説明

温度補償型水晶発振器

【課題】 高温高湿の環境下でも安定して動作し、更に温度補償精度を向上させることができる温度補償型水晶発振器を提供する。
【解決手段】 第1のパッケージ内に水晶片が封入された水晶振動子2と、発振部42と、温度センサ部44と、温度補償部45とを備えたICチップ35が第2のパッケージ(パッケージ30)内に樹脂封入された樹脂封止IC3とが、第3のパッケージ(パッケージ1)の同一のキャビティ内に近接して搭載され、リッド4によって気密に封止され、ICチップ35が第2のパッケージに設けられた外部端子の内側の導通面に密着して接続され、更に第2のパッケージの当該外部端子の外側の導通面がパッケージ1の裏面に設けられた外部端子に接続された温度補償型水晶発振器としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度補償型水晶発振器に係り、特に高温高湿の環境下でも安定して動作し、更に温度補償精度を向上させることができる温度補償型水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
車載用の前方障害物センサとしてミリ波レーダが普及しつつあるが、このようなミリ波レーダに搭載される温度補償型水晶発振器(TCXO;Temperature Compensated Crystal Oscillator)では、高温高湿の環境に耐えられる性能が要求されている。
例えば、温度範囲−40℃〜+125℃、湿度85%において正常な動作が要求される。
【0003】
従来の温度補償型水晶発振器としては、H型構造のものがある。
H型構造の温度補償型水晶発振器は、セラミック基板の両面にキャビティ(凹部)を備えたパッケージにおいて一方(例えば上側)のキャビティに水晶振動子を搭載し、他方(例えば下側)のキャビティに、発振回路、温度センサ、温度補償回路等を備えたICチップを搭載した構成である。
【0004】
従来の温度補償型水晶発振器では、ICチップは、スルーホールや側面電極を介して水晶振動子とを電気的に接続され、キャビティ内に充填された樹脂によって封入されている。
そして、パッケージの底面に設けられた端子を介して、外部と電気的に接続可能となっている。
【0005】
上記従来の温度補償型水晶発振器では、水晶振動子は水晶振動子用のパッケージに気密封入されているため耐環境性に優れ、外部環境の影響を受けにくいが、ICチップは、気密封入されておらず、高温高湿の環境下において、保護樹脂の誘電率変化により出力周波数が変化してしまうことがある。
【0006】
また、従来の温度補償型水晶発振器では、ICチップが樹脂で覆われているため、ICチップと水晶振動子との間に温度差が生じ、温度補償精度が低くなりやすい。
【0007】
[関連技術]
尚、温度補償型水晶発振器に関する技術としては、特開2009−027465号公報(日本電波工業株式会社、特許文献1)、国際公開2002/015423(株式会社日立製作所、特許文献2)がある。
特許文献1には、温度補償型水晶発振器において、パッケージ化されていないICと水晶振動子とが同一のキャビティ内に収納された構成が記載されている。
また、特許文献2には、送受信モジュールにおいて、気密封止IC内のICチップを気密封止ICの直下の外部端子に接続することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−027465号公報
【特許文献2】国際公開2002/015423
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の温度補償型水晶発振器では、ICチップが気密封入されていないため、高温高湿の環境下においては保護樹脂の誘電率が変化して出力周波数が変動してしまうという問題点があった。
また、ICチップと水晶振動子との間に温度差が生じて温度補償精度が低下しやすいという問題点があった。
【0010】
尚、特許文献1に記載された水晶発振器は、製造工程が複雑で品質にばらつきが生じ易く、また、特性検査や調整の際には、水晶振動子とICチップとを組み込んだ状態の水晶発振器全体として検査を行わなければならず、所望の特性を精度よく実現することは困難であった。
更に、特許文献1及び2には、パッケージ内に気密封入された水晶振動子とICチップ(ダイ)とを同一のキャビティ内に近接して搭載することについての記載はない。
【0011】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、高温高湿の環境下でも出力周波数の変動を抑え、更に、温度補償精度を向上させて一層安定した出力周波数を得ることができる温度補償型水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、温度補償型水晶発振器であって、第1のパッケージに気密に封入され、入力された高周波電圧に基づいて振動する水晶片を有する水晶振動子と、外部と電気的に接続する複数の外部端子を有する第2のパッケージに、樹脂によって封入されたICチップを有する樹脂封止ICと、水晶振動子と樹脂封止ICとを格納するキャビティを有し、裏面の四隅にそれぞれ外部端子が形成された第3のパッケージとを備え、第2のパッケージの外部端子が、当該パッケージの内側と外側に導通面を備え、水晶振動子と樹脂封止ICとが、第3のパッケージのキャビティ内に近接して搭載されて、蓋によって気密に封止されており、ICチップが、水晶振動子に高周波電圧を供給すると共に水晶振動子からの周波数信号を出力する発振部と、温度を検出する温度センサと、温度センサで検出された温度に基づいて周波数信号の温度補償を行う温度補償部と、外部と電気的に接続する外部端子とを有し、当該外部端子が、第2のパッケージのいずれかの外部端子の内側の導通面に密着して接続され、更に第2のパッケージの当該外部端子の外側の導通面が、第3のパッケージの外部端子の1つに接続されていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、上記温度補償型水晶発振器において、第3のパッケージの外部端子の1つが出力端子であり、第2のパッケージの外部端子の1つが出力端子であり、樹脂封止ICが、水晶振動子に比べて、第3のパッケージの出力端子が形成された角部に近い位置に搭載され、第2のパッケージの出力端子が、第3のパッケージの出力端子に接続されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、上記温度補償型水晶発振器において、第2のパッケージの外部端子の1つが、当該パッケージの内側と外側に導通面を備え、ICチップの回路面に対して反対面に接続されたダイグランド端子であり、樹脂封止ICのICチップの外部端子が、当該ダイグランド端子の内側の導通面に接続するダイグランド端子であり、第3のパッケージの外部端子の1つが、第2のパッケージのダイグランド端子の外側の導通面に接続するグランド端子であることを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、上記温度補償型水晶発振器において、第2のパッケージのダイグランド端子と、第3のパッケージのグランド端子とが、スルーホールによって接続されていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、上記温度補償型水晶発振器において、第2のパッケージのダイグランド端子と、第3のパッケージのグランド端子とが、第3のパッケージの側面に形成された電極によって接続されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、温度補償型水晶発振器であって、第1のパッケージに気密に封入され、入力された高周波電圧に基づいて振動する水晶片を有する水晶振動子と、外部と電気的に接続する複数の外部端子を有する第2のパッケージに、樹脂によって封入されたICチップを有する樹脂封止ICと、水晶振動子と樹脂封止ICとを格納するキャビティを有し、裏面の四隅にそれぞれ外部端子が形成された第3のパッケージとを備え、第2のパッケージの外部端子が、当該パッケージの内側と外側に導通面を備え、水晶振動子と樹脂封止ICとが、第3のパッケージのキャビティ内に近接して搭載されて、蓋によって気密に封止されており、ICチップが、水晶振動子に高周波電圧を供給すると共に水晶振動子からの周波数信号を出力する発振部と、温度を検出する温度センサと、温度センサで検出された温度に基づいて周波数信号の温度補償を行う温度補償部と、外部と電気的に接続する外部端子とを有し、当該外部端子が、第2のパッケージのいずれかの外部端子の内側の導通面に密着して接続され、更に第2のパッケージの当該外部端子の外側の導通面が、第3のパッケージの外部端子の1つに接続されている温度補償型水晶発振器としているので、ICチップが外部環境の影響を受けにくくなって、高温高湿の環境であっても出力周波数を安定させることができ、更に、同一キャビティ内に近接している水晶振動子の温度を正確に検出することができると共に、ICチップで発生する熱を第2のパッケージの外部端子及び第3のパッケージの外部端子を介して外部に効率的に放熱でき、温度補償の精度を向上させることができる効果がある。
【0018】
また、本発明によれば、第3のパッケージの外部端子の1つが出力端子であり、第2のパッケージの外部端子の1つが出力端子であり、樹脂封止ICが、水晶振動子に比べて、第3のパッケージの出力端子が形成された角部に近い位置に搭載され、第2のパッケージの出力端子が、第3のパッケージの出力端子に接続されている上記温度補償型水晶発振器としているので、第2のパッケージの出力端子と第3のパッケージの出力端子との間の配線を短くして、水晶振動子と第3のパッケージとの間の浮遊容量を小さくすることができ、第3のパッケージの出力端子に接続される負荷の負荷容量や負荷抵抗が水晶振動子に与える影響を抑制し、負荷容量や負荷抵抗の変動に伴う出力周波数の変動を抑え、安定した出力周波数を供給することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る温度補償型水晶発振器の構成ブロック図である。
【図2】本発振器の概略説明図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A′の断面説明図、(c)は底面図である。
【図3】樹脂封止IC3の構成を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る温度補償型水晶発振器は、水晶片(水晶ブランク)が第1のパッケージに封止された水晶振動子と、発振回路と、温度センサと、温度補償部とを備えたICチップが第2のパッケージ内に樹脂で封止された樹脂封止ICとが、第3のパッケージの同一のキャビティ内に近接して搭載されて気密封止され、ICチップの外部接続端子が第2のパッケージの外部接続端子の導通面に密着して接続されて、更に第2のパッケージの当該外部端子が第3のパッケージの外部接続端子に接続されているものであり、樹脂封止ICが気密封止されることによって、高温高圧環境下でも安定した出力周波数が得られ、ICチップが発生する熱を第3のパッケージの外部端子から放熱し易くし、樹脂封止ICの近傍に搭載された水晶振動子の温度を正確に測定して温度補償精度を向上させ、更に、水晶振動子と樹脂封止ICとを個別に特性検査することができるため、それぞれ信頼性を確保して、発振器全体の設計や開発等の製品化に要する期間を短縮することができるものである。
【0021】
また、本発明の実施の形態に係る温度補償型水晶発振器は、樹脂封止ICが第3のパッケージのキャビティ内において、出力端子に近い側に配置されているものであり、ICチップの高周波出力端子から第3のパッケージの出力端子までの配線を短くすることにより、水晶振動子と第3のパッケージの出力端子との間の浮遊容量を小さくして、出力負荷の負荷容量や負荷抵抗の変動による出力周波数の変動を小さくすることができるものである。
【0022】
[実施の形態に係る温度補償型水晶発振器の回路構成:図1]
本発明の実施の形態に係る温度補償型水晶発振器の回路構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る温度補償型水晶発振器の構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係る温度補償型水晶発振器(本発振器)は、温度補償型水晶発振器であり、図1に示すように、水晶振動子2と、IC部(後述する樹脂封止IC)3とを備えている。
【0023】
水晶振動子2は、水晶片を備え、入力された高周波電圧に基づいて振動する。
IC部3は、ICチップ(ICダイ)に、外部制御信号が入力される入力端子(AFC端子)と、自動周波数制御部(AFC:Auto Frequency Control)41と、発振部(OSC)42と、出力バッファ部(OUT BUFFER)43と、温度センサ部(TEMP SENSOR)44と、温度補償部(FUNC)45と、不揮発性メモリ(NVM)46と、定電圧電源(REG)47と、電源電圧が供給される電源端子(VDD端子)と、周波数信号が出力される出力端子(OUT端子)と、グランド端子(GND端子)とを備えている。
【0024】
自動周波数制御部41は、AFC端子から入力された外部制御信号に対する感度(電圧ゲイン)を調整し、発振部42に出力する。
発振部42は、その感度調整された電圧により変化した可変容量素子の容量と高周波電圧を水晶振動子に供給して、水晶振動子と共に発振させた信号を出力バッファ部43に出力する。
出力バッファ部43は、発振部42からの発振信号をバッファリング(増幅)して出力端子(OUT端子)に出力する。
ここで、出力バッファ部43と、水晶振動子1と発振部42で、電圧制御水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscillator)を構成している。
【0025】
温度センサ部44は、水晶振動子2の周辺の温度を測定し、温度補償部45に出力する。
不揮発性メモリ46は、温度補償に用いられるパラメータを記憶している。
温度補償部45は、関数を発生させる回路であり、不揮発性メモリ46に記憶された温度補償に関するパラメータを読み取り、温度センサ部44から入力された測定温度の値とパラメータを基に演算処理を行い、補償電圧を電圧制御水晶発振器に出力する。
【0026】
[本発振器の構成:図2]
本発振器の構成について図2を用いて説明する。図2は、本発振器の概略説明図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A′の断面説明図、(c)は底面図である。
図2(a)(b)に示すように、本発振器は、セラミック等から成るパッケージ1に形成された凹部空間であるキャビティ11内に、水晶振動子2と、樹脂封止IC3とが近接して搭載され、リッド(蓋)4によって気密に封止された構成である。尚、パッケージ1は、請求項に記載した第3のパッケージに相当する。
本発振器では、水晶振動子2と樹脂封止IC3とは、いずれも個別のパッケージに封入されている。
【0027】
水晶振動子2は、水晶振動子用のパッケージの内部に水晶片(水晶ブランク)が気密封止されており、入力された高周波電圧に基づいて振動する。
水晶振動子2としては、パッケージに形成されたキャビティの内部に水晶片を格納して、当該キャビティの開口部を蓋で覆って気密封止した構成や、基板上に水晶片を搭載して、上から箱型の蓋を被せて気密封止した構成がある。
水晶振動子用のパッケージ及び蓋は、請求項に記載した第1のパッケージに相当する。
【0028】
第1のパッケージの裏面には、樹脂封止IC3と接続するための複数の端子21が設けられている。端子21は、2個の水晶端子と、グランド端子である。
そして、水晶振動子の各端子21は、パッケージ1(第3のパッケージ)のキャビティ内部の底面に形成された金属電極パターンに接続して、更に各々対応する樹脂封止IC3の端子31又は32に接続されている。
【0029】
樹脂封止IC3は、IC用のパッケージ内部にICダイが搭載され、樹脂(保護樹脂)で封止されたものであり、樹脂封止IC3の底面には、中央にグランド端子(ダイグランド端子)31が設けられ、周辺部に複数の端子32が設けられている。端子32としては、電源電圧端子、出力端子、制御電圧端子、グランド端子がある。
そして、ダイグランド端子31及び各端子32は、パッケージ30の内側と外側の両側に導通面を備えている。
IC用のパッケージは、請求項に記載した第2のパッケージに相当する。
ICダイは、図1に示したIC部の機能構成を備えた回路であり、底面が第2のパッケージと接続するダイグランド端子となっている。
【0030】
樹脂封止IC3のダイグランド端子31は、ICダイの底面と導電性接着剤によって直接接続されており、各端子32は、ワイヤボンディングによってICダイの対応する端子に接続されている。樹脂封止IC3の構成については後述する。
【0031】
樹脂封止IC3のダイグランド端子31とICダイの底面とを、面同士を直接密着させて接続することにより、ICダイで発生する熱を、樹脂封止IC3のダイグランド端子31及びパッケージ1のグランド端子12bを介して効率的に外部に放熱することができ、また、ダイグランド端子31を介してキャビティ内の熱をICダイの温度センサ部44に伝達し易くして、水晶振動子2と共に格納されている空間内部の温度を正確に検出して精度の高い温度補償を行うことができるものである。
【0032】
また、図2(c)に示すように、パッケージ1の底面部には、四隅に4つの外部端子12が設けられている。外部端子12としては、出力(OUT)端子12a、グランド(GND)端子12b、制御電圧端子(AFC)12c、電源電圧端子(VDD)12dがある。
各外部端子12は、スルーホール又は側面電極によって、それぞれ対応する樹脂封止IC3のダイグランド端子31又は端子32に接続されている。
【0033】
そして、本発振器の特徴として、図2(b)に示すように、樹脂封止IC3は、キャビティ内において、出力端子11aに近い側に搭載されている。つまり、樹脂封止IC3は、樹脂封止IC3と出力端子11aとの距離が、水晶振動子2と出力端子11aとの距離よりも短くなる位置に搭載されている。
【0034】
水晶振動子2からの周波数信号は、樹脂封止IC3を介して出力端子12aに出力されるため、このように配置することにより、パッケージ1の出力端子12aと、樹脂封止IC3の出力端子32との間の配線を短くすることができ、水晶振動子1と出力端子12aとの間の浮遊容量を低減して、出力端子12aに接続される負荷の負荷容量や負荷抵抗の変動が水晶振動子2に与える影響を小さくし、出力周波数の変動を抑えることができるものである。
【0035】
[樹脂封止IC3の構成:図3]
次に、樹脂封止IC3の構成について図3を用いて説明する。図3は、樹脂封止IC3の構成を示す断面説明図である。
図3に示すように、樹脂封止IC3は、パッケージ30の底面部に、ダイグランド端子31と、複数の端子32とを備え、ダイグランド端子31の上に、導電性接着剤34を介してICダイ35が搭載されている。樹脂封止IC3に搭載されているICダイは、発振回路、温度センサ、温度補償回路を備えている。パッケージ30は、請求項に記載した第2のパッケージに相当する。
【0036】
ダイグランド端子31は、上面及び下面の両面で電気的に導通し、上面はICダイ35の底面に密着して接続し、下面はパッケージ1に形成された金属電極パターンに接続して、更にパッケージ1の裏面に形成されたグランド端子に接続される。
【0037】
本発振器では、ICダイ35が、樹脂封止IC3のグランド端子31上に密着して搭載されているので、フリップチップボンディング等により接続されるのに比べて接触面積が広くなり、ICダイ35からの熱を外部に容易に逃がして、正確な温度検出及び温度補償制御を可能としている。
【0038】
また、ICダイ35の端子は、ボンディングワイヤ36によって樹脂封止IC3の対応する端子32にそれぞれ接続されている。樹脂封止IC3の端子32の下面は、ダイグランド端子31と同様に、パッケージ1に形成された金属電極パターンに接続して、更にパッケージ1の裏面に形成された外部端子に接続されている。
そして、パッケージ30の内部は保護樹脂37によって満たされており、ICダイ35がパッケージ30内に樹脂封入された構成となっている。
【0039】
このように、本発振器では、発振回路や温度補償回路を備えたICを樹脂で封止された樹脂封止IC3で構成し、更に同一のキャビティ内に樹脂封止IC3と水晶振動子2とを近接して搭載し、気密に封止することにより、外部環境の影響を受けにくくして安定した出力を得ると共に、ICダイで水晶振動子2の温度をより正確に検出して、温度補償制御の精度を向上させることができるものである。
【0040】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る温度補償型水晶発振器によれば、第1のパッケージ内に水晶片が封入された水晶振動子2と、発振部42と、温度センサ部44と、温度補償部45とを備えたICダイ35が第2のパッケージ(パッケージ30)内に樹脂封入された樹脂封止IC3とが、第3のパッケージ(パッケージ1)の同一のキャビティ内に近接して搭載され、リッド4によって気密に封止され、ICダイ35が樹脂封止IC3の第2のパッケージの中央に設けられたダイグランド端子31の内側の導通面に密着して接続し、更に樹脂封止IC3の第2のパッケージのダイグランド端子31の外側の導通面がパッケージ1の裏面に設けられたグランド端子12bに接続された構成としているので、ICダイ35への外部環境の影響を小さくして、高温高湿の環境下であっても出力周波数を安定させることができ、また、樹脂封止IC3の温度センサ部44が同一キャビティ内で近接して設けられた水晶振動子2の温度を精度よく検出でき、更にダイグランド端子31及びパッケージ1のグランド端子12bを介してICダイ35で発生する熱を効率よく外部に放熱して、温度補償の精度を向上させることができる効果がある。
【0041】
また、本発振器によれば、上記発振器において、樹脂封止IC3がパッケージ1の外部端子の内出力端子12aが設けられている側に搭載された構成としているので、樹脂封止IC3の出力端子とパッケージ1の出力端子12aとの距離を短くして、この間の配線を短くして浮遊容量を小さくすることができ、出力端子12aに接続される負荷の負荷容量や負荷抵抗の変動に伴う出力周波数の変動を抑え、安定した出力周波数を供給することができる効果がある。
【0042】
更に、水晶振動子2と樹脂封止IC3とが共にパッケージ化されているので、パッケージ毎に電気的な特性を検査することができ、十分な品質水準を満たす水晶振動子2と樹脂封止IC3とを用いて本発振器を構成することができ、発振器全体の設計、開発等の製品化に要する期間を短縮することができる効果がある。
【0043】
尚、第2のパッケージの外部端子の外側の導通面が、第3のパッケージの外部端子の1つに接続されているとしたが、ICダイ35のダイグランド端子が、第3のパッケージの実装端子と密着して接続されていれば、水晶振動子2の温度を精度よく検出でき、更にダイグランド端子31及びパッケージ1との接続を介してICダイ35で発生する熱を外部に放熱して、温度補償精度をより向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、高温高湿の環境下でも安定して動作し、更に温度補償精度を向上させることができる温度補償型水晶発振器に適している。
【符号の説明】
【0045】
1...パッケージ、 2...水晶振動子、 3...樹脂封止IC、 4...リッド、 11キャビティ、 12a...出力端子(OUT端子)、 12b...グランド端子(GND端子)、 12c...制御電圧端子(AFC端子)、 21,32...端子、 31...ダイグランド端子、 30...パッケージ、 34...導電性接着剤、 35...ICダイ(ICチップ)、 36...ボンディングワイヤ、 37...保護樹脂、 41...自動周波数制御部、 42...発振部、 43...出力バッファ部、 44...温度センサ部、 45...温度補償部、 46...不揮発性メモリ、 47...定電圧電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度補償型水晶発振器であって、
第1のパッケージに気密に封入され、入力された高周波電圧に基づいて振動する水晶片を有する水晶振動子と、
外部と電気的に接続する複数の外部端子を有する第2のパッケージに、樹脂によって封入されたICチップを有する樹脂封止ICと、
前記水晶振動子と前記樹脂封止ICとを格納するキャビティを有し、裏面の四隅にそれぞれ外部端子が形成された第3のパッケージとを備え、
前記第2のパッケージの外部端子が、当該パッケージの内側と外側に導通面を備え、
前記水晶振動子と前記樹脂封止ICとが、前記第3のパッケージのキャビティ内に近接して搭載されて、蓋によって気密に封止されており、
前記ICチップが、前記水晶振動子に高周波電圧を供給すると共に前記水晶振動子からの周波数信号を出力する発振部と、温度を検出する温度センサと、前記温度センサで検出された温度に基づいて前記周波数信号の温度補償を行う温度補償部と、外部と電気的に接続する外部端子とを有し、当該外部端子が、前記第2のパッケージのいずれかの外部端子の内側の導通面に密着して接続され、更に前記第2のパッケージの当該外部端子の外側の導通面が、前記第3のパッケージの前記外部端子の1つに接続されていることを特徴とする温度補償型水晶発振器。
【請求項2】
第3のパッケージの外部端子の1つが出力端子であり、
第2のパッケージの外部端子の1つが出力端子であり、
樹脂封止ICが、水晶振動子に比べて、前記第3のパッケージの出力端子が形成された角部に近い位置に搭載され、
前記第2のパッケージの出力端子が、前記第3のパッケージの出力端子に接続されていることを特徴とする請求項1記載の温度補償型水晶発振器。
【請求項3】
第2のパッケージの外部端子の1つが、当該パッケージの内側と外側に導通面を備え、ICチップの回路面に対して反対面に接続されたダイグランド端子であり、
樹脂封止ICのICチップの外部端子が、当該ダイグランド端子の内側の導通面に接続するダイグランド端子であり、
第3のパッケージの外部端子の1つが、前記第2のパッケージのダイグランド端子の外側の導通面に接続するグランド端子であることを特徴とする請求項1又は2記載の温度補償型水晶発振器。
【請求項4】
第2のパッケージのダイグランド端子と、第3のパッケージのグランド端子とが、スルーホールによって接続されていることを特徴とする請求項3記載の温度補償型水晶発振器。
【請求項5】
第2のパッケージのダイグランド端子と、第3のパッケージのグランド端子とが、前記第3のパッケージの側面に形成された電極によって接続されていることを特徴とする請求項3記載の温度補償型水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−62701(P2013−62701A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200200(P2011−200200)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】