説明

温度調節用の化学的手段を含む眼瞼縁拭取り用品

【課題】周囲温度に対して拭取り用品の温度を調節するための化学的手段を含む眼瞼縁拭取り用品であって、マイボーム腺機能不全など、眼瞼または眼瞼縁の障害の治療に特に有用な眼瞼縁拭取り用品を提供する。
【解決手段】拭取り用品(wipe)1が円形構成のものであり、層状構造で形成されている。存在するこれらの層は、多孔質外層2と、清浄剤を含浸させた層3と、空気または水に曝すと熱を発生する材料を含んだ熱発生層4とを含む。この層は、任意選択で、熱発生層4から放出された熱を外層2に向ける働きをする熱反射層5で裏打ちされている。これらの層は、一般に布状の保持層6で支持されており、使用者が自分の手で持つ外層を形成する。拭取り用品1は、一般に縁部の周りが封止される。縁部周辺は、一緒に結合された多孔質層2と保持層6のみ含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は拭取り用品(wipe)に関する。より詳細には、本発明は眼瞼縁拭取り用品に関する。その他の態様では、本発明は、マイボーム腺機能不全によって引き起こされるような眼瞼縁の障害を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼瞼縁の端から端まで位置決めされているマイボーム腺は、脂質様分泌物(マイボーム腺脂質(meibum)として知られている)を眼の表面に供給する。瞬きが生ずるとき、上眼瞼は眼の表面を下向きに移動し、両眼瞼の縁と縁の間での脂質分泌を補助する。眼を開けることによって、上眼瞼は上向きに移動し、脂質の層を上向きに引っ張り、それによって眼の表面に被膜を形成する。この脂質層は涙液層の水性部分を被覆し、したがって眼の表面を被覆する。この脂質層の存在により、涙液層の蒸発が制限され、その結果、眼の表面が湿潤環境で維持されるようになる。マイボーム腺が機能しなくなることは、必要とされる脂質層が適正に形成されず、涙液層の蒸発が生じて、乾燥、刺激、およびひりひりした感覚が生ずることを意味する。
【0003】
マイボーム腺が機能しなくなる主な原因は、マイボーム腺が詰まることに起因する。いくつかの要因によって詰まりが生ずる可能性がある。例えばホルモンの変化、特にエストロゲンのレベルの変化が油の濃厚化をもたらす可能性があり、それが腺を詰まらせることになる。さらに、エストロゲンレベルの変化により、通常は眼に常在するブドウ球菌性の細菌が拡散する可能性があることが示唆されている。残念ながら、この拡散によって細菌がマイボーム腺に侵入し、マイボーム腺からの脂質分泌を低下させる可能性がある。
【0004】
さらにまたは代替として、この詰まりは、脂漏性眼瞼炎なの免疫学的要因または酒さ性ざそうなどの全身性疾患によって引き起こされる可能性がある。眼瞼炎は眼瞼の縁にも影響を与え、しばしばマイボーム腺機能不全と関係がある。眼瞼炎は、患者の年齢に伴って高い罹患率で生ずる。眼瞼炎が生じた場合、眼瞼縁の炎症がしばしば発赤と併せて認められる。さらに、鱗屑、痂皮、および/または辺縁潰瘍が観察される。
【0005】
機械的な不全も、マイボーム腺を機能不全にする可能性がある。マイボーム腺機能不全の病因に関するその他の情報は、非特許文献1に見出すことができる。
【0006】
マイボーム腺の機能不全の増大は年齢と共に認められ、さらに、コンタクトレンズの装着者でより多くなることがわかる。非特許文献2では、140人の被験者のうち半数がコンタクトレンズ装着者である被験者での予備調査において、コンタクトレンズ装着者ではマイボーム腺機能不全の罹患率が30%であり、コンタクトレンズを装着していない者では23%であることが認められた。
【0007】
非特許文献3では、231人の被験者について評価をしたが、そのうち81人はコンタクトレンズ装着者であった。マイボーム機能不全に対する罹患は、コンタクトレンズ装着者の43%に認められ、またコンタクトレンズを装着していない者の35%に認められた。
【0008】
年齢の影響は、非特許文献4で考察されている。ここでは10才から60才を超える年齢の298人の患者について試験をした。その結果によれば、機能不全に対する全罹患率が39%であることが報告されている。しかし、そのレベルは若年齢層で低く、年齢が高まるにつれて著しく増加していた。49才までの各10年間では、その増加が最大で40%であった。50〜59才では51%の罹患率が認められ、60才を超えた患者では、その罹患率が67%を超えて上昇したことが認められた。
【0009】
コンタクトレンズの装着および加齢の他に、マイボーム腺の異常な振舞いは、病気または化粧品の使用によって悪化する可能性がある。
【0010】
マイボーム腺機能不全の重症度は様々であり、機能不全の段階に依存する。初期段階では、分泌の増加が認められる。その結果、腺管の内側を覆う上皮細胞が過剰に発生し、かつ脂質の組成が変化する。このような細胞は腺から排出され、ふけ様鱗屑を生成する可能性がある。
【0011】
中期段階では、脂質組成の変化によって脂質の融点が上昇し、したがって眼瞼の温度ではペースト様の固体になって、マイボーム腺の一部または全体を閉塞させる。落屑した上皮のさらなる生成および蓄積は、マイボーム腺口の閉塞を増大させる。
【0012】
進行期の段階では、マイボーム腺の長期にわたる閉塞により、マイボーム腺が萎縮する可能性がある。腺が萎縮するようになると、機能不全は回復不能になるので、最終段階に達する前に治療を開始することが必要不可欠である。
【0013】
機能不全がゆっくり進化するという性質は、同じ眼瞼縁に沿った異なる腺に関し、マイボーム腺機能不全の段階がしばしば異なることを意味する。
【0014】
従来、閉塞した腺は、布、フェイスクロス、またはタオルで処理し、すなわちこれらを熱湯に浸し、一部冷却し、次いで閉じた眼の上に置くことによって治療している。この治療の目的は、凝固した脂質を融解し、腺の周りおよび睫毛の根元に集められた細片をばらばらにすることである。塩を布に付着させるべきであることがときどき提示される。
【0015】
この治療は、正しく行われた場合は効果的と考えられるが、ある不都合な点および欠点がある。主な欠点は、布を眼の上に置く前に正しい温度になったことを、使用者が予測しなければならないことである。布が熱すぎると、患者がやけどをする危険がある。逆に布を冷却し過ぎると、治療の効果がなくなる。さらに、これは家庭の外で容易に利用することのできない厄介で面倒な治療である。この手順は複雑で時間がかかるため、患者は、求められる利益が得られる前にしばしば諦めてしまう。この方法の別の欠点は、治療の開始時に布が正しい温度であっても急速に冷却され、したがって必要とされる温度が短時間しか維持されないことである。
【0016】
追加の欠点は、布を滅菌していない場合に細菌感染の危険があることである。これは、コンタクトレンズ装着者には特に深刻な問題である。
【0017】
治療の第2の段階は、眼瞼縁を清浄剤で処理することである。適切な清浄剤の例は、Ciba Visionにより「Lid−Care」という商標で販売されているもの、およびAlconの「Supranettes」である。
【0018】
熱い布と清浄剤の使用は、マイボーム腺機能不全の症状に対処するのにいくらか助けとなるが、上記欠点を克服しかつ忙しい生活様式の患者が容易に使用することのできる治療システムが、依然として求められている。
【0019】
その他の眼の問題は、高温拭取り用品または一部の環境では低温拭取り用品による治療から利益を得ることができる。このような問題には、枯草熱患者に生ずる眼の症状と、外傷によって引き起こされる腫張/浮腫が含まれる。冷却した拭取り用品を眼の領域に当てることは、頭痛の治療にも有益と考えられる。例えば腫脹の治療では、約8℃の冷水で約30分間冷却することが推奨される。しかし氷療法では、施用時間は著しく短くなると考えられる。従来、氷を当てる極端な治療では、炎症が生ずる可能性があるので、氷が確実に皮膚に直接当たらないようにするため、特別に注意を払う必要がある。
【0020】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4および特許文献5に記載されているシステムのように、包帯などを加熱するために様々な提案がなされているが、いずれも必要なレベルの温度制御および温度維持については示されていない。さらにこれらは、繊細で敏感な眼の領域での使用に適するように構成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第5662624号、
【特許文献2】国際公開WO98/29079号
【特許文献3】米国特許第6465709号
【特許文献4】国際公開WO01/03619号
【特許文献5】米国特許第6265631号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Gutgessel V J他(1982)Histopathology of Meibomian Gland Dysfunction、Ma.J.Opthal 94:383〜388
【非特許文献2】Ong BLおよびLark JR(1990)Meibomian Gland Dysfunction:Some Chemical,Biochemical and Physical Observations,Opthal:Physiol Opt 10:144〜148
【非特許文献3】Ong BL(1996)「Relation Between Contact Lens Wear and Meibomian Gland Dysfunction」Optom & Vis Sci73:208〜210
【非特許文献4】Hom MM他による「Prevalence of Meibomian Gland Dysfunction 1990 Optom & Vis Sci 67:710〜712」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、使用者が温度を制御することができかつ操作が容易な治療を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0024】
したがって本発明の第1の態様によれば、周囲温度に対して拭取り用品(wipe)の温度を調節するための化学的手段を含む眼瞼縁拭取り用品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】熱伝達システムを備えた円形拭取り用品を示す。
【図2】熱伝達システムを備えたチューブ状拭取り用品を示す。
【図3A】熱伝達システムを備えた代替のチューブ状拭取り用品を示す。
【図3B】図3aのチューブ状拭取り用品の変更例を示す。
【図4A】代替の熱伝達システムを備えた卵形拭取り用品を示す。
【図4B】卵形拭取り用品に関する代替の配置構成を示す。
【図5】折り畳んだ布様拭取り用品を示す。
【図6】比較例2の結果を表すグラフである。
【図7】実施例1の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図8】実施例2の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図9】実施例3の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図10】実施例4の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図11】実施例5の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図12】実施例6の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図13】実施例7の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図14】実施例8〜10の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図15】実施例11〜13の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図16】実施例14〜17の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図17】実施例18〜20の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図18】実施例21〜30の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図19】実施例31〜34の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図20】実施例35の拭取り用品の概略図である。
【図21】作動時の、実施例35の拭取り用品の別の概略図である。
【図22】実施例35で使用される水泡の写真である。
【図23】実施例35の試作品拭取り用品の一部の写真である。
【図24】実施例35の拭取り用品で実現された温度プロフィルのグラフである。
【図25】実施例36〜46の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図26】実施例47〜49の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図27】被覆していない冷却用試作品の写真である。
【図28】実施例50の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図29】実施例51の拭取り用品の概略図である。
【図30】作動時の、実施例51の拭取り用品の別の概略図である。
【図31】代替の冷却用試作品の写真である。
【図32】実施例51の配合物に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【図33】実施例52の、指の形をした構成に関して認められた温度変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
一般に、拭取り用品(wipe)の主な機能は、死細胞、組織片、マイボーム腺分泌物などの1つまたは複数を拭い去ることに留意されたい。本発明の一部の配置構成では、分泌物を拭取り用品の表面に吸着させることができるが、一般に本発明の拭取り用品は、吸収剤物品とは見なされない。
【0027】
「温度を調節する」とは、拭取り用品の温度を周囲温度から所定温度に変化させることを意味する。温度の変化は、拭取り用品の加熱または冷却でよい。
【0028】
調節される拭取り用品の温度は、この拭取り用品が最終的に置かれる使用状況に左右される。しかし、適切な化学的手段を選択することによって、所望の結果を実現するのに必要な温度を各拭取り用品で再現可能に実現することができ、それによって、布を正しい温度に調節することができないという従来技術に関連する問題が未然に取り除かれることが理解されよう。
【0029】
マイボーム腺機能不全の症状を治療する場合、必要とされる温度は、固まった脂質を融解するのに必要な温度である。マイボーム腺の分泌物は通常は脂質の混合物であるので、通常ははっきりとした融点がなく、存在する様々な脂質が広い温度範囲にわたって融点を有する可能性がある。Ong BLおよびLarke JRのMeibomian Glad Dysfunction:Some Clinical,Biochemical & Physical Observations(Opthal.Physiol.Opt 1990年4月10日:144〜148)では、正常な脂質の融点と異常な脂質の融点との間に著しい差が認められる32℃〜40℃の範囲が報告されている。
【0030】
その他の実験は、種々の温度範囲を提示している。例えばTiffany JM & Marsden RGのThe Influence of Composition On Physical Properties of Meibomian Secretion In The Preocular Tear Film in Health,Disease and Contact Lens Wear(Dry Eye Institute、Lubbock Tx 1986;597〜608)は、19.5℃〜32.9℃の範囲を報告している。
【0031】
これらの相違は、分泌物の構成が原因である。分泌物は、一般に、腺から流れかつ拡がって表在涙液膜層を形成するのに十分な流体である。
【0032】
本発明の拭取り用品では、温度調節が、例えばマイボーム腺機能不全の治療のために温度を上昇させる状況にある場合、約40℃〜約55℃の領域の温度が一般に望ましく、約45℃〜約52℃の領域の温度が特に好ましい。
【0033】
調節した温度は、好ましくは少なくとも約5分間維持可能であり、好ましくは約8分間、最も好ましくは約10分間以上維持可能である。
【0034】
本発明の拭取り用品の場合、温度調節が、例えば外傷による腫張/浮腫を治療するために温度を低下させるものである状況では、約0℃〜約25℃の範囲内の温度が望ましく、約5℃〜約10℃の範囲内の温度が特に好ましい。冷却は、約5分〜約30分間維持できることが望ましい。
【0035】
使用者を補助するため、拭取り用品には、必要な温度に達したことを使用者に確認させる指示薬を組み入れることができる。指示薬は、必要とされる温度に達したときに第1の色から第2の色に変化する温度感受性の変色指示薬でよい。ある配置構成では、拭取り用品がもはや所望の温度ではなくまたは所望の温度範囲を超えた場合に指示薬が第1の色に戻るよう、色の変化が可逆的になる。変色指示薬は、任意の適切な手段によって提供することができる。ある配置構成では、拭取り用品の少なくとも一部を温度反応性インクで被覆することができ、または温度反応性色素で処理することができる。したがって使用者は、使用前に特定の色が得られるまで待つように、また特定の色が消えたら使用を止めるように指示される。
【0036】
本発明の拭取り用品は、任意の適切の構成のものでよい。ある配置構成では、シート状の材料でよい。ある代替の配置構成では、拭取り用品の厚みが増したものでよい。この材料には、化学的温度調節手段を含浸させまたは化学的温度調節手段で被覆することができる。
【0037】
拭取り用品は、布性材料でよい。拭取り用品を布性材料から形成する場合、その布は、任意の適切な材料のものでよく、製織や空気集積などを含めた任意の技法によって形成することができる。したがってこの材料は、織布でも不織布でもよい。布は、天然繊維または合成繊維あるいは両方の混合物から作製することができる。材料は、拭取り用品の温度を調節するのに使用される化学的手段と適合性があるか否かに応じて選択することができる。さらに、または代替として、この材料は、柔軟さや眼の魅力などより審美的な問題に対応するよう選択することができる。布は、任意の適切な厚さのものでよい。適切な厚さには、約0.2mm〜約5mmのもの、より好ましくは約1〜約4mmのものが含まれる。しかし、いくつかの状況では、より厚い構成が望ましい。
【0038】
第2の代替材料では、拭取り用品を、布性材料で形成するのではなくスポンジ性材料から形成することができる。スポンジは、天然のまたは合成のスポンジでよい。スポンジ性材料の拭取り用品は、任意の適切なサイズのものでよく、布性材料の拭取り用品で認められるよりも厚くすることができる。
【0039】
第3の代替の配置構成では、拭取り用品を多層材料として提供することができる。各層の材料は、同じでも異なってもよい。例えば拭取り用品は、布性材料が片面または両面に取着されているスポンジ材料を含むことができる。布性材料がスポンジ性材料の対向する2面に付着している場合、各面で使用される材料は同じでも異なってもよい。多層拭取り用品は、任意の適切な厚さのものでよい。
【0040】
拭取り用品は、それぞれが異なったものでよい数層の布性材料を含むことができる。層状構造を使用する場合、温度調節手段は、これらの層の1つまたは複数の上にまたは中に位置付けることができる。
【0041】
拭取り用品を1種または複数の温度調節材料で被覆する場合、この材料は、拭取り用品の片面または両面に被覆することができる。しかし化学的手段は、被覆されていない自由な面が拭取り用品に残るように、片面だけに付着させることが好ましい。いくつかの配置構成では、被覆されていない面を眼に当てることができる。代替の配置構成では、被覆されていない面を、治療用物質や清浄化流体などの物質を付着させるために使用することができる。
【0042】
拭取り用品に温度調節材料を含浸させる場合、その材料は、拭取り用品全体に位置付けることができ、または例えば温度調節材料の粒子が使用中に眼に接触しないように設けることができる。温度調節材料は、例えば布性材料としてまたは多層構成の1つの層として設けられた不織パッド中に固定することができる。
【0043】
別の代替の配置構成では、または選択された温度調節手段によって必要とされる場合、拭取り用品は、温度調節構成要素を直接または別個の容器に入れて配置することができるポケットなどを含んだ配置構成でよい。代替の配置構成では、拭取り用品を形成する材料が温度調節手段を取り囲み、例えば、適切な容器に入れることのできる温度調節手段を包み込む。
【0044】
温度調節構成要素は、自己加熱器または自己冷却器、あるいは外部の熱源または冷却源を利用する機器でよい。温度調節手段で温度を変化させるのに外部の機器を使用する場合、それらは加熱炉やマイクロ波加熱炉、冷蔵器などの従来の熱源でよい。ある代替の配置構成では、外部機器は特定の目的で作られた機器でよい。ある特定の配置構成では、化学的温度調節手段は、エネルギー源に接続することが可能な拭取り用品内に位置付けされた導電性箔片によって作動させることができる。
【0045】
拭取り用品は単回使用が好ましいが、ある代替の、しかし好ましくない配置構成では、拭取り用品は再使用可能でよい。多数回使用が望ましい場合、拭取り用品は一般に、別個の容器内に位置付けることが好ましい温度調節手段を入れるためのポケットを含むように構成されることになる。再使用の際、温度調節手段容器は一般に取り除かれ、新しい容器に代えられる。拭取り用品をこのように再使用する場合は、洗浄可能な材料から生成することが好ましい。
【0046】
拭取り用品は、任意の適切な形状および/または構成のものでよい。適切な形状には、正方形、長方形、円形、および楕円形が含まれる。ある配置構成では、拭取り用品が指の形をしているものでよい。拭取り用品は任意の適切なサイズのものでよい。拭取り用品は、ほぼ片方の眼の領域のサイズになるよう寸法決めすることができ、または2つの眼で同時に使用することができるように寸法決めすることができる。後者の配置構成では、ある期間にわたって使用者が拭取り用品を装着することができるように、弾性を持つようなバンドを提供することができる。
【0047】
拭取り用品は、その動作を補助するプロフィルを有するように成形することができる。例えば拭取り用品は、その形状が正方形、長方形、円形、または楕円形であっても、閉じた眼の上に置いたときに眼の曲率に従いかつ眼瞼および眼瞼縁の全体にわたって温度が確実にもたらされるように、湾曲させることができる。
【0048】
ある配置構成では、使用者の眼の形に成型されそれによって眼瞼および眼瞼縁の全体にわたり温度が確実にもたらされるような軟質のポリマー材料などで、拭取り用品の少なくとも片面を被覆することができる。ある配置構成で、ポリマー材料は、室温では軟質でなくてよいが、拭取り用品の温度が上昇するにつれて柔らかくなる。
【0049】
ある好ましい配置構成では、拭取り用品は、使用者が1本または複数の指を挿入することのできるポケットを含むことができる。この配置構成は、例えばマイボーム腺機能不全の治療の一部として望ましいと考えられるどのような眼瞼縁の摩擦を行うときにも、使用者の助けとなる。最も好ましい配置構成では、拭取り用品を、指の形状に対応するように成形することができる。この配置構成の1つの利点は、使用者が、任意の摩擦動作中に拭取り用品を容易に制御できることである。
【0050】
ある代替の配置構成では、拭取り用品の構成を、例えば材料のウェブによって結合させた2本以上の指の形状に対応させることができる。ある配置構成では、指の形をしたそれぞれの部分を、1本の指の少なくとも一部を受容するように構成することができる。本発明の好ましい配置構成では、1つまたは複数の指の部分が加熱手段を含むと考えられ、1つまたは複数のその他の指の部分が、マッサージを行うのに使用されまたは例えば清浄剤を付着させるのに使用することができる非加熱生地でよい。
【0051】
ある配置構成で、拭取り用品は、どのように構成されようとも、眼の所定位置に残ってマッサージを行う前に眼を温めまたは冷やすことができるように、接着部分を含むことができる。ある配置構成では、接着部分が、拭取り用品の片面の少なくとも一部を含んでよい。ある代替の配置構成では、その片面全体が接着性でよい。この配置構成では、使用者は通常、マッサージ/拭取りが拭取り用品の非接着面で実施されるように、マッサージ/拭取りの前に拭取り用品を回転させる。接着部分を使用する場合、拭取り用品には一般に、その接着材料が保護されるよう所定位置に、シリコーンで処理されたポリマー片や紙片などの除去用ストリップが設けられる。敏感な眼に刺激を与えることなく所定位置に拭取り用品を保持することが可能であり、また使用者に不快感を与えることなく拭取り用品を容易に除去することが可能な、任意の適切な接着材料を使用することができる。接着材料の例には、アクリル系接着剤、親水コロイド接着剤やヒドロゲル接着剤などの液体吸収接着剤、天然ゴム、または合成ゴムが含まれる。
【0052】
眼瞼拭取り用品の温度調節は、任意の適切な手段によって実現することができる。しかし適切な手段の選択は、一般に、拭取り用品が必要とする温度、および敏感な眼瞼領域で使用される任意の化学的構成要素の適切性に左右されることになる。必要とされる期間にわたって材料が温度を維持する能力も、熱調節手段を選択するときに考慮される要素と考えられる。皮膚または眼瞼縁に直接付着させるのに適切ではない化学物質を使用する場合、熱調節手段を別個の容器に入れて拭取り用品内に配置する配置構成が一般に利用されるが、これらを皮膚から離すどのような手段も使用することができる。
【0053】
温度調節を成し遂げるよう選択された方法では、拭取り用品が短時間で、通常は約60秒未満で、所望の温度に到達できることが好ましい。約30〜約60秒程度の時間が特に好ましい。
【0054】
ある配置構成で、拭取り用品は、どのように構成されようとも、酸素、一般には空気中の酸素に曝されることによって温度を変化させることができる。その例には、空気に曝すことによって酸化しまたそのようにすることによって熱を発生する材料を含浸させまたはそのような材料で被覆した拭取り用品を使用することが含まれる。ある配置構成では、空気に曝すことにより酸化して熱を発生する材料を酸素透過性バッグに入れ、これを拭取り用品内に密封するか、または拭取り用品のポケットに入れることができる。
【0055】
適切な材料には、室温で酸素と反応したときに酸化物を形成するもの、例えば鉄、アルミニウム、マグネシウム、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、および酸化スズ(II)が含まれ、鉄粉が特に好ましい。この材料は一般に、表面で酸化を引き起こすことのできる広い表面積が与えられるように、粉末形態で提供される。使用される材料は、前述の2種以上の混合物でよい。適切な材料の別の例には、金属硫化物、多硫化物、または水硫化物であって、炭素質材料に担持された触媒と混合させたもの;塩および水と混合させた元素として存在する鉄などの粉末化固形分;鉄粉、水、セルロース、塩、およびバーミキュライト活性炭の混合物;鉄粉、水、塩、および活性炭;鉄またはその他の金属であって、アルカリ金属塩および触媒と混合させたもの;金属粉(通常は第1鉄)、金属塩化物、水、および水吸収剤などの酸化還元系;酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属酸化物と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物または硫化物が含まれる。列挙した混合物の成分の一部は、熱発生反応に直接は寄与しないが、その反応に変更を加えまたは制御するために存在することが理解されよう。例えば触媒、助剤、充填剤、および湿潤剤が存在してよい。
【0056】
温度調節手段が空気への曝露によって動作する場合、拭取り用品は一般に、気密容器に入れて使用者に提供される。気密容器の例には、プラスチック容器と箔、特にアルミニウム箔のパウチが含まれる。その容器を開けると拭取り用品が空気に曝され、温度調節が開始される。
【0057】
ある代替の配置構成では、拭取り用品は、どのように構成されようとも水への曝露によって温度を変化させることができる。この配置構成では、拭取り用品に含浸させ、拭取り用品を被覆し、または拭取り用品に密封された材料は、水が存在するときに熱を発生する化学物質を主成分とすることができる。発生した熱は、例えば水和、溶解、または酸化の熱でよい。水との接触により熱を発生する材料は、拭取り用品内に密封することができ水透過性のバッグに入れることができ、または拭取り用品のポケットに入れることができる。
【0058】
使用中、これらの拭取り用品は、熱を発生させるために水または水溶液で処理する必要があると考えられる。適切な水溶液には、生理食塩水、カリウム塩、カルシウム塩、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムなどが含まれる。その他の溶液は、コンタクトレンズケア措置で一般に使用される溶液も含め、拭取り用品を「ぬらす」のに使用してもよい。水またはその他の溶液は、拭取り用品を水または溶液に浸漬することによって付着させることができ、あるいは水/溶液を拭取り用品上に注ぎまたは噴霧することができる。
【0059】
水またはその他の適切な溶液に接触したときに温度を変化させるための適切な材料には、水酸化ナトリウム、コバルト、クロム、鉄、水酸化鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、酸化スズ(II)、チタン、および水酸化カルシウムが含まれる。これらの粉末化固形分は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。鉄などの粉末化固形分も適切である。これは単独で、または塩や活性炭などのその他の成分と共に、またはアルカリ金属塩および触媒と共に使用することができる。さらに、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、塩化セリウム、炭酸ナトリウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ホウ酸塩、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属クエン酸塩、またはアルカリ金属ホスホン酸塩などの、水和可能な有機または無機塩を使用することができる。同様に、無水塩化カルシウム、塩化セリウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウムと、酸化カルシウムや塩化アルミニウム、硝酸カルシウムなどの有機酸化物または塩;塩化ナトリウムと有機酸化物または塩;次亜塩素酸塩とセルロース系またはセルロース含有材料;無水塩化カルシウムと酸化カルシウム;無水塩化カルシウム、無水酢酸ナトリウム、および酸化カルシウム;ホウ素−酸素−ホウ素結合を有するホウ素化合物;無水グリコール;シリカゲル;活性アルミナ;および合成ゼオライトなどの混合物を使用することができる。無水ゼオライト、水和可能な有機または無機塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、および焼き石膏が特に好ましい。これらのそれぞれは、水と混合したときに発熱反応を起こすと考えられる。
【0060】
水と混合したときにそれぞれ発熱反応を起こす硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硫化アンモニウム、硝酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、塩化カリウム、および塩化スズ二水和物も適切である。
【0061】
温度を変化させるのにどの方法を使用するにしても、追加の材料を使用して反応を制御しまたは延ばすことができる。
【0062】
別の代替の配置構成では、拭取り用品は、温度調節が求められかつそのときに2つの構成成分を混合することができるようになるまで、別々に保持される2つの構成成分を含んでよい。
【0063】
この技術は、構成成分の一方を、拭取り用品内に密封することのできる壊れ易い容器に入れることによって提供することができ、または適切な場合には、拭取り用品は、構成成分の一方を含む容器または任意の適切な手段によって分離される両方の構成成分を含む容器を保持するためのポケットを含むことができる。ある代替の配置構成では、それぞれに1つの構成成分が入っている2つ以上のチャンバを含んだ単一の容器を使用することができる。必要な場合は、例えば2つの構成成分の間に反応を引き起こすことができるように、2つのチャンバを分離している壊れ易いシール材を破壊することによって、これらの構成成分を混合することができる。反応が発熱反応である場合、加熱が生ずる。同様に反応が吸熱反応である場合、冷却が実現される。
【0064】
容器は、任意の適切な材料で作製することができる。容器に含まれる構成成分が水または水溶液である場合、構成成分を製造する材料は水不透過性になる。任意の適切な水不透過性材料は、圧力が加えられたときに破裂するよう十分なレベルの脆性を有することを条件に、使用することができる。適切な材料には、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリ塩化ビニルなどのポリマーが含まれる。
【0065】
容器は、所望の時間にわたって温度変化を維持することができるよう、所定の制御された手法で、内容物を他の構成要素に送出することができるように、構成することができる。例えば容器は、この容器に圧力を加えたときに開放する封止オリフィスを有する柔軟な容器でよい。このオリフィスのサイズが、容器から構成成分が放出される期間を決定することになる。
【0066】
代替の配置構成では、構成成分の一方を拭取り用品表面に位置付けることができ、または拭取り用品の材料に含浸させることができ、他方の構成成分は、壊れ易くまたは壊れ易いシール材を有しかつ拭取り用品内または拭取り用品のポケット内に位置付けられた容器内に位置付けることができる。
【0067】
2成分系の一例では、第1の成分は、水と接触することにより熱を発生する化合物でよく、例えば酸化カルシウムや無水硫酸マグネシウム、コロイド粘土、または上述の水との接触により熱を発生することが確認された任意のその他の化合物が含まれ、第2の成分は、第1の成分とは切り離され、水、生理食塩水、またはその他の水溶液でよく、例えば界面活性剤の溶液が含まれる。第2の成分はさらに、抗炎症剤や抗菌剤などの活性剤を含むことができる。
【0068】
その他の2成分系には、マグネシウム/鉄合金および電解質(適切な電解質には生理食塩水が含まれる);塩化マグネシウムとエチレングリコール;チオ硫酸ナトリウムとエチレングリコール;ホウ素−酸素−ホウ素結合を有するホウ素化合物と、水やメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、低級アミン、低級アルカノールアミン、脂肪族酸化物、ポリオールなどのプロトン性材料が含まれる。
【0069】
2成分系の別の例では、第1の成分は、硝酸ナトリウムなど、水と接触することによって冷却される化合物でよく、第2の成分は、機器が作動するまで第1の成分とは切り離されており、生理食塩水、水、または界面活性剤などのその他の水溶液でよい。第2の成分はさらに、抗炎症剤や抗菌剤などの活性剤を含有することができる。
【0070】
2成分系の別の例は、一緒になったときに熱を発生する反応を起こす酸化剤と還元剤とを使用する、酸化還元系である。酸化剤の例には、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、および過硫酸カリウムが含まれる。還元剤の例には、1−フェニル−2−チオ−バルビツール酸などのチオ尿素化合物が含まれる。好ましい反応には、水素化ホウ素ナトリウム、カリウム、またはカルシウムなどの水素化ホウ素アルカリ金属またはアルカリ土類金属などの水素化物と、グリセルアルデヒドなどのアルデヒド、アセトンなとのケトン、過酸化物、またはスルホキシド;チオオキシピリミジンまたは2−チオ−4オキシピリミジンと過酸化水素または過ホウ酸ナトリウム;チオ尿素と過酸化水素;あるいはアルカリ金属塩または過マンガン酸カリウムやクロム酸カリウムなどのマンガンおよびクロム酸化物と、アルコールやグリセリンなどのポリオールとの反応が含まれる。
【0071】
2成分系のさらに別の例には、水性ナトリウム溶液などの水性塩溶液と、この水性塩溶液との接触によって結晶化を活性化しそれによって熱を発生する種結晶または金属作動剤(trigger)との間の反応が含まれる。その例には、水性酢酸ナトリウム溶液と酢酸ナトリウム種結晶が含まれる。結晶化が引き起こされる系を使用することの1つの利点とは、結果的に生ずる結晶が拭取り用品内に存在することにより、それが眼のマッサージ中に役立つ可能性があることである。硫酸マグネシウムと水などの2成分におけるいくつかの反応では、第1の発熱反応が生じ、その後にやはり熱を発生させる結晶化が起こり、それによって拭取り用品の加熱が引き延ばされる。
【0072】
拭取り用品の温度を調節するのにどの系を使用するにしても、温度の調節を引き起こす反応を制御するための材料が存在してよい。適切な材料には、ゲル化剤やポリマーなどが含まれる。
【0073】
明らかにされたいくつかの混合物は、熱調節反応には寄与しないがその反応を制御するよう存在する補助剤である材料を含むことが理解されよう。同様に、温度調節反応を引き延ばすための材料を存在させることができる。例えば熱調節反応が発熱反応である場合、特定の温度を超えると水を放出する水含有物質を存在させることができる。
【0074】
さらに、使用者に伝えられる温度を制御するために、物理的手段を拭取り用品内に含めることができる。例えば、1つまたは複数の絶縁層を含めることができる。同様に、1つまたは複数の拡散層を組み込むことができる。ある代替の配置構成では、カバー材を拭取り用品に付着させ、それによって温度制御を補助することができる。拭取り用品内の1つまたは複数の層の厚さは、温度制御を補助するよう選択することができる。
【0075】
したがって拭取り用品は、加熱または冷却を拭取り用品の片面で実施させるため、反射層および/または導電層を含むことができる。反射層および/または導電層は、任意の適切な材料で作製することができる。適切な材料の例には、アルミニウム箔などの金属箔が含まれる。非常に薄くかつ半透明にすることができるアモルファス金属酸化物層も適切である。
【0076】
例えば拡散層や絶縁層などと容器内に位置付けられた熱調節手段とを含む層状拭取り用品は、任意の適切厚さでよいが、一般に約5mmを超えることになる。
【0077】
熱を制御するどのような方法が選択されようと、特定の化学反応を選択することによって、使用者がいかなる決定もする必要なく、求めれらる温度を実現しかつ制御できることが理解されよう。さらに拭取り用品の構造は、温度が最適化されその使用者への適用が制御されるように、選択することができる。
【0078】
本発明の別の利点は、効果的な治療が実施されるよう十分な時間にわたり、必要とされる温度を維持することができるよう、化学的手段を選択できることである。
【0079】
さらに、反応は、同じ温度調節手段を含むそれぞれの拭取り用品で再現可能になるので、使用者は、眼の領域の敏感な皮膚が炎症を起こす危険性を伴わずに、それぞれの治療で効力が発揮される適切な温度(the appropriate temperature to achieve efficacy)を確信することができる。
【0080】
本発明を、特にマイボーム腺機能不全の治療に関して述べているが、拭取り用品の温度に応じて様々な用途があることが理解されよう。例えば冷却した拭取り用品は、例えば枯草熱の症状の治療に役立てることができる。拭取り用品は、コンタクトレンズ装着者およびドライアイに悩んでいる者の眼瞼のケアにも役立てることができ、眼の化粧品の除去にも役立てることができる。この後者の配置構成では、熱管理手段の他に拭取り用品は、アイメイクを除去するのに特に適切でありかつ/または脂質溶解特性を有する溶液を含むことができる。
【0081】
眼瞼用拭取り用品は、任意の適切な材料から形成された密封容器に入れて提供することができる。適切な材料の例には、プラスチックおよび金属箔が含まれる。拭取り用品は滅菌状態であることが好ましい。
【0082】
温度調節手段が、拭取り用品内の容器または拭取り用品のポケットに入っているのではなく拭取り用品内に固定化される場合、結合剤を使用することができる。適切な結合剤には、セルロースポリマー、ポリアクリルポリマー、ポリウレタンポリマー、ゼラチン、およびガムが含まれる。特定の例には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、ポリビニリデン、およびポリアクリル酸とポリアクリレートのコポリマーが含まれる。
【0083】
前述の考察は、拭取り用品内に位置付けられている温度調節手段に関するが、温度調節手段は、拭取り用品を入れる容器内に位置付けることができる。本明細書で詳述する配置構成のいずれかは、容器内に組み込むことができる。使用中、使用者は、拭取り用品が容器内にある間に化学的調節手段を作動させ、その拭取り用品を必要とされる温度に到達させ、次いで拭取り用品を容器から取り出して使用する。この配置構成では、拭取り用品は一般に布性材料から形成される。
【0084】
好ましい配置構成では、眼瞼用拭取り用品にはさらに、清浄剤、界面活性剤、または清浄剤および界面活性剤を含浸させる。界面活性剤は、清浄剤および/または可溶化剤として有効と考えられる。任意の適切な清浄剤または界面活性剤を使用することができ、その例には、PEG−80ラウリン酸ソルビタン、トリデセス硫酸ナトリウム、ジステアリン酸PEG−150、コカミドプロピルヒドロキシスルテイン、ラウレス−13カルボン酸ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリキサマー184、ラウレス硫酸アンモニウム、セテアレス20、25、コカミドプロピルベタイン、ラウレススルホコハク酸二ナトリウム、ラウリミノ二プロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、ステアリン酸グリコール、硬化ヒマシ油、ラウレス−23、ラウレスマグネシウム、硫酸オレス、ステアリン酸PEG−20、PEG−35ヒマシ油、PEG−40硬化ヒマシ油、PEG−60硬化ヒマシ油、PEG−7硬化ヒマシ油、PEG−75ラノリン、ポロキサマー、ラウレス硫酸ナトリウム、トリデセス硫酸ナトリウム、C12〜15パレス15硫酸ナトリウム、およびC14〜16オレフィンスルホン酸ナトリウムが含まれる。
【0085】
したがって好ましい実施形態における本発明は、清浄剤や界面活性剤、無痛化剤などの制御送達と共に、適切な温度の制御伝達をもたらす。
【0086】
拭取り用品は、帯電防止剤、保存剤、酸化防止剤、抗菌剤、キレート化剤、皮膚軟化剤、乳化剤、緩衝/中和剤、湿潤剤、増粘剤/粘度調節剤、および帯電防止/コンディショニング剤の1種または複数を含んでもよい。
【0087】
適切な保存剤の一例は、イミダゾリジニル尿素である。適切な酸化防止剤には酢酸トコフェロールおよび酢酸トコフェリルが含まれる。適切な抗菌剤にはクオタニウム−15が含まれる。EDTAは適切なキレート化剤の一例である。ナトリウムメチルパラベン、ナトリウムプロピルパラベン、およびクオタニウム8、14を存在させてもよい。
【0088】
皮膚軟化剤の例には、天然のまたは鉱物性の油またはエステルが含まれる。特定の例には、C12〜13モノアルキルリン酸カリウム ポリソルベート60、C12〜13モノアルキルリン酸カリウム、トウキンセンカ、扁桃油PEG−6エステル、カプリン/カプリルトリグリセリド、セテアリルアルコール、ココアバター、オレイン酸デシル、ジメチコン、ジメチコンコポリオール、ステアリン酸グリセリル、カプリル酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、ステアリン酸グリコール、オレイン酸グリコール、硬化ヒマシ油、硬化大豆油、酢酸ラネス−10、ラノリン、ラノリンアルコール、アセチル化ラノリンアルコール、レシチン、PEG−11硬化油、PEG−75ラノリン、ワセリン、オレイン酸PPG−26、PEG−10ブタンジオール、またはステアリルアルコールが含まれる。
【0089】
乳化剤の例には、PEG−6カプリル/カプリングリセリド、セテアレス20、25、セテアリルアルコール、ステアリン酸グリセレス−20、ステアリン酸グリセリル、カプリル酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、ステアリン酸グリコール、オレイン酸グリコール、硬化ヒマシ油、ラネス−10、酢酸ラネス10、ラノリン、ラノリンアルコール、ラウレス−23、レシチン、ステアリン酸PEG−20、ジステアリン酸PEG−150、PEG−40硬化ヒマシ油、PEG60硬化ヒマシ油、PEG7硬化ヒマシ油、PEG−11ヒマシ油、PEG−35ヒマシ油、PEG−15牛脂ポリアミン、PEG−75ラノリン、ポロキサマー、ポリソルベート20、80、ラウレス−13カルボン酸ナトリウム、トリデセス硫酸ナトリウム、およびステアリン酸が含まれる。
【0090】
緩衝/中和剤の例には、リン酸二カリウム、水酸化ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二ナトリウム、クエン酸、アミノメチルプロパンジオール、水酸化ナトリウム、重硫酸ジエタノールアミン、エタノールアミン、塩酸、乳酸、リン酸ナトリウム、およびトリエタノールアミンが含まれる。
【0091】
湿潤剤の例には、プロピレングリコール、グリセレス−20、グリセリン、ヒアルロン酸、イノシトール、乳酸、メチルグルセス−20、PEG−8、PEG−20ステアレート、ナトリウムPCA、およびソルビトールが含まれる。
【0092】
増粘剤/粘度調節剤の例は、カルボマー、カプリルアルコール、セテアリルアルコール、デキストラン、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、グアーガム硬化ヒマシ油、ラネス−10、硫酸マグネシウム、ジステアリン酸PEG−150、ステアリルアルコール、およびキサンタンガムなどである。
【0093】
帯電防止/コンディショニング剤の例には、ジメチコンコポリオール、ラウリミノ二プロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、ラウロアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、オレイン酸グリコール、ヒアルロン酸、イノシトール、ラノリン、ラノリンアルコール、レシチン、パンテノール、PEG15牛脂ポリアミン、ワセリン、ポリクオタニウム7、11、16、44、およびナトリウムPCAが含まれる。
【0094】
拭取り用品には、さらにまたは代わりに、Ciba Visionから入手可能な「Lid−Care」、Novartis Opthalmicsから入手可能な「Eye−Scrub」、Igenicsから入手可能な「Lid Scrub」、「Igiene Daily Eyelid Cleanser」、Laboratoire Theaから入手可能な「Blephasol」、およびAlconから入手可能な「Supranettes」という商品名で販売されているものも含めた市販されている清浄剤の1種または複数を含浸させることができる。
【0095】
さらにまたは代わりに、眼瞼用拭取り用品には、抗炎症剤および抗菌剤および/またはうっ血除去薬などの活性剤を含浸させることができる。活性剤を眼瞼に付着させるときに、加熱を、任意選択で清浄化とも組み合わせて使用することは、活性剤の効力を改善すると考えられる。したがってこの実施形態において、本発明は、適切な温度の制御伝達を、適切な量の活性剤の制御送達と共に、さらに任意選択で、必要とされる量の清浄化溶液の制御送達と共にもたらすことが理解されよう。
【0096】
ある配置構成で、清浄剤、医薬品組成物、および活性剤などの1種または複数は、加熱するとポリマー母材が活性剤を還元するように軟化する熱応答性ポリマーから形成された拭取り用品の外面の層内に、位置付けることができる。
【0097】
ある好ましい配置構成では、温度調節手段が冷却を行い、抗炎症剤や抗菌剤、および/またはうっ血除去薬などの1種または複数の活性剤が存在する。そのような拭取り用品は、例えば枯草熱の症状を治療するのに特に有用である。
【0098】
拭取り用品は、適切な温度の制御伝達を医薬品の制御送達と併せて可能にする系が実現されるような薬物送達系を含むことができ、またはそのような系と組み合わせることができる。
【0099】
熱調節手段および存在する(present)その他の構成要素の選択の際には、構成要素と反応生成物とが敏感な眼の領域に損傷を確実に与えにくくなるように、注意が払われることが理解されよう。眼の領域との直接的な接触が勧められない場合に選択を行う際、材料は一般に、拭取り用品の容器内に密封される。
【0100】
拭取り用品が多層状である場合、または拭取り用品が、化学的熱調節手段の構成要素の1つまたは複数のための容器を含む場合、拭取り用品の縁部は、直接または中間封止手段を介して封止することができる。任意の適切な封止手段を使用することができる。適切な手段には、ホットメルトおよび感圧接着剤を含めた接着剤、両面接着テープ、ヒートシール、または超音波ボンディングの使用が含まれる。一般に封止手段は、拭取り用品の使用中に不快になる可能性のある硬質の残渣が残らないように選択される。
【0101】
本発明は、眼瞼または眼瞼縁の障害を治療する際に、上記第1の態様の拭取り用品を使用することも提供する。本発明のこの第2の態様の好ましい配置構成では、マイボーム腺障害の治療の際に上記第1の態様の拭取り用品を使用することが提供される。本発明のこの第2の態様の代替の配置構成では、眼瞼の炎症の治療の際に上記第1の態様の拭取り用品を使用することが提供される。この配置構成で、拭取り用品の温度調節は冷却であることが好ましい。
【0102】
本発明の別の態様では、その応用は上記第1の態様の拭取り用品をある温度に到達させ、次いでその拭取り用品で眼瞼縁をマッサージすることを含む、マイボーム腺機能不全および/または眼瞼炎を治療する方法も提供する。マッサージを開始する前に、清浄剤などを拭取り用品に付着させることができる。
【0103】
使用中、拭取り用品で眼瞼縁のマッサージを始める前に、使用者は短時間、眼に対して拭取り用品をそのままにしておくことが望ましいと考えられる。必要とされるその時間は、約5分から約10分程度でよい。
【0104】
次に本発明の拭取り用品について、添付図面を参照しながら例を上げて記述する。
【0105】
図1に示す本発明の一実施形態では、拭取り用品(wipe)1が円形構成のものであり、層状構造で形成されている。存在するこれらの層は、多孔質外層2と、清浄剤を含浸させた層3と、空気または水に曝すと熱を発生する材料を含んだ熱発生層4とを含む。この層は、任意選択で、熱発生層4から放出された熱を外層2に向ける働きをする熱反射層5で裏打ちされている。これらの層は、一般に布状の保持層6で支持されており、使用者が自分の手で持つ外層を形成する。拭取り用品1は、一般に縁部の周りが封止される。縁部周辺は、一緒に結合された多孔質層2と保持層6のみ含むことができる。
【0106】
図2に示すように、拭取り用品1Aは、使用中に必要とされるマッサージステップを促進させるように使用者が指を挿入することのできるチューブとして提供することができる。ここで拭取り用品1Aは、図1の円形拭取り用品と同様の手法で形成される。拭取り用品は一般に、多孔質外層2と、清浄剤を含浸させた層3と、熱発生層4と、熱反射層5と、保持層6とを含む長方形の材料として形成される。この長方形をチューブに形成すると、保持層6がチューブの内壁になる。この配置構成では、内壁は布状でもスポンジ状でもよい。
【0107】
チューブ状拭取り用品の変形例は、使用者の指が拭取り用品から突出しないように、閉じた端部を有する拭取り用品である。拭取り用品1Bは、図3Bに示すように、図2のチューブ状配置構成などの場合と同じ構成を拭取り用品の側面全体にわたり有することができ、または図3Aに示す代替の配置構成では、拭取り用品は、使用中に眼に対して配置されることになる側面A’を有することができる。使用者は通常、この側面を自分の指の内側に位置付けることになる。図3Bの拭取り用品は、指の外側に合わせた平坦な保持層B’も有する。この配置構成で、指拭取り用品の側面A’は、図1の円形拭取り用品と同様の構造を有する。
【0108】
代替の配置構成を図4Aに示す。この配置構成で、拭取り用品1Cは、眼の形状全体を反映するよう卵形の構成を有する。卵形の中心には、押圧したときに化学反応を活性化させる圧点7がある。この拭取り用品で、2成分手段は、温度調節を引き起こすために使用する。拭取り用品は、Aにおいて種結晶を含有しまたBにおいて金属作動剤を含有する壊れ易い内部パウチ8を含有する。使用者が圧点7で拭取り用品を押し下げるとパウチが壊れ、それによって種結晶/金属作動剤が、最初に拭取り用品を浸漬する水性塩溶液と接触するようになる。図4の拭取り用品はさらに、任意選択の自己接着層9を含む。図4Bに示すように、圧点7は、拭取り用品の片側に位置付けることができる。
【0109】
図5において、拭取り用品1Dはこの場合、水溶液で処理すると熱を発生する物質を含浸させた、折り畳んだ布様拭取り用品である。清浄剤も拭取り用品に含浸させる。折畳み拭取り用品は、湿分不透過性のパウチ10に入れて提供される。
【実施例】
【0110】
次に本発明について、以下の実施例を参照しながら記述する。
比較例1−マイボーム腺機能不全の治療で特に使用される高温拭取り用品の目標温度の決定。
【0111】
布を熱湯に浸漬し、次いで取り出した。布の温度を測定し、その布に対する皮膚の許容度を評価した。皮膚の許容度は、布を手首の内側に置くことによって評価した。到達した温度は、皮膚の許容度からみて受け入れられるレベルよりも非常に高く、したがってそのような布を、例えばマイボーム腺機能不全の治療で温湿布として使用した場合、患者に損傷を与える危険性があることがわかった。許容レベルは53℃の範囲内にあることがわかった。43℃以下の温度は、被験者によれば、あらゆる有益な効果を感じるのには不十分な熱さと言える。結果を表1にまとめる。
【0112】
【表1】

【0113】
比較例2
加熱した生理食塩液を含浸させた布を使用して、比較例1を繰り返した。マイボーム腺機能不全の従来の治療に従って、患者が用いる通常の手順を模倣するため、閉じた眼に湿布を当てた。10人の被験者の平均の結果を、以下の表2と図6のグラフにまとめる。
【0114】
【表2】

【0115】
このように、54℃を超える温度は不快であることが認められた。これはしばしば、被験者には熱すぎると表現された。最適な温度は51℃の領域にあることがわかった。したがって約45℃〜約52℃の温度範囲が好ましい。効力を最大限にするには、その温度を10分間持続させるべきである。
【0116】
化学的温度調節手段用の様々な配合物について調査した。
【0117】
実施例1−空気作動式システム
鉄粉59%、水21%、バーミキュライト10.5%、活性炭4%、および塩5%を含む粉体を入れた密封パウチを準備した。このパウチを開き、温度変化を記録した。これらを図7でグラフとして表す。
【0118】
実施例2−水作動式システムA
無水炭酸ナトリウムが入っている密封パウチを準備した。このパウチに水を添加し、温度変化を記録した。これらを図8にグラフとして表す。
【0119】
実施例3−水作動式システムB
無水硫酸マグネシウムが入っている密封パウチを準備した。このパウチに水を添加し、温度変化を記録した。これらを図9にグラフとして表す。
【0120】
実施例4−水作動式システムC
無水硫酸マグネシウム(25%w/w)およびプロピレングリコール(75%w/w)またはPEG400(75%w/w)が入っている密封パウチを準備した。このパウチに水を添加し、温度変化を記録した。これらを図10にグラフとして表す。
【0121】
実施例5−水作動式システムD
無水アルミノケイ酸カリウムナトリウム3Å(35%w/w)およびPEG200(55%w/w)およびグリセリン(10%w/w)が入っている密封パウチを準備した。このパウチに水を添加し、温度変化を記録した。これらを図11にグラフとして表す。
【0122】
実施例6−2成分系A
2成分系を調製した。第1の成分は還元剤チオ尿素を含み、第2の成分は酸化剤である過酸化水素水(約8%)を含んでいた。2成分を混合し、温度変化を測定した。これらを図12にグラフとして表す。
【0123】
実施例7−過飽和塩溶液を利用する2成分系B
無水酢酸ナトリウム10gを水7.5gと混合した。2〜3個の塩の種結晶を添加した後、温度変化を測定したが、これを図13に示す。
【0124】
実施例8〜30−温度プロフィルの最適化
無機塩/水系に関する温度プロフィルを最適化するため、表3に詳述するような様々な組成について調査した。測定した温度変化を図14〜19にグラフとして表す。
【0125】
【表3】

【0126】
実施例23および30の配合物では、その他の配合物と比べた場合に、発生した熱が活性化後7分から10分の間で、より良好に持続し、したがって利点をもたらした。
【0127】
実施例31〜34
2.5g〜4gのMgSOにより塩混合系を最適化するために、別の試験を実施した。詳細を表4に示し、温度プロフィルを図19にグラフとして表す。
【0128】
【表4】

【0129】
実施例33の配合物は、7分後に45℃のすぐ下の温度を維持し、したがってこれを、試作品拭取り用品の製造の際に実施例35で使用するよう選択した。
【0130】
実施例35−試作品の加熱用拭取り用品
圧力により作動する水作動式システムをベースにして、試作品を製造した。生成した熱は、無機塩混合物と水とが発熱反応した結果であった。水は、図22に示すように、ポリエチレンの壊れ易いプラスチック容器内に水泡として供給した。それぞれが水5mlを含有する2個の水泡を使用した。水泡と、3.5g MgSO/10.5g PEG400の塩混合物とを、密封可能な耐水性パウチに挿入して、図20の熱発生区画11を形成した。熱発生区画11には、その片面12に、ガーゼで覆った1枚のアルミニウム箔を被覆し、もう一方の面13には、綿パッドを被覆した。使用中、熱治療のため閉じた眼瞼に当てるのは、面12である。熱治療の後、面13に清浄化溶液を含浸させ、眼瞼縁を拭き取るのに使用することができる。面13上のパッドには、代替の配置構成で、清浄化溶液を予備含浸させることができる。試作品拭取り用品の写真を図23に示す。製造中、拭取り用品は一般に、使用者が使用するのに最適なサイズおよび形状のものになる。
【0131】
拭取り用品の動作を図21に概略的に示す。拭取り用品の外面に圧力を軽くかけることによって、水泡14が破裂し、それによって水が無機塩混合物15と接触するようになり、その結果、熱が放出される。温度プロフィルを図24に概略的に示す。上述のように、45〜52℃の温度が望ましい。拭取り用品は、活性化から1分以内で必要とされる温度に到達し、その温度を10分間維持した。結晶化が生じた。
【0132】
実施例36〜46−冷却用の水作動式システム
表5に詳述するように様々な組成物を調製し、水を添加したときの温度プロフィルを測定した。結果を図25にグラフとして示す。
【0133】
【表5】

【0134】
実施例50−試作品の冷却用拭取り用品
圧力により活性化された(activated) 水作動式システムをベースにして、試作品を製造した。生成された冷たさは、硝酸アンモニウムと水とが吸熱反応した結果であった。水は、図22に示すように、ポリエチレンの壊れ易いプラスチック容器内に水泡として供給した。水10mlを含有する1個の水泡を使用した。水泡と、10g〜15g NHNO/0.75g ETD2020の塩混合物(表6に詳述する)とを、密封可能な耐水性パウチに挿入して、図29の冷気発生区画21を形成した。この実施例では、冷気発生区画21を被覆しないままにした。水と硝酸アンモニウムとを混合して冷気を発生させるように、水泡に圧力を加えた。温度プロフィルを図28にグラフとして示す。
【0135】
【表6】

【0136】
実施例51−試作品の冷却用拭取り用品2
拭取り用品の片面22を被覆しないままにし、もう一方の面23を綿パッドで被覆したこと以外は、実施例50を繰り返した。使用の際、冷却治療のため閉じた眼瞼に当てるのは、面22である。冷却治療の後、面23に、任意の適用可能な処理溶液を含浸させ、眼瞼縁を拭き取るのに使用することができる。面23のパッドには、清浄化溶液を予備含浸させることができる。試作品拭取り用品の写真を図31に示す。製造中、拭取り用品は一般に、使用者が使用するのに最適なサイズおよび形状になる。
【0137】
拭取り用品の動作を図30に概略的に示す。拭取り用品の外面に圧力を軽くかけることにより、水泡24が破裂し、それによって水が無機塩混合物25と接触するようになり、その結果、冷気が放出される。温度プロフィルを図32にグラフとして示す。
【0138】
実施例52−試作品の指形をした加熱用拭取り用品
密封可能な耐水性パウチ内の水泡および塩混合物を手袋の親指に配置すること以外は、実施例35を繰り返した。得られた温度プロフィルを図33にグラフとして示す。
【0139】
実施例53−代替の試作品
ポリプロピレンの外層と、アモルファス中間金属酸化物層と、ポリエチレンの内層との3層を含む2枚のプラスチックシートの3辺に沿って熱シールを行い、パウチを形成する。次いでこのパウチの中央を、破裂可能なシール材でさらにシールして、2つのチャンバを生成する。塩/PEG混合物を一方のチャンバに入れ、他方に水を入れる。次いでパウチの口を熱シールする。パウチの一方の外面をポリスチレン絶縁層で被覆し、使用中に拭取り用品が眼瞼縁と接触するもう一方の面に、ガーゼを付着させる。
【符号の説明】
【0140】
1,1A,1B,1C,1D 拭取り用品
2 多孔質外層
3 清浄剤を含浸させた層
4 熱発生層
5 熱反射層
6 保持層
7 圧点
8 内部パウチ
9 自己接着層
10 パウチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲温度に対して拭取り用品(wipe)の温度を調節するための化学的手段を含む、眼瞼縁拭取り用品。
【請求項2】
前記拭取り用品を周囲温度に対して加熱する、請求項1に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項3】
前記温度調節が約40℃から約55℃までの温度になされる、請求項2に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項4】
前記温度調節が約45℃から約52℃までの温度になされる、請求項2に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項5】
前記拭取り用品を周囲温度に対して冷却する、請求項1に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項6】
前記温度調節が約5℃から約10℃までの温度になされる、請求項5に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項7】
前記温度を前記調節する温度に5分間を超えて維持する、請求項1から6のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項8】
前記温度を前記調節する温度に10分以上の間維持する、請求項7に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項9】
前記拭取り用品が布を含み、前記拭取り用品の温度を調節するための化学的手段を前記布上に被覆するか、または前記布中に含浸させる、請求項1から8のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項10】
前記拭取り用品がスポンジを含み、前記拭取り用品の温度を調節するための化学的手段を前記スポンジ上に被覆するか、または前記布中に含浸させる、請求項1から8のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項11】
前記拭取り用品が層状構造を有し、前記化学的手段が1層または複数の層に組み込まれる、請求項1から8のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項12】
前記拭取り用品が、前記温度を調節するための化学的手段が配置されるポケットを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項13】
前記化学的手段を容器中のポケットに配置する、請求項12に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項14】
外部熱源によって、前記化学的手段が温度を調節することができる、請求項1から13のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項15】
前記拭取り用品が、使用中に1本または複数本の指を挿入することのできるポケットを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項16】
前記拭取り用品が指の形をしている、請求項1から15のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項17】
前記拭取り用品が眼の形をしている、請求項1から15のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項18】
前記拭取り用品が、2個以上の結合し合った指形を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項19】
前記拭取り用品が、眼の輪郭に対応するように湾曲している、請求項1から18のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項20】
前記拭取り用品を、眼の表面に密着する(moulds to)ポリマー材料で被覆する、請求項1から19のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項21】
前記拭取り用品を、使用中に眼の表面に密着する(moulds to)ように、温度を上げると軟化するポリマー材料で被覆する、請求項1から19のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項22】
前記化学的手段が空気に曝されると温度調節を行う、請求項1から21のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項23】
前記化学的手段が水または水溶液に曝されると温度調節を行う、請求項1から21のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項24】
前記化学的手段が2成分間の反応時に温度調節を行う、請求項1から21のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項25】
前記2成分がMgSOおよび水である、請求項24に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項26】
前記2成分がNHNOおよび水である、請求項24に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項27】
1種または複数の活性剤をさらに含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項28】
薬物送達系をさらに含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項29】
清浄剤と界面活性剤の一方または両方をさらに含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項30】
帯電防止剤、保存剤、酸化防止剤、抗菌剤、キレート化剤、皮膚軟化剤、乳化剤、緩衝/中和剤、湿潤剤、増粘剤/粘度調節剤、および帯電防止/コンディショニング剤の1つまたは複数をさらに含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項31】
前記拭取り用品の表面に被覆した熱応答性ポリマー層内に、任意の追加成分を配置した、請求項27から30のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項32】
前記拭取り用品が密封容器に入れて提供される、請求項1から31のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項33】
前記拭取り用品が滅菌されている、請求項32に記載の眼瞼縁拭取り用品。
【請求項34】
眼瞼または眼瞼縁の障害の治療における、請求項1から33のいずれか一項に記載の拭取り用品の使用。
【請求項35】
前記眼瞼縁の障害がマイボーム腺機能不全である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
眼瞼の炎症の治療における、請求項1から33のいずれか一項に記載の拭取り用品の使用。
【請求項37】
請求項1から33のいずれか一項に記載の眼瞼縁拭取り用品を所望の温度に到達させ、その後、前記拭取り用品で眼瞼縁をマッサージすることを含む、眼瞼の障害を治療する方法。
【請求項38】
前記眼瞼の障害がマイボーム腺機能不全である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記拭取り用品が、マッサージを開始する前のある期間、所定位置に保持される、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記期間が約5分から約10分である、請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−139516(P2012−139516A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−51609(P2012−51609)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【分割の表示】特願2004−549348(P2004−549348)の分割
【原出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【出願人】(505163899)
【氏名又は名称原語表記】GUILLON, Michel
【Fターム(参考)】