説明

温度センサー

【課題】 近年電磁波を利用し化学反応による材料合成などの分野を代表とする応用研究や開発が盛んであり、その際電磁波照射物体の温度測定が重要である。一般には高価な光ファイバー温度計が使用されているのが現状である。そこで、電磁波環境下においても安価で安易に測定可能な温度センサーが必要とされている。
【解決手段】 熱電対へ電磁波遮蔽材を被覆しなおかつ電磁波遮蔽材を伝播し電磁波装置外へと漏洩する電磁波を電磁波遮蔽材の端部に設けた電磁波放射部によって電磁波装置内へと電磁波を放射し電磁波装置への取り付けを安易に行えかつ電磁波環境下でも測定を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波環境下で用いられる温度センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁波環境下における熱電対を用いた温度測定は、電磁波による周期的な電場変動や、電磁波の局部的な加熱によって1000℃を超える高温になること、また金属表面に蓄積される高周波電流によって生じるアーク放電などによって正確な測定が困難とされていた。上記の理由より、今日では電磁波環境下における温度測定には光ファイバー温度計が一般的に用いられている。
【0003】
特開平6−331453号には、サーミスタにより検出される温度情報を装置本体に導くリード線を、可撓性を有する帯状の絶縁性支持体の表裏面に表皮の深さδよりも薄い膜厚tを有する薄膜電極を形成しマイクロ波電界中において電界に影響を与えることなく測温位置の正確な温度測定を可能にする提案がある。
【0004】
特開2000−171307号には、熱電対の金属性保護管の電位を電子レンジの内壁と等電位にするように設置するため電子レンジ等のマイクロ波照射室の形状を設計または変形させて金属性機器を照射室内に外部から挿入または設置するための一般原理の提案がある。
【0005】
特開2003−262550号には、熱電対を有したセンサー部と、センサー部を密閉状態にて被覆すると共に、少なくとも1000℃に耐え得る耐熱性を備え、かつマイクロ波の透過を許容しないマイクロ波不透過材料にて形成された保護管とを有し、保護管の基端側部位には導電部が形成されており、導電部にはマイクロ波高温炉のハウジングに装着するための装着用部材を有するマイクロ波高温炉用保護管型熱電対を用いることによりマイクロ波がマイクロ波高温炉外に漏出することなく、より正確かつ極めて低廉に焼成体など測定対象の温度を計測可能なマイクロ波高温炉用保護管型熱電対およびマイクロ波高温炉における熱電対取り付け構造の提案がある。
【0006】
特開2005−147976号には、所定の処理層内における基板の温度を測定する温度測定ユニットを備えた温度測定装置で、基板と温度測定ユニットとの間には、電磁波を遮断する材料からなり基板に接触可能に構成された遮蔽部の温度を、温度測定ユニットによって測定するような構成の提案がある。
【特許文献1】特開平6−331453号公報
【特許文献2】特開2000−171307号公報
【特許文献3】特開2003−262550号公報
【特許文献4】特開2005−147976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的に使用されている光ファイバー温度計では、測温部より得た情報を温度情報に変換する制御部が複雑なため非常に高価で故障の際など整備が難しい問題がある。
【0008】
また特開平6−331453号においては、温度測定部から検出される温度情報を薄膜のリード線を用いて温度表示装置まで導いているため、そのリード線周辺が高温になった場合融解などにより断線の問題がある。
【0009】
また特開2000−171307号においては、電磁波装置と温度測定装置との間に確実にかつ精密に導電性を持たせる必要がある。よって電磁波装置内の測温部位を変更する際、電磁波装置を再度精密に加工する必要性があるため温度測定装置設置の自由度が低い問題がある。
【0010】
また特開2003−262550号においては、特開2000−171307号と同様に電磁波装置と温度測定装置との間に確実にかつ精密に導電性を持たせる必要がある。よって電磁波装置内の測温部位を変更する際、電磁波装置を再度精密に加工する必要性があるため温度測定装置設置の自由度が低い問題がある。さらに電磁波遮蔽材料として用いている材料には耐酸、耐アルカリ性に問題がある。
【0011】
また特開2005−147976号においては、構造上電磁波照射物体の表面上の温度しか測定できず電磁波照射物体の内部を測定することが難しい問題がある。
【0012】
本発明は上記の課題を解決するためになされており、電磁波環境下において安価な熱電対を用いて温度測定を行うにあたって、電磁波遮蔽材、及び電磁波遮蔽材を伝播し電磁波装置外へ漏洩する電磁波を構造的に遮蔽することによって電磁波装置への温度センサーの設置が容易に行える温度センサーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段を以下に説明する。
【0014】
まず、本発明では、光ファイバー温度計に比べ複雑な制御部を必要としない熱電対などの温度差を電位差として検出する測温部を用いているため、整備が行いやすく安価に温度測定が可能な構造となっている。
【0015】
また、特開平6−331453号における問題点の解決方法として本発明では、一般的に高温にも使用可能なクロメル・アルメル熱電対や白金・ロジウム熱電対などの熱電対に着目し、高温にも使用可能な温度測定システムとなっている。
【0016】
次に特開2000−171307号における問題点の解決方法として本発明では、電磁波遮蔽材を伝播し電磁波装置外へ漏洩する電磁波を、電磁波遮蔽材の他端に設けられた電磁波放射部によって漏洩を防ぎ、電磁波装置との間を確実かつ精密に導電性を持たせる必要がない。すなわち、電磁波放射部と電磁波装置とが接触する程度に導電性を持たせる必要はあるが、本発明の温度センサーを電磁波装置に取り付ける際、特殊な装着用部材の必要はない。
【0017】
特開2003−262550号における問題点の解決方法として本発明では、電磁波遮蔽材を伝播し電磁波装置外へ漏洩する電磁波を、電磁波遮蔽材の他端に設けられた構造的な遮蔽機構によって漏洩を防ぎ、電磁波装置との間を確実かつ精密に導電性を持たせる必要がない。すなわち、電磁波放射部と電磁波装置とが接触する程度に導電性を持たせる必要はあるが、本発明の温度センサーを電磁波装置に取り付ける際、特殊な装着用部材の必要はない。また、電磁波遮蔽材をガラス管で被覆することで耐酸化性、耐酸性、耐アルカリ性に優れた構造となっている。
【0018】
特開2005−147976号における問題点の解決方法として本発明では、電磁波遮蔽部が熱電対全体にわたって被覆されているため、電磁波照射物体内部に測温部を配置することが可能な構造となっている。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、電磁波環境下における物質の分解や、焼結など電磁波を利用した様々な分野において一般的に用いられている光ファイバー温度計より安価でかつ安易に温度測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。電磁波環境下において測定可能な熱電対を用いた温度測定システムの形態を一例として図1に示した。また、電磁波環境下において測定可能な温度センサーの形態の断面図を一例として図2に示した。
【0021】
本発明の電磁波環境下において測定可能な温度センサー1は、図1に示すように、温度センサー1より得た温度情報を補償銅線2などで温度表示装置3に接続し電磁波環境下での温度測定を可能にした。
【0022】
次に電磁波環境下において測定可能な温度センサー1について詳しく説明する。図2に示すように、電磁波装置内における測定対象物の温度を測定するための熱電対4を備え、熱電対4は他との絶縁のため絶縁体5でコーティングされている。測温部として、安価な熱伝対4を用いているため、コストを低減することができる。なお、熱電対4は、温度差を電位差として検出するものであれば良く、例えば高温でも使用可能なクロメル・アルメル熱電対や白金・ロジウム熱電対などでも良い、また絶縁体5は絶縁性を有する材料であればどのような材料でもよく、温度センサー1内部において熱電対4が露出しないよう均一にコーティングしてある。
【0023】
次に熱電対4を電磁波環境下から遮蔽するため管状の電磁波遮蔽材6(電磁波遮蔽部)と、電磁波放射部7とは、導電性の接着剤8で固定され、導電性を有している。電磁波放射部7は、プレス機などで断面形状がコの字状(カップ状)に加工され、電磁波遮蔽材6を伝播し電磁波装置外へ漏洩する電磁波を電磁波環境である電磁波装置内へと放射する。これにより、温度センサーの設置が容易に行える構造となっている。なお、この電磁波遮蔽材6は、本発明の実施例では、ステンレスなどの耐熱金属を用いているが電磁波を遮蔽し高温にも耐えうる材料であればその他の金属やセラミックスなどでも良い。また電磁波放射部7は、本発明の実施例では、アルミニウムを用いているが導電性を有する材料ならばその他の金属やセラミックスなどでも良い。
【0024】
次に、電磁波遮蔽材6の外側に、熱的保護のため断熱材9(断熱部)が巻かれている。この断熱材9は、本発明の実施例では、カオウールを用いているが、断熱性を有する材料であればどのような材料でも良い。
【0025】
また、上記断熱材9の外側には、耐酸化性、耐酸性、耐アルカリ性の向上のため酸素バーナーなどで試験管状に加工したガラス管10で被覆している。このガラス管10は、本発明の実施例では、パイレックス(登録商標)を用いているが、本発明の温度センサーの使用温度が高ければ石英などでも良い。
【実施例】
【0026】
前記の本発明機構を図3に示すような実施例によってさらに説明する。
【0027】
図3は、本発明によって行う実施例の1つを示したもので、電磁波装置11(電子レンジ)の上部に本発明による温度センサー1が挿入できるよう電磁波装置外壁12と電磁波装置内壁13に小孔12a、13aが開けてある。電磁波装置内壁内には、500mlのビーカー14に水を入れ、回転台15の中心に設置し、上部から本発明の温度センサー1を挿入してある。ここで、電磁波放射部7が電磁波装置内壁に接触するように温度センサー1を挿入する。温度センサー1より得られる温度情報は、補償銅線2などで温度表示装置3に接続し温度測定を行う。ここで温度センサー1は、熱電対4にはクロメル・アルメル熱電対を用い絶縁体5には無機接着剤、電磁波遮蔽材6にはステンレス、電磁波放射部7にはアルミニウムを使用し接着剤8は導電性樹脂材料を用いた。また断熱材9にはカオウールを使用しそれらをガラス管10のパイレックス(登録商標)で被覆した物を使用した。
【0028】
電磁波装置の電磁波出力は500Wで水を加熱し、水温の変化を測定した。結果は図4に示す。
【0029】
結果から示されるように、電磁波照射時間と温度は比例の関係を保って上昇する。また、水の沸点はおよそ100℃と知られているが、結果は110℃付近まで過熱されている。これについては、温度センサー1の先端では水は水蒸気化しその周辺の温度は熱水状態にあるためであると考えられる。このようにして、電磁波環境下においても正確な温度測定を行えることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】電磁波環境下において測定可能な温度センサーを用いた温度測定システムの形態を示す図である。
【図2】本発明の電磁波環境下において測定可能な温度センサーの形態の断面図である。
【図3】本発明の実施例にあたって電磁波環境下において測定可能な温度センサーを用いた水の加熱温度測定の構成図である。
【図4】水の加熱温度測定の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 温度センサー
2 補償銅線
3 温度表示装置
4 熱電対(測温部)
5 絶縁体
6 電磁波遮蔽材(電磁波遮蔽部)
7 電磁波放射部
8 接着剤
9 断熱材(断熱部)
10 ガラス管
11 電磁波装置
12 電磁波装置外壁
12a 小孔
13 電磁波装置内壁
13a 小孔
14 ビーカー
15 回転台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波環境下において温度を測定するために用いられる温度センサーであって、温度差を電位差として検出する測温部と、電磁波を遮蔽する材料により形成され、前記測温部を被覆する電磁波遮蔽部と、前記電磁波遮蔽部の端部に設けられ、前記電磁波遮蔽部を伝播し電磁波環境外へと漏洩する電磁波を電磁波環境内へと放射する電磁波放射部と、を備えることを特徴とする温度センサー。
【請求項2】
前記測温部は、クロメル・アルメル熱電対または白金・ロジウム熱電対であることを特徴とする請求項1記載の温度センサー。
【請求項3】
前記電磁波遮蔽部は、電磁波を透過せず高温にも耐えうる材料により管状に形成され、前記測温部を全体にわたって被覆していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の温度センサー。
【請求項4】
前記電磁波放射部は、導電性を有する材料により断面がコの字状となるように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の温度センサー。
【請求項5】
さらに、断熱材で形成され、前記測温部を被覆する断熱部を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の温度センサー。
【請求項6】
さらに、前記測温部を被覆するガラス管を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の温度センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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