説明

温度測定器

【課題】シース温度計と保護管との熱的接触を確保し、温度検出における優れた応答性を発揮できるとともに、保護管内へのシース温度計の脱着作業を容易に行うことができ、製造・管理コストも大幅に削減できる温度測定器を提供せんとする。
【解決手段】シース温度計2の外周面20上の径方向所定角度部位20aに、長手方向に沿って外方に湾曲した形状の湾曲形状部5,5を備えるバネ材4を設けて、当該バネ材4の湾曲形状部5,5を保護管内壁30aに当接変形させ、その弾性復元力によりシース温度計外周面20のバネ材4と反対側の部位20bを保護管内壁30bに圧接させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シース測温抵抗体やシース熱電対などのシース温度計を保護管内に挿着して構成される温度測定器に係り、特に、温度検出のタイムラグを小さくできる優れた応答性を示し、例えば重合体反応器の温度測定などに好適に用いられる温度測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の温度計測器としては、従来、保護管とシース温度計の先端の隙間に良熱伝導性金属を充填してこれらの密着性を向上させたものや、保護管とシース温度計の先端接合部にネジを設けてこれらの密着性を向上させたものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。応答性の改善には、保護管外径と挿入長の比率(アスペクト比)をできるだけ大きく取ること以外に、シースと保護管の熱的接触をできるかぎり確保することが肝要であり、上記提案により熱的接触が確保され、応答性の改善に貢献できる。
【0003】
しかしながら、良熱伝導性金属を充填するもの(特許文献1の提案)では、熱伝導の向上により応答性が向上するものの、良熱伝導性金属として液体金属が使用され、取付方向が常に下方向でなければならず上方向や横方向に取り付けると充填した良熱伝導性金属が漏れ出てくること、良熱伝導性金属が変質した場合にはその特性が変化するために長期的に安定した温度測定が困難となるといった問題がある。また、保護管とシース温度計の先端接合部にネジを設けたもの(特許文献2の提案)では、簡単に脱着できるものではなく、さらに埃等がネジ部に噛み込んだりすれば、脱着が不可能となる場合もある。
【0004】
これに対し、シース温度計の検出部の外径と保護管の内径との隙間を特定の範囲内とすることで、上記液体金属等の充填物が存在せずネジ込み等の構造もなく、保護管からのシース温度計の脱着が容易であるとともに優れた応答性も維持できる温度測定器が提案されている(特許文献3参照)。しかし、このような微小隙間を設けるものでは応答性の更なる向上には一定の限界があるとともに、製造管理・コストもかかり、保護管が外部から振動を受けた場合には熱的接触状態が不安定となって応答性にズレが生じる虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭48−92799号公報
【特許文献2】特開昭54−10782号公報
【特許文献3】特開平10−176957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、シース温度計と保護管との熱的接触を確保し、温度検出における優れた応答性を発揮できるとともに、保護管内へのシース温度計の脱着作業を容易に行うことができ、製造・管理コストも大幅に削減できる温度測定器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題解決のために、シース温度計を保護管内に装着してなる温度測定器において、押圧部材を用いてシース温度計を保護管内壁に圧接させたことを特徴とする温度測定器を構成した。ここで、前記押圧部材が、シース温度計の外周面上に、長手方向に沿って外方に湾曲した形状の線状または板状のバネ材であり、これを1つ又は長手方向に複数設け、当該バネ材の湾曲形状部を保護管内壁に当接変形させ、その弾性復元力によりシース温度計外周面のバネ材と反対側の部位を保護管内壁に圧接する構成であることが好ましい。
【0008】
また、前記バネ材の少なくとも一端側を、前記シース温度計外周面に対して長手方向に摺動する自由端とし、該自由端に略T字状ないし略Y字状に左右に膨出した摺動受け部を設けてなるものが好ましい。
【0009】
また、前記バネ材が、長手方向に湾曲形状部を二つ以上連設してなり、これら湾曲形状部の間の所定位置を前記シース温度計外周面に固定するとともに、両端側をそれぞれ前記シース温度計外周面に対して長手方向に摺動する自由端としてなるものが好ましい。
【0010】
或いは、前記バネ材の一端側を前記シース温度計外周面に固定するとともに、他端側を前記シース温度計外周面に対して長手方向に摺動する自由端としてなるものも好ましい実施例である。
【0011】
また、前記押圧部材がシース温度計の外周面上に、長手方向に沿って外方に湾曲した形状の線状または板状のバネ材であって、該バネ材の一端側を前記シース温度計外周面に固定するとともに、他端側を前記シース温度計先端部よりも先端側に延出した自由端としてなり、当該シース温度計の保護管内への装着により、前記バネ材の延出した他端側が保護管底壁に当接し、当該バネ材の湾曲形状部が保護管内壁側に当接変形し、その弾性復元力によりシース温度計外周面の前記バネ材と反対側の部位を保護管内壁に圧接する構成であることも好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上にしてなる本願発明に係る温度測定器は、押圧部材によりシース温度計外周面の任意の部位を保護管内壁に圧接させることで、確実且つ容易に直接的な熱伝導を行い、温度検出における優れた応答性を発揮することができる。また、バネ材の湾曲形状部を保護管内壁に当接変形させ、その弾性復元力によりシース温度計外周面のバネ材と反対側の部位を保護管内壁に圧接させる構成とすることで、簡単な構造で確実且つ容易に直接的な熱伝導を行い、温度検出における優れた応答性を発揮することができる。また、バネ材のサイズや数を設定するだけでシース温度計の任意の長さ部位を保護管内壁に圧接させることが可能であり、用途や保護管、シース温度計の種類やサイズに応じて適した熱的接触状態を容易且つ低コストに得ることができる。
【0013】
また、脱着操作は、外周面上にバネ材を取り付けたシース温度計を保護管内に挿着/離脱させるだけの簡易な操作で可能となり、またバネ材は長手方向に延びる線状又は板状のバネであるため脱着の際に保護管内壁が多少荒れていてもバネ材の引掛かりや歪みが生じることもなくスムーズに操作でき、屈曲した保護管に対して追従できる自由度もある。また従来の提案のような充填物の漏れ出しの虞やネジ部の固着等の虞もなく、また挿着状態においてはバネ材はシース温度計の外周面上に安定した姿勢が維持され、振動等によっても熱的接触状態は安定し、応答性のブレもほとんど生じない精度の高い測定が可能となる。
【0014】
また、バネ材の自由端に略T字状ないし略Y字状に左右に膨出した摺動受け部を設けたので、該摺動受け部がシース温度計の外周面上を長手方向に移動してバネ材のスムーズな変形が可能となり、またその弾性復元力が安定してシース温度計に作用する。また、この変形容易性により保護管内への挿着操作が極めて容易となり、安定した弾性復元力の作用により保護管内壁への良好な圧着状態が確保される。
【0015】
また、バネ材が長手方向に湾曲形状部を二つ以上連設してなり、これら湾曲形状部の間の所定位置をシース温度計外周面に固定するとともに両端側を自由端としたので、シース温度計の比較的長い範囲を保護管内壁に安定且つ均一に圧着させることが可能となる。
【0016】
また、バネ材の一端側をシース温度計外周面に固定するとともに、他端側を自由端としたので、シース温度計の比較的短い範囲に絞って保護管内壁に圧着させることができ、例えば先端部に感温長さがあるシース測温抵抗体などの場合に特に有効である。
【0017】
また、バネ材の一端側をシース温度計外周面に固定するとともに、他端側をシース温度計先端部よりも先端側に延出した自由端としてなり、当該シース温度計の保護管内への装着により、前記バネ材の延出した他端側が保護管底壁に当接し、当該バネ材の湾曲形状部が保護管内壁側に当接変形し、その弾性復元力によりシース温度計外周面の前記バネ材と反対側の部位を保護管内壁に圧接させる構成とすることで、同じく簡単な構造で確実且つ容易に直接的な熱伝導を行い、温度検出における優れた応答性を発揮することができ、さらにはバネ材の他端側が保護管底壁に当接して湾曲形状部を保護管内壁に当接させるものであるから、バネ材と保護管内壁との間に隙間を有する寸法に設定することもでき、シース温度計の装着作業をよりスムーズに行うことが可能となる。また、シース温度計の装着位置と前記バネ材の延出長さを適宜設定することで、保護管内壁に対しシース温度計をより確実かつ強固に圧着させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る温度計測器の全体構成を示す説明図、(b)は同じく温度計測器のA−A横断面図。
【図2】(a)は同じく温度計測器の保護管内に挿着するバネ材を設けたシース温度計を示す側面図、(b)は同じく斜視図。
【図3】バネ材に湾曲形状部を一つのみ設けた変形例を示す斜視図。
【図4】バネ材を板材で構成した変形例を示す斜視図。
【図5】摺動受け部を略Y字状に形成した変形例を示す横断面図。
【図6】(a)、(b)はバネ材の変形例を示す側面図。
【図7】(a)、(b)はバネ材のさらに他の変形例を示す側面図。
【図8】(a)〜(c)は本発明の第2実施形態に係る温度計測器の要部を示す縦断面図。
【図9】(a)〜(d)は応答速度試験に用いた各比較例の構造を説明する説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1(a)は、本発明に係る温度測定器の全体構成を示す図であり、図1〜7は第1実施形態、図8は第2実施形態を示し、図中符号1は温度測定器、2はシース温度計、3は保護管、4はバネ材をそれぞれ示している。
【0021】
第1実施形態の温度測定器1は、図1(a),(b)に示すように、シース温度計2を保護管3内に装着して構成されるものであり、特に、シース温度計2の外周面20上の径方向所定角度部位20aに、長手方向に沿って外方に湾曲した形状の湾曲形状部5,5を備えるバネ材4を設けて、当該バネ材4の湾曲形状部5,5を保護管内壁30aに当接変形させ、その弾性復元力によりシース温度計外周面20のバネ材4と反対側の部位20bを保護管内壁30bに圧接させたことを特徴としている。
【0022】
なお、シース温度計2は、従来から公知の種々の用途に応じた各種シース熱電対やシース測温抵抗体などを適用でき、保護管3についても前記シース熱電対やシース測温抵抗体などとともに従来から使用されている公知のものを使用できる。また、用途としては、上記した技術分野の説明において重合用反応器に好適であることを挙げたが、本発明はこのような用途に限定されるものではなく、例えば耐食性が高く被処理物へのコンタミ(汚染)を防止できるがその反面応答性に課題があるガラスライニング温度計に適用すると、応答性の高い温度計を得ることができ好ましい。また、バネ材4は、これらシース温度計2と保護管3の寸法等に応じて、上記弾性復元力よる圧接機能を発揮しうるような適宜な寸法(太さ、形状)に設定すればよい。
【0023】
バネ材4は、屈曲した線材より構成されており、図2にも示すように、長手方向に湾曲形状部5,5が二つ連設され、これら湾曲形状部5,5の間のシース温度計外周面20上に当接する所定位置(略中央位置)40がシース温度計2の外周面20上の所定角度部位20aに固定されている。またバネ材4の両端側は、それぞれ外周面20(所定角度部位20a)に対して長手方向に摺動する自由端41,41とされている。したがって、保護管3内にバネ材4を設けたシース温度計2を挿着する際、バネ材4の湾曲形状部5,5は保護管内壁に押されて弾性復元力を溜めつつ潰されるように変形するが、各自由端41が外側に移動し、スムーズに前記変形を許容するのである。
【0024】
また、バネ材4は、具体的にはステンレス等の金属線材を屈曲加工して構成されている。ここで、金属線材をとくに熱伝導の優れた金属材料とすれば、保護管内壁30bに直接圧接されるシース温度計外周面20の反対側部位20b以外に、保護管内壁30aに当接する湾曲形状部5,5を介してシース温度計2に熱伝達することができる点で好ましい。ただし、バネ材4の材料は変形により弾性復元力が生じるものであれば特に限定されず、金属材料以外の素材で構成することも可能である。また、バネ材4を線状で構成するもの以外に、例えば図4に示すように、板材で構成することも可能である。
【0025】
このバネ材4は、シース温度計2の外周面20の所定角度部位20a上に長手方向に沿って設けられ、該バネ材4の湾曲形状部5が保護管内壁30aに当接することで、そのバネ材4の弾性復元力の反力によりシース温度計2の同じく外周面20の180°反対側の部位20bが保護管内壁30bに圧着されることとなる。バネ材4の外周面20(所定角度部位20a)上への取り付け方法は、本例では溶接等により固定しているが、それ以外に、例えばシース温度計外周面20上に係止用の突起を設け、該突起にバネ材4に設けた係合穴を係止させることでバネ材4を長手方向に移動不能に係合するように取り付けることも好ましい実施例である。同じく係合状態に取り付ける方法として、湾曲形状部5,5の内側の立ち上がり部分に係止される突起をそれぞれ設け、両方から挟み込むように係合することも好ましい。
【0026】
バネ材4の両端側の自由端41,41には、それぞれ略T字状に左右に膨出した摺動受け部6が設けられており、この摺動受け部6がシース温度計2の外周面20の所定角度部位20a上を長手方向に移動することで湾曲形状部5のスムーズな変形が可能となるとともに、その弾性復元力が安定してシース温度計2に作用することとなる。この変形容易性により保護管内への挿着操作が極めて容易となり、安定した弾性復元力の作用は保護管内壁30bへの良好な圧着を担保し、温度計測の優れた応答性を確実に発揮させるものである。
【0027】
この摺動受け部6は、本例ではバネ材4を構成している線材の両端側をそれぞれ左右に折り畳むように往復変形させて形成されているが、シース温度計外周面20の所定角度部位20a上から周方向にすべり落ちない受け機能を奏する形状であれば、例えば口形にしたりその他の形状に構成することも可能である。また、図5に示すように摺動受け部6を略Y字状に形成することが好ましい実施例である。T字状の摺動受け部6では、シース温度計2を保護管3へ挿入してシース温度計外周面20上をスライドさせる際、横ずれして保護管内壁に接触する場合があり、保護管内壁にギャップが生じていたり内壁の加工が粗いときには、このような接触によって摺動受け部6が保護管内壁に引っかかり破損する虞があるが、図5のように略Y字状に構成すれば、上記横ずれを防止して破損を未然に回避でき、シース温度計2の保護管3への挿入をスムーズに好適に行うことができる。特に、図5では外周面20を包み込むように曲線的な略Y字状に構成されており、外周面20上のよりスムーズなスライド移動を可能としている。
【0028】
また、当該摺動受け部6を別途構成して溶接等で線材両端側に取り付けて構成しても勿論よい。また、上述したようにバネ材4を板材で構成する場合には、図4に示すように同じく略T字状に左右に膨出した形状としてもよいが、板材の幅によってはこのような膨出形状を構成せずに湾曲形状部5と同じ幅の端面を摺動受け部6として機能させることも可能となる。また、このようにバネ材4を板材で構成する場合においても、横ずれを防止するべく摺動受け部6を略Y字状に構成したり、少なくとも当接部分にシース熱電対2の外周面を一部受け入れる凹状部を設けておくことが好ましい。
【0029】
バネ材4の湾曲形状部5は、本例では二つ設けているが、三つ以上連設してもよい。この場合、本例と同様、何れかの湾曲形状部間の所定位置でシース温度計外周面20の所定角度部位20aに固定或いは係合させることが好ましい。また、図3に示すように、湾曲形状部5を一つ又は複数設けるとともに、自由端41と反対側の端部を固定端としてシース温度計外周面に固定又は係合させるように構成してもよい。図3のように湾曲形状部5を一つのみ設けたものでは生じる弾性復元力はシース温度計2の一部の範囲となるが、シース熱電対の場合など測温点が先端など一部に限定される場合はその測温点の部位を保護管内壁に圧接させるべく、このような一つのみの湾曲形状部5を位置させるように構成することも有効である。湾曲形状部5の数が少ないと保護管内への脱着の際の抵抗が小さくなり作業性が向上する。
【0030】
シース温度計2の外周面20へのバネ材4の取り付けは、以上の説明のように固定或いは係合により支持する方法以外に、例えばバネ材4の全体が所定距離だけ長手方向に自由に移動できるように拘束して取り付けることも可能である。例えば、シース温度計2の外周面20上に長手方向に所定距離離してバネ材4を当止させる一対の突起を設け、これら突起間を移動できるようにバネ材4を取り付けるようにしてもよい。また、図4に示すようにバネ材4が板材から構成される場合には、該バネ材4に長穴を設け、これに係合する突起を外周面20上に設けて長穴の長さだけバネ材4が移動できるように構成したものでもよい。
【0031】
以上、本実施形態ではシース温度計2の外周面20上にバネ材4を1つのみ設けた例について説明したが、シース温度計2や保護管3の長さ、用途、種類に応じて、長手方向に複数のバネ材を連設するようにしてシース温度計2のより長い任意の範囲を保護管内壁に圧着させるようにすることも好ましい例である。
【0032】
また、以上の例ではバネ材4として、湾曲形状部5の一端側をシース温度計2の外周面所定角度部位20aに固定し、他端側の自由端41を外周面20(所定角度部位20a)に対して長手方向に摺動するように構成したが、その他の例として、例えば図6に示すように、一端側の所定位置40を同じくシース温度計2の外周面所定角度部位20aに固定するとともに、当該固定された部位から略V字状ないし略C字状に折り返して斜め上方に延びる湾曲形状部5を構成し、その端部が上下方向に自由に移動する自由端41としたものも好ましい。図中(a)ではこのようなバネ材4を複数設けた例、図中(b)では比較的長いバネ材4を一つ設けた例を示しており、いずれも先端側から基端側に折り返した湾曲形状部5を設けているが、中央部を固定し、両端側にそれぞれ先端側から基端側に折り返したものと基端側から先端側に折り返したものとよりなる一対の湾曲形状部を設けたものも勿論可能である。
【0033】
また、さらに他の例として、例えば図7に示すように、バネ材4を環状または両端が固定される略C字状に形成することも可能である。図中(a)は環状に構成したもの、図中(b)は略C字状に構成したものを例示しており、何れも湾曲形状部5は中央位置が山形に屈曲した略五角形の形状とされているが、保護管内壁30aに当接して全体が変形しやすい形状であれば、その他の形状、例えば曲げ部分のRを小さくして菱形に近い形状にしたり、逆に緩やかにカーブする長円形状にすることも好ましい。尚、上記図6、7に示す例においても、バネ材4は丸棒等の線状で構成するもの以外に平板等の板材で構成することも勿論可能である。
【0034】
また、上記実施形態においては押圧部材としてバネ材を利用した場合について説明したが、これに限定されず、例えば押圧部材として、スポンジ状の樹脂片や、ゴム片等を利用しても良い。なお、これらの押圧部材を利用する場合も、シース温度計の任意の部位と保護管が直接接触するように配置し、押圧部材が接触部分に介在しないようにすることが好ましい。
【0035】
次に、図8に基づき本発明の第2実施形態を説明する。
【0036】
本実施形態では、図8(a)に示すように、バネ材4の湾曲形状部5を挟んだ一端側の所定位置40がシース温度計2外周面20上の所定角度部位20aに固定されるとともに、他端側がシース温度計2の先端部21よりも先端側に延出した自由端41とされている。そして、保護管3内にバネ材4を設けたシース温度計2を挿着する際、図8(b)に示すようにバネ材4の延出した他端側の自由端41が保護管3の底壁30cに当接することで、該自由端41からバネ材4が縮まる方向に押され、図8(c)に示すように当該バネ材4の湾曲形状部5が保護管内壁30a側に更に突き出るように屈曲して頂部が当接してさらに変形し、当該変形したバネ材4の弾性復元力の反力によりシース温度計2の同じく外周面20の180°反対側の部位20bが保護管内壁30bに圧接されることとなる。
【0037】
このような構成によれば、バネ材4の他端側の自由端41が保護管底壁30cに当接して湾曲形状部5が湾曲して保護管内壁30aに当接させるものであるから、変形前のバネ材2と保護管内壁30aとの間に隙間を有する寸法に設定することができ、シース温度計2の装着作業をよりスムーズに行うことが可能となるのである。バネ材4は線材でも板材でもよく、素材その他の変形例等についても上記第1実施形態と同じであるので、その説明は省略する。尚、本例では湾曲形状部5を固定される位置40と自由端41との間に一つのみ設けているが、これに限らず二つ以上連設したものでもよい。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例】
【0039】
次に、本発明に係る実施例1と他の構造の比較例1〜4について、応答速度を試験した結果について説明する。尚、何れもシース温度計はシース測温抵抗体とした。
【0040】
実施例1は図1に示した構造のものであり、比較例1は、図5(a)に示すようにストレートのシース温度計102をストレートの保護管103内に隙間を介して挿着した従来からの通常の構造である。比較例2は、図5(b)に示すようにシース温度計102の先端をリング状に屈曲形成し、該先端のリング部を保護管先端の内壁103a(底壁)に押し付けた構造のものである。比較例3は、図5(c)に示すように保護管103先端の縮径部分103bを熱伝導に優れたタンタルで構成し、その縮径部分103bに微小隙間を介してシース温度計102の先端側を内装したものであり、上述した特許文献3に相当するものである。比較例4は、図5(d)に示すようにシース温度計102の外周面に薄板状のフィン107を取り付け、これを保護管103内壁に沿わせるようにし、該フィン107を介して保護管からシース温度計に熱伝導させる構造のものである。
【0041】
試験は、92℃温水循環槽へ実施例1、比較例1〜4の各温度測定器を瞬時に挿入し、測温抵抗体の温度上昇を時間(秒)で計測した。結果を下記表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1から分かるように、本発明の実施例1では、63.20%まで30秒ほど、90%まで1分程度で達しており、充分な応答速度を備えていることが分かる。これに対し、比較例1は、63.20%まで上昇するのに4分近く、90%まで上昇するのに8分以上かかっており、かなり遅れている。これはシース測温抵抗体の測温部分が直接保護管内壁に接することがなく、空気層の存在により側面部からの伝熱も時間がかかり応答速度が悪いためである。
【0044】
比較例4はフィンを介して接触したものであるが、間接的な伝熱であるが故に応答速度の向上効果も僅かであったと予測できる。比較例2は直接接触しており比較例1、4よりも応答性は向上しているが、90%まで2分以上経過しており充分ではない。これはシース測温抵抗体が保護管底面でのみ接するため、測温部分までの伝熱時間がかかるためと予測できる。比較例3は他の比較例の中では最も応答性が良かったが、それでも90%まで2分近く要している。
【0045】
以上の結果より、測温部分であるシース外周面を直接保護管内壁に圧接させている本発明は、応答性が極めて優れていることが分かる。尚、比較例3の先端部分は他の部分と異なる材質(タンタル)により構成して螺合等により組み付けたものであるが、このような組み付け部は被処理物のコンタミ(汚染)の原因となるとともに該先端部が腐食する原因ともなるが、本発明ではこのような先端部分やその組み付け部が存在せずに、通常のストレート保護管の内部にシース温度計をバネ材とともに内装して容易に構成できるため、被処理物のコンタミや腐食等の虞もない。
【符号の説明】
【0046】
1 温度測定器
2 シース温度計
3 保護管
4 バネ材
5 湾曲形状部
6 摺動受け部
20 外周面
21 先端部
20a 外周面
20b 外周面
30a 内壁
30b 内壁
30c 底壁
40 位置
41 自由端
102 シース温度計
103 保護管
103a 内壁
103b 縮径部分
107 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シース温度計を保護管内に装着してなる温度測定器において、
押圧部材としてシース温度計の外周面上に、長手方向に沿って外方に湾曲した形状の線状または板状のバネ材を設け、該バネ材の一端側を前記シース温度計外周面に固定するとともに他端側を前記シース温度計先端部よりも先端側に延出した自由端としてなり、
当該シース温度計の保護管内への装着により、前記バネ材の延出した他端側が保護管底壁に当接し、当該バネ材の湾曲形状部が保護管内壁側に当接変形し、その弾性復元力によりシース温度計外周面の前記バネ材と反対側の部位を保護管内壁に圧接させたことを特徴とする温度測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−15540(P2013−15540A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−234679(P2012−234679)
【出願日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【分割の表示】特願2008−196780(P2008−196780)の分割
【原出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【出願人】(390007744)山里産業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】