説明

温度センサユニット

【課題】温度センサユニットの視野角の精度を向上させる。
【解決手段】温度センサユニットにおいて、ヒートシンク30に対して反射鏡50が一体化されており、ヒートシンク30は、回路基板20に対してIRセンサ60A、60Bの位置を保持する。このため、反射鏡50に対するIRセンサ60A、60Bの位置の精度のバラツキを抑えることができる。これにより、IRセンサ60A、60Bの視野角の精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型温度センサにより検温対象物の表面温度を非接触で検出する温度センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度センサユニットでは、基板上に実装された赤外線受光素子と、基板上に実装されて赤外線受光素子を収納し、かつ第1の方向に向けて開口する光入射口を有するケース部と、ケース部に一体化される反射鏡とを備え、反射鏡が第1の方向以外の第2の方向の検温対象物から光入射口を介して入射される赤外線を赤外線受光素子に向けて反射するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものにおいて、赤外線受光素子は、第1の方向の検温対象物だけでなく、第2の方向の検温対象物からの赤外線が光入射口を介して入射される。このため、第1の方向の検温対象物だけでなく、第2の方向の検温対象物の表面温度を非接触で検出する。これにより、反射鏡が設けない場合に比べて、赤外線受光素子の視野角(すなわち、赤外線受光可能範囲)を拡げて、検温可能な範囲を拡げることができる。
【特許文献1】特開11−211561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の温度センサユニットでは、ケース部に反射鏡が一体化されているものの、ケース部および基板の寸法誤差、および組み付け位置のバラツキが原因で、反射鏡に対する赤外線受光素子の位置にバラツキが生じることがある。このため、製品毎に、温度センサの視野角にバラツキが生じることがある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、反射鏡を用いて、検温対象物の表面温度を非接触で検出する温度センサユニットにおいて、視野角の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、第1の方向と異なる第2の方向の検温対象物から入射される赤外線を光入射口に向けて反射する反射鏡(50)と、を備え、非接触型温度センサは、缶部材の温度を自己温度として検出する第1の温度センサと、前記光入射口を通して第1、第2の方向の検温対象物から入射される赤外線に基づいて自己温度と検温対象物との温度差を求める第2の温度センサとを有して、第1、第2の温度センサの検出値に基づいて第1、第2の方向の検温対象物の表面温度を非接触で検出するものであり、基板に搭載され、かつ缶部材の周囲に配置されて缶部材の温度における雰囲気温度の影響を緩和するとともに、基板に対して非接触型温度センサの位置を保持する温度影響緩和部材(30)と、を備え、温度影響緩和部材および反射鏡は、一体化されているものであることを第1の特徴とする。
【0007】
このように、温度影響緩和部材および反射鏡は一体化されており、温度影響緩和部材は、基板に対して非接触型温度センサの位置を保持する。したがって、反射鏡に対する非接触型温度センサの位置のバラツキを抑えることができる。これにより、非接触型温度センサの視野角の精度を向上させることができる。
【0008】
具体的には、本発明は、缶部材には、突起部(66)が設けられており、温度影響緩和部材には、前記缶部材の突起部が嵌合する凹部(68a、68b)が設けられており、缶部材の突出部が温度影響緩和部材の凹部に嵌合されることにより、温度影響緩和部材が基板に対して非接触型温度センサの位置を保持することを第2の特徴とする。
【0009】
これにより、基板に対する非接触型温度センサの位置精度を高くすることができる。
【0010】
本発明は、前記温度影響緩和部材には、突起部が設けられており、前記缶部材には、前記温度影響緩和部材の突起部が嵌合する凹部が設けられており、前記温度影響緩和部材の突起部が前記缶部材の凹部に嵌合されることにより、前記温度影響緩和部材が前記基板に対して前記非接触型温度センサの位置を保持することを第3の特徴とする。
【0011】
これにより、基板に対する非接触型温度センサの位置精度を高くすることができる。
【0012】
本発明は、温度影響緩和部材には、基板に向けて突出する突起部(6)が設けられており、基板には、温度影響緩和部材の突起部が嵌合される孔部(6a)が設けられており、温度影響緩和部材の突起部(6)が基板の孔部(6a)に嵌合されることにより、温度影響緩和部材の位置が基板に対して保持されることを第4の特徴とする。
【0013】
これにより、基板に対する温度影響緩和部材の位置精度を高くすることができる。
【0014】
本発明は、温度影響緩和部材は、金属材料からなるものであり、温度影響緩和部材の熱容量により、缶部材の温度における雰囲気温度の影響が緩和されるようになっていることを第5の特徴とする。
【0015】
また、本発明は、温度影響緩和部材は、断熱性を有する樹脂材料からなるものであり、温度影響緩和部材の断熱性により、缶部材の温度における雰囲気温度の影響が緩和されるようになっていることを第6の特徴とする。
【0016】
本発明は、温度影響緩和部材は、缶部材に対して光入射口および基板を除いた部分の全てを覆うように形成されていることを第7の特徴とする。
【0017】
これにより、缶部材に対する温度影響緩和部材の断熱性を向上させることができるので、缶部材の温度における雰囲気温度の影響を緩和させる機能を向上することができる。
【0018】
本発明では、反射鏡(50)には、第2の方向の検温対象物から入射される赤外線を光入射口に向けて反射する反射面が設けられており、反射面は、メッキ処理により形成されていることを第8の特徴とする。
【0019】
これにより、温度影響緩和部材として樹脂材料からなるものを用いる場合であっても、反射面を構成することができる。
【0020】
本発明では、前記非接触型温度センサ、前記温度影響緩和部材、および前記反射鏡を覆うように形成され、前記第1、第2の方向の検温対象物から入射される赤外線を透過させるキャップ(70)と、
前記キャップの温度を検出する温度センサ(80)と、
前記反射鏡に一体成形されて、前記温度センサを支持する支持部(55)と、を備えていることを第9の特徴とする。
【0021】
これにより、部品点数を増やすことなく、キャップの温度を検出する温度センサを支持することができる。
【0022】
本発明では、前記温度センサは、前記キャップの温度を検出する温度センサ本体(82)と、前記温度センサ本体に通電するための二本の電線(81)とを備えており、
前記温度センサは、前記二本の電線のうち一方の電線が前記支持部に引っかかっることにより支持されていることを第10の特徴とする。
【0023】
これにより、支持部により温度センサを容易に支持することができる。
【0024】
本発明では、前記支持部は、前記反射鏡から前記キャップに向けて突出するように形成されており、
前記キャップには、前記支持部は嵌る凹部(90)が形成されており、
前記支持部が前記キャップの凹部に嵌ることにより、前記反射鏡に対する前記キャップの位置が保持されるようになっていることを第11の特徴とする。
【0025】
これにより、反射鏡に対するキャップの位置のバラツキが小さくなる。
【0026】
本発明では、前記支持部および前記キャップの凹部の間には、前記温度センサおよび前記キャップの間の熱伝導を確保するための充填材が充填されていることを第12の特徴とする。
【0027】
これにより、温度センサによってキャップの温度を良好に検出することができる。
【0028】
本発明では、前記充填材は、前記温度センサおよび前記キャップの間で硬化されて、前記温度センサを前記支持部に接着していることを第13の特徴とする。
【0029】
これにより、温度センサを支持部に良好に固定することができる。
【0030】
本発明では、前記支持部には、凹部内に嵌められる際に案内されるように案内面(55a)が設けられていることを第14の特徴とする。
【0031】
これにより、支持部を凹部内に容易に嵌めることができる。
【0032】
本発明では、前記温度センサの前記二本の電線の先端部がそれぞれ前記基板に接続されており、
前記反射鏡と前記温度影響緩和部材とには、前記支持部と前記基板との間に形成されて前記二本の電線を収納する溝(59)が設けられていることを第15の特徴とする。
【0033】
これにより、二本の電線が基板に触れて短絡することが未然に防ぐことができる。
【0034】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(第1実施形態)
図1〜図3に本発明の車載用温度センサユニットの第1実施形態を示す。図1は車載用温度センサユニットの上面図、図2は図1中A−A断面図、図3は車載用温度センサユニットの分解図である。
【0036】
車載用温度センサユニットは、図1、図2に示すように、回路基板20、ヒートシンク30、コネクタ40、反射鏡50、およびIRセンサ60A、60Bから構成される。
【0037】
IRセンサ60A、60Bは、非接触型温度センサであって、回路基板20の表面(図2中上面)に並べられて搭載されている。IRセンサ60Aは、車室内の車幅方向右側の検温対象物の表面温度を検出するのに用いられ、IRセンサ60Bは、車室内の車幅方向左側の検温対象物の表面温度を検出するのに用いられる。IRセンサ60Aは、缶部材62、および赤外線受光素子61を備えている。
【0038】
缶部材62は、鉄等の金属材料からなるもので、下段部600、中段部610、上段部620から構成されている。缶部材62の上段部620には、第1の方向(図2中上方)に向けて開口する光入射口64が設けられており、光入射口64には集光レンズ63が填め込まれている。
【0039】
缶部材62は、集光レンズ63以外から赤外線受光素子61に赤外線が入射されるのを遮蔽する。赤外線受光素子61は、缶部材62の底面62x(ステム)に配置されて、第1の温度センサを構成する熱電対を有している。
【0040】
熱電対は、ゼーベック効果により、互いに接合された温接点および冷接点の温度差に応じた起電力を出力するもので、温接点は集光レンズ63を介して入射された赤外線により発熱するようになっており、冷接点には集光レンズ63からの赤外線が入射されないようになっている。これにより、熱電対としては、検温対象物の表面温度とIRセンサ60A自体の自己温度との温度差を検出信号として出力する。
【0041】
缶部材62内には、缶部材62の底面62x(ステム)の温度をIRセンサ60A自体の自己温度(基準温度)として検出するサーミスタ65が配置されている。サーミスタ65は缶部材62の底面62xに配置されており、缶部材62と熱電対の冷接点とは温度的に等価になるように構成されている。これにより、サーミスタ65は、IRセンサ60A自体の自己温度を検出信号として出力する。
【0042】
サーミスタ65の検出信号は、演算回路(図示省略)により熱電対の検出信号と加算されて、その加算信号が検温対象物の表面温度の検出温度として出力されることになる。
【0043】
缶部材62Aの下段部600には、図3に示すように、突出部66が設けられており、この突出部66はIRセンサ60A自体の位置決めに用いられる。
【0044】
IRセンサ60Bは、IRセンサ60Aと同様の構成で、缶部材62、赤外線受光素子61、サーミスタ65、および集光レンズ63を備えており、IRセンサ60Bの構成の説明は省略する。
【0045】
ヒートシンク30は、小判型の扁平形状に形成されており、ヒートシンク30には、貫通孔部31A、31Bが設けられている。貫通孔部31A、31Bは、回路基板20の面方向に対して垂直方向に貫通しており、貫通孔部31A、31Bは、IRセンサ60A、60Bをそれぞれ収納している。
【0046】
貫通孔部31A、31Bは、回路基板20の表面に配置されている。缶部材62の下段部620および中段部610に接触して側方(すなわち、回路基板20の面方向)から支えるように形成されている。貫通孔部31A、31Bのそれぞれの上側開口部から、IRセンサ60A、60Bの缶部材62の上段部600が図2中上側(回路基板20の面方向に対して垂直方向)に臨んでいる。
【0047】
ヒートシンク30は、図3に示すように、位置決め穴部68a、68bが設けられており、位置決め穴部68a、68bは、貫通孔部31A、31Bのそれぞれの内外に貫通している。位置決め穴部68a、68bは、IRセンサ60A自体の位置決めに用いられる。
【0048】
ヒートシンク30は、アルミニウム等の金属材料からなり、後述するように、缶部材62の温度において雰囲気温度の影響を緩和するために設けられている。具体的には、ヒートシンク30自体の熱容量により、雰囲気温度が急激な温度変化しても、その温度変化の影響で缶部材62の温度が変化することを緩和する。
【0049】
これは、上述の如く、IRセンサ60A自体の自己温度(基準温度)として検出するためにサーミスタ65が用いられているものの、サーミスタ65は、缶部材62の温度が変化してもそのセンサ出力には遅延が生じる。このため、サーミスタ65の出力が不安定になる。これに対して、ヒートシンク30の熱容量を用いて、缶部材62の温度が急激に変化することを抑制して、サーミスタ65の出力を安定化する。
【0050】
ここで、ヒートシンク30の材料としてアルミニウムを用いた理由は、上述の如く、雰囲気温度の温度変化の影響で缶部材62の温度が変化することを緩和するために適した熱容量を有するからである。具体的には、ヒートシンク30としては板厚寸法として2.5mmのアルミニウムの板材が用いられる。
【0051】
これに加えて、後述するように、ヒートシンク30と反射鏡50とは、一体成形されるので、ヒートシンク30(反射鏡50)の材料としては反射鏡50の機能として赤外線を効率的に反射させるのに適した材料が選ばれている。
【0052】
なお、ヒートシンク30(反射鏡50)の材料としては、赤外線を効率的に反射させることができ、かつ所定の熱容量を有する材料ならば、アルミニウムに限らず、銅なの各種の金属材料を用いても良い。
【0053】
ヒートシンク30には、2つの突起部6が設けられており、回路基板20には、2つの貫通穴6aが設けられている。ヒートシンク302つの突起部6が回路基板20の貫通穴6aのそれぞれ嵌合されることにより、回路基板20に対するヒートシンク30の位置を保持される。
【0054】
コネクタ40は、回路基板20の裏面に配置されて、IRセンサ60A、60Bのセンサ出力を外部基板に出力するために用いられる。
【0055】
反射鏡50は、アルミニウム等の金属材料からなり、ヒートシンク30と一体成形されており、反射鏡50は、ヒートシンク30の貫通孔部31A、31Bの間に配置されている。反射鏡50は、ヒートシンク30側から図2中上方(回路基板20の面方向に対して垂直方向)に突出するように形成されている。
【0056】
反射鏡50のうちIRセンサ60A側には、反射面51が形成されており、反射面51は、図2に示すように、回路基板20の面方向から視ると、IRセンサ60Aの一部を覆うように傾斜して配置されている。反射面51は、図1に示すように、図1中紙面手前側(回路基板20の面方向に対する垂直方向)から視ると、斜め左下側に傾斜して(すなわち、IRセンサ60A、60Bの並ぶ方向に対して傾斜して)配置されている。
【0057】
ここで、反射面51は、集光レンズ63が向けられた第1の方向と異なる方向(第2の方向)の検温対象物から入射される赤外線をIRセンサ60Aの集光レンズ63に向けて反射する。これにより、IRセンサ60Aの集光レンズ63には第1、第2の方向の検温対象物からの赤外線を入射されることになる。
【0058】
反射鏡50のうちIRセンサ60B側には、反射面52が形成されており、反射面52は、図2に示すように、回路基板20の面方向から視ると、IRセンサ60Bの一部を覆うように傾斜して配置されている。反射面52は、図1に示すように、図1中紙面手前側(回路基板20の面方向に対する垂直方向)から視ると、斜め右下側に傾斜して(すなわち、IRセンサ60A、60Bの並ぶ方向に対して傾斜して)配置されている。
【0059】
ここで、反射面52は、集光レンズ63が向けられた第1の方向と異なる方向(第2の方向)の検温対象物から入射される赤外線をIRセンサ60Bの集光レンズ63に向けて反射する。これにより、IRセンサ60Bの集光レンズ63には第1、第2の方向の検温対象物からの赤外線を入射されることになる。
【0060】
このように、IRセンサ60A、60B、および反射鏡50が構成されるため、IRセンサ60A、60Bとしては、図2に示すように広い角度(約160°)の視野角が得られる。
【0061】
次に、車載用温度センサユニットの組み付けについて説明する。
【0062】
まず、回路基板20、ヒートシンク30(これは、反射鏡50が一体化されている)、コネクタ40、およびIRセンサ60A、60Bを別々に用意する。
【0063】
ヒートシンク30の貫通孔部31A、31B内にIRセンサ60A、60Bを収納して、位置決め穴部68a、68bに、IRセンサ60A、60Bの缶部材62Aの突出部66を嵌合する。
【0064】
その後、ヒートシンク30の2つの突起部6を回路基板20の貫通穴6aのそれぞれに嵌合させる。このような嵌合状態でヒートシンク30をボルトBにより回路基板20に対して締結する。次に、IRセンサ60A、60Bのリード線(図示省略)を回路基板20に半田付けする。
【0065】
これにより、ヒートシンク30が回路基板20に対してIRセンサ60A、60Bを保持することができる。
【0066】
以上説明した本実施形態によれば、ヒートシンク30に対して反射鏡50が一体化されており、ヒートシンク30は、回路基板20に対してIRセンサ60A、60Bの位置を保持する。このため、反射鏡50に対するIRセンサ60A、60Bの位置のバラツキを抑えることができる。これにより、IRセンサ60A、60Bの視野角の精度を向上させることができる。
【0067】
(第2実施形態)
上述の第1実施形態では、ヒートシンク30が金属材料からなるものを用いた例について説明したが、ヒートシンク30としては、ABS等の樹脂材料からなるものを用いても良い。
【0068】
この場合、ヒートシンク30としては、金属材料からなるものを用いる場合に比べて熱伝導率が低下するため、ヒートシンク30としては、雰囲気温度に対して缶部材62に対して断熱機能を果たすことにより、雰囲気温度が急激な温度変化しても、その温度変化の影響で缶部材62の温度が変化することを緩和させることができる。
【0069】
本第2実施形態のヒートシンク30は、図4に示すように、缶部材62に対して光入射口64および回路基板20を除いた部分の全てを覆うように形成されている。
【0070】
このようにヒートシンク30を構成することにより、缶部材62に対する断熱性を向上させることができるので、雰囲気温度が急激な温度変化の影響で缶部材62の温度が変化することを良好に緩和させることができる。
【0071】
本実施形態の反射鏡50としては、樹脂材料かなる反射鏡本体部50aに対してクロムなどのメッキ処理により反射面51、52が成形される。反射鏡本体部50aは、ヒートシンク30に一体に成形されたものである。
【0072】
(第3実施形態)
上述の第1実施形態のIRセンサ60A、60Bが車室内に露出した状態で車載用温度センサユニットを車両に搭載すると、車室内の意匠上格好悪く、IRセンサ60A、60Bにより視られているような違和感を乗員に対して与えることになる。
【0073】
そこで、本第3実施形態では、図5の斜視図に示すように、IRセンサ60A、60B ヒートシンク30、および反射鏡50を乗員から隠すためのキャップ70を設ける。
【0074】
図6にキャップ70の単体を示す断面図を示す。図5、図6に示すように、キャップ70は、カバー部71および長筒状側壁部72から構成されている。カバー部71は、長筒状側壁部72の一方の開口部を覆うとともに長筒状側壁部72の軸線S1(図6参照)の延出方向に向けて突出するように形成されている。
【0075】
カバー部71および長筒状側壁部72は、ポリエチレン等の樹脂材料から一体に成形されており、カバー部71および長筒状側壁部72は、反射面51、52およびIRセンサ60A、60Bの集光レンズ63に向けて入射される赤外線を透過させる。
【0076】
長筒状側壁部72には、4つの脚部73が設けられており、4つの脚部73は、回路基板20の貫通穴6bに嵌合された状態、回路基板20に対して係止することになる。
【0077】
図7に反射鏡50およびヒートシンク30の斜視図を示し、図8にキャップ70および反射鏡50が組み合わさった状態の図を示し、図9に図8中A部分の拡大図を示す。
【0078】
図7、図8、図9に示すように、反射鏡50には温度センサ80(図7、図8では温度センサ80を省略)を支持するための支持部57が設けられており、支持部57は反射鏡50からキャップ70に向けて突出するように形成されている。支持部57の先端側にはL字状に突出するL字部57が設けられている。支持部57は、反射鏡50およびヒートシンク30と一体に成形されたものである。
【0079】
温度センサ80はキャップ70自体の温度を検出するためのセンサであり、このセンサの検出値は、IRセンサ60A、60Bの検出値を補正して、キャップ70自体からIRセンサ60A、60Bに入射される赤外線の影響を抑制するために用いられる。
【0080】
本実施形態では、温度センサ80は、温度センサ本体を成すサーミスタ82と
このサーミスタ82に通電するために二本の電線81とから構成されており、二本の電線81のうち一方の電線81が支持部57のL字部57に巻き付くようにU字状に曲げられている。このことにより、一本の電線81が支持部57のL字部57に引っかかることによりサーミスタ82が支持部57により支持されていることになる。
【0081】
また、温度センサ80の二本の電線81の先端部は、回路基板20に半田接続されている。ヒートシンク30および反射鏡50には温度センサ80の二本の電線81を収納するために溝部59が支持部57から回路基板20に向かって設けられている。
【0082】
キャップ70のカバー部71には、凹部を形成する筒部73が設けられており、筒部73内には支持部55が嵌められる。このことにより、反射鏡50およびヒートシンク30に対してキャップ70の位置が保持されることになる。これにより、ヒートシンク30に対するキャップ70の位置バラツキを抑えることができる。
【0083】
ここで、筒部73の内側(すなわち、凹部)には、充填材90が充填されている。充填材90は、硬化されて、サーミスタ82およびキャップ70の間の熱伝導を確保する。これに加えて、充填材90は硬化されてサーミスタ82を支持部57に対して接着している。充填材90としては、空気よりも熱伝導率の高い材料が用いられている。
【0084】
次に、本実施形態の車載用温度センサユニットの組み付けの概略について説明する。
【0085】
まず、ヒートシンク30の貫通孔部31A、31B内にIRセンサ60A、60Bを収納して、ヒートシンク30の2つの突起部6を回路基板20の貫通穴6aのそれぞれに嵌合させる。このような嵌合状態でヒートシンク30をボルトBにより回路基板20に対して締結する。これにより、ヒートシンク30および反射鏡50を回路基板20に組み付けることができる。
【0086】
次に、IRセンサ60A、60Bのリード線(図示省略)を回路基板20に半田付けする。
【0087】
次に、支持部57に対して温度センサ80を支持部57により組み付ける。具体的には、温度センサ80の一本の電線81を支持部57のL字部57に引っかけてサーミスタ82を支持部57により支持させる。
【0088】
次に、温度センサ80の二本の電線81を溝部59内に収納して二本の電線81の先端部を回路基板20に半田付けする。
【0089】
次に、キャップ70を回路基板20に対して組み付ける。具体的には、支持部55に充填材90を付け、この状態の支持部55を筒部73内に嵌め込む。これに伴い、キャップ70の4つの脚部73を回路基板20の貫通穴6bに嵌め込む。これにより、キャップ70に対して温度センサ80を装着することができる。
【0090】
以上説明した本実施形態では、支持部57は、反射鏡50およびヒートシンク30と一体に成形されたものであるので、部品点数を増やすことなく、温度センサ80を支持することができる。
【0091】
ここで、温度センサ80をキャップ70に対して装着する前に、支持部57により温度センサ80を支持した状態で、温度センサ80の二本の電線81の先端部を回路基板20に半田付けする。
【0092】
これに対して、温度センサ80をキャップ70に対して装着した後に、温度センサ80の二本の電線81の先端部を回路基板20に半田付けする場合には、二本の電線81の長さ寸法を予め十分に余分な長さの寸法に設定しておくことが必要である。このため、回路基板20内の電子回路に電線81が触れて短絡する恐れがある。
【0093】
そこで、本実施形態では、支持部57により温度センサ80を支持されることにより、温度センサ80をキャップ70に対して装着する前に、温度センサ80の二本の電線81の先端部を回路基板20に半田付けする。このため、二本の電線81の長さ寸法を余分な長さの寸法に設定しておく必要がない。このため、回路基板20内の電子回路を短絡させる恐れもない。
【0094】
また、本実施形態では、支持部55を筒部73内に嵌め込むので、キャップ70に対する温度センサ80の位置バラツキも抑えることができる。
【0095】
また、本実施形態では、温度センサ80を支持部57により支持させた状態で、支持部55を筒部73内に嵌め込むことにより、キャップ70に対して温度センサ80を装着している。一方、筒部73に対して熱カシメを施してキャップ70に対して温度センサ80を装着することも考えられるが、本実施形態では、筒部73に対して熱カシメする工程自体が必要ないので、製造工程の工程数を減らすことができる。
【0096】
また、本実施形態では、温度センサ80の二本の電線81を収納するために溝部59が設けられているので、二本の電線81が回路基板20内の電子回路を短絡させる恐れもない。
【0097】
(第4実施形態)
本第4実施形態では、図10に示すように、上述の第3実施形態の支持部55に案内面55aを設けて、キャップ70の筒部73内に支持部55を嵌め込み易くする。
【0098】
案内面55aは、支持部55の先端側(図10中上側)に近づくほど筒部73の外側から内側に向かうように形成される傾斜面である。このため、キャップ70の筒部73内に支持部55を嵌め込む際に、案内面55aに対して筒部73の先端側73aが滑って案内されることになる。なお、図10において、図9と同一符号は同一のものを示しその説明を省略する。
【0099】
(他の実施形態)
上述の第1実施形態では、缶部材62A(62B)には突出部66を設け、ヒートシンク30に位置決め穴部(凹部)68a(68b)を設け、缶部材62A(62B)の突出部66をヒートシンク30に位置決め穴部68a(68b)に嵌合することにより、ヒートシンク30に対する缶部材62A(62B)の位置を保持するようにした例について説明したが、これに代えて、次のようにしてもよい。
【0100】
すなわち、缶部材62A(62B)には穴部(凹部)を設け、ヒートシンク30に突起部を設け、缶部材62A(62B)の穴部にヒートシンク30に突起部を嵌合することにより、ヒートシンク30に対する缶部材62A(62B)の位置を保持するようにしてもよい。
【0101】
上述の第1実施形態では、回路基板20に対して2つのIRセンサ60A、60Bを搭載した例について説明したが、これに代えて、回路基板20に対して1つのIRセンサ60A(60B)を搭載してもよく、また回路基板20に対して3つ以上のIRセンサ60A(60B)を搭載してもよい。
【0102】
上述の実施形態では、反射鏡50の反射面51、52としては、反射鏡本体部50aに対してクロムなどのメッキ処理により成形されるものについて説明したが、これに限らず、反射面51、52としては、反射鏡本体部50aに対して2色成形により成形してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1実施形態の温度センサユニットの上面図である。
【図2】図1中A−A断面図である。
【図3】図1の温度センサユニットの分解図である。
【図4】本発明の第2実施形態の温度センサユニットの上面図である。
【図5】本発明の第3実施形態の温度センサユニットの上面図である。
【図6】図5のキャップの断面図である。
【図7】図5のキャップの断面図である。
【図8】図5のキャップおよび反射鏡が組み合わさった状態を示す図である。
【図9】図8中の部分拡大図である。
【図10】本発明の第4実施形態のキャップおよび反射鏡が組み合わさった状態の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0104】
10…車載用温度センサユニット、20…回路基板、30…ヒートシンク、
40…コネクタ、50…反射鏡、60A、60B…IRセンサ、
62…缶部材、61…赤外線受光素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に搭載されて、第1の方向に向けて開口する光入射口(64)を有する缶部材(62)を有して、かつ前記缶部材内に配置され、前記缶部材の光入射口を介して入射される検温対象物からの赤外線に基づいて前記検温対象物の表面温度を非接触で検出する非接触型温度センサ(60A、60B)と、
前記第1の方向と異なる第2の方向の検温対象物から入射される赤外線を前記光入射口に向けて反射する反射鏡(50)と、を備え、
前記非接触型温度センサは、前記缶部材の温度を自己温度として検出する第1の温度センサと、前記光入射口を通して第1、第2の方向の検温対象物から入射される赤外線に基づいて前記自己温度と前記検温対象物との温度差を求める第2の温度センサとを有して、前記第1、第2の温度センサの検出値に基づいて前記第1、第2の方向の前記検温対象物の表面温度を非接触で検出するものであり、
前記基板に搭載され、かつ前記缶部材の周囲に配置されて前記缶部材の温度における雰囲気温度の影響を緩和するとともに、前記基板に対して前記非接触型温度センサの位置を保持する温度影響緩和部材(30)と、を備え、
前記温度影響緩和部材および前記反射鏡は、一体化されているものであることを特徴とする温度センサユニット。
【請求項2】
前記缶部材には、突起部(66)が設けられており、
前記温度影響緩和部材には、前記缶部材の突起部が嵌合する凹部(68a、68b)が設けられており、
前記缶部材の突出部が前記温度影響緩和部材の凹部に嵌合されることにより、前記温度影響緩和部材が前記基板に対して前記非接触型温度センサの位置を保持することを特徴とする請求項1に記載の温度センサユニット。
【請求項3】
前記温度影響緩和部材には、突起部が設けられており、
前記缶部材には、前記温度影響緩和部材の突起部が嵌合する凹部が設けられており、
前記温度影響緩和部材の突起部が前記缶部材の凹部に嵌合されることにより、前記温度影響緩和部材が前記基板に対して前記非接触型温度センサの位置を保持することを特徴とする請求項1に記載の温度センサユニット。
【請求項4】
前記温度影響緩和部材には、前記基板に向けて突出する突起部(6)が設けられており、
前記基板には、前記温度影響緩和部材の突起部が嵌合される孔部(6a)が設けられており、
前記温度影響緩和部材の突起部(6)が前記基板の孔部(6a)に嵌合されることにより、前記温度影響緩和部材の位置が前記基板に対して保持されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の温度センサユニット。
【請求項5】
前記基板には、前記非接触型温度センサとして、第1、第2の缶部材を有する第1、第2の非接触型温度センサが並べて実装されており、
前記温度影響緩和部材は、前記第1、第2の缶部材の温度における雰囲気温度の影響を緩和するとともに、前記基板に対して前記第1、第2の非接触型温度センサを保持するものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の温度センサユニット。
【請求項6】
前記温度影響緩和部材には、前記第1、第2の缶部材の光入射口に対して、前記第1、第2の方向の検温対象物から入射される赤外線を通過させる第1、第2の開口部(64)が設けられており、
前記反射鏡(50)は、前記第1、第2の開口部の間に配置され、前記温度影響緩和部材から突出するように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の温度センサユニット。
【請求項7】
前記温度影響緩和部材は、金属材料からなるものであり、
前記温度影響緩和部材の熱容量により、前記缶部材の温度における雰囲気温度の影響が緩和されるようになっていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の温度センサユニット。
【請求項8】
前記温度影響緩和部材は、断熱性を有する樹脂材料からなるものであり、
前記温度影響緩和部材の断熱性により、前記缶部材の温度における雰囲気温度の影響が緩和されるようになっていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の温度センサユニット。
【請求項9】
前記温度影響緩和部材は、前記缶部材に対して前記光入射口および前記基板を除いた部分の全てを覆うように形成されていることを特徴とする請求項8に記載の温度センサユニット。
【請求項10】
前記反射鏡(50)には、前記第2の方向の検温対象物から入射される赤外線を前記光入射口に向けて反射する反射面が設けられており、
前記反射面は、メッキ処理により形成されていることを特徴とする請求項8または9に記載の温度センサユニット。
【請求項11】
前記非接触型温度センサ、前記温度影響緩和部材、および前記反射鏡を覆うように形成され、前記第1、第2の方向の検温対象物から入射される赤外線を透過させるキャップ(70)と、
前記キャップの温度を検出する温度センサ(80)と、
前記反射鏡に一体成形されて、前記温度センサを支持する支持部(55)と、を備えていることを特徴とする請求項1ないし10のうちいずれか1つに記載の温度センサユニット。
【請求項12】
前記温度センサは、前記キャップの温度を検出する温度センサ本体(82)と、前記温度センサ本体に通電するための二本の電線(81)とを備えており、
前記温度センサは、前記二本の電線のうち一方の電線が前記支持部に引っかかっることにより支持されていることを特徴とする請求項11に記載の温度センサユニット。
【請求項13】
前記支持部は、前記反射鏡から前記キャップに向けて突出するように形成されており、
前記キャップには、前記支持部は嵌る凹部(90)が形成されており、
前記支持部が前記キャップの凹部に嵌ることにより、前記反射鏡に対する前記キャップの位置が保持されるようになっていることを特徴とする請求項12に記載の温度センサユニット。
【請求項14】
前記支持部および前記キャップの凹部の間には、前記温度センサおよび前記キャップの間の熱伝導を確保するための充填材が充填されていることを特徴とする請求項13に記載の温度センサユニット。
【請求項15】
前記充填材は、前記温度センサおよび前記キャップの間で硬化されて、前記温度センサを前記支持部に接着していることを特徴とする請求項14に記載の温度センサユニット。
【請求項16】
前記支持部には、前記凹部内に嵌められる際に案内されるように案内面(55a)が設けられていることを特徴とする請求項14に記載の温度センサユニット。
【請求項17】
前記温度センサの前記二本の電線の先端部がそれぞれ前記基板に接続されており、
前記反射鏡と前記温度影響緩和部材とには、前記支持部と前記基板との間に形成されて前記二本の電線を収納する溝(59)が設けられていることを特徴とする請求項12ないし16のいずれか1つに記載の温度センサユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−268166(P2008−268166A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151293(P2007−151293)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】