温度及び歪分布計測システム
【課題】FBGファイバを用いて、物体上の温度と歪の連続的な分布を分離して同時に得ること。
【解決手段】本発明は、擬似ランダム符号で変調された出射光を、FBGファイバに送出する光源部と、FBGファイバから入射する応答光を、透過波形と反射波形とに分離する傾斜フィルタとダミーファイバとからなる光分離手段と、光分離手段にて分離した透過波形と反射波形を電気信号に変換する変換手段と、擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、温度分布計測情報乃至歪分布計測情報を出力する解析手段とを備えたインタロゲータを用いた温度及び歪分布計測システムであって、FBGセンサは、全長に亘って一定ピッチのFBGが連続的、もしくは、所要の距離分解能を得るに十分な間隔で断続的に形成されたロングゲージFBGファイバとし、ダミーファイバの長さLdは、ロングゲージFBGファイバの長さLの2倍以上の長さに設定され、FBGセンサに沿った温度及び歪分布を計測するように構成されている。
【解決手段】本発明は、擬似ランダム符号で変調された出射光を、FBGファイバに送出する光源部と、FBGファイバから入射する応答光を、透過波形と反射波形とに分離する傾斜フィルタとダミーファイバとからなる光分離手段と、光分離手段にて分離した透過波形と反射波形を電気信号に変換する変換手段と、擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、温度分布計測情報乃至歪分布計測情報を出力する解析手段とを備えたインタロゲータを用いた温度及び歪分布計測システムであって、FBGセンサは、全長に亘って一定ピッチのFBGが連続的、もしくは、所要の距離分解能を得るに十分な間隔で断続的に形成されたロングゲージFBGファイバとし、ダミーファイバの長さLdは、ロングゲージFBGファイバの長さLの2倍以上の長さに設定され、FBGセンサに沿った温度及び歪分布を計測するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疑似ランダム符号を用いたインタロゲータとFBGセンサを用いることにより、被測定対象物の歪の分布と温度の分布を同時に計測可能なシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
FBGセンサやBOFセンサ等を用いて温度や歪等をはじめ種々の物理量の変化を観測することの可能な計測システムが、本願発明者の一部等によって既に提案されている。(特許文献1、2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】PCT/JP2009/64582
【特許文献2】特許第4308868号
【0004】
光ファイバによるセンシングは、センサ部に給電不要かつ電磁誘導障害フリーな遠隔計測が可能なことから、多くの分野で用いられている。
光ファイバセンサとしてもっとも普及しているのはFBG(Fiber Bragg Grating:ブラッグ回折格子)である。ファイバコアの長手方向数mm乃至10mmに亘り紫外線照射によって、微小な屈折率の周期構造を形成したセンサデバイスで、ブラッグ波長と呼ばれる特定の波長成分のみを反射する。ブラッグ波長はFBGの温度及び伸縮歪に依存するので、反射スペクトルの変化から温度や歪が検出できるわけである。
FBGセンサ毎の反射スペクトルシフトの検出は、シフト波長帯の異なる複数のFBGを直列に配置したときの、反射光を波長解析によって行なうのが一般的である。
しかし、FBGセンサを用いる方式では、センサ部の定点観測しかできないため、どこで異常が起こるか分からないところでの、温度や歪の異常診断や異常点検知には不向きである。
これに応えるため、従来、FBGなどの光センサを用いず、ファイバ上の温度や歪の連続分布を求めるものとして、ラマンOTDRやブリリュアンOTDRと呼ばれる方式がある。これはファイバの非線形効果によって惹き起されるラマン後方散乱あるいはブリリュアン後方散乱の特性を解析するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物体上の連続的な温度分布はラマンOTDRで、また、連続的な歪分布はブリリュアンOTDRで求めるのが現状、現実的な方法であるが、ブリリュアンOTDRは、温度補償が非常に困難であることが、大きな制約になっている。
一方、市場では、近年、温度と歪両方の分布を同時に計測ないしモニタする需要が多くなってきたが、これが応える実用的な方式はいまだ提案されていない。
従って、本発明の目的は、物体上の温度と歪の連続的な分布を分離して同時に得る手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記課題を解決するために以下のような手段を講じた。
請求項1の発明は、
擬似ランダム符号で変調された出射光を、FBGファイバに送出する光源部と、
FBGファイバから入射する応答光を、透過波形と反射波形とに分離する傾斜フィルタとダミーファイバとからなる光分離手段と、
光分離手段にて分離した透過波形と反射波形を電気信号に変換する変換手段と、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、温度分布計測情報乃至歪分布計測情報を出力する解析手段と
を備えたインタロゲータを用いた温度及び歪分布計測システムであって、
前記FBGセンサは、
全長に亘って一定ピッチのFBGが連続的、もしくは、所要の距離分解能を得るに十分な間隔で断続的に形成されたロングゲージFBGファイバとし、
前記ダミーファイバの長さLdは、前記ロングゲージFBGファイバの長さLの2倍以上の長さに設定され、
前記FBGセンサに沿った温度及び歪分布を計測するように構成されたことを特徴としている。
請求項2の発明は、
前記ロングゲージFBGファイバは、
温度及び歪分布を計測すべき被測定物体の外部もしくは内部に沿って往路と復路に折り返して配置され、
往路もしくは復路の何れか一方は前記被測定物体に固定され、
他方は、前記一方と温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置され、
前記インタロゲータの反射波形解析により、前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測するように構成している。
請求項3の発明は、
前記インタロゲータのファイバ接続端子に2分岐カプラを設け、
前記2分岐カプラの一方の分岐端に長さLなる第1のロングゲージFBGファイバを接続し、
一方の分岐端には長さL以上の第2のダミーファイバを介して長さLなる第2のロングゲージFBGファイバを接続し、
前記ダミーファイバの全長は、前記第2のダミーファイバと前記第2のロングゲージFBGファイバの合計の長さの2倍以上とし、
第1もしくは第2のロングゲージFBGファイバの何れか一方を前記被測定物体に固定し、
他方のロングゲージFBGファイバを、前記一方のロングゲージFBGファイバと温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置し、
前記インタロゲータの反射波形解析により、第1と第2の両ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測するように構成した。
請求項4では、
前記解析手段は、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、固定されていない側の前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布計測情報と、固定されている側の前記ロングゲージFBGファイバ上の歪分布計測情報とを同時に分離して出力し、
前記固定されていない部分のロングゲージFBGファイバの応答光から得られる温度分布計測情報に基づいて、前記固定されている部分のロングゲージFBGファイバの応答光から得られる温度分布と歪分布とが複合した計測情報を補正することによって、温度分布による影響を排除した歪分布計測情報を出力するように構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1では、
全長に亘って一定ピッチのFBGが連続的、もしくは、所要の距離分解能を得るに十分な間隔で断続的に形成されたロングゲージFBGファイバを用い、
前記ダミーファイバの長さLdは、前記ロングゲージFBGファイバの長さLの2倍以上の長さに設定したことによって、
前記FBGセンサに沿った温度及び歪分布を計測することができる。
請求項2では、
前記ロングゲージFBGファイバは、
温度及び歪分布を計測すべき被測定物体の外部もしくは内部に沿って往路と復路に折り返して配置され、
往路もしくは復路の何れか一方は前記被測定物体に固定され、
他方は、前記一方と温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置されているので、
前記インタロゲータの反射波形解析により、前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測することができる。
請求項3では、
前記インタロゲータのファイバ接続端子に2分岐カプラを設け、
前記2分岐カプラの一方の分岐端に長さLなる第1のロングゲージFBGファイバを接続し、
一方の分岐端には長さL以上の第2のダミーファイバを介して長さLなる第2のロングゲージFBGファイバを接続し、
前記ダミーファイバの全長は、前記第2のダミーファイバと前記第2のロングゲージFBGファイバの合計の長さの2倍以上とし、
第1もしくは第2のロングゲージFBGファイバの何れか一方を前記被測定物体に固定し、
他方のロングゲージFBGファイバを、前記一方のロングゲージFBGファイバと温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置し、
前記インタロゲータの反射波形解析により、第1と第2の両ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測するように構成しているので、
前記インタロゲータの反射波形解析により、第1と第2の両ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測することができる。
請求項4では、
前記解析手段は、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、固定されていない側の前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布計測情報と、固定されている側の前記ロングゲージFBGファイバ上の歪分布計測情報とを同時に分離して出力し、
前記固定されていない部分のロングゲージFBGファイバの応答光から得られる温度分布計測情報に基づいて、前記固定されている部分のロングゲージFBGファイバの応答光から得られる温度分布と歪分布とが複合した計測情報を補正することによって、温度分布による影響を排除した歪分布計測情報を出力するように構成したので、
温度分布計測情報と、温度分布による影響を排除した歪分布計測情報とを同時に分離して出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る温度及び歪分布計測システムの実施例1のブロック図である。
【図2】実施例1におけるダミーファイバとロングゲージFBGファイバとの長さの関係を説明する図である。
【図3】実施例1における計測アルゴリズムを示した図である。
【図4】実施例2のブロック図である。
【図5】実施例2におけるダミーファイバとロングゲージFBGファイバとの長さの関係を説明する図である。
【図6】実施例3のブロック図である。
【図7】実施例3におけるダミーファイバとロングゲージFBGファイバとの長さの関係を説明する図である。
【図8】本発明の特徴を説明する図である。
【図9】シミュレーションの設定条件を示す図である。
【図10】シミュレーションの設定条件を示す図である。
【図11】シミュレーションの設定条件を示す図である。
【図12】シミュレーションの設定条件を示す図である。
【図13】シミュレーションによる反射波形のイメージを示す図である。
【図14】シミュレーションの結果を示す図である。
【図15】シミュレーションの結果を示す図である。
【図16】シミュレーションの結果を示す図である。
【図17】シミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、請求項3に対応した実施例1に係る温度及び歪分布計測システムのブロック図であり、
10は温度及び歪分布計測システムであり、
全長に亘って一定ピッチのFBGが連続的、もしくは、所要の距離分解能を得るに十分な間隔で断続的に形成されたロングゲージFBGファイバ11と、
ブラッグ波長シフト解析用の傾斜フィルタ12と透過光及び反射光の時間的分離用のダミーファイバ13を備えたインタロゲータ14と、
より構成されている。
【0011】
前記ロングゲージFBGファイバ11は、
温度及び歪分布を計測すべき被測定物体の外部もしくは内部に沿って、長さLの往路111と、長さLの復路112に折り返して配置され、
往路111は前記被測定物体に固定され、
復路112は、前記往路と温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態(固定されない状態)で配置されている。
前記ダミーファイバ13の長さLdは、前記ロングゲージFBGファイバの全長さ2Lの2倍以上の長さ(4L以上)に設定されている。
なお、往路を固定せずに、復路を固定しても良い。
【0012】
前記インタロゲータ14は、
擬似ランダム符号を発生する発生手段15と、
擬似ランダム符号変調された連続光を、ロングゲージFBGファイバ11に出射する出射手段16と、
ロングゲージFBGファイバ11から入射する応答光を、透過波形と反射波形とに分離する傾斜フィルタ12とダミーファイバ13とからなる光分離手段17と、
光分離手段17にて分離した透過波形と反射波形を電気信号に変換する変換手段18と、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、固定されていない側の前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布計測情報と、固定されている側の前記ロングゲージFBGファイバ上の歪分布計測情報とを同時に分離して出力する解析手段19と
を備えている。
前記インタロゲータ14内のダミーファイバ13上を反射光は片道しか通らないため、透過と反射の距離差は半分のLd/2に見える。したがって、ダミーファイバ13の長さはロングゲージFBGファイバ11の2倍以上に設定する必要がある。(以下同様)
なお、前記インタロゲータは、以下、DT3Rインタロゲータと称する。DT3Rは、Delayed Transmission/Reflection Ratiometric Reflectometryの頭文字に基づいた造語であり、前記インタロゲータを用いた計測方式を、時間差透過/反射比計測方式(DT3R)と称している。
【0013】
前記DT3Rインタロゲータ14は、
前記ロングゲージFBGファイバ11から入射する応答光を解析することにより、前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布(図1の(E)に例示。)と歪分布(図1の(D)に例示。)を同時に分離計測するように構成されている。
【0014】
前記出射手段16は、たとえばSLD(SuperLuminescent Diode)で構成されており、その出射光の波長の範囲は、図1の(A)に例示したように、十分広い波長範囲に設定されている。
前記光分離手段17の傾斜フィルタ12は、図1の(B)に例示したように、透過光と反射光に対して傾斜特性を備えている。
図1の(C)に例示したように、前記傾斜フィルタ12の傾斜特性の波長範囲にブラッグ波長が含まれるように設定されており、その傾斜特性によって、歪み分布や温度分布によるブラッグ波長のシフト量が解析されるように構成されている。
図1の(D)は、前記温度及び歪分布計測システム10によって得られた、長さLの測定領域における歪分布測定結果の一例であり、図1の(E)は、前記温度及び歪分布計測システム10によって得られた温度分布測定結果の一例である。
【0015】
前記光分離手段17に含まれるダミーファイバ13の全長Ldは、前述したように、前記ロングゲージFBGファイバ11の全長2Lの2倍以上の長さに設定されている必要がある。
図2に示したように、相関応答波形は、透過波形(歪+温度)(tS+T)、透過波形(温度)(t*T)、反射波形(歪+温度)(rS+T)、反射波形(温度)(r*T)の順で戻ってくる。
ダミーファイバ13の全長LdがロングゲージFBGファイバ11の全長2Lの2倍未満の場合は、図2の(A)に示したように、透過光の一部と反射光の一部とが重複する領域Dが生じるので、分離できなくなる。
ダミーファイバ13の全長LdがロングゲージFBGファイバ11の全長2Lの2倍と等しいときには、図2の(B)に示したように、透過光の一部と反射光の一部とが重複する領域は無いので分離できる。
ダミーファイバ13の全長LdがロングゲージFBGファイバ11の全長2Lの2倍より長いときには、図2の(C)に示したように、透過光と反射光とを余裕をもって分離できる。したがって、ダミーファイバ13の全長LdはロングゲージFBGファイバ11の全長2Lの2倍以上(Ld≧4L)とする必要がある。
このように、相関応答波形上、ダミーファイバの長さLdは、透過光と反射光とを確実に分離するための、透過波形と反射波形間の距離を稼ぐ格好になる。
【0016】
ロングゲージFBGファイバ11の往路111は、被測定物に固定されているので、被測定物の歪と温度によるブラッグ波長のシフトを生じ、復路112は、被測定物に固定されていないので、被測定物の歪の影響は受けずに、温度によるブラッグ波長のシフトを生じる。
したがって、往路111によって計測された温度分布と歪分布の両方による相関応答波形を、復路によって計測された温度分布のみによる相関応答によって補正することによって、被測定物の測定領域の歪分布だけに対応した相関応答波形を得ることができる。
このように、前記解析手段19は、温度分布による影響を排除した歪分布計測情報を出力することができる。
【0017】
図3に、本発明における計測アルゴリズムを示した。
ロングゲージFBGファイバの全長のうち、DT3Rインタロゲータに近い方の往路が固定され、遠い方の復路が固定されていないので、図2に示したように、相関応答波形は、透過波形 tS+T(歪+温度)、透過波形t*T(温度)、反射波形rS+T(歪+温度)、反射波形r*T(温度)の順で戻ってくる。
ここで*がついている透過波形t*T(温度)、反射波形r*T(温度)は、測定対象物上でDT3Rインタロゲータから遠い方から近い方にFBGが張られているため距離軸が反転している。
ロングゲージFBGファイバが固定された被測定物体の歪量に応じて図3の(1)式のように、ζS+Tが求まる。ただし、ζS+T には温度依存性が含まれている。
ロングゲージFBGファイバの周囲の温度に応じて図3の(2)式のように、ζ*T が求まる。ただし、温度分布は上述の通り距離軸が反転しているため、図3の(3)式のように反転する必要がある。
そして、温度依存性をキャンセルするためには図3の(4)式のように、温度に応じたζTをζS+Tから引けばよい。
【0018】
固定されていない部分のロングゲージFBGファイバ、図1の場合は復路112は、インタロゲータからみて遠い方から近い方にむけて逆向きに設置される。
固定されていない側のロングゲージFBGファイバ(復路112)は、固定されている側のロングゲージFBGファイバ(往路111)とは逆向きに設置されているため、透過波形t*T(温度)と反射波形r*T(温度)は距離軸に対して反転して演算処理する必要がある。
【実施例2】
【0019】
図4は、請求項1に対応した実施例2の構成を示したブロック図である。
実施例2の温度及び歪分布計測システム20では、ロングゲージFBGファイバ21は折り返していないので、図5に示したように、透過波形tと反射波形rとが得られる。
前記温度及び歪分布計測システム20は、
全長に亘って一定ピッチのFBGが連続的、もしくは、所要の距離分解能を得るに十分な間隔で断続的に形成されたロングゲージFBGファイバ21と、
ブラッグ波長シフト解析用の傾斜フィルタ22の透過光及び反射光の時間的分離用のダミーファイバ23の長さLdを、前記ロングゲージFBGファイバ21の長さLの2倍以上の長さに設定したDT3Rインタロゲータ24と、
より構成されている。
【0020】
前記DT3Rインタロゲータ24は、
擬似ランダム符号を発生する発生手段25と、
擬似ランダム符号変調された連続光を、ロングゲージFBGファイバ21に出射する出射手段26と、
ロングゲージFBGファイバ21から入射する応答光を、透過波形と反射波形とに分離する傾斜フィルタ22とダミーファイバ23とからなる光分離手段27と、
光分離手段27にて分離した透過波形と反射波形を電気信号に変換する変換手段28と、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、前記ロングゲージFBGファイバ上21の温度もしくは歪分布計測情報を出力する解析手段29と
を備えている。
前記解析手段29は、前記ロングゲージFBGファイバ21上での温度のバラツキが無い場合もしくはバラツキが少ない場合には、歪分布計測情報を得ることができ、前記ロングゲージFBGファイバ21上での長手方向の歪のバラツキが無い場合もしくはバラツキが少ない場合には、温度分布計測情報を得ることができる。
【0021】
前記出射手段26は、前述したように、たとえばSLDで構成されており、その出射光の波長の範囲は十分広い波長範囲に設定されている。
前記光分離手段27の傾斜フィルタ22は、図1の(B)に例示したように、透過光と反射光に対して傾斜特性を備えている。
また、図1の(C)に例示したように、前記傾斜フィルタ12の傾斜特性の波長範囲にブラッグ波長が含まれるように設定されており、その傾斜特性によって、歪み分布や温度分布によるブラッグ波長のシフト量が解析されるように構成されている。
【0022】
前記ダミーファイバ23の全長LdがロングゲージFBGファイバ21の全長Lの2倍未満の場合は、図5の(A)に示したように、透過光の一部と反射光の一部とが重複する領域Dが生じるので、分離できなくなる。
ダミーファイバ23の全長LdがロングゲージFBGファイバ21の全長Lの2倍と等しいときには、図5の(B)に示したように、透過光の一部と反射光の一部とが重複する領域は無いので分離できる。
ダミーファイバ23の全長LdがロングゲージFBGファイバ21の全長Lの2倍より長いときには、図5の(C)に示したように、透過光と反射光とを余裕をもって分離できる。したがって、ダミーファイバ23の全長LdはロングゲージFBGファイバ21の全長Lの2倍以上(Ld≧2L)とする必要がある。
このように、相関応答波形上、ダミーファイバの長さLdは、透過光と反射光とを確実に分離するための、透過波形と反射波形間の距離を稼ぐ格好になる。
この実施例2は、ロングゲージFBGファイバ21の長手方向に沿った温度分布のバラツキを排除するための温度補償等を考慮しない方式であり、純粋にロングゲージFBGファイバの長手方向に沿った歪の分布を計測する方式である。
【実施例3】
【0023】
図6は、請求項4に対応した実施例3の構成を示したブロック図である。
実施例3の温度及び歪分布計測システム30は、分岐した2本のロングゲージFBGファイバ311、312を備え、一方のロングゲージFBGファイバ312は第2のダミーファイバ313を介して、DT3Rインタロゲータ34に接続されている。
図6に示したように、
前記温度及び歪分布計測システム30は、
前記インタロゲータ34のファイバ接続端子に2分岐カプラ314を設け、
前記2分岐カプラ314の一方の分岐端に長さLなる第1のロングゲージFBGファイバ311を接続し、
一方の分岐端には長さL以上の第2のダミーファイバ313を介して長さLなる第2のロングゲージFBGファイバ312を接続し、
第1もしくは第2のロングゲージFBGファイバの何れか一方(たとえば第1のロングゲージFBGファイバ311)を測定対象の被測定物体に固定し、
他方のロングゲージFBGファイバ(第2のロングゲージFBGファイバ312)を、前記一方のロングゲージFBGファイバと温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置したものである。
前記インタロゲータ34の反射波形解析により、第1と第2の両ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測するように構成されている。
なお、第1のロングゲージFBGファイバを固定せずに、第2のロングゲージFBGファイバを固定しても良い。
【0024】
前記DT3Rインタロゲータ34は、
擬似ランダム符号を発生する発生手段35と、
擬似ランダム符号変調された連続光を、前記分岐カプラ314を介しロングゲージFBGファイバ31に出射する出射手段36と、
ロングゲージFBGファイバ31から前記分岐カプラ314を介して入射する応答光を、透過波形と反射波形とに分離する傾斜フィルタ32とダミーファイバ33とからなる光分離手段37と、
光分離手段37にて分離した透過波形と反射波形を電気信号に変換する変換手段38と、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、温度分布計測情報と歪分布計測情報とを同時に分離して出力する解析手段39と
を備えている。
【0025】
前記DT3Rインタロゲータ34は、
前記ロングゲージFBGファイバ31から入射する応答光を解析することにより、前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布(図1の(E)に例示。)と歪分布(図1の(D)に例示。)を同時に分離計測するように構成されている。
【0026】
前記出射手段36は、前述したように、たとえばSLDで構成されており、その出射光の波長の範囲は十分広い波長範囲に設定されている。
前記光分離手段37の傾斜フィルタ32は、図1の(B)に例示したように、透過光と反射光に対して傾斜特性を備えている。
また、図1の(C)に例示したように、前記傾斜フィルタ32の傾斜特性の波長範囲にブラッグ波長が含まれるように設定されており、その傾斜特性によって、歪み分布や温度分布によるブラッグ波長のシフト量が解析されるように構成されている。
【0027】
前記ダミーファイバ33の全長は、前記第2のダミーファイバ313と前記第2のロングゲージFBGファイバ312の合計の長さの2倍以上とした。
前記解析手段39は、
前記固定されていない側(第2)のロングゲージFBGファイバ312の応答光から得られる温度分布計測情報に基づいて、前記固定されている側(第1)のロングゲージFBGファイバ311の応答光から得られる温度分布と歪分布とが複合した計測情報を補正することによって、温度分布による影響を排除した歪分布計測情報を出力するように構成されている。
【0028】
固定された側の第1のロングゲージFBGファイバ311は被測定物に貼り付け固定されているので、被測定物体の歪の分布と温度の分布に応じた影響を受け、固定されていない側の第2のロングゲージFBGファイバ312は被計測物に固定されていないので、被測定物体の歪の影響は受けずに、温度分布に応じた影響を受ける。
【0029】
この場合、長さLの第2のダミーファイバ313を備えているので、相関応答波形は、図7に示したように、透過波形tS+T(歪+温度)、透過波形tT(温度)、反射波形rS+T(歪+温度)、反射波形rT(温度)の順で戻ってくる。
第1のダミーファイバ33の全長Ldが、第2のダミーファイバ313と前記第2のロングゲージFBGファイバ312の合計の全長2Lの2倍未満(Ld<4L)の場合は、図7の(A)に示したように、透過光の一部と反射光の一部とが重複する領域Dが生じるので、分離できなくなる。
ダミーファイバ33の全長Ldが、第2のダミーファイバ313と前記第2のロングゲージFBGファイバ312の合計の全長2Lの2倍と等しい(Ld=4L)ときには、図7の(B)に示したように、透過光の一部と反射光の一部とが重複する領域は無いので分離できる。
【0030】
ダミーファイバ13の全長Ldが、第2のダミーファイバ313と前記第2のロングゲージFBGファイバ312の合計の全長2Lの2倍より長い(Ld>4L)ときには、図7の(C)に示したように、透過光と反射光とを余裕をもって分離できる。したがって、ダミーファイバ13の全長Ldは、第2のダミーファイバ313と前記第2のロングゲージFBGファイバ312の合計の全長2Lの2倍以上(Ld≧4L)とする必要がある。
このように、相関応答波形上、ダミーファイバの長さLdは、透過光と反射光とを確実に分離するための、透過波形と反射波形間の距離を稼ぐ格好になる。
【0031】
本発明に係る温度及び歪分布計測システムは、歪と温度の両分布を同時に計測可能な方式であり、歪の分布を、温度の分布の影響を排除したかたちで得ることができる。
図8に示したように、異なる距離さを付与した複数のFBGセンサFBG1,FBG2,・・・FBGnとの併用が可能である。
図2に示した温度及び歪分布計測システム40は、実施例1、2、3と同様の構成のDT3Rインタロゲータ44に、実施例1のロングゲージFBGファイバ11と同様に、往路411と復路412とに折り返したロングゲージFBGファイバ41を備え、さらに、前記複数のFBGセンサFBGnを備えたシステムである。
【0032】
前記複数のFBGセンサFBGnは、最初のFBGセンサFBG1と前記DT3Rインタロゲータ44との間には前記ロングゲージFBGファイバ41の往復の全長4Lより長いダミーファイバ431を介在させ、FBGセンサFBG1と次のFBGセンサFBG2の間には分離可能な長さのダミーファイバ432を備え、同様に順次構成したものである。
【0033】
本発明に係る温度及び歪分布計測システムは、疑似ランダム符号を用いたDT3Rインタロゲータにより、リアルタイム応答が可能であり、簡単な構成で小型軽量かつローコストな計測システムの構築が可能となる。
【0034】
DT3RインタロゲータとロングゲージFBGファイバを用いた温度及び歪分布計測システムによる歪および温度分布計測の可能性を考察し、シミュレーションにより検証した。
シミュレーションにより次の結論が確認された。
1) インタロゲータ光入力回路における傾斜フィルタの透過/反射光分離用ダミーファイバ長をFBGファイバ長より長くすることにより、Bragg波長の距離分布計測可能。
2) FBGファイバを折り返し、往路を対象物に全長固定、復路を非固定とし(あるいはその逆)、往復路で温度条件が同一と見做せる場合、前項のスキームと信号処理により、FBGファイバ上の歪と温度を分離して同時に検出することができる。
3) 1GHz以上のチップ速度を用いれば、距離分解能10cm以下を得ることが可能となる。
【0035】
図9に、シミュレーションの条件を示した。なお、シミュレーションは図1の構成で行った。
歪量または歪による波長シフトの距離分布を図10に示した特定に設定。
1μstrain で波長シフト 1pm が生じる設定とした。
温度による波長シフトの距離分布を図11に示したグラフの通り設定。
【0036】
ロングゲージFBGファイバを全長10mと設定し、その全長に渡ってどれだけ減衰するかを考慮してシミュレーションをする。
無損失はロングFBGの至る所で反射が起っても透過光量のロスが0とした場合である。
実際には、ありえない条件であるが、ロングゲージFBGファイバのロスを補償して無損失状態と一致するかを検証するために設定した。
図12のグラフは、先の歪分布と温度分布を合成し、距離に対する反射応答の格好を定義したものである。
【0037】
図13には、反射点までの距離ごとの反射波形のイメージを示す。
本来は連続的に反射が起こるが、透過波形tS+T(歪+温度)、透過波形t*T(温度)、反射波形rS+T(歪+温度)、反射波形r*T(温度)のそれぞれの波形から、境界条件となる部分の波形のみ取り出した。
図の波形では振幅は一定として表示した。
【0038】
図14には、反射波形を積算して得られた受光波形のグラフを示した。
解析手段によって相関処理をすると応答波形は図15に示したようになる。
シミュレーションによる図15のグラフは、図12に示した設定イベントとよく一致していることが確認できる。
【0039】
距離毎に反射・透過比を求めたものが図16に示したグラフである。
透過光損失の影響はこの時点で補償されているが、温度の影響はまだ補正してないので、図10に示した設定値との開きがある。
【0040】
図17は、温度補正を行ったものであり、図10に示した設定値とよく一致していることが確認できる。
以上のシミュレーションの結果、本発明の温度及び歪分布計測システムによれば、ロングゲージFBGファイバにより歪分布と温度分布を同時に計測可能であり、温度による影響を排除した歪分布を計測することも可能であることが確認できた。
【符号の説明】
【0041】
10 温度及び歪分布計測システム
11 ロングゲージFBGファイバ
111 往路
112 復路
12 傾斜フィルタ
13 ダミーファイバ
14 DT3Rインタロゲータ
15 発生手段
16 出射手段
17 光分離手段
18 変換手段
19 解析手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、疑似ランダム符号を用いたインタロゲータとFBGセンサを用いることにより、被測定対象物の歪の分布と温度の分布を同時に計測可能なシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
FBGセンサやBOFセンサ等を用いて温度や歪等をはじめ種々の物理量の変化を観測することの可能な計測システムが、本願発明者の一部等によって既に提案されている。(特許文献1、2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】PCT/JP2009/64582
【特許文献2】特許第4308868号
【0004】
光ファイバによるセンシングは、センサ部に給電不要かつ電磁誘導障害フリーな遠隔計測が可能なことから、多くの分野で用いられている。
光ファイバセンサとしてもっとも普及しているのはFBG(Fiber Bragg Grating:ブラッグ回折格子)である。ファイバコアの長手方向数mm乃至10mmに亘り紫外線照射によって、微小な屈折率の周期構造を形成したセンサデバイスで、ブラッグ波長と呼ばれる特定の波長成分のみを反射する。ブラッグ波長はFBGの温度及び伸縮歪に依存するので、反射スペクトルの変化から温度や歪が検出できるわけである。
FBGセンサ毎の反射スペクトルシフトの検出は、シフト波長帯の異なる複数のFBGを直列に配置したときの、反射光を波長解析によって行なうのが一般的である。
しかし、FBGセンサを用いる方式では、センサ部の定点観測しかできないため、どこで異常が起こるか分からないところでの、温度や歪の異常診断や異常点検知には不向きである。
これに応えるため、従来、FBGなどの光センサを用いず、ファイバ上の温度や歪の連続分布を求めるものとして、ラマンOTDRやブリリュアンOTDRと呼ばれる方式がある。これはファイバの非線形効果によって惹き起されるラマン後方散乱あるいはブリリュアン後方散乱の特性を解析するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物体上の連続的な温度分布はラマンOTDRで、また、連続的な歪分布はブリリュアンOTDRで求めるのが現状、現実的な方法であるが、ブリリュアンOTDRは、温度補償が非常に困難であることが、大きな制約になっている。
一方、市場では、近年、温度と歪両方の分布を同時に計測ないしモニタする需要が多くなってきたが、これが応える実用的な方式はいまだ提案されていない。
従って、本発明の目的は、物体上の温度と歪の連続的な分布を分離して同時に得る手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記課題を解決するために以下のような手段を講じた。
請求項1の発明は、
擬似ランダム符号で変調された出射光を、FBGファイバに送出する光源部と、
FBGファイバから入射する応答光を、透過波形と反射波形とに分離する傾斜フィルタとダミーファイバとからなる光分離手段と、
光分離手段にて分離した透過波形と反射波形を電気信号に変換する変換手段と、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、温度分布計測情報乃至歪分布計測情報を出力する解析手段と
を備えたインタロゲータを用いた温度及び歪分布計測システムであって、
前記FBGセンサは、
全長に亘って一定ピッチのFBGが連続的、もしくは、所要の距離分解能を得るに十分な間隔で断続的に形成されたロングゲージFBGファイバとし、
前記ダミーファイバの長さLdは、前記ロングゲージFBGファイバの長さLの2倍以上の長さに設定され、
前記FBGセンサに沿った温度及び歪分布を計測するように構成されたことを特徴としている。
請求項2の発明は、
前記ロングゲージFBGファイバは、
温度及び歪分布を計測すべき被測定物体の外部もしくは内部に沿って往路と復路に折り返して配置され、
往路もしくは復路の何れか一方は前記被測定物体に固定され、
他方は、前記一方と温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置され、
前記インタロゲータの反射波形解析により、前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測するように構成している。
請求項3の発明は、
前記インタロゲータのファイバ接続端子に2分岐カプラを設け、
前記2分岐カプラの一方の分岐端に長さLなる第1のロングゲージFBGファイバを接続し、
一方の分岐端には長さL以上の第2のダミーファイバを介して長さLなる第2のロングゲージFBGファイバを接続し、
前記ダミーファイバの全長は、前記第2のダミーファイバと前記第2のロングゲージFBGファイバの合計の長さの2倍以上とし、
第1もしくは第2のロングゲージFBGファイバの何れか一方を前記被測定物体に固定し、
他方のロングゲージFBGファイバを、前記一方のロングゲージFBGファイバと温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置し、
前記インタロゲータの反射波形解析により、第1と第2の両ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測するように構成した。
請求項4では、
前記解析手段は、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、固定されていない側の前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布計測情報と、固定されている側の前記ロングゲージFBGファイバ上の歪分布計測情報とを同時に分離して出力し、
前記固定されていない部分のロングゲージFBGファイバの応答光から得られる温度分布計測情報に基づいて、前記固定されている部分のロングゲージFBGファイバの応答光から得られる温度分布と歪分布とが複合した計測情報を補正することによって、温度分布による影響を排除した歪分布計測情報を出力するように構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1では、
全長に亘って一定ピッチのFBGが連続的、もしくは、所要の距離分解能を得るに十分な間隔で断続的に形成されたロングゲージFBGファイバを用い、
前記ダミーファイバの長さLdは、前記ロングゲージFBGファイバの長さLの2倍以上の長さに設定したことによって、
前記FBGセンサに沿った温度及び歪分布を計測することができる。
請求項2では、
前記ロングゲージFBGファイバは、
温度及び歪分布を計測すべき被測定物体の外部もしくは内部に沿って往路と復路に折り返して配置され、
往路もしくは復路の何れか一方は前記被測定物体に固定され、
他方は、前記一方と温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置されているので、
前記インタロゲータの反射波形解析により、前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測することができる。
請求項3では、
前記インタロゲータのファイバ接続端子に2分岐カプラを設け、
前記2分岐カプラの一方の分岐端に長さLなる第1のロングゲージFBGファイバを接続し、
一方の分岐端には長さL以上の第2のダミーファイバを介して長さLなる第2のロングゲージFBGファイバを接続し、
前記ダミーファイバの全長は、前記第2のダミーファイバと前記第2のロングゲージFBGファイバの合計の長さの2倍以上とし、
第1もしくは第2のロングゲージFBGファイバの何れか一方を前記被測定物体に固定し、
他方のロングゲージFBGファイバを、前記一方のロングゲージFBGファイバと温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置し、
前記インタロゲータの反射波形解析により、第1と第2の両ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測するように構成しているので、
前記インタロゲータの反射波形解析により、第1と第2の両ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測することができる。
請求項4では、
前記解析手段は、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、固定されていない側の前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布計測情報と、固定されている側の前記ロングゲージFBGファイバ上の歪分布計測情報とを同時に分離して出力し、
前記固定されていない部分のロングゲージFBGファイバの応答光から得られる温度分布計測情報に基づいて、前記固定されている部分のロングゲージFBGファイバの応答光から得られる温度分布と歪分布とが複合した計測情報を補正することによって、温度分布による影響を排除した歪分布計測情報を出力するように構成したので、
温度分布計測情報と、温度分布による影響を排除した歪分布計測情報とを同時に分離して出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る温度及び歪分布計測システムの実施例1のブロック図である。
【図2】実施例1におけるダミーファイバとロングゲージFBGファイバとの長さの関係を説明する図である。
【図3】実施例1における計測アルゴリズムを示した図である。
【図4】実施例2のブロック図である。
【図5】実施例2におけるダミーファイバとロングゲージFBGファイバとの長さの関係を説明する図である。
【図6】実施例3のブロック図である。
【図7】実施例3におけるダミーファイバとロングゲージFBGファイバとの長さの関係を説明する図である。
【図8】本発明の特徴を説明する図である。
【図9】シミュレーションの設定条件を示す図である。
【図10】シミュレーションの設定条件を示す図である。
【図11】シミュレーションの設定条件を示す図である。
【図12】シミュレーションの設定条件を示す図である。
【図13】シミュレーションによる反射波形のイメージを示す図である。
【図14】シミュレーションの結果を示す図である。
【図15】シミュレーションの結果を示す図である。
【図16】シミュレーションの結果を示す図である。
【図17】シミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、請求項3に対応した実施例1に係る温度及び歪分布計測システムのブロック図であり、
10は温度及び歪分布計測システムであり、
全長に亘って一定ピッチのFBGが連続的、もしくは、所要の距離分解能を得るに十分な間隔で断続的に形成されたロングゲージFBGファイバ11と、
ブラッグ波長シフト解析用の傾斜フィルタ12と透過光及び反射光の時間的分離用のダミーファイバ13を備えたインタロゲータ14と、
より構成されている。
【0011】
前記ロングゲージFBGファイバ11は、
温度及び歪分布を計測すべき被測定物体の外部もしくは内部に沿って、長さLの往路111と、長さLの復路112に折り返して配置され、
往路111は前記被測定物体に固定され、
復路112は、前記往路と温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態(固定されない状態)で配置されている。
前記ダミーファイバ13の長さLdは、前記ロングゲージFBGファイバの全長さ2Lの2倍以上の長さ(4L以上)に設定されている。
なお、往路を固定せずに、復路を固定しても良い。
【0012】
前記インタロゲータ14は、
擬似ランダム符号を発生する発生手段15と、
擬似ランダム符号変調された連続光を、ロングゲージFBGファイバ11に出射する出射手段16と、
ロングゲージFBGファイバ11から入射する応答光を、透過波形と反射波形とに分離する傾斜フィルタ12とダミーファイバ13とからなる光分離手段17と、
光分離手段17にて分離した透過波形と反射波形を電気信号に変換する変換手段18と、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、固定されていない側の前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布計測情報と、固定されている側の前記ロングゲージFBGファイバ上の歪分布計測情報とを同時に分離して出力する解析手段19と
を備えている。
前記インタロゲータ14内のダミーファイバ13上を反射光は片道しか通らないため、透過と反射の距離差は半分のLd/2に見える。したがって、ダミーファイバ13の長さはロングゲージFBGファイバ11の2倍以上に設定する必要がある。(以下同様)
なお、前記インタロゲータは、以下、DT3Rインタロゲータと称する。DT3Rは、Delayed Transmission/Reflection Ratiometric Reflectometryの頭文字に基づいた造語であり、前記インタロゲータを用いた計測方式を、時間差透過/反射比計測方式(DT3R)と称している。
【0013】
前記DT3Rインタロゲータ14は、
前記ロングゲージFBGファイバ11から入射する応答光を解析することにより、前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布(図1の(E)に例示。)と歪分布(図1の(D)に例示。)を同時に分離計測するように構成されている。
【0014】
前記出射手段16は、たとえばSLD(SuperLuminescent Diode)で構成されており、その出射光の波長の範囲は、図1の(A)に例示したように、十分広い波長範囲に設定されている。
前記光分離手段17の傾斜フィルタ12は、図1の(B)に例示したように、透過光と反射光に対して傾斜特性を備えている。
図1の(C)に例示したように、前記傾斜フィルタ12の傾斜特性の波長範囲にブラッグ波長が含まれるように設定されており、その傾斜特性によって、歪み分布や温度分布によるブラッグ波長のシフト量が解析されるように構成されている。
図1の(D)は、前記温度及び歪分布計測システム10によって得られた、長さLの測定領域における歪分布測定結果の一例であり、図1の(E)は、前記温度及び歪分布計測システム10によって得られた温度分布測定結果の一例である。
【0015】
前記光分離手段17に含まれるダミーファイバ13の全長Ldは、前述したように、前記ロングゲージFBGファイバ11の全長2Lの2倍以上の長さに設定されている必要がある。
図2に示したように、相関応答波形は、透過波形(歪+温度)(tS+T)、透過波形(温度)(t*T)、反射波形(歪+温度)(rS+T)、反射波形(温度)(r*T)の順で戻ってくる。
ダミーファイバ13の全長LdがロングゲージFBGファイバ11の全長2Lの2倍未満の場合は、図2の(A)に示したように、透過光の一部と反射光の一部とが重複する領域Dが生じるので、分離できなくなる。
ダミーファイバ13の全長LdがロングゲージFBGファイバ11の全長2Lの2倍と等しいときには、図2の(B)に示したように、透過光の一部と反射光の一部とが重複する領域は無いので分離できる。
ダミーファイバ13の全長LdがロングゲージFBGファイバ11の全長2Lの2倍より長いときには、図2の(C)に示したように、透過光と反射光とを余裕をもって分離できる。したがって、ダミーファイバ13の全長LdはロングゲージFBGファイバ11の全長2Lの2倍以上(Ld≧4L)とする必要がある。
このように、相関応答波形上、ダミーファイバの長さLdは、透過光と反射光とを確実に分離するための、透過波形と反射波形間の距離を稼ぐ格好になる。
【0016】
ロングゲージFBGファイバ11の往路111は、被測定物に固定されているので、被測定物の歪と温度によるブラッグ波長のシフトを生じ、復路112は、被測定物に固定されていないので、被測定物の歪の影響は受けずに、温度によるブラッグ波長のシフトを生じる。
したがって、往路111によって計測された温度分布と歪分布の両方による相関応答波形を、復路によって計測された温度分布のみによる相関応答によって補正することによって、被測定物の測定領域の歪分布だけに対応した相関応答波形を得ることができる。
このように、前記解析手段19は、温度分布による影響を排除した歪分布計測情報を出力することができる。
【0017】
図3に、本発明における計測アルゴリズムを示した。
ロングゲージFBGファイバの全長のうち、DT3Rインタロゲータに近い方の往路が固定され、遠い方の復路が固定されていないので、図2に示したように、相関応答波形は、透過波形 tS+T(歪+温度)、透過波形t*T(温度)、反射波形rS+T(歪+温度)、反射波形r*T(温度)の順で戻ってくる。
ここで*がついている透過波形t*T(温度)、反射波形r*T(温度)は、測定対象物上でDT3Rインタロゲータから遠い方から近い方にFBGが張られているため距離軸が反転している。
ロングゲージFBGファイバが固定された被測定物体の歪量に応じて図3の(1)式のように、ζS+Tが求まる。ただし、ζS+T には温度依存性が含まれている。
ロングゲージFBGファイバの周囲の温度に応じて図3の(2)式のように、ζ*T が求まる。ただし、温度分布は上述の通り距離軸が反転しているため、図3の(3)式のように反転する必要がある。
そして、温度依存性をキャンセルするためには図3の(4)式のように、温度に応じたζTをζS+Tから引けばよい。
【0018】
固定されていない部分のロングゲージFBGファイバ、図1の場合は復路112は、インタロゲータからみて遠い方から近い方にむけて逆向きに設置される。
固定されていない側のロングゲージFBGファイバ(復路112)は、固定されている側のロングゲージFBGファイバ(往路111)とは逆向きに設置されているため、透過波形t*T(温度)と反射波形r*T(温度)は距離軸に対して反転して演算処理する必要がある。
【実施例2】
【0019】
図4は、請求項1に対応した実施例2の構成を示したブロック図である。
実施例2の温度及び歪分布計測システム20では、ロングゲージFBGファイバ21は折り返していないので、図5に示したように、透過波形tと反射波形rとが得られる。
前記温度及び歪分布計測システム20は、
全長に亘って一定ピッチのFBGが連続的、もしくは、所要の距離分解能を得るに十分な間隔で断続的に形成されたロングゲージFBGファイバ21と、
ブラッグ波長シフト解析用の傾斜フィルタ22の透過光及び反射光の時間的分離用のダミーファイバ23の長さLdを、前記ロングゲージFBGファイバ21の長さLの2倍以上の長さに設定したDT3Rインタロゲータ24と、
より構成されている。
【0020】
前記DT3Rインタロゲータ24は、
擬似ランダム符号を発生する発生手段25と、
擬似ランダム符号変調された連続光を、ロングゲージFBGファイバ21に出射する出射手段26と、
ロングゲージFBGファイバ21から入射する応答光を、透過波形と反射波形とに分離する傾斜フィルタ22とダミーファイバ23とからなる光分離手段27と、
光分離手段27にて分離した透過波形と反射波形を電気信号に変換する変換手段28と、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、前記ロングゲージFBGファイバ上21の温度もしくは歪分布計測情報を出力する解析手段29と
を備えている。
前記解析手段29は、前記ロングゲージFBGファイバ21上での温度のバラツキが無い場合もしくはバラツキが少ない場合には、歪分布計測情報を得ることができ、前記ロングゲージFBGファイバ21上での長手方向の歪のバラツキが無い場合もしくはバラツキが少ない場合には、温度分布計測情報を得ることができる。
【0021】
前記出射手段26は、前述したように、たとえばSLDで構成されており、その出射光の波長の範囲は十分広い波長範囲に設定されている。
前記光分離手段27の傾斜フィルタ22は、図1の(B)に例示したように、透過光と反射光に対して傾斜特性を備えている。
また、図1の(C)に例示したように、前記傾斜フィルタ12の傾斜特性の波長範囲にブラッグ波長が含まれるように設定されており、その傾斜特性によって、歪み分布や温度分布によるブラッグ波長のシフト量が解析されるように構成されている。
【0022】
前記ダミーファイバ23の全長LdがロングゲージFBGファイバ21の全長Lの2倍未満の場合は、図5の(A)に示したように、透過光の一部と反射光の一部とが重複する領域Dが生じるので、分離できなくなる。
ダミーファイバ23の全長LdがロングゲージFBGファイバ21の全長Lの2倍と等しいときには、図5の(B)に示したように、透過光の一部と反射光の一部とが重複する領域は無いので分離できる。
ダミーファイバ23の全長LdがロングゲージFBGファイバ21の全長Lの2倍より長いときには、図5の(C)に示したように、透過光と反射光とを余裕をもって分離できる。したがって、ダミーファイバ23の全長LdはロングゲージFBGファイバ21の全長Lの2倍以上(Ld≧2L)とする必要がある。
このように、相関応答波形上、ダミーファイバの長さLdは、透過光と反射光とを確実に分離するための、透過波形と反射波形間の距離を稼ぐ格好になる。
この実施例2は、ロングゲージFBGファイバ21の長手方向に沿った温度分布のバラツキを排除するための温度補償等を考慮しない方式であり、純粋にロングゲージFBGファイバの長手方向に沿った歪の分布を計測する方式である。
【実施例3】
【0023】
図6は、請求項4に対応した実施例3の構成を示したブロック図である。
実施例3の温度及び歪分布計測システム30は、分岐した2本のロングゲージFBGファイバ311、312を備え、一方のロングゲージFBGファイバ312は第2のダミーファイバ313を介して、DT3Rインタロゲータ34に接続されている。
図6に示したように、
前記温度及び歪分布計測システム30は、
前記インタロゲータ34のファイバ接続端子に2分岐カプラ314を設け、
前記2分岐カプラ314の一方の分岐端に長さLなる第1のロングゲージFBGファイバ311を接続し、
一方の分岐端には長さL以上の第2のダミーファイバ313を介して長さLなる第2のロングゲージFBGファイバ312を接続し、
第1もしくは第2のロングゲージFBGファイバの何れか一方(たとえば第1のロングゲージFBGファイバ311)を測定対象の被測定物体に固定し、
他方のロングゲージFBGファイバ(第2のロングゲージFBGファイバ312)を、前記一方のロングゲージFBGファイバと温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置したものである。
前記インタロゲータ34の反射波形解析により、第1と第2の両ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測するように構成されている。
なお、第1のロングゲージFBGファイバを固定せずに、第2のロングゲージFBGファイバを固定しても良い。
【0024】
前記DT3Rインタロゲータ34は、
擬似ランダム符号を発生する発生手段35と、
擬似ランダム符号変調された連続光を、前記分岐カプラ314を介しロングゲージFBGファイバ31に出射する出射手段36と、
ロングゲージFBGファイバ31から前記分岐カプラ314を介して入射する応答光を、透過波形と反射波形とに分離する傾斜フィルタ32とダミーファイバ33とからなる光分離手段37と、
光分離手段37にて分離した透過波形と反射波形を電気信号に変換する変換手段38と、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、温度分布計測情報と歪分布計測情報とを同時に分離して出力する解析手段39と
を備えている。
【0025】
前記DT3Rインタロゲータ34は、
前記ロングゲージFBGファイバ31から入射する応答光を解析することにより、前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布(図1の(E)に例示。)と歪分布(図1の(D)に例示。)を同時に分離計測するように構成されている。
【0026】
前記出射手段36は、前述したように、たとえばSLDで構成されており、その出射光の波長の範囲は十分広い波長範囲に設定されている。
前記光分離手段37の傾斜フィルタ32は、図1の(B)に例示したように、透過光と反射光に対して傾斜特性を備えている。
また、図1の(C)に例示したように、前記傾斜フィルタ32の傾斜特性の波長範囲にブラッグ波長が含まれるように設定されており、その傾斜特性によって、歪み分布や温度分布によるブラッグ波長のシフト量が解析されるように構成されている。
【0027】
前記ダミーファイバ33の全長は、前記第2のダミーファイバ313と前記第2のロングゲージFBGファイバ312の合計の長さの2倍以上とした。
前記解析手段39は、
前記固定されていない側(第2)のロングゲージFBGファイバ312の応答光から得られる温度分布計測情報に基づいて、前記固定されている側(第1)のロングゲージFBGファイバ311の応答光から得られる温度分布と歪分布とが複合した計測情報を補正することによって、温度分布による影響を排除した歪分布計測情報を出力するように構成されている。
【0028】
固定された側の第1のロングゲージFBGファイバ311は被測定物に貼り付け固定されているので、被測定物体の歪の分布と温度の分布に応じた影響を受け、固定されていない側の第2のロングゲージFBGファイバ312は被計測物に固定されていないので、被測定物体の歪の影響は受けずに、温度分布に応じた影響を受ける。
【0029】
この場合、長さLの第2のダミーファイバ313を備えているので、相関応答波形は、図7に示したように、透過波形tS+T(歪+温度)、透過波形tT(温度)、反射波形rS+T(歪+温度)、反射波形rT(温度)の順で戻ってくる。
第1のダミーファイバ33の全長Ldが、第2のダミーファイバ313と前記第2のロングゲージFBGファイバ312の合計の全長2Lの2倍未満(Ld<4L)の場合は、図7の(A)に示したように、透過光の一部と反射光の一部とが重複する領域Dが生じるので、分離できなくなる。
ダミーファイバ33の全長Ldが、第2のダミーファイバ313と前記第2のロングゲージFBGファイバ312の合計の全長2Lの2倍と等しい(Ld=4L)ときには、図7の(B)に示したように、透過光の一部と反射光の一部とが重複する領域は無いので分離できる。
【0030】
ダミーファイバ13の全長Ldが、第2のダミーファイバ313と前記第2のロングゲージFBGファイバ312の合計の全長2Lの2倍より長い(Ld>4L)ときには、図7の(C)に示したように、透過光と反射光とを余裕をもって分離できる。したがって、ダミーファイバ13の全長Ldは、第2のダミーファイバ313と前記第2のロングゲージFBGファイバ312の合計の全長2Lの2倍以上(Ld≧4L)とする必要がある。
このように、相関応答波形上、ダミーファイバの長さLdは、透過光と反射光とを確実に分離するための、透過波形と反射波形間の距離を稼ぐ格好になる。
【0031】
本発明に係る温度及び歪分布計測システムは、歪と温度の両分布を同時に計測可能な方式であり、歪の分布を、温度の分布の影響を排除したかたちで得ることができる。
図8に示したように、異なる距離さを付与した複数のFBGセンサFBG1,FBG2,・・・FBGnとの併用が可能である。
図2に示した温度及び歪分布計測システム40は、実施例1、2、3と同様の構成のDT3Rインタロゲータ44に、実施例1のロングゲージFBGファイバ11と同様に、往路411と復路412とに折り返したロングゲージFBGファイバ41を備え、さらに、前記複数のFBGセンサFBGnを備えたシステムである。
【0032】
前記複数のFBGセンサFBGnは、最初のFBGセンサFBG1と前記DT3Rインタロゲータ44との間には前記ロングゲージFBGファイバ41の往復の全長4Lより長いダミーファイバ431を介在させ、FBGセンサFBG1と次のFBGセンサFBG2の間には分離可能な長さのダミーファイバ432を備え、同様に順次構成したものである。
【0033】
本発明に係る温度及び歪分布計測システムは、疑似ランダム符号を用いたDT3Rインタロゲータにより、リアルタイム応答が可能であり、簡単な構成で小型軽量かつローコストな計測システムの構築が可能となる。
【0034】
DT3RインタロゲータとロングゲージFBGファイバを用いた温度及び歪分布計測システムによる歪および温度分布計測の可能性を考察し、シミュレーションにより検証した。
シミュレーションにより次の結論が確認された。
1) インタロゲータ光入力回路における傾斜フィルタの透過/反射光分離用ダミーファイバ長をFBGファイバ長より長くすることにより、Bragg波長の距離分布計測可能。
2) FBGファイバを折り返し、往路を対象物に全長固定、復路を非固定とし(あるいはその逆)、往復路で温度条件が同一と見做せる場合、前項のスキームと信号処理により、FBGファイバ上の歪と温度を分離して同時に検出することができる。
3) 1GHz以上のチップ速度を用いれば、距離分解能10cm以下を得ることが可能となる。
【0035】
図9に、シミュレーションの条件を示した。なお、シミュレーションは図1の構成で行った。
歪量または歪による波長シフトの距離分布を図10に示した特定に設定。
1μstrain で波長シフト 1pm が生じる設定とした。
温度による波長シフトの距離分布を図11に示したグラフの通り設定。
【0036】
ロングゲージFBGファイバを全長10mと設定し、その全長に渡ってどれだけ減衰するかを考慮してシミュレーションをする。
無損失はロングFBGの至る所で反射が起っても透過光量のロスが0とした場合である。
実際には、ありえない条件であるが、ロングゲージFBGファイバのロスを補償して無損失状態と一致するかを検証するために設定した。
図12のグラフは、先の歪分布と温度分布を合成し、距離に対する反射応答の格好を定義したものである。
【0037】
図13には、反射点までの距離ごとの反射波形のイメージを示す。
本来は連続的に反射が起こるが、透過波形tS+T(歪+温度)、透過波形t*T(温度)、反射波形rS+T(歪+温度)、反射波形r*T(温度)のそれぞれの波形から、境界条件となる部分の波形のみ取り出した。
図の波形では振幅は一定として表示した。
【0038】
図14には、反射波形を積算して得られた受光波形のグラフを示した。
解析手段によって相関処理をすると応答波形は図15に示したようになる。
シミュレーションによる図15のグラフは、図12に示した設定イベントとよく一致していることが確認できる。
【0039】
距離毎に反射・透過比を求めたものが図16に示したグラフである。
透過光損失の影響はこの時点で補償されているが、温度の影響はまだ補正してないので、図10に示した設定値との開きがある。
【0040】
図17は、温度補正を行ったものであり、図10に示した設定値とよく一致していることが確認できる。
以上のシミュレーションの結果、本発明の温度及び歪分布計測システムによれば、ロングゲージFBGファイバにより歪分布と温度分布を同時に計測可能であり、温度による影響を排除した歪分布を計測することも可能であることが確認できた。
【符号の説明】
【0041】
10 温度及び歪分布計測システム
11 ロングゲージFBGファイバ
111 往路
112 復路
12 傾斜フィルタ
13 ダミーファイバ
14 DT3Rインタロゲータ
15 発生手段
16 出射手段
17 光分離手段
18 変換手段
19 解析手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
擬似ランダム符号で変調された出射光を、FBGファイバに送出する光源部と、
FBGファイバから入射する応答光を、透過波形と反射波形とに分離する傾斜フィルタとダミーファイバとからなる光分離手段と、
光分離手段にて分離した透過波形と反射波形を電気信号に変換する変換手段と、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、温度分布計測情報及び歪分布計測情報を出力する解析手段と
を備えたインタロゲータを用いた温度及び歪分布計測システムであって、
前記FBGセンサは、
全長に亘って一定ピッチのFBGが連続的、もしくは、所要の距離分解能を得るに十分な間隔で断続的に形成されたロングゲージFBGファイバとし、
前記ダミーファイバの長さLdは、前記ロングゲージFBGファイバの長さLの2倍以上の長さに設定され、
前記FBGセンサに沿った温度乃至歪分布を計測するように構成されたことを特徴とする温度及び歪分布計測システム。
【請求項2】
前記ロングゲージFBGファイバは、
温度及び歪分布を計測すべき被測定物体の外部もしくは内部に沿って往路と復路に折り返して配置され、
往路もしくは復路の何れか一方は前記被測定物体に固定され、
他方は、前記一方と温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置され、
前記インタロゲータの反射波形解析により、前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測するように構成した請求項1に記載の温度及び歪分布計測システム。
【請求項3】
前記インタロゲータのファイバ接続端子に2分岐カプラを設け、
前記2分岐カプラの一方の分岐端に長さLなる第1のロングゲージFBGファイバを接続し、
一方の分岐端には長さL以上の第2のダミーファイバを介して長さLなる第2のロングゲージFBGファイバを接続し、
前記ダミーファイバの全長は、前記第2のダミーファイバと前記第2のロングゲージFBGファイバの合計の長さの2倍以上とし、
第1もしくは第2のロングゲージFBGファイバの何れか一方を前記被測定物体に固定し、
他方のロングゲージFBGファイバを、前記一方のロングゲージFBGファイバと温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置し、
前記インタロゲータの反射波形解析により、第1と第2の両ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測するように構成した請求項1に記載の温度及び歪分布計測システム。
【請求項4】
前記解析手段は、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、固定されていない側の前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布計測情報と、固定されている側の前記ロングゲージFBGファイバ上の歪分布計測情報とを同時に分離して出力し、
前記固定されていない部分のロングゲージFBGファイバの応答光から得られる温度分布計測情報に基づいて、前記固定されている部分のロングゲージFBGファイバの応答光から得られる温度分布と歪分布とが複合した計測情報を補正することによって、温度分布による影響を排除した歪分布計測情報を出力することを特徴とする請求項2または3の何れか1項に記載の温度及び歪分布計測システム。
【請求項1】
擬似ランダム符号で変調された出射光を、FBGファイバに送出する光源部と、
FBGファイバから入射する応答光を、透過波形と反射波形とに分離する傾斜フィルタとダミーファイバとからなる光分離手段と、
光分離手段にて分離した透過波形と反射波形を電気信号に変換する変換手段と、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、温度分布計測情報及び歪分布計測情報を出力する解析手段と
を備えたインタロゲータを用いた温度及び歪分布計測システムであって、
前記FBGセンサは、
全長に亘って一定ピッチのFBGが連続的、もしくは、所要の距離分解能を得るに十分な間隔で断続的に形成されたロングゲージFBGファイバとし、
前記ダミーファイバの長さLdは、前記ロングゲージFBGファイバの長さLの2倍以上の長さに設定され、
前記FBGセンサに沿った温度乃至歪分布を計測するように構成されたことを特徴とする温度及び歪分布計測システム。
【請求項2】
前記ロングゲージFBGファイバは、
温度及び歪分布を計測すべき被測定物体の外部もしくは内部に沿って往路と復路に折り返して配置され、
往路もしくは復路の何れか一方は前記被測定物体に固定され、
他方は、前記一方と温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置され、
前記インタロゲータの反射波形解析により、前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測するように構成した請求項1に記載の温度及び歪分布計測システム。
【請求項3】
前記インタロゲータのファイバ接続端子に2分岐カプラを設け、
前記2分岐カプラの一方の分岐端に長さLなる第1のロングゲージFBGファイバを接続し、
一方の分岐端には長さL以上の第2のダミーファイバを介して長さLなる第2のロングゲージFBGファイバを接続し、
前記ダミーファイバの全長は、前記第2のダミーファイバと前記第2のロングゲージFBGファイバの合計の長さの2倍以上とし、
第1もしくは第2のロングゲージFBGファイバの何れか一方を前記被測定物体に固定し、
他方のロングゲージFBGファイバを、前記一方のロングゲージFBGファイバと温度条件が等しく、かつ被測定物体の歪の影響を受けない状態で配置し、
前記インタロゲータの反射波形解析により、第1と第2の両ロングゲージFBGファイバ上の温度分布と歪分布を同時に分離計測するように構成した請求項1に記載の温度及び歪分布計測システム。
【請求項4】
前記解析手段は、
前記擬似ランダム符号と前記応答光との相関処理により、固定されていない側の前記ロングゲージFBGファイバ上の温度分布計測情報と、固定されている側の前記ロングゲージFBGファイバ上の歪分布計測情報とを同時に分離して出力し、
前記固定されていない部分のロングゲージFBGファイバの応答光から得られる温度分布計測情報に基づいて、前記固定されている部分のロングゲージFBGファイバの応答光から得られる温度分布と歪分布とが複合した計測情報を補正することによって、温度分布による影響を排除した歪分布計測情報を出力することを特徴とする請求項2または3の何れか1項に記載の温度及び歪分布計測システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−72701(P2013−72701A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211009(P2011−211009)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【出願人】(392026497)株式会社渡辺製作所 (9)
【出願人】(506271360)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【出願人】(392026497)株式会社渡辺製作所 (9)
【出願人】(506271360)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]