説明

温度センサ、温度センサ管理装置および方法

【課題】
無線温度センサを軽量化、小型化する。また、電波方式のアンテナで構成される電子タグに、低コストで温度センサ機能を実装させる。
【解決手段】
形状記憶合金からなるアンテナを用い、形状記憶合金からなるアンテナが変態点以上の温度でアンテナ形状を回復することにより、アンテナの実効利得、偏波が変化することを特徴とする無線温度センサであり、温度変化を無線温度センサのアンテナの実効利得、偏波の変化として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度自体を含む温度変化を検知する温度センサに関する。その中でも、アンテナを有する無線温度センサ、無線温度センサシステムに関し、特に形状記憶合金からなる部材を用いた無線温度センサのアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温度センサで環境の温度情報を取得し、ネットワーク上で統合的に管理することができるセンサネット情報システムが注目されている。温度情報を取得する方法として、形状記憶合金からなる部材を用い、形状回復温度以上の温度で前記部材の形状が変化することを利用して温度を検出する方法が提案されている。
【0003】
例えば、形状記憶合金からなる部材内部に軟磁性材料からなる部材を有し、前記形状記憶合金からなる部材に記憶させた形状回復温度になると、前記形状記憶合金からなる部材の形状が回復し、それに伴い、前記軟磁性材料からなる部材の形状が変化し、この軟磁性材料からなる部材の形状変化による反磁界の変化に伴うインダクタンスの変化を前記形状記憶合金からなる部材の外部に巻き付けられた銅線コイルに伝達し、前記銅線コイルより前記インダクタンスの変化から温度を知る温度センサ(特許文献1参照)などが提案されている。
【0004】
なお、形状記憶合金の形状回復効果を活用した例として、宇宙飛行体におけるアンテナ,太陽電池パドル等の宇宙構造物を伸展するための伸展構造(特許文献2参照)などがある。
【0005】
【特許文献1】特願平6−114678号公報
【特許文献2】特開平9−277996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来技術に基づく温度センサでは、磁性材料とコイルを使用するため、軽量化、小型化が困難であるという問題があった。
また、近年、国際標準規格に基づく電波方式のパッシブ型の電子タグが普及しつつあり、この電子タグに温度センサ機能を搭載したいという市場からの要求があるが、電波方式のアンテナで構成される電子タグに、前記従来技術の温度センサを実装するのは、磁性材料とコイルを使用するため高コストの要因となった。
【0007】
本発明は、軽量化、小型化を容易とする無線温度センサを提供すること、また、電波方式のアンテナで構成される電子タグに、低コストで温度センサ機能を搭載することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、温度変化に基づく部材の形状変化に伴い変化する電波特性を利用して温度変化を検知するものである。この温度変化の検知には、温度を測定することも含まれる。
【0009】
また、本発明は、温度変化に伴う電子部品を構成するアンテナの実行利得および偏波の少なくとも一方を用いて温度変化を検知することも含まれる。この場合、アンテナに形状記憶合金を用い、温度変化に従った当該アンテナの形状変化に伴い変化する上記特性を検出して、温度変化を検知することも含まれる。この場合、やはり温度変化の検知には、温度の測定が含まれる。
【0010】
本発明のより具体的な態様には、形状記憶合金からなるアンテナを用い、形状記憶合金からなるアンテナが変態点以上の温度でアンテナ形状を回復することにより、アンテナの実効利得、偏波が変化することを特徴とする無線温度センサであり、温度変化を無線温度センサのアンテナの実効利得、偏波の変化として検出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明には、前記無線温度センサの温度状況管理を行うべく、
無線温度センサと無線通信を行う通信装置と、
変態点以下、及び、変態点以上の各温度における、無線温度センサとの通信条件を格納した記憶装置と、
前記無線温度センサと無線通信したときの通信結果と、前記記憶装置中の無線温度センサとの通信条件を比較することにより、無線温度センサが設置されている周辺温度を判別する処理と、を実行する演算装置と、
を備える無線温度センサ管理装置により、
前記無線温度センサ管理装置が、通信装置を通じて無線温度センサと無線通信し、この通信結果と、記憶装置内に格納された変態点以下、及び、変態点以上の各温度における、無線温度センサとの通信条件と比較し、
通信結果が変態点以下の温度における通信条件に合致した場合は、無線温度センサの周辺温度が変態点以下の温度であると判定し、
通信結果が変態点以上の温度における通信条件に合致した場合は、無線温度センサの周辺温度が変態点以上の温度であると判定することにより、
無線温度センサの周辺温度を検出する技術も含まれる。
【0012】
なお、本発明の一態様には、アンテナを含む部材が変形することで、他の部材との接触関係を含む関係が変わることで、電波特性が変化することも含まれる。例えば、部材の変形によって他のアンテナと接続することで擬似的にアンテナの長さ(大きさ)を変化し、これに伴い変化する電波特性を検出し、温度変化を検知することも含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度検知用の部材と他の部材を共用化することも可能であって、装置の小型化も可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、以下に図面を用いて説明する。
図1、及び、図2は、本発明の無線温度センサの実施の第1の形態に関する概観図である。
図1は変態点以上の温度における無線温度センサの概観図で、図2は変態点以下の温度における無線温度センサの概観図である。
【0015】
アンテナ部材3はNiTi合金製の形状記憶合金からなり、変態温度が合金組成、熱処理条件等に敏感に変化することを利用して、所望の変態温度、すなわち、形状回復温度に基づいて、Ni含有率を決め、熱処理を施す。例えば、所望の形状回復温度を40度とした場合、Ni含有率を56%とし、480℃の熱処理を加えれば良い。
【0016】
図1に示すように、アンテナ部材3は、変態点以上の温度で形状回復したとき、直線状に変形してアンテナ部材2と接触するよう形状記憶する。このとき、無線温度センサのアンテナ部の全長は、無線温度センサが使用する電波の波長の2分の1程度とする。
【0017】
また、アンテナ部材3は、図2に示すように、変態点以下の温度で折り曲げておく。なお、ここでは、他の適当な形状に変形させておいてもよい。この状態ではアンテナ部材2に電気的な影響を与えないよう、アンテナ部材3とアンテナ部材2の間で、無線温度センサが使用する電波の6分の1波長以上の間隔が開くようにしておく。
【0018】
アンテナ部材2は、無線温度センサのICチップ1と接合されていて、アンテナ部材2の長軸方向の長さは、無線温度センサが使用する電波の波長の10分の1程度とする。このため、近距離であるならば、無線温度センサを管理する無線通信機器と通信することができる。
【0019】
無線温度センサケース4は、無線温度センサのアンテナ及びICチップ1を保護するためのケースであり、絶縁体からなる。
【0020】
無線温度センサのアンテナとICチップ1のインピーダンスの整合に関しては、変態点以上の温度において整合が取れるように設計する。すなわち、図1に示す、アンテナ部材2とアンテナ部材3が接触した状態で、インピーダンス整合を取る。
【0021】
このとき、無線温度センサのアンテナ部の全長が、無線温度センサが使用する電波の波長の2分の1程度となるため、無線温度センサのアンテナは、ICチップ1と整合のとれた半波長ダイポールアンテナとして動作する。
【0022】
変態点以下の温度では、図2に示すように、アンテナ部材3が折曲がった状態であり、アンテナ部材2と接触していないため、電波の波長に対して、有効なアンテナ部の長さが短すぎるため、一般的な半波長ダイポールアンテナに比べ、指向性利得が低下する。
【0023】
また、アンテナ部材2とアンテナ部材3が接触した状態のとき、無線温度センサのアンテナとICチップ1のインピーダンスの整合を合わせているため、図2に示すように、アンテナ部材2とアンテナ部材3が非接触の状態では、無線温度センサのアンテナとICチップ1のインピーダンスも不整合となる。
【0024】
指向性利得が低下し、インピーダンスが不整合となるため、すなわち、実行利得が低下するため、無線温度センサの通信性能は著しく低下し、無線温度センサを管理する無線通信機器と近距離でしか通信できなくなる。
【0025】
一方、変態点以上の温度では、図1に示すように、アンテナ部材3が形状回復して直線状に変形し、アンテナ部材2と接触するため、無線温度センサのアンテナとICチップ1のインピーダンスが整合すると共に、半波長ダイポールアンテナとして動作するため、図2の状態と比較して、指向性利得も向上する。
【0026】
指向性利得の向上し、インピーダンスが整合するため、すなわち、実行利得が向上するため、無線温度センサの通信性能は著しく良好となり、無線温度センサを管理する無線通信機器と遠距離で通信できるようになる。
【0027】
以上のように、温度変化による形状記憶合金の形状回復に伴い、無線温度センサの実効利得の変化による通信距離性能の変化として、温度変化を検出することができる。
【0028】
なお、変態点以下の温度では、近距離で通信できるため、無線温度センサが故障したか否かを判別することができる。
【0029】
なお、アンテナ部材2の長軸方向の長さを短くすることにより、変態点以下の温度で通信できなくしても良い。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態について、説明する。図3、及び、図4は、本発明の無線温度センサの実施の第2の形態に関する概観図である。
【0031】
図3は変態点以上の温度における無線温度センサの概観図で、図4は変態点以下の温度における無線温度センサの概観図である。
アンテナ部材23はNiTi合金製の形状記憶合金からなり、
図3に示すように、アンテナ部材23は、変態点以上の温度で形状回復したとき、直線状に変形してアンテナ部材22と接触するよう形状記憶する。このとき、無線温度センサのアンテナ部の全長は、無線温度センサが使用する電波の波長の2分の1程度とする。
【0032】
また、アンテナ部材23は、図4に示すように、変態点以下の温度で折り曲げておく。この状態ではアンテナ部材22に電気的な影響を与えないよう、アンテナ部材23とアンテナ部材22の間で、無線温度センサが使用する電波の6分の1波長以上の間隔が開くようにしておく。
アンテナ部材22は、無線温度センサのICチップ21と接合されていて、アンテナ部材22の長軸方向の長さは、無線温度センサが使用する電波の波長の10分の1程度とする。
【0033】
無線温度センサケース24は、無線温度センサのアンテナ及びICチップ21を保護するためのケースであり、絶縁体からなる。
【0034】
バネ25は、絶縁体からなる引張りバネであり、アンテナ部材23のアンテナ部材22への接触部分と結合している。なお、バネ25の張力は、変態点以上の温度ではアンテナ部材23の形状記憶合金の発生力より弱く、変態点以下の温度ではアンテナ部材23の形状記憶合金の発生力より強くなるよう加工しておく。なお、バネ25は、形状記憶合金を導電体で構成してもよい。この場合、バネ25とアンテナ部材23の間に絶縁体を介してもよいし、バネ25もアンテナの一部として構成するようにしてもよい。
【0035】
無線温度センサのアンテナとICチップ21のインピーダンスの整合に関しては、変態点以上の温度において整合が取れるように設計する。すなわち、図3に示すアンテナ部材22とアンテナ部材23が接触した状態で、インピーダンス整合を取る。
【0036】
変態点以下の温度では、図4に示すように、アンテナ部材23が折曲がった状態であり、アンテナ部材22と接触していないため、電波の波長に対して、有効なアンテナ部の長さが短すぎるため、一般的な半波長ダイポールアンテナに比べ、指向性利得が低下する。
【0037】
また、アンテナ部材22とアンテナ部材23が非接触のため、無線温度センサのアンテナとICチップ21のインピーダンスも不整合となる。
【0038】
したがって、実行利得が低下するため、無線温度センサの通信性能は低下し、無線温度センサを管理する無線通信機器と通信できなくなるか、あるいは、近距離でしか通信できなくなる。
【0039】
なお、変態点以下の温度では、バネ25は伸びていない状況のため、張力は(ほとんど)かかっていない状況である。
【0040】
一方、変態点以上の温度では、図3に示すように、アンテナ部材23が形状回復して直線状に変形し、アンテナ部材22と接触するため、無線温度センサのアンテナとICチップ21のインピーダンスが整合すると共に、半波長ダイポールアンテナとして動作するため、図4の状態と比較して、指向性利得も向上する。
【0041】
実行利得が向上するため、無線温度センサの通信性能は著しく良好となり、無線温度センサを管理する無線通信機器と遠距離で通信できるようになる。
変態点以上の温度では、バネ25が伸ばされるため、アンテナ部材23のアンテナ部材22への接触部分に張力がかかるが、アンテナ部材23の形状回復応力、すなわち発生力により、図3に示すように、バネ25及びアンテナ部材23は伸びた形状を維持する。この際、伸びた形状の維持にはある所定の範囲内の形状の変化も含まれる。
【0042】
一方、上記状態から、温度を下げて変態点以下の温度にすると、アンテナ部材23の発生力よりバネ25の張力が強くなるため、バネ25及びアンテナ部材23は折れ曲がり、図4に示すように縮まる。
【0043】
以上述べたように、温度変化により、無線温度センサのアンテナ形状が可逆的に変化し、実効利得もこれに合わせて変化し、結果として通信距離性能が可逆的に変化する。すなわち、通信距離性能の変化によって、無線温度センサ周辺の温度変化を検出することができる。
【0044】
なお、バネ25は絶縁体ではなく形状記憶合金でもよく、バネ25の変態点の温度をアンテナ部材23の変態点の温度より高く、バネ25の発生力をアンテナ部材23の発生力より強くなるよう加工することで、バネ25の変態点以上の熱を加えることで、図4に示すアンテナ部材23が曲がった形状に戻すようにしても良い。
【0045】
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。図5、図6、及び、図7は、本発明の無線温度センサの実施の第3の形態に関する概観図である。なお、各図において、紙面縦方向を垂直方向とする。
アンテナ部材7、アンテナ部材8は、NiTi合金製の形状記憶合金からなり、無線温度センサのICチップ6と接合している。アンテナ部材7、アンテナ部材8の長さは、直線状の形状のときは、それぞれ無線温度センサが使用する電波の波長の4分の1程度とし、折り曲げ構造のときは、使用する電波の波長の20分の1以下に加工する。
【0046】
アンテナ部材7は、変態点以上の温度で形状回復したとき、使用する電波の波長の20分の1以下の長さの折り曲げ構造となるよう形状記憶させる。この折り曲げ構造により、変態点以上の温度で引張りバネとして機能する。一方、アンテナ部材8は、変態点以上の温度で形状回復したとき、直線状になるよう形状記憶させる。
【0047】
アンテナ部材7と、アンテナ部材8のNiの含有率と熱処理方法は、変態点の温度がそれぞれ異なる、所望の温度となるように施す。具体的には、本実施例では、判別したい所望の温度を40℃と90℃とする。この場合では、アンテナ部材7の変態点の温度が90℃なので、Ni含有率を54.6%にして、480℃の熱処理を加える。一方、アンテナ部材8の変態点の温度が40℃なので、Ni含有率を56%とし、480℃の熱処理を加える。
【0048】
バネ9は、絶縁体からなる引張りバネである、バネ9の張力は、変態点以上の温度ではアンテナ部材7の形状記憶合金の発生力より弱く、変態点以下の温度ではアンテナ部材9の形状記憶合金の発生力より強くなるよう加工しておく。
【0049】
バネ10は、絶縁体からなる圧縮バネである、バネ10の反発力は、変態点以上の温度ではアンテナ部材8の形状記憶合金の発生力より弱く、変態点以下の温度ではアンテナ部材8の形状記憶合金の発生力より強くなるよう加工しておく。
【0050】
無線温度センサケース11は、無線温度センサのアンテナ及びICチップを保護するためのケースであり、絶縁体からなる。
【0051】
40℃以下の低温領域では、アンテナ部材7、及び、アンテナ部材8の変態点以下の温度のため、アンテナ部材7は、バネ9に引っ張られるため直線状となり、アンテナ部材8は、バネ10に圧縮されるため折り畳んだ構造となり、使用する電波の波長の20分の1以下の長さとなるため、無線温度センサのアンテナは、垂直偏波のアンテナとして動作する。
【0052】
40℃以上、90℃以下の中間の温度領域では、アンテナ部材7の変態点以下の温度であり、アンテナ部材8の変態点以上の温度のため、アンテナ部材7は、バネ9に引っ張られるため直線状のままであるが、アンテナ部材8は、形状記憶合金の発生力がバネ10の反発力より強くなるため、直線状の形状に変化する。このため、無線温度センサのアンテナは、垂直偏波、水平偏波の両方で動作する、クロスダイポールアンテナとして動作する。
【0053】
90℃以上の高温領域では、アンテナ部材7、及び、アンテナ部材8の変態点以上の温度のため、アンテナ部材7は、形状記憶合金の発生力がバネ9の張力より強くなるため、アンテナ部材7は折り畳んだ構造となる。一方、アンテナ部材8は、形状記憶合金の発生力がバネ10の反発力より強いため、直線状の形状を維持する。このため、無線温度センサのアンテナは、水平偏波のアンテナとして動作する。
【0054】
以上述べた通り、3つの温度領域ごとで、無線温度センサのアンテナ形状が可逆的に変化し、アンテナ形状ごとにそれぞれ偏波が異なる。この偏波の違いを検出することにより、無線温度センサ周辺の温度を、3段階に区分して検出することができる。
【0055】
なお、上記偏波の違いを検出する方法としては、無線温度センサを管理する無線通信機器側で、水平偏波のアンテナと直線偏波のアンテナを用意しておき、両方のアンテナで無線温度センサと通信し、どのアンテナで無線温度センサと通信できるかにより検出できる。例えば、水平偏波のアンテナでのみ通信できた場合は、無線温度センサは水平偏波であることがわかる。
なお、形状記憶合金からなるアンテナ部材3、アンテナ部材23、アンテナ部材7、アンテナ部材8は、NiTi合金に限らず、NiTiCu合金やNiTiCo合金でも良い。
【0056】
なお、形状記憶合金からなるアンテナ部材3、アンテナ部材23、アンテナ部材7、アンテナ部材8は、電気伝導率を向上するため、アルミメッキや銅メッキをしても良い。
なお、アンテナ部材3、アンテナ部材7、及び、アンテナ部材8の折曲がり形状は、本実施の形態の1例であり、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0057】
なお、本実施の第2の形態、及び第3の形態の例で、バネを使用する代わりに、高温側だけでなく、低温側でも形状記憶することができる、二方向性形状記憶効果のある形状記憶合金を使用しても良い。
【0058】
なお、本実施の第3の形態の例における、無線温度センサを管理する無線通信機器側で、無線温度センサの偏波を検出する方法は、本実施の形態の1例であり、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0059】
次に、本発明の無線温度センサ管理装置に関する実施の形態について、図面を用いて説明する。
図8は、本実施形態における無線温度センサ管理装置の構成図である。
本実施形態における無線温度センサ管理装置100は、無線温度センサの状況管理を行う装置であり、本実施形態では、一例としてアンテナを含む通信機能が一体となった例について以下説明を行う。
前記無線温度センサ管理装置100は、本発明の無線温度センサ管理方法を実行する機能を、本発明の無線温度センサ200に対して実現すべく、不揮発性メモリなどの記憶装置101に格納されたプログラム102をメモリ103に読み出し、演算装置たるCPU104により実行する。
【0060】
また、前記無線温度センサ管理装置100は、コンピュータ装置が一般に備えている各種ボタンやネットワークコネクタなどの入力インターフェイス105や、LEDやディスプレイやネットワークコネクタなどの出力インターフェイス106、ならびに無線温度センサ200との間で無線通信を担う無線通信インターフェイス130やアンテナ131などを有している。なお、本実施例では、アンテナ131は、円偏波、垂直偏波、水平偏波を切替可能なアンテナとする。
【0061】
続いて、前記無線温度センサ管理装置100の機能部に関して説明を行う。なお、前記無線温度センサ管理装置100は、記憶装置101に前記無線温度センサ200の存在領域とアンテナ131との通信距離を格納し、これを利用可能である。
【0062】
前記無線温度センサ管理装置100は、無線温度センサ200と通信する際に、空中線電力を制御し実効放射電力を設定し、アンテナ131の偏波を設定する通信条件設定部110を備える。
また、前記無線温度センサ管理装置100は、無線温度センサ200と通信した際の通信成功の可否と、通信に成功した場合、通信対象の無線温度センサ200が格納していた当該無線温度センサ200に関する、変態点以下の温度での実効利得、偏波の情報と、変態点以上の温度での実効利得、偏波の情報と、無線温度センサのアンテナの熱変形に関する可逆性情報とを読取ってメモリ103に格納するセンサ情報取得部111を備える。
【0063】
また、前記装置100は、前記無線温度センサと通信した際の通信条件、及び、前記無線温度センサから取得した無線温度センサ情報に基づいて、前記無線温度センサ200の温度状態を判別する、センサ状態判別部112を備える。
【0064】
ここでの無線温度センサの状態判別方法としては、例えば、
前記無線温度センサ200の、変態点以下、及び、以上での各温度における、反射電力、アンテナ利得、必要受信電力、マッチングロスと、偏波に関する情報、及び、無線温度センサ200のアンテナの熱変形に関する可逆性情報と、
前記無線温度センサ管理装置100のアンテナ131から放射される電波の実効放射電力と、
アンテナ131と無線温度センサ200との距離から、
無線温度センサ200の温度状態を判別する手法を想定するが、その詳細については後述する。
また、前記無線温度センサ装置100は、前記算定した無線温度センサ状態判別結果を出力インターフェイス106に出力する出力部113を備える。
【0065】
次に、前記無線温度センサ管理装置100と通信する無線温度センサ200について説明する。なお、本実施例では、一例として、電池を内臓しているアクティブ型ではなく、電池を内蔵していないパッシブ型の無線温度センサの例について以下説明する。
前記無線温度センサ200は、CPU210、RAM211、ROM212、及び、変態点以下の温度での実効利得、偏波の情報と、無線温度センサの変態点以上の温度での実効利得、偏波の情報と、無線温度センサのアンテナの熱変形に関する可逆性情報を格納するEEPROM213から構成されるICチップ201と、このICチップ201を収容するケース202、およびケース202内に配置されるアンテナ203、無線通信インターフェイス204とからなる。
【0066】
そして、無線温度センサ管理装置100のアンテナ131から発信される電波を前記アンテナ203で受信し、この受信電波から電力・クロック信号とデータを受け取る。またパッシブ型であるため、こうして得た電力により回路を起動させ、前記EEPROM213に格納されている無線温度センサのID、変態点以下、及び、以上での各温度における、反射電力、アンテナの指向性利得、必要受信電力、マッチングロスと、偏波に関する情報、及び、無線温度センサ200のアンテナの熱変形に関する可逆性情報と、その他、無線温度センサの貼り付けられた物品の商品番号等のデータを電波として前記無線温度センサ管理装置に返信する。
【0067】
前記無線温度センサ200は、前記無線温度センサ管理装置100と通信する際に、前記記憶装置たるEEPROM213に格納していた当該無線温度センサに関する変態点以上、及び、以下におけるアンテナの指向性利得等の通信特性データやアンテナの熱変形に関する可逆性情報を読取って無線温度センサ管理装置200に送信するセンサ情報送信部205を備える。このセンサ情報送信部205は、例えば、前記ROM212、または、EEPROM213のいずれかにおいてプログラムとして格納されている状況が想定できる。従って、無線温度センサ200のCPU210は、前記ROM212またはEEPROM213のいずれかよりプログラムとしての前記センサ情報送信部205をRAM212に読み出して実行する。
【0068】
なお、これまで示した無線温度センサ管理装置100における各機能部110、111、112、113は、ハードウェアとして実現してもよいし、メモリやHDD(Hard Disk Drive)などの適宜な記憶装置に格納したプログラムとして実現するとしてもよい。この場合、前記CPU104がプログラム実行に合わせて記憶装置101より該当プログラムをメモリ103に読み出して、これを実行することとなる。
また、無線温度センサ200におけるセンサ情報送信部205は、ハードウェアとして実現してもよいし、ROMなどの適宜な記憶装置に格納したプログラムとして実現するとしてもよい。この場合、前記CPU210がプログラム実行に合わせてROM212より該当プログラムをRAM211に読み出して、これを実行することとなる。
【0069】
次に、本実施形態における無線温度センサ200にメモリに格納される変態点以上、及び、以下におけるアンテナの指向性利得等の通信特性データやアンテナの熱変形に関する可逆性情報等の、テーブルの構造について説明する。
【0070】
図9は本実施形態における、無線温度センサの温度特性テーブル220のデータ構造例を示す図である。温度特性テーブル220は、無線温度センサ200の変態点以下、及び、以上での各温度における、反射電力、アンテナの指向性利得、必要受信電力、マッチングロスと、偏波に関する情報、及び、無線温度センサ200のアンテナ203の熱変形に関する可逆性情報と、温度特性データと無線温度センサの必要受信電力を格納したテーブルである。なお、アンテナの熱変形に関する可逆性情報の値の1例として、0から3の値を持つとし、0は熱変形に関して可逆、1は低温から高温に変化したとき不可逆、2は高温から低温に変化したとき不可逆、3は低温から高温、あるいは、高温から低温どちらに変化したときでも不可逆であるとする。
【0071】
この無線温度センサの温度特性テーブル220は、例えば、熱により変態点以上の温度となりアンテナ形状が変化したとき、温度を変態点以下に下げたとき、元の形状に戻るか否かを表す熱変形に関する可逆性情報と、無線温度センサが動作するために必要な最低限の電力である無線温度センサの必要受信電力のほか、変態点以下と以上の各温度においてそれぞれ、アンテナ指向性利得、無線温度センサのICチップとアンテナ部分の接合におけるマッチングロス、反射電力、及び、直線偏波や円偏波といった偏波に関する情報等のデータを関連づけたデータフィールドからなる。
【0072】
次に、本実施形態における無線温度センサの管理方法の実際の手順について、図に基づき説明する。
【0073】
なお、以下で説明する電子タグ管理方法に対応する各種動作のうち前記無線温度センサ管理装置100に関するものは、前記無線温度センサ管理装置100がメモリ103に読み出して実行するプログラム102によって実現され、前記無線温度センサ200に関するものは、前記無線温度センサ200がEEPROM213からRAM211に読み出して実行するプログラムによって実現される。そして、これらのプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0074】
図10は、本実施形態の無線温度センサ管理方法の処理手順例を示す図である。このフロー例では、無線温度センサと通信する際の通信条件と、無線温度センサとの通信結果から、無線温度センサの温度状態を判別する処理について説明する。
【0075】
なお、無線温度センサ管理装置のアンテナと、無線温度センサは特定の位置に設置され、距離は固定であるとする。また、無線温度センサにはあらかじめIDや、図9に示す、変態点の温度、熱変化によるアンテナの形状可逆性、必要受信電力、反射電力、及び、変態点以下、以上での各温度における、アンテナ指向性利得、マッチングロスと、偏波に関する情報があらかじめ記憶されているものとする。
【0076】
上記の前提の下、まず、無線温度センサ管理装置100の通信条件設定部110は、高出力(例えば、空中線電力36dBm)の送信レベルで、アンテナ131を水平偏波、及び、垂直偏波の両方に設定して、それぞれの偏波で無線温度センサと通信を開始する(F001)。
【0077】
水平偏波、垂直偏波のどちらのアンテナ設定に関しても、無線温度センサと通信できなかった場合、センサ状態判別部112は、無線温度センサ200が破損している可能性があると判別して、出力インターフェイス106より、警告通知を行う(F003)。
【0078】
一方、無線温度センサと通信できた場合、センサ情報取得部111は、無線温度センサのメモリに記憶された、IDや変態点の温度等のデータを取得し、メモリ103に記憶する(F004)。
【0079】
次に、通信条件設定部110は、取得した無線温度センサの情報を元に、変態点以下の低温側では通信できない条件か、変体点以上の高温側では通信できない条件の、どちらかの条件を選択し、無線温度センサと再度通信する(F005、F006、F012)。まず、通信条件設定部110は、通信できない条件を選択するための評価を行う(F005)。通信条件の選択は、低温側では通信できないが高温側では通信できる条件か、あるいは、高温側では通信できないが低温側では通信できる条件を選択する。なお、上記の条件が低温側と高温側のどちらでも成立する場合は、低温側を選択しても高温側を選択してもどちらでも良い。
【0080】
具体的には、本実施例においては、図9のテーブル220で示すように、高温側より、低温側でのアンテナ203の指向性利得が低く、また、マッチングロスによる損失が大きい。よって、無線温度センサ管理装置の実行放射電力を低出力に設定することにより、高温側では通信できるが、低温側では通信できない通信条件を設定できる。したがって、本実施例においては、通信条件は、変態点以下の低温側では通信できない条件を選択することとなる。
【0081】
以下、低温側で通信できない通信条件に設定した場合について説明する。
通信条件設定部110は、変態点以下の温度では通信できない通信条件を設定する(F006)。すなわち、本通信条件を示す情報をメモリ103に格納しておく。本実施例では、図9のテーブル220の無線温度センサのデータに基づき、アンテナ131の偏波を水平偏波に設定し、無線温度センサ管理装置より出力される実効放射電力は、高温側では通信でき、低温側では通信できない電力とする。そして、これらを示す情報をメモリ103に格納しておく。
【0082】
実効放射電力の具体的な設定値は、図10の数式から算出する。例えば、無線温度センサ管理装置のアンテナ131と無線温度センサ200間の通信距離が1m、使用する周波数が950MHzの場合、高温側では実効放射電力が22dBm以上なら通信でき、一方、低温側では34dBm以上で通信できるため、通信条件設定部110は、実効放射電力を22dBm以上34dBm未満の値、例えば25dBmとする。この通信条件で、無線温度センサと通信を行う(F007)。
【0083】
処理F007の通信で、無線温度センサと通信できなかった場合、低温領域で通信できない条件で通信に失敗したため、センサ状態判別部112は、センサ無線温度センサ200が、現在変態点以下の温度か、あるいは、過去変態点以下の温度になったと判別する。さらに、センサ状態判別部112は、メモリ103に記憶されている無線温度センサ200のアンテナ203の熱変形に関する可逆性情報を確認し、低温でのアンテナ形状の変形が可逆の場合は、低温から高温の温度変化でアンテナ形状が元に戻るため、変態点以下の低温であると判別する(F010)。一方、アンテナ203の熱変形に関する可逆性情報が低温での変形で不可逆の場合は、一度変態点以下の低温になるとアンテナ203の形状が回復しないため、無線温度センサが過去に変態点以下の低温になったことがあると判別する(F011)。
【0084】
一方、処理F007の通信で、無線温度センサと通信できた場合、低温領域で通信できない条件で通信に成功したため、センサ状態判別部112は、センサ無線温度センサ200が、現在変態点以上の温度か、あるいは、過去変態点以上の温度になったと判別する。センサ状態判別部112は、メモリ103に記憶されている無線温度センサ200のアンテナ203の熱変形に関する可逆性情報を確認し、変態点以上の高温でのアンテナ形状の変形が可逆の場合は、変態点以上の高温から変態点以下の低温の温度変化でアンテナ形状が元に戻るため、変態点以上の高温であると判別する(F015)。一方、アンテナ203の熱変形に関する可逆性情報が高温での変形で不可逆の場合は、一度変態点以上の高温になるとアンテナ203の形状が回復しないため、無線温度センサが過去に変態点以上の高温になったことがあると判別する(F011)。
【0085】
以上、低温側で通信できない通信条件に設定した場合について説明したが、高温側で通信できない通信条件に設定した場合についても同様の処理を実施する。
【0086】
まず、通信条件設定部110は、変態点以上の温度では通信できない通信条件を設定する(F012)。つまり、メモリ103に通信条件を示す情報を格納する。
【0087】
処理F012の通信で、無線温度センサと通信できなかった場合、高温領域で通信できない条件で通信に失敗したため、センサ状態判別部112は、センサ無線温度センサ200が、現在変態点以上の温度か、あるいは、過去変態点以上の温度になったと判別する。さらに、センサ状態判別部112は、メモリ103に記憶されている無線温度センサ200のアンテナ203の熱変形に関する可逆性情報を確認し、高温でのアンテナ形状の変形が可逆の場合は、変態点以上の高温から変態点以下の低温の温度変化でアンテナ形状が元に戻るため、変態点以上の高温であると判別する(F015)。一方、アンテナ203の熱変形に関する可逆性情報が高温での変形で不可逆の場合は、一度変態点以上の高温になるとアンテナ203の形状が回復しないため、無線温度センサが過去に変態点以上の高温になったことがあると判別する(F016)。
【0088】
一方、処理F012の通信で、無線温度センサと通信できた場合、高温領域で通信できない条件で通信に成功したため、センサ状態判別部112は、センサ無線温度センサ200が、現在変態点以下の温度か、あるいは、過去変態点以下の温度になったと判別する。センサ状態判別部112は、メモリ103に記憶されている無線温度センサ200のアンテナ203の熱変形に関する可逆性情報を確認し、低温でのアンテナ形状の変形が可逆の場合は、低温から高温の温度変化でアンテナ形状が元に戻るため、変態点以下の低温であると判別する(F018)。一方、アンテナ203の熱変形に関する可逆性情報が変態点以下の低温での変形で不可逆の場合は、一度変態点以下の低温になるとアンテナ203の形状が回復しないため、無線温度センサが過去に変態点以下の低温になったことがあると判別する(F019)。
以上の手法で、無線温度センサ200の温度状態を判別することができる。
【0089】
なお、本実施の形態においては、無線温度センサ管理装置は、実効電力を変化することにより無線温度センサの温度状態を判別したが、実効電力を変化する代わりに無線温度センサ管理装置のアンテナ位置を変更しても良い。また、無線温度センサ管理装置のアンテナの偏波を変えても良い。
【0090】
なお、本実施の形態においては、無線温度センサの変態点以下の温度での実効利得、偏波の情報と、無線温度センサの変態点以上の温度での実効利得、偏波の情報と、無線温度センサのアンテナの熱変形に関する可逆性情報を、無線温度センサのEEPROMに記憶し、この情報を無線温度センサ管理装置が読み取ることにより、無線温度センサの温度状態を判別したが、無線温度センサに前記情報を格納する代わりに、無線温度センサ管理装置、あるいは、無線温度センサ管理装置に接続されたデータベースに、前記無線温度センサの情報を格納し、前記無線温度センサのIDと前記無線温度センサの変態点以下、以上での温度での実効利得、偏波などの情報を紐付けておき、無線温度センサと通信して無線温度センサのIDを読取り、このIDと、無線温度センサ管理装置、あるいは、無線温度センサ管理装置に接続されたデータベースに格納された無線温度センサの情報を比較することで、無線温度センサの温度状態を判別しても良い。
【0091】
また、本実施の形態における無線温度センサ管理装置は、無線温度センサ管理機能と無線通信機能が一体となった装置としたが、無線温度センサ管理装置と無線通信装置の2つの装置に分離し、ネットワークで両者を接続し、制御しても良い。
【0092】
以上、本発明の無線温度センサ管理装置に関する実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0093】
最後に、本発明の無線温度センサ管理装置を利用した、物品温度管理システムに関する実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0094】
図12は、本発明の無線温度センサ管理装置を利用した、物品温度管理システム構成図である。また、図13は、物品温度管理システム制御サーバの構成図である。
本実施の形態の物品温度管理システムは、物品に貼り付けされた無線温度センサと無線温度センサ管理装置が無線通信することにより、物品入庫時に、物品が保存温度以上となるようなことが過去になかったかどうかを確認し、入庫後、物品管理棚の物品の温度管理を行う。なお、本実施例では、物品の保存温度は上限値のみであり、温度の上限のみ管理するものとする。
入庫された物品312は、ソート機能付きベルトコンベア316上に流れ、過去に保存温度を越えることのなかった物品と、過去に保存温度以上になったことのある物品とでソートされる。ソート後、過去に保存温度を越えることのなかった物品は、物品管理棚317で管理される。一方、過去に保存温度を越えてしまった物品は、異常物品管理箱318に送られる。
【0095】
各物品には、本発明の無線温度センサの第1の実施形態である無線温度センサ313が貼り付けられている。物品に貼り付けられた無線温度センサ313の変態点は、各物品固有の保存温度となるよう加工されている。また、前記無線温度センサ313は、熱変形に関して不可逆で、一度変態点の温度を超えると、近接、あるいは、強電界でのみ通信できるように加工されている。
【0096】
ソート機能付きベルトコンベア316は、入庫された物品を、物品管理棚317と異常物品管理箱318に振り分けるソート機能を持つ。ソート機能付きベルトコンベア316の入り口には、無線温度センサ管理装置314が設置されていて、物品が入庫されると入庫された物品の無線温度センサ313と通信し、無線温度センサ313の温度状態を判別する。物品温度管理システム制御サーバ310は、前記無線温度センサ管理装置314から無線温度センサ313のID等メモリ内のデータと温度状態を判別結果とを受信し、この判別結果を元にソート機能付きベルトコンベアを制御して、物品312の送り先を物品管理棚317と異常物品管理箱318に振り分ける。
【0097】
物品管理棚317に送付された物品312は、物品温度管理システム制御サーバ310により温度管理される。物品温度管理システム制御サーバ310は、空調機311を制御することにより、物品温度管理棚317の温度を調整する。物品温度管理システム制御サーバ310は、物品312の送り先ソート時に、無線温度センサ管理装置314から受信した無線温度センサ313の変態点の温度、すなわち物品の保存温度が、物品温度管理棚317の空調機311の設定温度より低い場合は、空調機311の設定温度を、前記無線温度センサ313の変態点以下の温度に下げる。また、常時、無線温度センサ319は、物品管理棚317上の物品312の無線温度センサ313と無線通信し、物品温度管理システム制御サーバ310に情報を送付する。物品温度管理システム制御サーバ310は、変態点以上の温度を検出した場合は、自身のディスプレイに警告表示し、物品管理棚317の周辺温度を下げるよう空調機311を制御する。この表示と空調機の制御はいずれか一方を行うようにしてもよい。
【0098】
なお、無線温度センサ管理装置(314、319)、空調機311、及び、ソート機能付きベルトコンベア316は、各々通信インターフェイスを備えており、物品温度管理システム制御サーバ310と集線装置であるHUB321を介して信号線で接続されている。また、無線温度センサ管理装置314にはアンテナ315が、無線温度センサ管理装置319にはアンテナ320がそれぞれ接続されている。また、物品温度管理システム制御サーバ310とHUB321は信号線322で、無線温度センサ管理装置314とHUB321は信号線325で、無線温度センサ管理装置319とHUB321は信号線326で、空調機311とHUB321は信号線323で、ソート機能付きベルトコンベア316とHUB321は信号線324で、各々接続されている。
【0099】
以下、本実施形態における物品温度管理システム制御サーバ310の物品温度管理システムを実現する機能について説明する。
【0100】
本実施形態における物品温度管理システム制御サーバ310は、本発明の物品温度管理システムを実現する機能を、本発明の無線温度センサ管理装置(314、319)、無線温度センサ313、及び、物品管理棚317の周辺温度を調整する空調機311、及び、ソート機能付きベルトコンベア316に対して実現すべく、不揮発性メモリなどの記憶装置401に格納されたプログラム402をメモリ403に読み出し、演算装置たるCPU404により実行する。
【0101】
また、前記物品温度管理システム制御サーバ310は、コンピュータ装置が一般に備えているキーボードなどの入力インターフェイス405や、ディスプレイなどの出力インターフェイス406、ならびに、無線温度センサ管理装置(314、319)、空調機311、及び、ソート機能付きベルトコンベア316との間で通信を担う通信インターフェイス408などを有している。
【0102】
続いて、前記物品温度管理システム制御サーバ310の機能部に関して説明を行う。
前記物品温度管理システム制御サーバ310は、物品が入庫したときの、無線温度センサ管理装置315と無線温度センサ313の通信結果を、無線温度センサ管理装置315から受信し、メモリ403と物品管理表407に格納する入庫処理部410と、
前記無線温度センサ313の温度状態が変態点以下の正常な温度で、かつ、その変態点の温度が現在の物品管理棚の保管温度より低い場合、空調機311の保管温度を下げるよう前記空調機311を制御する、温度管理部412を備える。
【0103】
なお、図16は、無線温度センサ313の通信結果のデータを物品管理表407格納する際のテーブル構造例である。物品管理棚317に送られた無線温度センサ313のデータは、IDと変態点の温度のデータフィールドから成り、異常管理箱318に送られた無線温度センサ313のデータは、通信結果の応答の有無とIDと変態点の温度のデータフィールドから成り、無線温度センサ313の応答が有る場合は、IDと変態点の温度が記録される。
【0104】
また、前記物品温度管理システム制御サーバ310は、メモリ403から前記無線温度センサとの通信結果を取り出し、無線温度センサの応答の有無、及び、無線温度センサの温度状態の判別結果から、ソート機能付きベルトコンベア316の物品の送り先の振り分けを制御するソータ制御部411を備える。
【0105】
また、前記物品温度管理システム制御サーバ310は、無線温度センサ管理装置319と物品管理棚317に保管された無線温度センサ313の通信結果を、無線温度センサ管理装置319から定期的に受信する温度管理部412と、無線温度センサの温度状態の判別結果が、変態点以上の温度である場合、警告メッセージを前記物品温度管理システム制御サーバ310のディスプレイに出力する出力部413を備える。
【0106】
次に、本実施形態における物品温度管理システムの管理方法の実際の手順について、図に基づき説明する。
【0107】
図14は、本実施形態の物品温度管理システムの入庫処理時の手順例を示す図である
物品温度管理システム制御サーバ310の入庫処理部410は、物品312に貼付けされた無線温度センサ313のメモリ内のID、変態点の温度等のデータと、温度状態の判別結果を、無線温度センサ管理装置314から受信し、受信結果をメモリ403に記録する(F101)。
入庫処理部410は、前記無線温度センサ313のデータの受信結果をメモリ403から読み出し、無線温度センサ管理装置の判別結果が無線センサの応答無しの場合、物品管理表407の異常管理箱用テーブルに、無線温度センサの応答が無かったことを登録する(F103)。
【0108】
また、ソータ制御部411は、前記無線温度センサ313のデータの受信結果をメモリ403から読み出し、無線温度センサ管理装置の判別結果が異常の場合、物品312を異常管理箱318に振り分け送付する(F104)。
【0109】
入庫処理部410は、前記無線温度センサ313のデータの受信結果をメモリ403から読み出し、無線温度センサ管理装置の判別結果が変態点以下の低温の場合、無線温度センサ及び物品は正常であると判別して、物品管理表407の物品管理棚用テーブルに、無線温度センサのIDと変態点の温度を登録する(F106)。
【0110】
また、温度管理部412は、前記無線温度センサ313のデータの受信結果をメモリ403から読み出し、無線温度センサ管理装置の判別結果が変態点以下の低温の場合で、かつ、その変態点の温度が現在の物品管理棚の保管温度より低い場合、空調機311の保管温度を下げるよう前記空調機311を制御する(F108)。
【0111】
また、ソータ制御部411は、前記無線温度センサ313のデータの受信結果をメモリ403から読み出し、無線温度センサ管理装置の判別結果が変態点以下の低温の場合、物品312を物品管理棚317に振り分け送付する(F109)。
【0112】
入庫処理部410は、前記無線温度センサ313のデータの受信結果をメモリ403から読み出し、無線温度センサ管理装置の判別結果が変態点以上の高温の場合、無線温度センサ及び物品は異常であると判別して、物品管理表407の異常管理箱用テーブルに、無線温度センサの応答が有った旨を登録し、無線温度センサのIDと変態点の温度を登録する((F110)。
【0113】
また、ソータ制御部411は、前記無線温度センサ313のデータの受信結果をメモリ403から読み出し、無線温度センサ管理装置の判別結果が変態点以上の高温の場合、物品312を異常管理箱318に振り分け送付する(F111)。
【0114】
次に、本実施形態の物品温度管理システムの物品管理棚17上の物品312の温度管理の処理手順について、図に基づき説明する。図15は、本実施形態の物品温度管理システムにおける、物品管理棚17の物品313の温度管理方法の手順例を示す図である。
【0115】
無線温度センサ管理装置319は、物品管理棚317上の物品313に貼付けされた無線温度センサ313と定期的に通信し、無線温度センサの温度状態の判別結果を前記物品温度管理システム制御サーバ310に定期的に送信する。なお、通信に関しては、不定期に通信を行うようにしてもよい。
【0116】
前記物品温度管理システム制御サーバ310の温度管理部412は、受信した無線温度センサの温度状態の判別結果が、変態点以下の低温の場合は、物品312の保存温度以内と判定する(F203)。
【0117】
一方、前記物品温度管理システム制御サーバ310の温度管理部412は、受信した無線温度センサの温度状態の判別結果が変態点以上の高温の場合は、物品312の保存温度以上と判定し、物品管理棚317の周辺温度が変態点以下の保存温度以下となるよう空調機311を制御する(F204)。
【0118】
また、出力部413は、受信した無線温度センサの温度状態の判別結果が変態点以上の高温の場合は、物品管理棚317の保管温度が物品312の保存温度以上と判定し、前記物品温度管理システム制御サーバ310のディスプレイに警告画面を表示する(F205)。
【0119】
以上、本発明の形態の物品温度管理システムに関する実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、無線温度センサ管理装置がソート付きベルトコンベアを制御するなど、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0120】
なお、以上説明した各実施形態で説明した無線温度センサは、形状記憶合金からなる無線温度センサのアンテナが、温度センサ機能を担うことにより、無線温度センサの軽量化、小型化に寄与する。
【0121】
また、アンテナ部分が温度センサの役割を果たすことにより、電波方式のアンテナで構成される電子タグに、低コストで温度センサ機能を実装させることに寄与する。
【0122】
さらに、各実施の形態は、トレーサビリティにおける物品の温度管理や、産業における製造過程における部材の温度管理に適用される小型で軽量な無線温度センサ、及び、無線温度センサ管理装置、及び、温度管理システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本無線温度センサの第1の実施の形態における、変態点以上の温度での無線温度センサの概観斜視図。
【図2】本無線温度センサの第1の実施の形態における、変態点以下の温度での無線温度センサの概観斜視図。
【図3】本無線温度センサの第2の実施の形態における、変態点以上の温度での無線温度センサの概観斜視図。
【図4】本無線温度センサの第2の実施の形態における、変態点以下の温度での無線温度センサの概観斜視図。
【図5】本無線温度センサの第3の実施の形態における、低温領域での無線温度センサの概観上面図。
【図6】本無線温度センサの第3の実施の形態における、中間温度領域での無線温度センサの概観上面図。
【図7】本無線温度センサの第3の実施の形態における、高温領域での無線温度センサの概観上面図。
【図8】本実施形態における無線温度センサ管理装置の構成図。
【図9】本実施形態における無線温度センサの温度特性テーブル。
【図10】本実施形態における、無線温度センサ管理装置の無線温度センサの温度状態を判別する処理手順例を示す図。
【図11】本実施形態の無線温度センサ管理装置の実効放射電力算定式を示す図。
【図12】本発明の無線温度センサ管理装置を利用した、物品温度管理システム構成図。
【図13】本発明の物品温度管理システム制御サーバの構成図。
【図14】本発明の無線温度センサ管理装置を利用した、物品温度管理システムの、物品送り先のソート処理手順を示す図。
【図15】本発明の無線温度センサ管理装置を利用した、物品温度管理システムの、物品管理棚での温度管理手順を示す図。
【図16】本発明の物品温度管理システム制御サーバにおける物品管理表のテーブル構造図。
【符号の説明】
【0124】
1、6、21…ICチップ
2、22…アンテナ部材
3、23…形状記憶合金からなるアンテナ部材
4、11、24…無線温度センサケース
9、10、25…バネ
7、8…形状記憶合金からなるアンテナ部材
100、314、319…無線温度センサ管理装置
101…(無線温度センサ管理装置の)記憶装置
102…(無線温度センサ管理装置の)プログラム
103…(無線温度センサ管理装置の)メモリ
104…(無線温度センサ管理装置の)CPU
105…(無線温度センサ管理装置の)入力インターフェイス
106…(無線温度センサ管理装置の)出力インターフェイス
110…(無線温度センサ管理装置の)通信条件設定部
111…(無線温度センサ管理装置の)センサ情報取得部
112…(無線温度センサ管理装置の)センサ状態判別部
113…(無線温度センサ管理装置の)出力部
130…(無線温度センサ管理装置の)無線通信インターフェイス
131、315、320…(無線温度センサ管理装置の)アンテナ
200、313…無線温度センサ
201…(無線温度センサの)ICチップ
202…(無線温度センサの)ケース
203…(無線温度センサの)アンテナ
204…(無線温度センサの)無線通信インターフェイス
205…(無線温度センサの)情報送信部
210…(無線温度センサの)CPU
211…(無線温度センサの)RAM
212…(無線温度センサの)ROM
213…(無線温度センサの)EEPROM
220…(無線温度センサの)温度特性テーブル
310…物品温度管理システム制御サーバ
311…空調機
312…物品
316…ソート機能付きベルトコンベアs
317…物品管理棚
318…異常管理箱
321…HUB
322、323、324、325、326…信号線
401…(物品温度管理システム制御サーバの)記憶装置
402…(物品温度管理システム制御サーバの)プログラム
403…(物品温度管理システム制御サーバの)メモリ
404…(物品温度管理システム制御サーバの)CPU
405…(物品温度管理システム制御サーバの)入力インターフェイス
406…(物品温度管理システム制御サーバの)出力インターフェイス
407…(物品温度管理システム制御サーバの)物品管理表
408…(物品温度管理システム制御サーバの)通信インターフェイス
410…(物品温度管理システム制御サーバの)入庫処理部
411…(物品温度管理システム制御サーバの)ソータ制御部
412…(物品温度管理システム制御サーバの)温度管理部
413…(物品温度管理システム制御サーバの)出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも温度変化を検知する温度センサにおいて、
温度変化に従って形状が変化する部材と、
前記部材の形状変化に伴い変化する前記部材の電波特性を検出する手段と、
検出された電波特性に応じた、前記温度変化を検知する手段とを有することを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記部材は、形状記憶合金で構成されることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記部材は、温度変化に従って形状が変化する第1の部分部材および第2の部分部材を有し、前記第2の部分部材は、前記第1の部分部材の形状の変化に伴って形状が変化するよう前記第1の部分部材と接続することを特徴とする温度センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の温度センサにおいて、
前記第1の部分部材は、バネ形状および/または形状記憶合金で構成されることを特徴とする温度センサ。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の温度センサにおいて、
前記部材は、当該温度センサから電波を出力するアンテナであって、
前記電波特性を検出する手段は、前記アンテナの実行利得および偏波の少なくとも一方を検出することを特徴とする温度センサ。
【請求項6】
請求項5に記載の温度センサにおいて、
前記アンテナがクロスダイポールアンテナであり、前記クロスダイポールアンテナにおける水平偏波成分のアンテナ要素と垂直偏波成分のアンテナ要素が、異なる結晶構成からなる形状記憶合金で構成され、
前記電波特性を検出する手段は、前記水平偏波成分のアンテナ要素と前記垂直偏波成分の、各アンテナ要素の変態点の温度がそれぞれ異なることに伴い、少なくとも3つの温度領域に関して、アンテナ形状が各々変化することにより、各々の温度領域で変化する偏波の特性を検出することを特徴とする温度センサ。
【請求項7】
請求項5または6のいずれかに記載の温度センサにおいて、
さらに情報を記憶する手段を有し、
前記記憶する手段は、前記アンテナの変態点以下の温度での実効利得および/または偏波の情報、変態点以上の温度での実効利得および/または偏波の情報および熱変形に関する可逆性情報を格納することを特徴とする温度センサ。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載の温度センサにおいて、
さらに、前記アンテナを介して、前記検知した温度変化を送信する制御手段を有することを特徴とする温度センサ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の温度センサにおいて、
前記温度変化を検知する手段は、前記温度の測定することを特徴とする温度センサ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の温度センサと無線通信を行う通信装置と、
前記温度センサとの無線通信において、前記通信装置が制御する実効放射電力と偏波に関する通信条件と、前記無線温度センサと無線通信したときの通信結果から、無線温度センサの状態を判別する処理と、前記判別結果を出力インターフェイスに出力する出力処理と、を実行する演算装置と、を備えることを特徴とする温度センサ管理装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載の温度センサと通信を行う通信装置と、前記温度センサとの通信条件と無線温度センサとの通信結果を元に無線温度センサの状態を判別する演算装置とを備えるコンピュータに以下の処理を実行させるプログラムにおいて、
前記通信装置に、前記温度センサと通信させ、
前記演算装置が、前記通信結果と、予め定められた前記温度センサとの通信条件を元に、前記温度センサの状態を判別させ、
前記演算装置が、前記温度センサの状態を出力インターフェイスに出力させる
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−162700(P2009−162700A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2715(P2008−2715)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】