説明

温度測定装置、腕時計及び温度測定方法

【課題】気温を精度よく検出することのできる温度測定装置等を提供する。
【解決手段】組付穴10には、センサモジュール11が配置されている。センサモジュール11は、サーモパイル12を有し、サーモパイル12は受光面12aを有している。溝13には、回転軸14が回転自在に架設されている。この回転軸14には、遮蔽部材15が固定されており、この遮蔽部材15には図示した第1の位置(閉位置)において、受光面12aの前方にてこれを遮蔽する対向面15aが設けられている。遮蔽部材15は、前記回転軸14の回転に伴ってこれと一体的に回転することにより、第1の位置から、略垂直に起立して対向面15aが前記受光面12aの前方から退避した第2の位置(開位置)に変位自在に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物から放射される赤外線量に基づき温度を測定する温度測定装置、これを用いた腕時計及び温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば腕時計においては、各種測定対象物の温度を検出して表示することが可能なものが出現するに至っている。この温度検出機能を有する腕時計は、赤外線温度センサを用い、測定対象物から放射されている赤外線の量を測定し、この測定した赤外線量に基づき対象物の温度を算出する(例えば、特許文献1参照。)。したがって、気温を測定する場合には、ユーザが気温と同等であることが想定できる対象物を選んで、当該対象物からの赤外線量を測定して温度を算出し、この算出した対象物の温度を気温とする。
【特許文献1】特開平7−333066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このように従来においては、外部の対象物の温度を検出して気温とすることから、気温を精度よく検出するためには、対象物の温度と気温とが一致していることが前提条件となる。したがって、直射日光がある屋外や熱源が近くにある環境下のように対象物が気温よりも高温である場合、あるいは冷源が近くにある環境下のように対象物が気温よりも低温である場合には、測定された気温と実際の気温とに誤差が生ずる。このとき、ユーザは、選択した対象物が熱影響を受けているか否かを外観上判断することができないことから、選択した対象物に起因して不可避的に誤差が生じ、気温を精度よく検出することができない。
【0004】
本発明はかかる従来の実情に鑑みなされたものであり、気温を精度よく検出することのできる温度測定装置、これを用いた腕時計及び温度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために請求項1記載の発明に係る温度測定装置にあっては、測定対象物から放射される赤外線を入射させる入射面を有し、この入射面から入射された赤外線量を測定する測定手段と、この測定手段により測定された赤外線量に基づき、前記測定対象物の温度を算出する算出手段と、前記測定手段の前記入射面を遮蔽する遮蔽部材とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2記載の発明に係る温度測定装置にあっては、前記遮蔽部材は、外気と接触していることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3記載の発明に係る温度測定装置にあっては、前記遮蔽部材は、前記入射面を遮蔽する第1の位置と、前記入射面を遮蔽しない第2の位置とに変位自在であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4記載の発明に係る温度測定装置にあっては、前記遮蔽部材の位置を検出する検出手段を更に備え、前記算出手段は、前記検出手段の検出結果に基づき、前記遮蔽部材が前記第1の位置にある状態においては気温を算出し、前記第2の位置にある状態においては気温以外の測定対象物の温度を算出することを特徴とする。
【0009】
また、請求5項記載の発明に係る温度測定装置にあっては、前記検出手段の検出結果に基づき、前記遮蔽部材が前記第1の位置にある状態においては、前記算出手段が気温の算出に用いる所定の放射率を設定する自動設定手段を更に備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項6記載の発明に係る温度測定装置にあっては、前記検出手段の検出結果に基づき、前記遮蔽部材が前記第2の位置にある状態においては、前記算出手段が気温の算出に用いる放射率を可変的に設定する手動設定手段を更に備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項7記載の発明に係る温度測定装置にあっては、前記算出手段は、前記遮蔽部材が前記第1の位置にある状態において、前記気温を所定時間毎に繰り返し算出することを特徴とする。
【0012】
また、請求項8記載の発明に係る温度測定装置にあっては、前記算出手段により算出された温度を表示する表示手段を更に備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項9記載の発明に係る腕時計にあっては、請求項1から8にいずれか記載の温度測定装置を備えること特徴とする。
【0014】
また、請求項10記載の発明に係る腕時計にあっては、請求項3記載の温度測定装置を備える腕時計であって、この腕時計の時計本体には、回転に伴って前記遮蔽部材を第1の位置と第2の位置とに駆動するベゼルが設けられたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項11記載の発明に係る腕時計にあっては、請求項6記載の温度測定装置を備える腕時計であって、前記手動設定手段は前記腕時計の時計本体に設けられベゼルを有することを特徴とする。
【0016】
また、請求項12記載の発明に係る温度測定方法にあっては、測定対象物から放射される赤外線を入射させる入射面を遮蔽部材で遮蔽し、この入射面を遮蔽部材で遮蔽した状態で前記入射面から入射された赤外線量を測定し、この測定した赤外線量に基づき温度を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、赤外線を入射させる入射面を遮蔽部材により遮蔽して、赤外線量を測定し温度を算出することから、恒常的に所定の遮蔽部材の温度を気温として得ることができる。よって、日光や熱源等による測定対象物の温度と気温との差による影響なく、気温を精度よく検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。この実施の形態は、本発明を腕時計に適用したものである。図1に示すように、腕時計1は、時計本体2とこの時計本体2の両端部に係止されたバンド3,3とで構成されている。時計本体2の周面部及び上面端部には、スイッチS1〜S4が配設されており、上面中央部には円形の風防ガラス4が固定されている。この風防ガラス4の周部にはベゼル5が回転自在に組み付けられており、ベゼル5の所定位置に矢印5aが描かれている。
【0019】
また、風防ガラス4の下面側には、円形のインジケータ盤7が配置されている。このインジケータ盤7の周部には、気温測定モードインジケータ7a,放射温度測定モードインジケータ7bが設けられているとともに、「0.1」「0.9」・・・等の放射率を設定するための放射率設定用文字7cが記載され、略中央部にはLCDからなる表示部8が配置されている。
【0020】
また、時計本体2の端部には、L字状の切欠部9が形成されており、このL字状の切欠部9の下辺部9aには、組付穴10が形成されている。組付穴10は、前記切欠部9側に開口しており、その内部にはセンサモジュール11が配置されている。センサモジュール11は、サーモパイル(放射温度センサ)12を有し、サーモパイル12は前記切欠部9側に露呈する受光面12aを有している。
【0021】
また、前記L字状の切欠部9の横辺部9bには、溝13が形成されており、この溝13には、回転軸14が回転自在に架設されている。この回転軸14には、遮蔽部材15が固定されており、この遮蔽部材15には図1に示した第1の位置(閉位置)において、前記受光面12aの前方にてこれを遮蔽する対向面15aが設けられている。そして、遮蔽部材15は、前記回転軸14の回転に伴ってこれと一体的に回転することにより、前記第1の位置から、略垂直に起立して対向面15aが前記受光面12aの前方から退避した第2の位置(開位置)に変位自在に構成されている。
【0022】
図2は、腕時計1の回路構成を示すブロック図である。この回路には、各部を制御するCPU16が設けられているとともに、ROM17及びRAM18がそれぞれバス19を介して接続されている。ROM17は、CPU16が動作するためのシステムプログラム等を記憶しており、RAM18は、ワーク用として使用される。
【0023】
また、バス19には、ドライバ20、前記両インジケータ7a,7b、計時計数回路21、前記サーモパイル12、スイッチS1〜S4、アクチュエータ22、ベゼルセンサ23及びサーミスタ26が接続されている。ドライバ20は、LCDよりなる前記表示部8を駆動するものであり、計時計数回路21は、分周回路24を介して水晶発振回路25に接続されている。水晶発振回路25は、一定周波数の信号を送出し、分周回路24は、水晶発振回路25からの信号を計数して計時計数回路21に送出するものである。計時計数回路21は、分周回路24からの信号を計数して、現在時刻データ(年、月、日、時、分、秒データ)を得て記憶しており、これをCPU4に与える。アクチュエータ22は、前記回転軸14を駆動することにより、遮蔽部材15を前記第1及び第2の位置に駆動するものでありモータ等を有している。ベゼルセンサ23は、ユーザにより回転操作されるベゼル5の回転位置を検出するものである。サーミスタ26は、サーモパイル12自体の温度を検出するセンサである。
【0024】
なお、この腕時計1の販売時には、図3に示す放射率の目安ガイド紙Pが添付されており、ユーザはこの目安ガイド紙Pの記載内容を記憶し、あるいはこの目安ガイド紙Pを携帯することにより、測定対象の放射率を知ることができる。
【0025】
以上の構成にかかる本実施の形態において、CPU16はROM17に格納されているプログラムに基づき、図4に示すフローチャートに従って、遮蔽部材制御処理を実行する。すなわち、前記ベゼルセンサ23からの信号に基づき、ユーザにより、矢印5aが気温測定モードインジケータ7aの「気温」を指す位置まで、ベゼル5が回転操作されたか否かを判断する(ステップS101)。回転操作された場合には、アクチュエータ22を制御して遮蔽部材15を第1の位置(閉位置)に駆動する(ステップS102)。また、ユーザにより、矢印5aが放射率設定用文字7cの範囲内を指す位置まで、ベゼル5が回転操作されたか否かを判断する(ステップS103)。回転操作された場合には、アクチュエータ22を制御して遮蔽部材15を第2の位置(開位置)に駆動する(ステップS104)。
【0026】
したがって、以上の処理により遮蔽部材15は、ベゼル5の回転操作に応じて第1の位置と第2の位置とに変位する。
【0027】
また、測定モードが設定されている状態において、CPU16はROM17に格納されているプログラムに基づき、図5に示すフローチャートに従って処理を実行する。すなわち、前記アクチュエータ22の静止位置に基づき、遮蔽部材15が第1の位置にあるか否かを判断する(ステップS201)。遮蔽部材15が第1の位置にある場合には、反射率(ε)として、遮蔽部材15の対向面15aの反射率である「0.98」を設定する(ステップS202)。
【0028】
引き続き、気温測定モードインジケータ7aを点灯させ(ステップS203)、サーミスタ26によりサーミスタ温度(Ttm)を測定する(ステップS204)。さらに、受光面12aにより対向面15aからの赤外線を受光したサーモパイル12の出力であるサーモパイル電圧(Vp)を測定し(ステップS205)、以上のTtm、Vp、εを用いて算出したΔTをサーミスタ温度(Ttm)に加算することにより、算出温度(Tc)を得る(ステップS206)。
【0029】
したがって、この算出温度(Tc)は、熱源等による影響のない所定の対象物である遮蔽部材15の対向面15aから放射されている赤外線の量を用いて行われることとなる。よって、従来のように、ユーザが任意に選択した対象物に起因して誤差が生ずるようなことがなく、気温としての算出温度(Tc)を精度よく算出することができる。そして、このステップS206で得た算出温度(Tc)を表示部8に表示させる(ステップS207)。したがって、このステップS207での処理により、図1に示したように、日付や時分が表示されている表示部8に「28.5℃」のように、現在温度が表示される。
【0030】
しかる後に、所定時間が経過したか否かを判断し(ステップS208)、所定時間が経過する毎に、ステップS201からの処理を繰り返す。したがって、遮蔽部材15が第1の位置にある状態においては、ステップS201〜S208の処理が所定時間毎に繰り返され、これにより、表示部8に所定時間毎に変化する気温を表示させることができる。
【0031】
また、ユーザが気温以外の対象物の温度を測定しようとする場合には、前記放射率の目安ガイド紙Pを参照して、対象物の放射率を読み取る。例えば、「雪」の温度を測定したい場合には、「0.85」を読み取る。そして、ベゼル5を回転操作して矢印5aを「0.9」と「0.8」の中間に合わせる。すると、図4のフローチャートにおけるステップS103の判断がYESとなって、ステップS104の処理により、アクチュエータ22が制御されて遮蔽部材15は第2の位置(開位置)に回転する。しかる後にユーザは、遮蔽部材15が第2の位置(開位置)に回転することによって露出したサーモパイル12の受光面12aを測定対象物である「雪」に向けておく。
【0032】
一方、図5のフローチャートにおいては、前述のように遮蔽部材15が第2の位置(開位置)に回転することにより、ステップS201の判断がNOとなる。したがって、ステップS201からステップS209に進み、反射率(ε)として、ベゼル5の矢印5aにより指定されるベゼル指定値(本例の場合「0.85」)を設定する(ステップS209)。引き続き、放射温度測定モードインジケータ7bを点灯させ(ステップS210)、サーミスタ温度(Ttm)を測定する(ステップS211)。
【0033】
さらに、受光面12aにより「雪」からの赤外線を受光したサーモパイル12の出力であるサーモパイル電圧(Vp)を測定し(ステップS212)、以上のTtm、Vp、εを用いて算出したΔTをサーミスタ温度(Ttm)に加算することにより、算出温度(Tc)を得る(ステップS213)。そして、このステップS213で得た算出温度(Tc)を表示部8に表示させる(ステップS207)。したがって、このステップS213での処理により、日付や時分が表示されている表示部8に測定対象物「雪」の温度(雪温)が表示されることとなる。
【0034】
なお、本実施の形態においては、本発明を腕時計に適用した場合を示したが、これに限ることなく、携帯電話や電子手帳等の携帯機器、あるいは固定的な気温測定装置や各種温度測定装置に適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態を適用した腕時計の外観図である。
【図2】時計本体の回路構成を示すブロック図である。
【図3】放射率の目安ガイド紙を示す図である。
【図4】遮蔽部材制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】測定モード時の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 腕時計
2 時計本体
3 バンド
4 風防ガラス
4 CPU
5 ベゼル
5a 矢印
7a 気温測定モードインジケータ
7b 放射温度測定モードインジケータ
7c 放射率設定用文字
8 表示部
10 組付穴
11 センサモジュール
12 サーモパイル
12a 受光面
13 溝
14 回転軸
15 遮蔽部材
15a 対向面
16 CPU
17 ROM
18 RAM
22 アクチュエータ
23 ベゼルセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物から放射される赤外線を入射させる入射面を有し、この入射面から入射された赤外線量を測定する測定手段と、
この測定手段により測定された赤外線量に基づき、前記測定対象物の温度を算出する算出手段と、
前記測定手段の前記入射面を遮蔽する遮蔽部材と
を備えることを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、外気と接触していることを特徴とする請求項1記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、前記入射面を遮蔽する第1の位置と、前記入射面を遮蔽しない第2の位置とに変位自在であることを特徴とする請求項1又は2記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材の位置を検出する検出手段を更に備え、
前記算出手段は、前記検出手段の検出結果に基づき、前記遮蔽部材が前記第1の位置にある状態においては気温を算出し、前記第2の位置にある状態においては気温以外の測定対象物の温度を算出することを特徴とする請求項3記載の温度測定装置。
【請求項5】
前記検出手段の検出結果に基づき、前記遮蔽部材が前記第1の位置にある状態においては、前記算出手段が気温の算出に用いる所定の放射率を設定する自動設定手段を更に備えることを特徴とする請求項4記載の温度測定装置。
【請求項6】
前記検出手段の検出結果に基づき、前記遮蔽部材が前記第2の位置にある状態においては、前記算出手段が気温の算出に用いる放射率を可変的に設定する手動設定手段を更に備えることを特徴とする請求項4又は5記載の温度測定装置。
【請求項7】
前記算出手段は、前記検出手段の検出結果に基づき、前記遮蔽部材が前記第1の位置にある状態において、前記気温を所定時間毎に繰り返し算出することを特徴とする請求項4、5又は6記載の温度測定装置。
【請求項8】
前記算出手段により算出された温度を表示する表示手段を更に備えることを特徴とする請求項1から7にいずれか記載の温度測定装置。
【請求項9】
請求項1から8にいずれか記載の温度測定装置を備えること特徴とする腕時計。
【請求項10】
請求項3記載の温度測定装置を備える腕時計であって、この腕時計の時計本体には、回転に伴って前記遮蔽部材を第1の位置と第2の位置とに駆動するベゼルが設けられたことを特徴とする腕時計。
【請求項11】
請求項6記載の温度測定装置を備える腕時計であって、前記手動設定手段は前記腕時計の時計本体に設けられベゼルを有することを特徴とする腕時計。
【請求項12】
測定対象物から放射される赤外線を入射させる入射面を遮蔽部材で遮蔽し、
この入射面を遮蔽部材で遮蔽した状態で前記入射面から入射された赤外線量を測定し、
この測定した赤外線量に基づき温度を算出することを特徴とする温度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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