温度を低減させる治癒用の創傷ドレッシング材
本発明は、創傷治癒組成物を含有し、周囲とは異なる温度を維持する、例えば、その下にある組織に対する熱吸収効果を達成及び維持するように適応された創傷接触層を有する創傷ドレッシング材に関する。本発明のデバイスの固有の物理化学的構造により、皮膚浸軟の回避と同時に、流体の封じ込め及び創傷分泌物の吸収が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の物理的表層フィーチャーを有し、創傷の治癒を促進するように設計された組成物を含有する創傷カバーデバイスの分野のものである。
【背景技術】
【0002】
創傷カバーデバイスは当技術分野において知られている。しかし、創傷治癒を促進し、流体の封じ込め及び創傷分泌物の吸収を可能にする創傷ドレッシング材が依然として必要とされている。本発明はこの要求を満たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,668,564号
【特許文献2】米国特許第5,750,585号
【特許文献3】米国特許第6,800,278号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、創傷治癒組成物を含有し、周囲とは異なる温度を維持する、例えば、その下にある組織に対する熱吸収効果を達成及び維持するように適応された創傷接触層を有する創傷ドレッシング材に関する。本発明のデバイスの固有の物理化学的構造により、皮膚浸軟の回避と同時に、流体の封じ込め及び創傷分泌物の吸収が可能となる。
【0005】
したがって、本発明は、一態様において、
- 創傷接触面を有する創傷接触層を備えた創傷カバーと、
- 創傷接触層に含有された創傷治療物質と、
- 創傷接触層と熱連通状態にある熱吸収層であって、創傷接触層から熱を除去するように適応可能であり、創傷接触面の温度を周囲温度未満まで低減させる熱吸収層と
を含む、貼り付けられた創傷の治癒を促進するように設計された低温適応性創傷ドレッシングデバイスに関する。
【0006】
本発明は、別の態様において、本発明の創傷ドレッシングデバイスを創傷に貼り付ける段階を含む、創傷の治癒を促進する方法を対象としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】吸熱層及び隣接した創傷接触層を示す、本低温適応性創傷ドレッシングデバイスの基本的実施形態の拡大側面図である。
【図2】創傷接触底面層とドレッシングカバー最上層との間に密閉/サンドイッチされた吸熱層及び隣接した創傷接触層を示す、本低温適応性創傷ドレッシングデバイスの一実施形態の拡大側面図である。
【図3A】本低温適応性創傷ドレッシングデバイスの代替実施形態の拡大側面図である。
【図3B】本低温適応性創傷ドレッシングデバイスの代替実施形態の拡大側面図である。
【図3C】本低温適応性創傷ドレッシングデバイスの代替実施形態の拡大側面図である。
【図3D】本低温適応性創傷ドレッシングデバイスの代替実施形態の拡大側面図である。
【図4】「ピギーバック」構成を形成するための特定の支持層の伸長を示す、図3Dの実施形態の側断面図であり、創傷接触マトリックスは別の取り外し可能な無菌カバーにより無菌状態に維持しながら、SAPマトリックスは単独で水和することができる。
【図5】アクリル酸とアクリル酸ナトリウムとの重合を描写する反応スキームを示す図である。
【図6】架橋ポリマーの概略図である。
【図7】水との接触時の高吸収性ポリマーの膨潤を概略的に描写する図である。
【図8】高吸収性ポリマーの吸収特性に対するイオン及びpHの影響を示す図である。
【図9】モノマーが溶液中で重合される重合(ゲル)プロセスにより生成したSAPの画像を示す図である。このプロセスから得られたSAPは、不規則な(チップ様の)形態を有する。
【図10】モノマー液滴が界面活性剤により安定化した媒体中で懸濁される逆懸濁プロセスを使用して生成したSAPの画像を示す図である。このプロセスは、2つの異なる形態をもたらすことができる。
【図10A】このように生成したSAPの凝集ビーズ形態を示す図である。
【図10B】このように生成したSAPのブロッコリー様の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、冷却及び液体吸収能力を有し、無菌及び非無菌環境において創傷及び他の損傷をドレッシングするのに有用である低温適応性創傷ドレッシングデバイスである。本発明は、滅菌可能であるように、及び身体の皮膚/経皮的創傷または外科切開部と直接接触するように構成されているため、広く使用されている包帯ではない。該デバイスの冷却能力は、貼付部位で一時的に身体の温度を低下させること、及びそのような局所的温度低減に付随する利益をもたらすことを目的としている。
【0009】
好ましい実施形態において、水和吸収性ポリマーでできた吸熱部が該デバイスの一部に含有されている。好ましくは、該水和ポリマーは、ヒドロゲルの形態の高吸収性ポリマー(SAP)として知られている種類のものである。例えば、Orchardへの米国特許第4,668,564号、及びParkらへの米国特許第5,750,585号を参照のこと。高吸収性ポリマーは、一般に、アクリル酸とアクリル酸ナトリウムとの架橋コポリマーである(図5)。高吸収性ポリマーの他の材料は、ポリアクリルアミドコポリマー、エチレンマレイン酸無水物コポリマー、架橋カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールコポリマー、架橋ポリエチレンオキシド、及びポリアクリロニトリルのデンプングラフトコポリマーを含むが、これらに限定されない。それらは粉末または微粒子形態で市販されている。これらの物質は、それらの重量の約500倍の純水を急速に(すなわち、適切な条件下、数秒で)吸収することができるため、高吸収性と見なされる。
【0010】
この物質に関して、「高吸収」特性を得るために、二官能性分子などの架橋剤を用いたコポリマー鎖の架橋が必要となる。二官能性分子は、遊離カルボキシル基と反応できなければならない。架橋後、ポリマー鎖は互いに結合している(図6)。
【0011】
例示的架橋剤は、ポリヒドロキシ化合物、ジエポキシ化合物、イソシアネート、エチレングリコールジメタクリレート(EGDM)、及びN,N-メチレンビスアクリルアミド(BIS)を含むが、これらに限定されない。
【0012】
乾燥状態では、高吸収性物質のマトリックスの網目は、折り重なって/圧縮されて潰れている。該マトリックスは親水性が高く、水和時に水と接触すると膨張する(図7)。初期の乾燥(粉末または微粒子)物質はゲルに変化し、初期の体積より数百倍大きい体積まで膨張する。合成SAPの大部分は粉末/粒子である。市販されている製品の一般的平均粒径は約450μmであり、粒径の分布は比較的狭い。
【0013】
SAPの性能は、その物理的パラメーター、架橋、粒径分布、形態等、さらにはそれらが水和される及び/またはその後に接触する流体により特徴付けられる。吸収特性に対するイオン及びpHの影響は、例として図8に示している。硬水中の二価イオン、例えば、マグネシウム及びカルシウム、ならびにナトリウムイオンなどは、SAPの吸収特性を顕著に低下させ得る。さらに、pHも吸収に影響を及ぼす可能性があり、一般的吸収極大は4と8の間のpH値である。
【0014】
大抵のSAPは、モノマーが溶液中で重合される重合(ゲル)プロセスにより合成される。これによりポリマーブロックの形成が生じ、該ブロックは所望の粒径を得るために篩にかけられる。このプロセスから得られたSAPは、不規則な(チップ様)形態を有する(図9)。
【0015】
しかし、より均一な形態を有するSAPを得ることは可能である。これは、モノマー液滴が界面活性剤により安定化した媒体中で懸濁される逆懸濁プロセスを使用して達成される。重合は各液滴で発生し、2つの異なる形態、凝集ビーズ(図10A)またはブロッコリー様の形態(図10B)をもたらすことができる。前者は水と接触すると水和して約100秒間でゲルを生成する。後者は、その固有の表面積(約1m2/gm)が非常に大きいため、水和して約5秒間でゲルを生成することができる。
【0016】
Table I(表1)は、本発明における活用に望ましいSAPの特性を示す。
【0017】
【表1】
【0018】
さらなる例として、以下のSAPは本発明において活用することができる。その重量の数百倍以上の純水を数秒で吸収することができるSAPである、Aquakeep(登録商標)及びNorsocryl(登録商標)。(Arkema、Colombes Cedex、フランス、www.arkema.com)。膨潤後、SAP液体はゲルとなる。一般に、SAPは、非粘性流体の吸収及び保持を実行可能であり、例えば、赤ん坊用おむつ、トイレトレーニング用パンツ、成人用失禁用製品及び生理用ナプキンなどのような使い捨て製品において使用される。これらのSAPは、一般に、アクリル酸及びアクリル酸ナトリウムの架橋コポリマーである。
【0019】
上記のSAPの合計吸収能力の約20%を超えない割合でNaCl0.9%または脱塩/無菌水を用いて水和すると(自由吸収g/g-Edana推奨試験法)、吸熱部は適切に冷却または凍結することができる。本ドレッシング材の創傷部位への貼付の前に該水和高吸収性ヒドロゲルを冷やすことにより、該ドレッシング材の吸熱(熱吸収)特徴がもたらされる。
【0020】
次に図面を参照すると、本発明の好ましい実施形態の詳細が図式的及び概略的に例示されている。図面における同様の要素は同様の番号により表され、任意の同様の要素は、異なる小文字の添え字付きの同様の番号により表される。
【0021】
図1に例示しているように、貼り付けられた創傷の治癒を促進するように設計された本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10は、2つの主要な構造部材、創傷カバー12、及び吸熱または熱吸収層50を含む。さらに、本創傷ドレッシングデバイス10は、創傷カバー12に配置された創傷治療物質40を含む。図1に例示している好ましい実施形態において、創傷カバー12は、創傷接触面20を有する創傷接触層16を備える。創傷治療物質40は創傷接触層16に含有されている。熱吸収層50は創傷接触層16と熱連通状態にある。熱吸収層50は、創傷接触層16から熱を除去し、したがって創傷接触面20の温度を周囲温度未満まで低減するように構成されている。該ドレッシング材が貼り付けられている創傷部からの熱は吸熱層50に引き込まれ、それにより創傷部分の局所的身体温度が低減する。このように、本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10は、創傷部位の冷却に付随する治癒利益をもたらす。さらに、創傷接触層16中の創傷治療物質40は、該接触層16から拡散して創傷部位に入ることができ、創傷治癒を生化学的に促進するための生物活性組成物として機能する。したがって、本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10は、簡素なドレッシング材の受動的な保護機能のみではなく、積極的に治癒を促進するための二重の創傷治癒機構の利益をもたらす。創傷の治癒を促進するためのこれらの利益は、熱の除去、創傷滲出物及び血液の吸収という物理的機能ならびに生物活性組成物を提供するという生化学的機能である。
【0022】
本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10の創傷カバー部12は、水性流体がその中へ、さらにそこを通って自由に拡散することを可能にする多孔性マトリックス30として構成された創傷接触層16を有する。この実施形態におけるマトリックス30は繊維状物質32を含む。しかし、創傷ドレッシングに適切な構造的完全性を維持するのに適しているならば、繊維以外の物質を使用してもよい。多孔性マトリックス30は、流体吸収特性を有し、体液及び/または創傷滲出物を吸収することができる。適切な流体吸収特性を有する繊維SAPは当技術分野において知られており、本発明における活用のために当業者により選択可能である。該マトリックスにおいて使用可能な架橋SAPの支持体の例は、セルロース、木材パルプ、アルギネート等である。創傷接触層及びドレッシングカバー最上層は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルまたは当技術分野において知られている任意の他の生体適合性合成層を包含することができる。
【0023】
創傷カバー12の創傷接触層16は、創傷部位で創傷に接触することを目的とした創傷接触面20を有する。図1に例示している実施形態は、単に創傷接触層16の表面そのものである。しかし、図2に例示しているように、創傷接触面20aは、創傷接触層16と同じ物質または異なる物質でできた別の多孔性表層22でもよく、多孔性表層22はその全域にわたって分布して流体及び溶質の通過を可能にする適切な多数の孔24を有する。例えば、創傷接触層16のマトリックス物質30が創傷への付着を防止されるならば、創傷接触面20aは、非粘着性の別の多孔性表面22を使用して完成させることができる。この非粘着性の別の多孔性表面は、天然のヒアルロン酸(HA)または架橋HA(例えば、繊維、顆粒、粉末、ゲル)またはHA-組成物様クリーム、ゲル、水溶液ならびに/あるいはキトサン、ジアセレイン及び/またはそれらの誘導体を含浸し得る。上述の組成物は、抗炎症機能(例えば、ジアセレイン、HA)及び創傷治癒プロセスにおいて通常必要な内因性HAを代替するための類似物をもたらす。
【0024】
別の実施形態において、創傷接触層の物質は、上述の組成物を含浸させたコラーゲン、ポリ(L-ラクチド)(ポリ乳酸、PLLA)、及び/またはポリ(グリコール-co-乳酸)(PGLA)でもよい。
【0025】
各図にやはり例示されているように、本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10は、創傷治療物質40を含浸させた繊維状物質32からなる多孔性マトリックス30である創傷接触層16を有する。創傷治療物質40は、創傷治癒効果を有する生体作用組成物であり、1つまたは複数の活性成分46から構成され得る。例示している実施形態において、天然のヒアルロン酸組成物46aは創傷治療物質40の活性成分である。天然のヒアルロン酸組成物は、ゲル、クリーム、天然のヒアルロン酸繊維46aまたはこれらのいずれかの組合せの形態でマトリックス物質30に含有され得る。他の活性成分46bは、同様に、上述したものなどのマトリックス物質30に含有され得る。
【0026】
図3Aに例示しているように、本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10は、創傷接触層16の別の多孔性表面である創傷接触面22aを有する創傷カバー12を有し、別の多孔性表面22aは、機械的に創傷接触層16と係合する物理的表面フィーチャー60を有する。物理的表面フィーチャー60は、創傷接触層16と係合し、創傷接触層16が創傷接触面22aに対して滑動するのを防止し、創傷接触層16の創傷接触面22からの離脱を防止するのに役立つ。このことは、熱吸収層50の水和性質を考慮すると、熱吸収層50が創傷接触層16と流体連通状態である実施形態において有用である。例えば、図3A及び3Bにおいて、熱吸収層50は創傷接触層16と開放流体連通状態にある。図3Cにおいて、部分的流体障壁66は、熱吸収層50を創傷接触層16から隔てる。この実施形態において、熱吸収層50は、部分的流体障壁66を貫く孔25が原因で、創傷接触層16と部分的に制限された流体連通状態にある。図3Dにおいて、完全な流体障壁68は、熱吸収層50を創傷接触層16から隔てる。完全な流体障壁68は、該層を介したガス交換を可能にし得る。この実施形態において、熱吸収層50は、創傷接触層16と流体連通状態になることを妨げられる。図3A〜3Dに例示している実施形態において、係合表面フィーチャー60は、別の創傷接触面22aを大まかに打ち抜いた穴である。物理的表面フィーチャーは、必ずしも別の多孔性層22の孔フィーチャー24と同じではない。物理的表面フィーチャー60は、さらに孔フィーチャー24の通過機能を果たし得るが、物理的表面フィーチャー60は、単純な孔フィーチャー24は提供できないかもしれない機械的係合フィーチャーも提供する。
【0027】
例示している好ましい実施形態において、低温適応性創傷ドレッシングデバイス10の熱吸収層50は、水和「高吸収性ポリマー」(SAP)70を含んでいた。SAP70は当技術分野において知られている。例としては、Parlらへの米国特許第5,750,585号及びPerraultらへの米国特許第6,800,278号で開示されているものが挙げられる。活用するSAP70の選択及びその相対的生体適合性は、熱吸収層50が創傷接触層16と流体連通状態にある実施形態を実施できるかどうかに影響を及ぼすであろう。
【0028】
本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10を自己完結型ユニットにするために、吸熱層50の上面72に包帯カバー74を加えることができる。図3B〜3Dを参照のこと。包帯カバー74は、当業者に知られており当業者により選択可能な多数の物質及び構成のいずれかを使用して完成させることができる。例えば、上部カバードレッシング層74は、閉塞性でもよく、通気性が制限されていても、流体を通過させるための孔25を有していてもよい。上部カバードレッシング層74は、接着剤付きカバー(図示せず)を用いて保護することができる。
【0029】
また、図4に例示しているように、図3Dの実施形態は、「ピギーバック」構成を形成するように構成することができ、創傷接触マトリックス12は別の取り外し可能な無菌カバー90により無菌状態に維持しながら、SAPマトリックス50は単独で水和することができる。
【0030】
本発明の創傷ドレッシング材は、患者、例えばヒトなどの哺乳動物の創傷の治癒を促進する方法において使用することができ、前記方法は、本発明の創傷ドレッシング材を前記創傷に貼り付ける段階を含む。
【0031】
本発明は、以下の非限定的な実施例及び添付の図面によりさらに例示する。当業者が本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載の対応する例示的実施形態と実質的に同じ機能を実行する、または実質的に同じ結果を達成する現在存在しているまたは後に展開する他の組成物、手段、用途、方法、またはステップは、本発明に従って同様に利用し得る。
【0032】
(実施例)
(実施例1)
マトリックスにヒアルロン酸を混入させる
合計重量50〜500g/m2のセルロース繊維、熱可塑性繊維及びSAP粉末のような十分量のマトリックス物質を所定量の乾燥医療グレードヒアルロン酸ナトリウム顆粒(例えば0.1%w/wのHA濃度を得るための量)と共に粉末混合器に入れ、120rpmで1時間混合した。その後、得られた混合物を55℃でカレンダープレスにより圧縮して直径2〜4mmの乾燥「ケーク」とした。このプロセスにより得られたマトリックスは、36℃の温度を有する水で溶出すると、カルバゾール法により測定したところ60〜80%のHAを放出する。このことは、HAを混入したマトリックスがHAの吸収及び創傷表面への放出のための貯蔵所として役立つことができることを示す。
【0033】
(実施例2)
マトリックスに脱アセチル化キトサンを混入させる
同じプロセスを用いて、60〜95%の脱アセチル化率を特徴とする動物または非動物由来の医療グレードキトサンをマトリックスに混入するのに同じプロセスを使用した。
【0034】
(実施例3)
被覆物質にヒアルロン酸を含浸させる
被覆物質への0.1〜0.5%のHA(w/w)の含浸を達成するために、適切な地質及び強度の不織熱可塑性繊維の織物を誘導して最初にエアロゾルチャンバに通し、その後、乾燥チャンバに通した。乾燥の前に該不織物質にHAベースの水溶液をスプレー加工及びパディング加工することは含浸の代替方法である。
【0035】
(実施例4)
マトリックスを被覆物質と接合する
被覆物質の内側のマトリックスの機械的安定化は、いったん水に浸して垂直力に曝すとパッドの内側のマトリックス物質の転位につながるランプ化(lumping)/凝塊形成を回避するための重要な手段である。このことは、例えば、十分量の熱可塑性繊維または粉末をこの程度まで含有していたマトリックスへの被覆物質の部分的超音波接合により達成された。
【0036】
(実施例5)
該デバイスの積極的冷却及び創傷治癒効果
その術後経過を改善するために、滅菌したプロトタイプ版の低温適応性創傷ドレッシングデバイスを鏡視下半月板切除術後の患者において使用した。各パッドをエチレンオキシドにより滅菌し、無菌手術環境で包装を開けた。
【0037】
30人の患者がこのパイロット比較試験に含まれ、プロトタイプ創傷パッド治療群(n=20人の患者)及び対照群(n=10人の患者)の2群に分けた。
【0038】
プロトタイプ創傷パッド治療群は以下の手順を経験した。
【0039】
鏡視下半月板切除術の完了後、20人の患者の全てにおいて皮膚縫合のためにSteri-stripを使用した。各患者のために、プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイス(寸法12×22cm)を無菌包装から取り出し、4℃まで冷却した約100mLの0.9%NaCl(約0.5-0.8mL NaCl/cm2)を該デバイスの上部に注入した。プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイスは、この冷水を該デバイスのSAP部分に保持した。10mlのViscoseal(TRB Chemedica)、緩衝液中に0.5%発酵性ヒアルロン酸を含有する無菌粘弾性溶液を、創傷表面と接触して置かれるプロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイスの下部に塗布した。次いで、プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイスを縫合した切開創(1関節当たり3箇所)に貼り付け、閉塞性ドレッシング材及び伸縮性包帯でカバーした。患者に鎮痛薬または古典的NSAIDを処方し、各患者が摂取した数を記録した。
【0040】
対照群は以下の手順を経験した。
【0041】
鏡視下半月板切除術の完了後、この群の10人の患者において皮膚縫合のためにSteri-stripを使用した。標準的な市販されている創傷ドレッシング材を創傷の上に置いた。この群の患者において冷却パックは使用しなかった。患者に古典的NSAIDを処方し、各患者が摂取した数を記録した。NSAIDを摂取したにもかかわらず依然として痛みを有していた患者の場合、鎮痛薬を処方し、各患者が摂取した鎮痛薬の種類及び量を記録した。
【0042】
治療した関節の痛みは、術後約1時間(その時間までに麻酔薬が切れている)で、次いで、24時間の術後期にわたって2時間毎に(患者が覚醒しているとき)、100mm視覚アナログ尺度(VAS)を使用して患者が評価した。この尺度は、「無痛」を示すゼロ(0)基準点及び「激痛」を示す百基準点(100)を有する。
【0043】
看護師が術後の最初の1時間に10分毎に標準的温度計を使用して皮膚温度を測定し、その温度計の先端は手術領域の皮膚に隣接して置いた。
【0044】
測定またはモニターしたのは、
- 皮膚温度低減の持続期間、
- 通常のNSAID摂取量に加えて鎮痛薬摂取量、
- 関節滲出液、
- 皮膚浸軟、及び
- 凍結療法に対する耐性またはHA/有害事象に対するアレルギー性反応
であった。
【0045】
結果は、プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイス群において、痛みの平均値が最初の24時間でVASで3cm(範囲:2〜6cm)であり、2人の患者が、術後約24時間の退院時にNSAIDに加えて1回量の鎮痛薬を必要としたことを示した。
【0046】
対照群において、痛みの平均値は最初の24時間で4.5cm(範囲2〜9cm)であり、5人の患者が、術後約24時間の退院時にNSAIDに加えて鎮痛薬を必要としたことを示した。
【0047】
標準的ドレッシング材と比較して、プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイスが術後の痛みを急速に低下させ、驚いたことにNSAID節約効果を有していたと結論づけることができる。対照群と比較して最も顕著な痛みの低減は術後の最初の4時間に見られ、患者が術後に必要とした救済薬(escape medication)が少なかった。
【0048】
手術部位近くの皮膚温度は、両方の群において、関節鏡検査及びSteri-strip(基準値)の貼付の完了直後に、ならびにその後、術後の最初の60分間に10分毎に計測した。両方の群の患者において、手術部位近くの皮膚の平均温度は33℃であった。
【0049】
プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイス群において、平均皮膚温度は、プロトタイプデバイスの貼付の5分後に14℃まで低下し、22分の平均期間、低レベルなままであった。その後、次の33分間にわたって30℃に達するまで皮膚温度が漸進的に増加した。
【0050】
対照群における皮膚温度は、最初の60分間、32℃の平均値のままであった。
【0051】
結論として、プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイスは、対照群と比較して皮膚温度の顕著な低下をもたらした。
【0052】
驚いたことに、プロトタイプ創傷パッドで治療した群において、冷却パッドの使用は、24時間の観察期間の間、皮膚の湿気の凝縮につながらず、皮膚浸軟は観察されなかった。
【0053】
プロトタイプ創傷パッドは創傷滲出物の染みが付いたが、滲出物の吸収後に乾燥したままであった。該プロトタイプの創傷接触面は、SAP層の残存する湿気吸収能力により、乾燥したままであった。
【0054】
プロトタイプ創傷パッドで治療した群の患者は、60箇所の切開部(1膝当たり3箇所)全てにおいて一次創傷治癒は急速であり、感染は観察されなかった。6カ月検診において、ケロイド形成または創傷治癒遅延は観察されなかった。
【0055】
対照群において、30箇所の切開部(1膝当たり3箇所)全てにおいて、一次創傷治癒は遅く、滲出物が多く生成したが、感染は観察されなかった。6カ月後、2人の患者がケロイドを示した。
【0056】
結論として、上記の結果は、プロトタイプ創傷パッドが術後の創傷手当に安全及び効果的であることを示した。その皮膚冷却効果により、プロトタイプ創傷パッドは、対照群と比較して創傷滲出物及び血腫の量を低減した。プロトタイプ創傷パッドで治療した群において創傷修復がより急速だったのは、おそらくヒアルロン酸が存在したためであろう。創傷表面はわずかに湿っており、皮膚浸軟または他の有害事象は観察されなかった。
【0057】
上記の記述は多くの詳細を含むが、本発明の範囲を制限するものではなく、その1つまたは別の好ましい実施形態を例示するものと解釈されるべきである。当業者には明らかであろう多くの他の変法が可能である。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって定義されるべきであり、実施形態によってのみ定義されるべきではない。
【0058】
本明細書において引用した全ての文書は、参照によりその全体を組み込む。
【符号の説明】
【0059】
10 低温適応性創傷ドレッシングデバイス
12 創傷カバー
16 創傷接触層
20 創傷接触面
22 多孔性表層
24 孔
30 多孔性マトリックス
32 繊維状物質
40 創傷治療物質
46 活性成分
50 熱吸収層
60 物理的表面フィーチャー
66 部分的流体障壁
68 完全な流体障壁
70 水和「高吸収性ポリマー」(SAP)
74 包帯カバー
90 取り外し可能な無菌カバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の物理的表層フィーチャーを有し、創傷の治癒を促進するように設計された組成物を含有する創傷カバーデバイスの分野のものである。
【背景技術】
【0002】
創傷カバーデバイスは当技術分野において知られている。しかし、創傷治癒を促進し、流体の封じ込め及び創傷分泌物の吸収を可能にする創傷ドレッシング材が依然として必要とされている。本発明はこの要求を満たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,668,564号
【特許文献2】米国特許第5,750,585号
【特許文献3】米国特許第6,800,278号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、創傷治癒組成物を含有し、周囲とは異なる温度を維持する、例えば、その下にある組織に対する熱吸収効果を達成及び維持するように適応された創傷接触層を有する創傷ドレッシング材に関する。本発明のデバイスの固有の物理化学的構造により、皮膚浸軟の回避と同時に、流体の封じ込め及び創傷分泌物の吸収が可能となる。
【0005】
したがって、本発明は、一態様において、
- 創傷接触面を有する創傷接触層を備えた創傷カバーと、
- 創傷接触層に含有された創傷治療物質と、
- 創傷接触層と熱連通状態にある熱吸収層であって、創傷接触層から熱を除去するように適応可能であり、創傷接触面の温度を周囲温度未満まで低減させる熱吸収層と
を含む、貼り付けられた創傷の治癒を促進するように設計された低温適応性創傷ドレッシングデバイスに関する。
【0006】
本発明は、別の態様において、本発明の創傷ドレッシングデバイスを創傷に貼り付ける段階を含む、創傷の治癒を促進する方法を対象としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】吸熱層及び隣接した創傷接触層を示す、本低温適応性創傷ドレッシングデバイスの基本的実施形態の拡大側面図である。
【図2】創傷接触底面層とドレッシングカバー最上層との間に密閉/サンドイッチされた吸熱層及び隣接した創傷接触層を示す、本低温適応性創傷ドレッシングデバイスの一実施形態の拡大側面図である。
【図3A】本低温適応性創傷ドレッシングデバイスの代替実施形態の拡大側面図である。
【図3B】本低温適応性創傷ドレッシングデバイスの代替実施形態の拡大側面図である。
【図3C】本低温適応性創傷ドレッシングデバイスの代替実施形態の拡大側面図である。
【図3D】本低温適応性創傷ドレッシングデバイスの代替実施形態の拡大側面図である。
【図4】「ピギーバック」構成を形成するための特定の支持層の伸長を示す、図3Dの実施形態の側断面図であり、創傷接触マトリックスは別の取り外し可能な無菌カバーにより無菌状態に維持しながら、SAPマトリックスは単独で水和することができる。
【図5】アクリル酸とアクリル酸ナトリウムとの重合を描写する反応スキームを示す図である。
【図6】架橋ポリマーの概略図である。
【図7】水との接触時の高吸収性ポリマーの膨潤を概略的に描写する図である。
【図8】高吸収性ポリマーの吸収特性に対するイオン及びpHの影響を示す図である。
【図9】モノマーが溶液中で重合される重合(ゲル)プロセスにより生成したSAPの画像を示す図である。このプロセスから得られたSAPは、不規則な(チップ様の)形態を有する。
【図10】モノマー液滴が界面活性剤により安定化した媒体中で懸濁される逆懸濁プロセスを使用して生成したSAPの画像を示す図である。このプロセスは、2つの異なる形態をもたらすことができる。
【図10A】このように生成したSAPの凝集ビーズ形態を示す図である。
【図10B】このように生成したSAPのブロッコリー様の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、冷却及び液体吸収能力を有し、無菌及び非無菌環境において創傷及び他の損傷をドレッシングするのに有用である低温適応性創傷ドレッシングデバイスである。本発明は、滅菌可能であるように、及び身体の皮膚/経皮的創傷または外科切開部と直接接触するように構成されているため、広く使用されている包帯ではない。該デバイスの冷却能力は、貼付部位で一時的に身体の温度を低下させること、及びそのような局所的温度低減に付随する利益をもたらすことを目的としている。
【0009】
好ましい実施形態において、水和吸収性ポリマーでできた吸熱部が該デバイスの一部に含有されている。好ましくは、該水和ポリマーは、ヒドロゲルの形態の高吸収性ポリマー(SAP)として知られている種類のものである。例えば、Orchardへの米国特許第4,668,564号、及びParkらへの米国特許第5,750,585号を参照のこと。高吸収性ポリマーは、一般に、アクリル酸とアクリル酸ナトリウムとの架橋コポリマーである(図5)。高吸収性ポリマーの他の材料は、ポリアクリルアミドコポリマー、エチレンマレイン酸無水物コポリマー、架橋カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールコポリマー、架橋ポリエチレンオキシド、及びポリアクリロニトリルのデンプングラフトコポリマーを含むが、これらに限定されない。それらは粉末または微粒子形態で市販されている。これらの物質は、それらの重量の約500倍の純水を急速に(すなわち、適切な条件下、数秒で)吸収することができるため、高吸収性と見なされる。
【0010】
この物質に関して、「高吸収」特性を得るために、二官能性分子などの架橋剤を用いたコポリマー鎖の架橋が必要となる。二官能性分子は、遊離カルボキシル基と反応できなければならない。架橋後、ポリマー鎖は互いに結合している(図6)。
【0011】
例示的架橋剤は、ポリヒドロキシ化合物、ジエポキシ化合物、イソシアネート、エチレングリコールジメタクリレート(EGDM)、及びN,N-メチレンビスアクリルアミド(BIS)を含むが、これらに限定されない。
【0012】
乾燥状態では、高吸収性物質のマトリックスの網目は、折り重なって/圧縮されて潰れている。該マトリックスは親水性が高く、水和時に水と接触すると膨張する(図7)。初期の乾燥(粉末または微粒子)物質はゲルに変化し、初期の体積より数百倍大きい体積まで膨張する。合成SAPの大部分は粉末/粒子である。市販されている製品の一般的平均粒径は約450μmであり、粒径の分布は比較的狭い。
【0013】
SAPの性能は、その物理的パラメーター、架橋、粒径分布、形態等、さらにはそれらが水和される及び/またはその後に接触する流体により特徴付けられる。吸収特性に対するイオン及びpHの影響は、例として図8に示している。硬水中の二価イオン、例えば、マグネシウム及びカルシウム、ならびにナトリウムイオンなどは、SAPの吸収特性を顕著に低下させ得る。さらに、pHも吸収に影響を及ぼす可能性があり、一般的吸収極大は4と8の間のpH値である。
【0014】
大抵のSAPは、モノマーが溶液中で重合される重合(ゲル)プロセスにより合成される。これによりポリマーブロックの形成が生じ、該ブロックは所望の粒径を得るために篩にかけられる。このプロセスから得られたSAPは、不規則な(チップ様)形態を有する(図9)。
【0015】
しかし、より均一な形態を有するSAPを得ることは可能である。これは、モノマー液滴が界面活性剤により安定化した媒体中で懸濁される逆懸濁プロセスを使用して達成される。重合は各液滴で発生し、2つの異なる形態、凝集ビーズ(図10A)またはブロッコリー様の形態(図10B)をもたらすことができる。前者は水と接触すると水和して約100秒間でゲルを生成する。後者は、その固有の表面積(約1m2/gm)が非常に大きいため、水和して約5秒間でゲルを生成することができる。
【0016】
Table I(表1)は、本発明における活用に望ましいSAPの特性を示す。
【0017】
【表1】
【0018】
さらなる例として、以下のSAPは本発明において活用することができる。その重量の数百倍以上の純水を数秒で吸収することができるSAPである、Aquakeep(登録商標)及びNorsocryl(登録商標)。(Arkema、Colombes Cedex、フランス、www.arkema.com)。膨潤後、SAP液体はゲルとなる。一般に、SAPは、非粘性流体の吸収及び保持を実行可能であり、例えば、赤ん坊用おむつ、トイレトレーニング用パンツ、成人用失禁用製品及び生理用ナプキンなどのような使い捨て製品において使用される。これらのSAPは、一般に、アクリル酸及びアクリル酸ナトリウムの架橋コポリマーである。
【0019】
上記のSAPの合計吸収能力の約20%を超えない割合でNaCl0.9%または脱塩/無菌水を用いて水和すると(自由吸収g/g-Edana推奨試験法)、吸熱部は適切に冷却または凍結することができる。本ドレッシング材の創傷部位への貼付の前に該水和高吸収性ヒドロゲルを冷やすことにより、該ドレッシング材の吸熱(熱吸収)特徴がもたらされる。
【0020】
次に図面を参照すると、本発明の好ましい実施形態の詳細が図式的及び概略的に例示されている。図面における同様の要素は同様の番号により表され、任意の同様の要素は、異なる小文字の添え字付きの同様の番号により表される。
【0021】
図1に例示しているように、貼り付けられた創傷の治癒を促進するように設計された本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10は、2つの主要な構造部材、創傷カバー12、及び吸熱または熱吸収層50を含む。さらに、本創傷ドレッシングデバイス10は、創傷カバー12に配置された創傷治療物質40を含む。図1に例示している好ましい実施形態において、創傷カバー12は、創傷接触面20を有する創傷接触層16を備える。創傷治療物質40は創傷接触層16に含有されている。熱吸収層50は創傷接触層16と熱連通状態にある。熱吸収層50は、創傷接触層16から熱を除去し、したがって創傷接触面20の温度を周囲温度未満まで低減するように構成されている。該ドレッシング材が貼り付けられている創傷部からの熱は吸熱層50に引き込まれ、それにより創傷部分の局所的身体温度が低減する。このように、本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10は、創傷部位の冷却に付随する治癒利益をもたらす。さらに、創傷接触層16中の創傷治療物質40は、該接触層16から拡散して創傷部位に入ることができ、創傷治癒を生化学的に促進するための生物活性組成物として機能する。したがって、本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10は、簡素なドレッシング材の受動的な保護機能のみではなく、積極的に治癒を促進するための二重の創傷治癒機構の利益をもたらす。創傷の治癒を促進するためのこれらの利益は、熱の除去、創傷滲出物及び血液の吸収という物理的機能ならびに生物活性組成物を提供するという生化学的機能である。
【0022】
本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10の創傷カバー部12は、水性流体がその中へ、さらにそこを通って自由に拡散することを可能にする多孔性マトリックス30として構成された創傷接触層16を有する。この実施形態におけるマトリックス30は繊維状物質32を含む。しかし、創傷ドレッシングに適切な構造的完全性を維持するのに適しているならば、繊維以外の物質を使用してもよい。多孔性マトリックス30は、流体吸収特性を有し、体液及び/または創傷滲出物を吸収することができる。適切な流体吸収特性を有する繊維SAPは当技術分野において知られており、本発明における活用のために当業者により選択可能である。該マトリックスにおいて使用可能な架橋SAPの支持体の例は、セルロース、木材パルプ、アルギネート等である。創傷接触層及びドレッシングカバー最上層は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルまたは当技術分野において知られている任意の他の生体適合性合成層を包含することができる。
【0023】
創傷カバー12の創傷接触層16は、創傷部位で創傷に接触することを目的とした創傷接触面20を有する。図1に例示している実施形態は、単に創傷接触層16の表面そのものである。しかし、図2に例示しているように、創傷接触面20aは、創傷接触層16と同じ物質または異なる物質でできた別の多孔性表層22でもよく、多孔性表層22はその全域にわたって分布して流体及び溶質の通過を可能にする適切な多数の孔24を有する。例えば、創傷接触層16のマトリックス物質30が創傷への付着を防止されるならば、創傷接触面20aは、非粘着性の別の多孔性表面22を使用して完成させることができる。この非粘着性の別の多孔性表面は、天然のヒアルロン酸(HA)または架橋HA(例えば、繊維、顆粒、粉末、ゲル)またはHA-組成物様クリーム、ゲル、水溶液ならびに/あるいはキトサン、ジアセレイン及び/またはそれらの誘導体を含浸し得る。上述の組成物は、抗炎症機能(例えば、ジアセレイン、HA)及び創傷治癒プロセスにおいて通常必要な内因性HAを代替するための類似物をもたらす。
【0024】
別の実施形態において、創傷接触層の物質は、上述の組成物を含浸させたコラーゲン、ポリ(L-ラクチド)(ポリ乳酸、PLLA)、及び/またはポリ(グリコール-co-乳酸)(PGLA)でもよい。
【0025】
各図にやはり例示されているように、本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10は、創傷治療物質40を含浸させた繊維状物質32からなる多孔性マトリックス30である創傷接触層16を有する。創傷治療物質40は、創傷治癒効果を有する生体作用組成物であり、1つまたは複数の活性成分46から構成され得る。例示している実施形態において、天然のヒアルロン酸組成物46aは創傷治療物質40の活性成分である。天然のヒアルロン酸組成物は、ゲル、クリーム、天然のヒアルロン酸繊維46aまたはこれらのいずれかの組合せの形態でマトリックス物質30に含有され得る。他の活性成分46bは、同様に、上述したものなどのマトリックス物質30に含有され得る。
【0026】
図3Aに例示しているように、本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10は、創傷接触層16の別の多孔性表面である創傷接触面22aを有する創傷カバー12を有し、別の多孔性表面22aは、機械的に創傷接触層16と係合する物理的表面フィーチャー60を有する。物理的表面フィーチャー60は、創傷接触層16と係合し、創傷接触層16が創傷接触面22aに対して滑動するのを防止し、創傷接触層16の創傷接触面22からの離脱を防止するのに役立つ。このことは、熱吸収層50の水和性質を考慮すると、熱吸収層50が創傷接触層16と流体連通状態である実施形態において有用である。例えば、図3A及び3Bにおいて、熱吸収層50は創傷接触層16と開放流体連通状態にある。図3Cにおいて、部分的流体障壁66は、熱吸収層50を創傷接触層16から隔てる。この実施形態において、熱吸収層50は、部分的流体障壁66を貫く孔25が原因で、創傷接触層16と部分的に制限された流体連通状態にある。図3Dにおいて、完全な流体障壁68は、熱吸収層50を創傷接触層16から隔てる。完全な流体障壁68は、該層を介したガス交換を可能にし得る。この実施形態において、熱吸収層50は、創傷接触層16と流体連通状態になることを妨げられる。図3A〜3Dに例示している実施形態において、係合表面フィーチャー60は、別の創傷接触面22aを大まかに打ち抜いた穴である。物理的表面フィーチャーは、必ずしも別の多孔性層22の孔フィーチャー24と同じではない。物理的表面フィーチャー60は、さらに孔フィーチャー24の通過機能を果たし得るが、物理的表面フィーチャー60は、単純な孔フィーチャー24は提供できないかもしれない機械的係合フィーチャーも提供する。
【0027】
例示している好ましい実施形態において、低温適応性創傷ドレッシングデバイス10の熱吸収層50は、水和「高吸収性ポリマー」(SAP)70を含んでいた。SAP70は当技術分野において知られている。例としては、Parlらへの米国特許第5,750,585号及びPerraultらへの米国特許第6,800,278号で開示されているものが挙げられる。活用するSAP70の選択及びその相対的生体適合性は、熱吸収層50が創傷接触層16と流体連通状態にある実施形態を実施できるかどうかに影響を及ぼすであろう。
【0028】
本低温適応性創傷ドレッシングデバイス10を自己完結型ユニットにするために、吸熱層50の上面72に包帯カバー74を加えることができる。図3B〜3Dを参照のこと。包帯カバー74は、当業者に知られており当業者により選択可能な多数の物質及び構成のいずれかを使用して完成させることができる。例えば、上部カバードレッシング層74は、閉塞性でもよく、通気性が制限されていても、流体を通過させるための孔25を有していてもよい。上部カバードレッシング層74は、接着剤付きカバー(図示せず)を用いて保護することができる。
【0029】
また、図4に例示しているように、図3Dの実施形態は、「ピギーバック」構成を形成するように構成することができ、創傷接触マトリックス12は別の取り外し可能な無菌カバー90により無菌状態に維持しながら、SAPマトリックス50は単独で水和することができる。
【0030】
本発明の創傷ドレッシング材は、患者、例えばヒトなどの哺乳動物の創傷の治癒を促進する方法において使用することができ、前記方法は、本発明の創傷ドレッシング材を前記創傷に貼り付ける段階を含む。
【0031】
本発明は、以下の非限定的な実施例及び添付の図面によりさらに例示する。当業者が本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載の対応する例示的実施形態と実質的に同じ機能を実行する、または実質的に同じ結果を達成する現在存在しているまたは後に展開する他の組成物、手段、用途、方法、またはステップは、本発明に従って同様に利用し得る。
【0032】
(実施例)
(実施例1)
マトリックスにヒアルロン酸を混入させる
合計重量50〜500g/m2のセルロース繊維、熱可塑性繊維及びSAP粉末のような十分量のマトリックス物質を所定量の乾燥医療グレードヒアルロン酸ナトリウム顆粒(例えば0.1%w/wのHA濃度を得るための量)と共に粉末混合器に入れ、120rpmで1時間混合した。その後、得られた混合物を55℃でカレンダープレスにより圧縮して直径2〜4mmの乾燥「ケーク」とした。このプロセスにより得られたマトリックスは、36℃の温度を有する水で溶出すると、カルバゾール法により測定したところ60〜80%のHAを放出する。このことは、HAを混入したマトリックスがHAの吸収及び創傷表面への放出のための貯蔵所として役立つことができることを示す。
【0033】
(実施例2)
マトリックスに脱アセチル化キトサンを混入させる
同じプロセスを用いて、60〜95%の脱アセチル化率を特徴とする動物または非動物由来の医療グレードキトサンをマトリックスに混入するのに同じプロセスを使用した。
【0034】
(実施例3)
被覆物質にヒアルロン酸を含浸させる
被覆物質への0.1〜0.5%のHA(w/w)の含浸を達成するために、適切な地質及び強度の不織熱可塑性繊維の織物を誘導して最初にエアロゾルチャンバに通し、その後、乾燥チャンバに通した。乾燥の前に該不織物質にHAベースの水溶液をスプレー加工及びパディング加工することは含浸の代替方法である。
【0035】
(実施例4)
マトリックスを被覆物質と接合する
被覆物質の内側のマトリックスの機械的安定化は、いったん水に浸して垂直力に曝すとパッドの内側のマトリックス物質の転位につながるランプ化(lumping)/凝塊形成を回避するための重要な手段である。このことは、例えば、十分量の熱可塑性繊維または粉末をこの程度まで含有していたマトリックスへの被覆物質の部分的超音波接合により達成された。
【0036】
(実施例5)
該デバイスの積極的冷却及び創傷治癒効果
その術後経過を改善するために、滅菌したプロトタイプ版の低温適応性創傷ドレッシングデバイスを鏡視下半月板切除術後の患者において使用した。各パッドをエチレンオキシドにより滅菌し、無菌手術環境で包装を開けた。
【0037】
30人の患者がこのパイロット比較試験に含まれ、プロトタイプ創傷パッド治療群(n=20人の患者)及び対照群(n=10人の患者)の2群に分けた。
【0038】
プロトタイプ創傷パッド治療群は以下の手順を経験した。
【0039】
鏡視下半月板切除術の完了後、20人の患者の全てにおいて皮膚縫合のためにSteri-stripを使用した。各患者のために、プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイス(寸法12×22cm)を無菌包装から取り出し、4℃まで冷却した約100mLの0.9%NaCl(約0.5-0.8mL NaCl/cm2)を該デバイスの上部に注入した。プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイスは、この冷水を該デバイスのSAP部分に保持した。10mlのViscoseal(TRB Chemedica)、緩衝液中に0.5%発酵性ヒアルロン酸を含有する無菌粘弾性溶液を、創傷表面と接触して置かれるプロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイスの下部に塗布した。次いで、プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイスを縫合した切開創(1関節当たり3箇所)に貼り付け、閉塞性ドレッシング材及び伸縮性包帯でカバーした。患者に鎮痛薬または古典的NSAIDを処方し、各患者が摂取した数を記録した。
【0040】
対照群は以下の手順を経験した。
【0041】
鏡視下半月板切除術の完了後、この群の10人の患者において皮膚縫合のためにSteri-stripを使用した。標準的な市販されている創傷ドレッシング材を創傷の上に置いた。この群の患者において冷却パックは使用しなかった。患者に古典的NSAIDを処方し、各患者が摂取した数を記録した。NSAIDを摂取したにもかかわらず依然として痛みを有していた患者の場合、鎮痛薬を処方し、各患者が摂取した鎮痛薬の種類及び量を記録した。
【0042】
治療した関節の痛みは、術後約1時間(その時間までに麻酔薬が切れている)で、次いで、24時間の術後期にわたって2時間毎に(患者が覚醒しているとき)、100mm視覚アナログ尺度(VAS)を使用して患者が評価した。この尺度は、「無痛」を示すゼロ(0)基準点及び「激痛」を示す百基準点(100)を有する。
【0043】
看護師が術後の最初の1時間に10分毎に標準的温度計を使用して皮膚温度を測定し、その温度計の先端は手術領域の皮膚に隣接して置いた。
【0044】
測定またはモニターしたのは、
- 皮膚温度低減の持続期間、
- 通常のNSAID摂取量に加えて鎮痛薬摂取量、
- 関節滲出液、
- 皮膚浸軟、及び
- 凍結療法に対する耐性またはHA/有害事象に対するアレルギー性反応
であった。
【0045】
結果は、プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイス群において、痛みの平均値が最初の24時間でVASで3cm(範囲:2〜6cm)であり、2人の患者が、術後約24時間の退院時にNSAIDに加えて1回量の鎮痛薬を必要としたことを示した。
【0046】
対照群において、痛みの平均値は最初の24時間で4.5cm(範囲2〜9cm)であり、5人の患者が、術後約24時間の退院時にNSAIDに加えて鎮痛薬を必要としたことを示した。
【0047】
標準的ドレッシング材と比較して、プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイスが術後の痛みを急速に低下させ、驚いたことにNSAID節約効果を有していたと結論づけることができる。対照群と比較して最も顕著な痛みの低減は術後の最初の4時間に見られ、患者が術後に必要とした救済薬(escape medication)が少なかった。
【0048】
手術部位近くの皮膚温度は、両方の群において、関節鏡検査及びSteri-strip(基準値)の貼付の完了直後に、ならびにその後、術後の最初の60分間に10分毎に計測した。両方の群の患者において、手術部位近くの皮膚の平均温度は33℃であった。
【0049】
プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイス群において、平均皮膚温度は、プロトタイプデバイスの貼付の5分後に14℃まで低下し、22分の平均期間、低レベルなままであった。その後、次の33分間にわたって30℃に達するまで皮膚温度が漸進的に増加した。
【0050】
対照群における皮膚温度は、最初の60分間、32℃の平均値のままであった。
【0051】
結論として、プロトタイプ低温適応性創傷ドレッシングデバイスは、対照群と比較して皮膚温度の顕著な低下をもたらした。
【0052】
驚いたことに、プロトタイプ創傷パッドで治療した群において、冷却パッドの使用は、24時間の観察期間の間、皮膚の湿気の凝縮につながらず、皮膚浸軟は観察されなかった。
【0053】
プロトタイプ創傷パッドは創傷滲出物の染みが付いたが、滲出物の吸収後に乾燥したままであった。該プロトタイプの創傷接触面は、SAP層の残存する湿気吸収能力により、乾燥したままであった。
【0054】
プロトタイプ創傷パッドで治療した群の患者は、60箇所の切開部(1膝当たり3箇所)全てにおいて一次創傷治癒は急速であり、感染は観察されなかった。6カ月検診において、ケロイド形成または創傷治癒遅延は観察されなかった。
【0055】
対照群において、30箇所の切開部(1膝当たり3箇所)全てにおいて、一次創傷治癒は遅く、滲出物が多く生成したが、感染は観察されなかった。6カ月後、2人の患者がケロイドを示した。
【0056】
結論として、上記の結果は、プロトタイプ創傷パッドが術後の創傷手当に安全及び効果的であることを示した。その皮膚冷却効果により、プロトタイプ創傷パッドは、対照群と比較して創傷滲出物及び血腫の量を低減した。プロトタイプ創傷パッドで治療した群において創傷修復がより急速だったのは、おそらくヒアルロン酸が存在したためであろう。創傷表面はわずかに湿っており、皮膚浸軟または他の有害事象は観察されなかった。
【0057】
上記の記述は多くの詳細を含むが、本発明の範囲を制限するものではなく、その1つまたは別の好ましい実施形態を例示するものと解釈されるべきである。当業者には明らかであろう多くの他の変法が可能である。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって定義されるべきであり、実施形態によってのみ定義されるべきではない。
【0058】
本明細書において引用した全ての文書は、参照によりその全体を組み込む。
【符号の説明】
【0059】
10 低温適応性創傷ドレッシングデバイス
12 創傷カバー
16 創傷接触層
20 創傷接触面
22 多孔性表層
24 孔
30 多孔性マトリックス
32 繊維状物質
40 創傷治療物質
46 活性成分
50 熱吸収層
60 物理的表面フィーチャー
66 部分的流体障壁
68 完全な流体障壁
70 水和「高吸収性ポリマー」(SAP)
74 包帯カバー
90 取り外し可能な無菌カバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷接触面20を有する創傷接触層16を備えた創傷カバー12と、
創傷接触層16に含有された創傷治療物質40と、
創傷接触層16と熱連通状態にある熱吸収層50であって、創傷接触層16から熱を除去するように適応可能であり、創傷接触面20の温度を周囲温度未満まで低減させて、創傷の治癒を促進するための低温適応性創傷ドレッシングデバイス10を形成する熱吸収層50と
を含む、貼り付けられた創傷の治癒を促進するように設計された低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項2】
創傷カバー12が、水性流体がその中へ、さらにそこを通って自由に拡散することを可能にする多孔性マトリックス30として構成された創傷接触層16を有し、前記マトリックスが繊維状物質32を含む、請求項1に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項3】
創傷カバー12が、流体吸収特性を有する多孔性マトリックス30として構成された創傷接触層16を有し、体液及び/または創傷滲出物を吸収することができる、請求項1または2に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項4】
創傷カバー12が、創傷接触層16の表面である創傷接触面20を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項5】
創傷カバー12が、創傷接触層16の別の多孔性表面である創傷接触面22を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項6】
創傷カバー12が、創傷接触層16の別の多孔性表面である創傷接触面22aを有し、前記別の多孔性表面22aが、前記創傷接触層と係合し、創傷接触面22aに対する創傷接触層16の滑動及び創傷接触面22aからの創傷接触層16の離脱を防止するのに役立つ物理的表面フィーチャー60を有する、請求項1または5に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項7】
創傷接触層16が、創傷治療物質40を含浸させた繊維状物質32を含む多孔性マトリックス30である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項8】
創傷治療物質40が、天然のヒアルロン酸組成物ならびにキトサン及び/またはジアセレインを含む、請求項7に記載の創傷接触層16。
【請求項9】
創傷治療物質40が、天然のヒアルロン酸のゲル、クリームまたは水溶液からなる群から選択される形態の天然のヒアルロン酸組成物を含む、請求項8に記載の創傷接触層16。
【請求項10】
熱吸収層50が創傷接触層16と開放流体連通状態にある、請求項1〜9のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項11】
熱吸収層50を創傷接触層16から隔てる部分的流体障壁66をさらに含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10であって、熱吸収層50が創傷接触層16と部分的に制限された流体連通状態にある、低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項12】
熱吸収層50を介したガス交換を可能にしながら、前記熱吸収層50を創傷接触層16から隔てる流体障壁68をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項13】
熱吸収層50が水和高吸収性ポリマー70を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項14】
熱吸収層50が、その能力の約10〜90パーセントまで水和された水和高吸収性ポリマーを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項15】
創傷の治療を必要としている対象において創傷の治癒を促進する方法であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイスを前記創傷に貼り付ける段階を含む、方法。
【請求項1】
創傷接触面20を有する創傷接触層16を備えた創傷カバー12と、
創傷接触層16に含有された創傷治療物質40と、
創傷接触層16と熱連通状態にある熱吸収層50であって、創傷接触層16から熱を除去するように適応可能であり、創傷接触面20の温度を周囲温度未満まで低減させて、創傷の治癒を促進するための低温適応性創傷ドレッシングデバイス10を形成する熱吸収層50と
を含む、貼り付けられた創傷の治癒を促進するように設計された低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項2】
創傷カバー12が、水性流体がその中へ、さらにそこを通って自由に拡散することを可能にする多孔性マトリックス30として構成された創傷接触層16を有し、前記マトリックスが繊維状物質32を含む、請求項1に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項3】
創傷カバー12が、流体吸収特性を有する多孔性マトリックス30として構成された創傷接触層16を有し、体液及び/または創傷滲出物を吸収することができる、請求項1または2に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項4】
創傷カバー12が、創傷接触層16の表面である創傷接触面20を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項5】
創傷カバー12が、創傷接触層16の別の多孔性表面である創傷接触面22を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項6】
創傷カバー12が、創傷接触層16の別の多孔性表面である創傷接触面22aを有し、前記別の多孔性表面22aが、前記創傷接触層と係合し、創傷接触面22aに対する創傷接触層16の滑動及び創傷接触面22aからの創傷接触層16の離脱を防止するのに役立つ物理的表面フィーチャー60を有する、請求項1または5に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項7】
創傷接触層16が、創傷治療物質40を含浸させた繊維状物質32を含む多孔性マトリックス30である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項8】
創傷治療物質40が、天然のヒアルロン酸組成物ならびにキトサン及び/またはジアセレインを含む、請求項7に記載の創傷接触層16。
【請求項9】
創傷治療物質40が、天然のヒアルロン酸のゲル、クリームまたは水溶液からなる群から選択される形態の天然のヒアルロン酸組成物を含む、請求項8に記載の創傷接触層16。
【請求項10】
熱吸収層50が創傷接触層16と開放流体連通状態にある、請求項1〜9のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項11】
熱吸収層50を創傷接触層16から隔てる部分的流体障壁66をさらに含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10であって、熱吸収層50が創傷接触層16と部分的に制限された流体連通状態にある、低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項12】
熱吸収層50を介したガス交換を可能にしながら、前記熱吸収層50を創傷接触層16から隔てる流体障壁68をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項13】
熱吸収層50が水和高吸収性ポリマー70を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項14】
熱吸収層50が、その能力の約10〜90パーセントまで水和された水和高吸収性ポリマーを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイス10。
【請求項15】
創傷の治療を必要としている対象において創傷の治癒を促進する方法であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の低温適応性創傷ドレッシングデバイスを前記創傷に貼り付ける段階を含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2011−527210(P2011−527210A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517125(P2011−517125)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058550
【国際公開番号】WO2010/003935
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(509176318)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058550
【国際公開番号】WO2010/003935
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(509176318)
【Fターム(参考)】
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