説明

温度センサ、温度及び圧力を検知する一体型センサ

【課題】金属よりも低廉な樹脂でハウジングを形成しながらも検知対象である流体の漏入を防ぐことができる。
【解決手段】温度検知素子10と、温度検知素子を収容する樹脂製のハウジング20とを備える温度センサ1で、ハウジングは、インナーハウジング30と、アウターハウジング50とからなり、インナーハウジングは、温度検知素子を保持する素子保持部を素子保持塔部31が備え、アウターハウジングは、保持される温度検知素子を含め、インナーハウジングの周囲を覆う。アウターハウジングは、インナーハウジングを射出成形によりインサート成形することで形成される。温度検知素子が素子保持部で保持されたままでアウターハウジングを得るための射出成形が行なわれるので、温度検知素子に位置ずれが起こることがない。こうして、温度検知素子が所定の位置に適切に配置されるので、温度検知素子がハウジングの表面に露出することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲を流れる流体の温度を検知する温度センサと、温度検知に加えて流体の圧力を検知する圧力センサをも備える一体型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の温度を検知する温度センサと、当該流体の圧力を検知する圧力センサが一体化されたセンサセンサ(以下、単に一体型センサ、ということがある)が、例えば、特許文献1に開示されている。
特許文献1の一体型センサ100は、図10に示すように、温度検知素子102と圧力検知素子103が、金属性のハウジング104の一方の側と他方の側にそれぞれ結合されている。ハウジング104は、流体の温度を温度検知素子102に伝え、流体の圧力を圧力検知素子103に伝えるように配置されている。ハウジング104は、延長されたボディ105と、ボディ105の開放端部106と接続される圧力検知構造107と、から構成される。温度検知素子102はボディ105の閉じられた端部108に配置され、圧力検知素子103は圧力検知構造107上に搭載される。
特許文献1の一体型センサ100は、ボディ105が検知対象の流体中に配置され、温度検知素子102で流体の温度を検知する。また、一体型センサ100は、ボディ105で受けた流体の圧力を、ハウジング104(ボディ105、圧力検知構造107)を介して間接的に圧力検知素子103に伝える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−147616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度センサと圧力センサの組合せが可能になった特許文献1の一体型センサ100によると、サイズを小さくできるのに加えて、温度と圧力の双方を伝える1つの金属製のハウジングを使用することにより、検知対象である流体が一体型センサの内部に漏入する可能性が少なくなる、とされている。ところが、特許文献1の一体型センサ100は、温度検知素子102を収容するハウジング104(ボディ105)が金属、典型的にはステンレス鋼で作製される。したがって、材料コスト及び加工コストも高いことから、得られる一体型センサ100は高価なものになる。
また、特許文献1の一体型センサ100は、その軸方向と直交する方向に流れる流体の圧力を長尺なボディ105が受けるとそこにモーメントが生じ、圧力検知素子103が流体の圧力を精度よく検知できないおそれがある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、金属よりも低廉な樹脂でハウジングを形成しながらも検知対象である流体の漏入を防ぐことができる温度センサを提供することを目的とする。
また、本発明はそのような温度センサを備える一体型センサにおいて、検知対象である流体の圧力を精度よく検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
樹脂を射出成形することで温度センサのハウジングを作製することは、金属でハウジングを作製するのに比べ、コスト的に極めて有利である。ところが、ハウジング内に温度検知素子を収容する温度センサを作製する際に、金型内に射出される樹脂の圧力が高いことが障害となる。つまり、金型内の所定位置に温度検知素子を配置しておいても、樹脂の圧力を受けて温度検知素子が所望する位置からずれることが想定される。この位置ずれが大きくなると、温度検知素子がハウジングの表面に露出し、ハウジング表面にハウジングと温度検知素子の間に継ぎ目が生ずるおそれがある。そうすると、この継ぎ目から流体が漏入するおそれがある。センサ内部に流体が漏入すると、温度センサ、圧力センサ自体の故障の原因となる。また、センサを通ってセンサが取り付けられる機器にまで流体が漏入すると、機器側の電子部品などの故障の原因となる。したがって、センサは、その内部への流体の漏入を阻止する必要がある。特に、検知対象である流体が油の場合は、漏入阻止が大命題となる。そこで、本発明ではハウジングをインナーハウジングとアウターハウジングの二層構造とすることに着目した。すなわち本発明の温度センサは、温度検知素子と、温度検知素子を収容する樹脂製のハウジングと、を備える。このハウジングは、インナーハウジングと、アウターハウジングと、からなる。インナーハウジングは、温度検知素子を保持する。アウターハウジングは、保持される温度検知素子を含め、インナーハウジングの周囲を覆う。
【0006】
本発明の温度センサによると、ハウジングがインナーハウジングとアウターハウジングからなり、インナーハウジングが温度検知素子を支持する。したがって、温度検知素子を支持するインナーハウジングを金型内に配置し、アウターハウジングを形成するために、金型内に樹脂を射出しても、温度検知素子は位置ずれを起こさない。このとき、本発明の温度センサは、インナーハウジングの周囲を一体で成形されるアウターハウジングで覆うことができるので、温度センサに触れる流体が漏入するのを阻止することができる。
【0007】
本発明の温度センサの典型的な形態として、ハウジングは、先端部に素子保持部を有する第1素子保持塔と、温度検知素子のリード線と接続される端子が保持されるとともに、第1素子保持塔を支持する基部と、を備えることが好ましい。この温度センサは、基部から第1素子保持塔部が突出する形態を有しているので、基部から離れた位置を流れる流体の温度を検知するのに有利である。
この温度センサにおいて、検知対象である流体が流れる流体通路を、ハウジングの基部の表裏を貫通して設けることが好ましい。圧力センサとともに一体型センサを構成する場合、この流体通路を通って圧力センサに当該流体を到達させることにより、圧力センサに流体を直接的に接触させることができる。そうすることで、圧力センサは高い精度で流体の圧力を検知できる。
【0008】
また、インナーハウジングが第1素子保持塔に対応する第2素子保持塔を備える場合、リード線が収容されるリード線収容凹部が軸方向に沿ってその外周に設けられることが好ましい。アウターハウジングによりインナーハウジングをインサート成形する際に、リード線をリード線収容凹部に収容しておけば、リード線収容凹部の外にリードが位置ずれすることがない。
【0009】
本発明は、流体の温度を検知する温度検知センサと、前記流体の圧力を検知する圧力センサと、を備える一体型センサにおいて、温度センサとして以上掲げたいずれかの温度センサを用いることができる。
この一体型センサにおいて、検知対象である流体が流れる流体通路を、ハウジングの基部の表裏を貫通して設ける温度センサを用い、流体通路を通ってきた検知対象である流体が、圧力検知素子に作用することで圧力を検知することが好ましい。他の部材を介することなく、圧力を精度よく検知できるからである。
また、この一体型センサにおいて、温度センサのハウジングは、検知対象である流体が流れる経路に接する領域に継ぎ目を有しないことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハウジングがインナーハウジングとアウターハウジングからなり、インナーハウジングが温度検知素子を支持する。したがって、温度検知素子を支持するインナーハウジングをアウターハウジングにインサート成形する際に、温度検知素子は位置ずれを起こさない。また、インナーハウジングの周囲をアウターハウジングで覆うことができるので、温度センサに触れる流体が漏入するのを阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態における温度センサの斜視図であり、(a)は表面側から視た図、(b)は裏面側から視た図である。
【図2】本実施の形態におけるインナーハウジングを表面側から視た斜視図である。
【図3】本実施の形態におけるインナーハウジングを裏面側から視た斜視図である。
【図4】本実施の形態における温度検知素子を備えるインナーハウジングを表面側から視た斜視断面図である。
【図5】本実施の形態における温度検知素子を備えるインナーハウジングを裏面側から視た斜視断面図である。
【図6】本実施の形態における温度センサを表面側から視た斜視断面図である。
【図7】本実施の形態における温度センサを裏面側から視た斜視断面図である。
【図8】本実施の形態における温度センサを裏面側から視た別の斜視断面図である。
【図9】本実施の形態における温度センサの縦断面図である。
【図10】本実施の形態における他の温度センサの縦断面図である。
【図11】従来の一体型センサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付する図1〜図10に示す実施の形態に基づいて、本発明の温度センサを詳細に説明する。
本実施の形態における温度センサ1は、温度検知素子10と、温度検知素子10を内部に収容するハウジング20と、から構成される。温度センサ1は、単体として流体(気体、液体)の温度を検知できる。また、温度センサ1は、後述するように、圧力センサ2と一体化された一体型センサ3として流体の温度と圧力を同時に検知できる。
【0013】
[温度検知素子10]
温度検知素子10は、素子本体11と、素子本体11から引出される一対のリード線12と、を備えている。
素子本体11は、例えば、サーミスタのように電気抵抗に温度特性を有する素材から構成される。
素子本体11から引出されるリード線12は、それぞれ、ハウジング20に保持される一対の端子45に接続される。端子45は、電気伝導性のよい銅などの金属材料により構成される。
温度検知素子10は、一方の端子45、リード線12を介して素子本体11に所定の電流を流し、さらに他方のリード線12、端子45に通ずる電流経路の抵抗値の変化に基づいて対象物の温度を検知する。
【0014】
[ハウジング20]
温度センサ1のハウジング20は、インナーハウジング30とアウターハウジング50からなる二層構造を有している。ハウジング20の内部に収容される温度検知素子10は、インナーハウジング30及びアウターハウジング50により覆われることで外部に対して封止される。
【0015】
[インナーハウジング30]
インナーハウジング30は、樹脂を射出成形することで一体的に成形される。予め成形されたインナーハウジング30は、温度検知素子10を保持して金型の所定位置に配置された状態で、アウターハウジング50を形成するための射出成形時にインサート成形される。このとき、インナーハウジング30は、温度検知素子10をハウジング20内の所定の位置に維持する。
【0016】
インナーハウジング30は、素子保持塔部31と、素子保持塔部31を支持する基部41と、を備えている。
素子保持塔部31は、基部41の中心部に連なる後端から素子保持部32が設けられる先端に向けて軸方向に延びる。素子保持部32には、先端から後端に向けて後退する素子収容溝33が形成されている。温度検知素子10(素子本体11)は、素子収容溝33の内部に収容され、かつ支持床34に支持されることで、素子保持部32に保持される。温度検知素子10の素子本体11を収容できるように、素子収容溝33はその径が設定される。素子本体11が素子保持部32に嵌まり込むように素子収容溝33の径を設定することが、温度検知素子10の射出成型時の位置ずれ防止の観点から好ましい。また、素子本体11の一部(先端)が素子保持部32から突出するように、素子収容溝33はその深さが設定される。そうすると、アウターハウジング50で素子本体11が覆われても、素子本体11から検知対象である流体までの距離を短くできるので、温度検知精度の向上に寄与する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、素子本体11の全体が素子収容溝33に収容することを許容する。
素子保持塔部31は、素子保持部32から基部41にかけてリード線収容部35を備えている。このリード線収容部35は、素子保持塔部31の外周面に軸方向に沿って形成された凹溝から構成される。リード線収容部35は、素子保持塔部31の外周面の対象の位置に一つずつ形成されている。素子保持部32に温度検知素子10が保持されると、温度検知素子10に接続される一対のリード線12の各々がリード線収容部35の内部に収容、保持される。そうすることで、インナーハウジング30の周囲を覆うアウターハウジング50を射出成形する際に、リード線12の位置がずれるのを防ぐ。リード線収容部35を通るリード線12は、後端側が基部41の裏面に引き出される。
【0017】
基部41は、概ね円盤状の形態をなし、素子保持塔部31をその後端で支持する。なお、基部41において、素子保持塔部31を支持する側を表面、その表面に対向する面を裏面、と定義する。この表・裏の定義は、アウターハウジング50についても同様とする。
基部41は、素子保持塔部31のリード線収容部35に連なるリード線挿通孔42を備えている(図3〜図5)。リード線挿通孔42は基部41の表面から裏面を貫通し、リード線12はこのリード線挿通孔42を通ってその後端側が基部41の裏面側に引き出される。
基部41は、一対のリード線ガイド43を裏面に備えている(図3〜図5)。リード線ガイド43は、裏面から表面に向けて後退する所定幅の溝により構成される。各々のリード線ガイド43は、一端がリード線挿通孔42に連なり、他端が基部41の外周面44に開口する。リード線ガイド43は、後述する端子45との干渉を避けるように、途中で屈曲されている。基部41の裏面に引き出されたリード線12は、各々、リード線ガイド43内に置かれる。
【0018】
基部41は、一対の端子45を備えている。L字状に形成された端子45は、基部41の内部に保持される保持部45aと、接続部45bと、を備えている。インナーハウジング30を射出成形する際に、端子45を金型内の所定位置に配置することで、端子45の保持部45aが基部41内に保持されるようにインサート成形される。一方、接続部45bは、裏面から突出され、図示しない相手側の端子と電気的に接続される。基部41には、保持部45aの一部を裏面側に露出させるための、一対の露出孔46が形成されている。基部41の表裏を貫通する露出孔46は、リード線ガイド43の途中に形成されている。したがって、リード線ガイド43を通るリード線12は露出孔46内において保持部45aと溶接、その他の手段により電気的な接続が確保される。露出孔46は、インナーハウジング30がアウターハウジング50にインサート成形されると、アウターハウジング50の一部により埋められる。
【0019】
基部41には、表裏を貫通する樹脂通路47が形成されている。樹脂通路47は、インナーハウジング30をアウターハウジング50にインサート成形する際に、溶融した樹脂が基部41の表面側から裏面側(又はその逆)へ回り込むのを容易にする。樹脂通路47は、この効果を十分に得るために、素子保持塔部31を取り囲むように3箇所に形成されている。この樹脂通路47も、インナーハウジング30がアウターハウジング50にインサート成形されると、アウターハウジング50の一部により埋められる。
【0020】
[アウターハウジング50]
アウターハウジング50は、塔部51と、基部55と、を備える。インナーハウジング30の素子保持塔部31に対応して設けられる塔部51は、素子保持塔部31の周囲を覆う。インナーハウジング30の基部41に対応して設けられる基部55は、基部41の周囲を覆う。アウターハウジング50は、ハウジング20の外周に位置するから、ハウジング20も塔部(51)と基部(55)とを備えることになる。こうして、アウターハウジング50は、継ぎ目を有することなくインナーハウジング30を収容することで、内部への流体の漏入を阻止する気密性を備える。
【0021】
基部55は、その裏面に、平面視した形が矩形の第1凹部56を備えている。第1凹部56は、後述する圧力センサ2の先端側を収容する。第1凹部56内には平面視した形が円形の第2凹部57が形成されている。検知対象である流体が後述する流体通路58を通って第2凹部57に流入する。温度センサ1と圧力センサ2が組み付けられると、第2凹部57は圧力検知素子15との間で流体溜まりを形成し、この流体溜まり内の流体が圧力検知素子15に作用すると、圧力検知素子15が当該流体の圧力を検知する。
基部55には、流体通路58(図8参照)が形成されている。基部55の表裏を貫通する流体通路58は、裏面側が第2凹部57に開口する。流体通路58は、樹脂通路47(いずれか1つ)を介してインナーハウジング30をも貫通する。検知対象である流体は、流体通路58を通って、圧力検知素子15に導かれる。
【0022】
基部55の裏面から端子45の接続部45bが突出する。一対の接続部45bは、第1凹部56よりも外側であって、塔部51を中心にして対象の位置に配置される。こうして端子45は、インナーハウジング30とともにアウターハウジング50にも保持される。
【0023】
以上の構成を備える温度センサ1は、概略以下のようにして作製される。
はじめに、インナーハウジング30を射出成形により作製する。この際、射出成形用の金型の所定位置に端子45を配置しておき、端子45をインサート成形することで、端子45が一体的に成形されたインナーハウジング30を得る。
次に、温度検知素子10をインナーハウジング30に組み付ける。つまり、素子本体11を素子収容溝33内に、また、リード線12をリード線収容部35に収容する。リード線12の後端側は、リード線挿通孔42を通って基部41の裏面に引き出され、さらに、引き出された部分はリード線ガイド43内に配置される。そして、リード線12は、露出孔46において、端子45の保持部45aと例えば溶接により接合される。
次に、温度検知素子10が組み付けられたインナーハウジング30を所定の金型内に配置し、射出成形によりアウターハウジング50を形成する。このとき、金型内に射出された溶融樹脂は、樹脂通路47を通って基部41の表面側から裏面側(又はその逆)に効率よく流れる。
【0024】
以上のようにして作製された温度センサ1は、継ぎ目を有さずに一体的に形成されるアウターハウジング50がハウジング20の外周に設けられるので、検知対象である流体がその内部に漏入することがない。
温度センサ1は、温度検知素子10が保持されるインナーハウジング30をアウターハウジング50でインサート成形するので、射出成形時に温度検知素子10が位置ずれを起すおそれがない。したがって、ハウジング20内の所望する位置に温度検知素子10を収容できるので、温度センサ1は正確な温度検知を実現できる。なお、アウターハウジング50の裏面には、引き出される端子45の周囲とアウターハウジング50との間には継ぎ目があるといえるが、後述する一体型センサ3からも明らかなように、この部分を流体に触れない領域に設定することは容易である。したがって、端子45がアウターハウジング50の裏面から引き出されることは、温度センサ1への流体の漏入阻止の妨げにならない。
【0025】
ここで、温度センサ1を作製する際に、ハウジング20を一層構造とし、かつ、温度検知素子10を収容する空隙を塔部の内部に設けることも一応想定できる。この場合、空隙内への流体の漏入を阻止するためにハウジング20の裏面側で空隙を封止する必要があるが、そこには継ぎ目が残る。この継ぎ目は、前述した流体溜まりに面することになる。したがって、流体通路58を介して流体を流体溜まりに導く構造を採用すると、一体型センサ3を使用している間中、この継ぎ目は流体に晒される。継ぎ目の密閉性を十分に高くすることは可能であるが、継ぎ目からの流体の漏入可能性を排除するためには、温度センサ1のように流体と触れる周囲を漏れなく継ぎ目を設けることなく一体で形成することが好ましいのである。
【0026】
[圧力センサ、一体型センサ]
以上の温度センサ1は、単体として流体の温度検知に用いることができるのに加えて、圧力センサ2と一体化された一体型センサ3に用いることができる。図9を参照してその一例を説明する。なお、ここで説明する圧力センサ2、一体型センサ3はあくまで一例であって、他の形態の圧力センサ、一体型センサに本発明の温度センサを組み合わせることができることは言うまでもない。
【0027】
温度センサ1の後端側に配置される圧力センサ2は、圧力検知素子15と、圧力検知素子15の裏面側に配置される回路部16と、回路部16と電気的に接続される端子17と、を備えている。圧力検知素子15は、例えばピエゾ素子(Piezoelectric element)と称される圧電素子から構成できる。回路部16は、圧力検知素子15が圧力を受けることで生成した電気信号を増幅、補償するなどして、端子17に供給する。回路部16は、少なくともこの機能を備えていればよく、電子部品、配線が実装された回路基板、フレキシブル基板などの公知の構成を採用できる。端子17は、図示しない相手側の端子と電気的に接続される。
【0028】
圧力センサ2は、ハウジング60を備えている。概ね円筒状の形態をなすハウジング60は、温度センサ1と付き合わされる側に収容空間61を備えている。収容空間61は、温度センサ1に対向する面が開口している。収容空間61内には、回路部16が収容される。
ハウジング60は、収容空間61よりも裏面側に端子保持部63を備えており、端子17は端子保持部63に圧入されるなどしてハウジング60に保持される。端子17は、後端側が端子保持部63を貫通して引き出される。
ハウジング60は、端子17を取り囲むように、相手側のコネクタを受け入れるコネクタ部62を裏面側に備えている。
【0029】
圧力センサ2が温度センサ1と組み付けられると、圧力センサ2の圧力検知素子15は、アウターハウジング50の第2凹部57(流体溜まり)内に収容される。ただし、第2凹部57内であって圧力検知素子15の図中上方には、検知対象である流体が流入する空間が残される。この空間には、この空間から外部への流体の流出を阻止するために、圧力検知素子15とアウターハウジング50の間にリング状の封止体(Oリング)OR2が設けられている。
また、ハウジング60とアウターハウジング50は、ハウジング60の上面60Uとアウターハウジング50の下面50Lの間が隙間なく密着するように、適宜の手段で組み付けられる。
【0030】
以上の圧力センサ2は温度センサ1とともに、保護管70内に収容されて一体型センサ3を構成する。保護管70は、ともに円筒状の塔部71と、塔部71を支持する基部75と、を備えている。塔部71には検知対象である流体が流入し、かつ基部75の内部まで導かれる流体通路72が設けられている。塔部71の先端外周には、検知対象である流体が流れる機器に一体型センサ3を取り付けるためのねじを設けることができる。
一体型センサ3が機器に取り付けられると、検知対象である流体が流れる当該機器の通路と流体通路72が連通されるようになっている。基部75は、内部に温度センサ1と圧力センサ2を収容する収容空間76を備えている。この収容空間76は、塔部71の流体通路72と連通している。収容空間76内には、収容空間76から外部への流体の流出を阻止するために、基部75とアウターハウジング50の間にリング状の封止体(Oリング)OR1が設けられている。
【0031】
一体型センサ3が当該機器に取り付けられると、図9に矢印で示すように、検知対象である流体Lが流体通路72に流入し、温度センサ1(アウターハウジング50の塔部51)と保護管70の間を満たす。この過程で、温度センサ1の温度検知素子10が流体の温度を検知する。また、流体通路72に流入した当該流体は基部75内の収容空間76に到り、その一部がアウターハウジング50に形成された流体通路58(図8、図9参照)を通って、アウターハウジング50の第2凹部57(流体溜まり)に流入し圧力検知素子15を押す。これにより、圧力検知素子15は流体の圧力を検知する。
【0032】
以上の一体型センサ3は、温度センサ1がハウジング20(インナーハウジング30の基部41及びアウターハウジング50の基部61)を貫通する流体通路58を備えている。したがって、一体型センサ3は、流体通路58を通る流体を圧力センサ2(圧力検知素子15)に直接作用させることができるので、他の部材を介して圧力を作用させるよりも、圧力を正確に検知できる。また、ハウジング20の外部に流体の通路を別途設ける必要がないので、一体型センサ3を小型化できる。
また、一体型センサ3は、流体が触れる領域(図9、図10の矢印)に継ぎ目がないように温度センサ1(アウターハウジング50)が一体成形されている。これに加えて、温度センサ1(アウターハウジング50)と保護管70の間には封止体OR1が、また、温度センサ1(アウターハウジング50)と圧力センサ2(圧力検知素子15)の間には封止体OR2が、設けられているので、流体がその流路から外部に流出することがない。こうして、一体型センサ3は、検知対象である流体が内部(流路を除く)に漏入するのを阻止できる。なお、封止体OR1、OR2を設ける位置は、その目的を達成する限り任意であり、例えば図10に示す位置に封止体OR1を設けてもよい。
【0033】
なお、上記実施形態では、温度検知素子10の素子本体11をサーミスタとしたがこれはあくまで一例であり、電気抵抗に温度特性を有する他の素材を素子本体11に用いることができる。また、素子本体11に、その表面に保護層を設ける等の要素を付加することかできる。圧力検知素子15についても、圧電素子に限らず、本発明は容量型圧力検知素子、歪ゲージ検知素子などの電子式検知素子、あるいはダイアフラム式、ベローズ式に代表される機械式の検知素子を用いることもできる。
また、上記実施形態では、温度センサ1の基部55から塔部51が突出する形態を有しているが、これはあくまで一形態であり、他の形態の温度センサに本発明を適用できることは言うまでもない。温度センサと組み合わされる圧力センサについても同様である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更できる。
【符号の説明】
【0034】
1 温度センサ
2 圧力センサ
3 一体型センサ
10 温度検知素子
11 素子本体
12 リード線
15 圧力検知素子
16 回路部
17 端子
20 ハウジング
30 インナーハウジング
31 素子保持塔部
32 素子保持部
33 素子収容溝
34 支持床
35 リード線収容部
41 基部
42 リード線挿通孔
43 リード線ガイド
44 外周面
45 端子
45a 保持部
45b 接続部
46 露出穴
47 樹脂通路
50 アウターハウジング
51 塔部
55 基部
56 第1凹部
57 第2凹部
58 流体通路
60 ハウジング
61 収容空間
62 コネクタ部
63 端子保持部
70 保護管
71 塔部
72 流体通路
75 基部
76 収容空間
OR1,OR2 封止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度検知素子と、前記温度検知素子を収容する樹脂製のハウジングと、を備え、
前記ハウジングは、
インナーハウジングと、アウターハウジングと、を備え、
前記インナーハウジングは、前記温度検知素子を保持し、
前記アウターハウジングは、保持される前記温度検知素子を含め、前記インナーハウジングの周囲を覆う、
ことを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記感度検知素子が保持される素子保持部を先端部に有する第1素子保持塔と、
前記温度検知素子から引き出されるリード線と接続される端子を保持するとともに、前記素子保持塔を支持する基部と、
を備える請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記基部は、
検知対象である流体が流れる流体通路が、表裏を貫通して形成される、
請求項1又は2に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記インナーハウジングは、
前記ハウジングの前記第1素子保持塔に対応する第2素子保持塔を備え、
前記リード線が収容されるリード線収容凹部が前記第2素子保持塔の軸方向に沿ってその外周に設けられる、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項5】
流体の温度を検知する温度検知センサと、前記流体の圧力を検知する圧力検知素子を備える圧力センサと、を備える一体型センサであって、
前記温度センサは、請求項1〜4のいずれか一項に記載の温度センサからなる、
ことを特徴とする一体型センサ。
【請求項6】
前記温度センサは、請求項3に記載の温度センサからなり、
前記流体通路を通ってきた検知対象である前記流体が、前記圧力検知素子に作用することで圧力を検知する、
請求項5に記載の一体型センサ。
【請求項7】
前記温度センサの前記ハウジングは、検知対象である前記流体が流れる経路に接する領域に継ぎ目を有しない、請求項5又は6に記載の一体型センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−15476(P2013−15476A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149792(P2011−149792)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000145242)株式会社芝浦電子 (18)
【Fターム(参考)】