説明

温度センサ

【課題】 耐久性、電気的絶縁性と測温応答性に優れた温度センサを提供する。
【解決手段】 温度センサ5はアルミナなどのセラミックス製保護管11内に熱電対20を装着して構成される。セラミックス製保護管11は射出成形にて成形され、厚みが一定厚の基部12と、この基部12に連続するとともに厚みが先端に向かって徐々に薄くなるテーパ部13と、このテーパ部13に連続するとともに最も厚みが薄くなった先端部14と、前記基部12とテーパ部13の境界部付近に設けられるフランジ部15からなり、前記熱電対20は銅−コンスタンタン素線21,21と、この素線21,21の結合部を被覆するガラス玉22と、コネクタ23からなる。そして、ガラス玉22はシリコーン樹脂(SiO)を主体とした充填材24にて前記セラミックス製保護管11の先端部14内に押し込められて固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水器やモータなどに組み込まれる温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の温度センサはステンレス製保護管(シース)内に熱電対を構成する金属素線、またはサーミスタを構成するサーミスタチップ及びデュメット線を収納している。しかしながら、ステンレス製保護管は耐食性に劣り、高温に晒されるとステンレス製保護管が劣化し、さらに熱電対部またはサーミスタ部の電気的不安定性および絶縁性の劣化が生じ、温度センサとしての機能を果たせなくなる。そこで、特許文献1〜3に開示されるセラミックス製保護管を用いた温度センサが提案されている。
【0003】
特許文献1には、窒化ケイ素(Si)またはサイアロン(SIALON)からなる保護管の外表面に、下地層としてモリブデンとホウ化ジルコニウムの混合物または化合物を被覆し、この外側に中間層としてモリブデンとホウ化ジルコニウムとジルコニアの混合物または化合物を被覆し、この中間層の外側に最表面層としてジルコニアを被覆した温度センサが開示されている。
【0004】
特許文献2には、高純度アルミナにて保護管を形成するとともに、保護管の周囲を冷却媒体が流れる冷却筒で囲み、更にこの冷却筒に保護管を固定するためのフランジを保護管に形成した温度センサが開示されている。
【0005】
特許文献3に開示される温度センサは、窒化ケイ素(Si)、サイアロン(SIALON)または炭化ケイ素(SiC)にて保護管を構成し、この保護管の先端部を薄く(0.5mm)して熱容量を小さくし、測温応答性を向上させることが開示され、また保護管の先端部内には窒化ケイ素(Si)系反応焼結セラミックからなる充填材を入れて熱電対を固定し、また保護管の後方部分にはSiCウィスカーからなる充填材を配置する構造が開示されている。
【0006】
尚、セラミック保護管を用いた温度センサは、使用温度環境が高い熱電対温度センサが主で、温度使用領域が300℃以下と低いサーミスタ温度センサとしての先行技術は見当たらない。
【0007】
【特許文献1】特開2003−004538号公報
【特許文献2】特開2004−125643号公報
【特許文献3】特開平10−030967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されるように、保護管の外側に下地層、中間層、最表面層を被覆すると、保護管の先端部の厚みが増して測温応答性が劣化してしまう。
【0009】
また特許文献2に開示されるようにフランジを設ける場合、射出成形では材料が廻り込めないので特許文献2の図に示されるような大きなフランジ部を成形することはできない。
【0010】
更に特許文献3に開示されるように保護管の先端部を薄肉にすれば、応答性は向上するが、セラミック材料としてアルミナを用いた場合には、先端部の厚みを0.5mmにしても不十分である。
また、特許文献3にあっては充填材として窒化ケイ素(Si)系反応焼結セラミックを用いているが、高温と低温の繰り返しや外的衝撃を受けると、保護管内側面と充填材との間に隙間が生じ、応答性が劣化する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明に係る温度センサは、保護管をセラミックス製とし、このセラミックス製保護管の先端部を他の部分に比較して薄肉に成形し、この先端部内側には熱電対またはサーミスタを構成する部分を被覆するガラス玉を収納し、このガラス球は伝熱性に優れ且つ柔軟性を有する樹脂充填材にて保持された構成とした。
【0012】
また第2発明は、保護管をセラミックス製とし、このセラミックス製保護管の先端部を他の部分に比較して薄肉に成形し、この先端部内側には熱電対またはサーミスタを構成する部分が絶縁コートで被覆されて収納され、更に前記熱電対またはサーミスタを構成する部分は伝熱性に優れ且つ柔軟性を有する樹脂充填材にて保持されている構成とした。
【0013】
前記セラミックス製保護管は好ましくはアルミナ製であり、先端部の厚みは0.3mm以下であり、前記伝熱性に優れ且つ柔軟性を有する樹脂はシリコーン樹脂(SiO)を主体としたものとする。
【0014】
また、射出成形にて保護管を一体成形する場合に、必要な厚みと径を持ったフランジ部を形成することが困難な場合には、セラミックス製保護管の外周に射出成形の際に環状凸部を形成し、この環状凸部外側に金属製のフランジを圧入することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る温度センサによれば、先端の感熱部を例えば0.3mm以下まで薄くしているため、セラミック材料として他のセラミック材料よりも伝熱性に劣るアルミナを用いても、十分な応答性が得られる。
【0016】
また、熱電対またはサーミスタを保護管の先端部内に固定する充填材として伝熱性に優れ且つ柔軟性を有する樹脂、例えばシリコーン樹脂またはエポキシ樹脂またはウレタン樹脂を主体としたものを用いることで、外的衝撃及び熱的衝撃に対する耐久性が向上する。
【0017】
セラミック製保護管を用いた場合、センサ感知部とセンサ接液部、さらに取り付け本体部との電気的絶縁性が確実に確保でき、金属製保護管を用いた場合と比較して格段に高い電気的安全性が得られる。例えば、0.1mmの肉厚アルミナセラミックの場合でも、AC3KV、1分間の絶縁耐圧が確保できることを
実験的に確認している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1(a)および(b)は本発明に係る温度センサを組み込んだ温水器で(a)はガス温水器、(b)は電気温水器の概略図、図2は同温度センサの配管への取り付け状態を示す断面図、図3は同温度センサの先端部の拡大断面図である。
【0019】
(a)に示すガス温水器は本体カバー1内にバーナ2、配管3、伝熱用フィン4が配置され、配管3の一端から水が供給され、配管3の他端から湯が取り出される。そして、バーナ2よりも下流側の配管3の一部に本発明に係る温度センサ5が取り付けられている。(b)に示す電気温水器は本体カバー1内に220Vのヒータ2aを配置している。尚、本発明に係る温度センサは耐食性に優れている点及び電気的絶縁性に優れているメリットを活かし温水器に限らず、電気自動車やハイブリット自動車等のモータなどの温度検出にも適用できる。
【0020】
前記配管3には図2に示すように開口6が形成され、この開口6の外側面に金属ブロック7が溶接され、この金属ブロック7には前記開口6と2段状の開口8が形成され、これら開口6,8を貫通し且つOリング9および取付けプレート10を介して温度センサ5が配管3内に挿入・固定されている。
【0021】
温度センサ5はアルミナなどのセラミックス製保護管11内に熱電対20を装着して構成される。セラミックス製保護管11は射出成形にて成形され、厚みが一定厚(T1=0.45mm)の基部12と、この基部12に連続するとともに厚みが先端に向かって徐々に薄くなるテーパ部13と、このテーパ部13に連続するとともに最も厚み(T2=0.3mm)が薄くなった先端部14と、前記基部12とテーパ部13の境界部付近に設けられるフランジ部15からなる。
【0022】
前記熱電対20は銅−コンスタンタン素線21,21と、この素線21,21の結合部を被覆するガラス玉22と、コネクタ23からなる。
【0023】
前記ガラス玉22はシリコーン樹脂(SiO)を主体とした充填材24にて前記セラミックス製保護管11の先端部14内に押し込められて固定されている。ここで、シリコーン樹脂(SiO)を主体とした充填材24は柔軟性を持つため、押し込む際に先端部14内側面との間には隙間が形成されず保護管先端部14の内側に空気が噛み込むことがない。また、且つ熱的・外的衝撃が加えられても隙間は形成されない。尚、充填材24には伝熱性を高めるため、金属粉などを添加することが考えられる。
【0024】
また、セラミックス製保護管11の先端部14よりも後方部分はウレタンを主体とした充填材25にて封止されている。
【0025】
図4乃至図8は別実施例に係る温度センサの断面図であり、このうち図4(a)、(b)に示す温度センサは、板状をなす薄膜サーミスタ28の一面の左右に電極部を形成し、これら電極部にデュメット線18の先端部を結合している。この温度センサの先端部はサーミスタ28の形状に合せて偏平に近い形状となっており、幅広の部分の外径寸法は1.3mm、幅狭の部分の外径寸法は1.1mmにしている。
【0026】
また図5に示す別実施例はフランジ部を一体成形せずに、必要とするフランジ部よりも高さの 低い環状凸部26を一体成形し、この環状凸部26の外側に金属製のフランジ部材27を圧入するようにしている。
【0027】
図6に示す別実施例は、セラミックス製保護管31は、厚みが一定厚(T1=0.45mm)の基部32と、この基部12に連続するとともに厚み(T2=0.15mm)が薄くなった先端部33と、フランジ部34からなる。
セラミックス製保護管の形状としては上記に限らず、先端部が例えば0.3mm以下と薄ければよい。また先端部の形状は球面に限らない。
【0028】
図7に示す別実施例は、前記実施例のガラス玉22の代わりにデュメット線18を取り付けた薄膜サーミスタ28の表面に薄い絶縁コート29を施している。この実施例によれば、更にセラミックス製保護管の先端部14の寸法を幅1.0mm、高さ0.8mmと小さくすることができる。本発明にあっては保護管31が絶縁性に優れたアルミナなどのセラミックス製にしているので、先端部の寸法を小さくして短絡を起こすことがない。
前記絶縁コート29の材料としては、ポリシラザンを挙げることができる。また絶縁コート29の形成方法としては、スプレー、手塗、ディッピングなどが考えられる。
【0029】
図8に示す別実施例は、図7に示した実施例と同様にガラス玉22を用いていない。この実施例ではチップサーミスタ19の上面と下面にそれぞれデュメット線18を接続し、この状態で絶縁コート29で被覆している。この実施例の場合もセラミックス製保護管の先端部14の寸法を幅1.0mm、高さ0.8mmまで小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)および(b)は本発明に係る温度センサを組み込んだ温水器の概略図
【図2】同温度センサの配管への取り付け状態を示す断面図
【図3】同温度センサの先端部の拡大断面図
【図4】(a)は別実施例に係る温度センサの先端部の拡大断面図、(b)は(a)のB方向矢視図
【図5】別実施例に係る温度センサの断面図
【図6】別実施例に係る温度センサの断面図
【図7】(a)及び(b)は別実施例を示す図4(a)及び(b)と同様の図
【図8】(a)及び(b)は別実施例を示す図4(a)及び(b)と同様の図
【符号の説明】
【0031】
1…温水器の本体カバー、2…バーナ、2a…ヒータ、3…配管、4…伝熱用フィン、5…温度センサ、6…開口、7…金属ブロック、8…開口、9…Oリング、10…取付けプレート、11,31…セラミックス製保護管、12,32…セラミックス製保護管の基部、13…セラミックス製保護管のテーパ部、14,33…セラミックス製保護管の先端部、15,34…フランジ部、18…デュメット線、19…チップサーミスタ、20…熱電対、21…熱電対の素線、22…ガラス玉、23…コネクタ、24,25…充填材、26…環状凸部、27…金属製のフランジ部材、28…薄膜サーミスタ、29…絶縁コート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス製保護管内に熱電対またはサーミスタを構成する部分を保持してなる温度センサにおいて、前記セラミックス製保護管の先端部は他の部分に比較して薄肉に成形され、この先端部内側には前記熱電対またはサーミスタを構成する部分を被覆するガラス玉が収納され、このガラス球は伝熱性に優れ且つ柔軟性を有する樹脂充填材にて保持されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
セラミックス製保護管内に熱電対またはサーミスタを構成する部分を保持してなる温度センサにおいて、前記セラミックス製保護管の先端部は他の部分に比較して薄肉に成形され、この先端部内側には前記熱電対またはサーミスタを構成する部分が絶縁コートで被覆されて収納され、更に前記熱電対またはサーミスタを構成する部分は伝熱性に優れ且つ柔軟性を有する樹脂充填材にて保持されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の温度センサにおいて、前記セラミックス製保護管はアルミナ製であり、先端部の厚みは0.3mm以下であり、前記樹脂充填材はシリコーン樹脂またはエポキシ樹脂またはウレタン樹脂を主体としたものであることを特徴とする温度センサ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の温度センサにおいて、前記セラミックス製保護管の外周には射出成形の際にフランジ部となる環状凸部が形成されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項5】
請求項1または2に記載の温度センサにおいて、前記セラミックス製保護管の外周には射出成形の際に環状凸部が形成され、この環状凸部外側に金属製のフランジが圧入されていることを特徴とする温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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