説明

温度管理運搬容器及び温度管理運搬容器移動追跡装置

【課題】被搬送物を所定の温度範囲に保つとともに、温度変化を管理すること。
【解決手段】被運搬物Pを収容する断熱材製の断熱容器110、及び、被運搬物Pの温度管理を行う温度管理装置120を収容する筺体101と、断熱容器110内の温度を管理する温度管理部120と、断熱容器110内の温度を測定する温度測定器122と、温度測定器122からの温度情報を記録する記録部123と、筺体101の位置情報を検出する位置測定部124と、温度情報、前記位置情報及び時間情報を含む温度管理情報Kを所定のタイミング送信する送信部125とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厳密な温度管理下で被運搬物を運搬する温度管理運搬容器及びこの温度管理運搬容器を運搬に際し、遠隔管理を行う温度管理運搬容器移動追跡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や血液・臓器等の検体や生鮮食品等のように温度管理が必要な被運搬物を搬送する容器として、各種の保温保冷容器が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。このような保温保冷容器では、出発地から断熱容器内に被運搬物と保温材・保冷材とを収容し、目的地まで一定の温度範囲を保ったままで輸送するものである。一定温度範囲を逸脱しなければ、被運搬物の品質は保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−59067号公報
【特許文献2】特開2001−201223号公報
【特許文献3】特開平11−20864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した保温保冷容器では、次のような問題があった。すなわち、輸送中に何らかの理由、例えば保温容器の破損や不適当な搬送方法(周囲の温度が被運搬物の温度と著しく異なるような温度環境下に長時間にわたり晒される等)が要因で、一時的に所定温度範囲から逸脱することがあった。所定の温度から逸脱すると、使用目的、例えば輸血や移植等に適さなくなる虞がある。しかしながら、目的地において保温保冷容器内の温度が所定温度範囲であると、特に問題とはされず、そのまま輸血などに使われる虞があった。
【0005】
そこで本発明は、被搬送物を所定の温度範囲に保つとともに、温度変化を管理することができる温度管理運搬容器、及びこの温度管理運搬容器の遠隔管理を行う温度管理運搬容器移動追跡装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の温度管理運搬容器及び温度管理運搬容器移動追跡装置は次のように構成されている。
【0007】
(1)被運搬物を収容する断熱材製の断熱容器、及び、前記被運搬物の温度管理を行う温度管理装置を収容する筺体と、前記断熱容器内の温度を測定する温度測定器と、この温度測定器からの温度情報を記録する記録部と、前記筺体の位置情報を検出する位置測定部と、少なくとも前記温度情報、前記位置情報及び時間情報を含む温度管理情報を所定のタイミング送信する送信部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
(2)(1)に記載された温度管理運搬容器と、前記送信部からの温度管理情報を受信する受信部と、前記温度管理情報を表示する表示部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被搬送物を所定の温度範囲に保つとともに、温度変化を管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る温度管理運搬容器移動追跡装置の構成を示す説明図。
【図2】同温度管理運搬容器移動追跡装置に組み込まれた温度管理運搬容器を模式的に示す断面図。
【図3】同温度管理運搬容器移動追跡装置における温度管理情報の一例を示す説明図。
【図4】同温度管理運搬容器移動追跡装置における温度管理情報の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る温度管理運搬容器移動追跡装置10の構成を示す説明図、図2は、温度管理運搬容器移動追跡装置10に組み込まれた温度管理運搬容器100を模式的に示す断面図である。また、これらの図中Pは温度管理が必要な被運搬物を示している。なお、本実施の形態においては、病院(拠点)から検査会社(拠点)へ検体等の被運搬物Pを運搬する例を示している。
【0012】
温度管理運搬容器移動追跡装置10は、電話回線やインターネット等の通信回線20と、この通信回線20に接続されたサーバ30と、通信回線20に接続されたユーザが用いるクライアント端末40と、通信回線20に接続された複数の基地局50と、温度管理運搬装置100とを備えている。
【0013】
サーバ30は、後述するように温度管理運搬装置100からの温度管理情報を受信し、所定の処理を行った上でクライアント端末40に送信する機能を有している。
【0014】
クライアント端末40は、所定のID/パスワードを入力することで、サーバ30からの温度管理情報を受け取ることができる。また、温度管理情報を表示する表示部41を備えている。クライアント端末40は、検査会社や運搬を行っている作業者等が所持している。
【0015】
基地局50は、例えばPHS等の無線通信手段の基地局であり、温度管理運搬装置100からの温度管理情報を含む信号を受信する。
【0016】
温度管理運搬装置100は、筺体101を備えている。筐体101内には、医薬品や検体等の被運搬物Pを収容する断熱容器110と、被運搬物Pの温度管理を行う温度管理装置120と、リチウム電池等の電源供給部130とが設けられている。
【0017】
断熱容器110は、発泡スチロール(断熱材)等の容器本体111と、ヒータ等の温度調整部112とを備えている。容器本体111内には被運搬物Pを収容するスペースが設けられている。温度調整部112としては例えばカーボン製ヒータが用いられており、例えば温度が所定温度範囲から低下した場合には、後述する温度管理部121からの信号によりヒータをONとする。
【0018】
温度管理装置120は、断熱容器110内の温度Tmを管理する温度管理部121と、断熱容器110内の温度Tmを測定する温度測定器122と、この温度測定器122からの温度情報を記録する記録部123と、筺体101の位置情報を検出するGPS等の位置測定部124と、固有の端末ID、温度情報、位置情報及び時間情報を含む温度管理情報Kを所定のタイミングで送信する送信部125と、送信部125に接続された内蔵アンテナ126を備えている。温度管理装置120は電源供給部130により電源の供給を受けている。また、固有の端末IDとは送信部125毎に付けられた番号である。
【0019】
なお、温度管理部121では、被運搬物P毎に定められた適正な温度範囲を記憶しており、温度測定器122からの温度情報が適正な温度範囲を逸脱している場合には、アラーム(警告音や発光素子の点滅)により作業者に知らせるとともに、所定の温度警告情報を付加して送信部125に入力する。
【0020】
このように構成された温度管理運搬容器移動追跡装置10では、次のようにして温度管理運搬容器100の温度管理及び運搬を行う。すなわち、病院等の出発点にて被搬送物Pを容器本体111内に収納する。この時、温度測定器122を容器本体111内部に取り付ける。また、充電済みの電源供給部130を収納する。
【0021】
次に、容器本体111内の温度管理部112を起動する。これにより、容器本体111内の温度測定、筐体101の位置測定部124により位置測定が開始される。また、所定のタイミング(例えば1分毎)に送信部125から端末ID、時間情報、温度警告情報とともに温度管理情報Kが送信されるとともに、記録部123により各種情報の記録が行われる。温度管理情報Kが送信されると、基地局50及び通信回線20を介して温度管理情報Kがサーバ30で受信される。サーバ30で受信された温度管理情報Kは順次処理が行われていく。また、所定の温度範囲を逸脱している場合には、温度管理部121により作業者にアラームで告知するとともに、温度管理部121からの信号によりヒータをONとする等、温度調整が行われる。
【0022】
この状態で、車両等により温度管理運搬容器100の運搬を開始する。運搬が開始されると送信部125から所定のタイミングで温度管理情報Kが送信されるため、サーバ30では順次受信される。
【0023】
一方、クライアント端末40では、所定のログインを行うことでサーバ30にアクセスを行うことにより、各種のデータを表示部41に表示させる。図3は、このようなデータ表示の一例を示している。
【0024】
図3に示すように、固有の端末ID、温度情報、時間情報、位置情報が表形式で表示される。また、所定の温度範囲を逸脱している場合には、温度警告情報に基づいて、低温の場合には青(B)、高温の場合には赤(R)となるように、表示される。
【0025】
一方、表示形式に代えて、図4に示すように、グラフとして示すこともできる。すなわち、温度測定器122により計測された温度Tm、電源供給部130の消費電力G及び環境温度Taを時間経過とともに表示することができる。この例においては、適正温度を35℃とし、34℃で温度調整部112をON、36℃で温度調整部112をOFFとする制御を行う。このグラフからわかるように環境温度Taが変化しても温度Tmは34〜36℃の範囲に維持される。
【0026】
上述したように、本実施の形態に係る温度管理運搬容器移動追跡装置10によれば、温度管理運搬容器100により被搬送物Pを所定の温度範囲に保つとともに、遠隔地からも温度情報、位置情報、時間情報、温度警告情報を調べることができる。したがって、検体等の被搬送物Pの温度管理を厳密・適正に行うことができ、被運搬物Pの品質を保持することができる。
【0027】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
被搬送物を所定の温度範囲に保つとともに、温度変化を管理することができる温度管理運搬容器、及びこの温度管理運搬容器の遠隔管理を行う温度管理運搬容器移動追跡装置を提供できる。
【符号の説明】
【0029】
10…温度管理運搬容器移動追跡装置、20…通信回線、30…サーバ、40…クライアント端末、50…基地局、100…温度管理運搬装置、101…筺体、110…断熱容器、111…容器本体、112…温度調整部、120…温度管理装置、121…温度管理部、122…温度測定器、123…記録部、124…位置測定部、125…送信部、126…内蔵アンテナ、130…電源供給部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被運搬物を収容する断熱材製の断熱容器、及び、前記被運搬物の温度管理を行う温度管理装置を収容する筺体と、
前記断熱容器内の温度を測定する温度測定器と、
この温度測定器からの温度情報を記録する記録部と、
前記筺体の位置情報を検出する位置測定部と、
少なくとも前記温度情報、前記位置情報及び時間情報を含む温度管理情報を所定のタイミング送信する送信部とを備えていることを特徴とする温度管理運搬容器。
【請求項2】
請求項1に記載された温度管理運搬容器と、
前記送信部からの温度管理情報を受信する受信部と、
前記温度管理情報を表示する表示部とを備えていることを特徴とする温度管理運搬容器移動追跡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−255942(P2011−255942A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133278(P2010−133278)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(591135794)高島株式会社 (11)
【Fターム(参考)】