説明

温度制御装置、プラズマ処理装置、処理装置及び温度制御方法

【課題】冷媒にオゾン層破壊物質を使用せずに精度の高い温度制御が可能な温度制御装置を提供する。
【解決手段】冷媒の相変化により周囲と熱交換する熱交換部71と、冷媒を熱交換部71から流入し、内部の油と融合させるロータリーポンプ73と、油に融合された冷媒をロータリーポンプ73から流入し、油と分離させる油水分離機74と、を備え、油と分離された冷媒を再び熱交換部71に循環させることにより冷却機能を有する冷凍サイクルを構成する温度制御装置70が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度制御装置、プラズマ処理装置、処理装置及び温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から冷媒を循環させ、冷媒の相変化にともない周囲から吸収する気化熱や周囲に放出する凝縮熱を利用して対象物を冷却又は加熱する温度制御装置が提案されている。例えば、特許文献1では、冷媒の気化熱を利用して、プラズマリアクタ内部に設けられた静電チャックを冷却する温度制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−116098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された温度制御装置では、循環する冷媒にオゾン層を破壊するような気体が使用されている。オゾン層破壊性のある気体としては炭化水素系の気体等が挙げられ、そのような物質の廃棄冷媒は地球温暖化の要因となる、という課題を有していた。
【0005】
また、特許文献1に開示された冷凍サイクルは、熱交換器、圧縮器、凝縮器及び膨張弁を有する。かかる構成の特許文献1では、本来気体であるものを液化させて載置台内の熱交換器にて気体に戻すため、気体と液体との相変化を高圧で制御する必要がある。よって、例えば、特許文献1に開示された冷凍サイクルでは、循環サイクルの内部が15〜20気圧程度の高圧になっても耐え得る構造にする必要がある。このため、特許文献1では、熱交換器は高圧下でも変形しないように熱交換器の壁を厚くする等、強度の高い圧力容器で形成する必要が生じる。この結果、熱交換器の熱容量が大きくなり温度の応答性が悪くなる、という課題を有していた。
【0006】
上記課題に対して、本発明の目的とするところは、冷媒にオゾン層破壊物質を使用せずに温度制御が可能な、温度制御装置、プラズマ処理装置、処理装置及び温度制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、冷媒の相変化により熱交換する熱交換部と、前記冷媒を前記熱交換部から流入し、内部の油と融合させるロータリーポンプと、前記油に融合された冷媒を前記ロータリーポンプから流入し、油と分離させる油冷媒分離機と、を備え、前記油と分離された冷媒を再び前記熱交換部に循環させることにより冷却機能を有する冷凍サイクルを構成することを特徴とする温度制御装置が提供される。
【0008】
前記ロータリーポンプは、ロータの回転により前記熱交換部に設けられた蒸発室の内部を減圧し、前記熱交換部は、前記冷媒を前記減圧された蒸発室にて気化する際に気化熱を吸収することにより冷却してもよい。
【0009】
前記油冷媒分離機により分離される冷媒は、前記熱交換部、前記ロータリーポンプ及び前記油冷媒分離機を循環し、前記油冷媒分離機により分離される油は、前記ロータリーポンプ内に回収されてもよい。
【0010】
前記冷媒を加熱するボイラーを更に備え、前記加熱された冷媒を前記熱交換部及び前記ボイラーに循環させることにより加熱機能を有する加熱サイクルを構成し、前記熱交換部は、前記加熱された冷媒を前記ボイラーから流入し、前記蒸発室にて液化する際に凝縮熱を放出することにより加熱してもよい。
【0011】
前記冷凍サイクルと前記加熱サイクルとを切り替える切替弁を有してもよい。
【0012】
前記油冷媒分離機により分離される冷媒は、前記切替弁にて切り替えて前記冷凍サイクル又は前記加熱サイクルを循環する水であってもよい。
【0013】
前記熱交換器は、プラズマ処理装置の内部に設けられた載置台、上部電極、デポシールド又は内部にてプラズマ処理が行われる前記プラズマ処理装置の処理容器の少なくともいずれかに設けられてもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、内部にてプラズマ処理が行われる処理容器と、前記処理容器内にガスを供給するガス供給源と、プラズマを生成するためのパワーを供給し、前記処理容器内にてガスからプラズマを生成するプラズマ源と、前記処理容器内に設けられた載置台、上部電極、デポシールド又は前記処理容器の少なくともいずれかに設けられ、冷媒の相変化により熱交換する熱交換部と、前記冷媒を前記熱交換部から流入し、内部の油に融合させるロータリーポンプと、前記油に融合された冷媒を前記ロータリーポンプから流入し、油と分離させる油冷媒分離機と、を備え、前記油と分離された冷媒を再び前記熱交換部に循環させることにより冷却機能を有する冷凍サイクルを構成することを特徴とするプラズマ処理装置が提供される。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、温度を制御する対象となる対象物に取り付けられ、前記対象物の温度を制御する温度制御装置を備えた処理装置であって、前記温度制御装置は、冷媒の相変化により熱交換する熱交換部と、前記冷媒を前記熱交換部から流入し、内部の油と融合させるロータリーポンプと、前記油に融合された冷媒を前記ロータリーポンプから流入し、油と分離させる油冷媒分離機と、を有し、前記油と分離された冷媒を再び前記熱交換部に循環させることにより冷却機能を有する冷凍サイクルを構成することを特徴とする処理装置が提供される。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、冷媒の相変化により熱交換する熱交換部と、前記冷媒を前記熱交換部から流入し、内部の油と融合させるロータリーポンプと、前記油に融合された冷媒を前記ロータリーポンプから流入し、油と分離させる油冷媒分離機と、を備えた温度制御装置を用いた温度制御方法であって、前記油と分離された冷媒を再び前記熱交換部に循環させ、前記ロータリーポンプのロータの回転速度と、前記ロータリーポンプと前記熱交換部との連結部分に設けられたバルブの開度と、前記油冷媒分離機と前記熱交換部との連結部分に設けられた空気流入調整弁の開度と、の少なくともいずれかを調整することを特徴とする温度制御方法が提供される。
【0017】
入熱源の動作開始に連動して前記バルブを全開に制御し、入熱源の動作終了に連動して前記バルブを全閉に制御することにより冷却の開始及び冷却の終了を制御してもよい。
【0018】
前記導入管に設けられた空気流入調整弁の開度を制御することにより前記蒸発室の圧力を調整してもよい。
【0019】
前記入熱源は、プラズマ処理装置に用いられるプラズマ源であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、冷媒にオゾン層破壊物質を使用せずに温度制御が可能な、温度制御装置、プラズマ処理装置、処理装置及び温度制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る温度制御装置を用いたプラズマ処理装置の全体構成図。
【図2】第1実施形態に係る温度制御装置の全体構成図。
【図3】第1実施形態に係る温度制御装置の熱交換部を説明するための図。
【図4】第1実施形態に係る温度制御装置の動作を示したフローチャート。
【図5】第1実施形態に係る温度制御装置の動作を説明するためのタイムチャート。
【図6】第1実施形態に係る温度制御装置の動作を示したフローチャート。
【図7】第2実施形態に係る温度制御装置の全体構成図。
【図8】第2実施形態に係る温度制御装置の冷凍サイクル時の動作を示した図。
【図9】第2実施形態に係る温度制御装置の冷凍サイクル時の熱交換部を説明するための図。
【図10】第2実施形態に係る温度制御装置の加熱サイクル時の動作を示した図。
【図11】第2実施形態に係る温度制御装置の加熱サイクル時の熱交換部を説明するための図。
【図12】第2実施形態に係る温度制御装置の加熱/冷凍サイクル時の熱交換部を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
<はじめに>
通常の冷凍サイクルでは、循環する冷媒に炭化水素系の気体のようなオゾン層を破壊するような気体が使用されている。そのような物質の廃棄冷媒は地球温暖化の要因となる。そこで、以下で説明する各実施形態では、オゾン層破壊物質を使わずに温度制御を可能とする温度制御装置を実現する。特に、以下で説明する各実施形態では、循環冷媒に水を使用し、水の気化熱を冷却に利用する。これにより、水の相変化にともない周囲から吸収する気化熱や周囲に放出する凝縮熱を利用して冷却又は加熱する温度制御装置を実現する。
【0024】
また、各実施形態に係る温度制御装置では熱交換器内を高圧にする必要はなく、むしろ液体を100℃以下で気化させるために熱交換器内を減圧にする必要がある。よって、特に温度制御装置をプラズマ処理装置に取り付けた場合には、プラズマ処理装置では容器内部を減圧雰囲気にすることは通常行われているため、容易に温度制御装置の所定部分を減圧下に制御できる。また、熱交換器には、熱容量が小さい容器を用いることができるため、温度応答性の良さと省エネを図ることができる。
【0025】
このように以下に説明する各実施形態に係る温度制御装置では、冷媒にオゾン層破壊物質を使用せずに精度の高い温度制御が可能である。
【0026】
<第1実施形態>
[温度制御装置を用いたプラズマ処理装置の全体構成]
まず、本発明の第1実施形態に係る温度制御装置を用いたプラズマ処理装置の全体構成について、図1を参照しながら説明する。
【0027】
図1に示したプラズマ処理装置1は、RIE型のプラズマ処理装置1として構成されており、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型チャンバ(処理容器10)を有している。処理容器10は接地されている。
【0028】
処理容器10内には、被処理体としての半導体ウエハW(以下、ウエハWと称呼する)を載置する載置台12が設けられている。この状態で、ウエハWにはプラズマの作用によりエッチング等の微細加工が施される。載置台12は、たとえばアルミニウムからなり、絶縁性の筒状保持部14を介して処理容器10の底から垂直上方に延びる筒状支持部16に支持されている。筒状保持部14の上面には、載置台12の上面を環状に囲むたとえばシリコンや石英からなるフォーカスリング18が配置されている。
【0029】
処理容器10の側壁と筒状支持部16との間には排気路20が形成されている。排気路20には環状のバッフル板22が取り付けられている。排気路20の底部には排気口24が設けられ、排気管26を介して排気装置28に接続されている。排気装置28は真空ポンプを有しており、処理容器10内の処理空間を所定の真空度まで減圧する。処理容器10の側壁には、ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ30が取り付けられている。
【0030】
載置台12には、整合器34および給電棒36を介してプラズマ生成用の高周波電源32が電気的に接続されている。高周波電源32は、たとえば60MHzの高周波電力を載置台12に印加する。このようにして載置台12は下部電極としても機能する。なお、処理容器10の天井部には、後述するシャワーヘッド38が接地電位の上部電極として設けられている。これにより、高周波電源32からの高周波電圧は載置台12とシャワーヘッド38との間に容量的に印加される。高周波電源32は、プラズマを生成するためのパワーを供給し、前記処理容器内にてガスからプラズマを生成するプラズマ源の一例である。
【0031】
載置台12の上面にはウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック40が設けられている。静電チャック40は導電膜からなる電極40aを一対の絶縁膜40b,40cの間に挟み込んだものであり、電極40aには直流電源42がスイッチ43を介して電気的に接続されている。静電チャック40は、直流電源42からの直流電圧により、クーロン力でウエハWをチャック上に吸着保持する。
【0032】
静電チャック40は、温度制御装置70により冷却される。温度制御装置70は、熱交換部71、ロータリーポンプ73及び油水分離機74を有している。載置台12の内部には、熱交換部71が設けられている。熱交換部71には、吸気管72を介してロータリーポンプ73及び油水分離機74が連結され、導水管75を介して熱交換部71に連結されている。熱交換部71とロータリーポンプ73との間の吸気管72には、バルブ76が設けられている。熱交換部71と油水分離機74との間の導水管75には、空気流入調整弁77が設けられている。かかる構成の温度制御装置70に冷媒を供給することにより載置台12が冷却される。温度制御装置70の細かい機能及び動作については後述する。
【0033】
伝熱ガス供給源52は、Heガス等の伝熱ガスをガス供給ライン54に通して静電チャック40の上面とウエハWの裏面との間に供給する。天井部のシャワーヘッド38は、多数のガス通気孔56aを有する電極板56と、この電極板56を着脱可能に支持する電極支持体58とを有する。電極支持体58の内部にはバッファ室60が設けられ、バッファ室60のガス導入口60aにはガス供給源62に連結されるガス供給配管64が接続されている。これにより、ガス供給源62から処理容器10内に所望のガスが供給される。
【0034】
処理容器10の周囲には、環状または同心状に延在する磁石66が配置されている。処理容器10内において、シャワーヘッド38と載置台12との間のプラズマ生成空間には、高周波電源32により鉛直方向のRF電界が形成される。高周波の放電により、載置台12の表面近傍に高密度のプラズマが生成される。
【0035】
制御器68は、プラズマ処理装置1に取り付けられた各部、たとえば排気装置28、高周波電源32、静電チャック用のスイッチ43、整合器34、ロータリーポンプ73、バルブ76、伝熱ガス供給源52、ガス供給源62および空気流入調整弁77を制御し、ホストコンピュータ(図示せず)等とも接続されている。制御器68は、図示しないCPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有し、CPUはたとえば記憶部に格納されたレシピに従ってプロセスを実行する。ことにより、CPUによってエッチングプロセスが制御される。記憶部は、例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどを用いてRAM、ROMとして実現されうる。レシピは、記憶媒体に格納して提供され、図示しないドライバを介して記憶部に読み込まれるものであってもよく、また、図示しないネットワークからダウンロードされて記憶部に格納されるものであってもよい。また、上記各部の機能を実現するために、CPUに代えてDSP(Digital Signal Processor)が用いられてもよい。なお、制御器68の機能は、ソフトウエアを用いて動作することにより実現されてもよく、ハードウエアを用いて動作することにより実現されてもよい。
【0036】
かかる構成のプラズマ処理装置1において、エッチングを行なうには、先ずゲートバルブ30を開状態にしてウエハWを処理容器10内に搬入して、静電チャック40の上に載置する。そして、ガス供給源62からエッチングガスを所定の流量および流量比で処理容器10内に導入し、排気装置28により処理容器10内の圧力を設定値にする。さらに、高周波電源32から所定のパワーの高周波電力を載置台12に供給する。また、直流電源42から直流電圧を静電チャック40の電極40aに印加して、ウエハWを静電チャック40上に固定する。シャワーヘッド38からシャワー状に導入されたエッチングガスは、高周波電源32からの高周波電力により分解され、これにより、上部電極(シャワーヘッド38)と下部電極(載置台12)との間のプラズマ生成空間にてプラズマが生成される。生成されたプラズマ中のラジカルやイオンによってウエハWの主面がエッチングされる。
【0037】
ウエハWに精度よくエッチング等の微細加工を施すためには、ウエハWの温度調整が重要である。このため、図1に示したように、静電チャック40近傍の載置台12内には熱交換部71が設けられていて、静電チャック40及び載置台12を冷却する。以下では、熱交換部71を含む温度制御装置70の構成及び動作について詳述する。
【0038】
[温度制御装置]
図2には、温度制御装置70の全体構成が示されている。温度制御装置70は、熱交換部71、ロータリーポンプ73及び油水分離機74を有している。熱交換部71とロータリーポンプ73との間は、吸気管72にて連結されている。吸気管72にはバルブ76が設けられている。熱交換部71と油水分離機74との間は、導水管75にて連結されている。導水管75から分岐された管には空気流入調整弁77が設けられていて、導水管75を循環する水に流入させる空気量を調整するようになっている。ロータリーポンプ73と油水分離機74との間は、油を循環させるための往復の管78で連結されている。このようにして管状に設けられた温度制御装置70に水を循環させることにより、温度制御装置70は熱交換部71の周囲を冷却する冷凍サイクルとして機能する。
【0039】
(熱交換部)
熱交換部71は、水の相変化により周囲と熱交換する。図3を用いて熱交換部71による熱交換機能について説明する。熱交換部71は、通常の冷凍サイクルと同様に蒸発室71aを室内機として設置する。熱交換部71は、例えば外部の熱い空気を冷やして冷気に変えたり、周囲の物体から熱を奪って周囲の物体の温度を低下させたりする機能を持つ。導水管75内を循環した水は蒸発室71aに導入される。熱交換部71は、減圧雰囲気の蒸発室71a内にて水を気化させて水蒸気を生成させる。生成された水蒸気は、吸気管72側に放出される。熱交換部71は、このようにして液体の水が気体の水蒸気に相変化する際に外部から吸収する気化熱により熱交換部71の周囲を冷却する。
【0040】
水を常圧での沸点である100℃より低い温度で蒸発させるためには、蒸発室71a内を減圧雰囲気(真空空間)にする必要がある。本実施形態及び第2実施形態では蒸発室71aを減圧雰囲気にするためのポンプとして図2に示したロータリーポンプ73(油ポンプ)を使用する。ロータリーポンプ73を動作することにより減圧雰囲気となった蒸発室71aでは、水が水蒸気(減圧水蒸気)となって拡散した状態となっている。
【0041】
(ロータリーポンプ)
ロータリーポンプ73は、ロータ73aを有している。ロータ73aは、図示しないモータの動力により回転する。図2では、ロータリーポンプ73の右側上部に水蒸気を流入する流入口73cが設けられ、左側上部に空気を排出する排気口73bが設けられている。ロータリーポンプ73では、ロータ71aを回転させて、内部の空気を排気口73bから装置外に排出する。ロータリーポンプ73内の下部には油層があって、油層をロータリーポンプ73内を右側の空間と左側の空間とに分けるシール材として機能させる。これにより、ロータリーポンプ73の内部空間は2つの空間(図2の紙面上では右側と左側の室)に分離される。ロータリーポンプ73は、ロータ73aを紙面上で時計周りに回転させることにより、右側の室内を減圧状態にする。これにより、ロータリーポンプ73の右側の室は減圧空間、左側の室は大気空間となる。ロータリーポンプ73の減圧空間と蒸発室71aとは連通していて、ロータリーポンプ73の右側の空間を減圧空間とすることにより、蒸発室71aを減圧空間とすることができる。
【0042】
ロータリーポンプ73は、蒸発室21aにて生成された減圧水蒸気を流入し、ロータ73aの回転により圧縮して内部の油と融合させる。ここでは、減圧水蒸気は、ロータリーポンプ73内にて油層と分離された水の層という形で油に溶け込む。一度油に溶け込んだ水は通常の液体の水と同様に扱うことができため、油に溶け込んだ水を油水分離機74のフィルタ74aに通し、油と水とに分離する。このようにして熱交換部71にてガス化され水蒸気になった冷媒を、ロータリーポンプ73及び油水分離機74を用いて再度液体の水に戻すことができる。
【0043】
(油水分離機)
油水分離機74により油と分離された水は、冷媒として再び導水管75に戻され、導水管75、熱交換部71、吸気管72、ロータリーポンプ73及び油水分離機74を循環する。循環する水は、再び熱交換部71にて水から水蒸気に相変化する。これにより、対象物が冷却される。
【0044】
油水分離機74により分離された油は、管78からロータリーポンプ73内に回収される。なお、油水分離機74は、油に融合された冷媒をロータリーポンプ73から流入し、油と分離させる油冷媒分離機の一例である。循環冷媒は、水に限られず、水以外でも油と分離できる液体であればよい。例えば、水に替わる冷媒としては、アルコール、アンモニア等が挙げられる。ただし、水の潜熱は大きいため水を冷媒としたときの冷却効果は高い。
【0045】
(冷凍サイクル)
かかる構成の循環サイクルは、冷凍サイクルとして機能する。つまり、冷媒である水は、熱交換部71(蒸発室71a)→吸気管72→ロータリーポンプ73→油水分離機74→導水管75→熱交換部71(蒸発室71a)と循環する。水は、蒸発室71a内を減圧にすれば例えば100℃より低い温度(例えば常温下)においても蒸発する。この現象を利用して、熱交換部71にて例えば50℃の温度で水が水蒸気に変わる相変化を発生させる。本実施形態にかかる温度制御装置70では、相変化の際に周囲から気化熱を奪うことにより熱交換部71の近傍を冷却する。
【0046】
[温度制御方法]
次に、本実施形態に係る温度制御装置70を用いた静電チャック40(ウエハW)の温度制御方法について説明する。本実施形態に係る温度制御装置70では、循環させる水の流量と蒸発室71a内の圧力とを制御することにより、静電チャック40の温度を制御する。これらの制御は、制御器68の指令に基づき実行される。
【0047】
水の流量は、冷却能力そのものを意味する。つまり、単位時間に流れる水の体積に比例して冷却に利用可能な消費カロリーが決定される。よって、何kWの冷却をしたいかにより水の流量は必然的に決まる。したがって、本実施形態では、制御器68は、予め予測されるプラズマからの入熱に応じた水の流量を循環させるように制御する。これとは別に、熱交換部71の温度を何℃にしたいかにより調整する蒸発室71a内の圧力が決まる。例えば、1kWの冷却が求められている場合、水の流量は一義的に決まるが、熱交換部71の温度を5℃にしたい場合と50℃にしたい場合とでは、調整する圧力値は異なる。制御器68は、熱交換部71の温度を5℃にしたい場合には50℃にしたい場合より蒸発室71a内の圧力を下げるように制御する。
【0048】
ここで、制御器68が熱交換部71内の圧力を制御するときは、以下の(1)〜(3)の少なくともいずれかの制御方法がある。
(1)ロータリーポンプ73の能力そのものを変える。
(2)ロータリーポンプ73に流入させる空気量を変える。
(3)熱交換部71に流入させる空気量を変える。
【0049】
(1)のロータリーポンプ73の能力そのものを変える場合には、図示しないモータからの動力を変動させてロータ73aの回転速度を変化させる。その他、複数の並列配置されたロータリーポンプの動作数を増減することによって蒸発室71a内の圧力を制御してもよい。(2)のロータリーポンプ73に流入させる空気量を変える場合には、バルブ76の開度を変動させてコンダクタンスを変える。(3)の熱交換部71に流入させる空気量を変える場合には、空気流入調整弁77の開度を変動させ、外部空気の取り込み量を変える。
【0050】
このように、制御器68は、ロータ73aの回転速度やバルブ76の開度や空気流入調整弁77の開度の少なくともいずれかを制御することにより温度制御装置70の温度を制御する。ロータ73aを駆動するモータ、バルブ76、空気流入調整弁77は、制御器68に接続され、制御器68の指令に基づき動作する。熱交換部71には図示しない温度センサが取り付けられていて、制御器68は、温度センサからの検出結果をフィードバック制御することにより、蒸発室71a内の圧力を調整する。
【0051】
[温度制御装置の動作]
次に、本実施形態に係る温度制御装置70の動作について、図4の温度制御処理を示したフローチャートを参照しながら説明する。
【0052】
本処理が開始されると、まず、制御器68は、プラズマがオンされたか否かを判定する(ステップS42)。制御器68は、例えばガスが供給され、高周波電力が印加されたとき、プラズマがオンされたと判定してもよい。制御器68は、温度センサを用いて載置台12の温度をモニターし、検出された温度変化からプラズマがオンされたか否かを判定してもよい。プラズマがオンされたと判定された場合、制御器68は、ロータリーポンプ73の動作を開始して、プラズマからの入熱に対して冷却に必要な、予め定められた流量の水を温度制御装置70に循環させる(ステップS44)。
【0053】
例えば、図5のタイムチャートに示したように、載置台12の温度Tを25℃にしたい場合であって、プロセス開始前の載置台12の温度が25℃である場合には、温度制御装置70を動作する必要はない。したがって、プラズマがオンされる前の時間t0〜t1の間、制御器68は、温度制御装置70の水を循環させない。よって、この間、循環させる水の流量M0は0である。
【0054】
プラズマ着火によりプラズマが生成されている間、つまりプラズマがオンしている間、何らかの冷却を施さないと、プラズマからの入熱により載置台12上の温度が上がってしまい、ウエハW上の温度が変化してエッチング処理に悪影響が生じる。よって、プラズマがオンすると直ちに冷凍サイクルを駆動する必要がある。たとえばプラズマがオンしている時間t1〜t2の間、プラズマから1kW分の入熱がある場合、1kW分の冷却が必要になる。この場合、制御器68は、プラズマのオンとともに1kW分の冷却に必要な流量(約0.024l/min)の水を循環させる(ステップS42,S44)。これにより、プラズマの入熱が水の蒸発に消費され、載置台12の温度上昇を防ぐことができる。
【0055】
また、熱交換部71の温度を所望の温度に制御するために蒸発室71a内の圧力を上述した(1)ロータ73aの回転速度の制御、(2)バルブ76の開度制御、(3)空気流入調整弁77の開度制御、の少なくともいずれかを制御することにより調整する(ステップS46)。このようにしてプラズマがオンされている間、熱交換部71の温度を所望の温度に制御するように蒸発室71a内の圧力をフィードバック制御する。図5では、制御器68が、蒸発室71a内の圧力Pを圧力P0(=0.1MPa)から圧力PA(=0.001MPa)まで減圧することにより、熱交換部71の温度を25℃に保持している。
【0056】
次に、制御器68は、プラズマがオフされたか否かを判定し(ステップS48)、プラズマがオフされるまでステップS44、S46、S48の処理を繰り返す。制御器68は、例えばガスの供給が停止され、高周波電力の印加が停止されたとき、プラズマがオフされたと判定してもよい。制御器68は、温度センサを用いて載置台12の温度をモニターし、検出された温度変化からプラズマがオフされたか否かを判定してもよい。プラズマがオフされたと判定されたとき、制御器68は、ロータリーポンプ73の動作を停止して水の循環を止める(ステップS50)。そして、蒸発室71a内の圧力を水が蒸発できない圧力まで上げる(ステップS52)。これにより、瞬時に水は蒸発できなくなり、その結果、プラズマのオフに合わせて瞬時に冷却は停止される。
【0057】
たとえば図5に示したように、プラズマがオフした時間t2になると、制御器68は、水の流量Mbを0に制御し、蒸発室71a内の圧力Pを常圧の圧力PB(=0.1MPa)に制御する。これにより、瞬時に静電チャック40の冷却を停止することができ、載置台12の温度低下を防ぐことができる。
【0058】
なお、図5に示したように、プラズマからの入熱が時間t1〜t2で行われたプロセスの半分しかないプロセスが時間t3から開始された場合、制御器68は、それに見合った、前プロセスより少ない流量Mcの水を循環させ、蒸発室71a内を前プロセスより高めの圧力PCに調整する。このように入熱の状態に応じた制御により、静電チャック40の温度を調整し、ウエハW上を所望の温度にすることができる。
【0059】
もし、静電チャック40の温度を上げたければ蒸発室71a内の圧力を上げればよい。逆に、載置台12の温度を下げたければ蒸発室71a内の圧力を下げればよい。例えば、載置台12の温度を上げたい場合、制御部68が蒸発室71a内の圧力を圧力PAより高い圧力PA'に制御すれば、載置台12の温度は温度T'に上昇する。しかしながら、通常はプロセス中、載置台12の温度は変動させたくない。このため、制御部68は、蒸発室71a内の圧力を圧力PA'より低い圧力PAに制御している。
【0060】
なお、載置台12には図示しないヒータが埋設されていて、本実施形態に係る温度制御装置70で静電チャック40を冷却し、ヒータで静電チャック40を加熱する。このように制御部68は、温度制御装置70による冷却とヒータによる加熱とを制御することにより、載置台12上のウエハWの温度調整を行っている。
【0061】
以上に説明したように、本実施形態に係る温度制御装置70によれば、水の流量を制御することにより冷却能力を変えられる。また、蒸発室71aの圧力を制御することにより、水が気化する温度を変えられる。熱交換部71では、0℃や5℃等、常温より低い温度で水を気化させる必要がある。たとえば、蒸発室71aを5℃程度にして内部で水を気化させたい場合、制御部68は、蒸発室71a内の圧力を数Torr程度に下げるように空気流入調整弁77の開度制御を行い、空気の流入量を調整する。たとえば、蒸発室71aを50℃程度にして内部で水を気化させたい場合、制御部68は、蒸発室71aを5℃にする場合の圧力より高い圧力にするように、空気流入調整弁77の開度を制御する。
【0062】
これにより、本実施形態にかかる温度制御装置70によれば、冷媒にオゾン層破壊物質を使用しないため地球温暖化対策を図ることができるとともに、応答性がよく精度の高い温度制御を実現することができる。
【0063】
(温度制御例)
次に、温度制御装置70をプラズマ処理装置1に用いた、好適な温度制御方法について、図6の温度制御処理を示したフローチャートを参照しながら説明する。本温度制御例では水の流量を最大限確保することによって温度制御装置70が持つ冷却能力を最大限発揮可能とすることにより、冷却能力の高い冷凍サイクルを実現する。
【0064】
まず本処理が開始されると、制御器68は、プラズマがオンされたか否かを判定し(ステップS62)、プラズマがオンされたと判定された場合、ロータリーポンプ73の動作を開始し、プラズマからの入熱に対して必要な予め定められた流量の水を温度制御装置70に循環させ(ステップS64)、バルブ76を全開に制御する(ステップS66)。
【0065】
このようにバルブ76を全開に制御し、吸気管72のコンダクタンスを最大限大きくすることによって、ロータリーポンプ73の能力を最大限利用することが可能になる。これにより、冷凍サイクルを循環する水を、求められる冷却能力を達成できる流量で常に循環させることができる。
【0066】
一方、本温度制御例では、蒸発室71aを求められる温度に調整するために、蒸発室71a内の圧力の調整をする際、蒸発室71aに流入される空気の量を調整する。つまり、本温度制御例では、蒸発室71a内の圧力調整のためにバルブ76を用いず、空気流入調整弁77を用いる。よって、制御器68は、蒸発室71a内の圧力を予め定められた圧力値に近づくように、空気流入調整弁77の開度をフィードバック制御する(ステップS68)。これにより、蒸発室71a内の圧力を常に目標値に近づくように制御することができ、蒸発室71aの温度を精度よく制御することができる。
【0067】
次に、制御器68は、プラズマがオフされたか否かを判定し(ステップS70)、プラズマがオフされるまでステップS64、S66、S68、S70の処理を繰り返す。プラズマがオフされたと判定されたとき、制御器68は、ロータリーポンプ73の動作を停止して水の循環を止め(ステップS72)、バルブ76を全閉に制御する(ステップS74)。
【0068】
以上に説明したように、本温度制御例では、プラズマがオフになった瞬間に熱交換部71とロータリーポンプバルブ73との間にあるバルブ76を全閉にする。これにより、蒸発室71aは、ロータリーポンプ73の真空空間と連通せず閉塞された状態となる。一方、蒸発室71aは常に大気と連通しているため、バルブ76の全閉とともに蒸発室71aの圧力は瞬時に大気圧まで上昇する。この結果、水の蒸発が止まり、瞬時に冷却が停止される。
【0069】
以上に説明したように、本実施形態にかかる温度制御装置70を設置したプラズマ処理装置1において、本温度制御例の温度制御方法を実行することにより、ダイナミックな冷却のオン,オフは熱交換部71とロータリーポンプ73の間のバルブ76を用いて制御することができる。すなわち、入熱源である高周波電源32からの高周波電力の印加が発生したら、瞬時にバルブ76を全開にすることにより瞬時に冷却を開始し、入熱源からの入熱がなくなったら、瞬時にバルブ76を全閉にすることにより瞬時に冷却を停止することができる。その結果、温度の応答性を更に高めることができる。また、このようなバルブ76の制御により、ロータリーポンプ73の冷却能力を最大限発揮することができる。
【0070】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る温度制御装置について、図7を参照しながら説明する。第2実施形態に係る温度制御装置70では、第1実施形態で開示した冷凍サイクルに加熱サイクルの構成が追加されている。また、第2実施形態に係る温度制御装置70では、冷凍サイクルと加熱サイクルとは切替弁で切り替えて使用する構成になっている。
【0071】
冷凍サイクルは、熱交換部71→吸気管72→ロータリーポンプ73→油水分離機74→導水管81→導水管75の管状経路により構成される。
【0072】
一方、加熱サイクルは、熱交換部71→導水管83→導水管84→ボイラー80→導水管82→導水管75の管状経路により構成される。
【0073】
このように、本実施形態に係る温度制御装置70では、油水分離機74にて分離された水が、導水管81を経由して熱交換部71に流入される冷凍サイクルの循環経路と、導水管84を経由してボイラー80に流入される加熱サイクルとの循環経路とを有する。冷凍サイクルと加熱サイクルとを切り替えるために、切替弁V1〜V7が導水管75、81,82、83、84のそれぞれに取り付けられている。
【0074】
加熱サイクルの場合、熱交換部71にて加熱蒸気を結露させて潜熱を相手に与える熱交換が必要である。このため、本実施形態では加熱蒸気を生成するボイラー80が追加されている。ボイラー80は、例えば内蔵するヒータ80aからの熱を利用して水を加熱して加熱蒸気を生成する。冷凍サイクルの冷却能力と同様、何kgの蒸気を水に戻すと何kWの熱を出力できるかのデータは、予め制御器68の記憶部に設定されていて、ボイラー80にて生成する加熱蒸気の量は制御器68により制御される。生成される加熱蒸気の量により、加熱能力が決定される。
【0075】
本実施形態においても、温度センサからの検出結果に基づき現在の温度を目標値に近づけるためのフィードバック制御を行う。このフィードバック制御は、上記冷凍サイクルと加熱サイクルとの切り替えにより両サイクルを用いて実行する。これにより、一つの温度制御装置70のみを用いて精度の高い温度調整が可能となる。
【0076】
例えば、載置台12の温度を25℃にする場合、まず、制御器68は、プラズマの入熱に応じて冷凍サイクルを動作させる。図8は冷凍サイクル稼動時の温度制御装置70の状態及び動作を示している。このとき、冷凍サイクルの経路に設けられた切替弁V1、V4、V6は開いていて、加熱サイクルの経路に設けられた切替弁V2、V3、V5、V7は閉じている。また、バルブ76及び空気流入調整弁77は開度調整可能になっている。
【0077】
この場合、油水分離機74から出力された水は、導水管81を通って熱交換部71を循環し、水蒸気となってロータリーポンプ73に流入し、ロータリーポンプ73内で油に溶け込んで油水分離機74まで運ばれ、再度油と水に分離する。このようにして水が循環する間、図9に示したように、熱交換部71にて水が水蒸気になる際に熱交換部71の周囲から気化熱を奪うため、周囲の空気は冷やされる。これにより、冷却が達成される。
【0078】
一方、載置台12の温度が25℃より低くなった場合、制御器68は、加熱サイクルを動作させ、載置台12の温度が25℃になるようにフィードバック制御させる。図10は加熱サイクル稼動時の温度制御装置70の状態及び動作を示している。このとき、加熱サイクルの経路に設けられた切替弁V2、V3、V5、V7は開いていて、冷凍サイクルの経路に設けられた切替弁V1、V4、V6は閉じている。また、バルブ76は閉じているが、空気流入調整弁77は開度調整可能になっている。
【0079】
この場合、油水分離機74から出力された水は、導水管84を通ってボイラー80に入る。ボイラー80ではヒータ80aにより水が加熱され、加熱蒸気が生成する。生成された加熱蒸気は、導水管82、75を通って熱交換部71を循環し、水となって導水管83に流入し、再度導水管84からボイラー80に運ばれる。このようにして水が循環する間、図11に示したように、熱交換部71にて水蒸気が水になる際に熱交換部71の周囲に凝縮熱を与えるため、周囲の空気は暖められる。これにより、加熱が達成される。
【0080】
以上に説明したように、本実施形態に係る温度制御装置70によれば、加熱サイクルにより載置台12の温度が上がり過ぎたら、制御器68は、切替弁を切り替えて冷却サイクルを動作させ、載置台12の温度が下がり過ぎたら、切替弁を再度切り替えて加熱サイクルを動作させ、載置台12の温度が25℃になるようにフィードバック制御する。このような動作を繰り返すことにより、図12に示したように、冷凍サイクル稼動時には熱い空気を冷やし、加熱サイクル稼動時には冷えた空気を暖めて、一つの温度制御装置70で精度の高い温度調整が可能となる。
【0081】
なお、加熱サイクル稼働時には、蒸発室71a内は加圧状態にある。例えば加熱サイクル稼働時、蒸発室71a内は0.2MPaの加圧下にあるとする。一方、冷凍サイクル稼働時には、例えば蒸発室71a内は0.001MPaの減圧下にある。本実施形態においても、蒸発室71a内を加圧状態又は減圧状態にするために、ロータ73aの回転速度、バルブ76の開度、空気流入調整弁77の開度が調整され得る。
【0082】
以上に説明したように、各実施形態に係る温度制御装置70によれば、冷媒にオゾン層破壊物質を使用せずに温度制御が可能となるため、温度制御装置70を利用する際の地球温暖化対策の一つとすることができる。また、閉じられた回路内で冷凍サイクルまたは加熱サイクルが実現できるため、現在の使用環境に準じた温度制御装置70の使用が可能となり、システム構築のコストが抑えられ、システム導入が容易になる。
【0083】
また、各実施形態に係る温度制御装置70では熱交換器内を高圧にする必要はなく、むしろ液体を100℃以下で気化させるために熱交換器内を減圧にする必要がある。よって、特に温度制御装置70をプラズマ処理装置に取り付けた場合には、プラズマ処理装置では容器内部を減圧雰囲気にすることは通常行われているため、容易に温度制御装置70の所定部分を減圧下に制御できる。また、熱交換器71には、熱容量が小さい容器を用いることができるため、温度応答性の良さと省エネを図ることができる。
【0084】
<おわりに>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0085】
例えば、本発明に係る温度制御装置は、プラズマ処理装置の静電チャック40だけでなく、上部電極(シャワーヘッド38)、デポシールド又はプラズマ処理装置の処理容器10の温度制御のために、載置台12、上部電極、デポシールド又は処理容器10の少なくともいずれかに熱交換器71を設けるようにしてもよい。
【0086】
また、本発明に係る温度制御装置は、プラズマ処理装置の上記部材を冷却または加熱するために上記部材の近傍に取り付けられるだけでなく、プラズマ処理装置に取り付けるチラー自身の温度制御としても使用することができる。
【0087】
さらに、本発明に係る温度制御装置を利用可能な処理装置は、プラズマ処理装置に限られない。例えば、本発明に係る温度制御装置は、入熱源からの入熱による温度上昇を抑えるために冷蔵庫を処理容器として冷蔵庫に取り付けて使用することができる。また、本発明に係る温度制御装置は、エアーコンディショナーを処理容器としてエアーコンディショナーに取り付けて使用することもできる。本発明に係る温度制御装置は、いかなる処理容器にも冷却又は加熱するために装着することができる。
【0088】
そして、どんな処理装置に対しても、図4に示した温度制御だけでなく、図6に示した温度制御を行うことができる。つまり、何らかの入熱源の動作開始に連動して吸気管72に設けられたバルブ76を全開に制御し、入熱源の動作終了に連動して同バルブ76を全閉に制御することにより、ダイナミックに温度を制御することができる。
【0089】
なお、本発明に係る温度制御装置を取り付ける処理装置がプラズマ処理装置の場合、プラズマ処理装置の種類は、平行平板型のエッチング処理装置に限られず、例えば円筒状のRLSA(Radial Line Slot Antenna)プラズマ処理装置、ICP(Inductively Coupled Plasma)プラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理装置等いかなるプラズマ処理装置にも使用することができる。また、プラズマ処理装置にて行われる処理もエッチングに限られず、成膜、アッシング、スパッタリング等いかなるプロセスであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 プラズマ処理装置
10 処理容器
12 載置台(下部電極)
32 高周波電源
38 シャワーヘッド(上部電極)
40 静電チャック
62 ガス供給源
68 制御器
70 温度制御装置
71 熱交換部
72 吸気管
71a 蒸発室
73 ロータリーポンプ
73a ロータ
74 油水分離機
75 導水管
76 バルブ
77 空気流入調整弁
80 ボイラー
V1〜V7 切替弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の相変化により熱交換する熱交換部と、
前記冷媒を前記熱交換部から流入し、内部の油と融合させるロータリーポンプと、
前記油に融合された冷媒を前記ロータリーポンプから流入し、油と分離させる油冷媒分離機と、を備え、
前記油と分離された冷媒を再び前記熱交換部に循環させることにより冷却機能を有する冷凍サイクルを構成することを特徴とする温度制御装置。
【請求項2】
前記ロータリーポンプは、ロータの回転により前記熱交換部に設けられた蒸発室の内部を減圧し、
前記熱交換部は、前記冷媒を前記減圧された蒸発室にて気化する際に気化熱を吸収することにより冷却することを特徴とする請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記油冷媒分離機により分離される冷媒は、前記熱交換部、前記ロータリーポンプ及び前記油冷媒分離機を循環し、
前記油冷媒分離機により分離される油は、前記ロータリーポンプ内に回収されることを特徴とする請求項1又は2に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記冷媒を加熱するボイラーを更に備え、
前記加熱された冷媒を前記熱交換部及び前記ボイラーに循環させることにより加熱機能を有する加熱サイクルを構成し、
前記熱交換部は、前記加熱された冷媒を前記ボイラーから流入し、前記蒸発室にて液化する際に凝縮熱を放出することにより加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項5】
前記冷凍サイクルと前記加熱サイクルとを切り替える切替弁を有することを特徴とする請求項4に記載の温度制御装置。
【請求項6】
前記油冷媒分離機により分離される冷媒は、前記切替弁にて切り替えて前記冷凍サイクル又は前記加熱サイクルを循環する水であることを特徴とする請求項5に記載の温度制御装置。
【請求項7】
前記熱交換器は、プラズマ処理装置の内部に設けられた載置台、上部電極、デポシールド又は内部にてプラズマ処理が行われる前記プラズマ処理装置の処理容器の少なくともいずれかに設けられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項8】
内部にてプラズマ処理が行われる処理容器と、
前記処理容器内にガスを供給するガス供給源と、
プラズマを生成するためのパワーを供給し、前記処理容器内にてガスからプラズマを生成するプラズマ源と、
前記処理容器内に設けられた載置台、上部電極、デポシールド又は前記処理容器の少なくともいずれかに設けられ、冷媒の相変化により熱交換する熱交換部と、
前記冷媒を前記熱交換部から流入し、内部の油に融合させるロータリーポンプと、
前記油に融合された冷媒を前記ロータリーポンプから流入し、油と分離させる油冷媒分離機と、を備え、
前記油と分離された冷媒を再び前記熱交換部に循環させることにより冷却機能を有する冷凍サイクルを構成することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
温度を制御する対象となる対象物に取り付けられ、前記対象物の温度を制御する温度制御装置を備えた処理装置であって、
前記温度制御装置は、
冷媒の相変化により熱交換する熱交換部と、
前記冷媒を前記熱交換部から流入し、内部の油と融合させるロータリーポンプと、
前記油に融合された冷媒を前記ロータリーポンプから流入し、油と分離させる油冷媒分離機と、を有し、
前記油と分離された冷媒を再び前記熱交換部に循環させることにより冷却機能を有する冷凍サイクルを構成することを特徴とする処理装置。
【請求項10】
冷媒の相変化により熱交換する熱交換部と、
前記冷媒を前記熱交換部から流入し、内部の油と融合させるロータリーポンプと、
前記油に融合された冷媒を前記ロータリーポンプから流入し、油と分離させる油冷媒分離機と、を備えた温度制御装置を用いた温度制御方法であって、
前記油と分離された冷媒を再び前記熱交換部に循環させ、
前記ロータリーポンプのロータの回転速度と、前記ロータリーポンプと前記熱交換部との連結部分に設けられたバルブの開度と、前記油冷媒分離機と前記熱交換部との連結部分に設けられた空気流入調整弁の開度と、の少なくともいずれかを調整することを特徴とする温度制御方法。
【請求項11】
入熱源の動作開始に連動して前記バルブを全開に制御し、入熱源の動作終了に連動して前記バルブを全閉に制御することにより冷却の開始及び冷却の終了を制御することを特徴とする請求項10に記載の温度制御方法。
【請求項12】
前記導入管に設けられた空気流入調整弁の開度を制御することにより前記蒸発室の圧力を調整することを特徴とする請求項10又は11に記載の温度制御方法。
【請求項13】
前記入熱源は、プラズマ処理装置に用いられるプラズマ源であることを特徴とする請求項11又は12に記載の温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−105915(P2013−105915A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249081(P2011−249081)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】