説明

温度保有体の警告装置

【課題】簡単な装置でしかも電源等を必要とすることなし温度保有体による怪我を未然に防止する警告を発せられるようにする。
【解決手段】 高温又は低温の温度保有体8を載置する支持台1に備えられ、支持台1に載置する温度保有体8に接して温度保有体8からの熱エネルギを受ける接触面9を有し、接触面9と他側面11との温度差によって発電する熱電素子3a,3bを備えた熱電モジュール2と、熱電モジュール2にて発電した電力により作動して警告を発する警告表示装置15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度保有体の警告装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炊事場等において鍋等を用いて加熱調理する場合には、調理する者は鍋が高温であることを熟知しているために火傷をしないように注意を払って作業することができる。しかし、調理を終えた鍋をテーブル上の鍋敷きの上に載置した後では、特に調理に携わらなかった者は鍋が高温になっていることを知らずに不意に触れることによって火傷による怪我を負う場合がある。又、こうした問題は前記鍋に限られるものではなくアイロン等においても同様に発生する可能性があり、又、高温材料、高温器材等からなる温度保有体を取り扱う工場やその他の場所においても同様に発生する可能性がある。
【0003】
一方、上記した高温の温度保有体以外に、低温(特に0℃以下の低温)の温度保有体においても低温になっていることを知らずに不意に触れることによって低温の温度保有体に皮膚が付着して皮膚が剥離する等の怪我をする場合がある。
【0004】
従来、上記したような温度保有体に接することによる火傷や皮膚の剥離等の怪我を、簡単な装置でしかも電源等を必要とすることなしに警告を発して未然に防止するようにしたものは存在していない。
【0005】
従来において、温度保有体による怪我を防止するための一般的な方法としては、温度保有体の表面温度を温度センサにより測定し、該温度センサで測定した温度が一定温度以上の場合にはランプを点灯させる、或いは音声発生器により音声を発生させることによる警告を発して注意を促し、又、温度センサにより測定した温度が一定温度以下の場合にはランプを消灯させる、或いは音声発生器による音声の発生を停止させるといった方法が考えられる。
【0006】
しかし、この方法では、温度センサ、ランプ或いは音声発生器のための電源が必要であり、更に、ランプ或いは音声発生器を作動させるために、前記温度センサによる測定温度をフィードバックして制御する制御回路が必要であり、このために装置が複雑・高価になると共に、省エネルギーが図れず、よって汎用性が高められないために実用化されていないのが現状である。
【0007】
一方、特許文献1には、予備加熱をしてから調理を行うガスグリルにおいて、加熱庫を加熱するバーナと、バーナにより加熱される熱電対集積体とを備え、熱電対集積体から発生する熱起電力を利用して発光ダイオードを発光させ、発光ダイオードが発光することで予備加熱が完了したことを報知するようにしたものが記載されている。
【特許文献1】特開平08−226650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記特許文献1は、バーナにより加熱される熱電対集積体からの熱起電力を利用して発光ダイオードを発光させることによってガスグリルによる予備加熱が完了したことを報知するものであり、報知のための電源を必要としないために省エネルギーには貢献できるが、温度保有体による怪我の危険を未然に防止するためのものではない。
【0009】
従って、簡単な装置でしかも電源等を必要とすることなしに温度保有体を支持台上に載置するだけで、温度保有体に対する警告を発して温度保有体による怪我を未然に防止するようにした実用性に優れた装置の出現が望まれている。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、簡単な装置でしかも電源等を必要とすることなし温度保有体による怪我を未然に防止する警告を発するようにした温度保有体の警告装置を提供することを目的としてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、高温又は低温の温度保有体を載置する支持台に備えられ、該支持台に載置する温度保有体に接して該温度保有体からの熱エネルギーを受ける接触面を有し、該接触面と他側面との温度差によって発電する熱電素子を備えた熱電モジュールと、該熱電モジュールにて発電した電力により作動して警告を発する警告表示装置と、を備えたことを特徴とする温度保有体の警告装置である。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記警告表示装置がランプであることを特徴とする請求項1に記載の温度保有体の警告装置である。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記警告表示装置が音声発生器であることを特徴とする請求項1に記載の温度保有体の警告装置である。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記支持台が鍋敷きであることを特徴とする請求項1に記載の温度保有体の警告装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の温度保有体の警告装置によれば、温度保有体を支持台上に載置するのみで、温度保有体に接する熱電素子の接触面と他側面との温度差によって熱電モジュールが発電し、該熱電モジュールで発電した電力により警告表示装置が作動して警告を発するようにしてあるので、支持台上に載置した温度保有体に接することで怪我することを未然に防止することができ、且つ簡単な装置でしかも電源等を必要としないために安価に実施することができ、よって実用性と汎用性に優れた温度保有体の警告装置を提供できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は鍋敷きに適用した本発明の形態の一例を示す平面図、図2は図1のII−II方向断面図、図3は本発明における回路構成の概略図である。図1、図2中、1は支持台1の一例を示す鍋敷き1aであり、該鍋敷き1aは例えば平面形状が図1のように円形を有し、且つ図2に示すように所要の厚さを有している。
【0018】
鍋敷き1aの中央部分には矩形形状の熱電モジュール2が組み込まれている。該熱電モジュール2は、複数のP型の熱電素子3aとN型の熱電素子3bとを交互に並べて、これら熱電素子3aと3bとが直列に導通するように、熱電素子3aと3bの高温側となる一端部(上側)同士が電極4(例えばCu)により順次電気的に接続されていると共に、低温側となる他端部(下側)同士が電極5(例えばCu)により順次電気的に接続され、両端に位置する電極4と電極5に電力回収ライン6が接続されている。
【0019】
前記高温側の電極4の上面と前記低温側の電極5の下面には、夫々セラミックやプラスチック等の薄い絶縁体7が設けられている。そして、上側の絶縁体7の上面は鍋敷き1aの上面と一致しており、又、下側の絶縁体7の下面は鍋敷き1aの下面と一致している。従って、温度保有体8である鍋8aを鍋敷き1a上に載置したときに、熱電素子3a,3bの上面は、絶縁体7を介して鍋8aの下面に熱的に接触する接触面9となっており、又、鍋敷き1aをテーブル10等の常温部材上に載置したときに、熱電素子3a,3bの下面は、絶縁体7を介してテーブル10に熱的に接触する他側面11となっている。
【0020】
前記熱電モジュール2は、各熱電素子3a,3b、電極4,5及び絶縁体7以外の部分に断熱材12を配置している。又、矩形形状の前記熱電モジュール2の外周と鍋敷き1aとの間にも断熱材による熱シールド13を設けており、熱シールド13により鍋敷き1aが鍋8aからの伝熱によって加熱されるのを防止している。
【0021】
前記熱電モジュール2の電極4,5に接続された電力回収ライン6には、図1及び図3に示すように、DC−DCコンバータ14を介して警告表示装置15が接続配置されている。警告表示装置15としては、LEDランプ等によって点灯するランプ、又は警告音或いは言葉を発する音声発生器を用いることができる。
【0022】
尚、図1、図2に示した前記熱電モジュール2では、1段の熱電素子3a,3bを平面的に複数個並べて直列に接続することにより発電電力を増加するようにした場合を示したが、図4に示すように2段或いはそれ以上の複数段に熱電素子3a,3bを積み重ねたカスケード構造とすることによって、効率を更に高めるようにしてもよい。
【0023】
又、前記熱電素子3a,3bの配置と接続には種々の方法を採用することができ、例えば図5に直流電流の流れを矢印で示すように、電流が一筆書き状に流れるように熱電素子3a,3bを配置してもよい。
【0024】
以下、図示した形態の作用を説明する。
【0025】
図2に示す如く、鍋敷き1aはテーブル10の上面に載置され、この鍋敷き1a上に加熱されて高温になった鍋8aを載置する。すると、このとき熱電モジュール2における各熱電素子3a,3bの接触面9は鍋8aの下面に接触し、又、熱電素子3a,3bの他側面11はテーブル10に接触する。
【0026】
鍋8aに接触面9が接した熱電素子3a,3bの上部は鍋8aによって加熱されて温度が上昇するが、常温のテーブル10に他側面が接している熱電素子3a,3bの下部の温度は殆ど変化しないために、接触面9の温度と他側面11の温度との温度差によって熱電素子3a,3bはゼーベック効果によって発電する。このとき、複数の熱電素子3a,3bが直列に接続され、発生した電力は電力回収ライン6によりDC−DCコンバータ14を介して警告表示装置15に供給されて警告表示装置15を作動する。
【0027】
前記警告表示装置15がランプの場合には、ランプを点灯させる、或いはランプを点滅させることによって、鍋敷き1a上に高温の鍋8aが載置されたことを知らせる警告を発する。尚、前記警告表示装置15にランプを使用する場合には小さい電力量で点灯できるLEDランプを用いることは好ましい。
【0028】
又、警告表示装置15が音声発生器の場合には、警告音を発生させるか、或いは「鍋が高温のため火傷に注意」の旨を言葉で知らせる警告を発する。
【0029】
鍋8aの温度が低下して、接触面9と他側面11との温度差が小さくなると、発電電力が減少することにより、警告表示装置15による警告は停止される。
【0030】
前記したように警告が発せられることにより、鍋8aが高温であることの注意が促されるので、不意に鍋8aに触れることによる火傷による怪我の発生を未然に防止することができる。
【0031】
又、熱電モジュール2では前記鍋8aの熱エネルギーが発電に使用されるために、鍋8aの冷却速度も速くなる利点がある。
【0032】
上記したように、鍋8aの熱エネルギーを利用して発電し、この電力を用いて、鍋8aに触れないように警告を発することにより、鍋8aに不意に触れることによる怪我の発生を未然に防止することができ、更に簡単な装置でしかも電源等を必要としないために省エネルギー製品として安価に実施することができ、よって実用性に優れしかも汎用性の高い装置を提供することができる。
【0033】
尚、上記形態においては、本発明を鍋敷き1aによる支持台1に適用した場合について説明したが、アイロン台や高温の温度保有体を取り扱う工場等における温度保有体の支持台にも適用することができる。
【0034】
一方、前記支持台1上に低温(特に0℃以下の低温)の温度保有体が載置される場合においても、温度保有体に接して低温となる接触面9と常温の他側面11との温度差によって発電を行うことができ、よって、低温を知らずに温度保有体に不意に触れることにより皮膚が付着して皮膚が剥離する等の怪我の問題も未然に防止することができる。
【0035】
更に、本発明の温度保有体の警告装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】鍋敷きによる支持体に適用した本発明の形態の一例を示す平面図である。
【図2】図1のII−II方向断面図である。
【図3】本発明における回路構成の概略図である。
【図4】熱電素子を2段に積み重ねたカスケード構造の例を示す側面図である。
【図5】直流電流の流れが一筆書き状になるように熱電素子を配置した例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 支持台
1a 鍋敷き
2 熱電モジュール
3a,3b 熱電素子
8 温度保有体
8a 鍋
9 接触面
11 他側面
15 警告表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温又は低温の温度保有体を載置する支持台に備えられ、該支持台に載置する温度保有体に接して該温度保有体からの熱エネルギーを受ける接触面を有し、該接触面と他側面との温度差によって発電する熱電素子を備えた熱電モジュールと、該熱電モジュールにて発電した電力により作動して警告を発する警告表示装置と、を備えたことを特徴とする温度保有体の警告装置。
【請求項2】
前記警告表示装置がランプであることを特徴とする請求項1に記載の温度保有体の警告装置。
【請求項3】
前記警告表示装置が音声発生器であることを特徴とする請求項1に記載の温度保有体の警告装置。
【請求項4】
前記支持台が鍋敷きであることを特徴とする請求項1に記載の温度保有体の警告装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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