説明

温度によってストレッチ率が変化するストレッチ布帛および繊維製品

【課題】温度によってストレッチ率が変化するストレッチ布帛および該ストレッチ布帛を用いてなる繊維製品を提供する。
【解決手段】ガラス転移点Tgが0〜55℃の範囲にあり、ウレタン系高分子ポリマーを含むウレタン系糸条Aが芯部に位置し、他糸条Bが鞘部に位置する芯鞘型複合糸が経および/または緯に配され、Aの糸条の長さDAとBの糸条の長さDBとがDA/DB≦0.95の関係を満足し、前記芯鞘型複合糸が配された方向の、温度(Tg−10)℃、湿度65RH%におけるストレッチ率S1(%)と温度(Tg+10)℃、湿度65RH%におけるストレッチ率S2(%)とが下記式を満足することを特徴とする温度によってストレッチ率が変化するストレッチ布帛。 S2−S1≧5(%)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度によってストレッチ率が変化するストレッチ布帛および該ストレッチ布帛を用いてなる繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料などの分野で、着用快適性に優れた布帛としてストレッチ性を有するストレッチ布帛が多数提案されている(例えば、特許文献1参照)。
他方、近年では、温度によって透湿性などの特性が変化する機能性布帛が盛んに提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、ガラス転移点前後における弾性率変化が大きい形状記憶性糸条および形状記憶性糸条を用いた布帛が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、温度などの環境変化に対応してそのストレッチ性が変化するストレッチ布帛は、従来あまり提案されていない。
なお、本発明者らは、特願2005−115186号において、ガラス転移点の温度前後で物性が変化する感温性合成繊維を提案している。
【0004】
【特許文献1】特開平3−174043号公報
【特許文献2】特開平4−370276号公報
【特許文献3】特開平2−169713号公報
【特許文献4】特開平8−144123号公報
【特許文献5】特開2000−345444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、温度によってストレッチ率が変化するストレッチ布帛および該布帛を用いてなる繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、生活環境温度に近いガラス転移点を有するウレタン系高分子ポリマーを含むウレタン系糸条と他糸条とで構成される複合糸または引き揃え糸を用いて布帛を構成することにより、温度によってストレッチ率が変化するストレッチ布帛が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「ガラス転移点Tgが0〜55℃の範囲にあり、ウレタン系高分子ポリマーを含むウレタン系糸条Aと、他糸条Bとで構成される複合糸または引き揃え糸が経および/または緯に配され、
前記複合糸または引き揃え糸に含まれるウレタン系糸条Aの糸長DAと他糸条Bの糸長DBとが下記式を満足し、
DA/DB≦0.95
かつ、前記複合糸または引き揃え糸が配された方向の、温度(Tg−10)℃、湿度65RH%におけるストレッチ率S1(%)と温度(Tg+10)℃、湿度65RH%におけるストレッチ率S2(%)とが下記式を満足することを特徴とする温度によってストレッチ率が変化するストレッチ布帛。
S2−S1≧5(%)」が提供される。
【0008】
ただし、ストレッチ率S1およびS2は、JIS L1096−1998 6.14.1に規定される伸縮織物の伸縮性のB法(定荷重法)で測定した伸張率である。
【0009】
その際、前記のS1が10%以上であることが好ましい。前記ウレタン系糸条Aを構成する単繊維の単繊維繊度としては1〜5dtexの範囲であることが好ましい。また、ウレタン系糸条Aがモノフィラメントであることが好ましい。一方、他糸条Bはポリエステル系糸条であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、前記のストレッチ布帛を含む、衣服、スポーツシャツ、インナーシャツ、寝装具、裏地、カーシートの群より選ばれる繊維製品が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、温度によってストレッチ率が変化するストレッチ布帛および該ストレッチ布帛を用いてなる繊維製品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明において、ウレタン系糸条Aはウレタン系高分子ポリマーを含んでおり、ガラス転移点Tgが0〜55℃(好ましくは0〜40℃、特に好ましくは20〜40℃)の範囲にある。ガラス転移点がこの範囲から外れる場合は、本発明のストレッチ布帛を衣服などとして使用する際、通常の生活においてストレッチ性の変化を体感しにくく好ましくない。
【0013】
かかるウレタン系糸条Aは、特開平2―169713号公報に開示された方法で製造することができる。すなわち、2官能ジイソシアネートと2官能ポリオール、及び活性水素基を含む鎖延長剤を、モル比で、2官能ジイソシアネート:2官能ポリオール:鎖延長剤=2.0〜1.1:1.0:1.0〜0.1となるように配合してプレポリマー法により合成したウレタン系高分子ポリマーを紡糸することにより得ることができる。2官能ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートなどを用いることができる。また、2官能ポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを用いることができる。また、鎖成長剤としては、エチレングリコールなどを用いることができる。なお、かかるウレタン系高分子ポリマーは市販されている((株)ディアプレックス製「ダイアリィ」(商品名))。かかるウレタン系高分子ポリマーで得られた繊維は、Tg以下では同じ温度であっても、乾燥時よりも湿潤時において、ストレッチ率が大きくなる性質を有している。
【0014】
ウレタン系糸条Aは、前記のウレタン系高分子ポリマー単独からなることが最も好ましいが、前記のウレタン系高分子ポリマー成分と、ポリエステル成分など他成分とがサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維であってもさしつかえない。
【0015】
ウレタン系糸条Aの単繊維繊度としては、1〜5dtexの範囲内であることが好ましい。単繊維繊度が1dtexよりも小さいと製造が困難となるおそれがある。逆に、該単繊維繊度が5dtexよりも大きいと、外気の温度が単繊維の内部まで伝わりにくくストレッチ率が十分変化しないだけでなく、布帛の風合いが硬くなるおそれがある。
【0016】
ウレタン系糸条Aの繊維の形態としては、短繊維でもよいし長繊維でもよい。なかでも長繊維のほうが、ソフトな風合いが得られやすく好ましい。その際、長繊維の総繊度、フィラメント数としては、総繊度33〜330dtex、フィラメント数1〜50の範囲が好ましい。
【0017】
一方、他糸条Bは、前記のウレタン系糸条A以外の糸条であれば特に限定されず、綿、羊毛、麻、ビスコースレーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリエーテルエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、セルロースアセテート繊維、アラミド繊維などの通常の繊維からなる糸条でよい。なかでも、引張り強度や染色性の点でポリエステル系繊維からなるポリエステル系糸条が特に好ましい。
【0018】
かかるポリエステルとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、炭素数2〜6のアルキレングリコール、すなわちエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種のグリコール、特に好ましくはエチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルが例示される。かかるポリエステルには、必要に応じて少量(通常30モル%以下)の共重合成分を有していてもよい。
【0019】
その際、使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、P−オキシ安息香酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のごとき芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。また、上記グリコール以外のジオール化合物としては、例えばシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのごとき脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
【0020】
かかるポリエステルは任意の方法によって合成したものでよい。例えばポリエチレンテレフタレートの場合について説明すると、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのごときテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるかまたはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合体を生成させる第1段階の反応と、第1段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造されたものでよい。
【0021】
また、ポリエステル中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン可染剤、着色防止剤、熱安定剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、帯電防止剤、吸湿剤、抗菌剤、マイナスイオン発生剤等を1種又は2種以上を添加してもよい。
【0022】
他糸条Bの単繊維繊度としては、0.1〜5.0dtexの範囲内であることが好ましい。また、他糸条Bの繊維形態としては、短繊維でもよいし長繊維(マルチフィラメント)でもよい。なかでも、布帛のソフト性の点で長繊維が好ましい。なお、かかる長繊維の総繊度、フィラメント数としては、総繊度33〜330dtex、フィラメント数10〜100の範囲が好ましい。また、単繊維の断面形状は特に限定されず通常の丸断面でもよいし、扁平断面、くびれつき扁平断面、三角断面、四角断面、3〜14葉断面、中空断面などの異型断面でもよい。
【0023】
本発明において、前記のウレタン系糸条Aと他糸条Bとが、複合糸または引き揃え糸として経および/または緯に配される。その際、ウレタン系糸条Aの糸長DAと他糸条Bの糸長DBとが下記式を満足することが肝要である。
DA/DB≦0.95(より好ましくは、0.6≦DA/DB≦0.9)
【0024】
ただし、糸長は以下の方法で測定するものとする。すなわち、布帛から経および緯が同じ方向となるように、正方形(1辺が30cm)の試料を切り取り、温度20℃、湿度65RH%の環境下に24時間放置した後、該試料から複合糸を抜き取り、ウレタン系糸条Aの糸長DAおよび他糸条Bの糸長DBを測定した後、糸長比DA/DBを算出する。なお、糸長を測定する際、0.0088mN/dtex(1mg/de)の荷重をかけて測定する。
【0025】
ここで、DA/DBの値が0.95よりも大きいと、他糸条Bがウレタン系糸条Aの伸張を妨げるため、布帛としてストレッチ性を発現することができないおそれがある。このように糸長差をもうける方法としては、ウレタン系糸条Aが芯部に、他糸条Bが鞘部に位置するように、合撚、エアー混繊、カバリングなどにより複合させるとよい。また、ウレタン系糸条Aの沸水収縮率を他糸条Bよりも大きくし、両糸条を同時に引き揃えて混繊し布帛を織編成した後に、該布帛に熱処理を施すことにより、両糸条に糸長差をもうけてもよい。
【0026】
本発明のストレッチ布帛には、前記の複合糸または引き揃え糸が経および/または緯に配されている。布帛の織編組織は特に限定されず、通常の方法で製編織されたものでよい。さらには、不織布であってもよい。例えば、織物の織組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。編物の種類は、よこ編物であってもよいしたて編物であってもよい。よこ編組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示され、たて編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。
【0027】
次に、本発明のストレッチ布帛において、前記複合糸または引き揃え糸が配された方向の、温度(Tg−10)℃、湿度65RH%におけるストレッチ率S1(%)と温度(Tg+10)℃、湿度65RH%におけるストレッチ率S2(%)とが下記式を満足することが肝要である。
S2−S1≧5(%)(好ましくは、S2−S1≧10(%))
【0028】
ただし、ストレッチ率S1およびS2は、JIS L1096−1998 6.14.1に規定される伸縮織物の伸縮性のB法(定荷重法)で測定した伸張率である。
【0029】
ここで、S2−S1の値が5%よりも小さいと、本発明の布帛を衣服などとして使用する際、ストレッチ性の変化を体感しにくく好ましくない。
また、前記のS1としては10%以上(より好ましくは15〜40%)であることが好ましい。かかるS1が10%よりも小さいと、着用快適性が損なわれるおそれがある。
【0030】
本発明のストレッチ布帛は、例えば下記の製造方法により得ることができる。すなわち、前記のウレタン系高分子ポリマーを溶融紡糸した後、適宜、延伸、熱セットし、ウレタン系糸条Aを得た後、常法により紡糸、延伸された他糸条Bと複合させるか引き揃えて、経および/または緯に配して製編織するとよい。なお、ウレタン系糸条Aの延伸倍率としては、最大延伸倍率の60〜75%の範囲であることが好ましい。さらには、延伸後に、延伸温度以下の温度で熱セットすると、ガラス転移点の前後の温度で物性が大きく変化し、低い温度では伸び難く、高い温度では容易に伸張する繊維となり、好ましい。その際、糸条を0.95〜1.4倍(好ましくは1.0〜1.3倍)に伸張しながら熱セットを施すことが好ましい。なお、該倍数が1倍未満の場合は、弛緩状態を意味する。
【0031】
本発明のストレッチ布帛には、本発明の目的が損なわれない範囲内であれば、常法の染色仕上げ加工、撥水加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0032】
本発明のストレッチ布帛において、経および/または緯に、ガラス転移点の前後の温度でストレッチ率が大きく変化する繊維糸条を含む複合糸または引き揃え糸が配されているので、布帛のストレッチ率もガラス転移点の前後の温度で大きく変化する。本発明のストレッチ布帛は、高い温度で大きなストレッチ率を有するので、本発明のストレッチ布帛を衣服などとして使用すると、着用者が激しく動いて温度が高くなるほど、布帛のストレッチ率が向上するので、優れた着用快適性が得られる。さらには、ガラス転移点の前後の温度でストレッチ率が大きく変化する繊維糸条が複合糸として布帛中に含まれているので、ガラス転移点の前後の温度でストレッチ率が大きく変化する繊維糸条が単独で布帛中に含まれるものと比較して、布帛の引張り強度が大きく、また、染色堅牢性が損なわれることもない。
【0033】
本発明のストレッチ布帛は上記の特徴を有しているので、衣服、スポーツシャツ、インナーシャツ、寝装具、裏地、カーシートのなどの繊維製品として好適に使用することができる。
【実施例】
【0034】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
<固有粘度>
オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定する。
【0035】
<沸水収縮率(BWS)>
供試フィラメント糸条を、周長1.125mの検尺機のまわりに10回巻きつけて、かせを調製し、このかせを、スケール板の吊るし釘に懸垂し、懸垂しているかせの下端に、かせの総質量の1/30の荷重をかけて、かせの収縮処理前の長さL1を測定する。
このかせから荷重を除き、かせを木綿袋に入れ、このかせを収容している木綿袋を沸騰水から取り出し、この木綿袋からかせを取り出し、かせに含まれる水をろ紙により吸収除去した後、これを室温において24時間風乾する。この風乾されたかせを、前記スケール板の吊し釘に懸垂し、かせの下部分に、前記と同様に、かせの総質量の1/3の荷重をかけて、収縮処理後のかせの長さL2を測定する。
供試フィラメント糸条の沸水収縮率(BWS)を、下記式により算出する。
BWS(%)=((L1−L2)/L1)×100
【0036】
<ウレタン系糸条Aの糸長DAと他糸条Bの糸長DBとの糸長比DA/DB>
布帛から経および緯が同じ方向となるように、正方形(1辺が30cm)の試料を切り取り、温度20℃、湿度65RH%の環境下に24時間放置した後、該試料から複合糸を抜き取り、ウレタン系糸条Aの糸長DAおよび他糸条Bの糸長DBを測定した後、糸長比DA/DBを算出する。なお、糸長を測定する際、0.0088mN/dtex(1mg/de)の荷重をかけて測定する。
【0037】
<布帛のストレッチ率>
温度(Tg−10)℃、湿度65RH%におけるストレッチ率S1(%)と温度(Tg+10)℃、湿度65RH%におけるストレッチ率S2(%)を、JIS L1096−1998 6.14.1に規定される伸縮織物の伸縮性のB法(定荷重法)により測定する。
【0038】
[実施例1]
4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリプロピレングリコール、およびエチレングリコールを、この順にモル比で1.7:1.0:0.71の割合で配合されたポリウレタン系高分子((株)デイアプレックス製「ダイアリ」MM3520、ペレットタイプ、Tg35℃)を用いて、紡糸温度が210℃、紡糸速度1000m/分にて紡糸を行い、170dtex/24filの原糸を得た。この原糸の最大延伸倍率は3.3倍、ガラス転移点温度Tgは35℃であった。該原糸を25℃の温度で2.3倍に延伸した後、25℃の温度、1.0倍の伸張率で熱セットすることにより、ウレタン系糸条Aとしてウレタン系マルチフィラメント84dtex/24fil(沸水収縮率25%)を得た。
【0039】
一方、固有粘度0.65の通常のポリエチレンタレフタレートを用いて、常法により紡糸、延伸することにより、ポリエチレンタレフタレートマルチフィラメント84dtex/36fil(沸水収縮率8%)を得た。
【0040】
次いで、両糸条を引き揃えて通常のインターレースノズルを用いて空気混繊することにより混繊糸を得た。そして、該混繊糸を経糸および緯糸に用いて、平組織の織物(経密度24本/cm、緯密度24本/cm)を製織したのち、常法の染色仕上げ加工を施すことにより、ストレッチ布帛として平組織の織物(経密度30本/cm、緯密度30本/cm)を得た。
【0041】
得られた織物に含まれる混繊糸において、DA/DBが0.8であった。また、該織物において、温度25℃、湿度65RH%における緯方向のストレッチ率S1が15%、温度45℃、湿度65RH%における緯方向のストレッチ率S2が30%、S2−S1が15%と、温度によって織物のストレッチ率が変化するものであった。
【0042】
[比較例1]
実施例1において、ウレタン系糸条Aのかわりに、沸水収縮率24%、、伸度が650%の、公知のポリエーテルポリエステル弾性糸(帝人ファイバー(株)製、製品名レクセ(登録商標)、44dtex/1fil)を用いて、該ポリエーテルエステル弾性繊維を2.5倍に伸張させながら他糸条Bと空気混繊して混繊糸を得ること以外は実施例1と同様にした。
【0043】
得られた織物に含まれる混繊糸において、DA/DBが0.6であった。また、該織物において、温度25℃、湿度65RH%における緯方向のストレッチ率S1が20%、温度45℃、湿度65RH%における緯方向のストレッチ率S2が21%、S2−S1が1%と、温度によって織物のストレッチ率がほとんど変化しないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、温度によってストレッチ率が変化するストレッチ布帛および該ストレッチ布帛を用いてなる繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移点Tgが0〜55℃の範囲にあり、ウレタン系高分子ポリマーを含むウレタン系糸条Aと、他糸条Bとで構成される複合糸または引き揃え糸が経および/または緯に配され、
前記複合糸または引き揃え糸に含まれるウレタン系糸条Aの糸長DAと他糸条Bの糸長DBとが下記式を満足し、
DA/DB≦0.95
かつ、前記複合糸または引き揃え糸が配された方向の、温度(Tg−10)℃、湿度65RH%におけるストレッチ率S1(%)と温度(Tg+10)℃、湿度65RH%におけるストレッチ率S2(%)とが下記式を満足することを特徴とする温度によってストレッチ率が変化するストレッチ布帛。
S2−S1≧5(%)
ただし、ストレッチ率S1およびS2は、JIS L1096−1998 6.14.1に規定される伸縮織物の伸縮性のB法(定荷重法)で測定した伸張率である。
【請求項2】
前記のS1が10%以上である、請求項1に記載の温度によってストレッチ率が変化するストレッチ布帛。
【請求項3】
ウレタン系糸条Aがモノフィラメントである、請求項1または請求項2に記載の温度によってストレッチ率が変化するストレッチ布帛。
【請求項4】
他糸条Bがポリエステル系糸条である、請求項1〜3のいずれかに記載の温度によってストレッチ率が変化するストレッチ布帛。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のストレッチ布帛を含む、衣服、スポーツシャツ、インナーシャツ、寝装具、裏地、カーシートの群より選ばれる繊維製品。

【公開番号】特開2006−307368(P2006−307368A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129613(P2005−129613)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】