説明

温度測定装置、温度測定装置のセンサー制御方法、表示装置及び電子機器

【課題】温度を検出する温度センサーの信頼性を確保する。
【解決手段】温度測定装置20は、第1温度センサー21と、第2温度センサー22と、温度検出制御回路200とを有する。温度検出制御回路200は、第1温度センサー21によって検出された温度から所定の時間長における温度変化を求め、当該温度変化が閾値よりも大きいか否かを判別し、当該温度変化が前記閾値よりも大きいと判別した場合に、信号S2をHレベルにして、第2温度センサー22をアクティブ状態とさせる一方、当該温度変化が前記閾値以下である判別した場合に、信号S1をLレベルにして、第2温度センサー22をノン・アクティブ状態とさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサーの信頼性を確保する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置、例えば液晶装置は、2つの電極同士で液晶層を挟持した液晶素子の透過率または反射率を画素毎に変化させることで、所定の画像を表示するものである。液晶素子は、2つの電極で保持される電圧が同じであっても液晶層の温度によって透過率等が変化するので、液晶層の温度を検出し、検出した温度に応じて各種の制御を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、液晶層の温度を検出するセンサーについては、例えば画素を駆動するトランジスターなどの素子の製造プロセスを用いて形成する技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−256821号公報
【特許文献2】特開平9−5713号公報
【特許文献3】特開2000−338518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサーについては、まず抵抗体の温度依存性を利用したものが考えられるが、上記製造プロセスで形成可能な抵抗材料は、比較的抵抗値が低い。このため、ある程度の精度を確保するために大きな抵抗値の抵抗体を設けようとすると、大きな面積または長い配線長が必要となる。一方、上記特許文献3には、トランジスター特性の温度依存性を利用した技術が提案されているが、トランジスターを常時オン状態にして、微小電流を流し続けるのは、素子の信頼性を低下させてしまうので、好ましくない。
本発明は、上述した背景に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、温度を検出するセンサーの信頼性を確保することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明に係る温度測定装置にあっては、温度を検出する第1温度センサーと、アクティブ状態のときに温度を検出する第2温度センサーと、前記第1温度センサーによって検出された温度から所定の時間長における温度変化を求める温度変化出力部と、前記温度変化が閾値よりも大きいか否かを判別する判別部と、前記温度変化が前記閾値よりも大きいと判別された場合に、前記第2温度センサーを前記アクティブ状態とさせる温度センサー制御部と、を具備することを特徴とする。本発明によれば、温度変化が閾値よりも大きい場合に、第2温度センサーがアクティブ状態に移行して温度を検出する。
本発明において、前記第2温度センサーは、ノン・アクティブ状態のときに温度の検出を停止するものであり、前記温度センサー制御部は、前記温度変化が前記閾値以下である判別された場合に、前記第2温度センサーを前記ノン・アクティブ状態とさせる構成が好ましい。この構成によれば、第2温度センサーは、温度変化が閾値よりも大きくない場合にノン・アクティブ状態になるので、長期間にわたってアクティブ状態が継続することによって信頼性が低下してしまうことを防止することが可能になる。
【0006】
このような構成によって温度変化が緩やかであると、温度変化が閾値以下であると判別される場合が継続して、第2温度センサーがアクティブ状態に移行しない状況が発生し得る。そこで、本発明においては、前記温度変化が前記閾値以下であると判別された回数が所定値を超えた場合、前記温度センサー制御部は、前記第2温度センサーを前記アクティブ状態にさせる態様にすると、上記状況を回避して、第2温度センサーによって温度を検出することができる。
また、前記第1温度センサーは、複数の異なる地点に設けられ、前記温度変化出力部は、前記第1温度センサー毎に温度変化をそれぞれ求め、前記判別部は、前記第1温度センサー毎に求められた温度変化の各々について前記判別を実行し、前記温度センサー制御部は、前記第1温度センサー毎に求められた温度変化のいずれかが前記閾値よりも大きいと判別された場合に、前記第2温度センサーを前記アクティブ状態とさせる構成も好ましい。温度分布が一様でないと、ある箇所では温度変化が大きくても、別の箇所では温度変化が小さい状況が発生し得る。このような状況下でも、上記構成によれば、第2温度センサーがアクティブ状態に移行して温度を検出するので、不均一な温度変化に対する早期の対応が可能になる。
【0007】
本発明は、温度測定装置のほか、温度測定装置のセンサー制御方法としても概念することができる。また、映像信号に応じた画像を表示パネルは、温度に応じて光学応答特性が変化する場合が多い。このため、本発明に係る温度測定装置を、表示パネルを有する表示装置に適用し、検出した温度に応じて映像信号を補正するように構成しても良い。また、本発明は、このような表示装置を含む電子機器としても概念することが可能である。このような電子機器としては、表示パネルに強い光が照射されて温度変化が生じやすいプロジェクターなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る温度測定装置が適用される液晶装置を示す図である。
【図2】温度センサーの一例を示す図である。
【図3】温度測定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】温度測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】温度測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】第3実施形態に係る温度測定装置が適用される液晶装置を示す図である。
【図7】温度測定装置の構成を示すブロック図である。
【図8】温度測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】液晶装置を適用したプロジェクターの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る温度測定装置を適用した液晶装置の構成を示すブロック図である。
この図に示されるように液晶装置1は、温度測定装置20、映像補正回路30、表示制御回路40および液晶パネル100を含んだ構成となっている。この液晶装置1は、概略すると、映像信号Vaを温度測定装置20によって検出した温度Tに応じて補正するとともに、当該補正した映像信号Vbに基づいた画像を表示するものである。
【0010】
映像信号Vaは、表示すべき映像の明るさ(輝度)を、例えばそれぞれ「0」から「255」までの階調レベルで画素毎に指定するデジタルデータであり、図示省略した上位装置から同期信号Syncにしたがって供給される。
映像補正回路30は、映像信号Vaを、温度測定装置20によって検出された温度Tに応じて補正して、当該映像信号Vbとして出力する。上述したように液晶素子の透過率等は保持電圧が同じでも温度によって変化する。このため、映像補正回路30は、検出された温度Tにおいて、指定された階調レベルに応じた透過率等となるように映像信号Vaを補正する。また、映像補正回路30は、補正した映像信号を表示制御回路40で指定された極性のアナログ電圧に変換して映像信号Vbとして出力する。ここで、極性とは、正極性と負極性とのいずれかであり、液晶素子に直流成分が印加されないように、例えば垂直走査期間毎に正極性と負極性とで交互に切り替えられる。
なお、映像補正回路30としては、入力した階調レベルと補正した階調レベルとの対応関係を記憶したルックアップテーブルを温度範囲毎に複数用意しておき、検出された温度Tに応じたルックアップテーブルを選択する構成や、映像信号Vaを温度Tに応じて演算して出力する構成など様々な構成が考えられる。
【0011】
表示制御回路40は、映像補正回路30と液晶パネル100とを同期信号Syncにしたがって制御する。
液晶パネル100は、液晶素子を含む画素がマトリクス状に配列する表示領域110と、これらの液晶素子に映像信号を書き込む駆動回路120とを有する。駆動回路120については、表示制御回路40にしたがって表示領域110を垂直走査および水平走査するとともに、走査した画素に対して、補正・変換された映像信号Vbを書き込む。この書き込みによって、表示領域110における各液晶素子は、温度Tにおいてそれぞれ映像信号Vaで規定された透過率等になって、これにより所定の画像が形成されることとなる。
【0012】
さて、温度測定装置20は、第1温度センサー21、第2温度センサー22、スイッチ23、24および温度検出制御回路200等を含んでいる。このうち、第1温度センサー21および第2温度センサー22は、液晶パネル100において表示領域110の外側に設けられて、それぞれ液晶層の近傍の温度を検出する。
第1温度センサー21は、スイッチ23がオンして(閉じて)いるときにアクティブ(オン)状態になって、温度情報T1を出力する。ただし、スイッチ23は、後述するステップSa1以降、オンし続けるので、第1温度センサー21は、常時アクティブ(オン)状態である。
一方、第2温度センサー22は、スイッチ24がオンしているときにアクティブ状態になって温度情報T2を出力する。ただし、第2温度センサー22は、スイッチ24がオフして(開いて)いるとき、ノン・アクティブ(オフ)状態になって温度情報T2の出力を停止する。
【0013】
温度検出制御回路200は、信号S1、S2を出力して、第1温度センサー21および第2温度センサー22をそれぞれ制御する一方、第2温度センサー22による温度情報T2から温度Tを求めて、映像補正回路30に供給するものである。
【0014】
次に、第1温度センサー21について図2を参照して説明する。図2は、第1温度センサー21(第2温度センサー22)の一例を示す回路図である。
液晶パネル100は、特に図示しないが、画素電極等やスイッチングトランジスターなどが形成された素子基板と、コモン電極が設けられた対向基板とが、シール材によって一定の間隙を保って、互いに電極形成面が対向するように貼り合わせられて、両電極同士で液晶層を挟持した構造になっている。
検出素子25は、液晶パネル100における素子基板の製造プロセスを用いて形成されたトランジスターであり、ゲート・ドレイン同士が接続されている。
なお、液晶パネル100の素子基板を、高温ポリシリコンプロセスや低温ポリシリコンプロセスによって形成する場合には、検出素子25として、当該プロセスによって形成した薄膜トランジスター(Thin Film Transistor:以下「TFT」という)を用いれば良い。また、素子基板としてシリコン基板を用いて、いわゆるLCOS(Liquid Crystal on Silicon)型とする場合には、検出素子25として、当該シリコン基板に形成された電界効果型トランジスターを用いれば良い。
【0015】
さて、図2において、スイッチ23がオンしているとき、基準電圧Vrefを基準抵抗Rで分圧した電圧が、検出素子25のゲート・ソース間にバイアスされる。このとき、検出素子25の両端(ソース・ドレイン)間に流れる電流は温度に応じて変化するので、この両端電圧を、例えば反転増幅回路によって取り出す構成になっている。
なお、反転増幅回路によって取り出された電圧は、検出素子25の設置地点における温度を反映したものとなるので、本実施形態では、これを温度情報T1として用いている。
【0016】
本実施形態においては、第2温度センサー22についても、図2において括弧で示されるように第1温度センサー21と同様な構成になっている。このため、スイッチ24がオンしているときに、検出素子25のソース・ドレイン間の電圧を反転増幅回路によって取り出した電圧は、検出素子25の設置地点における温度を反映したものとなるので、本実施形態では、これを温度情報T2として用いている。
ただし、スイッチ24がオフであるときに、検出素子25はバイアスされないので、ソース・ドレイン間に電流が流れない、すなわちノン・アクティブ(オフ)状態になる。
なお、スイッチ23は、信号S1がHレベルのときにオンする一方、Lレベルのときにオフする。同様にスイッチ24は、信号S2がHレベルのときにオンする一方、Lレベルのときにオフする。
【0017】
図2に示した第1温度センサー21(第2温度センサー22)については、一例に過ぎず、このほかにも種々の構成が適用可能である。例えば、検出素子25として、ポリシリコン膜などの温度依存性を有する抵抗体やダイオード素子を用いても良い。また、第1温度センサー21および第2温度センサー22については、互いに同一の構成である必要はなく、異なる構成でも良い。いずれもしても、第2温度センサー22については、スイッチ24のオンオフによって、検出素子25がバイアスされ、または、されない構成であれば良い。
検出素子25については、表示領域110内に形成すると、液晶層の温度をより正確に検出することができる。検出素子25については液晶パネル100に形成するのが好ましいが、検出素子25よりも後段の反転増幅回路については、液晶パネル100に対して外付けとなるように構成しても良い。
【0018】
続いて、図1における温度検出制御回路200について説明する。図3は、温度検出制御回路200の構成を示すブロック図である。
図3に示されるように、温度検出制御回路200は、温度変化出力部201、判別部202および温度センサー制御部203を有する。このうち、温度変化出力部201は、温度情報T1で示される温度を所定の時間tの間隔で、例えば10秒毎に取得するとともに、その時間tでの温度変化率ΔT/tを出力する。なお、温度変化率とは、所定の時間長における温度変化分である。温度変化率ΔT/tは、絶対値を取ることが閾値との比較による判別時に都合が良い。
判別部202は、温度変化出力部201から出力された温度変化率ΔT/tが、予め定められて閾値よりも大きいか否かを判別する。
温度センサー制御部203は、内部タイマーを有するほか、内部レジスタにおいて変数を取り扱う。また、温度センサー制御部203は、判別部202の判別結果に応じて各部を制御したり、所定の場合に、第2温度センサー22から取得した温度情報T2から温度Tを求めて映像補正回路30(図1参照)に供給したりする。
【0019】
次に、液晶装置1、特に温度測定装置20の動作について図4を参照して説明する。図4は、温度測定装置20の動作を示すフローチャートである。
まず、液晶装置1の電源が投入されると、温度センサー制御部203は、信号S1をHレベルにしてスイッチ23をオンさせる。これにより、第1温度センサー21がアクティブ状態になる(ステップSa1)。なお、信号S1は、液晶装置1に電源が投入されていれば、以後Lレベルになることはない。このため、以後、スイッチ23がオンし続けるので、第1温度センサー21は、アクティブ状態を維持することになる。
【0020】
この後、温度センサー制御部203は、信号S2をHレベルにしてスイッチ24をオンさせる。これにより、第2温度センサー22もアクティブ状態になる(ステップSa2)。そして、温度センサー制御部203は、アクティブ状態、すなわち検出素子25がバイアスされた状態の第2温度センサー22から温度情報T2を取得し、温度Tを求めて、映像補正回路30に供給する(ステップSa3)。映像補正回路30は、供給された温度Tを記憶するとともに、以後、温度Tが変更されるまで、当該温度Tに応じて映像信号Vaを補正する。
これによって、液晶装置1では、電源が投入された後に、液晶パネル100の温度Tがとりあえず1回検出される構成になっている。
【0021】
温度センサー制御部203は、内部タイマーをリセットして、時間計測を開始し(ステップSa4)、温度変化出力部201に対し、アクティブ状態に維持された第1温度センサー21から温度情報T1を取得させる(ステップSa5)。温度センサー制御部203は、温度変化率を求めるのに必要な時間t、上述した例でいえば10秒の時間が内部タイマーによって計測されるまで待機する(ステップSa6)。時間tが経過したとき、温度センサー制御部203は、温度変化出力部201に対し、第1温度センサー21から温度情報T1を再度取得させる(ステップSa7)。
【0022】
温度変化出力部201は、ステップSa5、Sa7でそれぞれ取得した温度情報T1から温度変化率ΔT/tを求めて、判別部202に供給する(ステップSa8)。
判別部202は、温度変化率ΔT/tが閾値よりも大きいか否かを判別し、その判別結果を温度センサー制御部203に通知する(ステップSa9)。
温度センサー制御部203は、ステップSa9の判別結果が「Yes」の場合、処理手順をステップSa2に戻す。これによって、温度変化率ΔT/tが閾値よりも大きくなるほどに、温度が急激に変化した場合には、第2温度センサー22から再び温度Tが求められて、当該温度Tに応じて映像信号が補正されることになる。
一方、温度センサー制御部203は、ステップSa9の判別結果が「No」の場合、信号S2をLレベルにして、スイッチ24をオフさせる。これにより、第2温度センサー22はノン・アクティブ状態になる(ステップSa10)。
この後、温度センサー制御部203は、処理手順をステップSa4に戻し、次の温度変化に備える。詳細には、温度センサー制御部203は、温度変化率ΔT/tが閾値よりも大きくなるまで、ステップSa4〜Sa10の処理を循環する。循環している途中で、温度変化率ΔT/tが閾値よりも大きくなると、ステップSa9の判別結果が「Yes」となって、ステップSa2に移行させる。
【0023】
このように第1実施形態において、液晶パネル100の温度変化率が閾値以下であれば、ステップSa4〜Sa10の循環によって、第2温度センサー22は、ノン・アクティブ状態を維持するが、温度変化率が閾値よりも大きくなると、ステップSa2に移行してアクティブ状態になる。これによって、温度センサー制御部203は、第2温度センサー22から温度情報T2を取得し、温度Tを求めて、映像補正回路30に供給し、映像補正回路30は、以後、この温度Tに応じて映像信号を補正することになる。
【0024】
第1実施形態によれば、温度変化率ΔT/tが閾値以下となるような微小の温度変化であれば、第2温度センサー22がノン・アクティブ状態を維持するので、検出素子25がバイアスされない。このため、検出素子25の劣化が防止されて、その分、素子の寿命を延ばして、信頼性を確保することが可能になる。
一方、第1温度センサー21は、常時アクティブ状態であるが、あるタイミングでの温度を絶対的に検出するためではなく、時間間隔tにおける相対的な温度変化を求めるために用いているので、温度の検出精度の低下は問題にならない。
【0025】
ところで、第1実施形態では、液晶パネル100において微小な温度変化が継続した場合、ステップSa9の判別結果が連続して「No」になってしまい、第2温度センサー22による検出温度に応じて映像信号を補正することができない点が懸念される。
そこで次に、この点を払拭した第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態に係る液晶装置1は、温度検出制御回路200を含めて、構成的には、図1、図2および図3に示した第1実施形態と同一であるが、動作が相違している。このため、第2実施形態では、動作を中心にして説明することにする。
【0026】
図5は、第2実施形態に係る液晶装置1における温度検出制御回路200の動作を示すフローチャートである。
この図において、第1実施形態における図4と相違する部分は、第1に、ステップSa1、Sa2の間に、ステップSb1を設けた点と、第2に、ステップSa10の次に、ステップSb2、Sb3を設けた点と、にある。
まず、第1の点について説明すると、温度センサー制御部203は、第1温度センサー21をアクティブ状態にするステップSa1の後、ステップSb1において、内部レジスタにおける変数Cをゼロにリセットする。
次に、第2の点について説明すると、温度センサー制御部203は、第2温度センサー22をノン・アクティブ状態にするステップSa10の後、ステップSb2において、変数Cを「1」だけインクリメントし、続くステップSb3において、当該変数Cが閾値(例えば「5」)よりも大きいか否かを判別する。
【0027】
温度センサー制御部203は、当該判別結果が「No」であれば、すなわち変数Cが閾値以下であれば、処理手順をステップSa4に戻して、次の温度変化に備える。
一方、温度センサー制御部203は、当該判別結果が「Yes」であれば、処理手順をステップSb1に戻す。上述したように変数Cがインクリメントされるのは、ステップSb2であり、これは、ステップSa10の判別結果が「No」となることが前提である。したがって、ステップSb3における判別結果が「Yes」になる場合とは、ステップSa9における「No」という判別結果が閾値回数を超えた場合である。この場合に、処理手順がステップSb1に戻って、変数Cがゼロにリセットされるとともに、強制的に第2温度センサー22がアクティブ状態になって、温度情報T2を出力する。
【0028】
よって、第2実施形態によれば、液晶パネル100において微小な温度変化が継続して、ステップSa9の判別結果が連続して「No」になっても、この「No」と判別した回数が閾値を越えた時点で、第2温度センサー22がアクティブ状態に移行する。
例えば、上述したようにステップSa6において計測する時間間隔tが10秒であり、ステップSb3における閾値が「5」であれば、ステップSa9で「No」と判別した回数が「5」の次の「6」になった時点で、すなわち60秒毎に、強制的に第2温度センサー22がアクティブ状態に移行する。
このため、第2実施形態では、微小な温度変化が継続するような場合であっても、映像信号を温度に応じて適切に補正することが可能になる。
【0029】
なお、第2実施形態において、ステップSa9の判別結果が「Yes」である場合に、処理手順の戻り先をステップSb2としていたが、図5において破線で示されるように、ステップSb1としても良い。ステップSa9の判別結果が「Yes」である場合に、処理手順の戻り先をステップSb1にすると、温度変化率ΔT/tが閾値よりも大きいと判別されて、第2温度センサー22がアクティブ状態になったとき、同時に変数Cがリセットされる。
【0030】
ところで、液晶パネル100は、均一に温度変化するとは限らない。例えば液晶パネル100のうち、特定領域に強い光が照射された場合、当該特定領域を中心に温度が急激に上昇すると考えられる。このとき、第2(第1)実施形態のように、第1温度センサー21が1つだけであると、その温度変化を検出するまで時間を要してしまうことになる。
そこで、この点を改善した第3実施形態について説明する。
【0031】
図6は、第3実施形態に係る温度測定装置を適用した液晶装置1の構成を示すブロック図である。この図に示されるように、第3実施形態では、液晶パネル100の四隅の各々に、第1温度センサー21a、21b、21c、21dが設けられる。
第1温度センサー21aは、信号S1がHレベルのときスイッチ23のオンによってアクティブ状態となって、温度情報T1aを出力する。同様に第1温度センサー21b、21c、21dは、信号S1がHレベルのときスイッチ23のオンによってアクティブ状態となって、それぞれ温度情報T1b、T1c、T1dを出力する。なお、第3実施形態においても電源が投入されていれば、第1温度センサー21a、21b、21c、21dは、いずれもアクティブ状態を維持する。
【0032】
図7は、第3実施形態における温度検出制御回路200の構成を示すブロック図である。この図に示されるように、第3実施形態では、第1温度センサーが4つ設けられたことに対応して、温度変化出力部も4つ設けられている。このうち、温度変化出力部201aは、温度情報T1aで示される温度を所定の時間間隔t毎に取得するとともに、その時間間隔tでの温度変化率ΔTa/tを出力する。同様に温度変化出力部201b、201c、201dについても、温度情報T1b、T1c、T1cで示される温度を所定の時間間隔t毎にそれぞれ取得するとともに、その時間間隔tでの温度変化率ΔTb/t、ΔTc/t、ΔTd/tをそれぞれ出力する。
判別部202は、4つの温度変化率の各々が予め定められて閾値よりも大きいか否かをそれぞれ判別する。温度センサー制御部203は、温度変化率が1つでも閾値よりも大きいと判別された場合に、信号S2をHレベルとした後、温度情報T2を取得して、当該温度情報T2から温度Tを出力する。
【0033】
図8は、第2実施形態に係る液晶装置1における温度検出制御回路200の動作を示すフローチャートである。この図に示す内容が、第2実施形態における図5と相違する部分は、第1温度センサーが4つ設けられたことに対応して、図5におけるステップSa1、Sa5、Sa7、Sa8、Sa9を、それぞれSc1、Sc5、Sc7、Sc8、Sc9に置き換えた点にある。
このうち、ステップSc1において、温度センサー制御部203は、信号S1をHレベルにして、第1温度センサー21a、21b、22c、22dをすべてアクティブ状態にする。
また、温度センサー制御部203は、内部タイマーをリセットした後のステップSc5において、温度変化出力部201a、201b、201c、202dに対し、それぞれ温度情報T1、T2、T3、T4を取得させる。
温度センサー制御部203は、時間tだけ待機した後のステップSc7において、温度変化出力部201a、201b、201c、202dに対し、それぞれ温度情報T1、T2、T3、T4を再度取得させる。
ステップSc8において、温度変化出力部201aは、ステップSc5、Sc7でそれぞれ取得した温度情報T1aから温度変化率ΔTa/tを求めて判別部202に供給する。同様に温度変化出力部201b、201c、201dは、それぞれ温度変化率ΔTb/t、ΔTc/t、ΔTd/tを求めて判別部202に供給する。
ステップSc9において、判別部202は、温度変化率ΔTa/t、ΔTb/t、ΔTc/t、ΔTd/tのいずれか1つでも閾値よりも大きいか否かを判別し、その判別結果を温度センサー制御部203に通知する。なお、温度センサー制御部203は、温度変化率が1つでも閾値よりも大きいと判別されたのであれば、処理手順をステップSa2に戻し、すべての温度変化率が閾値以下であると判別されたのであれば、処理手順を次のステップSa10に進める。以下については、第2実施形態と同様である。
【0034】
この第3実施形態によれば、4つの第1温度センサー21a、21b、21c、21dによって検出された温度の変化のうち、いずれか1つでも閾値よりも大きいときに、第2温度センサー22がアクティブ状態になって、温度情報T2を取得するので、液晶パネル100において温度が不均一に変化する場合であっても、当該温度変化を早期に検出して、映像信号を温度に応じて適切に補正することが可能になる。
その他については、例えば微小な温度変化が継続する場合であっても、映像信号を温度に応じて適切に補正することができる点については、第2実施形態と同様である。
【0035】
なお、第3実施形態では、第1温度センサーを液晶パネル100の四隅にそれぞれ設けたが、場所的には、これ以外の地点、例えば表示領域110の縁辺中心付近に設けても良いし、数的には、5個以上であっても良いし、2、3個であっても良い。また、検出素子25を表示領域110内に設けても良いし、内外にわたって設けても良い。いずれにしても、検出素子25を液晶パネル100の異なる地点に設ければ良い。
また、第3実施形態において、ステップSa9の判別結果が「Yes」である場合に、処理手順の戻り先をステップSb2としていたが、図8において破線で示されるように、ステップSb1としても良い。
【0036】
本発明は、上述した各種の実施形態に限られず、次のような応用・変形が可能である。
例えば第2温度センサー22については1つに限らず、複数個設けても良い。第2温度センサー22を複数個設ける場合には、これらの検出結果の平均や、重み付けなどの演算によって温度を出力する構成としても良い。
また、第1温度センサーについては、ステップSa1(Sc1)以降、アクティブ状態を継続させたが、例えば定期的にアクティブ状態とノン・アクティブ状態を交互に切り替えるとともに、アクティブ状態のときに、ステップSa5、Sa7(Sc5、Sc7)を実行して温度変化率を求めるようにしても良い。
表示装置としては、画素に液晶素子を用いた液晶装置に限られない。例えば、有機または無機EL(Electro Luminescence)素子を用いたEL装置や、電気泳動素子を用いた電気泳動装置など、温度に応じて映像信号を補正する必要のある表示装置に適用可能である。
また、温度センサーについては、検出精度が要求されないのであれば、基板の製造プロセスを用いたものではない素子、すなわち、別途後付けした検出素子を用いても良い。このような検出素子を用いても、素子の寿命を延長して信頼性を確保することができるからである。
【0037】
<電子機器>
次に、上述した実施形態に係る液晶装置1を適用した電子機器について、プロジェクターを例にとって説明する。
図9は、プロジェクターの構成を示す平面図である。
この図に示されるように、プロジェクター2100の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられている。このランプユニット2102から射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によってR(赤)色、G(緑)色、B(青)色の3原色に分離されて、各原色に対応するライトバルブ100R、100Gおよび100Bにそれぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0038】
このプロジェクター2100では、実施形態に係る表示装置が、R色、G色、B色のそれぞれに対応して3組設けられる。そして、R色、G色、B色のそれぞれに対応する映像信号がそれぞれ上位装置から供給される。ライトバルブ100R、100Gおよび100Bは、上述した液晶パネル100と同様であり、R色、G色、B色のそれぞれに対応する映像信号に応じて駆動される。
ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。したがって、各色の画像が合成された後、スクリーン2120には、投射レンズ2114によってカラー画像が投射されることとなる。
【0039】
ライトバルブ100R、100Gおよび100Bには、ダイクロイックミラー2108によって、R色、G色、B色のそれぞれに対応する光が入射するので、カラーフィルターを設ける必要はない。また、ライトバルブ100R、100Bの透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100Gの透過像はそのまま投射されるので、ライトバルブ100R、100Bによる水平走査方向は、ライトバルブ100Gによる水平走査方向と逆向きにして、左右を反転させた像を表示する構成となっている。
【0040】
なお、電子機器としては、図9を参照して説明したプロジェクターの他、電子ビューファインダーや、リヤ・プロジェクション型のテレビジョン、ヘッドマウントディスプレイなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
1…液晶装置、10…液晶パネル、20…温度測定装置、21…第1温度センサー、22…第2温度センサー、23…スイッチ、25…検出素子、30…映像補正回路、40…表示制御回路、100…表示パネル、110…表示領域、120…駆動回路、200…温度検出制御回路、201…温度変化出力部、202…判別部、203……温度センサー制御部、2100…プロジェクター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度を検出する第1温度センサーと、
アクティブ状態のときに温度を検出する第2温度センサーと、
前記第1温度センサーによって検出された温度から所定の時間長における温度変化を求める温度変化出力部と、
前記温度変化が閾値よりも大きいか否かを判別する判別部と、
前記温度変化が前記閾値よりも大きいと判別された場合に、前記第2温度センサーを前記アクティブ状態とさせる温度センサー制御部と、
を具備することを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
前記第2温度センサーは、ノン・アクティブ状態のときに温度の検出を停止するものであり、
前記温度センサー制御部は、前記温度変化が前記閾値以下である判別された場合に、前記第2温度センサーを前記ノン・アクティブ状態とさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記温度変化が前記閾値以下であると判別された回数が、所定値を超えた場合、
前記温度センサー制御部は、前記第2温度センサーを前記アクティブ状態にさせる
ことを特徴とする請求項2に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記第1温度センサーは、複数の異なる地点に設けられ、
前記温度変化出力部は、前記第1温度センサー毎に温度変化をそれぞれ求め、
前記判別部は、前記第1温度センサー毎に求められた温度変化の各々について前記判別を実行し、
前記温度センサー制御部は、
前記第1温度センサー毎に求められた温度変化のいずれかが前記閾値よりも大きいと判別された場合に、前記第2温度センサーを前記アクティブ状態とさせる
ことを特徴とする請求項2または3に記載の温度測定装置。
【請求項5】
温度を検出する第1温度センサーと、
アクティブ状態のときに温度を検出する第2温度センサーと、
を有する温度測定装置のセンサー制御方法であって、
前記第1温度センサーによって検出された温度から所定の時間長における温度変化を求める工程と、
求められた温度変化が閾値よりも大きいか否かを判別する工程と、
前記温度変化が前記閾値よりも大きいと判別された場合に、前記第2温度センサーを前記アクティブ状態とさせる工程と
を備えることを特徴とする温度測定装置のセンサー制御方法。
【請求項6】
映像信号に応じた画像を表示する表示パネルと、
前記表示パネルの温度変化を検出する第1温度センサーと、
前記第1温度センサーによって検出された温度から所定の時間長における温度変化を求める温度変化出力部と、
アクティブ状態のときに前記表示パネルの温度を検出する第2温度センサーと、
前記温度変化が閾値よりも大きいか否かを判別する判別部と、
前記温度変化が前記閾値よりも大きいと判別された場合に、前記第2温度センサーを前記アクティブ状態とさせる温度センサー制御部と、
前記第2温度センサーによって検出された温度に応じて前記映像信号を補正し、前記表示パネルに供給する映像補正回路と、
を具備することを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の表示装置を有する
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−194038(P2012−194038A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57941(P2011−57941)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】