説明

温室用の定温水保管装置

【課題】簡単な構造で、温室に適した温度の温水を保管して循環することができる温室用の定温水保管装置を提供する。
【解決手段】バイメタル10の作用により、保温容器6内の温水7の温度が所定の温度より高くなりそうな場合には、保温容器6が加熱容器1から離反するため、保温容器6内の温水7は常に最適の温度が保たれる。従って、保温容器6内の温水7を直接温室9に循環することができる。バイメタル10を利用した簡単な構造で、装置が大掛かりにならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温室用の定温水保管装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽熱温水器で温水をつくり、その温水を蓄熱槽に蓄え、蓄熱槽から必要に応じて温水を温室内に循環して温室内を一定温度に保温する技術が知られている。温水を蓄熱槽にいったん蓄えるのは、太陽熱温水器からの温水は熱すぎて、そのまま温室に循環できないからである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−235130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、太陽熱温水器でつくった温水を蓄える蓄熱槽が必要になるため、装置が大掛かりになっていた。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、簡単な構造で、温室に適した温度の温水を保管して循環することができる温室用の定温水保管装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、加熱可能で固定された加熱容器内に熱媒体を入れ、加熱容器に隣接した保温容器内に水を入れて底面をベース面に立設した板状のバイメタルで支持し、加熱容器と保温容器の接触時に加熱容器内の熱媒体の熱が保温容器内の水に伝達されて温水となる温室用の定温水保管装置であって、前記バイメタルは保温容器内の水の温度が所定温度以上で保温容器が加熱容器から離反するように変形することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、熱媒体が食用廃油であることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、加熱容器の一部に加熱部があり、該加熱部が反射ミラーにより集光した太陽光線で加熱されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、バイメタルの作用により、保温容器内の温水の温度が所定の温度より高くなりそうな場合には、保温容器が加熱容器から離反するため、保温容器内の温水は常に最適の温度が保たれる。従って、保温容器内の温水を直接温室に循環することができる。バイメタルを利用した簡単な構造で、装置が大掛かりにならない。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、熱媒体として食用廃油を利用するため、環境に良い。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、オイルを反射ミラーにより集光した太陽光線で加熱するため、環境に良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】反射ミラーより加熱容器を加熱している状態を示す全体説明図。
【図2】加熱容器及び保温容器を示す斜視図。
【図3】加熱容器及び保温容器を示す断面図。
【図4】保温容器が離反した状態を示す図3相当の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。尚、この実施形態では、比較的小型の温室に適用した例を示している。
【0014】
加熱容器1はステンレス製の角形容器で、長さ50cm、幅40cm、高さ40cmのサイズを有している。加熱容器1の内部には熱媒体2としての食用廃油が入っている。加熱容器1の周囲は断熱レンガ材3により囲まれている。加熱容器1はベース面11に形成された台の上に載置された状態で固定されている。
【0015】
加熱容器1の一面には加熱部4が設けられている。加熱部4は断熱レンガ材3が省略されて露出しており、反射ミラー5で集光された太陽光Lが照射される。加熱部4は熱吸収率の高い材質で構成するのが望ましい。或いは、少なくとも太陽光Lの照射面にそのような材質の部材を設けても良い。反射ミラー5は太陽の動きに連動して向きが変化し、太陽光Lが常に加熱部4へ集光するようにされている。
【0016】
このような加熱容器1に隣接して保温容器6が設けられている。保温容器6もステンレス製の角形容器である。保温容器6のサイズは加熱容器1と同様である。内部には水7が入れられている。保温容器6と前記加熱容器1には上部に図示せぬ蓋が設けられている。
【0017】
保温容器6の上部には出口6aが形成され、下部には入口6bが形成されている。出口6a及び入口6bには、温室9内の土中に埋設されたパイプ8が接続され、このパイプ8を介して、保温容器6内の水を温室9内に循環することができる。
【0018】
保温容器6の底面は2枚の板状のバイメタル10により支持されている。このバイメタル10は、銅10aとステンレス10bを接合した構造である。サイズは幅40cm、高さ40cm、厚さ12mm(銅10aとステンレス10bが各6mm)である。保温容器6とベース面11にはそれぞれ凹部12、13が形成され、そこにバイメタル10の上下端を差し込んだ状態で接続している。バイメタル10の厚さが12mmで剛性が高いため、保温容器6を倒伏させることなく安定に支持することができる。
【0019】
バイメタル10は、熱膨張率の大きい銅10aが加熱容器1側に位置し、銅10aよりも熱膨張率の小さいステンレス10bが加熱容器1とは反対側に位置した状態で接合されている。バイメタル10の上端が保温容器6の底面の凹部12内に差し込まれた状態で固定されているため、保温容器6の温度は直接バイメタル10に伝達される。保温容器6が加熱されない状態では、バイメタル10は平板状で、保温容器6の側面は加熱容器1の側面に密着した状態となっている。
【0020】
日中において、反射ミラー5で集光した太陽光Lが加熱容器1の加熱部4に当たると、加熱部4が高温になり、加熱容器1内の熱媒体2の温度が上昇する。加熱容器1の内の熱媒体が高温になると、その熱が加熱容器1に密着している保温容器6に伝わる。
【0021】
そして、保温容器6内の水7も温度上昇する。保温容器6の水7の温度が上昇して、保温容器6が所定の温度になると、保温容器6に接続しているバイメタル10の温度も上がって、バイメタル10が加熱容器1から離反する方向へ反った状態になる。この反り変形は、予め保温容器6内の水7の温度が30°Cに達した時に変形するように設定されている。
【0022】
保温容器6内の30°Cの水7は温室9内に循環され、温室9内を保温する。温められ水7を温室9に循環すると、水7の温度が下がってくる。水7の温度が下がると、バイメタル10の温度も下がり、バイメタル10が元の状態に戻る。バイメタル10が元の状態に戻ると、保温容器6が加熱容器1に再び接して、保温容器6内の水7の温度が上昇する。これを繰り返すことにより、保温容器6の水7の温度は約30°Cに保たれる。
【0023】
大掛かりな蓄熱槽を用いることなく、温室9に循環する水7の温度を一定に保つことができる。尚、循環する水7の温度を30°Cに設定したが、別の特性
を有するバイメタルに変えることにより、設定温度を変えることができる。
【0024】
また、保温容器6を更に安定に支持するための支持機構(図示せず)を設けても良い。支持機構は、例えば、保温容器6を下方或いは両側面から付勢するバネ等の弾性部材や、保温容器6の側面等に設けられ、バイメタル10が反る方向に保温容器6を移動可能に支持する車輪等の軸受部材などが挙げられる。このような支持部材の設置によって、水7の温度変化に対する保温容器6の移動量が変化する場合には、バイメタル10の上記寸法を適宜変更しても良い。
【0025】
さらにまた、加熱容器1と保温容器6の接触面は例えば銅等の熱伝導率の良い金属を用いても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 加熱容器
2 熱媒体
5 反射ミラー
6 保温容器
7 水
9 温室
10 バイメタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱可能で固定された加熱容器内に熱媒体を入れ、加熱容器に隣接した保温容器内に水を入れて底面をベース面に立設した板状のバイメタルで支持し、加熱容器と保温容器の接触時に加熱容器内の熱媒体の熱が保温容器内の水に伝達されて温水となる温室用の定温水保管装置であって、
前記バイメタルは保温容器内の水の温度が所定温度以上で保温容器が加熱容器から離反するように変形することを特徴とする温室用の定温水保管装置。
【請求項2】
熱媒体が食用廃油であることを特徴とする請求項1記載の温室用の定温水保管装置。
【請求項3】
加熱容器の一部に加熱部があり、該加熱部が反射ミラーにより集光した太陽光線で加熱されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の温室用の定温水保管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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