧状の湾曲扁平体46で2本の脚部41間を連結した形状を有しており、湾曲扁平体46は、U字状保持部材40の閉塞側端部42を構成している。
【0037】
また、この湾曲扁平体46は半円弧状の内側を形成する内側湾曲平面部と、外側を形成する外側湾曲平面部とを備えた断面視略扁平状に形成しており、同湾曲扁平体46を断面視略円形状に形成した場合に比して、内側湾曲平面部で包持する第1のアーチパイプ(本実施形態では小アーチパイプ5)との接触面積を大きくして、後述するナット45を締め込んだ際に第1のアーチパイプにかかる圧力を可及的分散するようにしている。
【0038】
また、湾曲扁平体46を断面視略円形状に形成した場合に比して、同湾曲扁平体46の外側湾曲平面部に接触するシート材に対し、過剰な摩擦や張力がかかるのを防止している。これは、耐候性に優れるが摩擦等に弱いPOフィルムをシート材として使用した場合に有利な構成であり、シート材が破損するのを効果的に防止することができる。
【0039】
U字状保持部材40の脚部41,41には、その中途部から開口側端部43にかけてネジ溝を螺設して雄ネジ44としている。この雄ネジ44には、雌ネジ部材として機能するナット45を螺合可能しており、後述するプレート状部材20を脚部41,41に挿通した上でナット45をきつく締め込むことで、第1のアーチパイプとしての小アーチパイプ5と横パイプ2とを交差状態で保持できるようにしている。
【0040】
プレート状部材20は、左右両側に立設した壁部22を有するプレート状の部材であり、その略中央部には、プレート状部材20を一部凸状に屈曲させて、小アーチパイプ5と同じ方向(横パイプ2と直交する方向)へ伸延する凸条部26を形成している。
【0041】
この凸条部26は、小アーチパイプ5と横パイプ2とを連結固定した際に、横パイプ2がプレート状部材20に及ぼす応力によって、横パイプ2の伸延方向に溝が形成されてプレート状部材20が折れ曲がるのを防止する役割を有している。
【0042】
また、プレート状部材20の壁部22には、上辺部分の略中央部を一部切り欠いて形成した凹状係止部21を備えている。この凹状係止部21は、横パイプ2の位置決めを容易とするためのものである。
【0043】
また、凹状係止部21は、横パイプ2の方向へ向けて漸次拡開する台形状に切り欠いて形成している。これは、様々な太さの横パイプ2に対応可能とすべく形成されたものであり、例えば、使用する横パイプ2を比較的小さな径のものとした場合には、凹状係止部21の底辺部25の1点で係止されることとなる。
【0044】
また、横パイプ2が中程度の径を有するものとした場合には、底辺部25と左右両側辺部24,24の3点で係止されることとなり、さらに大きな径を有する横パイプ2を使用した場合には、左右両側辺部24,24の2点で係止されることとなる。
【0045】
すなわち、凹状係止部21は、横パイプ2の方向へ向けて漸次拡開する台形状に切り欠いて形成したことで、比較的径の小さな横パイプ2から比較的径の大きな横パイプ2に至るまで、広い範囲に亘り骨格材を交差状態で保持固定可能としている。
【0046】
また、プレート状部材20の壁部22と凸条部26との間には、前述のU字状保持部材40の脚部41を挿通するための孔部23を穿設している。
【0047】
この孔部23の形状は、第1のアーチパイプとしての小アーチパイプ5の伸延方向に直交する方向へ長径を有する長孔であって、前述のナット45が雄ネジ44に螺合した状態で挿通しない大きさとしている。
【0048】
この孔部23を上述の長孔とすることにより、U字状保持部材40が包持する第1のアーチパイプ(小アーチパイプ5)の径の大きさに応じて、脚部41,41間の距離を変えた場合であっても、同脚部41,41を孔部23,23に挿通させることができる。
【0049】
また、U字状保持部材40の脚部41,41を開口側へ向けて漸次拡開するようにやや広げた場合でも、同脚部41,41を孔部23,23に挿通させることができるようにしている。
【0050】
本実施形態に係る連結金具は上述してきた構成を備えており、実際に第1のアーチパイプ(小アーチパイプ5)と横パイプ2とを交差状態で固定する際には、一対のU字状保持部材40,40に小アーチパイプ5を包持させ、U字状保持部材40,40間に横パイプ2を配設した状態で、それぞれの脚部41,41,41,41をプレート状部材20の孔部23,23,23,23に挿通させる。
【0051】
この際、プレート状部材20は、凹状係止部21が横パイプ2に当接し、凸条部26が小アーチパイプ5の伸延方向と同じ向きとなるように装着する。また、それぞれの脚部41,41,41,41は、孔部23,23,23,23に対し、やや斜め方向へ挿通する。
【0052】
このような状態で、それぞれの雄ネジ44にナット45を螺合させ、各ナット45を締め込むことで、小アーチパイプ5と横パイプ2とを交差状態で保持固定させている。すなわち、交点Pにおける固定部は上述のように構成されている。
【0053】
特に本実施形態では、雄ネジ44にナット45を締め込むことで保持固定することとしているため、締め付けトルクを一定とすることにより、本実施形態に係る連結金具Bを使用した交点における強度を明確とすることができ、組み立てた温室構造の強度計算を容易とすることができるという長所も有している。
【0054】
なお、締め付けトルクを一定とするためには、例えば、トルク調整機能の付いたインパクトレンチやトルクレンチ等を利用することができる。
【0055】
次に、第2のアーチパイプとしての大アーチパイプ4と横パイプ2との間に介設した頬杖部材Cについて説明する。
【0056】
頬杖部材Cは、大アーチパイプ4を包持する平面視略U字状の包持部50と、同包持部50を頂点として伸延する腕部51,51とを備えており、横パイプ2と連結することにより、同横パイプ2を底辺とする平面視略二等辺三角形状の構造をなす部材である。
【0057】
包持部50は、大アーチパイプ4を包持した状態で頬杖部材C自体を大アーチパイプ4に連結固定するための部位であり、その側面に設けた一対のボルト挿通孔52,52にボルト53を挿通し、ナット54を締め付けることにより固定される。
【0058】
腕部51,51は、包持部50の開口側左右端部を基端とし、同包持部50を頂点として拡開する方向へ伸延する板状の部材であり、その先端部には連結する横パイプ2の伸延方向と略平行となるように折曲して形成した折曲連結部55,55が備えられている。
【0059】
折曲連結部55,55には、横パイプ2と直交する直線状に、横パイプ2の管径以上の幅を隔てて2つのボルト挿通孔58,58が穿設されており、このボルト挿通孔58,58にU字ボルト56を横パイプ2を包持させた状態で挿通し、ナット57,57を締め付けることで頬杖部材Cを横パイプ2に固定するようにしている。
【0060】
また、本実施形態に特徴的には、頬杖部材Cに大アーチパイプ4を包持させた際に、横パイプ2に取り付けられる折曲連結部55,55は、小アーチパイプ5と横パイプ2との交点、すなわち、連結金具Bが取り付けられた部位のそれぞれ左右両側に位置するようにしている。
【0061】
換言すると、頬杖部材Cの腕部51,51は、包持部50の開口側左右端部をを基端とすると共に、その先端部に形成した折曲連結部55,55を、連結金具Bが取り付けられた小アーチパイプ5と横パイプ2とを交差させた交点を中心として、横パイプ2上の左右両側に1カ所ずつ連結することで、包持部50を頂点とし横パイプ2を底辺とした略二等辺三角形状のねじれ防止構造を形成している。
【0062】
なお、ここでは、包持部50から伸延する腕部51の本数を2本としているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、少なくとも上記2カ所に連結するものであれば、さらに腕部51の本数を増やしても良い。
【0063】
このような構造とすることにより、アーチ部材1に対して左右いずれの方向から力が加えられた場合であっても、アーチ部材1のねじれを効果的に防止することができるのである。
【0064】
このようにして、頬杖部材Cは、第2のアーチパイプとしての大アーチパイプ4と横パイプ2との間に介設され、平面視略二等辺三角形状の構造を形成するようにしている。
【0065】
なお、図2(a)に示す腕部51,51が成す角Tの角度は、70〜120度、好ましくは80〜100度の範囲としている。
【0066】
70度を下回ると、左右方向のねじれに対して強度が低下するため好ましくなく、また、120度を上回ると左右方向のねじれに対して強度が増すものの、頬杖部材C自体が大きくなるため施工上好ましくない。
【0067】
角Tの角度を80〜100度、すなわち90度に可及的近い角度とすることにより、左右方向へねじれが生じてしまうのを効果的に防止しつつ、しかも、頬杖部材C自体をコンパクトにすることができる。
【0068】
次に、温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造の他の実施形態として、図1の交点Qについて説明する。
【0069】
この交点Qでは、前述の交点Pと基本的な構成を同じくしているが、第1のアーチパイプとしての小アーチパイプ5と第2のアーチパイプとしての大アーチパイプ4とが、円弧状に湾曲している点で構造を異にしている。
【0070】
しかしながら、このような部位においても、前述の説明と同様の構造を形成することにより、アーチ部材1のねじれを効果的に防止することができる。
【0071】
また、温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造の更なる他の実施形態として、図1の交点Rについて説明する。
【0072】
この交点Rでは、前述の交点Qと基本的な構成を同じくしているが、第1のアーチパイプを大アーチパイプ4とし、第2のアーチパイプを小アーチパイプ5として頬杖部材Cを配設している点で構造を異にしている。
【0073】
しかしながら、このような部位においても、前述の説明と同様の構造を形成することにより、アーチ部材1のねじれを効果的に防止することができる。
【0074】
次に、図4を用いて、頬杖部材の他の実施形態について説明する。図4は、図3の分解斜視図とほぼ同様の構造を示しているが、頬杖部材Dの腕部51,51にリブ60が形成されている点で構造を異にしている。なお、図4では、前述した部材については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0075】
図4に示す頬杖部材Dに着目すると、包持部50の中途部から腕部51,51の基部を通り端部に至るまで、腕部51,51の伸延方向に沿って凹溝状のリブ60が上下に2本形成されている。
【0076】
このリブ60は、板状の腕部51,51に上下方向(大アーチパイプ4の伸延方向)へ向かう溝が形成されて腕部51,51が折れ曲がるのを防止する役割を有している。
【0077】
すなわち、このリブ60を腕部51,51に設けることにより、腕部51,51の強度を向上させて、アーチ部材1のねじれをさらに防止することができるのである。
【0078】
また、折曲連結部55のボルト挿通孔58,58の間には、横パイプ2を当接させるための凹溝状の当接凹部61を形成している。
【0079】
各折曲連結部55,55にそれぞれ形成したこの当接凹部61,61は、折曲連結部55,55と横パイプ2とを連結固定するに際し、位置決めを容易とする役割を果たすと共に、一度固定した後は、大アーチパイプ4が横パイプ2に対して上下方向へ移動し難くする役割も担っている。
【0080】
このような構成とすることにより、頬杖部材Dを横パイプ2にしっかりと固定してアーチ部材1のねじれを効果的に防止することができると共に、アーチ部材1の上下方向へのずれをも防止することができる。
【0081】
上述してきたように、本発明に係る温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造は、曲率の異なる2つのアーチパイプ(例えば、大小アーチパイプ4,5)を、曲率半径方向に所定の間隙を開けて連結してアーチ部材(例えば、アーチ部材1)を形成し、同アーチ部材を棟方向に間隔をあけて複数並立すると共に、この複数のアーチ部材と棟方向へ配置した横パイプ(例えば、横パイプ2)とを連結した温室構造(例えば、温室A)において、前記2つのアーチパイプのうちの第1のアーチパイプ(例えば、大アーチパイプ4又は小アーチパイプ5)と前記横パイプとを交差状態で連結する一方、第2のアーチパイプ(例えば、小アーチパイプ5又は大アーチパイプ4)と前記横パイプとの間に平面視略二等辺三角形状の頬杖部材(例えば、頬杖部材C,D)を介設し、この頬杖部材は、前記第2のアーチパイプを包持する平面視略U字状の包持部(例えば、包持部50)と、同包持部を頂点として伸延する腕部(例えば、腕部51,51)とを備え、前記腕部が前記第1のアーチパイプと前記横パイプとが連結された固定部を跨ぐように配設されていることとしたため、アーチ部材1に対して各アーチパイプ4,5がねじれの位置となるような力がかかった場合でも、大小アーチパイプ4,5がねじれの位置となるのを防止してアーチ部材1に十分な強度を生起させることができ、しかも、アーチパイプの断面が円形状であってもしっかりと固定することができる。
【0082】
また、腕部には、伸延方向へ向けて複数条のリブ(例えば、リブ60)を設けているため、腕部51,51の強度を向上させて、アーチ部材1のねじれをさらに防止することができる。
【0083】
また、前記固定部は、第1のアーチパイプを包持する一対のU字状保持部材(例えば、U字状保持部材40,40)と、前記U字状保持部材の開口側端部を挿通させる孔部(例えば、孔部23,23)と、前記横パイプを係止する凹状係止部(例えば、凹状係止部21)とが形成されたプレート状部材(例えば、プレート状部材20)とを備え、前記開口側端部に螺刻した雄ネジ(例えば、雄ネジ44)を、前記孔部に挿通した状態で雌ネジ部材(例えば、ナット45)と螺合させて、前記第1のアーチパイプと前記横パイプとを交差状態で連結固定したため、シンプルな構成で比較的種々の径のパイプを交差状態で保持することができ、また、組み立てた温室構造の強度計算を容易とすることができ、しかも、アーチパイプの断面が円形状であってもさらにしっかりと固定することができる。
【0084】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0085】
例えば、頬杖部材C,Dを横パイプ2に連結固定するに際し、断面が一様に円形状のU字ボルト56を用いることとしたが、このU字ボルト56に替えて、連結金具Bで使用するU字状保持部材40のような湾曲扁平体46を有するU字状のボルトを使用するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本実施形態に係るアーチ部材のねじれ防止構造を備えた温室Aを示す斜視説明図である。
【図2】本実施形態に係るアーチ部材のねじれ防止構造を備えた温室の交点の平面図及び斜視図である。
【図3】本実施形態に係るアーチ部材のねじれ防止構造を備えた温室の交点の分解斜視図である。
【図4】他の本実施形態に係るアーチ部材のねじれ防止構造を備えた温室の交点の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0087】
1 アーチ部材
2 横パイプ
3 連結部材
4 大アーチパイプ
5 小アーチパイプ
20 プレート状部材
21 凹状係止部
22 壁部
23 孔部
26 凸条部
40 U字状保持部材
41 脚部
42 閉塞側端部
43 開口側端部
44 雄ネジ
45 ナット
46 湾曲扁平体
50 包持部
51 腕部
60 リブ
A 温室
B 連結金具
C 頬杖部材
D 頬杖部材
P 交点
Q 交点
R 交点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲率の異なる2つのアーチパイプを、曲率半径方向に所定の間隙を開けて連結してアーチ部材を形成し、同アーチ部材を棟方向に間隔をあけて複数並立すると共に、この複数のアーチ部材と棟方向へ配置した横パイプとを連結した温室構造において、
前記2つのアーチパイプのうちの第1のアーチパイプと前記横パイプとを交差状態で連結する一方、第2のアーチパイプと前記横パイプとの間に平面視略二等辺三角形状の頬杖部材を介設し、この頬杖部材は、前記第2のアーチパイプを包持する平面視略U字状の包持部と、同包持部を頂点として伸延する腕部とを備え、前記腕部が前記第1のアーチパイプと前記横パイプとが連結された固定部を跨ぐように配設されていることを特徴とする温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造。
【請求項2】
前記腕部には、伸延方向へ向けて複数条のリブを設けていることを特徴とする請求項1に記載の温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造。
【請求項3】
前記固定部は、
第1のアーチパイプを包持する一対のU字状保持部材と、
前記U字状保持部材の開口側端部を挿通させる孔部と、前記横パイプを係止する凹状係止部とが形成されたプレート状部材とを備え、
前記開口側端部に螺刻した雄ネジを、前記孔部に挿通した状態で雌ネジ部材と螺合させて、前記第1のアーチパイプと前記横パイプとを交差状態で連結固定したことを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の温室構造におけるアーチ部材のねじれ防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−22220(P2010−22220A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184131(P2008−184131)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(597088591)佐藤産業株式会社 (30)
【出願人】(503423317)
【Fターム(参考)】