説明

温度測定センサーおよび温度測定センサーを用いた温度測定装置

【課題】薬液などの被測定流体による腐食を生ずることなく、温度応答性が良好であり、さらに簡単な構造で効果的に静電気を除去することのできる温度測定センサーおよび温度測定センサーを用いた温度測定装置を提供する。
【解決手段】温度センサー部を構成する測温体と、前記測温体の基端部分に電気的に接続されたリード線部と、少なくとも前記測温体部分を覆う保護管と、を備えた温度測定センサーであって、前記保護管が、炭素を主成分とした材料からなることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシリコンウェハなどの半導体製造時に、シリコンウェハを洗浄するために用いられる薬液などの被測定流体の温度を測定するための温度測定センサーおよびこの温度測定センサーを用いた温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体製造工程では、シリコンウェハの表面に付着した不純物や酸化物などを取り除くために洗浄工程が行われている。この洗浄工程において、十分に不純物や酸化物などを取り除くことにより、パターニング工程において電子回路のパターニングを正確に行えるようになる。
【0003】
このため洗浄工程では、薬液として例えばフッ酸,硝酸,塩酸,リン酸,フッ硝酸,硫酸,アンモニアなどを用いて、シリコンウェハの表面に付着した不純物や酸化物などが取り除かれている。
【0004】
なお洗浄工程で使用される薬液は、酸化物などを取り除く除去能力が、薬液の温度によって大きく変化することから、薬液温度の管理が必要である。
このため、温度測定センサーを用いてこの薬液の温度を測定することが行われている。
【0005】
このような温度測定センサーは、熱電対や白金測温抵抗素子などからなる測温体を備えており、測温体は、例えばSUS316Lなどのステンレス鋼や、チタンなどの金属製の
保護管で覆われた構造となっている。
【0006】
なお金属製の保護管は、保護管の肉厚を厚くすることで、測温体が薬液により腐食してしまうことを防止しているが、こうすると温度測定センサーの温度応答性が鈍くなってしまうとともに、温度測定センサー自体が大きくなり取扱い性が良好ではなかった。
【0007】
このため、特許文献1に開示されているように、保護管を耐薬液性に優れた例えばPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)樹脂などの合成樹脂から構成することによって、保護管の耐食性を向上させ、温度測定センサー自体が大きくならないような工夫がなされている。
【特許文献1】特開2001−83018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなPFA樹脂などの合成樹脂を用いた保護管であっても、時間の経過により薬液が保護管を透過してしまい、保護管内部の測温体などの内部部品が損傷してしまうものであった。
【0009】
また温度測定センサーは、例えばシリコンウェハの洗浄により生じる薬液温度の上下動を一定に保つために用いられるが、このように保護管が合成樹脂製であると、温度測定センサーの温度応答性が鈍くなってしまい即座に対応ができず、一定品質のシリコンウェハを得ることができない場合があった。
【0010】
さらに樹脂製の保護管は、金属製の保護管と比べると強度的に弱いため、薬液からの流体圧力による変形を防止するためにその肉厚を厚くしなければならず、温度測定センサーの温度応答性がさらに鈍くなってしまうものであった。
【0011】
また、シリコンウェハの洗浄時に用いられるフッ酸,硝酸,塩酸,リン酸,フッ硝酸,硫酸,アンモニアなどの薬液のうち低濃度のものや純水は、抵抗率が高いため、この薬液の流れにより半導体製造装置の配管などにシリコンウェハの品質に悪影響を及ぼす静電気が発生することがあったが、樹脂製の保護管はアース線の接続ができないため、この静電気を放電するための静電気除去装置が新たに必要であり、半導体製造装置のコスト高を招いてしまうものであった。
【0012】
本発明はこのような現状に鑑み、薬液などの被測定流体による腐食を生ずることなく、温度応答性が良好であり、さらに簡単な構造で効果的に静電気を除去することのできる温度測定センサーおよび温度測定センサーを用いた温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の温度測定センサーは、
温度センサー部を構成する測温体と、
前記測温体の基端部分に電気的に接続されたリード線部と、
少なくとも前記測温体部分を覆う保護管と、
を備えた温度測定センサーであって、
前記保護管が、炭素を主成分とした材料からなることを特徴とする。
【0014】
このように炭素を主成分とした材料で保護管を構成すれば、薬液などの被測定流体による腐食を生ずることがないため、所望の測定精度を長期間維持することができる。
また、炭素を主成分とすれば、保護管の肉厚を必要以上に厚くしなくて良いため、温度測定センサーの測温体の温度応答性を良好とすることができる。
【0015】
このため、例えばシリコンウェハの洗浄時に生じる薬液温度の上下動に即座に対応することができる。
また、本発明の温度測定センサーは、
前記保護管が、
前記保護管の基材を、炭素を主成分とした材料とすることを特徴とする。
【0016】
このように構成すれば、薬液などの被測定流体による腐食の心配がなく、確実に被測定流体の温度管理をすることができる。
また、本発明の温度測定センサーは、
前記保護管が、
前記保護管の基材の表面を、炭素を主成分とした材料とすることを特徴とする。
【0017】
このように構成すれば、例えば基材をステンレスなどの金属製とし、この基材の表面のみ炭素を主成分とした材料とすることで、薬液などの被測定流体による腐食から保護管を確実に保護することができる。
【0018】
また、本発明の温度測定センサーは、
前記炭素を主成分とした材料が、アモルファスカーボン,炭化ケイ素,グラファイト,ダイヤモンドライクカーボンのいずれかであることを特徴とする。
【0019】
このように保護管の材料がアモルファスカーボン,炭化ケイ素,グラファイト,ダイヤモンドライクカーボンのいずれかであれば、特に被測定流体が強酸であるフッ酸,硝酸,
塩酸,リン酸,フッ硝酸,硫酸,アンモニアなどであっても、確実に保護管を腐食から保護することが可能であり、確実に被測定流体の温度管理をすることができる。
【0020】
また、本発明の温度測定センサーは、
前記保護管を構成する炭素を主成分とした材料が、熱伝導率5〜350W/m℃の範囲内の材料であることを特徴とする。
【0021】
このような範囲に熱伝導率を設定した炭素を主成分とした材料であれば、保護管内の測温体で被測定流体の温度を確実に得ることができ、また熱伝導率が良好であるため、僅かな温度変化であっても確実に知り得ることができる。
【0022】
また、本発明の温度測定センサーは、
前記保護管内に、樹脂充填材が充填されていることを特徴とする。
このように保護管内に樹脂充填材が充填されていれば、被測定流体の温度は、保護管から樹脂充填材を伝わって測温体へ送られることとなるため、確実に被測定流体の温度を知り得ることができる。
【0023】
さらに、樹脂充填材が固まることにより、保護管内でのリード線部と測温体の位置ずれを防止することができる。
【0024】
また、本発明の温度測定センサーは、
前記保護管内に充填される樹脂充填材の熱伝導率が、2.4〜10W/m℃の範囲内であることを特徴とする。
【0025】
このように樹脂充填材の熱伝導率を設定すれば、熱応答性に優れ、僅かな温度変化であっても確実に知り得ることができる。
また、本発明の温度測定センサーは、
前記リード線部にアース線が形成され、
前記アース線のアース端子を、導電性部材を介して前記保護管と電気的に接続していることを特徴とする。
【0026】
このように構成すれば、静電気が帯電することがないため、温度測定センサーを含む制御機器を正確に機能させることができ、歩留まり良くシリコンウェハを得ることができる。
【0027】
また、本発明の温度測定センサーは、
前記導電性部材が、
前記保護管の基端開口部近傍に装着した止め輪部材であることを特徴とする。
【0028】
このように止め輪部材を用いれば、保護管の基端開口部近傍に装着するという簡単な構造で確実に静電気を放電することができるため、製造コストを抑えることができる。
また、本発明の温度測定センサーは、
前記止め輪部材が、前記保護管の基端開口部近傍の内壁側に装着されていることを特徴とする。
【0029】
このように構成すれば、保護管の外径内にアース線を配設することができるため、温度測定センサーを必要以上に大きくする心配がない。
また、本発明の温度測定センサーは、
前記止め輪部材が、前記保護管の基端開口部近傍の外壁側に装着されていることを特徴とする。
【0030】
このように構成すれば、リード線部の外径寸法が保護管の内径寸法に近くて基端開口部近傍の内壁側に止め輪部材を配設できない場合であっても、外壁側に装着することで確実にアース線を配設することができるため、正確に温度測定センサーを機能させることができ、確実に被測定流体の温度管理をすることができる。
【0031】
また、本発明の温度測定センサーは、
前記保護管の基端部と前記リード線部の先端近傍とを覆うケースを備え、
前記ケース内に位置している前記リード線部に形成されたアース線のアース端子を、前記ケース内に充填した導電性材料を介して、前記保護管と電気的に接続していることを特徴とする。
【0032】
このように構成すれば、アース線をケース内に収めることができるため、アース線の断線の心配がなく、また外観良好であり、正確に温度測定センサーを機能させることができ、確実に被測定流体の温度管理をすることができる。
【0033】
また、本発明の温度測定センサーは、
前記導電性材料が、導電性接着剤であることを特徴とする。
このように導電性接着剤であれば、アース線のアース端子と保護管とを確実に接続可能であり、各部材間の接着性が良好である。
【0034】
このため、アース線が保護管から断線する心配がなく、正確に温度測定センサーを機能させることができ、確実に被測定流体の温度管理をすることができる。
【0035】
また、本発明の温度測定センサーは、
前記保護管の基端部と前記リード線部の先端近傍とを覆うケースを備え、
前記ケース内に熱伝導率0.1〜2.6W/m℃の樹脂充填材が充填されていることを特徴とする。
【0036】
このように設定された樹脂充填材をケース内に充填すれば、樹脂充填材の熱伝導率が悪いため、保護管以外の熱を拾い難くなる。
したがって、被測定流体の温度のみを拾うことができ、精度の良い温度測定センサーを得ることができる。
【0037】
また、本発明の温度測定センサーは、
前記ケース内に充填される樹脂充填材の熱伝導率が、
前記保護管内に充填される樹脂充填材の熱伝導率よりも低いことを特徴とする。
【0038】
このように設定されていれば、保護管内の測温体は、被測定流体の温度のみを拾うことができるため、精度良く被測定流体の温度を得ることができる。
【0039】
また、本発明の温度測定センサーは、
前記ケースの材質が、耐熱性を有する材質からなることを特徴とする。
このようにケースが耐熱性を有していれば、被測定流体が高温であっても、内部のリード線を確実に保護することができる。
【0040】
したがって、被測定流体の温度を確実に得ることができる。
また、本発明の温度測定センサーは、
前記アース線のアース端子と、前記保護管の基端部とが非接触状態であることを特徴とする。
【0041】
このように構成した場合には、アース端子と保護管との間を導電性接着剤で満たすことで、確実にアース線としての機能を果たすことができる。
また、本発明の温度測定センサーは、
前記アース線のアース端子と、前記保護管の基端部とが接触状態であることを特徴とする。
【0042】
このように構成した場合には、アース端子と保護管との接続がより確実であり、さらに両者を導電性接着剤で確実に接合すれば、より確実にアース線としての機能を果たすことができる。
【0043】
また、本発明の温度測定装置は、
上記いずれかに記載の温度測定センサーを用いた温度測定装置であって、
被測定流体の流路が形成された流体配管部を備え、
前記流体配管部の流路内に、前記温度測定センサーの保護管部分が露出するように、温度測定センサーを配置したことを特徴とする。
【0044】
このように上記した温度測定センサーを用いて温度測定装置を構成すれば、特に保護管が炭素を主成分とした材料からなっているため、薬液などの被測定流体によって腐食してしまう心配がない。
【0045】
さらに、保護管が炭素を主成分とした材料からなれば、水圧によって温度測定センサーが変形してしまうことがないため精度良く温度管理ができ、また従来よりも温度測定センサーの大きさを小さくすることができる。
【0046】
さらに、保護管が炭素を主成分とした材料からなれば、温度応答性が良好であるため、正確に温度測定センサーを機能させることができ、確実に薬液などの被測定流体の温度管理をすることができる。
【0047】
また、本発明の温度測定装置は、
前記流体配管部の流路内に、前記温度測定センサーの保護管部分の先端部分のみが露出するように、温度測定センサーを配置したことを特徴とする。
【0048】
このように、保護管が炭素を主成分とした材料からなれば、温度応答性が良好であるため、流路内に温度センサーの先端部分のみを露出させるだけで、正確に温度測定センサーを機能させることができる。
【0049】
また、本発明の温度測定装置は、
前記流体配管部の温度測定センサーの取り付け部分に、弾性リングを介装したことを特徴とする。
【0050】
このように弾性リングを用いれば、温度測定装置において、温度測定装置の保護管の材質とその他の材質とが熱膨張の異なる材料であっても、この熱膨張の差を弾性リングが吸収できるため、組み付けが良好であり、正確に温度測定センサーを機能させることができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、薬液などの被測定流体による腐食を生ずることなく、温度応答性が良好であり、さらに簡単な構造で効果的に静電気を除去することのできる温度測定センサーおよび温度測定センサーを用いた温度測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明の温度測定センサーの正面図、図2〜図5は、本発明の温度測定センサーにおいて、アース線を取り付けた実施例における正面図、図6は、本発明の温度測定センサーにおいて、ケース内に樹脂充填材を充填した他の実施例における正面図、図7は、本発明の温度測定センサーを用いた温度測定装置の正面図である。
【0053】
本発明の温度測定センサーおよび温度測定装置は、シリコンウェハなどの半導体製造時に、シリコンウェハを洗浄するために用いられる薬液などの被測定流体の温度を測定するためのものである。
【0054】
以下、本発明の温度測定センサーと、この温度測定センサーを用いた温度測定装置について順を追って説明する。
<温度測定センサー10>
まず本発明の温度測定センサー10は、図1に示したように被測定流体の温度を測定するための温度センサー部を構成する測温体12と、この測温体12の基端部分に電気的に接続されたリード線部14と、少なくとも被測定流体と接触する測温体12部分を覆う保護管16と、から構成されている。
【0055】
なお本実施例における保護管16は、リード線部14の下端部と測温体12の全体とをすっぽりと覆うように構成されており、この保護管16の内部には、樹脂製の充填材18が充填され、これによりリード線部14と測温体12とが、保護管16内で位置ずれを生じないようになっている。
【0056】
このような樹脂充填材18は、熱応答性に優れ、また熱伝導率が2.4〜10W/m℃の範囲内の樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂を用いることができる。
【0057】
シリコーン樹脂の具体例としては、信越化学工業株式会社製 信越シリコーンKE1867,KE3467が好適である。また、エポキシ樹脂の具体例としては、株式会社オーデック製 アレムコボンド2210エポキシ,太陽金網株式会社製 デュラルコ132IPエポキシが好適である。
【0058】
このような樹脂充填材18は熱伝導が良好であるため、保護管16内に樹脂充填材18が充填されていれば、被測定流体に僅かな温度変化が生じても、測温体12でその温度変化を精度良く得ることができる。
【0059】
なお、保護管16内に測温体12が収められた状態で樹脂充填材18を充填するため、保護管16の内径と測温体12の外径との差は0.1mm〜1.0mm程度であることが好ましい。この数値が0.1mmよりも小さい場合には組立てが困難であり、また内部部品と保護管16との熱膨張の違いによる影響を受け易くなってしまい、逆に1.0mmよりも大きな場合には応答性が悪くなってしまう。
【0060】
そして、本発明においてこの温度測定センサー10の保護管16は、炭素を主成分とした材料から構成されている点で特に特徴的である。
このような炭素を主成分とした材料としては、熱伝導率が5〜350W/m℃の範囲内であるとともに、耐薬品性、熱応答性、導電性に優れた材質で有れば特に限定されるものではないが、例えばアモルファスカーボン,シリコンカーバイド,グラファイト,ダイヤモンドライクカーボンなどを用いることが好ましい。
【0061】
中でも特にアモルファスカーボンで保護管16を構成すれば、特にシリコンウェハの洗浄時に用いられるフッ酸,硝酸,塩酸,リン酸,フッ硝酸,硫酸,アンモニアなどの薬液中に保護管16を浸しても保護管16を腐食させることがなく、また従来のように金属製の保護管16は、薬液による腐食に対抗するために保護管16の肉厚を厚くする必要があったが、本発明の保護管16ではその必要がないため、熱応答性に優れ確実に薬液の温度管理をすることが可能である。
【0062】
この保護管16の肉厚については、保護管16の大きさにより適宜選択されるものであるが、例えば直径4mm程度の保護管16であれば、肉厚は0.6mm〜1.5mm程度であることが好ましい。
【0063】
なお、保護管16の製造方法としては、例えば棒状アモルファスカーボン(日清紡績株式会社製)の中央部にくり貫き加工を施すことで、図1に示したような有底筒状の保護管16を容易に形成することができる。
【0064】
また図示しないが、ステンレスのような金属製の保護管16の被測定流体と接触する外側表面を、アモルファスカーボンでコーティングし、これにより同様の効果を得るようにしても良い。
【0065】
さらにこのような温度測定センサー10は、使用環境下における静電気発生除去のため、図2に示したようにアース線20を設けることが好ましい。
このアース線20は、リード線部14に形成されており、保護管16の基端開口部近傍に導電性部材からなる止め輪部材24を配設し、この止め輪部材24とアース線20のアース端子22とを接続することで、放電されるようになっている。
【0066】
なお、図2に示した温度測定センサー10では、保護管16の基端開口部近傍の内側に止め輪部材24が配設されているが、図3に示したように、保護管16の基端開口部近傍の外側に止め輪部材24が配設されていてもよく、保護管16の内径とリード線部14の外径との差などに応じて適宜選択が可能なものである。
【0067】
また図2および図3に示したようなアース線20の配設の仕方以外には、図4(a)および図4(b)に示したように、保護管16の基端部と、リード線部14の先端近傍とをケース30で覆い、ケース30内に導電性材料からなる導電性接着剤32を充填して、アース線20のアース端子22と保護管16とを、この導電性接着剤32を介して電気的に接続するようにしても良い。
【0068】
アモルファスカーボンは、材料の特性上、半田付けが困難であるが、導電性接着剤32を用いれば確実に保護管16とアース線20のアース端子22との接続ができ、静電気を除去することができる。
【0069】
なお図4(a)および図4(b)に示した温度測定センサー10においては、樹脂製チューブからなるケース30内において、リード線部14の測温体12と接続される端子の周りを樹脂チューブ34で覆い、その外側をさらに別の樹脂チューブ36で覆っている。そして、ケース30の内表面に接するように円筒ケース38が配設され、これらと保護管16とが座金40を介して固定されている。このケース30としては、PFAチューブを用いることが望ましい。
【0070】
これらの部材によりケース30内部に空間を形成し、この空間内に導電性接着剤32を貯留させるようになっている。なお、図中の符号42は、リード線14の端子同士が接触
してショートしないようにするために設けられた絶縁チューブである。
【0071】
また、図4(a)および図4(b)に示した温度測定センサー10は、アース線20が保護管16の基端部と非接触状態であるが、図5に示したようにアース線20と保護管16の基端部とを直接接触させても良いものである。
【0072】
図4および図5に示した温度測定センサー10では、いずれも導電性接着剤32を介してアース線20のアース端子22と保護管16とを電気的に接続するようになっているため、確実に放電ができ、静電気を除去することができる。
【0073】
なお、このような導電性接着剤32としては、特に限定されるものではないが、高導電性、高熱伝導性のエポキシ接着剤を用いることが好ましい。
また、保護管16の径が細く、リード線部14の各配線68が保護管16内に入れら
れない場合には、図6に示したように、保護管16とリード線部14の各配線68との間を耐熱性を有するケース74で覆い、各配線68の先端部分と測温体12とを電気的に接続するようにすれば良い。
【0074】
さらに、この際、ケース74内には樹脂充填材70を充填しておくことが好ましい。ケース74は下端側が保護管16の端部とぴったりと嵌合するようになっており、ケース74の上端側はリード線部14との間に若干の隙間が生ずるようになっている。
【0075】
そして、上端側の隙間より、例えばディスペンサ72を用いてケース30内へ樹脂充填材70を充填し、これが固化することで図6に示したような温度測定センサー10を構成することができる。
【0076】
ここでケース74内に充填される樹脂充填材70は、熱伝導率が0.1〜2.6W/m℃の範囲内であることが好ましい。なお、このようにケース74内に充填される樹脂充填材70の熱伝導率は、保護管16内に充填される樹脂充填材18の熱伝導率よりも小さいことが好ましい。
【0077】
このように設定すれば、ケース74周辺の温度を測温体12が拾ってしまうことがな
く、被測定流体の温度のみを確実に得ることができる。
【0078】
また、このようなケース74内に充填される樹脂充填材70としては、例えばシリコーン樹脂,エポキシ樹脂が好適である。なお、上記した実施例のようにアース線(図示せず)を用いる場合には、ケース30内に充填される樹脂充填材70として具体的に太陽金網株式会社製 デュラルコ122エポキシまたは、株式会社オーデック製 パイロダクト598Aを用いると良い。
【0079】
一方、アース線を用いない場合には、具体的に太陽金網株式会社製 デュラルコ4461IPエポキシまたは、信越化学工業株式会社製 信越シリコーンKE108,KE106を用いると良い。
【0080】
さらにケース74は、耐熱性を有する材質から成れば特に限定されるものではない。
このような材質の具体例としては、PPS(ポリフェニレンサルファイド),フッ素樹脂,PEEK(ポリエーテルエーテルケトン),PFS(ポリエーテルサルフォン),PSF(ポリサルフォン),POM(ポリアセタール),PEI(ポリエーテルイミド),セラミック,シリコーン,銅,ステンレス,アルミニウム,チタンなどを挙げることができる。これらの材質は、熱伝導率が0.1〜372W/m℃の範囲内である。
【0081】
中でもPPSは、熱伝導率が0.2W/m℃と悪いため、ケース74周辺の温度を測温体12が拾ってしまうことがなく、確実に被測定流体の温度のみを得ることができる。
このような材質は、耐熱性を有するとともに強度があるため、例えばリード線14と測温体12との間に曲げなどの力が加わったとしてもこのケース74部分より曲げを生ずることがなく、リード線14と測温体12との接続を維持することができる。
【0082】
このように本発明の温度測定センサー10は、上記したように保護管16を形成する材料として、炭素を主成分とした材料(特にアモルファスカーボン)とすることで、例えばシリコンウェハの洗浄時に用いられる薬液などの被測定流体によって生ずる保護管16の腐食を確実に防止することができ、しかもアース線20を配設することで放電ができ、確実に静電気を除去することができる。
【0083】
また上記したように、ケース74を用いた場合、ケース74内に樹脂充填材70を充填し、さらに保護管16内にも樹脂充填材18を充填し、ケース74内の樹脂充填材70の熱伝導率が、保護管16内の樹脂充填材18の熱伝導率よりも小さくすることにより、ケース74周辺の温度を測温体12が拾ってしまうことがなく、被測定流体の温度のみを確実に得ることができる。
【0084】
<温度測定装置50>
次に、上記した図1〜図6に示した温度測定センサー10を用いた温度測定装置50について説明する。
【0085】
図7に示したように、本発明の温度測定装置50は、被測定流体(薬液)の流路が形成された流体配管部52を備え、この流体配管部52の流路内に、上記した温度測定センサー10の保護管16部分が露出するように、温度測定センサー10が配置されている。
【0086】
本実施例においては、配管構成部材58に流体配管部52が形成され、その上部にはこの流体配管部52から保護管16部分が露出するとともに、この保護管16を挿入するための保護管挿入部64が形成されており、この保護管挿入部64に温度測定センサー10の保護管16部分が挿入されている。
【0087】
さらに、この配管構成部材58の上にリード線部14が挿入可能なリード線挿入部66を有する蓋部材60が配設され、このリード線挿入部66内にリード線部14を挿入した状態で、配管構成部材58と蓋部材60とを締結部材62で固定することで温度測定装置50が構成されている。
【0088】
なお、配管構成部材58の温度測定センサー10の取り付け部分には、弾性リング取り付け部54が形成され、ここに弾性リング56が介装されており、これにより例えばアモルファスカーボンからなる保護管16と、これを収容する配管構成部材58や蓋部材60などが、保護管16とは熱膨張係数の異なる材質から成っていても、この弾性リング56によって熱膨張の差を吸収することができ、取り付けを良好に行うことができる。
【0089】
また、本発明の温度測定装置50は、炭素を主成分とした材料(特にアモルファスカーボン)からなる保護管16を有する温度測定センサー10を用いることが前提であるため、従来、熱伝導性が悪かったために流体配管部52中央付近まで保護管16を挿入して使用していたものが、その必要がなく、従来よりも保護管16が短くてよくなり製造コストを抑えることができる。
【0090】
また、保護管16が短くて良いため、従来のように流体配管部52中央付近まで保護管を挿入して使用していた場合に生じていた流体の圧力により振動や変形などの影響がなく
なり、精度良く被測定流体の温度を検出することができる。
【0091】
このように、本発明の温度測定センサー10を用いた温度測定装置50は、上記したような幾多の効果を有するものである。
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、例えば測温体の無いリード線部のみをアモルファスカーボンからなる保護管で覆い、リード線部のリード端子を、上記したように導電性部材などを介して保護管と接続した電極として構成することも可能であり、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本発明の温度測定センサーの正面図である。
【図2】図2は、本発明の温度測定センサーにおいて、アース線を取り付けた実施例における正面図である。
【図3】図3は、本発明の温度測定センサーにおいて、アース線を取り付けた他の実施例における正面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の温度測定センサーにおいて、アース線を取り付けた他の実施例における正面図であって、図4(b)は図4(a)の要部拡大図である。
【図5】図5は、本発明の温度測定センサーにおいて、アース線を取り付けた他の実施例における正面図であって、図4(b)と同様な要部拡大図である。
【図6】図6は、本発明の温度測定センサーにおいて、ケース内に樹脂充填材を充填した他の実施例における正面図である。
【図7】図7は、本発明の温度測定センサーを用いた温度測定装置の正面図である。
【符号の説明】
【0093】
10・・・温度測定センサー
12・・・測温体
14・・・リード線部
16・・・保護管
18・・・樹脂充填材
20・・・アース線
22・・・アース端子
24・・・止め輪部材
30・・・ケース
32・・・導電性接着剤
34・・・樹脂チューブ
36・・・樹脂チューブ
38・・・円筒ケース
40・・・座金
42・・・絶縁チューブ
50・・・温度測定装置
52・・・流体配管部
54・・・取り付け部
56・・・弾性リング
58・・・配管構成部材
60・・・蓋部材
62・・・締結部材
64・・・保護管挿入部
66・・・リード線挿入部
68・・・配線
70・・・樹脂充填材
72・・・ディスペンサ
74・・・ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサー部を構成する測温体と、
前記測温体の基端部分に電気的に接続されたリード線部と、
少なくとも前記測温体部分を覆う保護管と、
を備えた温度測定センサーであって、
前記保護管が、炭素を主成分とした材料からなることを特徴とする温度測定センサー。
【請求項2】
前記保護管が、
前記保護管の基材を、炭素を主成分とした材料とすることを特徴とする請求項1に記載の温度測定センサー。
【請求項3】
前記保護管が、
前記保護管の基材の表面を、炭素を主成分とした材料とすることを特徴とする請求項1に記載の温度測定センサー。
【請求項4】
前記炭素を主成分とした材料が、アモルファスカーボン,炭化ケイ素,グラファイト,ダイヤモンドライクカーボンのいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の温度測定センサー。
【請求項5】
前記保護管を構成する炭素を主成分とした材料が、熱伝導率5〜350W/m℃の範囲内の材料であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の温度測定センサー。
【請求項6】
前記保護管内に、樹脂充填材が充填されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の温度測定センサー。
【請求項7】
前記保護管内に充填される樹脂充填材の熱伝導率が、2.4〜10W/m℃の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の温度測定センサー。
【請求項8】
前記リード線部にアース線が形成され、
前記アース線のアース端子を、導電性部材を介して前記保護管と電気的に接続していることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の温度測定センサー。
【請求項9】
前記導電性部材が、
前記保護管の基端開口部近傍に装着した止め輪部材であることを特徴とする請求項8に記載の温度測定センサー。
【請求項10】
前記止め輪部材が、前記保護管の基端開口部近傍の内壁側に装着されていることを特徴とする請求項9に記載の温度測定センサー。
【請求項11】
前記止め輪部材が、前記保護管の基端開口部近傍の外壁側に装着されていることを特徴とする請求項9に記載の温度測定センサー。
【請求項12】
前記温度測定センサーは、
前記保護管の基端部と前記リード線部の先端近傍とを覆うケースを備え、
前記ケース内に位置している前記リード線部に形成されたアース線のアース端子を、前記ケース内に充填した導電性材料を介して、前記保護管と電気的に接続していることを特徴とする請求項8に記載の温度測定センサー。
【請求項13】
前記導電性材料が、導電性接着剤であることを特徴とする請求項12に記載の温度測定
センサー。
【請求項14】
前記温度測定センサーは、
前記保護管の基端部と前記リード線部の先端近傍とを覆うケースを備え、
前記ケース内に熱伝導率0.1〜2.6W/m℃の樹脂充填材が充填されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の温度測定センサー。
【請求項15】
前記ケース内に充填される樹脂充填材の熱伝導率が、
前記保護管内に充填される樹脂充填材の熱伝導率よりも低いことを特徴とする請求項14に記載の温度測定センサー。
【請求項16】
前記ケースの材質が、耐熱性を有する材質からなることを特徴とする請求項14または15に記載の温度測定センサー。
【請求項17】
前記アース線のアース端子と、前記保護管の基端部とが非接触状態であることを特徴とする請求項12から16のいずれかに記載の温度測定センサー。
【請求項18】
前記アース線のアース端子と、前記保護管の基端部とが接触状態であることを特徴とする請求項12から16のいずれかに記載の温度測定センサー。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかに記載の温度測定センサーを用いた温度測定装置であって、
被測定流体の流路が形成された流体配管部を備え、
前記流体配管部の流路内に、前記温度測定センサーの保護管部分が露出するように、温度測定センサーを配置したことを特徴とする温度測定装置。
【請求項20】
前記流体配管部の流路内に、前記温度測定センサーの保護管部分の先端部分のみが露出するように、温度測定センサーを配置したことを特徴とする請求項19に記載の温度測定装置。
【請求項21】
前記流体配管部の温度測定センサーの取り付け部分に、弾性リングを介装したことを特徴とする請求項19または20に記載の温度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−54491(P2010−54491A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283333(P2008−283333)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】