説明

温度センサ

【課題】充填材の埋め込み、あるいは、温度検出素子の沈み込みが容易に可能になり、より速い温度応答性を実現できる温度センサを提供する。
【解決手段】有底筒形状のケース1と、このケース1に挿入して収納される温度検出素子2と、ケース1内に充填され温度検出素子2を封止する充填材3とを有する温度センサにおいて、ケース1と温度検出素子2との相対的な隙間において、温度検出素子2の挿入方向に沿って形成され、温度検出素子に対する隙間が他の部分より大きい充填材流動部1aを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度検出素子を使用して温度を測定する温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
色々な電子機器において、ある対象物の温度を測定する必要がある場合、温度検出素子を測定したい場所に配置して温度を測定する方法は一般に知られている。
この温度検出素子は、液体の温度測定や汚損される環境下に晒される場合は、温度検出素子を樹脂、あるいは金属ケースの中に配置して保護し、汚損環境下と隔離することで使用を可能にしている。また、温度測定における温度応答性は、測定物質の温度変化に直ちに追従するように、速いことが望ましいとされている。
【0003】
このケースと温度検出素子の関係については、特許文献1(以下従来例という)で開示されているとおりである。
ケースの中に温度検出素子を配置し、ケースと温度検出素子の隙間を充填材(従来例では樹脂部という)で埋めているが、この隙間は小さければ小さいほど温度応答性が速くなる。しかしながら、小さくなれば充填材が入らなくなり、逆に温度応答性が遅くなってしまうことも従来例に開示されている。
従来例においては、充填材が入らない場合でも温度応答性が4秒以内になる隙間を見つけ出しているが、当然ながら、この隙間に充填材が入っている場合と比べると、温度応答性は遅くなっている。
また、当然ながら、ケース、充填材の熱伝導度を上げることで温度応答性を速くすることも、隙間を狭くすることと相乗して効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-267546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例に記述されているとおり、ケースと温度検出素子の隙間は、ある間隔を確保する必要がある。ケースに温度検出素子を入れて後から充填材を入れる場合は、隙間を小さくすると、その隙間に充填材を埋めることが出来なくなり、空間になるため充填材がある場合に対し温度応答性が悪化する。ケースに充填材を入れてから温度検出素子を入れる場合は、隙間が小さいと温度検出素子が充填材の中に沈み込まなくなり組み立てが不可能になる。
【0006】
本発明は、上記のような点に鑑み、従来例では充填材が埋まらなくて空間になる、あるいは、温度検出素子が充填材に沈み込まないようなケースと温度検出素子の隙間においても、充填材の埋め込み、あるいは、温度検出素子の沈み込みが容易に可能になり、より速い温度応答性を有する温度センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の温度センサは、有底筒形状のケースと、このケースに挿入して収納される温度検出素子と、前記ケース内に充填され前記温度検出素子を封止する充填材とを有する温度センサにおいて、前記ケースと前記温度検出素子との相対的な隙間において、前記温度検出素子の挿入方向に沿って形成され、前記温度検出素子に対する隙間が他の部分より大きい充填材流動部を設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の温度センサによれば、従来例では充填材が埋まらなくて空間になる、あるいは、温度検出素子が充填材に沈み込まないようなケースと温度検出素子の隙間においても、充填材の埋め込み、あるいは、温度検出素子の沈み込みが可能になり、より速い温度応答性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における温度センサの断面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図2のB―B断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2における温度センサの断面図である。
【図5】本発明の実施の形態3における温度センサの断面図である。
【図6】図5のC部拡大図である。
【図7】図2のD―D断面図である。
【図8】本発明の実施の形態4の図5のC部にあたる拡大図である。
【図9】図8のE―E断面図である。
【図10】図8のF―F断面図である。
【図11】本発明の実施の形態5を示す温度センサ内蔵の圧力センサ断面図である。
【図12】本発明の図3に相当する従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1を示すものであり、温度センサの断面図、図2は図1のA部拡大図、図3は図2のB―B断面図である。
温度センサは、樹脂製のケース1に温度検出素子2が充填材3により封止して構成されている。温度検出素子2により検出した信号はリード線4を介し、ターミナル5を経由し外部に送られる。
充填材3は、ケース1に先に注入し、その後、温度検出素子2を挿入してもよく、温度検出素子2を挿入した後に注入しても良い。
本実施の形態1においては、ケース1は、その内面に温度検出素子2の挿入方向に沿って形成され、充填材3の流動を容易にする充填材流動部1aが設けられている。
図3では、充填材流動部1aとして、ケース1の内壁に突出した1つの凸部を形成した例が示されている。
【0011】
ここで、ケース1に充填材3を注入し、その後、温度検出素子2を挿入する場合を想定する。
図12は従来品のB―B断面であるが、ケース1に温度検出素子2を挿入した際に充填材3が温度検出素子2の上部に移動する(温度検出素子2が充填材3に沈み込む)には、ケース1の内面と温度検出素子2との間に、充填材3の移動に必要な隙間としてT以上が必要になる。この隙間Tは充填材3の粘度により変化し、粘度が高いと大きく、粘度が低いと小さくすることができる。
【0012】
本実施の形態1における図3では、ケース1の内壁に突出した形で設けられた充填材流動部1aにより、ケース1の内面と温度検出素子2との間に、充填材3の移動に必要な隙間T1が確保され、充填材3が容易に移動できるため、この充填材流動部1a以外の隙間は充填材3の移動に関与しなくなり、温度伝導に関与する隙間T2はTよりはるかに小さくすることが可能になる。
この様に、充填材3の移動に必要な隙間T1と温度伝導に関与する隙間T2を分けたことにより、従来品より温度応答性が速い温度センサを作ることが可能になる。
尚、本実施の形態1では充填材流動部1aとしてケース1の内面に凸部を設けたが、温度検出素子2に凹部を設けても同様の効果が得られる。
【0013】
なお、温度応答性を上げるには、上記の構成に加え、充填材3自体の熱伝導度を上げれば更に効果が得られる。このため、充填材3として、接着剤に金属フィラーを含有させたもの、例えば、シリコーン接着剤に酸化アルミを含有したものを使用することができる。
但し、金属フィラーを含有した充填材3は粘度が高くなる。そのため、従来なら充填材3の移動が難しくなりTを広くする必要があるが、本実施の形態1においては隙間T1で充填材3が移動し、隙間T2は充填材3の移動に関与しないため、隙間TをT2に縮小した効果と充填材3の熱伝導度を上げた効果が相乗して温度応答性を早める効果がある。
【0014】
以上のように、本実施の形態1においては、有底筒形状のケース1と、このケース1に挿入して収納される温度検出素子2と、ケース1内に充填され温度検出素子2を封止する充填材3とを有する温度センサにおいて、ケース1の内面に、温度検出素子2の挿入方向に沿って形成され、温度検出素子2に対する隙間が他の部分より大きい充填材流動部1aを設けたもので、これにより、従来例では充填材が埋まらなくて空間になる、あるいは、温度検出素子が充填材に沈み込まないようなケースと温度検出素子の隙間においても、充填材の埋め込み、あるいは、温度検出素子の沈み込みが可能になり、より速い温度応答性を有する温度センサを実現できる。
【0015】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2における温度センサの断面図で、図2のB―B断面図に対応するものである。本実施の形態2では、充填材流動部1aがケース1の内壁断面を多角形状とすることにより構成されている。
この構成では、複数の充填材流動部1aがケース内壁に放射状に配置され、ケース1の内面と温度検出素子2との間に、充填材3の移動に必要な隙間T1が各角部において確保され、角部以外の温度伝導に関与する隙間T2を小さくすることが可能になる。
このため、ケース1に対し温度検出素子2はセンタリングされやすくなる上、温度応答性のバラツキがより少なくなる効果がある。
【0016】
実施の形態3.
図5は本発明の実施の形態3を示す温度センサの断面図である。図6は図5のC部拡大図であり、図7は図6のD―D断面図である。
温度応答性を高めるにはケース1の材料自体の熱伝導を高めることでも効果があり、図5において、ケース1は自身の熱伝導を高めるため、金属あるいは金属フィラーを含有した樹脂材料で製作されており、これを金型に挿入し、二次成形を行うことでパッケージとなるベース6を形成している。他は、図1同様である。
この際、ケース1は図示しない金型に挿入し成形を行うため、ケース1の二次成形用金型に支持される部分7の外形を円筒状に形成することで金型に対する方向性をなくしている。
この様な構成にすれば、金型にケース1を挿入する際、方向性がなくなるので、人による方向を合わせるような作業が不必要になるため、パーツフィーダなどによる自動供給が可能になり生産性があがりコストを下げることが可能になる。また、前記各実施の形態と組み合わせることで、更なる温度応答性が速い温度センサを得られる効果がある。
【0017】
実施の形態4.
図8は本発明の実施の形態4の図5のC部にあたる拡大図で、ケース1を二次成形した例を示すものである。図9は図8の金型に支持される部分7のE―E断面であり、図10は、温度伝導部8のF―F断面である。
本実施の形態4では、ケース1は、二次成形用金型に支持される部分7と充填材流動部1aを設けた温度伝導部8とに分けられている。
このようにすれば、金型に支持される部分7の外形を円筒形にしても充填材流動部1aを設けた温度伝導部8は図1と同じ形状にすることが可能であるため、図7のようにケース1の肉厚が不均等になるようなことはなく、図10の如く必要とされる最低の肉厚にすることが出きるため、温度応答性を更に速くすることが可能になる。
【0018】
実施の形態5.
図11は、本発明の実施の形態5を示す温度センサ内蔵の圧力センサ断面図で、前記した構造の温度センサを車載用圧力センサに温度検出素子部に内蔵したしたものである。圧力は圧力導入孔9から圧力センサの内部に導かれ、感圧素子10で電気信号に変換され外部に出力される。温度センサ部はG部にあたり、前記各実施の形態における温度センサを適用する。
車載用圧力センサはEGRなどの汚損環境下に晒されるため、どうしても温度検出素子2を保護する必要があり、ケース1に格納する必要がある。しかしながら、エンジンの制御上は、当然ながら速い温度応答性が望まれる。本発明を適用することで、温度応答性が速く、耐汚損性の高い温度センサ内蔵の車載用圧力センサを得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0019】
1:ケース、1a:充填材流動部
2:温度検出素子
3:充填材
4:リード線
5:ターミナル
6:ベース
7:金型に支持される部分
8:温度伝導部
9:圧力導入孔
10:感圧素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒形状のケースと、このケースに挿入して収納される温度検出素子と、前記ケース内に充填され前記温度検出素子を封止する充填材とを有する温度センサにおいて、前記ケースと前記温度検出素子との相対的な隙間において、前記温度検出素子の挿入方向に沿って形成され、前記温度検出素子に対する隙間が他の部分より大きい充填材流動部を設けたことを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
充填材流動部は、前記ケースの内壁に、前記ケースの径方向に突出して設けられていることを特徴とする請求項1記載の温度センサ。
【請求項3】
充填材流動部は、前記ケースの内壁断面を多角形状とすることで構成されていることを特徴とする請求項1記載の温度センサ。
【請求項4】
前記充填材は、金属フィラーが含有された接着剤であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の温度センサ。
【請求項5】
前記ケースは、二次成形によりパッケージとなるベースが形成され、二次成形用金型に支持される部分の外形が円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の温度センサ。
【請求項6】
前記ケースは、二次成形用金型に支持される部分と前記充填材流動部を設けた温度伝導部とに分けられていることを特徴とする請求項5記載の温度センサ。
【請求項7】
車載用圧力センサと一体化した請求項1乃至6のいずれか一つに記載の温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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