説明

温度制御装置、及び制御方法

【課題】装置内における柔軟な温度制御を実現可能な温度制御装置を提供する。
【解決手段】複数の温度制御部100を具備する。複数の温度制御部100の各々は、冷却ファン109と、温度を測定する温度測定部102と、測定済みの複数の温度の値を時系列に記憶する温度履歴部103と、測定済みの複数の温度の値の中から読み出された第1温度を、再現閾値温度として設定し、第1温度を設定した後に温度計測部102で測定される第1測定温度が第1温度に一致するように冷却ファンを制御する制御部110とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ内部の温度を制御する温度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータは、内部温度を制御するための温度制御装置を備えている。一般に、温度制御装置は、コンピュータ内部の温度異常を所定の閾値に基づいて検出する複数の温度異常検出部を備えており、1つの温度異常検出部が温度異常を検出すると、コンピュータ内に備えられた全ての冷却ファンの回転数を一斉に上昇させて、コンピュータ内部の温度を下げるように制御する。温度異常が検出されなくなると、温度制御装置は冷却ファンの回転数を下げるように制御する。
【0003】
コンピュータの温度制御に関する技術として、特許文献1〜4が開示されている。
特許文献1は、特定の発熱物体に限定して冷却を行うことができ、筐体内に収容されている構造体に孔を設けたり構造体の形状を変更したりしなくとも、効率よく発熱物体を冷却することを可能にするコンピュータの冷却装置を開示している。特許文献1のコンピュータの冷却装置は、筐体の内部に収容した発熱物体に近接して設けた吸気口と、一端を吸気口に接続したフレキシブル空気導入ダクトと、フレキシブル空気導入ダクトの他端に接続し筐体の外に向かって排気する冷却ファンとを備えることを特徴とする。
【0004】
特許文献2は、被熱処理物を所望の温度プロファイルで確実に熱処理することが可能な熱処理設備の温度制御装置を開示している。特許文献2の熱処理設備の温度制御装置は、熱処理設備内に配設されたヒータと、熱処理設備内の被熱処理物の近傍に配設された測定用温度センサと、ヒータの近傍に配設された制御用温度センサと、ヒータを駆動するヒータ駆動手段と、所望の設定温度プロファイルを記憶した設定温度プロファイルデータ記憶手段と、測定用温度センサの出力に基づいて、所望の温度プロファイルに従うようにヒータを駆動したときの制御用温度センサの出力の履歴データを記憶する履歴データ記憶手段と、履歴データ記憶手段に記憶された履歴データを設定温度プロファイルとみなして、これに従うべくヒータ駆動手段を制御するヒータ制御手段とを備えることを特徴とする。
【0005】
特許文献3は、フラッシュメモリの使用個数を削減しながら運転用プログラムと記録データとを共存させ、かつフラッシュメモリにデータを書き込む際であっても運転用プログラムが停止することがない運転制御装置を開示している。特許文献3の運転制御装置は、機器を所定の運転用プログラムによって運転させると共に、機器の運転状態をデータとして記録可能な運転制御装置において、運転用プログラムを記憶していると共にデータを記録可能なフラッシュメモリと、運転用プログラムを記録可能なRAMと、フラッシュメモリが記録している運転用プログラムをRAMに複写される複写手段と、複写手段によって複写された運転用プログラムを読み込み、プログラムに沿って聞きを運転させる運転制御手段とを唱えることを特徴とする。
【0006】
特許文献4は、ファンモータ起動時に安定に起動し、常時は温度制御によりファンモータの回転制御を行うファンモータ駆動回路を開示している。特許文献4は、パーソナルコンピュータ等に使われるファンモータ駆動回路において、定格電圧を印加してファンモータを起動するファンモータ起動回路と、周囲温度に対応してファンモータに印加する電圧を制御する温度制御回路と、ファンモータ起動回路と温度制御回路とを切り替える切り替え回路とを備えることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−020966号公報
【特許文献2】特開平10−206020号公報
【特許文献3】特開平10−307759号公報
【特許文献4】特開平11−015567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
温度に起因する障害がコンピュータに発生した場合、被疑箇所の特定を行うためには再現試験を実施することになる。しかし、この再現試験において、前述のような温度制御装置を備えるコンピュータでは、内部温度を障害の発生時と同じ温度環境に近づけることは難しい。何故なら、コンピュータ内部を障害発生時の温度環境に近づけたとき、その障害を検出した温度検出部とは別の温度検出部が先に閾値を超える温度を検出した場合、障害発生時の温度になる前にコンピュータ内の全ての冷却ファンの回転数が上昇し、障害発生時の温度環境に近づけることができないからである。
【0009】
本発明の目的は、装置内における柔軟な温度制御を実現可能な温度制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の観点として温度制御装置が提供される。本発明の温度制御装置は、複数の温度制御部を具備する。複数の温度制御部の各々は、冷却ファンと、温度を測定する温度測定部と、測定済みの複数の温度の値を時系列に記憶する温度履歴部と、測定済みの複数の温度の値の中から読み出された第1温度を再現閾値温度として設定し、第1温度を設定した後に温度計測部で測定される第1測定温度が第1温度に一致するように冷却ファンを制御する制御部とを備える。
【0011】
本発明の他の観点として温度制御方法が提供される。本発明の温度制御方法は、温度制御装置が実行する温度制御方法であって、温度制御装置は複数の温度制御部を具備する。複数の温度制御部の各々は、冷却ファンと、温度を測定する温度測定部と、測定済みの複数の温度の値を時系列に記憶する温度履歴部と、制御部とを備える。温度制御方法は、測定済みの複数の温度の値の中から第1温度を読み出すステップと、第1温度を再現閾値温度として設定するステップと、第1温度を設定した後に、温度測定部で測定される第1測定温度が第1温度に一致するように冷却ファンを制御するステップとを具備する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、装置内における柔軟な温度制御を実現可能な温度制御装置を提供することができる。そのため、装置内での温度異常に起因する障害の再現試験において、より障害の発生時に近い温度状態を再現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1Aは、本発明の実施形態における温度制御装置の構成を示す図である。
【図1B】図1Bは、本発明の実施形態における温度制御装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態における通常モード時の温度制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の実施形態における再現モード時の温度制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の実施形態による温度制御装置を以下に説明する。
【0015】
[構成の説明]
はじめに本実施形態における温度制御装置の構成の説明を行う。図1A及び図1Bは、本実施形態における温度制御装置の構成を示す図である。温度制御装置は、温度制御部100−1〜nと、モード切替部200と、温度障害検出部300と、指示入力部400とを備える。モード切替部200と、温度障害検出部300と、指示入力部400とは、温度制御部100−1〜nの各々と接続されている。
【0016】
温度制御部100−1〜nは、コンピュータ内部に複数設けられて、冷却ファンの回転数を制御することによりコンピュータ内部の温度制御を行う。モード切替部200は、温度制御部100−1〜nにおける通常モードと再現モードとの切り替えを制御する。通常モードは、温度制御部100−1〜nによりコンピュータ内部を適切な温度に制御するモードである。再現モードは、温度制御部100−1〜nに記録された温度をコンピュータ内部で再現するモードである。温度障害検出部300は、コンピュータ内部における温度に起因する障害(以下、温度障害)を検出する。例えば、コンピュータ内の温度上昇に伴いメモリやプロセッサ等で訂正可能障害が発生する場合があり、温度障害検出部300は、このような障害を検出する。指示入力部400は、温度制御装置のユーザから指示の入力を受け付ける。
【0017】
温度制御部100−1〜nは、それぞれ同様の構成であるので、以下では温度制御部100−1を例として説明を行う。温度制御部100−1は、異常温度閾値設定部101と、温度測定部102と、温度履歴部103と、セレクタ104と、冷却ファン109と、制御部110とを備える。
【0018】
冷却ファン109は、CPU(Central Processing Unit)に例示される冷却対象を冷却する。異常温度閾値設定部101は、通常モードにおいてコンピュータ内部の温度異常を検出するための閾値となる温度(以下、通常閾値温度)を記憶している。温度測定部102は、温度を測定する。温度履歴部103は、フラッシュメモリに例示される不揮発性メモリにより構成される。温度履歴部103は、通常モードにおいて、温度測定部2が測定した温度(以下、測定温度)の値を時系列に記憶する。温度履歴部103は、指示入力部400からの指示により、測定温度の書き込みを開始して、温度障害検出部300からの温度障害の通知を受けると測定温度の書き込みを停止する。また、温度履歴部103は、再現モードにおいて、時系列に記憶された測定温度を冷却ファン109の回転数の制御に用いられる閾値となる温度(以下、再現閾値温度)として出力する。セレクタ104は、モード切替部200の制御により異常温度閾値設定部101から入力される通常閾値温度あるいは温度履歴部103から入力される再現閾値温度を選択して、制御部110へ出力する。セレクタ104は、通常モードにおいて異常温度閾値設定部101から入力される通常閾値温度を選択し、再現モードにおいて温度履歴部103から入力される再現閾値温度を選択するように制御される。
【0019】
制御部110は、閾値判定部105と、論理和回路106と、セレクタ107と、冷却ファン制御部108とを備える。なお、図1A及び図1Bにおいて、論理和回路106は温度制御部100−1のみが備えているが、他の温度制御部100−2〜nが備えても良いし、あるいは、全ての温度制御部100−1〜nが備えても良い。
【0020】
閾値判定部105は、セレクタ104から通常閾値温度あるいは再現閾値温度を閾値温度として設定して、温度測定部102から入力する測定温度との比較を行う。閾値判定部105は、通常モードにおいて、セレクタ104から入力する通常閾値温度を閾値温度として設定し、温度測定部102から入力する測定温度との比較を行う。閾値判定部105は、測定温度が通常閾値温度以上であると、温度異常信号を出力する。また、閾値判定部105は、再現モードにおいて、セレクタ104から入力する再現閾値温度を閾値温度として設定し、温度測定部102から入力する測定温度が閾値温度と一致するか比較を行う。閾値判定部105は、測定温度が再現閾値温度と一致する場合、温度履歴部103へ閾値温度一致を通知する。一方、閾値判定部105は、測定温度が再現閾値温度と一致しない場合、冷却ファン制御信号を出力する。例えば、閾値判定部105は、測定温度が再現閾値温度以上である場合にハイレベルの冷却ファン制御信号を出力し、測定温度が再現閾値温度未満である場合にロウレベルの冷却ファン制御信号を出力するといった具合である。
【0021】
論理和回路106は、温度制御部100−1〜nの全ての閾値判定部105及びセレクタ107と接続される。論理和回路106は、温度制御部100−1〜nの少なくとも一つの閾値判定部105から温度異常信号を入力すると、温度異常信号を温度制御部100−1〜nの全てのセレクタ107に対して出力する。これにより、少なくとも一つの温度制御部100−1〜nにおける温度異常の発生が、全ての温度制御部100−1〜nへ通知されることになる。
【0022】
セレクタ107は、モード切替部200の制御により、閾値判定部105から入力される冷却ファン制御信号か論理和回路106から入力される温度異常信号かを選択して冷却ファン制御部108へ出力する。セレクタ107は、通常モードにおいて論理和回路106から入力される温度異常信号を選択し、再現モードにおいて閾値判定部105から入力される冷却ファン制御信号を選択するように制御される。
【0023】
冷却ファン制御部108は、通常モードにおいてセレクタ107から温度異常信号を入力すると、温度異常信号に基づいて冷却ファン109の回転数を制御する。冷却ファン制御部108は、再現モードにおいてセレクタ107から冷却ファン制御信号を入力して、冷却ファン制御信号に基づいて冷却ファン109の回転数を制御する。例えば、冷却ファン制御部108は、閾値判定部105から測定温度が再現閾値温度以上である場合にハイレベルの冷却ファン制御信号を入力すると、冷却ファン109の回転数を上昇させるように制御し、閾値判定部105から測定温度が再現閾値温度未満である場合にロウレベルの冷却ファン制御信号を入力すると、冷却ファン109の回転数を低下させるように制御するといった具合である。
【0024】
以上が、本実施形態における温度制御装置の構成の説明である。
【0025】
[動作の説明]
次に、本実施形態における温度制御装置の動作の説明を行う。まず、通常モードにおける温度制御装置の動作の説明を行う。図2は、本実施形態における通常モード時の温度制御装置の動作を示すフローチャートである。なお、温度制御装置100−1〜nは同様の動作を行うため、以下において特に明示しない場合は、温度制御部100−1を例として説明する。
【0026】
モード切替部200は、温度制御装置100−1〜nのセレクタ104及びセレクタ107を通常モードへ移行するように制御している。そのため、温度制御装置100−1〜nのセレクタ104は、異常温度閾値設定部101から入力される通常閾値温度を選択して、閾値判定部105へ出力する。また、温度制御部100−1〜nのセレクタ107は、論理和回路106から入力される温度異常信号を選択して、冷却ファン制御部108へ出力する。
【0027】
このような状態において、まず、指示入力部400は、ユーザから入力された温度書き込み指示を温度制御部100−1〜nの温度履歴部103へ出力する(ステップS10)。温度測定部102は、定期的に温度を測定して測定温度として出力する(ステップS20)。なお、温度測定部102は、常時、定期的に温度測定を行っていても良いし、指示入力部400からユーザによる指示を入力してから温度測定を開始してもよい。温度履歴部103は、温度書き込み指示を入力すると測定温度の書き込みを開始する。温度履歴部103は、温度測定部102により定期的に測定される測定温度を時系列に記憶していく(ステップS30)。
【0028】
閾値判定部105は、セレクタ104を介して異常温度閾値設定部101から通常閾値温度を入力して、閾値温度として設定している。閾値判定部105は、温度測定部102から測定温度を入力すると、測定温度が閾値温度以上であるか比較を行う(ステップS40)。閾値判定部105は、測定温度が閾値温度以上である場合(ステップS50のYes)、温度異常を検出して温度異常信号を出力する。
【0029】
論理和回路106は、温度制御部100−1〜nのいずれかから温度異常信号を入力すると、温度異常信号を温度制御部100−1〜nの全てのセレクタ107に対して出力する。前述の通り、温度制御部100−1〜nのセレクタ107は、論理和回路106から入力される温度異常信号を選択して、冷却ファン制御部108へ出力する。温度制御部100−1〜nの全ての冷却ファン制御部108は、セレクタ107から温度異常信号を入力すると、冷却ファン109を高速回転に制御する。これにより、温度異常時においてコンピュータ内の全ての冷却ファン109の回転が高速回転となり、コンピュータ内の温度を低下させる(ステップS60)。
【0030】
一方、閾値判定部105は、測定温度が閾値温度以上でない場合(ステップS50のNo)、温度異常信号を出力しない。そのため、冷却ファン制御部108は、冷却ファン109を通常時の回転数である低速回転に制御する(ステップS70)。なお、冷却ファン109の高速回転及び低速回転における回転数は、特定の数値に限定するものではない。具体的な回転数はコンピュータ内部の環境等の条件により適切に設定される。
【0031】
温度障害検出部300は、コンピュータ内部において温度障害を検出したかを判定する(ステップS80)。温度障害が検出されない場合(ステップS80のNo)、フローは、ステップS20へ戻る。このようにして、閾値判定部105の判定に基づいて冷却ファン109は、温度異常となると高速回転を維持し、温度異常とならない状態では低速回転を維持する。
【0032】
一方、温度障害が検出された場合(ステップS80のYes)、温度障害検出部300からの通知により、温度履歴部103は、測定温度の書き込みを停止する。これにより本動作フローは終了となる。なお、測定温度の書き込みが停止された状態で、冷却ファンの109の制御が継続されてもよい。また、測定温度の書き込みは引き続き継続させて、何時の時点で温度障害が検出されたかを記録しておく動作としても良い。
【0033】
以上が、通常モードにおける温度制御装置の動作の説明である。このようにして、温度度制御部100−1〜nの温度履歴部103は、通常モードにおいて、温度障害検出部300におり温度障害が検出されるまで、温度測定部102が測定した測定温度を測定温度として時系列に記憶していく。
【0034】
次に、再現モードにおける温度制御装置の動作の説明を行う。図3は、本実施形態における再現モード時の温度制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0035】
モード切替部200は、温度制御装置100−1〜nのセレクタ104及びセレクタ107を再現モードへ移行するように制御する(ステップS100)。これにより、温度制御装置100−1〜nのセレクタ104は、温度履歴部103から入力される再現閾値温度を選択して、閾値判定部105へ出力する。また、温度制御部100−1〜nのセレクタ107は、閾値判定部105から入力される冷却ファン制御信号を選択して、冷却ファン制御部108へ出力する。
【0036】
再現モードへ移行すると、温度制御装置100−1〜nの温度履歴部103は、通常モードにおいて時系列に記憶された測定温度を、再現閾値温度として時系列順にセレクタ104へ出力する(ステップS110)。温度制御装置100−1〜nの閾値判定部105は、セレクタ104を介して温度履歴部103から再現閾値温度を入力して、閾値温度として設定する(ステップS120)。
【0037】
温度制御装置100−1〜nの温度測定部102は、定期的に温度を測定して測定温度として出力する(ステップS130)。なお、温度測定部102は、常時、定期的に温度測定を行っていても良いし、指示入力部400からユーザによる指示を入力してから温度測定を開始してもよい。
【0038】
温度制御装置100−1〜nの閾値判定部105は、温度測定部102から測定温度を入力すると、測定温度が閾値温度と一致するか比較を行う(ステップS140)。閾値判定部105は、測定温度が閾値温度と一致しない場合(ステップS150のNo)、測定温度が閾値温度と一致するように、冷却ファン制御信号を出力して冷却ファン制御部108により冷却ファン109を制御する(ステップS160)。
【0039】
例えば、閾値判定部105は、測定温度が閾値温度以上である場合にハイレベルの冷却ファン制御信号を出力し、測定温度が閾値温度未満である場合にロウレベルの冷却ファン制御信号を出力する。そして、冷却ファン制御部108は、閾値判定部105からハイレベルの冷却ファン制御信号を入力すると、冷却ファン109の回転数を上昇させるように制御し、閾値判定部105からロウレベルの冷却ファン制御信号を入力すると、冷却ファン109の回転数を低下させるように制御するといった具合である。このように温度制御部100−1〜nの冷却ファン109を制御することにより、コンピュータ内部の温度が閾値温度と一致するように制御する。この後、フローは、ステップS130へ戻る。
【0040】
一方、閾値判定部105は、測定温度が閾値温度と一致する場合(ステップS150のYes)、閾値判定部105は、測温度履歴部103へ閾値温度が一致したことを通知する。温度履歴部103は、閾値温度が一致した旨の通知を受けて、時系列に記憶された測定温度のうちから次に記憶された測定温度を読み出す(ステップS170)。このとき、温度履歴部103は、次に記憶された測定温度が存在するか否かを判定し(ステップS170)、次に記憶された測定温度が存在しない場合(ステップS170のNo)、本動作フローは終了となる。つまり、この時点で、コンピュータ内部は、温度障害発生時の温度環境となっている。
【0041】
一方、次に記憶された測定温度が存在する場合(ステップS170のYes)、時系列に記憶された測定温度のうちから次に記憶された測定温度を読み出して、再現閾値温度としてセレクタ104へ出力する。温度制御装置100−1〜n閾値判定部105は、セレクタ104を介して温度履歴部103から再現閾値温度を入力して、閾値温度を更新する(ステップS180)。この後、フローは、ステップS130へ戻る。そして、閾値判定部105は、新たに設定された閾値温度に測定温度を一致させるように、冷却ファン制御信号により冷却ファン制御部108を制御する。以上が、再現モードにおける温度制御装置の動作の説明である。
【0042】
本発明の温度制御装置によれば、再現モードにおいて温度制御部100−1〜nの閾値判定部105は、温度履歴部103に時系列に記憶された測定温度を閾値温度として順に設定する。そして、閾値判定部105は、コンピュータ内部の温度を新たに設定された閾値温度に一致させるように、冷却ファン制御信号により冷却ファン制御部108を制御する。閾値判定部105は、測定温度と閾値温度とが一致すると、閾値温度を次に記憶された測定温度に更新する。
【0043】
このように、温度制御部100−1〜nが、それぞれ個別に、時系列に沿って記憶された測定温度と現在のコンピュータ内部の温度である測定温度とを一致させるように冷却ファン109を制御するため、コンピュータ内部における柔軟な温度制御が可能となる。そのため、温度障害が発生する以前から温度障害が発生するに至るまでのコンピュータ内部における温度環境を、より的確に再現することが可能となり、温度障害の再現性を高めることが可能となる。
【0044】
なお、ユーザが、指示入力部400を介して、温度制御部100−1〜nの温度履歴部103の各々に、予め任意の測定温度の値を時系列に書き込んでおくことで、様々な温度環境のシミュレーションを行うことも可能である。例えば、温度制御部100−1〜nの温度履歴部103に高温の測定温度を書き込んでおくことで、常に通常より高温の状態を保つことが可能となる。そのため、高温試験専用設備が無くとも高温試験を行うこともできる。
【符号の説明】
【0045】
100−1〜n 温度制御部
101 異常温度閾値設定部
102 温度測定部
103 温度履歴部
104 セレクタ
105 閾値判定部
106 論理和回路
107 セレクタ
108 冷却ファン制御部
109 冷却ファン
110 制御部
200 モード切替部
300 温度障害検出部
400 指示入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の温度制御部
を具備し、
前記複数の温度制御部の各々は、
冷却ファンと、
温度を測定する温度測定部と、
測定済みの複数の温度の値を時系列に記憶する温度履歴部と、
前記測定済みの複数の温度の値の中から読み出された第1温度を、再現閾値温度として設定し、前記第1温度を設定した後に前記温度計測部で測定される第1測定温度が前記第1温度に一致するように冷却ファンを制御する制御部と
を備える
温度制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度制御装置であって、
前記制御部は、前記第1測定温度が前記第1温度に一致すると、時系列に沿って前記第1温度の次の第2温度を前記再現閾値温度として設定し、前記第2温度を設定した後に前記温度計測部で測定される第2測定温度が前記第2温度に一致するように冷却ファンを制御する
温度制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の温度制御装置であって、
前記複数の温度制御部に対して、温度環境を再現する再現モードと、温度制御を行う通常モードとの何れかを設定するモード切替部
を更に具備し、
前記温度履歴部は、前記通常モードにおいて、前記温度測定部が測定した第3測定温度を時系列に記憶する
温度制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の温度制御装置であって、
前記複数の温度制御部の各々は、
前記通常モードにおける異常を判定するための通常閾値温度を記憶する閾値記憶部
を更に備え、
前記制御部は、前記通常モードのとき前記通常閾値温度を読み出し、前記第3測定温度が前記通常閾値温度以上になると、前記第3測定温度が前記通常閾値温度を下回るように前記冷却ファンを制御する
温度制御装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の温度制御装置であって、
温度に起因する障害を検出する温度障害検出部
を更に具備し、
前記温度履歴部は、前記通常モードにおいて、前記温度障害検出部が前記温度障害を検出すると、前記第3測定温度の記憶を停止する
温度制御装置。
【請求項6】
請求項3乃至5の何れか一項に記載の温度制御装置であって、
前記制御部は、
前記第1温度と前記第1測定温度、前記第2温度と前記第2測定温度、又は前記通常閾値温度と前記第3測定温度の比較を行う閾値判定部と、
前記閾値判定部による比較結果に基づいて、前記冷却ファンを制御する冷却ファン制御部と
を備え、
前記冷却ファン制御部は、前記通常モードにおいて、前記第3測定温度が前記通常閾値温度以上となった場合に前記第3測定温度が前記通常閾値温度を下回るように前記冷却ファンを制御し、前記再現モードにおいて、前記第1測定温度が前記第1温度に一致するように、又は、前記第2測定温度が前記第2温度と一致するように前記冷却ファンを制御する
温度制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の温度制御装置であって、
前記複数の温度制御部のうちの第1温度制御部が備える第1制御部は、
前記通常モードにおいて、前記複数の温度制御部の各々の前記閾値判定部から第1比較結果を入力し、少なくとも1つの前記第1比較結果において前記第3測定温度が前記通常閾値温度以上となった場合、前記複数の温度制御部の各々の前記冷却ファン制御部に対して、前記測定温度が前記通常閾値温度以上であることを示す第2比較結果を出力する論理和回路
を備える
温度制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の温度制御装置であって、
前記温度制御部の各々は、
前記通常モードにおいて、前記閾値記憶部の前記通常閾値温度を選択し、前記再現モードにおいて、前記温度履歴部の前記第1温度、又は前記第2温度を選択して前記閾値判定部へ出力する第1セレクタ
を更に備え、
前記制御部は、
前記通常モードにおいて、前記論理和回路の前記第2比較結果を選択し、前記再現モードにおいて、前記閾値判定部の前記比較結果を選択して、前記冷却ファン制御部へ出力する第2セレクタ
を更に備える
温度制御装置。
【請求項9】
複数の温度制御部を具備し、
前記複数の温度制御部の各々は、冷却ファンと、温度を測定する温度測定部と、測定済みの複数の温度の値を時系列に記憶する温度履歴部と、制御部とを備える温度制御装置の温度制御方法であって、
前記制御部が、前記測定済みの複数の温度の値の中から第1温度を読み出すステップと、
前記制御部が、前記第1温度を再現閾値温度として設定するステップと、
前記制御部が、前記第1温度を設定した後に、前記温度測定部で測定される第1測定温度が前記第1温度に一致するように冷却ファンを制御するステップと
を具備する
温度制御方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−173757(P2012−173757A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31799(P2011−31799)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】