説明

温度湿度調節装置および二酸化炭素ガス分離システム

【課題】ガス体の温度および相対湿度を高精度に調節することができる温度湿度調節装置を提供する。
【解決手段】水蒸気を含むガス体を目標温度に調節するとともにガス体を目標相対湿度に調節する温度湿度調節装置10であって、内部に水Wを収容し、ガス体Gを水に通して第一の温度調節ガス体Gとする収容部11と、水の温度を調節する水温度調節部12と、第一の温度調節ガス体を加熱して第二の温度調節ガス体Gとするガス体温度調節部13と、水の温度を測定する水温度センサ14および第二の温度調節ガス体の温度を測定するガス体温度センサ15を有する制御部16とを備え、制御部は、水温度センサで測定された温度が、目標温度および目標相対湿度におけるガス体の露点となるように水温度調節部を制御するとともに、ガス体温度センサで測定された温度が目標温度となるようにガス体温度調節部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス体の温度と相対湿度を調節する温度湿度調節装置、およびこの温度湿度調節装置を備える二酸化炭素ガス分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分離膜を用いた分離装置がめざましく発展してきている。
この分離装置の一つとして、たとえば、特許文献1に記載された炭酸ガスの分離装置が知られている。この分離装置は、化石燃料などを燃焼させて生じた燃焼排ガスから水を分離する除湿部と、水を分離された燃焼排ガスから二酸化炭素ガスを分離するCO分離部とを備えている。
除湿部には、HOの選択分離膜が設けられている。選択分離膜を挟んで燃焼排ガス側の圧力を高くすることで、選択分離膜から透過ガス((HO))が除去される。水を分離された燃焼排ガスはCO分離部に導かれる。CO分離部には、COの選択分離膜が設けられている。選択分離膜を挟んで燃焼排ガス側の圧力を高くすることで、選択分離膜から透過ガス((CO))が除去される。
【0003】
このように、従来の分離膜を用いた分離装置では、COの選択分離膜が水分に対して弱いので、分離膜でCOを分離する前に水分を除去することが行われている。
このような従来の分離膜には、一般的に分子の大きさ程度の孔が多数形成されていて、いわゆる分子篩を構成している。このため、小さい分子ほど分離膜により分離されやすくなり、大きさがほぼ等しい分子が複数種類ある場合には分離ガスの純度が低くなったり、大きさが小さくない分子を選択して分離することができないという問題がある。
【0004】
これに対して、たとえば、特許文献2に記載された高分子膜(分離膜)は、二酸化炭素ガスだけを化学反応で選択的に透過させて分離するため、分離ガスの純度を高くできる特徴がある。その一方で、相対湿度が80%前後とかなり高く、かつ、60℃前後という比較的高い温度で二酸化炭素ガスの分離性能が高まるという特異な性質がある。このため、この高分子膜を用いた二酸化炭素ガス分離システムにおいては、原料ガス(ガス体)中の相対湿度と温度とを安定的に維持する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−66107号公報
【特許文献2】特開平2010−149026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、原料ガス中の相対湿度を上げるために、原料ガス中に水蒸気を吹き込むことが行われている。しかしながら、この水蒸気を吹き込む方法では、相対湿度を高精度に調節するのは難しい。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、ガス体の温度および相対湿度を高精度に調節することができる温度湿度調節装置、およびこの温度湿度調節装置を備える二酸化炭素ガス分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の温度湿度調節装置は、水蒸気を含むガス体を目標温度に調節するとともに前記ガス体を目標相対湿度に調節する温度湿度調節装置であって、内部に水を収容し、前記ガス体を前記水に通して第一の温度調節ガス体とする収容部と、前記水の温度を調節する水温度調節部と、前記第一の温度調節ガス体を加熱して第二の温度調節ガス体とするガス体温度調節部と、前記水の温度を測定する水温度センサおよび前記第二の温度調節ガス体の温度を測定するガス体温度センサを有する制御部と、を備え、前記制御部は、前記水温度センサで測定された温度が、前記目標温度および前記目標相対湿度における前記ガス体の露点となるように前記水温度調節部を制御するとともに、前記ガス体温度センサで測定された温度が前記目標温度となるように前記ガス体温度調節部を制御することを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、目標温度および目標相対湿度におけるガス体の露点に調節された水をガス体が通ることで、第一の温度調節ガス体の温度はこの露点とほぼ等しくなるとともに、第一の温度調節ガス体はほぼ水分飽和する。この後で、第一の温度調節ガス体をガス体温度調節部により目標温度となるように加熱することで、第二の温度調節ガス体の相対湿度が目標相対湿度に調節される。
【0010】
また、上記の温度湿度調節装置において、前記制御部は、前記第一の温度調節ガス体の露点である第一の露点を測定する露点測定部を有し、前記第一の露点が、前記目標温度および前記目標相対湿度における前記ガス体の露点である第二の露点より所定の値以上小さい場合には、前記第二の露点を所定の温度差分大きくすることがより好ましい。
また、上記の温度湿度調節装置において、前記収容部内の前記水を攪拌する攪拌部を備えることがより好ましい。
【0011】
また、本発明の二酸化炭素ガス分離システムは、上記のいずれかに記載の温度湿度調節装置と、アミン化合物を有する分離膜と、二酸化炭素ガスを含む前記第二の温度調節ガス体を、前記分離膜の前記一方の面側の気圧を前記分離膜の他方の面側の気圧より高くした状態で、前記分離膜に沿って前記一方の面に供給するガス供給装置と、を備え、前記目標温度が50℃以上100℃以下、前記目標相対湿度が50%以上100%未満に設定されていることを特徴としている。この場合、分離膜のアミン化合物が効果的に二酸化炭素ガスと化学反応するようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明において、請求項1に記載の温度湿度調節装置によれば、収容部において第一の温度調節ガス体をほぼ水分飽和させてから、第一の温度調節ガス体の絶対湿度を維持しつつ第一の温度調節ガス体の温度を高めることで、第二の温度調節ガス体を目標温度および目標相対湿度に精度良く調節することができる。
請求項2に記載の温度湿度調節装置によれば、ガス体温度調節部に入ってくる第一の温度調節ガス体を確実に水分飽和とすることで、ガス体温度調節部において、第二の温度調節ガス体を目標相対湿度に調節する精度をさらに高めることができる。
また、請求項3に記載の温度湿度調節装置によれば、水の温度をより均一にして、第二の温度調節ガス体を目標温度および目標相対湿度に精度良く調節することができる。
請求項4に記載の二酸化炭素ガス分離システムによれば、第二の温度調節ガス体から二酸化炭素ガスを効率良く分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の二酸化炭素ガス分離システムのブロック図である。
【図2】同二酸化炭素ガス分離システムにおける温度湿度調節装置の説明図である。
【図3】同二酸化炭素ガス分離システムの分離膜にガス体を透過させたときの、ガス体の温度に対する透過速度および選択性の関係を示す図である。
【図4】同二酸化炭素ガス分離システムの分離膜にガス体を透過させたときの、ガス体の相対湿度に対する選択性の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る二酸化炭素ガス分離システム(以下、「分離システム」とも称する。)の一実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。本分離システムは、分離膜を用いて二酸化炭素ガスを含むガス体から二酸化炭素ガスを分離する装置である。分離システムは、たとえば石炭ガス化プラントや天然ガス採掘プラントなどで二酸化炭素ガスを分離するために用いることができる。このような場合には、ガス体は、二酸化炭素ガス以外に、水蒸気、水素ガス、メタンガスなどを含む。
図1に示すように、本実施形態の分離システム1は、前処理装置6と、本発明の温度湿度調節装置10と、分離膜60と、分離膜60にガス体Gを供給するガス供給装置70とを備えている。
前処理装置6は、ガス体Gから硫化ガスなどの不要成分を除去するためのものである。
【0015】
本温度湿度調節装置10は、ガス体Gを目標温度に調節するとともにガス体Gを目標相対湿度に調節する装置である。この例では、分離膜60を効果的に機能させるために、温度を調節する目標値である目標温度は50℃以上100℃以下に設定され、相対湿度を調節する目標値である目標相対湿度は50%以上100%未満に設定されている。
温度湿度調節装置10は、図2に示すように、内部に水Wを収容するとともに、ガス体Gを水Wに通して第一の温度調節ガス体Gとする加湿槽(収容部)11と、水Wの温度を調節する水温度調節部12と、第一の温度調節ガス体Gを加熱して第二の温度調節ガス体Gとする熱交換器(ガス体温度調節部)13と、水Wの温度を測定する水温度センサ14および第二の温度調節ガス体Gの温度を測定するガス体温度センサ15を有する制御部16とを備えている。
【0016】
第一の温度調節ガス体Gは、ガス体Gが水Wにより加熱または冷却されるとともに水分飽和に調湿されたものである。
加湿槽11内には、加湿槽11内にガス体Gを供給する第一の搬送管21、および、加湿槽11内から第一の温度調節ガス体Gを搬出する第二の搬送管22が接続されている。また、加湿槽11内には、前述の水温度センサ14、および水Wを攪拌する攪拌部23が設けられている。
【0017】
加湿槽11内に供給されるガス体Gは、後の工程で分離膜60を透過させるために、ポンプや減圧弁などの圧力調節機により、たとえば、2.5〜4.0MPa程度の圧力に高められている。
水温度センサ14としては、熱電対やサーミスタなどの公知のものを用いることができる。水温度センサ14は、変換装置24を介して制御部本体25に接続されている。水温度センサ14で電位差などとして測定された水Wの温度は、変換装置24により所定の電気信号に変換されて制御部本体25に送信される。
攪拌部23は、本実施形態では加湿槽11の底部に配置されたプロペラ23aをモータ23bで回転させるものが用いられている。ただし、攪拌部23としては、このいわゆるプロペラ式の撹拌装置以外にも、ポンプ式など様々な仕様のものを用いることができる。
加湿槽11の外周面には、断熱部材11aが取り付けられている。
【0018】
本実施形態では、水温度調節部12および熱交換器13の熱源として、水やガスなどの熱媒体および冷媒体が共通に用いられている。熱媒体としてはたとえば90℃に調節された水(湯)、冷媒体としてはたとえば10℃に調節された水を用いることができる。
熱媒体、冷媒体は、熱媒体供給管28、冷媒体供給管29によりそれぞれ供給される。熱媒体供給管28には不図示の加熱装置が設けられていて、熱媒体は加熱装置により一定の温度に加熱されている。同様に、冷媒体供給管29には不図示の冷却装置が設けられていて、冷媒体は冷却装置により一定の温度に冷却されている。
熱媒体供給管28中の熱媒体の温度、および、冷媒体供給管29中の冷媒体の温度は、冷媒温度計30により測定されている。冷媒温度計30による測定結果は、所定の電気信号に変換されて制御部本体25に送信される。
【0019】
水温度調節部12は、熱媒体供給管28の端部に接続され熱媒体流量調節バルブ33が設けられた第一の熱媒体分岐管34、および、冷媒体供給管29の端部に接続され冷媒体流量調節バルブ35が設けられた第一の冷媒体分岐管36を有している。
第一の熱媒体分岐管34および第一の冷媒体分岐管36は、図示はしていないが加湿槽11の外周面に巻きつけられていて、加湿槽11と分岐管34、36との間で効果的に熱交換をすることができる。
流量調節バルブ33、35は、それぞれ制御部本体25に接続されている。熱媒体流量調節バルブ33は、制御部本体25から送信される信号に基づいて第一の熱媒体分岐管34を流れる熱媒体の流量を調節することができる。同様に、冷媒体流量調節バルブ35は、制御部本体25から送信される信号に基づいて第一の冷媒体分岐管36を流れる冷媒体の流量を調節することができる。
【0020】
第二の搬送管22には、露点測定部39が設けられている。露点測定部39は、第二の搬送管22により搬送される第一の温度調節ガス体Gの露点温度を、静電容量式や冷却式などの公知の方法により測定することができる。露点測定部39による測定結果は、制御部本体25に送信される。
【0021】
第二の搬送管22における加湿槽11に接続されている側とは反対側の端部には、前述の熱交換器13が接続されている。
熱媒体供給管28における第一の熱媒体分岐管34が接続されている端部には、熱媒体流量調節バルブ42が設けられた第二の熱媒体分岐管43が接続されている。同様に、冷媒体供給管29における第一の冷媒体分岐管36が接続されている端部には、冷媒体流量調節バルブ44が設けられた第二の冷媒体分岐管45が接続されている。
流量調節バルブ42、44は、それぞれ制御部本体25に接続されている。熱媒体流量調節バルブ42は、制御部本体25から送信される信号に基づいて第二の熱媒体分岐管43を流れる熱媒体の流量を調節することができる。同様に、冷媒体流量調節バルブ44は、制御部本体25から送信される信号に基づいて第二の冷媒体分岐管45を流れる冷媒体の流量を調節することができる。
【0022】
図示はしていないが、熱交換器13内では、第二の熱媒体分岐管43により搬送される熱媒体および第二の冷媒体分岐管45により搬送される冷媒体と、第二の搬送管22により搬送される第一の温度調節ガス体Gとが熱交換している。一般的に、液体の熱媒体および冷媒体の熱伝達率より、気体の第一の温度調節ガス体Gの熱伝達率の方が小さい。このため、熱交換器13には、第一の温度調節ガス体Gと熱交換する側に熱交換面積を拡大するためのフィンが設けられたものを用いることが好ましい。
第一の温度調節ガス体Gが熱交換器13により、絶対湿度が変わることなく温度を調節されたものが第二の温度調節ガス体Gである。
熱交換器13は、圧力と温度とを適切に調節した恒温槽47内に配置されている。恒温槽47内は、圧力と温度が均一になるように、充分攪拌することが好ましい。
【0023】
第一の熱媒体分岐管34を流れる熱媒体は加湿槽11と熱交換した後で、第二の熱媒体分岐管43を流れる熱媒体は熱交換器13で熱交換した後で、再び熱媒体供給管28にそれぞれ搬送され、加熱装置により一定の温度に加熱される。第一の冷媒体分岐管36を流れる冷媒体は加湿槽11と熱交換した後で、第二の冷媒体分岐管45を流れる冷媒体は熱交換器13で熱交換した後で、再び冷媒体供給管29にそれぞれ搬送され、冷却装置により一定の温度に冷却される。
【0024】
熱交換器13には第三の搬送管48が接続されていて、熱交換器13内で熱交換された第二の温度調節ガス体Gが第三の搬送管48により搬送される。
第三の搬送管48内には、前述のガス体温度センサ15が設けられている。ガス体温度センサ15としては、水温度センサ14と同じ種類のものを用いることができる。
ガス体温度センサ15は変換装置49を介して制御部本体25に接続されていて、ガス体温度センサ15で測定された第二の温度調節ガス体Gの温度は制御部本体25に送信される。
制御部本体25には、メモリ25a、CPU25b、および入力部25cが備えられている。メモリ25aには、圧力、温度、および相対湿度が定められたガス体Gの露点を求めるテーブルが記憶されている。このテーブルは、二酸化炭素ガス、水蒸気、水素ガス、メタンガスなどを所定の割合で含むガス体の相対湿度を変化させて冷却試験を行うことなどにより、容易に求めることができる。
CPU25bは、メモリ25aに記憶された上記のテーブルに基づいて、ガス体Gの露点を算出するとともに、流量調節バルブ33、35、42、44を制御する。
操作者は、入力部25cから目標温度および目標相対湿度を入力することができる。
なお、温度センサ14、15、冷媒温度計30、変換装置24、49、および露点測定部39により、前述の制御部16が構成される。
【0025】
図1に示すように、分離膜60は、支持膜61上に機能膜62を形成し、機能膜62上に保護膜63を形成した構成となっている。本実施形態では、分離膜60は平らなシート状に形成されているが、中空糸状に形成することも可能である。
支持膜61は、分離膜60の両面で生じる圧力差を支えるためのもので、保護膜63は、機能膜62に及ぼす物理的または化学的な損傷から機能膜62を保護するためのものである。
機能膜62は、アミン化合物を有する高分子膜で、化学反応で二酸化炭素ガスを選択的に透過させる機能がある。
この機能膜62としては、
式(1)
M(OR)n (1)
(式中、Mは三価以上の金属原子を示し、nは3〜6の整数を示し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数2〜7のアシル基、式−NHRで示される基(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−NRで示される基(式中、RおよびRは、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NHRで示される基(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NRで示される基(式中、RおよびRは、独立に、同一または異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、又は、1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基を示し、これらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、これらの基又は環は置換基を有していてもよい。)で示される架橋剤で架橋されてなる、架橋部分と結晶部分とを有するポリビニルアルコール内に、式(2)
【化1】

(式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、pは0又は1の整数を示す。)で示される基、式(3)
【化2】

(式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、qは0又は1の整数を示す。)で示される基、式(4)
【化3】

(式中、AおよびAは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、r及びsは0又は1の整数を示す。)
で示される基、または式(5)
【化4】

(式中、A及びAは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、tは0又は1の整数を示す。)で示される基を有するアミン化合物が固定化されてなる高分子膜、を好適に用いることができる。
しかし、機能膜としてはこれに限ることなく、アミン化合物を有する高分子膜であれば、将来開発されるものも含めて用いることができる。
【0026】
ガス供給装置70は、箱状や筒状に形成されている。ガス供給装置70の内面に分離膜60の側面全周を気密に接続することで、ガス供給装置70の内部空間を、分離膜60の厚さ方向の両側に形成された第一の空間S1および第二の空間S2に分けることができる。この例では、分離膜60の保護膜63の表面(一方の面)63aが第一の空間S1に面していて、支持膜61の表面(他方の面)61aが第二の空間S2に面している。
ガス供給装置70における第一の空間S1側の分離膜60に沿った一方側D1には、第三の搬送管48が接続されている。ガス供給装置70における第一の空間S1側の他方側D2には、搬送配管76の一端が接続され、搬送配管76の他端は脱湿装置77に接続されている。ガス供給装置70における第二の空間S2側の他方側D2には、搬送配管78の一端が接続され、搬送配管78の他端は脱湿装置79に接続されている。
脱湿装置77、79では、膜分離法や冷却凝縮法などによりガス中の水蒸気が分離、回収される。なお、脱湿装置77、79は、分離されたガスの用途によっては必要でないこともある。
【0027】
ここで、ガス供給装置70内に取り付けられた分離膜60の表面63aに、分離膜60に沿って、水素ガスと二酸化炭素ガスから成る所定の圧力のガス体Gを供給し、分離膜60の第一の空間S1側の気圧を第二の空間S2側の気圧より高くして測定した結果について説明する。
図3に、ガス体Gの温度に対する透過速度および選択性の関係を示す。
なお、ここで言う選択性とは、透過ガスにおける水素ガスに対する二酸化炭素ガスの選択性であり、値が大きい方が、分離膜60を透過する水素ガスの物質量に比べて分離膜60を透過する二酸化炭素ガスの物質量が増加していることを意味する。
図3において、実線は二酸化炭素ガスの透過速度、点線は水素ガスの透過速度、一点鎖線は選択性をそれぞれ示している。
ガス体Gの温度が50℃以上のときに選択性の値が大きくなっていることが分かる。なお、機能膜62は高分子膜であるため、温度が80℃を超えると分子構造が壊れやすくなり、さらに100℃を超えると急激に分子構造の分解が進むので好ましくない。
【0028】
図4に、ガス体Gの相対湿度に対する選択性の関係を示す。
相対湿度が80%のときに選択性が最も大きくなることが分かる。なお、相対湿度が100%になると、分離膜60に水滴が付着して分離膜60が使用できなくなるため好ましくない。
アミン化合物において、相対湿度が50%以上100%未満という比較的高いときに選択性が大きくなるのは、水分子が膜中に多く存在する方が、アミン化合物と二酸化炭素ガスが反応してカーボネートやカルバネートなどを生じやすくなるためと考えられる。
このように、ガス体Gの相対湿度は50%以上100%未満が好ましく、さらに、図4から明らかなように、60%以上100%未満がより好ましい。
【0029】
次に、以上のように構成された分離システム1の動作について説明する。以下では、アミン化合物が二酸化炭素ガスと効果的に化学反応して選択性が大きくなるように、目標温度を60℃とし、目標相対湿度を80%とした場合で説明する。
操作者が入力部25cにガス体Gを調節したい目標温度および目標相対湿度を入力すると、CPU25bは、これらの値およびガス体Gの圧力から、メモリ25aに記憶されたテーブルを用いてガス体Gの露点(第二の露点)Tを求める。露点Tは、たとえば、55℃程度の値となる。
そして、水温度調節部12の流量調節バルブ33、35により熱媒体、冷媒体の流量をそれぞれ調節することで、水温度センサ14で測定された水Wの温度が露点Tである55℃となるように制御する。
加湿槽11内の水Wは、攪拌部23により攪拌されることで、水Wの温度がほぼ均一に保たれている。
【0030】
図1に示すように、石炭ガス化プラントなどから供給されたガス体Gは、まず、前処理装置6で硫化ガスなどの不要成分を除去され、第一の搬送管21により温度湿度調節装置10に供給される。
第一の搬送管21から水W内に送り出されたガス体Gは、圧力を一定に保たれた状態で水W内を通すことでほぼ飽和するとともに約55℃に加熱されて第一の温度調節ガス体Gとなる。
第一の温度調節ガス体Gは、第二の搬送管22で搬送される際に露点測定部39により、第一の温度調節ガス体Gの露点である第一の露点が測定される。CPU25bは、第一の露点が露点Tより所定の値以上小さい場合には、露点Tを所定の温度差分大きくして水温度調節部12により水Wの温度を制御する。たとえば、第一の露点が露点Tより0.5℃以上低いときには、水温度調節部12の露点Tを0.5℃高め、水温度センサ14で測定される水Wの温度が55.5℃となるように制御する。
このように制御することで、第一の温度調節ガス体Gが水Wによりさらに加熱されるようになり、露点測定部39により測定される第一の露点が上昇する。
以上のように、本実施形態の温度湿度調節装置10では、第一の温度調節ガス体Gが飽和するように水温度センサ14および露点測定部39でカスケード制御している。
【0031】
第二の搬送管22内で飽和した第一の温度調節ガス体Gは、熱交換器13に搬送される。
CPU25bは、流量調節バルブ42、44により熱媒体、冷媒体の流量をそれぞれ調節することで、ガス体温度センサ15で測定される温度が目標温度である60℃となるように熱交換器13を制御する。
これにより、熱交換器13で加熱された後の第二の温度調節ガス体Gは、圧力を一定に保たれた状態で温度が目標温度である60℃に調節されるとともに、相対湿度も目標相対湿度である80%に正確に調節される。
温度および相対湿度を正確に調節された第二の温度調節ガス体Gは、第三の搬送管48によりガス供給装置70に搬送され、第一の空間S1の一方側D1から他方側D2に向けて流れる。第一の空間S1の気圧は第二の空間S2の気圧より高められ、さらに、第二の温度調節ガス体Gの温度と相対湿度がアミン化合物による選択性の値が大きくなるように調節されている。したがって、第二の温度調節ガス体G中の二酸化炭素ガスが主に分離膜60を透過して、第一の空間S1から第二の空間S2に移るように流れる。このとき、二酸化炭素ガスとともに一定量の水蒸気も第一の空間S1から第二の空間S2に透過する。
【0032】
第二の空間S2に透過した二酸化炭素ガスおよび水蒸気は、搬送配管78を通して脱湿装置79に搬送され、二酸化炭素ガスと水蒸気とに分離される。分離された二酸化炭素ガスは、大気に放散されるか、地球温暖化対策として圧力を高めて地中に戻すなどの処置がされる。
分離膜60を透過せずに第一の空間S1に残った第二の温度調節ガス体Gは、搬送配管76を通して脱湿装置77に搬送され、水素ガスおよびメタンガスなどと、水蒸気とに分離される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の温度湿度調節装置10および分離システム1によれば、目標温度および目標相対湿度におけるガス体Gの露点Tに調節された水Wをガス体Gが通ることで、第一の温度調節ガス体Gの温度はこの露点Tとほぼ等しくなるとともに、第一の温度調節ガス体Gはほぼ水分飽和する。この後で、第一の温度調節ガス体Gを熱交換器13により目標温度となるように加熱することで、第二の温度調節ガス体Gの相対湿度が目標相対湿度に調節される。
加湿槽11において第一の温度調節ガス体Gをほぼ水分飽和させてから、第一の温度調節ガス体Gの絶対湿度を維持しつつ第一の温度調節ガス体Gの温度を高めることで、第二の温度調節ガス体Gを目標温度および目標相対湿度に精度良く調節することができる。
【0034】
第一の温度調節ガス体Gを飽和させる、つまり、第一の温度調節ガス体Gの相対湿度を一度100%にしてから低下させる相対湿度の調節方法は、目標相対湿度が高い場合には相対湿度を低下させる幅が小さいので効果的である。また、アミン化合物は、たとえば、相対湿度が50%以上100%未満と、比較的高いときに選択性の値が大きくなる。したがって、本発明の温度湿度調節装置10を用いることで、アミン化合物を有する分離膜60に目標相対湿度に精度良く調節した第二の温度調節ガス体Gを効果的に供給することができる。
【0035】
制御部16は、露点測定部39を有するとともに、第一の温度調節ガス体Gが飽和するように水温度センサ14および露点測定部39でカスケード制御している。このため、熱交換器13に入ってくる第一の温度調節ガス体Gを確実に水分飽和とすることで、熱交換器13において、第二の温度調節ガス体Gを目標相対湿度に調節する精度をさらに高めることができる。
また、攪拌部23を備えるため、水Wの温度をより均一にして、第二の温度調節ガス体Gを目標温度および目標相対湿度に精度良く調節することができる。
【0036】
分離システム1は、温度湿度調節装置10、分離膜60、ガス供給装置70を備え、目標温度が50℃以上100℃以下、目標相対湿度が50%以上100%未満に設定されている。したがって、分離膜60のアミン化合物が効果的に機能するようになるため、第二の温度調節ガス体Gから二酸化炭素ガスを効率良く分離することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。
たとえば、前記実施形態では、露点測定部39は必須の構成ではない。水温度調節部12だけで水Wの温度を充分精度良く制御できる場合があるからである。
また、水W内におけるガス体Gの流れだけで水Wを充分に攪拌できる場合には、攪拌部23は備えられなくてもよい。
【0038】
本実施形態では、温度湿度調節装置10の周囲の空気の温度が目標温度より充分低い場合には、冷媒体供給管29、冷媒体分岐管36、45、および冷媒体流量調節バルブ35、44は備えず、熱媒体供給管28で搬送される熱媒体だけで水Wおよび熱交換器13の温度調節を行ってもよい。また、この場合には、水温度調節部およびガス体温度調節部はヒータであってもよい。
前記実施形態では、分離膜60を筒状に形成してもよい。この場合、分離膜60の内周面側から第二の温度調節ガス体Gを供給して分離膜60の外周面側に二酸化炭素ガスを透過させてもよいし、分離膜60の外周面側から第二の温度調節ガス体Gを供給して分離膜60の内周面側に二酸化炭素ガスを透過させてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 分離システム(二酸化炭素ガス分離システム)
10 温度湿度調節装置
11 加湿槽(収容部)
12 水温度調節部
14 水温度センサ
15 ガス体温度センサ
16 制御部
23 攪拌部
39 露点測定部
60 分離膜
61a 表面(一方の面)
63a 表面(他方の面)
70 ガス供給装置
ガス体
第一の温度調節ガス体
第二の温度調節ガス体
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を含むガス体を目標温度に調節するとともに前記ガス体を目標相対湿度に調節する温度湿度調節装置であって、
内部に水を収容し、前記ガス体を前記水に通して第一の温度調節ガス体とする収容部と、
前記水の温度を調節する水温度調節部と、
前記第一の温度調節ガス体を加熱して第二の温度調節ガス体とするガス体温度調節部と、
前記水の温度を測定する水温度センサおよび前記第二の温度調節ガス体の温度を測定するガス体温度センサを有する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記水温度センサで測定された温度が、前記目標温度および前記目標相対湿度における前記ガス体の露点となるように前記水温度調節部を制御するとともに、
前記ガス体温度センサで測定された温度が前記目標温度となるように前記ガス体温度調節部を制御することを特徴とする温度湿度調節装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第一の温度調節ガス体の露点である第一の露点を測定する露点測定部を有し、
前記第一の露点が、前記目標温度および前記目標相対湿度における前記ガス体の露点である第二の露点より所定の値以上小さい場合には、前記第二の露点を所定の温度差分大きくすることを特徴とする請求項1に記載の温度湿度調節装置。
【請求項3】
前記収容部内の前記水を攪拌する攪拌部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の温度湿度調節装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の温度湿度調節装置と、
アミン化合物を有する分離膜と、
二酸化炭素ガスを含む前記第二の温度調節ガス体を、前記分離膜の前記一方の面側の気圧を前記分離膜の他方の面側の気圧より高くした状態で、前記分離膜に沿って前記一方の面に供給するガス供給装置と、
を備え、
前記目標温度が50℃以上100℃以下、前記目標相対湿度が50%以上100%未満に設定されていることを特徴とする二酸化炭素ガス分離システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−207802(P2012−207802A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71370(P2011−71370)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】