説明

温度検出装置、定着装置および画像形成装置

【課題】応答性能を悪化させずに、安定性能を向上できる温度検出装置を提供する。
【解決手段】加圧サーミスタ26は、保持部262と、この保持部262の下面に両面が露出するように保持されるフィルム263と、このフィルム263の他面263bに取り付けられる感熱素子264とを有する。上記フィルム263の一面263aは、粗面である。したがって、上記フィルム263の上記一面263aにおいて加圧ローラ20からの熱の反射を抑えられると共に、上記フィルム263の上記一面263aの表面積が大きくなって、上記フィルム263の上記一面263aにおいて上記加圧ローラ20からの熱の吸収性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、複写機、レーザプリンタやファクシミリ等に用いられる非接触型の温度検出装置、この温度検出装置を用いた定着装置、および、この定着装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着ローラの温度を検出する非接触温度センサとしては、保持部と、この保持部に両面が露出するように取り付けられた樹脂フィルムと、この樹脂フィルムの一面に取り付けられた感熱素子とを備えたものがある(特開平11−223555号公報:特許文献1参照)。
【0003】
ここで、上記定着ローラの表面を定着可能な温度に昇温する動作(以下、ウォームアップという)にかかる時間を短縮しようとすると、上記定着ローラの昇温に対する上記温度センサの応答性能を向上させると共に、上記定着ローラとの距離公差や環境の影響により発生する検出温度のバラツキを抑えて上記温度センサの安定性能を向上させる必要がある。
【0004】
そして、上記温度センサの応答性能および安定性能を向上させるためには、上記樹脂フィルムの熱吸収率を大きくし、上記樹脂フィルムの熱放射率を小さくするなど、上記樹脂フィルムの熱吸収特性を向上させることで実現できる。
【0005】
そこで、上記樹脂フィルムにおける膜厚と熱吸収率との関係から、上記樹脂フィルムの膜厚を厚くして、熱の透過率を減らし、熱の吸収率を増やすことが考えられる。
【0006】
しかしながら、上記樹脂フィルムの膜厚を厚くすると、上記樹脂フィルムの熱容量が増えて、上記温度センサの応答性能が悪化する。
【特許文献1】特開平11−223555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明の課題は、応答性能を悪化させずに、安定性能を向上できる温度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の温度検出装置は、
被検出体の温度を非接触で検出する温度検出装置であって、
保持部と、
この保持部に両面が露出するように保持されるフィルムと、
このフィルムの一面または他面に取り付けられると共に上記被検出体の温度を検知する感熱素子と
を備え、
上記被検出体に対向する面となる上記フィルムの上記一面は、粗面であることを特徴としている。
【0009】
この発明の温度検出装置によれば、上記被検出体に対向する面となる上記フィルムの上記一面は、粗面であるので、上記フィルムの上記一面において上記被検出体からの熱の反射を抑えられると共に、上記フィルムの上記一面の表面積が大きくなって、上記フィルムの上記一面において上記被検出体からの熱の吸収性を向上できる。
【0010】
したがって、上記フィルムの膜厚を厚くしないで上記フィルムの熱吸収特性を向上できるので、上記被検出体の昇温に対する応答性能を悪化させずに、上記被検出体との距離公差や環境の影響により発生する検出温度のバラツキを抑えて安定性能を向上できる。
【0011】
また、一実施形態の温度検出装置では、上記フィルムは、カーボンを含有することを特徴としている。
【0012】
この実施形態の温度検出装置によれば、上記フィルムは、カーボンを含有するので、上記フィルムを黒色にできて、上記被検出体からの熱の反射を抑えて、上記被検出体からの熱の吸収性を一層向上できる。
【0013】
また、一実施形態の温度検出装置では、上記被検出体に対向する面と反対側の面となる上記フィルムの上記他面は、金属膜を有する。
【0014】
この実施形態の温度検出装置によれば、上記被検出体に対向する面と反対側の面となる上記フィルムの上記他面は、金属膜を有するので、上記被検出体から上記フィルムに吸収された熱は、熱放射率の小さな上記金属膜によって、上記フィルムの上記他面から、放射され難くなって、上記被検出体からの熱の吸収性を一層向上できる。
【0015】
また、この発明の温度検出装置は、
被検出体の温度を非接触で検出する温度検出装置であって、
保持部と、
この保持部に両面が露出するように保持されるフィルムと、
このフィルムの一面または他面に取り付けられると共に上記被検出体の温度を検知する感熱素子と
を備え、
上記被検出体に対向する面と反対側の面となる上記フィルムの上記他面は、金属膜を有することを特徴としている。
【0016】
この発明の温度検出装置によれば、上記被検出体に対向する面と反対側の面となる上記フィルムの上記他面は、金属膜を有するので、上記被検出体から上記フィルムに吸収された熱は、熱放射率の小さな上記金属膜によって、上記フィルムの上記他面から、放射され難くなって、上記被検出体からの熱の吸収性を向上できる。
【0017】
したがって、上記フィルムの膜厚を厚くしないで上記フィルムの熱吸収特性を向上できるので、上記被検出体の昇温に対する応答性能を悪化させずに、上記被検出体との距離公差や環境の影響により発生する検出温度のバラツキを抑えて安定性能を向上できる。
【0018】
また、この発明の温度検出装置は、
被検出体の温度を非接触で検出する温度検出装置であって、
保持部と、
この保持部に両面が露出するように保持されるフィルムと、
このフィルムの一面または他面に取り付けられると共に上記被検出体の温度を検知する感熱素子と
を備え、
上記被検出体に対向する面となる上記フィルムの上記一面の熱吸収率は、上記被検出体に対向する面と反対側の面となる上記フィルムの上記他面の熱吸収率よりも、高いことを特徴としている。
【0019】
この発明の温度検出装置によれば、上記被検出体に対向する面となる上記フィルムの上記一面の熱吸収率は、上記被検出体に対向する面と反対側の面となる上記フィルムの上記他面の熱吸収率よりも、高いので、上記フィルムの上記一面において上記被検出体からの熱の吸収性を向上できると共に、上記フィルムの上記他面において上記フィルムの上記他面側の環境の影響(温度変化)を受けにくい。
【0020】
したがって、上記フィルムの膜厚を厚くしないで上記フィルムの熱吸収特性を向上できるので、上記被検出体の昇温に対する応答性能を悪化させずに、上記被検出体との距離公差や環境の影響により発生する検出温度のバラツキを抑えて安定性能を向上できる。
【0021】
また、この発明の定着装置は、
互いに接触して記録材を搬送しつつこの記録材のトナーを定着させる一対の回転体と、
少なくとも一方の回転体を加熱する加熱部と、
少なくとも一方の回転体の表面温度をこの回転体の表面から離隔した位置で検出する上記温度検出装置と
を備えていることを特徴としている。
【0022】
この発明の定着装置によれば、上記温度検出装置を備えているので、上記温度検出装置の応答性能および安定性能は、優れており、上記回転体の表面温度を定着可能な温度に昇温する動作(以下、ウォームアップという)にかかる時間を短縮できる。
【0023】
また、この発明の画像形成装置は、
記録材に未定着のトナーを付着して画像を形成する作像装置と、
上記トナーを溶融して上記記録材に定着させる上記定着装置と
を備えていることを特徴としている。
【0024】
この発明の画像形成装置によれば、上記定着装置を備えているので、ウォームアップ時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0025】
この発明の温度検出装置によれば、上記被検出体に対向する面となる上記フィルムの上記一面は、粗面であり、または、上記フィルムは、カーボンを含有し、または、上記被検出体に対向する面と反対側の面となる上記フィルムの上記他面は、金属膜を有し、または、上記被検出体に対向する面となる上記フィルムの上記一面の熱吸収率は、上記被検出体に対向する面と反対側の面となる上記フィルムの上記他面の熱吸収率よりも、高いので、応答性能を悪化させずに、安定性能を向上できる。
【0026】
また、この発明の定着装置によれば、上記温度検出装置を備えているので、ウォームアップにかかる時間を短縮できる。
【0027】
また、この発明の画像形成装置によれば、上記定着装置を備えているので、ウォームアップ時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
図1は、この発明の定着装置の第1の実施形態である簡略構成図を示している。この定着装置は、加熱側回転体1および加圧側回転体2を有する。上記加熱側回転体1は、加熱部としての加熱側ヒータ15によって、加熱され、上記加圧側回転体2は、加熱部としての加圧側ヒータ25によって、加熱される。
【0030】
そして、この一対の回転体1,2は、互いに接触して記録材Sを搬送しつつこの記録材Sのトナーtを定着させる。具体的に述べると、上記加熱側回転体1と上記加圧側回転体2との接触によりニップ部を形成し、このニップ部によって、上記記録材Sの上記トナーtを溶融して定着しつつ上記記録材Sを搬送する。
【0031】
上記記録材Sは、例えば、用紙やOHPシートなどのシートである。この記録材Sの一面には、トナーtが付着され、このトナーtは、例えば、樹脂、磁性体または着色料などの加熱溶融性を有する材料からなる。
【0032】
上記加熱側回転体1は、加熱ローラ11と、バックアップ部材13と、上記加熱ローラ11と上記バックアップ部材13とに架け回されるベルト12とを備える。
【0033】
この加熱ローラ11は、例えばアルミ等の芯金である。この加熱ローラ11の外径は、例えば、30mmである。
【0034】
上記ベルト12は、内側から外側に、基材層、弾性層および離型層を有する。上記基材層は、例えば、アルミ、鉄またはポリイミドなどの強度を有する材料からなる。上記弾性層は、例えば、ゴム、樹脂またはシリコンゴムなどの耐熱性および弾性を有する材料からなる。上記離型層は、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、PFA、PTFE、FEPまたはPFEPなどの離型性および耐熱性を有する材料からなる。上記ベルト12は、例えば、内側から外側に、外径50mmで厚さ70μmのポリイミドと、厚さ200μmのシリコンゴムと、厚さ20μmのPFAチューブとを有する。
【0035】
上記バックアップ部材13は、上記ベルト12との接触面の摩擦係数が小さく、例えば、樹脂からなる。上記バックアップ部材13は、上記ベルト12を介して、上記加圧側回転体2と接触して上記ニップ部を形成する。このニップ部を形成する上記バックアップ部材13の外面は、凹状に形成されている。上記パックアップ部材13は、例えば、厚さが4mmで、上記ベルト12の回転方向の幅が12mmである。上記凹状の外面の曲率半径は、15.4mmである。
【0036】
上記バックアップ部材13には、上記バックアップ部材13を内側から支持する補強部材14が設けられている。この補強部材14は、例えば、ステンレスからなる。
【0037】
上記加圧側回転体2は、加圧ローラ20である。この加圧ローラ20は、径方向の内側から外側に、支持層21、弾性層22および離型層23を有する。上記支持層21は、例えば、外径30mmの鉄製芯金である。上記弾性層22は、例えば、シリコンゴムである。上記離型層23は、例えば、厚さ30μmのPFA等のフッ素系樹脂である。上記加圧ローラ20は、図示しないモータ等の駆動部によって、回転され、上記ベルト12は、上記加圧ローラ20との摩擦によって、上記加圧ローラ20の回転に従動して回転する。
【0038】
上記加圧ローラ20は、上記バックアップ部材13に対して、100〜530Nの荷重で加圧されている。この場合、上記ニップ部の幅寸法(上記加圧ローラ20の回転方向の寸法)は、約9mmになる。上記ニップ部の長さ寸法(上記加圧ローラ20の回転軸方向の寸法)は、約240mmになる。もちろん、上記荷重を変化させて、上記ニップ部の幅寸法や長さ寸法を変えてもよい。
【0039】
上記加熱側ヒータ15は、上記加熱ローラ11の内側に配置され、上記加熱ローラ11を内側から、上記加熱ローラ11および上記ベルト12を加熱する。上記加圧側ヒータ25は、上記加圧ローラ20の内側に配置され、上記加圧ローラ20を内側から加熱する。上記ヒータ15,25は、例えば、上記ベルト12および上記加圧ローラ20を、上記記録材Sのトナーtを定着可能な温度に上昇させる。
【0040】
上記加熱ローラ11の外側には、加熱サーミスタ16が設けられている。この加熱サーミスタ16は、上記加熱ローラ11の表面に接触して、上記加熱ローラ11の表面温度を検出する。
【0041】
上記加圧ローラ20の外側には、温度検出装置としての加圧サーミスタ26が設けられている。この加圧サーミスタ26は、被検出体としての上記加圧ローラ20の表面から離隔した位置で、上記加圧ローラ20の表面温度を検出する。
【0042】
ここで、上記加圧サーミスタ26は、非接触型センサであるので、上記加圧ローラ20の表面を傷付けず、上記加圧ローラ20の耐久性を向上でき、かつ、画像ノイズを防止できる。
【0043】
上記加熱ローラ11および上記加圧ローラ20は、それぞれ、図示しない制御部によって、上記加熱サーミスタ16および上記加圧サーミスタ26の出力に基づいて、所定の温度を維持するように制御される。
【0044】
図2Aと図2Bに示すように、上記加圧サーミスタ26は、上記加圧ローラ20が取り付けられているケーシング5に取り付けられている。上記加圧サーミスタ26は、上記加圧ローラ20に対向する温度検出面260を有する。上記加圧サーミスタ26は、上記加圧ローラ20の長手方向の中央部に配置されている。なお、上記加圧サーミスタ26を上記加圧ローラ20の端部に配置してもよい。
【0045】
上記加圧サーミスタ26は、上記ケーシング5に取り付けられる取付部261と、この取付部261に固定される枠状の保持部262と、この保持部262の下面に両面が露出するように保持されるフィルム263と、このフィルム263の他面263b(上面)に取り付けられる感熱素子264と、この感熱素子264を上面から覆う集熱部265とを有する。
【0046】
ここで、上記保持部262の下面側とは、上記加圧ローラ20側をいう。また、上記フィルム263の一面263aとは、上記加圧ローラ20に対向する面をいい、上記フィルム263の他面263bとは、上記加圧ローラ20に対向する面と反対側の面をいう。つまり、上記フィルム263の上記一面263aは、上記温度検出面260に相当する。
【0047】
上記集熱部265は、上記感熱素子264を上記フィルム263に固定する。上記集熱部265は、上記加圧ローラ20からの熱を集熱して上記感熱素子264に伝導する。
【0048】
上記フィルム263は、ポリイミド等の樹脂からなり、耐熱性を有する。上記フィルム263の厚さは、例えば、25μmである。
【0049】
上記フィルム263の上記一面263aは、粗面である。上記フィルム263の上記一面263aは、上記フィルム263の上記他面263bよりも、粗い。具体的に述べると、上記フィルム263の上記一面263aのRz(十点平均粗さ)は、1.0μm〜5.0μmの範囲にある。
【0050】
したがって、上記構成の加圧サーミスタ26によれば、上記加圧ローラ20に対向する面となる上記フィルム263の上記一面263aは、粗面であるので、上記フィルム263の上記一面263aにおいて上記加圧ローラ20からの熱の反射を抑えられると共に、上記フィルム263の上記一面263aの表面積が大きくなって、上記フィルム263の上記一面263aにおいて上記加圧ローラ20からの熱の吸収性を向上できる。
【0051】
要するに、上記フィルム263の膜厚を厚くしないで上記フィルム263の熱吸収特性を向上できるので、上記加圧ローラ20の昇温に対する応答性能を悪化させずに、上記加圧ローラ20との距離公差や環境の影響により発生する検出温度のバラツキを抑えて安定性能を向上できる。
【0052】
なお、上記フィルム263の上記一面263aのRzが、1.0μmよりも小さいと、安定性能を向上できない。一方、上記フィルム263の上記一面263aのRzが、5.0μmよりも大きいと、粗すぎて、上記フィルム263の上記一面263aの全面において上記加圧ローラ20との間の距離にバラツキが生じる。
【0053】
ここで、フィルム263と加圧ローラ20との間の距離を2mm±0.3mmに設定して、Rzが0.15μmであるときの加圧サーミスタ26の温度ズレ幅と、Rzが1.5μmであるときの加圧サーミスタ26の温度ズレ幅とを比べる実験をしたとき、Rzが0.15μmであるときの温度ズレ幅は、±7.8℃となるのに対して、Rzが1.5μmであるときの温度ズレ幅は、±7.0℃となって、加圧サーミスタ26の安定性能が向上したことが分かる。
【0054】
次に、この定着装置の作用を、図1を用いて、説明する。
【0055】
まず、定着装置の温度調整を行う。つまり、上記ベルト12の表面および上記加圧ローラ20の表面を定着可能な温度に昇温する動作(以下、ウォームアップという)を行う。
【0056】
ここで、このウォームアップとは、装置の電源を入れた直後、ジャム処理復帰時、装置のカバーを開閉したとき、または、スリープモード復帰時等に行われる。
【0057】
上記加熱側ヒータ15および上記加圧側ヒータ25を点灯して、上記ベルト12および上記加圧ローラ20の表面温度を上昇させる。
【0058】
上記加圧ローラ20は、上記支持層21および上記弾性層22が厚く、上記加圧側ヒータ25のみでは、短時間で、上記加圧ローラ20の表面迄温めることができない。また、上記加熱側ヒータ15は、上記加熱ローラ11と上記ベルト12の一部分しか温めることができない。
【0059】
そこで、上記加圧ローラ20を回転させて、上記ベルト12と上記加熱ローラ11を従動回転させることで、上記加熱ローラ11の熱を、上記ベルト12の全体と上記加圧ローラ20の表面に伝える。
【0060】
このように、上記ヒータ15,25の点灯と、上記ベルト12および上記加熱ローラ11の回転とにより、より短時間で、上記ベルト12の表面および上記加圧ローラ20の表面を、定着可能な温度に上昇できる。
【0061】
ここで、上記加圧サーミスタ26による検出温度をT、補正係数をR、補正後温度をT’としたとき、T’=R×Tの関係を満たす。そして、温度調整に関する制御は、この補正後温度T’を用いる。
【0062】
上記加熱サーミスタ16により検出された温度と、上記加圧サーミスタ26により検出された補正後温度T’とが、所定の温度になれば、定着可能であることを示すレディを、示す。例えば、上記加熱サーミスタ16による検出温度が190℃であり、上記加圧サーミスタ26による上記補正後温度T’が120℃であるときに、レディを示す。
【0063】
そして、印字信号がなければ、印字待機状態になる一方、印字信号があれば、印字動作を開始する。ここで、印字とは、この定着装置をプリンタに用いた場合にこのプリンタによる印字をいう。
【0064】
待機状態では、通常、上記ベルト12および上記加圧ローラ20の回転を停止し、上記ベルト12および上記加圧ローラ20が所定の設定温度になるように、上記ヒータ15,25を制御する。
【0065】
印字時は、印字開始から、上記定着装置に上記記録材Sが突入する前に、上記ベルト12および上記加圧ローラ20を回転することにより、上記加熱ローラ11の熱を、上記ベルト12や上記加圧ローラ20に伝導させて、上記加圧ローラ20の温度を上昇させる。
【0066】
次に、上記定着装置によって上記記録材Sの上記トナーtの定着を行う。上記ベルト12と上記加圧ローラ20との接触により形成される上記ニップ部に、上記記録材Sを送り込む。この記録材Sの一面には、未定着の上記トナーtが付着している。
【0067】
上記ニップ部にて、上記記録材Sの上記一面を押圧しつつ加熱して、上記未定着のトナーtを溶融して定着させる。同時に、上記加圧ローラ20の回転によって、上記記録材Sの他面に搬送力を付与して、上記記録材Sを搬送する。このとき、上記ベルト12は、上記記録材Sの搬送に従動して、回転する。
【0068】
上記構成の定着装置によれば、上記構成の加圧サーミスタ26を備えているので、上記加圧サーミスタ26の応答性能および安定性能は、優れており、ウォームアップにかかる時間を短縮できる。
【0069】
言い換えると、ウォームアップ時間を短縮することによって、上記加圧ローラ20が、短時間に昇温しても、上記加圧サーミスタ26は、上記加圧ローラ20の温度を応答性よく検出することができて、例えば、上記加圧ローラ20の過昇温を防止できる。この加圧ローラ20の過昇温を防止することで、上記記録材Sの定着の品質性、上記加圧ローラ20の耐久性、および、上記加圧ローラ20の安全性を確保できる。
【0070】
(第2の実施形態)
図3は、この発明の温度検出装置の第2の実施形態を示している。この第2の実施形態では、上記第1の実施形態(図2B)と比較すると、温度検出装置としての加圧サーミスタの形状が相違する。
【0071】
つまり、この第2の実施形態の加圧サーミスタ126では、上記フィルム263は、上記保持部262の上面に、保持されている。したがって、上記フィルム263は、上記保持部262から、剥がれにくくなる。なお、図示しないが、上記フィルム263の上記一面263aは、粗面である。
【0072】
(第3の実施形態)
図4は、この発明の温度検出装置の第3の実施形態を示している。この第3の実施形態では、上記第1の実施形態(図2B)と比較すると、温度検出装置としての加圧サーミスタの形状が相違する。
【0073】
つまり、この第3の実施形態の加圧サーミスタ226では、上記感熱素子264は、上記フィルム263の上記一面263aに、取り付けられている。したがって、上記感熱素子264は、上記加圧ローラ20から直接に、熱を受けることができる。なお、図示しないが、上記フィルム263の上記一面263aは、粗面である。
【0074】
(第4の実施形態)
図5は、この発明の温度検出装置の第4の実施形態を示している。この第4の実施形態では、上記第2の実施形態(図3)と比較すると、温度検出装置としての加圧サーミスタの形状が相違する。
【0075】
つまり、この第4の実施形態の加圧サーミスタ326では、上記フィルム263は、上記保持部262の上面に、保持されている。したがって、上記フィルム263は、上記保持部262から、剥がれにくくなる。なお、図示しないが、上記フィルム263の上記一面263aは、粗面である。
【0076】
(第5の実施形態)
図6は、この発明の温度検出装置の第5の実施形態を示している。この第5の実施形態では、上記第1の実施形態(図2B)と比較すると、温度検出装置としての加圧サーミスタの形状が相違する。
【0077】
つまり、この第5の実施形態の加圧サーミスタ426では、フィルム1263は、カーボンを含有する。したがって、上記フィルム1263を黒色にできて、上記フィルム1263の一面1263aにおいて、上記加圧ローラ20からの熱の反射を抑えて、上記加圧ローラ20からの熱の吸収性を一層向上できる。
【0078】
また、上記フィルム1263の上記一面1263aは、上記第1の実施形態(図2B)と同様に、粗面であり、この第5の実施形態では、上記第1の実施形態と同様の効果も有する。
【0079】
なお、上記感熱素子264を、上記フィルム1263の他面1263bに、取り付けているが、上記フィルム1263の上記一面1263aに、取り付けてもよい。また、上記フィルム1263を、上記保持部262の上面に、取り付けてもよい。
【0080】
(第6の実施形態)
図7は、この発明の温度検出装置の第6の実施形態を示している。この第6の実施形態では、上記第1の実施形態(図2B)と比較すると、温度検出装置としての加圧サーミスタの形状が相違する。
【0081】
つまり、この第6の実施形態の加圧サーミスタ526では、上記加圧ローラ20に対向する面と反対側の面となるフィルム2263の他面2263bは、金属膜266を有する。上記フィルム2263の一面2263aは、平面である。
【0082】
上記金属膜266は、例えば、アルミからなる。上記金属膜266は、例えば、アルミテープやアルミ蒸着により、形成される。上記金属膜266の熱放射率は、小さい。具体的に述べると、上記金属膜266としてのアルミの赤外放射率は、0.03であるのに対して、上記フィルム2263としてのポリイミドの赤外放射率は、0.65である。
【0083】
したがって、上記加圧ローラ20から上記フィルム2263に吸収された熱は、熱放射率の小さな上記金属膜266によって、上記フィルム2263の上記他面2263bから、放射され難くなって、上記加圧ローラ20からの熱の吸収性を向上できる。
【0084】
要するに、上記フィルム2263の膜厚を厚くしないで上記フィルム2263の熱吸収特性を向上できるので、上記加圧ローラ20の昇温に対する応答性能を悪化させずに、上記加圧ローラ20との距離公差や環境の影響により発生する検出温度のバラツキを抑えて安定性能を向上できる。
【0085】
(第7の実施形態)
図8は、この発明の温度検出装置の第7の実施形態を示している。この第7の実施形態では、上記第1の実施形態(図2B)と比較すると、温度検出装置としての加圧サーミスタの形状が相違する。
【0086】
つまり、この第7の実施形態の加圧サーミスタ626では、フィルム263の他面263bは、上記第6の実施形態(図7)の金属膜266を有している。したがって、上記加圧ローラ20から上記フィルム263に吸収された熱は、熱放射率の小さな上記金属膜266によって、上記フィルム263の上記他面263bから、放射され難くなって、上記加圧ローラ20からの熱の吸収性を一層向上できる。
【0087】
また、上記フィルム263の一面263aは、上記第1の実施形態(図2B)と同様に、粗面であり、この第7の実施形態では、上記第1の実施形態と同様の効果も有する。
【0088】
なお、上記第2〜上記第5の実施形態(図3〜図6)におけるフィルムの他面に、上記第6の実施形態の金属膜266を有してもよく、上記加圧ローラ20からの熱の吸収性を一層向上できる。
【0089】
(第8の実施形態)
図9は、この発明の画像形成装置の一実施形態である簡略構成図を示している。この画像形成装置は、上記記録材Sに未定着のトナーtを付着して画像を形成する作像装置80と、上記トナーtを溶融して上記記録材Sに定着させる上記第1の実施形態の定着装置81とを備える。この画像形成装置は、電子写真4色カラープリンタである。
【0090】
上記作像装置80は、中間転写ベルト61と、この中間転写ベルト61に沿って配置されると共にトナー像を形成する4つの画像形成ユニット51と、この各画像形成ユニット51によって形成されたトナー像を上記中間転写ベルト61上に転写する一次転写部62と、上記中間転写ベルト61に転写された像を上記記録材Sに転写する二次転写部63とを備える。
【0091】
ブラック(BK)のトナー像を形成する上記画像形成ユニット51、イエロー(Y)のトナー像を形成する上記画像形成ユニット51、マゼンタ(M)のトナー像を形成する上記画像形成ユニット51、および、シアン(C)のトナー像を形成する上記画像形成ユニット51は、上記中間転写ベルト61の上流から下流に沿って順に配置されている。
【0092】
上記各画像形成ユニット51は、感光体ドラム52と、この感光体ドラム52を一様に帯電させるための帯電部53と、帯電した上記感光体ドラム52に画像露光を行うための露光部59と、露光によって形成された静電潜像に各色のトナーで現像を行うための現像部54とを備える。
【0093】
この画像形成装置は、この画像形成装置全体を制御する制御装置68と、この制御装置68から画像に応じた信号が送られる露光制御装置69とを備える。この露光制御装置69は、各色に応じて上記露光部59のそれぞれを駆動する。
【0094】
次に、この画像形成装置の作用を説明する。
【0095】
上記画像形成ユニット51の上記感光体ドラム52上に現像されたトナー画像は、上記中間転写ベルト61との接触位置で、上記一次転写部62によって、上記中間転写ベルト61上に一次転写される。
【0096】
上記中間転写ベルト61上に転写されたトナー画像は、各画像形成ユニット51を通過するごとに、各色がその上に重ねられて、最終的に、フルカラーのトナー画像が、上記中間転写ベルト61上に形成される。
【0097】
その後、上記中間転写ベルト61上のフルカラーのトナー画像は、上記中間転写ベルト61の下流において、上記二次転写部63によって、上記記録材Sに一括して二次転写される。
【0098】
そして、上記記録材Sは、上記記録材Sの搬送路の下流にある上記定着装置81を通過することによって、トナー画像が定着されて、排紙トレー66上に排紙される。
【0099】
上記記録材Sは、最下部のカセット67に納められており、このカセット67から1枚ずつ上記二次転写部63にまで搬送される。
【0100】
なお、一次転写後、上記感光体ドラム52に残留したトナーは、下流に配置されたクリーニング部55によって除去され、このクリーニング部55の下側から回収される。
【0101】
また、二次転写後に、上記中間転写ベルト61上に残留したトナーは、クリーニングブレード65によって、上記中間転写ベルト61上から除去され、図示しない搬送スクリューで搬送され、図示しない廃トナー容器に回収される。
【0102】
上記構成の画像形成装置によれば、上記定着装置81を備えているので、品質性、耐久性および安全性を確保しつつ、ウォームアップ時間を短縮できる。なお、この画像形成装置の定着装置として、上記第2〜上記第7の実施形態(図3〜図8)のいずれかに記載の温度検出装置としての加圧サーミスタを用いてもよい。
【0103】
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上記加熱側回転体1として、ベルト以外に、ローラであってもよい。上記加圧側回転体2として、ローラ以外に、ベルトであってもよい。
【0104】
また、上記温度検出装置を、上記一対の回転体1,2の内の少なくとも一方の回転体の温度を、非接触で検出するようにしてもよい。また、上記温度検出装置として、サーミスタ以外に、熱電対を用いてもよい。また、上記温度検出装置を、上記回転体1,2以外の被検出体の温度を、非接触で検出するようにしてもよい。
【0105】
また、上記第1〜上記第4の実施形態(図1〜図5)において、上記フィルム263の上記一面263aは、上記フィルム263の上記他面263bよりも、粗く、言い換えると、上記フィルム263の上記一面263aの熱吸収率を、上記フィルム263の上記他面263bの熱吸収率よりも、高くしているといえる。したがって、上記フィルム263の上記一面263aにおいて上記加圧ローラ20からの熱の吸収性を向上できると共に、上記フィルム263の上記他面263bにおいて上記フィルム263の上記他面263b側の環境の影響(温度変化)を受けにくくなる。要するに、上記フィルム263の膜厚を厚くしないで上記フィルム263の熱吸収特性を向上できるので、上記加圧ローラ20の昇温に対する応答性能を悪化させずに、上記加圧ローラ20との距離公差や環境の影響により発生する検出温度のバラツキを抑えて安定性能を向上できる。
【0106】
また、上記記録材Sのトナーtを定着できれば、上記一対の回転体1,2の内の少なくとも一方の回転体を加熱すればよい。
【0107】
また、画像形成装置としては、モノクロ/カラーの複写機、プリンタ、FAXやこれらの複合機など、どれであってもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の定着装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図2A】本発明の温度検出装置の第1実施形態を示すと共に温度検出装置としての加圧サーミスタの平面図である。
【図2B】加圧サーミスタの断面図である。
【図3】本発明の温度検出装置の第2実施形態を示す簡略断面図である。
【図4】本発明の温度検出装置の第3実施形態を示す簡略断面図である。
【図5】本発明の温度検出装置の第4実施形態を示す簡略断面図である。
【図6】本発明の温度検出装置の第5実施形態を示す簡略断面図である。
【図7】本発明の温度検出装置の第6実施形態を示す簡略断面図である。
【図8】本発明の温度検出装置の第7実施形態を示す簡略断面図である。
【図9】この発明の画像形成装置を示す簡略構成図である。
【符号の説明】
【0109】
1 加熱側回転体
11 加熱ローラ
12 ベルト
15 加熱側ヒータ(加熱部)
16 加熱サーミスタ
2 加圧側回転体
20 加圧ローラ
25 加圧側ヒータ(加熱部)
26,126,226,326,426,526,626 加圧サーミスタ(温度検出装置)
260 温度検出面
261 取付部
262 保持部
263,1263,2263 フィルム
263a,1263a,2263a 一面
263b,1263b,2263b 他面
264 感熱素子
265 集熱部
266 金属膜
80 作像装置
81 定着装置
S 記録材
t トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体の温度を非接触で検出する温度検出装置であって、
保持部と、
この保持部に両面が露出するように保持されるフィルムと、
このフィルムの一面または他面に取り付けられると共に上記被検出体の温度を検知する感熱素子と
を備え、
上記被検出体に対向する面となる上記フィルムの上記一面は、粗面であることを特徴とする温度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度検出装置において、
上記フィルムは、カーボンを含有することを特徴とする温度検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の温度検出装置において、
上記被検出体に対向する面と反対側の面となる上記フィルムの上記他面は、金属膜を有することを特徴とする温度検出装置。
【請求項4】
被検出体の温度を非接触で検出する温度検出装置であって、
保持部と、
この保持部に両面が露出するように保持されるフィルムと、
このフィルムの一面または他面に取り付けられると共に上記被検出体の温度を検知する感熱素子と
を備え、
上記被検出体に対向する面と反対側の面となる上記フィルムの上記他面は、金属膜を有することを特徴とする温度検出装置。
【請求項5】
被検出体の温度を非接触で検出する温度検出装置であって、
保持部と、
この保持部に両面が露出するように保持されるフィルムと、
このフィルムの一面または他面に取り付けられると共に上記被検出体の温度を検知する感熱素子と
を備え、
上記被検出体に対向する面となる上記フィルムの上記一面の熱吸収率は、上記被検出体に対向する面と反対側の面となる上記フィルムの上記他面の熱吸収率よりも、高いことを特徴とする温度検出装置。
【請求項6】
互いに接触して記録材を搬送しつつこの記録材のトナーを定着させる一対の回転体と、
少なくとも一方の回転体を加熱する加熱部と、
少なくとも一方の回転体の表面温度をこの回転体の表面から離隔した位置で検出する請求項1、4または5の何れか一つに記載の温度検出装置と
を備えていることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
記録材に未定着のトナーを付着して画像を形成する作像装置と、
上記トナーを溶融して上記記録材に定着させる請求項6に記載の定着装置と
を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−58370(P2008−58370A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231943(P2006−231943)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】