説明

温度測定装置

本発明は、保護管及び前記保護管内に設けられるケーブル又はワイヤの形態の温度測定手段を備えた温度測定装置であって、前記温度測定手段は、ケーブル又はワイヤ線上に温度感知センサー部が存在し、前記温度測定手段の両端に張力を印加することで、保護管内で前記張力により温度感知センサー部を保護管の軸方向に移動させることができることを特徴とする温度測定装置;前記温度測定装置が反応管内に軸方向に並設された反応管;及び前記温度測定装置又は前記反応管を一つ以上備えた反応器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定装置に関する。本発明の温度測定装置は、管状反応器で温度を測定するのに用いられ、管状反応器の非制限的な例として固定層触媒を充填した反応管が一つ以上具備されたシェルアンドチューブ(shell-and-tube)熱交換式反応器がある。つまり、本発明は、固定層シェルアンドチューブ熱交換式反応器において、反応管に充填した触媒層の温度を容易に測定するように考案された温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前述したシェルアンドチューブ熱交換式反応器は、接触気相酸化反応(catalytic vapor phase oxidation)、例えば、蒸気相で触媒によりオレフィンから不飽和酸を製造する工程に用いられる。
【0003】
一般に、シェルアンドチューブ熱交換式反応器は、1種以上の触媒が顆粒状で反応管(接触管)に充填され、反応ガスが管を介して反応器に供給され、反応ガスが反応管で触媒と接触して所望の生成物を得るための化学反応を起こす。反応中に発生する反応熱は、反応管の外面に提供されるシェルに循環される伝熱媒体と伝熱されて除去され、伝熱媒体の温度は所定の温度に維持される。所望の生成物を含有する反応混合物は、管を介して収集・回収及び精製の段階に送られる。
【0004】
接触気相酸化反応は、通常、高い発熱反応であるから、特定範囲内で反応温度を調節して反応領域内の熱点の大きさを低減するのが非常に重要である。つまり、工程条件、供給物の造成及び触媒層の構成等により、触媒層の熱点の位置を迅速に把握し、その大きさを正確に測定するのが非常に重要である。
【0005】
このために、従来には、一つのシェルアンドチューブ熱交換式反応器の反応管内に複数の保護管を設け、一部は位置が固定されている固定型、一部は保護管内に引出し可能な移動型に熱電対を構成して温度を測定する。
【0006】
こうした温度測定装置における移動型熱電対の役割は、非常に重要である。前述したように、工程条件、供給物の造成及び触媒層の構成により熱点の位置が決定され、その大きさも伝熱媒体の伝熱能力及び発熱の程度により決定されるため、移動型熱電対の引出しにより熱点の正確な位置及び大きさをモニターリングしなければならない。
【0007】
また、移動型熱電対は、反応管内の長手全体の触媒層の温度プロファイルが得られるようにする。触媒層の温度プロファイルとして得る情報量は相当であるが、熱点だけでなく、触媒層の充填が均一であるか、反応温度の調節が必要であるか、反応器が非正常的に動いているか等を視覚的に容易に分析できるようにする。
【0008】
しかしながら、通常の固定層反応器内の触媒層の温度は、高い発熱反応により200〜500℃まで上昇するため、熱電対を保護する保護管が熱的に膨脹しながら折り曲げやツイスト等の変形が発生して、熱電対の移動が困難になる。
【0009】
触媒層の温度プロファイルを得るには、機械的強度が弱い熱電対を反応管の長手全体に挿入すべきである。すなわち、数メートルから数十メートルまで保護管内に挿入すべきである。このとき、熱的影響により変形された保護管を通過する時、熱電対は摩擦抵抗を深く受けて移動が困難になることにより、所望の地点までセンサー部が到達できず、さらに熱電対の無理な取扱いによる折り曲げがよく発生する。熱電対が保護管内に挿入されたままで折り曲げられる場合、折り曲げられたままで保護管に挿入された部分を回収する方法がないため、温度モニターリングは深刻な影響を受けることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって、本発明の目的は、熱電対のような温度測定手段を、変形された保護管内でも容易に移動できるように考案された温度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、保護管及び前記保護管内に設けられるケーブル又はワイヤの形態の温度測定手段を備えた温度測定装置であって、前記温度測定手段は、ケーブル又はワイヤ線上に温度感知センサー部が存在し、前記温度測定手段の両端に張力を印加することで、前記保護管内で張力により温度感知センサー部を保護管の軸方向に移動させることができることを特徴とする温度測定装置;前記温度測定装置が反応管内に軸方向に並設される反応管;及び前記温度測定装置又は前記反応管を一つ以上備えた反応器を提供する。
【0012】
本発明の温度測定装置は、反応管内に設けられたり、反応器のシェル空間内に設けられたりする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による温度測定装置は、既存の装置に比べ、張力を用いて容易に温度を測定でき、破損等により温度モニタリングシステムに深刻な影響を与える事態を避けることができ、損傷された測定装置を容易に交替できる。
【0014】
また、本発明による温度測定装置は、温度測定手段が、2つ以上の温度感知センサー部又は温度測定手段を備える。よって、1つの温度感知センサー部又は温度測定手段が損傷されても、別途の交替なしに継続的に温度を測定でき、以後に破損された温度感知センサー部又は温度測定手段の交替が比較的容易なので、維持・補修にも多くの利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に基づき、本発明を詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の特徴は、保護管内に設けられる温度測定手段をケーブル又はワイヤの形態に製作し、温度測定手段のケーブル又はワイヤ線上の中間部に温度感知センサー部を配置することで、温度測定手段の両端部に張力を印加して温度感知センサー部を保護管の軸方向に移動させるものである。
【0017】
このとき、保護管の両端開口部の外側にプーリーを設け、プーリーにケーブル又はワイヤの形態の温度測定手段を係止して使用するのが好ましい。プーリーにより張力印加時の張力の方向を変化させたり、小さな力でも温度感知センサー部を容易に移動させたりすることができる。よって、張力を用いて引っ張るだけで管状反応器内の全領域の温度を容易に測定でき、反応管内の全体触媒層の熱安全性を容易に把握できる。
【0018】
また、ケーブル又はワイヤの形態の温度測定手段は、柔軟性を有していることが好ましい。温度測定手段が針金のように柔軟性のある材料で製作されると、保護管の変形による温度測定手段の移動性の脆弱を補完できる。すなわち、温度測定手段を保護管に押し込む時に発生する機械的摩擦や、これにより発生する破損などの問題を解決できる。
【0019】
本発明による温度測定手段のうちの温度感知センサー部は、チューブ形態の接合部内に設けられ、ケーブル又はワイヤの形態の温度測定手段が接合部と物理的に連結されるのが好ましい。
【0020】
ケーブル又はワイヤの形態の温度測定手段は、2つの温度測定手段が一直線上に連結される形態としても用いられる。2つの温度測定手段を用いる場合、温度感知センサーの老化或いは移動時の機械的な摩擦により、一つのセンサーに故障が発生すると、他の1つを用いて継続的に測定できる。
【0021】
本発明に使用可能な保護管の材質の非制限的な例としては、ステンレススチール(SUS:JISで規定されている)がある。硬度がさらに要求される場合は炭素、高温硬度及び耐食性が要求される場合はクロム、靱性及び耐食性が要求される場合はニッケルなどの元素含量が相対的に高いものを使用することができる。強い酸性物質のため、耐酸性が要求される場合は、ハステロイなどのモリブデンが添加された合金を使用することもできる。
【0022】
一方、伝熱に問題がある場合、保護管に高温で使用可能なオイルなどを満たすことにより、伝熱抵抗を低減できる。
【0023】
本発明によるケーブル又はワイヤの形態の温度測定手段の非制限的な例としては、熱電対又はRTD(resistance temperature detector)がある。測定する温度範囲及び要求される反応時間条件を検討して、状況に適合した熱電対又はRTDを選択できる。
【0024】
下記では、熱電対を基準として本発明を詳細に説明する。
【0025】
熱電対は、互いに異なる2種類の金属導体が接合されて閉鎖回路を構成した状態において、両接点の温度が互いに異なると、回路上に電流が流れ、この電流を確認することにより両接点間の温度差が分かる原理を利用するものである。よって、熱電対の接点(以下、熱電対センサー部という)を適正位置に配置させると、正確に温度を感知でき、熱電対のセンサー部が正確な位置及び環境に配置されるように保護する熱電対保護管が必要である。
【0026】
図2は、熱電対及び保護管を示す概略図である。
【0027】
図2を参照すれば、互いに異なる材質で製造された2つのフィラメント210a、210bがあり、フィラメント210a、210bの一端部が互いに接合されて熱電対センサー部212を形成する。
【0028】
このような熱電対センサー部212は、所定位置の温度を感知し、これを電気信号に変換させる。一方、フィラメント210a、210bは、熱電対センサー部212を除いた残り部位が接触されないように、インシュレータ214により絶縁される。また、フィラメント210a、210bの接点212には、インシュレータ214からフラットゾーン(flat zone)に位置するように支持する力が提供され得る。
【0029】
一方、熱電対保護管218は、高温、酸、塩基又は機械的摩擦などから熱電対を保護するために用いられる。フィラメント210a、210b及びインシュレータ214からなる熱電対216は、所定長さを有する直線状の熱電対保護管218に挿入されて用いられる。
【0030】
熱電対保護管218は、温度を測定したい反応管の軸方向に垂直である断面の中心に設けられるのが好ましい。
【0031】
保護管内は反応領域と隔離されており、温度を測定する位置、すなわち、熱電対センサー部の位置は熱電対の両端にかかる張力を調節して変更できる。
【0032】
図1は、本発明の温度測定装置を設けたシェルアンドチューブ熱交換式反応器20を示す概略図である。本発明によるケーブル又はワイヤの形態の温度測定手段は、直線的に連結した一対の熱電対を用いるのが好ましいため、これを基準として本発明を説明する。
【0033】
シェルアンドチューブ熱交換式反応器には、通常、数千〜数万個の反応管が設けられるが、説明の便宜のために、図1には代表的な一つの反応管10だけを示す。1は一つの熱電対であり、2は熱電対のうちの温度を感知するセンサー部である。3は他の一つの熱電対であり、4は3のセンサー部であり、5は保護管である。6は熱電対1を支持するプーリーであり、7は熱電対1を巻き出す作動機として受動又は自動で作動する。8は熱電対3を支持するプーリーであり、9は熱電対3を巻き出す作動機である。図1の30は熱電対1を巻き出す方向であり、図1の40は熱電対3を巻き出す方向である。11はセンサー部で測定した温度値を判読する装置であって、電気的な信号を温度に表示する。
【0034】
熱電対1及び熱電対3は、針金のように巻いて使用できる柔軟性のあるものであればよい。熱電対は、張力を用いて巻き出して用いる場合、延性及び展性材質によりスムーズに巻き出すことになるので、変形された保護管を通過する時により有利である。
【0035】
一方、一対の熱電対を連結する方法は、図3及び図4に詳細に示す。
【0036】
一対の熱電対センサー部は、一つの接合部に内蔵されて連結すること(図3参照)、又は熱電対センサー部の各々が一つの接合部に内蔵されて接合部が連結部により連結すること(図4参照)が好ましい。
【0037】
図3に示すように、2つの熱電対は、接合部50を介して連結する。このとき、チューブ形態の接合部50に熱電対1及び熱電対3を一部挿入した後、接合部50がセンサー部の以外の熱電対と重畳する部分に圧力を加えて、熱電対と接合部とを結合させることができる。ワイヤ形態の温度測定装置から独立された2つの温度測定手段(例、熱電対)を連結するには、前記接合部が必要である。
【0038】
接合部の材質は、前述した保護管の材質と類似なものが用いられる。但し、保護管とは異なり、反応物と直接接触しないので、耐酸性又は耐食性などの性質はあまり要求されない。耐熱又は耐寒などの温度に従う性質が重要であり、熱伝導度が高くて温度測定が精密なものが良い。
【0039】
熱伝導性を高めるために、接合部内にオイルなどが用いられる。また、保護管内にもオイルを注入して全体的にセンサー部と反応する触媒層の伝熱を容易にする方法も併用できる。
【0040】
好ましくは、接合部はチューブ形態であるのが好ましい。このとき、接合部の内径は、伝熱に影響されないように十分に小さいものが好ましい。
【0041】
このとき、接合部の外径は、保護管の内径の90%以下であるのが好ましい。90%を超過すれば、熱的に変形された保護管内での移動性が非常に悪い。
【0042】
図3の51は、2つの熱電対センサー部の間隔であって、この間隔を適当に調節すれば、一つの熱電対に損傷が発生する場合、カットして余分の空間に新しい熱電対を挿入・結合する方式により交替が可能である。
【0043】
つまり、問題が発生した熱電対は、一部の接合部と共にカットし、使用可能な熱電対と接合部の一部(実際に接合部は熱電対と結着されている)とを保護管の外に引出して、新しい熱電対をカットした接合部側に挿入し、センサー部が重畳されない部位の接合部を押下して結着できる。例えば、図3の熱電対1のセンサー部に問題が発生すれば、間隔51のうちの熱電対1に近い部分をカッターなどでカットし、余裕のある間隔51の上部に新しい熱電対を挿入して結着する。
【0044】
図4は、図3の他の形態として、高弾性及び高延性の連結部61、例えば針金連結部を用いて、2つの接合部62、63を連結する。
【0045】
図4において、64は熱電対センサー部が各々内蔵された両接合部の間隔であって、この間隔を適当に調節すれば、交替時に連結部61の適当な位置を切断した後、新しい接合部に連結部61を連結できる。
【0046】
なお、本発明の詳細な説明では具体的な実施形態について説明したが、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で多様に変形・実施が可能である。よって、本発明の範囲は、前述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の温度測定装置を設けたシェルアンドチューブ熱交換式反応器を示す概略図である。
【図2】熱電対及び保護管を示す概略図である。
【図3】本発明による温度測定装置のうちの温度感知センサー部の一具体例を示す概略図である。
【図4】本発明による温度測定装置のうちの温度感知センサー部の他の具体例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0048】
1 熱電対
2 センサー部分
3 他の熱電対
4 センサー部分
5 保護管
6 プーリー
7 作動機
8 プーリー
9 作動機
10 反応管
11 温度判読装置
20 シェルアンドチューブ熱交換式反応器
30 熱電対1の巻き出す方向
40 熱電対3の巻き出す方向
50 接合部
51 センサー部間の間隔
61 連結部
62 接合部
63 接合部
64 両接合部
212 熱電対センサー
210a フィラメント
210b フィラメント
214 インシュレータ
216 熱電対
218 熱電対保護管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護管及び前記保護管内に設けられるケーブル又はワイヤの形態の温度測定手段を備えた温度測定装置であって、
前記温度測定手段は、ケーブル又はワイヤ線上に温度感知センサー部が存在し、前記温度測定手段の両端に張力を印加することで、前記保護管内で張力により温度感知センサー部を保護管の軸方向に移動させることができることを特徴とする、温度測定装置。
【請求項2】
前記ケーブル又はワイヤの形態の温度測定手段に張力を印加するとき、前記保護管の両端開口部の外側に各々設けられるプーリーを用いることを特徴とする、請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記ケーブル又はワイヤの形態の温度測定手段は、柔軟性があることを特徴とする、請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記ケーブル又はワイヤの形態の温度測定手段は、熱電対又はRTDであることを特徴とする、請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項5】
前記保護管にオイルが充填されることを特徴とする、請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項6】
前記温度感知センサー部は、一つの接合部に内蔵されて連結した一対の温度感知センサー部であるか、或いは、各々一つの接合部に内蔵されて連結部により連結した一対の温度感知センサー部であることを特徴とする、請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項7】
前記接合部は、チューブ形態であることを特徴とする、請求項6に記載の温度測定装置。
【請求項8】
前記接合部内にオイルが充填されることを特徴とする、請求項6に記載の温度測定装置。
【請求項9】
前記接合部の外径は、前記保護管の内径の90%以下であることを特徴とする、請求項6に記載の温度測定装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載された温度測定装置が、反応管内に軸方向に並設されることを特徴とする、反応管。
【請求項11】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載された温度測定装置を一つ以上備えることを特徴とする、反応器。
【請求項12】
請求項10の反応管を一つ以上備えることを特徴とする、反応器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−545967(P2008−545967A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514565(P2008−514565)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002261
【国際公開番号】WO2006/135189
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】