説明

温度調整装置

【課題】周囲温度が上昇した場合においても配電盤からの電力供給を継続し得る温度調整装置を提供する。
【解決手段】冷凍サイクル5A、供給対象体に供給する水Wと冷凍サイクル5Aにおける冷媒との間で熱交換させる熱交換器6、および少なくとも冷凍サイクル5Aにおける圧縮機41に電力を供給する配電盤10を備えて、熱交換器6において目標温度範囲内の温度に調整した水Wを供給対象体に供給する温度調整装置1Aであって、水Wと周囲の空気との間で熱交換させる熱交換器7aと、熱交換器7aにおいて水Wとの間で熱交換させられて冷却された空気を配電盤10に供給して配電盤10を冷却するファン32とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標温度範囲内の温度に調整した水を供給対象体に供給可能に構成された温度調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の温度調整装置として、出願人は、工作機械などの被冷却物に冷却液を供給する冷却装置を特開2010−29974号公報に開示している。この冷却装置は、被冷却物に供給した冷却液を回収して再び供給する循環型の冷却装置であって、冷却液を貯留する水槽と、冷却液を圧送する圧送ポンプと、冷却液を冷却するための冷凍サイクルとを備え、これらが装置筐体内に収容されて構成されている。また、装置筐体内には、空気吸い込み口から冷凍サイクルの凝縮器を経由して空気吹き出し口に至る凝縮器冷却用空気流路A(以下、単に「空気流路A」ともいう)、および冷凍サイクル等が配設された機械室から、配電盤が配設された配電盤室を経由して上記の空気流路Aに至る第1配電盤排熱用空気流路C(以下、単に「空気流路C」ともいう)などの各種空気流路が形成されている。
【0003】
この冷却装置では、空気流路A内に配置されている送風ファンを動作させることによって、空気流路A内に凝縮器冷却用空気流を生じさせ、かつ、空気流路C内に第1配電盤排熱用空気流を生じさせる構成が採用されている。これにより、この冷却装置では、配電盤を冷却するための空気流を生じさせるための専用の送風ファンを設けることなく、空気流路A内に配置されている送風ファンだけで装置筐体内に外気を導入して凝縮器および配電盤の双方を冷却することが可能となっている。したがって、この冷却装置では、凝縮器を冷却するための送風ファン、および配電盤を冷却するための送風ファンを別個に設ける構成と比較して、1つの送風ファンを凝縮器の冷却および配電盤の冷却に共用できる分だけ小型化できると共に、空気流路C内に空気流を生じさせることで配電盤室に熱が滞留する事態を回避できるため、配電盤室の容量を小さくして一層小型化することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−29974号公報(第5−7頁、第1−3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、出願人が開示している冷却装置には、以下の改善すべき課題が存在する。すなわち、出願人が開示している冷却装置では、空気流路A内に配設した送風ファンによって装置筐体内に外気を導入して凝縮器および配電盤の双方を冷却する構成が採用されている。しかしながら、気温が上昇する夏期等においては、装置筐体内に導入される外気の温度も上昇する。また、冷却装置等が設置される部屋には冷却液の供給対象である工作機械等が設置されているため、冷却装置の運転時には、工作機械等からの排熱によって室温が上昇する結果、装置筐体に導入される外気の温度も上昇することとなる。このため、出願人が開示している冷却装置では、周囲温度が想定温度以上に上昇した場合に、その温度上昇に伴って配電盤を十分に冷却するのが困難となるおそれがある。したがって、配電盤に配設された機器の保護や誤作動の防止のために、配電盤からの電力供給を停止せざるを得ない状況を招くおそれがあるため、この点を改善するのが好ましい。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、周囲温度が上昇した場合においても配電盤からの電力供給を継続し得る温度調整装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の温度調整装置は、冷凍サイクル、供給対象体に供給する水と前記冷凍サイクルにおける冷媒との間で熱交換させる第1の熱交換器、および少なくとも前記冷凍サイクルにおける圧縮機に電力を供給する配電盤を備えて、前記第1の熱交換器において目標温度範囲内の温度に調整した前記水を前記供給対象体に供給する温度調整装置であって、前記水および前記冷媒の少なくとも一方と周囲の空気との間で熱交換させる第2の熱交換器と、当該第2の熱交換器において前記少なくとも一方との間で熱交換させられて冷却された前記空気を前記配電盤に供給して当該配電盤を冷却する送風機とを備えている。
【0008】
また、請求項2記載の温度調整装置は、請求項1記載の温度調整装置において、前記送風機は、前記配電盤に設けられたヒートシンクに向けて前記空気を送風可能に配設されている。
【0009】
さらに、請求項3記載の温度調整装置は、請求項1または2記載の温度調整装置において、前記第2の熱交換器は、前記水と前記空気との間で熱交換可能に配設されている。
【0010】
また、請求項4記載の温度調整装置は、請求項1または2記載の温度調整装置において、前記第2の熱交換器は、前記冷媒と前記空気との間で熱交換可能に配設されている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1,3,4記載の温度調整装置によれば、第2の熱交換器において水および冷媒の少なくとも一方との間で熱交換させられて冷却された空気を配電盤に供給して配電盤を冷却することにより、配電盤に搭載された各機器が過剰に温度上昇して誤作動や熱破壊を招く事態を回避することができると共に、過剰な温度上昇に伴う配電盤の動作停止を回避することができる結果、目標温度範囲内の温度に調整した水の供給対象体に対する安定的な供給を継続することができる。
【0012】
また、請求項2記載の温度調整装置によれば、送風機が、配電盤に設けられたヒートシンクに向けて空気を送風することにより、第2の熱交換器において冷却した空気に接して送風対象部位において結露が生じたとしても、ヒートシンクに結露水が付着した状態となるだけで、配電盤の各機器に結露水が付着した状態となることがないため、結露水の付着に起因する各機器(配電盤)の誤作動や故障の発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る温度調整装置1Aの構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る温度調整装置1Bの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、温度調整装置の実施の形態について説明する。
【0015】
図1に示す温度調整装置1Aは、「目標温度範囲内の温度(一例として、20℃±1℃)」に調整した水Wを、レーザー加工機や切削機等の各種工作機械、射出成形機および医療機器などの各種の「供給対象体」に供給可能な循環型の温度調整装置であって、貯水槽2、配管3a〜3c、圧送ポンプ4、冷凍サイクル5A、熱交換器6,7a、温度センサ8、コントローラ9および配電盤10を備えて、これらが図示しない筐体内に収容されて構成されている。
【0016】
貯水槽2は、一例として、ステンレススチールの板材を溶接することによって上面開口箱形に形成した貯水槽本体21と、この貯水槽本体21の上面開口部を閉塞する蓋体22とを備えて構成されている。なお、実際の貯水槽2には、給水口、オーバーフロー口および排水口などが設けられているが、温度調整装置1Aの構成に関する理解を容易とするために、これらについての図示および説明を省略する。また、この温度調整装置1Aでは、貯水槽2から供給対象体に水Wを供給するための配管3aに圧送ポンプ4および熱交換器6が設けられている。この場合、圧送ポンプ4は、コントローラ9の制御に従い、貯水槽2に貯水されている水Wを供給対象体に圧送する(供給する)と共に、この圧送によって、供給対象体において温度上昇させられた水Wを供給対象体から貯水槽2に回収する。
【0017】
また、本例の温度調整装置1Aでは、圧送ポンプ4による圧送によって供給対象体に供給されて温度上昇させられた水Wを回収するための配管3bが貯水槽2に接続されている。さらに、本例の温度調整装置1Aでは、上記の配管3aが圧送ポンプ4と熱交換器6との間において分岐されて配管3cに接続されている。この配管3cは、配管3cを通過する水Wの流量を調整するための電磁弁31と、「第2の熱交換器」に相当する熱交換器7aとが配設されると共に、圧送ポンプ4によって熱交換器6に向けて圧送される水Wの一部が配管3aから電磁弁31および熱交換器7aをこの順で通過して貯水槽2に回収されるように接続されている。
【0018】
冷凍サイクル5Aは、圧縮機41、凝縮器42および電子膨張弁43と、コントローラ9の制御下で周囲の空気を凝縮器42に送風するファン42aとを備えて構成されている。また、冷凍サイクル5Aの電子膨張弁43と圧縮機41との間には、熱交換器6が接続されている。なお、実際の冷凍サイクル5Aには、圧力センサ、温度センサ、アキュムレータおよびストレーナ等が設けられているが、冷凍サイクル5Aの構成に関する理解を容易とするために、これらについての図示および説明を省略する。この場合、本例の温度調整装置1Aでは、圧縮機41として、インバータ制御方式の圧縮機が採用されており、圧縮機41の運転状態を変更することで熱交換器6に対する冷媒の供給量を調整することができるように構成されている。
【0019】
熱交換器6は、「第1の熱交換器」の一例であって、電子膨張弁43を通過させられた気液混合状態の冷媒と配管3a内の水Wとの間で熱交換させることにより、配管3a内の水Wを冷却すると共に、冷媒を温度上昇させて気化させる。また、熱交換器7aは、後述する配電盤10の近傍に配設されると共に、圧送ポンプ4によって圧送されて配管3c内を通過させられる水Wと周囲の空気(筐体内の空気)との間で熱交換させることにより、周囲の空気を冷却する。具体的には、熱交換器7aは、一例として、配管3cの長手方向の一部を構成する銅パイプを葛折り状に折り曲げて形成されており、銅パイプ内を通過させられる水Wと、ファン32(「送風機」の一例)によって銅パイプの外面に吹き付けられる空気との間で熱交換させるように構成されている。温度センサ8は、熱交換器6において温度調整されて配管3aを介して供給対象体に供給される水Wの温度を検出してセンサ信号を出力する。
【0020】
コントローラ9は、温度調整装置1Aを総括的に制御する。具体的には、コントローラ9は、圧送ポンプ4を制御して貯水槽2から供給対象体に水Wを供給させる。また、コントローラ9は、温度センサ8からのセンサ信号に基づいて供給対象体に供給される水Wの温度を特定すると共に、特定した温度に応じて、冷凍サイクル5Aの運転状態を変更することで、水Wの温度を目標温度範囲内の温度に調整する。より具体的には、コントローラ9は、後述するように配電盤10に設けられたインバータを制御することで圧縮機41に必要量の冷媒を圧縮させ、かつ電子膨張弁43を制御して熱交換器6に向けて吐出する冷媒の量を調整すると共に、ファン42aを制御して周囲の空気を凝縮器42に向けて送風させる。さらに、コントローラ9は、電磁弁31を制御して配管3cを通過する水Wの流量を調整する。また、コントローラ9は、ファン32を制御して筐体内の空気を熱交換器7aに向けて吹き付けさせることにより、熱交換器7aにおいて冷却された空気を配電盤10に送風させる。
【0021】
配電盤10は、コントローラ9の制御に従い、圧送ポンプ4や圧縮機41に必要量の電力を供給する。この場合、配電盤10には、その動作時に発熱して高温となるインバータや電源部等の機器が配設されており、これらの機器が過剰に高温になると、誤作動や熱破壊を招くおそれがある。したがって、この種の装置では、上記の各機器に生じた熱を排熱するためのヒートシンク(図示せず)が配電盤に設けられると共に、各機器の温度を検出するための温度センサ(図示せず)がヒートシンクに設けられており、発熱に起因する誤作動や熱破壊を回避するために、温度センサからのセンサ信号に基づいて特定されるヒートシンクの温度が予め規定された規定温度に達したときに動作を停止する保護回路(図示せず)が設けられている。
【0022】
しかしながら、誤作動や熱破壊を回避するために配電盤10の動作を停止させたときには、圧送ポンプ4や圧縮機41に対する電力供給が停止することによって、水Wや冷媒の圧送が停止することとなる。このため、配電盤10の各機器が過剰に高温となったときには、目標温度範囲内の温度に調整した水Wを供給対象体に対して供給することができなくなる結果、供給対象体における被冷却部位を正常に冷却することが困難となり、供給対象体において各種のトラブルを招くおそれがある。このため、本例の温度調整装置1Aでは、後述するように、熱交換器7aにおいて冷却した空気を配電盤10に設けられたヒートシンクに吹き付けることで、配電盤10に配設されている上記の各機器が過剰に高温となる事態を回避する構成が採用されている。
【0023】
この温度調整装置1Aによる供給対象体への水Wの供給に際しては、まず、コントローラ9が、圧送ポンプ4を制御して貯水槽2内の水Wを供給対象体に供給させる。また、コントローラ9は、温度センサ8からのセンサ信号に基づいて特定される配管3a内の水Wの温度が目標温度範囲内の温度となるように、圧縮機41の運転状態および電子膨張弁43の開度を制御する。これにより、熱交換器6が蒸発器として機能して、圧送ポンプ4によって圧送される水Wと、供給された冷媒との間での熱交換が行われて、供給対象体に供給される水Wが冷却されると共に、冷媒が温度上昇させられて気化する。また、供給対象体を冷却することによって温度上昇させられた水Wは、配管3bを介して貯水槽2に回収されて貯水される。
【0024】
この場合、コントローラ9は、温度センサ8からのセンサ信号に基づき、配管3aを介して供給対象体に供給する水Wの温度が目標温度範囲よりも低くなりそうであると判別したときに、配電盤10のインバータを制御することで圧縮機41の運転状態を低速運転に移行させると共に、電子膨張弁43を十分に絞ることにより、熱交換器6に供給される冷媒の量を減少させる。この際には、熱交換器6において水Wと熱交換される冷媒の量が減少する結果、熱交換器6において水Wが過剰に冷却されて目標温度範囲よりも低温の水Wが供給対象体に供給される事態が回避される。
【0025】
また、コントローラ9は、温度センサ8からのセンサ信号に基づき、配管3aを介して供給対象体に供給する水Wの温度が目標温度範囲よりも高くなりそうであると判別したときに、配電盤10のインバータを制御することで圧縮機41の運転状態を高速運転に移行させると共に、電子膨張弁43を十分に開放することにより、熱交換器6に供給される冷媒の量を増加させる。この際には、熱交換器6において水Wと熱交換される冷媒の量が増加する結果、熱交換器6において水Wが十分に冷却されて、目標温度範囲よりも高温の水Wが供給対象体に供給される事態が回避される。
【0026】
一方、前述したように、圧送ポンプ4や圧縮機41を動作させているときには、これらに電力を供給している配電盤10の各機器が発熱して温度上昇する。したがって、コントローラ9は、配電盤10に設けられている温度センサからのセンサ信号に基づき、配電盤10の各機器が規定温度(一例として70℃)に達したと判別したときに、電磁弁31を開放させると共にファン32を制御して送風を開始させる。この際には、圧送ポンプ4によって貯水槽2から熱交換器6に向けて圧送されている水Wの一部が電磁弁31を通過して熱交換器7aに供給されると共に、筐体内の空気が熱交換器7aに向けて吹き付けられる。
【0027】
これにより、熱交換器7aを構成する銅パイプ内の水Wとファン32によって吹き付けられた空気(熱交換器7aの周囲の空気)とが熱交換させられて、吹き付けられた空気が冷却されて、この冷却された低温の空気が配電盤10のヒートシンクに向けて送風される。この際には、吹き付けられた空気によってヒートシンクが冷却されるため、配電盤10の各機器が徐々に温度低下させられる。なお、熱交換器7aにおいて周囲の空気と熱交換させられて温度上昇した水Wは、配管3cを通って貯水槽2に回収される。
【0028】
また、コントローラ9は、配電盤10に設けられている温度センサからのセンサ信号に基づき、配電盤10の各機器が十分に温度低下したと判別したとき(一例として、センサ信号に基づいて特定されるヒートシンクの温度が60℃になったとき)に、電磁弁31を閉塞させると共にファン32を停止させる。これにより、配電盤10を冷却する必要がない状態において、供給対象体に供給すべき水Wの一部が熱交換器7aに供給される事態が回避されると共に、ファン32による電力の消費が回避される。
【0029】
このように、この温度調整装置1Aによれば、熱交換器7aにおいて水Wとの間で熱交換させられて冷却された空気を配電盤10に供給して配電盤10を冷却することにより、配電盤10に搭載された各機器が過剰に温度上昇して誤作動や熱破壊を招く事態を回避することができると共に、過剰な温度上昇に伴う配電盤10の動作停止を回避することができる結果、目標温度範囲内の温度に調整した水Wの供給対象体に対する安定的な供給を継続することができる。
【0030】
また、この温度調整装置1Aによれば、ファン32が、配電盤10に設けられたヒートシンクに向けて空気を送風することにより、熱交換器7aにおいて冷却した空気に接して送風対象部位において結露が生じたとしても、ヒートシンクに結露水が付着した状態となるだけで、配電盤10の各機器に結露水が付着した状態となることがないため、結露水の付着に起因する各機器(配電盤10)の誤作動や故障の発生を回避することができる。
【0031】
次に、温度調整装置の他の実施の形態について説明する。なお、上記の温度調整装置1Aと同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0032】
図2に示す温度調整装置1Bは、前述した温度調整装置1Aにおける配管3c、電磁弁31および熱交換器7aが存在しない点、並びに、冷凍サイクル5Aに代えて冷凍サイクル5Bを備えている点を除き、温度調整装置1Aとほぼ同様に構成されている。
【0033】
冷凍サイクル5Bは、冷凍サイクル5Aと同様にして、圧縮機41、凝縮器42、ファン42aおよび電子膨張弁43を備えると共に、電子膨張弁43と圧縮機41との間に熱交換器6が接続されて構成されている。また、冷凍サイクル5Bでは、凝縮器42と電子膨張弁43との間の冷媒配管が分岐されており、一方の冷媒配管によって、凝縮器42からの冷媒の一部が電子膨張弁43を通過して熱交換器6に供給されると共に、他方の冷媒配管によって、凝縮器42からの冷媒の他の一部がキャピラリチューブ44を通過して熱交換器7bに供給される構成が採用されている。
【0034】
なお、熱交換器7bの手前に配設する「膨張弁」は、キャピラリチューブ44のような「機械式膨張弁」に限定されず、熱交換器6の手前に配設されている電子膨張弁43と同様の「電子膨張弁」を採用することもできる。また、実際の冷凍サイクル5Bには、圧力センサ、温度センサ、アキュムレータおよびストレーナ等が設けられているが、冷凍サイクル5Bの構成に関する理解を容易とするために、これらについての図示および説明を省略する。
【0035】
熱交換器7bは、「第2の熱交換器」の他の一例であって、配電盤10の近傍に配設されている。この熱交換器7bは、冷凍サイクル5Bの動作時に凝縮器42から電子膨張弁43に向かって移動させられる冷媒の一部がキャピラリチューブ44を通過させられて気液混合状態で供給されることにより、供給された冷媒と、周囲の空気(筐体内の空気)との間で熱交換させて、周囲の空気を冷却すると共に、冷媒を温度上昇させて気化させる。具体的には、熱交換器7bは、一例として、冷媒配管の長手方向の一部を構成する銅パイプを葛折り状に折り曲げて形成されており、銅パイプ内を通過させられる冷媒と、ファン32によって銅パイプの外面に吹き付けられる空気との間で熱交換させるように構成されている。
【0036】
この温度調整装置1Bでは、圧送ポンプ4や圧縮機41を動作させているときに、これらに電力を供給している配電盤10の各機器が発熱して温度上昇する。したがって、コントローラ9は、配電盤10に設けられている温度センサからのセンサ信号に基づき、配電盤10の各機器が規定温度(一例として70℃)に達したと判別したときに、ファン32を制御して送風を開始させる。この際には、凝縮器42から電子膨張弁43に向かって移動している冷媒の一部がキャピラリチューブ44を通過して熱交換器7bに供給されると共に、筐体内の空気が熱交換器7bに向けて吹き付けられる。
【0037】
これにより、熱交換器7bを構成する銅パイプ内に気液混合状態で供給された冷媒と、ファン32によって吹き付けられた空気(熱交換器7bの周囲の空気)との間で熱交換が行われて、吹き付けられた空気が冷却されると共に、冷媒が温度上昇させられて気化する。また、冷却された低温の空気は、配電盤10のヒートシンクに向けて送風される。この際には、吹き付けられた空気によってヒートシンクが冷却されるため、配電盤10の各機器が徐々に温度低下させられる。なお、熱交換器7bにおいて周囲の空気と熱交換させられて気化した冷媒は、冷媒配管を通って圧縮機41に吸入される。また、温度調整装置1Bに加わっている熱負荷が小さいときには、電子膨張弁43を全閉状態に制御することで熱交換器6において水Wが不要に冷却される事態を回避することができる。
【0038】
一方、コントローラ9は、配電盤10に設けられている温度センサからのセンサ信号に基づき、配電盤10の各機器が十分に温度低下したと判別したとき(一例として、センサ信号に基づいて特定されるヒートシンクの温度が60℃になったとき)にファン32を停止させる。これにより、配電盤10を冷却する必要がない状態においてファン32による電力の消費が回避される。
【0039】
このように、この温度調整装置1Bによれば、熱交換器7bにおいて熱交換器6内の冷媒との間で熱交換させられて冷却された空気を配電盤10に供給して配電盤10を冷却することにより、前述した温度調整装置1Aと同様にして、配電盤10に搭載された各機器が過剰に温度上昇して誤作動や熱破壊を招く事態を回避することができると共に、過剰な温度上昇に伴う配電盤10の動作停止を回避することができる結果、目標温度範囲内の温度に調整した水Wの供給対象体に対する安定的な供給を継続することができる。
【0040】
また、この温度調整装置1Bによれば、ファン32が、配電盤10に設けられたヒートシンクに向けて空気を送風することにより、前述した温度調整装置1Aと同様にして、熱交換器7bにおいて冷却した空気に接して送風対象部位において結露が生じたとしても、ヒートシンクに結露水が付着した状態となるだけで、配電盤10の各機器に結露水が付着した状態となることがないため、結露水の付着に起因する各機器(配電盤10)の誤作動や故障の発生を回避することができる。
【0041】
なお、「温度調整装置」の構成は、上記の温度調整装置1A,1Bの構成に限定されるものではない。例えば、圧送ポンプ4によって貯水槽2から熱交換器6に向けて圧送している水Wの一部を熱交換器7aに導入して周囲の空気と熱交換させる構成の温度調整装置1Aを例に挙げて説明したが、このような構成に代えて(または、この構成に加えて)、熱交換器6において冷却されて供給対象体に向けて圧送される水Wの一部を熱交換器7aに導入したり、供給対象体に向けて圧送する水Wとは別個に貯水槽2内の水Wを熱交換器7aに導入したりすることで周囲の空気と熱交換させる構成を採用することもできる。このような構成を採用した場合においても、前述した温度調整装置1Aと同様の効果を奏することができる。
【0042】
また、熱交換器7a,7bを配電盤10の近傍に配設した構成を例に挙げて説明したが、配電盤10から離間した位置に熱交換器7a,7bを配設すると共に、熱交換器7a,7bにおいて冷却した空気を図示しないダクトを介して配電盤10に送風する構成を採用することもできる。このような構成を採用した場合においても、上記の温度調整装置1A,1Bと同様の効果を奏することができる。さらに、圧送ポンプ4に代えて(または、圧送ポンプ4に加えて)、「吸引ポンプ(図示せず)」を配管3bに配設して供給対象体から水Wを吸引して回収すると共に、この吸引によって、低温の水Wを供給対象体に供給する構成を採用することができる。このような構成を採用した場合においても、上記の温度調整装置1A,1Bと同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0043】
1A,1B 温度調整装置
2 貯水槽
3a〜3c 配管
4 圧送ポンプ
5A,5B 冷凍サイクル
6,7a,7b 熱交換器
8 温度センサ
9 コントローラ
10 配電盤
31 電磁弁
32,42a ファン
41 圧縮機
42 凝縮器
43 電子膨張弁
44 キャピラリチューブ
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクル、供給対象体に供給する水と前記冷凍サイクルにおける冷媒との間で熱交換させる第1の熱交換器、および少なくとも前記冷凍サイクルにおける圧縮機に電力を供給する配電盤を備えて、前記第1の熱交換器において目標温度範囲内の温度に調整した前記水を前記供給対象体に供給する温度調整装置であって、
前記水および前記冷媒の少なくとも一方と周囲の空気との間で熱交換させる第2の熱交換器と、当該第2の熱交換器において前記少なくとも一方との間で熱交換させられて冷却された前記空気を前記配電盤に供給して当該配電盤を冷却する送風機とを備えている温度調整装置。
【請求項2】
前記送風機は、前記配電盤に設けられたヒートシンクに向けて前記空気を送風可能に配設されている請求項1記載の温度調整装置。
【請求項3】
前記第2の熱交換器は、前記水と前記空気との間で熱交換可能に配設されている請求項1または2記載の温度調整装置。
【請求項4】
前記第2の熱交換器は、前記冷媒と前記空気との間で熱交換可能に配設されている請求項1または2記載の温度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−102010(P2013−102010A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244121(P2011−244121)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】