説明

温室用引き戸の懸垂型戸車の取付け構造

【課題】少なくとも一側面に開口部が幅狭のシート止着溝を備え横断面が管状体をなすシート止め材を枠材に使用して組立てた温室用引き戸の上辺枠の上に懸垂型戸車を取り付ける懸垂型戸車の取付け構造を提供する。
【解決手段】一端部にシート止着溝10の開口上縁部14へ引っ掛ける鉤部21を有し、上辺枠1の上面11から背面13にかけて外接する略コ字形状をなし、背面側13に被緊締部20を有する上側取付け部材2のウェブ22に懸垂型戸車5が取り付け固定されている。一端部にシート止着溝10の開口下縁部15へ引っ掛ける鉤部31を有し、上辺枠1の下面12から背面13にかけて外接する略コ字形状をなし、背面側13に被緊締部30を有する下側取付け部材3と、上側取付け部材2とが、上辺枠1へ被緊締部20と30を同じ向きに配置され、上下の被緊締部20と30が緊結されて、懸垂型戸車5が上辺枠1の上に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、少なくとも一側面に開口部が幅狭のシート止着溝を備え横断面が管状体をなすシート止め材を枠材に使用し、そのシート止着溝を横向きに配置して組立てた温室用引き戸の上辺枠の上に懸垂型戸車を取り付ける懸垂型戸車の取付け構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の野菜や果物などの促成栽培を行う温室の出入り口開口には、一例を図4と図5に示したように、引き戸hの上辺枠dの上に懸垂型戸車aを取付け、同懸垂型戸車aを出入口開口の上辺に設置した戸車レールfへ吊り下げた構成の引き戸hが開閉自在に設置されている。但し、従来の引き戸hの上辺枠dは、垂直な側面に開口部が幅狭のシート止着溝gを備え、水平な上面部に懸垂型戸車aの垂直軸bをナットeで固定できる構成で、横断面が倒立L字形の開放断面構造のシート止め材dが使用されている。上記懸垂型戸車aの取付け構造は、下記特許文献1〜3にも開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平08−116799号公報
【特許文献2】特開平08−266165号公報
【特許文献3】特開平08−266166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記図4及び図5に示した従来の温室用引き戸の懸垂型戸車の取付け構造も、それなりに一応の用途、機能を満たすものとして実用に供されている。しかし、上記開放断面構造のシート止め材dは、当然のことながら、強度および剛性が低く、高強度、高剛性の引き戸の枠材としては好ましくないと考えられるようになった。最近では、一例を図3に示すように、少なくとも一側面に開口部が幅狭のシート止着溝10を備え横断面がほぼ四角形の管状体とされた高強度、高剛性のシート止め材1を枠材に使用して、高強度、高剛性の引き戸8を組み立てる発想が生まれ実施されつつある。しかし、管状体をなすシート止め材1では、上記温室用引き戸の懸垂型戸車の取付け構造を適用することはできない。即ち、図5に示す懸垂型戸車aの垂直軸bのねじ部cへナットeをねじ込み締結する作業が不可能だからである。
【0005】
本発明の目的は、少なくとも一側面に開口部が幅狭のシート止着溝を備え横断面がほぼ四角形の管状体をなすシート止め材を枠材に使用して組立てた引き戸の上辺枠の上に懸垂型戸車を取り付けることができ、取り付けや撤去、取付位置修正の作業などが容易であり、面内方向および面外方向の剪断力等に対する強度、剛性が必要十分に高く、長期にわたり高安定で信頼性が高い使用ができる温室用引き戸の懸垂型戸車の取付け構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る温室用引き戸の懸垂型戸車の取付け構造は、
少なくとも一側面に開口部が幅狭のシート止着溝10を備え横断面がほぼ四角形の管状体をなすシート止め材1を枠材に使用し、そのシート止着溝10を横向きに配置して組立てた温室用引き戸8の上辺枠1に懸垂型戸車5を取り付ける懸垂型戸車の取付け構造において、
一端部に前記引き戸8の上辺枠1のシート止着溝10の開口上縁部14へ引っ掛ける鉤部21を有し、同上辺枠1の上面11から背面13にかけて外接する略コ字形状をなし、背面側13に被緊締部20を有する上側取付け部材2のウェブ22に前記懸垂型戸車5が上向きに取り付け固定されており、
一端部に前記引き戸8の上辺枠1のシート止着溝10の開口下縁部15へ引っ掛ける鉤部31を有し、同上辺枠1の下面12から背面13にかけて外接する略コ字形状をなし、背面側13に被緊締部30を有する下側取付け部材3と、前記上側取付け部材2とが、引き戸8の上辺枠1へそれぞれの被緊締部20と30を同じ向きに配置され、上下の被緊締部20と30が緊結されて、懸垂型戸車5が引き戸8の上辺枠1の上に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の温室用引き戸の懸垂型戸車の取付け構造は、懸垂型戸車5が取付け固定された上側取付け部材2と、下側取付け部材3とが、横断面がほぼ四角形の管状体をなす高強度、高剛性の管状シート止め材1の上面11と下面12にそれぞれ外接され、同管状シート止め材1の背面側13で強固に緊結される構造なので、同管状シート止め材1を枠材に使用して組み立てた高強度および高剛性の引き戸8の上辺枠1へ好適に適用することができる。また、上下の取付け部材2と3は引き戸8の上辺枠1の適当な位置に簡単に嵌め合わせて取り付けることができ、同上下の取付け部材2と3それぞれの被緊締部20と30を緊結するだけの簡単な作業で、懸垂型戸車5を簡易、迅速に取り付けることができるので作業性もよく、確実に強固な取り付けができる。撤去作業や取付位置修正の作業なども、前記被緊締部20と30の緊結状態を解除するだけの簡単な作業で、簡易、迅速に行える。勿論、面内方向および面外方向の剪断力等に対しても使用上に必要十分な強度と剛性を発揮し、長期に亘り高安定で信頼性の高い使用ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の温室用引き戸の懸垂型戸車の取付け構造は、一端部に引き戸8の上辺枠1のシート止着溝10の開口上縁部14へ引っ掛ける鉤部21を有し、同上辺枠1の上面11から背面13にかけて外接する略コ字形状をなし、背面側13に被緊締部20を有する上側取付け部材2のウェブ22に懸垂型戸車5が上向きに取り付け固定されている。そして、一端部に引き戸8の上辺枠1のシート止着溝10の開口下縁部15へ引っ掛ける鉤部31を有し、同上辺枠1の下面12から背面13にかけて外接する略コ字形状をなし、背面側13に被緊締部30を有する下側取付け部材3と、前記上側取付け部材2とが、引き戸8の上辺枠1へそれぞれの被緊締部20と30を同じ向きに配置され、上下の被緊締部20と30が緊結されて、懸垂型戸車5が引き戸8の上辺枠1の上に取り付けられている。
【実施例1】
【0009】
以下に、本発明に係る温室用引き戸の懸垂型戸車の取付け構造の実施例を図1〜3に基づいて説明する。
本発明の懸垂型戸車の取付け構造の特長は、図1及び図3に示すように、一側面に開口部が幅狭のシート止着溝10を備えた横断面がほぼ四角形の管状体をなす高強度、高剛性のシート止め材1を枠材に使用し、そのシート止着溝10を横向きに配置して図3に示すように組立てた高強度、高剛性の温室用引き戸8の上辺枠1の上に、戸車レール6に吊り下げる懸垂型戸車5を、上下二つのほぼ同形をなす取付け部材2と3により取付ける構成としたことである。
先ず上側取付け部材2は、図2及び図3に詳示するように、一端部に上記引き戸8の上辺枠1のシート止着溝10の開口上縁部14へ引っ掛ける鉤部21を有し、同上辺枠1の上面11から背面13にかけて外接する略コ字形状をなし、背面側13に被緊締部としてのボルト受け部20を有する構成で、そのウェブ22に、前記懸垂型戸車5が上向きに取り付け固定されている。下側取付け部材3は、やはり、一端部に前記引き戸8の上辺枠1のシート止着溝10の開口下縁部15へ引っ掛ける鉤部31を有し、同上辺枠1の下面12から背面13にかけて外接する略コ字形状をなし、背面側13にやはり被緊締部としてのボルト受け部30を有する構成とされている。この下側取付け部材3と、前記上側取付け部材2とが、引き戸8の上辺枠1へそれぞれのボルト受け部20と30を同じ向きに配置され、上下のボルト受け部20と30が、各々のボルト孔へ通した1本のボルト4aとナット4bを用いてボルト接合され、もって懸垂型戸車5が引き戸8の上辺枠1の上に取り付けられている。従って、上下の取付け部材2と3それぞれのボルト受け部20と30をボルト接合するだけの簡単な作業で、懸垂型戸車5を簡易、迅速に取り付けることができるので作業性もよく、確実に強固な取り付けができる。ボルト4aとナット4bを緩めて外せば、懸垂型戸車5は簡単に撤去できるし、取付け位置の修正も容易にできる。
なお、前記上下の取付け部材2と3のボルト受け部20と30の異なる緊結手段としては、例えばくさびの打ち込みにより緊締力を発揮する結合部材等を用いて実施することもできる。
【0010】
上記上側取付け部材2は、ウェブ22の懸垂型戸車5を取り付ける部分が上方へ突き出るように凸状23をなし、該凸部23に前記懸垂型戸車5の垂直軸50のねじ部51をねじ込むねじ孔が形成されている。前記凸部23上には、前記ねじ孔と同径のナット24が同ねじ孔と同心配置で強固に固定されている。前記懸垂型戸車5の垂直軸50のねじ部51が、前記上側取付け部材2の凸部23に固定されたナット24と同凸部23のねじ孔にねじ込まれて、前記懸垂型戸車5が上側取付け部材2にしっかりと強固に取り付け固定されている。
【0011】
なお、図1及び図3に示す引き戸8は、外周枠材による四隅部分が、全体として直角に屈曲されたL字状をなす入れ子型のL型継手81により接合されている。また、外周枠とその枠内に外周枠材と直行するように配置した中間枠材80とのT型接合部分は、双方の枠材をT字形配置に挟み付ける二分割型の継ぎ手82により接合されている。つまり、縦枠材と横枠材のシート止着溝10を利用して波形状の止め線7でプラスチックシートを止着する場合の止め線の連続性を確保でき、外周枠の四隅部分における連続性のある平坦なシート止着が可能な構成である。
【0012】
したがって、本実施例の懸垂型戸車の取付け構造は、懸垂型戸車5が取付け固定された上側取付け部材2と、下側取付け部材3とが、横断面がほぼ四角形の管状体をなす高強度、高剛性の管状シート止め材1の上面11と下面12にそれぞれ外接され、同管状シート止め材1の背面側13で強固に緊結される構造なので、同管状シート止め材1を枠材に使用して組み立てた高強度および高剛性の引き戸8の上辺枠1へ好適に適用することができる。上辺枠1へ取付け孔をあけるなどして傷つける不具合もない。また、ほぼ同形をなす上下の取付け部材2と3は、安価に製造することができる。勿論、面内方向および面外方向の剪断力等に対しても使用上に必要十分な剛性と強度を発揮し、長期に亘り高安定で信頼性の高い使用ができる。
【0013】
なお、本実施例の温室用引き戸の懸垂型戸車の取付け構造は、上記特許文献3に開示された垂直軸を正面からみて車輪部を支持可能な倒立U字形状に形成された懸垂型戸車の一方の脚部を上側取付け部材に取付け固定し、他方の脚部を同上側取付け部材に係止させた構成で実施することもできる。
【0014】
また、図示することは省略したが、他側面にもシート止着溝を備えた横断面がほぼ四角形の管状体をなすシート止め材を使用して組立てられた引き戸においても、同様に実施することができる。
【0015】
以上に実施形態を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の実施形態の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例である懸垂型戸車の取付け構造を示した拡大斜視図である。
【図2】図1のA−A線矢視図である。
【図3】懸垂型戸車の取付け構造を分解状態で示した斜視図である。
【図4】従来の懸垂型戸車の取付け構造を示した拡大斜視図である。
【図5】図4のB−B線矢視図である。
【0017】
1 管状シート止め材(引き戸の上辺枠)
10 シート止着溝
11 管状シート止め材の上面
12 管状シート止め材の下面
13 管状シート止め材の背面
2 上側取付け部材
20 ボルト受け部(被緊締部)
21 鉤部
22 ウェブ
3 下側取付け部材
30 ボルト受け部(被緊締部)
31 鉤部
5 懸垂型戸車
8 引き戸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一側面に開口部が幅狭のシート止着溝を備え横断面がほぼ四角形の管状体をなすシート止め材を枠材に使用し、そのシート止着溝を横向きに配置して組立てた温室用引き戸の上辺枠に懸垂型戸車を取り付ける懸垂型戸車の取付け構造において、
一端部に前記引き戸の上辺枠のシート止着溝の開口上縁部へ引っ掛ける鉤部を有し、同上辺枠の上面から背面にかけて外接する略コ字形状をなし、背面側に被緊締部を有する上側取付け部材のウェブに前記懸垂型戸車が上向きに取り付け固定されており、
一端部に前記引き戸の上辺枠のシート止着溝の開口下縁部へ引っ掛ける鉤部を有し、同上辺枠の下面から背面にかけて外接する略コ字形状をなし、背面側に被緊締部を有する下側取付け部材と、前記上側取付け部材とが、引き戸の上辺枠へそれぞれの被緊締部を同じ向きに配置され、上下の被緊締部が緊結されて前記懸垂型戸車が引き戸の上辺枠の上に取り付けられていることを特徴とする、温室用引き戸の懸垂型戸車の取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−167655(P2009−167655A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5578(P2008−5578)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000221568)東都興業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】