説明

温度耐性のあるレーザ印字可能なフィルム

【課題】従来技術の問題を回避し、かつ寸法安定性のあるレーザ印字可能なラベルを製造するための原材料として用いられる改良されたレーザ印字可能なフィルムを提供すること。
【解決手段】硬化されたアクリレート塗料組成物をベースとするコントラスト層と、コントラスト層の上に配置された彫刻層とを含むレーザ印字可能なフィルムであって、硬化されたアクリレート塗料組成物が、三官能性オリゴマーA 30〜80重量%、三官能性モノマーB 0〜20重量%、二官能性モノマーC 1〜30重量%、ならびに着色顔料2〜40重量%を含む組成物をベースとするレーザ印字可能なフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントラスト層と、コントラスト層の上に配置された彫刻層(Gravierschicht)とを含むレーザ印字可能なフィルム、ならびにこのフィルムから製造されたレーザ印字可能なラベルに関する。さらに本発明は、レーザ印字可能なフィルムの製造方法ならびにレーザ印字可能なフィルムを製造する際に使用されるアクリレート塗料組成物に関する。同様に、本発明によるフィルムを製造するための前述のアクリレート塗料組成物の使用も含まれる。
【背景技術】
【0002】
物品のラベリングの重要性がますます大きくなっている。例えば自動車産業では、従来の印刷されたラベルがレーザ印字可能なラベルに置き換えられている。タイヤ空気圧または燃料種類のような情報および指示が、レーザ印字可能なラベルを用いて自動車の様々な部品に付されている。このような指示のほかに、レーザ印字可能なラベルは車台識別番号および車両識別番号のような安全情報を含むこともできる。これに対応するラベルは、窃盗または事故の際に、車両および車両製造の際の製造段階を逆推理することを可能にする。特別なセキュリティ標識、例えばホログラムや、ラベルが貼り付いていた基材に後々まで残るUVインプリント(foot print)の使用、ならびにレーザ印字可能なラベルの的確な材料選択は、一方では材料の模造を困難にすることに役立ち、他方では不正操作の試みを知らせることに役立つ。
【0003】
従来技術から、高速で書き込むことができ、書き込まれた記号の高いコントラストを可能にし、かつ短期間の高い温度耐性を保証するレーザ印字可能なラベルが知られている。DE8130861U1(特許文献1)は、薄い塗料層および厚い塗料層を含み、短期間のあいだ高温に耐える多層ラベルを開示している。DE10048665A1(特許文献2)およびDE10142638A1(特許文献3)には、同様に短期間のあいだ高温に耐えるレーザ印字可能なラベルが記載されている。
【0004】
しかしながら従来技術のラベルの場合、温度影響が比較的長く持続すると1つまたは複数の層に縮み(「収縮」)が生じる。この縮みは、1つまたは複数の層の面積の変化によって引き起こされると推測される。既知のラベル内部の1つまたは複数の層の縮みは、ラベルの縁領域でのラベルの剥離として現れる。この剥離は、ラベルを無傷で残留物なく完全に取り去ることを可能にするおそれがあるので、車台番号のようなセンシティブなデータの場合にはそれだけで安全上問題である。他方で、温度が上昇する際にラベル内部の様々な層の膨張挙動が異なって挙動するか、または化学的プロセスが層内で収縮を引き起こす場合、縮むことでラベル内部に応力が生じる可能性がある。これは例えば、架橋反応などの老朽化プロセスにより引き起こされる可能性がある。このような応力の場合、ラベル内に亀裂が形成され、それにより一方では美的要求が十分には顧慮されず、他方では不正操作の試みが誤って推測されるおそれがある。
【0005】
レーザ印字可能なラベルのより長期間にわたる温度耐性への要求が高まっているという背景の下、これに対応するレーザ印字可能なラベルの原材料として用いられるフィルムをこの点に関して改良する必要がある。従来技術から既知のレーザ印字可能なラベルおよびフィルムはすべて、不正操作防止性および高い温度耐性に対する高まる要求を条件付きでしか満たさない。特に高温の場合、既知のラベルでは1つまたは複数の層の寸法安定性が喪失し、この寸法安定性の喪失は、縮みあるいはまた「収縮」の形で現れ、かつこれに伴いラベルの縁の浮き上がりおよび亀裂形成を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE8130861U1
【特許文献2】DE10048665A1
【特許文献3】DE10142638A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Lehrbuch der Lacke und Beschichtungen 第5巻(Hans KittelおよびJuergen Spille、Hirzel出版(Stuttgart)、2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、従来技術の問題を回避し、かつ寸法安定性のあるレーザ印字可能なラベルを製造するための原材料として用いられる、改良されたレーザ印字可能なフィルムを提供することである。同時に化学的耐性は、従来技術のラベルに比べてできれば維持または改善されるべきである。本発明の意味において化学的耐性とは、例えばラベルと接触するかもしれない自動車の燃料および溶剤のような炭化水素に対する耐性のことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこの問題を、硬化されたアクリレート塗料組成物をベースとするコントラスト層を使用することによって解決する。本発明によるレーザ印字可能なフィルムの硬化されたアクリレート塗料組成物は、三官能性オリゴマーA 30〜80重量%、三官能性モノマーB 0〜20重量%、二官能性モノマーC 1〜30重量%、ならびに着色顔料2〜40重量%を含む組成物をベースとする。本発明の好ましい一実施形態では、アクリレート塗料組成物のベースである組成物が、三官能性オリゴマーAを50〜60重量%、好ましくは52〜58重量%、三官能性モノマーBを5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%、および二官能性モノマーCを5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%含む。好ましい実施形態のアクリレート塗料組成物中の着色顔料の量は、使用する材料の種類に応じて決まる。着色顔料がカーボンブラックの場合は例えば2〜7重量%が好ましく、その一方でTiOの場合には好ましくは15〜40重量%、特に好ましくは22〜28重量%で使用される。三官能性オリゴマーA、三官能性モノマーB、および二官能性モノマーCは、以下に成分A、成分B、または成分Cともいう。意外にも、成分A、B、およびC、ならびに着色顔料を提示した量で含む組成物が、特に温度耐性のある硬化されたアクリレート塗料組成物を生じさせることが分かった。
【0010】
本発明は、硬化されたアクリレート塗料組成物をベースとするコントラスト層と、コントラスト層の上に配置された彫刻層とを含むレーザ印字可能なフィルムに関し、その際、硬化されたアクリレート塗料組成物は、三官能性オリゴマーA 30〜80重量%、三官能性モノマーB 0〜20重量%、二官能性モノマーC 1〜30重量%、ならびに着色顔料2〜40重量%を含む組成物をベースとする。本発明の好ましい一実施形態では、アクリレート塗料組成物のベースである組成物が、三官能性オリゴマーAを50〜60重量%、好ましくは52〜58重量%、三官能性モノマーBを5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%、および二官能性モノマーCを5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%、ならびに着色顔料を2〜40重量%含む。本発明の特に好ましい一実施形態では、アクリレート塗料組成物のベースである組成物が、着色顔料としてカーボンブラックを2〜7重量%含む。さらなる同様に好ましい一実施形態では、アクリレート塗料組成物のベースである組成物が、着色顔料としてTiOを15〜40重量%、特に好ましくは22〜28重量%含む。
【0011】
彫刻層は、コントラスト層の上に配置された層であり、単一または複数のレーザビームにより印字することができる。この印字工程の際、彫刻層は、対応するエネルギーのレーザビームが向けられる位置でアブレーションされる。エネルギー入力が十分であれば、彫刻層が局所的に完全に除去され、これにより彫刻層はその位置で光透過性になる。彫刻層が幾つかの位置では部分的にのみアブレーションされ、それによりこの位置で彫刻層の不透明な外見が生じることも考えられる。彫刻層は、印刷法により施し得る塗料層であることが好ましい。対応する印刷塗料層の好ましい例には、電子線硬化可能またはUV硬化可能なアクリレート塗料をベースとする印刷塗料が含まれる。本発明の代替的な一実施形態では彫刻層が薄い金属層から成る。彫刻層の厚さは1〜30μm、好ましくは1〜20μm、特に好ましくは1〜10μmであることが好ましい。彫刻層の厚さがこの範囲内にある場合に、特に温度耐性のあるレーザ印字可能なフィルムの提供が可能である。コントラスト層の厚さは20〜300μm、好ましくは40〜200μm、特に好ましくは60〜150μmであることが好ましいのに対し、彫刻層の厚さは、コントラスト層の厚さの例えば10%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明によるフィルムのコントラスト層は、三官能性オリゴマーA 30〜80重量%、好ましくは50〜60重量%、特に好ましくは52〜58重量%、三官能性モノマーB 0〜20重量%、好ましくは5〜15重量%、特に好ましくは8〜12重量%、二官能性モノマーC 1〜30重量%、好ましくは5〜15重量%、特に好ましくは8〜12重量%、ならびに着色顔料2〜40重量%を含む組成物をベースとする硬化されたアクリレート塗料組成物を含む。成分A、B、およびC、ならびに着色顔料を含む組成物が硬化された、本発明によるフィルムのコントラスト層を提供することができる。このために組成物は、UV放射、電子線硬化(以下、ESH)、または熱により架橋される。好ましくはESHによる架橋が行われる。
【0013】
本発明によるフィルムのコントラスト層は、少なくとも1種の着色顔料を含む。本発明の意味における着色顔料には、染料および/または蛍光増白剤としてインクおよび塗料中に適用されるすべての着色顔料が無条件で含まれる。着色顔料の例は、ルチル変態での二酸化チタン(「TiO」、例えばKronos社のルチルタイプ)、顔料カーボンブラック(例えばEvonik社のPrintexタイプ)、または例えばLehrbuch der Lacke und Beschichtungen 第5巻(Hans KittelおよびJuergen Spille、Hirzel出版(Stuttgart)、2003)(非特許文献1)に挙げられているような、当業者に既知のさらなる着色顔料である。着色顔料は、可能な限り耐候性の顔料であることが好ましい。コントラスト層のために特に好ましいのはルチル変態での二酸化チタンである。本発明に関して重要なのは、顔料またはコントラスト層自体の色ではなく、彫刻層との比較で生じる色の違いまたはコントラストである。この場合、本発明により使用される顔料は、フィルムの印字により、つまりレーザを用いた彫刻層のアブレーションによりコントラスト層と彫刻層の間で生じるコントラストを調整するために用いられる。
【0014】
三官能性オリゴマーAは、1分子当たり3つの不飽和(メタ)アクリレート単位を有するオリゴマーであり、その数平均分子量Mn(GPCにより決定、ポリスチレンを標準とする較正)は、好ましくは1000〜5000g/mol、好ましくは1400〜3600g/mol、好ましくは1800〜2200g/mol、特に好ましくは1900〜2100g/molである。分子量Mnが前述の範囲内にある場合、このことは硬化されたアクリレート塗料組成物の長期温度耐性への良い影響を有しており、したがって特に寸法安定性のあるコントラスト層を得ることができる。
【0015】
好ましい一実施形態では、三官能性オリゴマーAが、ポリウレタントリ(メタ)アクリレートおよびポリエステルトリ(メタ)アクリレートの群から選択され、それらのうちポリウレタントリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。(メタ)アクリレートという表現は、アクリレート、メタクリレート、およびその混合物を含む。三官能性オリゴマーAは、ポリウレタントリ(メタ)アクリレートであることが好ましく、ポリウレタントリアクリレートであることが特に好ましい。ポリウレタントリ(メタ)アクリレートは、1分子当たりそれぞれ3つの不飽和(メタ)アクリレート基および複数の、つまり少なくとも2つのウレタン単位を有するオリゴマーである。好ましいポリウレタントリアクリレートの例は、脂肪族ウレタントリアクリレート、Sartomer社のCN9260D75(登録商標)およびCN9278D80(登録商標)であり、それらのうちCN9260D75(登録商標)が特に好ましい。
【0016】
三官能性モノマーBは、1分子当たり3つの不飽和(メタ)アクリレート単位を含み、本発明の好ましい一実施形態では、分子量が300〜1000g/mol、好ましくは350〜800g/mol、好ましくは350〜600g/mol、特に好ましくは400〜450g/molである。成分Bは、一般式(I)のプロポキシル化されたおよびエトキシル化されたグリセロールトリ(メタ)アクリレートならびにプロポキシル化されたおよびエトキシル化されたトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートまたはそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0017】
【化1】

式中、式IにおけるRは水素またはメチル基であり、Aは水素またはエチル基であり、X、Y、およびZはそれぞれ独立にプロピレン単位またはエチレン単位であり、a、b、およびcはそれぞれ独立に1〜4、好ましくは1〜3の整数であり、a+b+cは3〜12、好ましくは3〜9の数である。本発明の特に好ましい一実施形態では、X、Y、およびZはプロピレン単位である。三官能性モノマーは、プロポキシル化されたグリセロールトリアクリレートであることが特に好ましい。分子量が上述の範囲内にあるように、かつ/またはモノマーBが上記の式Iに属するように三官能性モノマーBが選択される場合に、成分Bも、コントラスト層、およびしたがってレーザ印字可能なフィルムの温度耐性に良い影響を及ぼす。
【0018】
二官能性モノマーCは、1分子当たり2つの不飽和アクリレート単位を有するモノマーである。成分Cは、分子量が100〜1000g/mol、好ましくは180〜350g/mol、特に好ましくは220〜280g/molであることが好ましく、一般式(II)のエチレングリコールジアクリレート
【0019】
【化2】

および一般式(III)のプロピレングリコールジアクリレート
【0020】
【化3】

またはそれらの混合物の群から選択されることが好ましい。式中、式IIおよび式IIIにおけるnはそれぞれ独立に1〜15、好ましくは1〜9、特に好ましくは2〜6、およびとりわけ好ましくは3または4の整数である。本発明の特に好ましい一実施形態では、二官能性モノマーCはトリエチレングリコールジアクリレートである。分子量が上述の範囲内にあるように、かつ/またはモノマーCが上記の式IIまたは式IIIに属するように二官能性モノマーCが選択される場合に、成分Cも、コントラスト層、およびしたがってレーザ印字可能なフィルムの温度耐性に良い影響を及ぼす。
【0021】
本発明の特に好ましい一実施形態では、コントラスト層が、少なくとも1種の成分Aとしてのポリウレタントリアクリレート、好ましくはSartomer社のCN9260D75(登録商標)もしくはCN9278D80(登録商標)、成分Bとしての上に示した式Iのプロポキシル化されたグリセロールトリアクリレート、成分Cとしてのトリエチレングリコールジアクリレート、ならびに顔料、例えばルチル変態での二酸化チタンを含む組成物をベースとする。
【0022】
本発明のさらなる一実施形態では、本発明によるレーザ印字可能なフィルムが、コントラスト層の下に接着剤層、好ましくは感圧接着剤層を備えている。これは、例えば裁断プロセスまたは型抜きプロセスにおいて簡単にフィルムからラベルを作製することを可能にし、このラベルも本発明の対象である。本発明によるレーザ印字可能なフィルムが接着剤層を備えていれば、型抜きステップまたは裁断ステップによって、既に、作製された形でさらなるコーティングステップを施す必要なくそのまま様々な基材に適用し得るラベルそのものを得ることができる。感圧接着剤としては、高い接着力および高い初期粘着性を有するすべての典型的な接着剤、特にアクリレート接着剤、例えば樹脂修飾されたアクリレート接着剤、天然ゴム接着剤、および合成ゴム接着剤が考慮される。
【0023】
本発明によるレーザ印字可能なフィルムは、様々なやり方で製造することができる。ただし好ましい一実施形態では、本発明は、以下のステップ:
i)支持フィルムを準備するステップと、
ii)支持フィルム上に彫刻層を施すステップと、
iii)彫刻層上に、成分A、場合によりB、C、ならびに着色顔料を含むアクリレート塗料組成物を施すステップと、
iv)コントラスト層を得るためにアクリレート塗料組成物を硬化するステップと、
v)場合により、コントラスト層上に接着剤を施し、そして剥離紙もしくは類似のリリースライナーで接着剤を被覆するステップと、
vi)支持フィルムを取り外すステップと
を含むレーザ印字可能なラベルの製造方法に関する。
【0024】
この方法では、プロセスライナーともいうことができる支持フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)のような種々の材料をベースとする従来のフィルムを使用することができる。支持フィルム上への彫刻層の施しも、彫刻層上へのアクリレート塗料組成物の施しも、従来の印刷法およびコーティング法を用いて行うことができる。本発明の好ましい一実施形態では、アクリレート塗料組成物がコンマ型ドクターブレード(Kommarakel)により塗布される。
【0025】
意外にも、上述の方法により製造可能で、上述の本発明によるアクリレート塗料組成物をベースとするコントラスト層を含むレーザ印字可能なフィルムが、従来技術の既知のフィルムおよびラベルより高い長期温度耐性を有することが分かった。この高められた長期温度耐性は、接着剤を用いて基材に施されたフィルムおよびラベルの縁の浮き上がりを抑制する形で現れ、かつ基材に貼り付けられた状態で温度作用が長く持続する際に亀裂を形成しやすい傾向を低下させる形で現れる。意外にも本発明によるフィルムおよびラベルは、温度耐性が改善されると、さらに秀でた不正操作保護性を示す。なぜならフィルムおよびラベルはその温度安定性にもかかわらず、不正操作を試みた場合に、例えば貼り付けられた状態で基材から剥離しようとする間に、コントラスト層の領域内で割れが生じるからである。この割れは、外に見えるように、明らかに認識可能な亀裂形成の形で現れる。つまり本発明によるラベルは不正操作の試みを、対応する試みが行われた場合にだけ通知する。
【0026】
以下に本発明を実施例に基づいて詳しく説明する。以下の例におけるすべての量表示は、別の提示がなければ組成物全体に対する重量部である。
【実施例】
【0027】
サンプルの製造
レーザ印字可能なフィルムのサンプルを製造するために以下の例1〜4では、最初に支持フィルムとしての50μm厚のポリエステルフィルムに、彫刻層を製造するためSMB社のUVフレキソ印刷機で、進行速度15m/minで、Flint社のFlexocure Gemini(黒)を用いて印刷した。これにより印刷高さは2〜4μmであった。続いて、そのようにして得られたコーティングを、彫刻層を製造するためIST Metz GmbH社のE70−2(4)x1BLK−2−SLCタイプのHg放射管を使ってUV硬化した。放射管の放射出力は80W/cmであった。
【0028】
コントラスト層を製造するため、水冷式分散容器(容積1l)および60mmのディゾルバー用撹拌翼を備えた分散器(VMA Getzmann社のDissolver CN10)内で、例に示した原料を一緒にし、40℃で20分間、8000回転/minで均質化した。こうして得られた組成物をドクターブレードにより彫刻層上に層厚100μmで施し、コントラスト層を生成するため80kGy〜240kVでの電子線硬化により架橋させた。
【0029】
こうして得られた支持フィルム/彫刻層/コントラスト層から成る複合体を、片面にリリースライナーを備えた40μm厚のアクリレート感圧接着剤上に施し、その後でポリエステル支持フィルムを剥ぎ取った。感圧接着剤としては、アクリレートコポリマー80重量%およびテルペンフェノール樹脂20重量%から成る樹脂修飾されたアクリレート接着剤を使用した。コポリマーは、n−ブチルアクリレート47.5重量%、2−エチルヘキシルアクリレート47.5重量%、グリシジルメタクリレート2重量%、およびアクリル酸1重量%を重合することで得られた。
【0030】
こうして得られたフィルムに、レーザ法により、Rofin社のNd:YAG固体レーザ50Dを使用してテスト書体およびバーコードを印字し、同様にこのレーザを使用して大きさ3×8cmのラベルに裁断した。
【0031】
検査法
温度耐性および不正操作防止性を確定するため、例1〜4に基づいて得られたサンプルのラベルをそれぞれ5つずつ検査した。これに関しては以下のように行った。
【0032】
温度耐性
関西ペイント社の溶剤ベースのアクリレート塗料(クリアコート)(KINO 1210TW−2)で面全体を塗装した1mm厚のスチールプレートにレーザラベルを気泡なく接着する。室温で約24時間の待ち時間の後、サンプルを150℃で2300時間にわたって貯蔵する。
【0033】
貯蔵時間の最後にサンプルを、縁の浮き上がり(下地から剥離したラベルの縁をラベル周縁からmm単位で測定)およびラベル内の亀裂の数について検査する。さらにサンプルの収縮を測定する(元々の貼付面積の何%)。
【0034】
結果は5つのサンプルの平均値として示され、1〜6の等級に区分けされる。この場合、値は下記の意味をもつ。
1 縁の浮き上がりが0.1mm未満、収縮が0.5%未満であり、さらに視認できる亀裂がない、
2 縁の浮き上がりが0.5mm未満、収縮が2%未満であり、さらに視認できる亀裂がなく、ただし縁の浮き上がり、収縮、および/または亀裂形成が、「1」の値が得られないほど強く現れている、
3 縁の浮き上がりが2.0mm未満、収縮が5%未満であり、さらに視認できる亀裂が最大2つであり、ただし縁の浮き上がり、収縮、および/または亀裂形成が、「2」の値に達しないほど強く現れている、
4 縁の浮き上がりが5.0mm未満、収縮が10%未満であり、さらに視認できる亀裂が最大5つであり、ただし縁の浮き上がり、収縮、および/または亀裂形成が、「3」の値に達しないほど強く現れている、
5 ラベルが下地から完全に剥離し(「完全な縁の浮き上がり」)、収縮が10%以上であり、さらに視認できる亀裂が最大10個である、
6 ラベルが下地から完全に剥離し(「完全な縁の浮き上がり」)、収縮が10%以上であり、さらに視認できる亀裂が10個を超えている。
【0035】
不正操作防止性
不正操作防止性(「タンパー明示性」)についての検査では、サンプルの壊れやすさを、関西ペイント社のクリアコート(KNIO 1210TW−2)で面全体を塗装した1mm厚のスチールプレートに気泡なく貼り付けた後で検査する。このために、サンプルをスチールプレートに気泡なく貼り付けてから24時間の待ち時間の後に下地からの剥ぎ取りを試みる。レーザラベル材料の不正操作防止性を4つの評価段階(「1」〜「4」)に格付けする。どの補助手段によりセキュリティラベルを破壊なく下地から剥離できるかを検査する。この関連で「破壊」とは、ラベルの割れおよびコントラスト層内での亀裂形成のことである。この場合、値は下記の意味をもつ。
4 ラベルを手で、追加的な補助手段なしで破壊なく剥離することができ、したがって不正操作防止性は不十分である、
3 ラベルを破壊なく手で剥離することはできないが、鋭い金属の刃を用いて剥離することはでき、したがって不正操作防止性は同様に不十分である、
2 唯一の追加的な補助手段としての鋭い金属の刃を用いてもラベルを破壊なく剥離することはできないが、溶剤としてのイソプロパノールを鋭い金属の刃と組み合わせて使用すれば破壊のない剥離に成功し、不正操作防止性は十分と格付けされる、
1 溶剤としてのイソプロパノールを鋭い金属の刃と組み合わせて使用してもラベルを破壊なく剥離することはできず、この場合、不正操作防止性は優良と格付けされる。
【0036】
例1
【表1】

【0037】
例2
【表2】

【0038】
例3
【表3】

【0039】
例4
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
本発明によるサンプル(例2、3、および4)では、長期間にわたる秀でた温度耐性と同時に十分〜優良の不正操作防止性が示される。これに比べ、オリゴマーとして二官能性ウレタンアクリレートを使用することは、温度耐性を明らかに悪化させ、不十分な不正操作防止性をもたらす(例1)。
【0042】
数平均分子量Mおよび重量平均分子量Mの分子量決定は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて行った。溶離液としては、0.1体積%トリフルオロ酢酸を含むTHF(テトラヒドロフラン)を使用した。測定は25℃で行った。プレカラムとしてPSS−SDV、5μ、10Å、ID8.0mm×50mmを使用した。分離のためにカラムPSS−SDV、5μ、10ならびに10および10をそれぞれID8.0mm×300mmで使用した。試料濃度は4g/l、貫流量は1分間当たり1.0mlであった。ポリスチレンを標準として測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化されたアクリレート塗料組成物をベースとするコントラスト層と、
コントラスト層の上に配置された彫刻層と
を含むレーザ印字可能なフィルムであって、
硬化されたアクリレート塗料組成物が、
三官能性オリゴマーA 30〜80重量%、
三官能性モノマーB 0〜20重量%、
二官能性モノマーC 1〜30重量%、
ならびに着色顔料2〜40重量%、
を含む組成物をベースとする、レーザ印字可能なフィルム。
【請求項2】
三官能性オリゴマーAが、ポリウレタントリ(メタ)アクリレートおよびポリエステルトリ(メタ)アクリレートの群から選択される、請求項1に記載のレーザ印字可能なフィルム。
【請求項3】
三官能性モノマーBが、一般式Iのプロポキシル化されたおよびエトキシル化されたグリセロールトリ(メタ)アクリレートまたはそれらの混合物からなる群から選択され、
【化1】

式中、式IにおけるRは水素またはメチルであり、Aは水素またはエチル基であり、X、YおよびZはそれぞれ独立にプロピレン単位またはエチレン単位であり、a、bおよびcはそれぞれ独立に1〜4の整数であり、a+b+cは3〜12の数である、請求項1または2に記載のレーザ印字可能なフィルム。
【請求項4】
二官能性モノマーCが、一般式(II)のエチレングリコールジアクリレート
【化2】

および一般式(III)のプロピレングリコールジアクリレート
【化3】

またはそれらの混合物の群から選択され、
式中、式(II)および式(III)におけるnはそれぞれ独立に1〜15の整数である、請求項1〜3のいずれか一つに記載のレーザ印字可能なフィルム。
【請求項5】
アクリレート塗料組成物のベースである組成物が、三官能性オリゴマーAを50〜60重量%、三官能性モノマーBを5〜15重量%、および二官能性モノマーCを5〜15重量%含む、請求項1〜4のいずれか一つに記載のレーザ印字可能なフィルム。
【請求項6】
コントラスト層の下に接着剤層が配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のレーザ印字可能なフィルム。
【請求項7】
フィルムがラベルの形で存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のレーザ印字可能なフィルム。
【請求項8】
三官能性オリゴマーAが、3つの不飽和(メタ)アクリレート単位および1000〜5000g/molの数平均分子量Mnを有するオリゴマーであり、
三官能性モノマーBが、3つの不飽和(メタ)アクリレート単位および300〜1000g/molの分子量を有するモノマーであり、そして
二官能性モノマーCが、1分子当たり2つの不飽和アクリレート単位および100〜1000g/molの分子量を有するモノマーである、
請求項1〜7のいずれか一つに記載のレーザ印字可能なフィルム。
【請求項9】
三官能性オリゴマーA 30〜80重量%、
三官能性モノマーB 0〜20重量%、
二官能性モノマーC 1〜30重量%、
ならびに着色顔料2〜40重量%
を含む組成物をベースとするアクリレート塗料組成物。
【請求項10】
三官能性オリゴマーAが、ポリウレタントリ(メタ)アクリレートおよびポリエステルトリ(メタ)アクリレートの群から選択される、請求項9に記載のアクリレート塗料組成物。
【請求項11】
三官能性モノマーBが、一般式Iのプロポキシル化されたおよびエトキシル化されたグリセロールトリ(メタ)アクリレートまたはそれらの混合物からなる群から選択され、
【化4】

式中、式IにおけるRは水素またはメチルであり、Aは水素またはエチル基であり、X、YおよびZはそれぞれ独立にプロピレン単位またはエチレン単位であり、a、bおよびcはそれぞれ独立に1〜4の整数であり、a+b+cは3〜12の数である、請求項9または10に記載のアクリレート塗料組成物。
【請求項12】
二官能性モノマーCが、一般式(II)のエチレングリコールジアクリレート
【化5】

および一般式(III)のプロピレングリコールジアクリレート
【化6】

またはそれらの混合物の群から選択され、
式中、式(II)および式(III)におけるnはそれぞれ独立に1〜15の整数である、請求項9〜11のいずれか一つに記載のアクリレート塗料組成物。
【請求項13】
組成物が、三官能性オリゴマーAを50〜60重量%、三官能性モノマーBを5〜15重量%、および二官能性モノマーCを5〜15重量%含む、請求項9〜12のいずれか一つに記載のアクリレート塗料組成物。
【請求項14】
三官能性オリゴマーAが、3つの不飽和(メタ)アクリレート単位および1000〜5000g/molの数平均分子量Mnを有するオリゴマーであり、三官能性モノマーBが、3つの不飽和(メタ)アクリレート単位および300〜1000g/molの分子量を有するモノマーであり、二官能性モノマーCが、1分子当たり2つの不飽和アクリレート単位および100〜1000g/molの分子量を有するモノマーである、請求項9〜14のいずれか一つに記載のアクリレート塗料組成物。
【請求項15】
以下のステップ:
i)支持フィルムを準備するステップと、
ii)支持フィルム上に彫刻層を施すステップと、
iii)彫刻層上に、請求項9〜14のいずれか一つに記載のアクリレート塗料組成物を施すステップと、
iv)コントラスト層を得るためにアクリレート塗料組成物を硬化するステップと、
v)場合により、コントラスト層上に接着剤を施し、剥離紙もしくはリリースライナーで接着剤を被覆するステップと、
vi)支持フィルムを取り外すステップと
を含むレーザ印字可能なフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2013−39829(P2013−39829A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176615(P2012−176615)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】