説明

温度試験装置及び方法

【課題】温度試験に用いる試験槽を複数接続することにより、各試験槽の温度管理を一括して行いつつ複数温度での温度試験を行うことを可能とする。
【解決手段】所定の温度に設定された液体を貯留する試験槽21〜24を備え、被試験体を液体に浸漬することにより温度試験を行えるようにした温度試験装置1であって、複数の試験槽21〜24が直列に接続され、隣合う試験槽21〜24の間にラジエータ31〜33が介在し、液体を複数の試験槽21〜24にラジエータ31〜33を介して流通するように循環させるポンプ40と、液体を加熱するヒータ10とを備えることを特徴とする温度試験装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の温度の液体が貯留された試験槽により温度試験を行う温度装置及び方法に係り、特に、複数の温度での温度試験を行うことが可能な温度試験装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種部品や材料の温度試験を行う場合、従来より、所定の試験温度に設定された油などの液体で満たされた試験槽が用いられている。このような試験槽を用いて、複数の温度で温度試験をする場合は、設定温度が異なる複数の試験槽を複数並べて用いるのが通常である。しかし、各試験槽について温度条件を別々に管理するためには手間とコストが掛かり、特に、試験が長期間(例えば、1年)に亘る場合は、その手間やコストは多大なものとなる。なお、ICデバイス等被試験体の温度特性を試験するための温度特性試験装置として特許文献1がある。
【特許文献1】特開平5−288801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、温度試験に用いる試験槽を複数接続することにより、各試験槽の温度管理を一括して行いつつ複数温度での温度試験を行うことが可能な温度試験装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第一の発明は、所定の温度に設定された液体を貯留する試験槽を備え、被試験体を前記液体に浸漬することにより温度試験を行えるようにした温度試験装置であって、
複数の前記試験槽が直列に接続され、
隣合う前記試験槽の間にラジエータが介在し、
前記液体を前記複数の試験槽に前記ラジエータを介して流通するように循環させるポンプと、前記液体を加熱するヒータとを備えることを特徴とする温度試験装置である。
【0005】
第二の発明は、所定の温度に設定された液体を貯留する試験槽を備え、被試験体を前記液体に浸漬することにより温度試験を行えるようにした温度試験装置であって、
複数の前記試験槽が直列に接続され、
隣合う前記試験槽の間にラジエータが介在し、
前記液体を前記複数の試験槽に前記ラジエータを介して流通するように循環させるポンプと、前記液体を冷却する冷却部とを備えることを特徴とする温度試験装置である。
【0006】
第三の発明は、第一又は第二の発明に記載の温度試験装置において、
前記試験槽は密閉槽であることを特徴とする温度試験装置である。
【0007】
第四の発明は、第三の発明に記載の温度試験装置において、
前記試験槽が鉛直方向に積み上げて設置されていることを特徴とする温度試験装置である。
【0008】
第五の発明は、第四の発明に記載の温度試験装置において、
最上段より下段の各試験槽について、その上段の試験槽と接続する管路にバルブが設けられていることを特徴とする温度試験装置である。
【発明の効果】
【0009】
温度試験に用いる試験槽を複数接続することにより、各試験槽の温度管理を一括して行いつつ複数温度での温度試験を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態である温度試験装置1の全体構成図である。同図に示すように、温度試験装置1は、ヒータ10、複数の試験槽21〜24、複数のラジエータ31〜33、及び、ポンプ40を有している。試験槽21〜24は直列に接続されており、隣合う試験槽の間に、夫々、ラジエータ31〜33が介在している。ポンプ40の吸入口は第4試験槽24に接続され、また、吐出口はヒータ部10に接続されており、ポンプ40から吐出された所定の液体が、ヒータ10で加熱された後、第1試験槽21→第1ラジエータ31→第2試験槽22→第2ラジエータ32→第3試験槽23→第3ラジエータ33→第4試験槽24→ポンプ40と循環する構成となっている。なお、上記所定の液体(以下、「試験液」という)は、試験槽21〜24内を満たして各試験槽内に設置された被試験体の温度を所定の温度に保つためもの液体であって、例えば、シリコンオイル等の油、水、アルコール等である。すなわち、試験槽21〜24では、それぞれの内部に貯留された試験液に被試験体を浸漬することにより、被試験体を試験液の温度に保持する。なお、被試験体が直接、試験液に触れないように、例えば、被試験体を密閉容器に入れたうえで、試験液に浸漬させるものとする。
【0011】
なお、図1では、第1〜第4の4つの試験槽21〜24を備えた場合について示しているが、これに限らず適宜な個数の試験槽を設けることができる。また、試験槽21〜24は、夫々の内部の試験液の温度を検出する温度センサを備えてもよい。
【0012】
上記のように、ラジエータ31〜33は、試験槽21と試験槽22との間、試験槽22と試験槽23との間、試験槽23と試験槽24との間の夫々に設置されており、上流側の試験槽から流出した試験液を、その下流側の試験槽での試験温度まで冷却する。すなわち、試験槽21〜24の試験温度が夫々T1〜T4(ただし、T1>T2>T3>T4)であるとすると、ヒータ10は試験液を温度T1まで加熱し、第1ラジエータ31は、第1試験層21の温度T1の試験液を温度T2まで冷却して第2試験槽22に供給し、第2ラジエータ32は、第2試験層22の温度T2の試験液を温度T3まで冷却して第3試験槽23に供給し、第3ラジエータ33は、第3試験槽23の温度T3の試験液を温度T4まで冷却して第4試験槽24に供給する。なお、ラジエータ31〜33は、例えば送風機等、試験液の放熱量を調節する手段を備えていてもよい。
【0013】
各試験槽21〜24に液温検出用の温度センサが設けられ、ラジエータ31〜33に放熱量の調整手段が設けられる場合には、次のようにして温度制御を行うことができる。すなわち、ヒータ10については、第1試験槽21の液温を監視し、その液温が温度T1となるように加熱制御を行う。また、各ラジエータ31〜33については、その下流の試験槽の液温に応じて放熱量調節手段による放熱量の制御を行う。例えば、第1ラジエータ31の場合は、その下流の第2試験槽22の液温がT2となるように放熱量の制御を行う。
【0014】
以上の通り、本実施形態によれば、試験液で満たされた複数の試験槽を連結し、試験液を適切な温度に調節しつつ各試験槽に循環させることで、一台の試験装置で複数の試験槽21〜24の温度管理を一括して行いながら、複数温度の温度試験を行うことができるので、温度条件管理の簡便化を図ることが可能となる。
【0015】
ところで、本実施形態において、温度試験装置1が備える各試験槽21〜24は、密閉式の槽としてもよい。この場合、試験液の揮発や劣化といった問題や、試験液がこぼれたり試験液中に外部から異物が入ってしまったりといった問題を防止することができる。
【0016】
このような密閉型の試験槽21〜24を備える温度試験装置1では、図2に示すように試験槽21〜24を鉛直方向に配置してもよい。機能面では、試験槽の配置が鉛直方向であっても水平方向であっても同じであるものの、試験槽を鉛直方向に重ねることで設置スペースを小さくすることができる。なお、この場合、最上段の試験槽24よりも下の試験槽、すなわち、下3段の試験槽21〜23とラジエータ31〜33の間に夫々バルブ212,222,232を装着しておく。そして、例えば、被試験体を試験槽21の槽内に設置するためにその蓋211を開ける際には、予めバルブ212を閉めておくことで、上段の試験槽22の試験液が試験槽21に流入するのを防止し、これにより、試験液が試験槽21の蓋211から溢れ出るのを防止することができる。同様に、試験槽22の蓋221を開ける場合には、バルブ222を閉じ、試験槽23の蓋231を開ける場合には、バルブ232を閉じればよい。
【0017】
このように温度試験装置1が密閉式の試験槽21〜24を備えることにより、試験槽21〜24へ異物が侵入したり、試験液が蒸発したり、更には試験液が空気に触れて劣化したりするのを防止できるので、無人での管理も可能となる。これは1年以上に渡るような長期の試験を実施する際には、たいへん便利である。また、試験槽21〜24を鉛直方向に重ねて配置することで、試験装置の占有面積も小さくて済む。
【0018】
なお、バルブ212〜232に代えて、下段の試験槽から上段の試験層へ向かう向きの流れのみを許容し、その逆向きの流れを阻止する逆止弁を設けてもよい。この場合は、蓋211〜231を開ける都度バルブを閉じる操作を行わなくて済む。
【0019】
図3は、本発明の別の実施形態である温度試験装置2の全体構成図である。温度試験装置2は、環境温度よりも低温での温度試験を行うものであり、ヒータ10に代えて冷却部15を設けた構成である。また、第1試験槽〜第4試験槽の温度T1〜T4は上記第1実施形態とは逆にT1<T2<T3<T4の関係にあり、ラジエータ31は、上流側の試験槽の試験液を環境空気との熱交換により暖めて下流側の試験槽に供給する。
【0020】
なお、以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態である温度試験装置1の全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態の斜視図である。
【図3】本発明の別の実施形態である温度試験装置2の全体構成図である
【符号の説明】
【0022】
1 温度試験装置
2 温度試験装置
10 ヒータ
15 冷却部
21 第1試験槽
211 蓋
212 バルブ
22 第2試験槽
221 蓋
222 バルブ
23 第3試験槽
231 蓋
232 バルブ
24 第4試験槽
241 蓋
31 第1ラジエータ
32 第2ラジエータ
33 第3ラジエータ
40 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度に設定された液体を貯留する試験槽を備え、被試験体を前記液体に浸漬することにより温度試験を行えるようにした温度試験装置であって、
複数の前記試験槽が直列に接続され、
隣合う前記試験槽の間にラジエータが介在し、
前記液体を前記複数の試験槽に前記ラジエータを介して流通するように循環させるポンプと、前記液体を加熱するヒータとを備えることを特徴とする温度試験装置。
【請求項2】
所定の温度に設定された液体を貯留する試験槽を備え、被試験体を前記液体に浸漬することにより温度試験を行えるようにした温度試験装置であって、
複数の前記試験槽が直列に接続され、
隣合う前記試験槽の間にラジエータが介在し、
前記液体を前記複数の試験槽に前記ラジエータを介して流通するように循環させるポンプと、前記液体を冷却する冷却部とを備えることを特徴とする温度試験装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度試験装置において、
前記試験槽は密閉槽であることを特徴とする温度試験装置。
【請求項4】
請求項3に記載の温度試験装置において、
前記試験槽が鉛直方向に積み上げて設置されていることを特徴とする温度試験装置。
【請求項5】
請求項4に記載の温度試験装置において、
最上段より下段の各試験槽について、その上段の試験槽と接続する管路にバルブが設けられていることを特徴とする温度試験装置。
【請求項6】
所定の温度に設定された液体を貯留する試験槽により被試験体の温度試験を行う温度試験方法であって、
複数の前記試験槽を直列に接続し、
隣合う前記試験槽の間にラジエータを介在させ、
前記液体を前記複数の試験槽に前記ラジエータを介して流通するように循環させ、
前記複数の試験槽に被試験体を設置することを特徴とする温度試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−180557(P2009−180557A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18115(P2008−18115)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】