説明

温度検知回路

【課題】電力変換器のヒートシンクに実装された複数のサーマルリードスイッチを使用した温度検知回路において、最小の構成にて、動作したサーマルリードスイッチを特定することが可能な温度検知回路を提供することである。
【解決手段】設定温度以上で開放するサーマルリードスイッチと並列に抵抗器を接続し、測定点分を直列に接続し、各抵抗器の抵抗値は異なる値とする。開放するサーマルリードスイッチにより、この直列体のインピーダンスが変化するため、抵抗値や分圧された電圧値を判別することで動作したサーマルリードスイッチを特定することができる。複数使用したサーマルリードスイッチの動作部位を簡略な回路構成にて判別することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電力変換器において半導体素子を実装したヒートシンクの温度を検知する温度検知回路に適用する。
【背景技術】
【0002】
電力変換器においては、トランジスタ等の半導体素子をヒートシンクに実装し、半導体素子の発熱による温度上昇を検知して動作停止等の保護動作を行うため、ヒートシンクの半導体素子近傍にサーマルリードリレーを設置することが行われる。
【0003】
図3は、半導体素子をヒートシンクに実装し、その近傍にサーマルリードスイッチを配置した図である。図3において、ヒートシンク7上にモジュール半導体素子81,82,83が実装され、各モジュール半導体素子近傍にサーマルリードスイッチ11,12,13を配置している。ヒートシンク7にはファンモータ91により冷却風が送られ、矢印のように風が流れる。サーマルリードスイッチはモジュール半導体素子の発熱により温度が上昇したヒートシンクの温度上昇を検知するため、冷却風の風下側に配置されている。
【0004】
図4は検知回路の例である。サーマルリードスイッチ11,12,13は設定された温度以上に上昇すると接点が開放となるタイプを使用しており、サーマルリードスイッチ11,12,13のいずれかが動作し開放状態となった場合、電源5の電圧が検知部6に供給されなくなり、温度上昇によりサーマルリードスイッチが動作したものと判断できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−316746号公報 (図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サーマルリードスイッチは、設定温度において接点の短絡、開放動作を行うものであるため、図4のような検知回路とした場合はどの部位のサーマルリードスイッチが動作したものかが判断できない。温度上昇がどの部位で起きたかわからないと、点検・修理時の指標が得られない。
図5は動作したサーマルリードスイッチを特定するための検知回路である。3個のサーマルリードスイッチ各々に検知部61,62,63を設け、個別にその動作を検知できるようにしたものである。一般的には、検知回路としては電力変換器制御部のデジタルインターフェイスが使用されるが、図5のように個別にサーマルリードスイッチを接続する場合は、その数だけデジタルインターフェイスを使用することとなり、制御部のインターフェイスが増えて問題である。
【0007】
本発明は、上記状況に対処するためになされたもので、その課題は、複数のサーマルリードスイッチを使用した温度検知回路において、制御部インターフェイスの増大を抑制しながら、動作したサーマルリードスイッチの部位を特定することが可能な検知回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明によれば、ヒートシンクを有する電力変換器の温度検知回路において、設定温度以上にて開放となるサーマルリードスイッチと該サーマルリードスイッチと並列に接続された抵抗器とよりなる並列体を有し、該並列体を複数直列に接続した直列体を形成し、該直列体を電源回路と直列に接続し、該電源回路と反対側に該直列体と直列に接続された抵抗値判別回路を有し、該並列体の該抵抗器は各々異なる抵抗値とすることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明によれば、請求項1記載の直列に接続された抵抗値判別回路の代わりに、前記直列体と前記電源回路の間に新たな抵抗器を直列に接続し、前記直列体と該新たな抵抗器との接続点に電圧判別回路を接続することを特徴とする。
【0010】
すなわち、請求項1に係わる温度検知回路においては、設定温度以上にて開放となるサーマルリードスイッチと、当該サーマルリードスイッチと並列に接続された抵抗器と、当該サーマルリードスイッチと抵抗器の並列体の複数直列体よりなり、サーマルリードスイッチに並列接続された抵抗器は各々異なる抵抗値となるよう構成する。
【0011】
そして、請求項2に係わる温度検知回路においては、設定温度以上にて開放となるサーマルリードスイッチと、当該サーマルリードスイッチと並列に接続された抵抗器と、当該サーマルリードスイッチと抵抗器の並列体の複数直列体よりなり、サーマルリードスイッチに並列接続された抵抗器の抵抗値は各直列体で異なるよう構成し、当該サーマルリードスイッチの直列体に直列接続された抵抗器と直流電源の直列体と、前記サーマルリードスイッチの直列体と、抵抗器と直流電源の直列体の接続点に電圧判別回路を接続することが行われる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による温度検知回路によれば、複数使用したサーマルリードスイッチの動作部位を簡略な回路構成にて判別することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に関わる温度検知回路図である。(実施例1)
【図2】本発明に関わる温度検知回路図である。(実施例2)
【図3】本発明に関わるサーマルリードスイッチを複数使用した半導体装置の温度検知回路構成の例である。
【図4】従来のサーマルリードスイッチを複数使用した温度検知回路の例である。
【図5】従来のサーマルリードスイッチを複数使用した温度検知回路の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図5等により本発明の実施形態を以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1に本発明の第1実施形態に係わる温度検知回路を示す。
【0016】
本発明の実施形態1の温度検知回路は、設定温度以上で開放動作となるサーマルリードスイッチ11,12,13と、各々に抵抗値の異なる抵抗21,22,23を接続することが行われ、抵抗値判別回路3、および電源5を接続する。
【0017】
次に、本発明の実施形態の作用を説明する。
表1は3個のサーマルリードスイッチ11,12,13と各々並列に接続される抵抗器の抵抗値の例を示したものである。
設定温度以下においては、サーマルリードスイッチは導通状態となっているので、全てのサーマルリードスイッチが動作していなければ、その直列体の抵抗値は0である。この状態は表1の状態1である。
【0018】
次に、例えば、サーマルリードスイッチ13が設定温度以上となったことを検知して開放状態となれば、並列接続された抵抗の抵抗値が現れることになる。この状態は、表1の状態2であり、他のサーマルリードスイッチ11,12は導通状態であるから、その直列体の合計抵抗値は1kΩである。
3個のサーマルリードスイッチの状態は、表1に示すように8通りとなるが、サーマルリードスイッチの並列抵抗の抵抗値を変えておくことにより、8通りの組み合わせにおいて、全て合計抵抗値が異なるため、この抵抗値を検知することにより、どのサーマルリードスイッチが動作しているかを特定することが可能である。
【0019】
【表1】

【0020】
図1では、サーマルリードスイッチと抵抗器の直列体に電源5、および抵抗値判別回路3を接続している。たとえば抵抗値判別回路3は電源5より供給され、サーマルリードスイッチと抵抗器の直列体を通過した電流値を判別する回路とすることにより、所望の動作を得ることができる。
【0021】
また、温度検知回路による温度検知が動作した後の電力変換装置の動作としては、装置動作を停止し、その時の保護情報を記録しておくことが一般的である。
したがって、設定温度を越えた最初の部位を記録することが重要となるので、本発明に基づく温度検知回路においては、サーマルリードスイッチが多数あった場合にも、その並列抵抗を全て抵抗値の異なるものとしておけば、最初に温度上昇を検知して動作(開放)したサーマルリードスイッチの並列抵抗値が現れるので、その部位を特定することが可能である。
【実施例2】
【0022】
図2に本発明の第2の実施形態に係わる温度検知回路を示す。
【0023】
図2では、3個のサーマルリードスイッチ11,12,13とその各々に接続された抵抗器21,22,23、サーマルリードスイッチの直列体に電源5、および抵抗器25、サーマルリードスイッチと直列の抵抗器25の接続点に電圧判別回路4を接続したものである。
【0024】
図2において、サーマルリードスイッチの直列体部の作用は、図1で説明した第1の実施例と同様である。電圧判別回路4の入力電圧としては、電源5の電圧が、抵抗器25の抵抗値とサーマルリードスイッチ直列体の抵抗値で分圧された値となる。
表2に、直列の抵抗器25の抵抗と電源5の電圧を具体的に設定し、表1に示した条件における電圧判別回路電圧を示す。各状態において、サーマルリードスイッチ直列体の抵抗値が異なるので、無論各抵抗によって分圧された電圧判別回路電圧もそれぞれ異なった値となるので、この電圧を判別することによって、動作したサーマルリードスイッチの部位を特定することが可能である。
【0025】
【表2】

【0026】
電圧判別回路としては、電力変換器制御部のアナログインターフェイス1個を使用し、デジタル−アナログ変換してソフトウエア上で電圧判別することを行えば、電力変換器制御部の入力インターフェイスの増大を防ぐことが可能で、多数のサーマルリードスイッチを使用する場合においても、電圧判別を細かく行うことによって動作したサーマルリードスイッチ部位を特定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
複数のサーマルリードスイッチを用いた温度検知回路を適用する電力変換装置半導体素子部への適用は以上説明した通りであるが、同様に複数のサーマルリードスイッチを使用した温度検知回路を用いる産業機器の回路簡略化に寄与することは明確である。
【符号の説明】
【0028】
11,12,13 ・・・・・・・・ サーマルリードスイッチ
21,22,23,25 ・・・・・ 抵抗器
3 ・・・・・・・・・・・・・・・ 抵抗値判別回路
4 ・・・・・・・・・・・・・・・ 電圧判別回路
5 ・・・・・・・・・・・・・・・ 電源
6,61,62,63 ・・・・・・ 検知部(デジタル入力回路)
7 ・・・・・・・・・・・・・・・ ヒートシンク
81,82,83 ・・・・・・・・ トランジスタモジュール
91 ・・・・・・・・・・・・・・ ファンモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンクを有する電力変換器の温度検知回路において、設定温度以上にて開放となるサーマルリードスイッチと該サーマルリードスイッチと並列に接続された抵抗器とよりなる並列体を有し、該並列体を複数直列に接続した直列体を形成し、該直列体を電源回路と直列に接続し、該電源回路と反対側に該直列体と直列に接続された抵抗値判別回路を有し、該並列体の該抵抗器は各々異なる抵抗値とすることを特徴とする電力変換器温度検知回路。

【請求項2】
請求項1記載の直列に接続された抵抗値判別回路の代わりに、前記直列体と前記電源回路の間に新たな抵抗器を直列に接続し、前記直列体と該新たな抵抗器との接続点に電圧判別回路を接続することを特徴とする電力変換器温度検知回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−42604(P2013−42604A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178373(P2011−178373)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】