説明

温度調節装置およびそれを用いたタンパク質結晶化装置

熱伝導体表面に温度勾配を形成することにより、その表面に配置された複数の試料を同時に異なる温度に調節することができ、且つ、熱伝導体表面の温度プロファイルを所望に応じて調整可能な温度調節装置を提供する。本発明の温度調節装置は、加熱冷却素子と、加熱冷却素子と熱的に接触させて配置された熱伝導体とを含み、この熱伝導体の温度に応じて、これと熱的に接触させて配置された試料の温度を調節するものである。この装置において、加熱冷却素子は、2個以上設けられ、これらが互いに異なる温度に設定されることにより、熱伝導体の前記試料と熱的に接触する面に温度勾配が形成される。熱伝導体は、比重をd[kg/m]、比熱をc[J/(kg・K)]、熱伝導率をK[W/(m・K)]としたとき、dc/Kで表される値が、互いに異なる2種以上の材料で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の温度調節に用いられる温度調節装置に関し、更に詳しくは、複数の試料を同時に異なる温度に調節し得る温度調節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学分野においては、化学物質の合成や、その特性評価など、種々の実験操作が実施されている。このような実験操作の一例として、タンパク質の結晶化操作が挙げられる。このタンパク質の結晶化は、主に、X線結晶構造解析によってタンパク質の3次元立体構造を解析するために実施される。タンパク質の立体構造情報は、その特異的性質および機能を理解する上で不可欠な情報である。例えば、基礎化学的分野においては、酵素やホルモンなどによる生化学系での機能発現のメカニズムを理解する基礎となり、また、産業的分野においては、タンパク質の機能解析に基づいた新薬開発などに活用される。
【0003】
このような各種の実験操作においては、温度が最も重要な条件の一つとなる。従って、最適な温度条件を見出すために、種々の温度条件で実験操作を繰り返すこと、すなわち温度スクリーニングが行なわれる。特に、タンパク質の結晶化は、温度などの外部条件に非常に敏感であり、その条件設定が困難な場合が多いため、温度スクリーニングは非常に重要な操作である。実験系の温度調節には、通常、恒温槽が使用される。しかしながら、従来の恒温槽では、槽内が均一な温度に維持されているため、1回の実験操作で、ある一点の温度条件における実験データしか取得できなかった。そのため、種々の温度条件での実験データを取得するためには、ある温度条件での実験が終了した後、恒温槽の温度を別の温度に再設定し、設定温度を安定維持するまで待機した後、次の実験を行うという操作を繰り返す必要があり、多くの時間と労力を要するという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するものとして、同時に複数の温度条件下での測定を可能とする、温度勾配付き恒温測定器が提案されている(特許文献1)。この温度勾配付き恒温測定器は、黄銅で構成された熱伝導体の一端に発熱機構を設け、前記熱伝導体の他端に放熱機構を設けた構成を有している。また、熱伝導体表面の各点の温度を測定するため、複数の温度センサが設けられている。この測定器においては、発熱機構で発生した熱が、熱伝導体を伝わり、放熱機構に至って放熱される。その結果、熱伝導体表面に、発熱機構側から放熱機構側に向かう温度勾配が形成され、熱伝導体表面の温度がその位置によって異なる状態となる。熱伝導体表面の各位置に試料を載置することにより、複数の試料を、同時に、異なる温度に調節することが可能となる。
【特許文献1】特開平7−318522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記温度勾配付き恒温測定器においては、熱伝導体表面の温度プロファイルを、希望に応じて調整することは非常に困難という問題があった。特に、熱伝導体において、室温付近または室温以下で、比較的小さい温度差(例えば、数℃〜二十数℃)を発生させる場合、発熱部と吸熱部との間で生じる放熱または吸熱が、熱伝導体の温度プロファイルに与える影響が大きくなるため、所望の温度プロファイルを実現することは非常に困難であった。そのため、例えば、多穴型プレートを用いた実験など、試料の配列が固定されているような場合、各試料の温度を必ずしも所望の温度に設定することができない場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、熱伝導体表面に温度勾配を形成することにより、その表面に配置された複数の試料を同時に容易に異なる温度に調節することができ、且つ、熱伝導体表面の温度プロファイルを所望に応じて調整可能な温度調節装置、およびそれを用いたタンパク質結晶化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の温度調節装置は、加熱冷却素子と、前記加熱冷却素子と熱的に接触させて配置された熱伝導体とを含み、前記熱伝導体の温度に応じて、これと熱的に接触させて配置された試料の温度を調節する温度調節装置であって、前記加熱冷却素子は、2個以上設けられ、これらの加熱冷却素子が互いに異なる温度に設定されることにより、前記熱伝導体の前記試料と熱的に接触する面に温度勾配が形成されるものであり、前記熱伝導体は、比重をd[kg/m]、比熱をc[J/(kg・K)]、熱伝導率をK[W/(m・K)]としたとき、dc/Kで表される値が、互いに異なる2種以上の材料で構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の温度調節装置においては、前記熱伝導体を、前記dc/K値が互いに異なる2種以上の材料で構成することに代えて、前記熱伝導体を、1種以上の材料で構成し、且つ、前記試料と熱的に接触する面とは反対側の面に複数の凹部を形成し、この凹部内に空気を存在させてもよい。
【0009】
また、本発明のタンパク質結晶化装置は、タンパク質を含む試料溶液から、前記タンパク質の結晶を析出させる装置であって、前記試料溶液の温度を調節するために、本発明の温度調節装置を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の温度調節装置によれば、前述したように、複数の加熱冷却素子が異なる温度に設定されることにより、これと熱的に接触した熱伝導体の試料配置面に温度勾配が形成される。すなわち、熱伝導体は、その試料配置面において、位置によって温度が異なる状態に維持される。そのため、複数の試料を、熱伝導体上に位置を異ならせて載置することによって、これらの試料を、同時に異なる温度に調節することが可能となる。
【0011】
更に、本発明の温度調節装置においては、熱伝導体がdc/K値の互いに異なる2種以上の材料で構成されているか、または、熱伝導体の試料配置面とは反対側の面に複数の凹部(その内部には空気が存在する。)が形成されている。そのため、熱伝導体を構成する材料の組合せ、または、凹部の形状等を選択することによって、熱伝導体の試料配置面における温度プロファイルを、装置の使用目的等に応じて容易に調整することが可能である。
【0012】
また、本発明のタンパク質結晶化装置は、上記のような本発明の温度調節装置を使用しているため、複数の温度条件での結晶化を同時に実施することができるため、結晶化温度のスクリーニングを効率良く実施できるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の温度調節装置の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、上記温度調節装置を構成する熱伝導体の一例を示す断面図である。
【図3】図3は、上記温度調節装置を構成する熱伝導体の別の一例を示す断面図である。
【図4】図4は、上記温度調節装置を構成する熱伝導体の更に別の一例を示す断面図である。
【図5】図5は、上記温度調節装置を構成する熱伝導体の更に別の一例を示す断面図である。
【図6】図6は、上記温度調節装置を構成する熱伝導体の更に別の一例を示す断面図である。
【図7】図7は、上記温度調節装置を構成する熱伝導体の更に別の一例を示す断面図である。
【図8】図8は、上記温度調節装置を構成する熱伝導体の更に別の一例を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明のタンパク質結晶化装置の一例を示す断面図である。
【図10】図10は、本発明のタンパク質結晶化装置の別の一例を示す断面図である。Aは、前記断面図であり、Bは、Aの断面図と切断方向が互いに直交するような断面図である。
【図11】図11は、実施例1で用いた熱伝導体の構成を示す断面図である。Aは、実施例1−1で用いた熱伝導体の構成を示す断面図であり、Bは、実施例1−2で用いた熱伝導体の構成を示す断面図であり、Cは、比較例で用いた熱伝導体の構成を示す断面図である。
【図12】図12は、実施例1で作製された温度調節装置における、熱伝導体表面の位置と温度勾配との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、実施例1で作製された温度調節装置を用いた温度調節において、試料の配置位置と、調節された試料温度との関係を示すグラフである。
【図14】図14は、実施例2において形成されたタンパク質結晶の光学顕微鏡写真である。
【図15】図15は、実施例3で作製された温度調節装置における、熱伝導体表面の位置と温度との関係を示すグラフである。Aは、2個のペルチェ素子の設定温度をそれぞれ5℃および15℃に設定した場合の前記グラフであり、Bは、2個のペルチェ素子の設定温度をそれぞれ5℃および50℃に設定した場合の前記グラフである。
【図16】図16は、実施例1で用いた別の熱伝導体の構成を示す断面図である。
【図17】図17は、実施例1で作製された温度調節装置における、制御装置の制御設定温度と熱伝導体上に生成される温度の関係を示す図である。Aは、前記制御装置の設定平均温度と前記熱伝導体の実測平均温度の関係を示すグラフであり、Bは、前記制御装置の設定温度差と生成された温度勾配の関係を示すグラフである。
【図18】図18は、本発明における熱伝導体への測温体の埋設方法の一例を示す平面図である。
【図19】図19は、本発明における熱伝導体への測温体の埋設方法の別の一例を示す平面図である。
【図20】図20は、本発明の温度調節装置における、温度勾配生成ユニットと制御装置の配置の一例を示す断面図である。
【図21】図21は、本発明の温度調節装置の別の一例を示す断面図である。
【図22】図22は、上記温度調節装置における、別の測温体の設置の一例を示す断面図である。
【図23】図23は、本発明の温度調節装置の一部の一例を示す模式図である。
【図24】図24は、上記温度調節装置による温度制御の一例を示すグラフである。Aは、一定温度から次第に温度勾配をつけていく例を示すグラフであり、Bは、一定の温度勾配を保ちながら全体的に温度を降下させる例を示すグラフであり、Cは、平均温度を変えずに温度勾配を次第に変化させていく例を示すグラフである。
【図25】図25は、上記温度調節装置を構成する別の熱伝導体の一例および上記熱伝導体上への前記別の熱伝導体の配置の一例を示す図である。Aは、前記別の熱伝導体の断面図であり、Bは、上記熱伝導体上への前記別の熱伝導体の配置の一例を示す平面図である。
【図26】図26は、実施例4で作製された温度調節装置における、熱伝導体表面の位置とウェル内温度との関係を示すグラフである。
【図27】図27は、上記温度調節装置を構成する別の熱伝導体の別の例を示す断面図である。
【図28】図28は、上記熱伝導体上への上記別の熱伝導体および第二の別の熱伝導体の配置の一例および前記別の熱伝導体および第二の別の熱伝導体の表面の位置と温度との関係を示す図である。Aは、上記熱伝導体上への上記別の熱伝導体および第二の別の熱伝導体の配置の一例の平面図であり、Bは、前記別の熱伝導体および前記第二の別の熱伝導体の表面の位置と温度との関係を示すグラフである。
【図29】図29は、本発明の温度調節装置の一部の別の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0014】
1a,1b,14 加熱冷却素子
2,12 熱伝導体
3 熱浴部
4 プレート
5 試料
6,18 測温体
7 断熱カバー
8 溝
9 凹部
10 筐体
11 保持機構
13 断熱体
15 アルミニウム部材
16 SUS部材
17 更に別の熱伝導体
19 測温体挿入穴
20 感温部
21 温度勾配生成ユニット
22 電源
23 制御基板
24 透明アクリル板
25 空気層
26 蓋体
27 Oリング
28 測温体ホルダー
29,34 dc/K値が大きな層
30,33 dc/K値が小さな層
32,36 別の熱伝導体
37 別の測温体
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の温度調節装置は、前述したように、異なる温度に設定された複数の加熱冷却素子に、熱伝導体を熱的に接触させて設け、この熱伝導体の表面に温度勾配を形成するものである。
【0016】
仮に、熱伝導体を1種の材料の単体で構成し(すなわち、全体においてdc/K値を一定とする。)、これに、異なる温度に設定された2個の加熱冷却素子を接触させると、この加熱冷却素子同士間に対応する領域には温度勾配が形成される。しかしながら、このとき、温度勾配の大きさは前記領域全体において均一ではなく、前記領域の中央部において大きく、前記領域の両端部においては小さくなる。また、高温側の端部と、低温側の端部とを比較すると、低温側の端部のほうが温度勾配が小さくなる。このような温度プロファイルの傾向は、熱伝導体として1種の材料単体を使用する限り、加熱冷却素子の設定温度を変化させても、実質的に変更することはできない。
【0017】
そこで、本発明においては、熱伝導体を、単位体積あたりの熱容量を熱伝導率で除した値、すなわち、比重をd[kg/m]、比熱をc[J/(kg・K)]、熱伝導率をK[W/(m・K)]としたときdc/K[s/m]で表される値が、互いに異なる2種以上の材料で構成することにより、所望の温度プロファイルの実現を図っている。
【0018】
dc/K値は、その材料の内部温度の均一化の生じ易さ、温度勾配の生じ易さを示す指標となるものである。dc/K値が小さい材料は、その内部温度が均一化し易いという特性を有している。すなわち、dc/K値が小さい材料は、不均一な温度環境下に置かれた場合であっても、温度勾配が形成され難く、形成されてもその程度は小さくなる傾向にある。一方、dc/K値が大きい材料は、その内部温度が均一化し難いという特性を有している。すなわち、dc/K値が大きい材料は、不均一な温度環境下に置かれた場合、大きな温度勾配が形成される傾向にある。
【0019】
本発明の温度調節装置においては、上記のような、dc/K値と温度勾配との関係を考慮しながら、dc/K値の異なる複数の材料を組み合わせることによって、所望の温度プロファイルを実現することができる。
【0020】
例えば、所望の温度プロファイルが、熱伝導体の試料と接する面において、温度勾配が略均一となるもの(換言すれば、温度勾配形成領域の一端からの距離(温度勾配形成方向に関する距離)の増加に伴って、温度が直線的に増加または低下するもの)である場合、次のような構成とすることができる。熱伝導体の下面に加熱冷却素子を配置し、上面に試料を配置する構成とし、熱伝導体の上面と下面とをdc/K値の異なる材料で構成し、前記上面を構成する材料のdc/K値を、前記下面を構成する材料の前記dc/K値よりも小さくなるように調整した構成である。このような構成によれば、加熱冷却素子と接する面では大きな温度勾配が形成される一方で、試料と接する面では温度勾配が小さくなる、すなわち滑らかな温度プロファイルが形成されるため、所望の温度差を確保しながら、尚且つ、試料と接する面における温度勾配の均一化を実現することが可能となる。
【0021】
また、前述したような、熱伝導体をdc/K値が一定の材料で構成した場合に形成される温度プロファイルの傾向と、所望の温度プロファイルとのずれを認識し、上記dc/K値と温度勾配との関係を考慮しながら、このずれを補正するように、dc/K値の異なる複数の材料を組み合わせることによって、熱伝導体のdc/K値分布を調整すれば、より精密に、所望の温度プロファイルを実現することができる。
【0022】
熱伝導体のdc/K値分布を考える際、熱伝導体のdc/K値としては、dc/K値の平均値を用いれば、熱伝導体のdc/K値分布の調整が更に容易となる。この平均値は、熱伝導体を構成する各材料のdc/K値を(dc/K)xとし、熱伝導体の温度勾配形成方向に対して垂直な断面における各材料の占有面積をSx[m]としたとき、下記式で表される値である。
【0023】
【数1】

但し、xは、1〜nの整数である。また、nは、熱伝導体を構成する材料の数であって、2以上の整数であり、例えば2〜8、好ましくは2〜4の範囲の整数である。
【0024】
例えば、所望の温度プロファイルが、熱伝導体の温度勾配が形成される領域において、温度勾配が略均一となるものである場合、熱伝導体の温度勾配形成領域において、dc/K値の平均値を、前記領域の端部よりも、前記領域の中央部において小さくなるよう調整すればよい。更には、熱伝導体の温度勾配形成方向に沿ったdc/K値(平均値)分布を、中央部から端部に向かうほど順次大きくなるように調整すればよい。このような構成によって、熱伝導体の中央部と両端部との温度勾配差を緩和することができることは、前述したようなdc/K値と温度勾配との関係から理解できる。
【0025】
更に、温度勾配の均一性を向上させるためには、温度勾配が形成される領域において、熱伝導体のdc/K値の平均値が最小となる部分が、前記領域の中央部よりも高温側に位置することが好ましい。このような構成にすることによって、前述したような、高温側端部と低温側端部との温度勾配差を緩和することができ、更なる温度勾配の均一化を実現することができるからである。
【0026】
また、熱伝導体の温度勾配が形成される領域において温度勾配を不均一とし、前記領域の一端からの距離の増加に伴って、温度が段階的に増加または低下するような温度プロファイルを所望する場合、熱伝導体の温度勾配形成領域において、dc/K値の平均値を、前記領域の端部よりも、前記領域の中央部において大きくなるよう調整すればよい。このような構成にすれば、熱伝導体の中央部における温度勾配を更に大きくすることができ、この中央部で温度が段階的に変化する形態を実現することが可能となる。
【0027】
更に、熱伝導体の温度勾配形成領域において、dc/K値の平均値が大きい部分と、小さい部分とを設け、これを温度勾配形成方向に沿って交互に配置すれば、温度が多段階に変化する形態を実現することが可能となる。
【0028】
なお、いずれの場合においても、dc/K値の平均値は、熱伝導体に過大な熱抵抗が生じないように、熱伝導体の各位置で8×10s/m以下とすることが好ましく、また、過度の温度の均一化が生じないよう、熱伝導体の各位置で1×10s/m以上とすることが好ましい。また、dc/K値の平均値の、最大となる部分と最小となる部分との間の差は、特に限定するものではなく、加熱冷却素子同士間の距離、設定温度の差などに応じて、適宜設定することができるが、例えば5×10s/m〜5×10s/m、好ましくは2×10s/m〜3×10s/mである。
【0029】
また、熱伝導体を構成する材料については、2種以上であれば、特に限定するものではないが、例えば2〜8種、好ましくは2〜4種である。
【0030】
熱伝導体を、dc/K値が互いに異なる2種以上の材料で構成することに代えて、1種以上の材料で構成し、且つ、前記試料と熱的に接触する面とは反対側の面に複数の凹部を形成し、この凹部内に空気を存在させることによっても、所望の温度プロファイルの実現が可能である。
【0031】
空気は、熱伝導体を構成する金属等に比べて大きなdc/K値を有しているため、熱伝導体に空気を含む部分を設けることによって、熱伝導体をdc/K値の異なる2種以上の材料で構成するのと同様の効果を実現することができるのである。
【0032】
なお、この場合、dc/K値の平均値は、凹部が、空気と等しいdc/K値を有する固体物質(仮想物質)で充填されていると仮想したうえで、上記式を用いて求めることができる。
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に挙げる実施形態は、いずれも、温度勾配形成領域全体に渡って温度勾配が略均一となる(前記領域の一端からの距離の増加に伴って、温度が直線的に増加または低下する)ような温度プロファイルを実現する場合を例示するものである。しかしながら、前述したように、本発明はこれに限定されるものではなく、各種の温度プロファイルの実現のために適用することが可能である。
【0034】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る温度調節装置の一例を示す構成図である。この温度調節装置は、複数の加熱冷却素子1a,1bと、その上面に熱的に接触させて配置された熱伝導体2とを備えている。また、加熱冷却素子1a,1bの下面(熱伝導体2と接触する面とは反対側の面)には、排熱を回収するための熱浴部3が配置されている。また、加熱冷却素子1a,1bおよび熱伝導体2からの放熱または吸熱を抑制するため、これらの側面を覆うように、例えばフッ素系樹脂で構成された、断熱カバー7が配置されている。更に、本装置は、加熱冷却素子1a,1bを駆動、制御するための制御装置(図示せず。)を備えている。前記制御装置は、例えば、電源と、制御回路と、前記制御回路が搭載された制御基板等から構成される。なお、前記制御装置を除いた図1に示す構成を、以下、温度勾配生成ユニットと言うことがある。
【0035】
加熱冷却素子1a,1bは、熱伝導体2を加熱または冷却させる熱源であり、1個の熱伝導体2に対して、複数個設けられる。図1においては、2個の加熱冷却素子を使用した場合を例にあげて説明するが、本発明において加熱冷却素子の個数はこれに限定されるものではない。この複数の加熱冷却素子1a,1bは、制御装置に接続されており、これによって、各々異なる温度に設定可能なように個別制御されている。
【0036】
加熱冷却素子1a,1bとしては、所望の温度に応じて、熱伝導体2を加熱することも、冷却することも可能であることから、ペルチェ素子を用いることが好ましい。なお、熱伝導体2を加熱のみさせる場合であれば、電気ヒータ等のヒータを用いることも可能である。また、ペルチェ素子とヒータとを組み合わせてもよい。特に、室温以上に設定する場合、高温側の加熱冷却素子として、ヒータとペルチェ素子を併用することが好ましい。
【0037】
また、複数の加熱冷却素子1a,1bの間に大きな間隔があると、熱伝導体2の中央部が周囲温度の影響を受けて、形成される温度プロファイルの制御が難しくなる場合がある。このような影響を避けるために、加熱冷却素子1a,1bの間の加熱冷却素子に接していない熱伝導体2の下面が断熱状態となるような構成とするか、その間隔を影響が無視できる程度に小さく、例えば温度勾配形成方向に測ったペルチェ素子の長さの50%以下、更には10%以下に設定することが好ましい。具体的には、100mm以下とすることが好ましい。更に、図1に示すように、加熱冷却素子1a,1bは、互いに間隔をあけずに近接させて配置されていることが、最も好ましい。
【0038】
熱伝導体2は、加熱冷却素子1a,1bの熱(冷熱を含む。)を受け、これを熱伝導体2表面(加熱冷却素子と接触する面とは反対側の面;以下、試料配置面という。)に載置された試料5(図1においては、試料5はプレート4に保持されている。)に伝導するものである。熱伝導体2には、前述したように、加熱冷却素子1a,1bの配列方向に沿って、温度勾配が形成される。本装置においては、複数の試料5を、この温度勾配の方向に沿って配列されることにより、それぞれ異なる温度に調節することが可能となる。
【0039】
本実施形態において、前述したように、熱伝導体2は、熱伝導特性、具体的には、比重をd[kg/m]、比熱をc[J/(kg・K)]、熱伝導率をK[W/(m・K)]としたとき、dc/Kで表される値が、互いに異なる2種以上の材料で構成されている。
【0040】
図2は、本実施形態に係る熱伝導体2の一例を示す断面図である。この熱伝導体2は、dc/K値の異なる2種の材料を用いて構成されている。これらの各材料で構成された部材2a,2bが、温度勾配形成方向に沿って互いに隣接するように配列されており、2種の材料のうちdc/K値の小さい材料で構成された部材2aが中央部に配置され、その両端に、dc/K値の大きい材料で構成された部材2bが配置されている。これによって、dc/K値の平均値を、熱伝導体の温度勾配形成領域の端部よりも、前記領域の中央部において小さくなるよう調整することができ、温度勾配の均一化を実現することができるからである。
【0041】
また、熱伝導体2は、dc/K値の異なる3種以上の材料で構成してもよい。図3は、熱伝導体を3種の材料で構成した例を示す断面図である。この場合、これら3種の各材料で構成された部材2a、2b、2cを、熱伝導体2の端部から中央部に向かうほど、dc/K値が順次小さくなるように、温度勾配形成方向に沿って互いに隣接するよう配列すればよい。すなわち、3種の材料のうちdc/K値の最小となる材料で構成された部材2aが中央部に配置され、その両端に、dc/K値が中間となる材料で構成された部材2bが配置され、更にその外側に、dc/K値が最大となる材料で構成された部材2cが配置する。
【0042】
このように、熱伝導体2を複数の部材を温度勾配形成方向に配列させて構成する場合、dc/K値が最大となる部材を、熱伝導体の中央部よりも、高温側に位置するよう配置することが好ましい。この例によれば、熱伝導体のdc/K値の平均値が最小となる箇所が高温側に位置するため、更なる温度勾配の均一化を実現することができるからである。
【0043】
なお、上記図2および3においては、部材同士の接続面が、温度勾配形成方向に対して垂直であるが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、接続面が、温度勾配形成方向に対して傾斜していてもよい。
【0044】
図4は、熱伝導体2の別の一例を示す断面図である。この熱伝導体2は、dc/K値が異なる2種の材料で構成されており、これらの各材料で構成された層状の部材2a,2bが積層した構造を有している。これら2つの部材は、dc/K値が小さい材料で構成された部材2aが、熱伝導体2の試料との接触面である上面を構成し、dc/K値が大きい材料で構成された部材2bが、熱伝導体2の加熱冷却素子1a、1bとの接触面である下面を構成するように、配置されている。すなわち、dc/K値が大きい材料で構成された部材2b上に、dc/K値が小さい材料で構成された部材2aが積層された構成を有している。これによって、所望の温度差を確保しながら、温度勾配の均一化を実現することができる。なお、本例において、各部材の層厚は、それぞれ、温度勾配形成領域全体に渡って均一である。
【0045】
図5は、熱伝導体2を積層構造とした更に好ましい一例を示す断面図である。この熱伝導体2は、dc/K値が異なる2種の材料で構成されており、これらの各材料で構成された層状の部材2a,2bが積層した構造を有している。そして、これら2つの部材のうち、dc/K値が小さい材料で構成された部材2aの層厚が、熱伝導体2の端部よりも中央部において大きくなり、dc/K値が大きい材料で構成された部材2bの層厚が、熱伝導体2の端部よりも中央部において小さくなるよう調整されている。これによって、dc/K値の平均値を、熱伝導体の温度勾配形成領域の端部よりも、前記領域の中央部において小さくなるよう調整することができ、温度勾配の均一化を実現することができるからである。また、この熱伝導体2においては、両部材の層厚が互いに補足しあうような層厚に調整されており、熱伝導体2全体の層厚は略均一となるように調整されている。
【0046】
図6は、熱伝導体2を積層構造とした更に好ましい一例を示す断面図である。この熱伝導体2は、図5と同様に、dc/K値が異なる2つの層状部材2a,2bが積層し、dc/K値が小さい部材2aの層厚が、熱伝導体2の端部よりも中央部において大きくなり、dc/K値が大きい部材2bの層厚が、熱伝導体2の端部よりも中央部において小さくなるよう調整されている。そして、更に、dc/K値が小さい部材2aの層厚が最大となり、dc/K値が大きい部材2bの層厚が最小となる箇所(図中のA)を、熱伝導体2の中央部よりも、高温側に位置するよう調整されている。なお、図6においては、加熱冷却素子1bが、加熱冷却素子1aよりも高温に設定されるものとする。この例によれば、熱伝導体2のdc/K値の平均値が最小となる箇所が高温側に位置するため、更なる温度勾配の均一化を実現することができる。
【0047】
なお、熱伝導体2を積層構造とする場合、その層数は2層に限定されるものではなく、3層以上の層で構成されていてもよい。この場合、各層は、それぞれ異なる材料で構成してもよいし(すなわち、3種以上の材料を用いる。)、2種の材料を用いて、これを交互に積層してもよい。いずれの場合においても、各層の層厚が、熱伝導体2のdc/K値(平均値)分布が、前述したような形態となるよう調整されていることが好ましく、その積層構造について特に限定するものではない。
【0048】
また、上記図5および6においては、各部材の層厚が温度勾配形成方向に沿って連続的に変化しているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、層厚が、温度勾配形成方向に沿って段階的に変化していてもよい。
【0049】
いずれの例においても、熱伝導体2の厚みは、特に限定するものではないが、加熱冷却素子1a,1bの熱が効率良く試料配置面まで伝達し得る厚みであることが好ましく、例えば、1〜20mm、好ましくは3〜10mmに設定することができる。また、熱伝導体2の試料配置面の寸法は、特に限定するものではなく、装置の使用目的に応じて適宜設定すればよい。
【0050】
熱伝導体2を構成する材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、真鍮などの金属材料を使用することが好ましい。その他、熱伝導性樹脂、ガラスなどを使用することも可能である。
【0051】
また、熱伝導体2を構成する部材同士間は、熱伝導が確保されていればよく、接合方法について特に限定するものではない。例えば、部材に熱伝導性グリースを塗布し、これを介して部材同士を接触させた構成とすることができる。
【0052】
本装置は、前記熱伝導体2の上に、別の熱伝導体が配置され、前記別の熱伝導体の試料配置面に温度勾配が形成される構成とすることもできる。前記別の熱伝導体は、例えば、dc/K値が互いに異なる2つの材料を積層した構造とすることができる。図25Aに、前記別の熱伝導体の一例の断面図を示す。図示のとおり、前記別の熱伝導体32は、dc/K値の大きな層29とdc/K値の小さな層30とを交互に10回積層している。前記dc/K値が大きな層29の材料としては、例えば、ポリイミドテープ、樹脂製のシート、樹脂の塗布膜などを用いることができ、前記dc/K値が小さな層30の材料としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、金属やシリコンの蒸着膜やスパッタ膜などを用いることができる。前記別の熱伝導体32を、図25Bの平面図に示すように、前記熱伝導体2の上に配置すれば、前記熱伝導体2の試料配置面上の一部に、他の部分より小さな温度勾配を示す部分を形成することができる。なお、前記別の熱伝導体は、図25Aに示す構造に限定されるものではなく、その試料配置面に温度勾配が形成される構造であれば、いかなる構造とすることもできる。例えば、図27に示すような、2つの小さなdc/K値の大きな層34にdc/K値の小さな層33を積層した単純な構造とすることもできる。
【0053】
前記別の熱伝導体は、2つ以上であってもよい。例えば、図28の平面図に示すように、前記別の熱伝導体32と第二の別の熱伝導体36とを、前記熱伝導体2上に配置する。前記第二の別の熱伝導体36としては、例えば、SUS板や樹脂板などのdc/K値の大きな薄板などを用いることができる。このようにすれば、図28Bのグラフに示すように、前記別の熱伝導体32の表面にはより小さな温度勾配が、前記第二の別の熱伝導体36の表面にはより大きな温度勾配が形成される。ここで、例えば、タンパク質溶液の飽和曲線は、高温側で温度に対して飽和濃度の変化が多くなることが多い。このように飽和曲線が立ち上がっている温度領域では、密にデータを取得できれば、よりデータの価値が高まる。そこで、図28Aに示すような構成を用いた温度調節装置を含む後述のタンパク質結晶化装置を使用すれば、前記高温側での温度勾配を小さくすることによって、前記飽和曲線の立ち上がる領域でより密にデータを取得することができるようになる。
【0054】
更に、本装置においては、熱伝導体2内に、測温体6が設けられている。測温体6としては、例えば、熱電対などの温度センサを使用することができる。この測温体6は、例えば、加熱冷却素子1a,1bの各々に対応するように設けることができる。この測温体6は、制御装置に接続されている。制御装置においては、測温体6から入力された測定値と設定温度とを比較し、その差分に応じた制御量を算出し、この制御量に基づいて加熱冷却素子1a,1bに印加される電流などを制御する。これによって、加熱冷却素子1a,1bを、速やかに設定温度に達するよう制御したり、設定温度からのずれを補正するように制御することができる。
【0055】
この測温体6は、熱伝導体2の試料配置面に埋設されていることが好ましい。測温体6を試料配置面に設けることによって、設定温度と実際の試料温度との差を小さくすることができるからである。
【0056】
図18に、前記熱伝導体2への前記測温体6の埋設方法の一例を示す。なお、図18は、前記熱伝導体2の試料配置面での断面図である。前記測温体6が、例えば、保護管付の熱電対や白金抵抗測温体などといった温度センサである場合、前記温度センサでは、前記保護管内の先端に感温部が配置されているのが一般的である。そこで、前記のような温度センサ(測温体)を熱伝導体に埋設して使用する場合には、図18に示すように、測温体6の感熱部20が熱伝導体2の略中央に来るように、熱伝導体2の試料配置面に、深さが熱伝導体2の略中央までの測温体挿入穴19を形成し、これに測温体6を挿入することが好ましい。
【0057】
図19に、前記熱伝導体2への前記測温体6の埋設方法の別の一例を示す。なお、図19は、前記熱伝導体2の試料配置面での断面図である。図18に示した方法では、熱伝導体2の奥行き方向の対称性が悪いため、熱流に乱れが生じて、熱伝導体2の奥行き方向(温度勾配形成方向に直行する方向)での温度均一性に悪影響を及ぼすことがある。このような場合には、図19に示すように、その略中央に感温部20が配置された測温体6を準備し、熱伝導体2の試料配置面に、測温体挿入穴19を熱伝導体2を貫通するように形成し、これに前記測温体6を挿入することがより好ましい。
【0058】
更に、本装置においては、熱伝導体2内に、温度モニター用の別の測温体を設けてもよい。図22に、前記別の測温体の設置の一例を示す。なお、図22は、前記装置の温度勾配形成方向に直交する方向の断面図であり、同図において、図1と同一部材については同一番号を付し、その部材の説明は省略する。図示のように、熱伝導体2の試料配置面に別の測温体37を埋設し、前記別の測温体37を測温体ホルダー28で保持する。この際、極力、熱伝導体2の熱特性に影響を与えないように、前記別の測温体37を前記熱伝導体2の端部に埋設することが好ましい。前記別の測温体37としては、例えば、前記測温体と同様のものを用いることができる。また、前記測温体ホルダー28には、前記別の測温体37への環境からの熱流入や熱流出を防ぐ見地から、熱伝導率の低い材質からなるものを用いることが好ましい。
【0059】
図21に、本発明の第1の実施形態に係る温度調節装置の別の一例の断面図を示す。図21に示した温度調節装置は、図1に示した温度調節装置の上部に空気層を挟んだ複層構造の蓋体26を配置したものである。前記蓋体26は、2枚の透明アクリル板24が、空気層25を挟んだ複層構造をとっている。前記2枚の透明アクリル板24は、例えば、Oリング27を用いて結合される。図1に示した温度調節装置の上面に蓋体を配置した場合、熱伝導体2が低温に保たれている際に、湿度の高い環境では、前記蓋体に結露が発生する場合がある。このような場合には、図21に示すように、前記蓋体を空気層を挟んだ複層構造の蓋体26とすることで、結露の発生を防ぐことが好ましい。前記蓋体26では、空気層を挟んだ複層構造をとることで、蓋体上面と蓋体下面の温度差が大きくなり、結露の発生を防ぐことができる。なお、前記複層構造の蓋体26の素材としては、前述の透明アクリル板が好適であるが、これに制限されるものではなく、他の素材を用いてもよい。この場合には、装置内部の視認性を考慮すると、透明素材を用いることが好ましい。また、前記素材に挟まれる層も、前述の空気層に制限されず、断熱性の高い他の材料からなる層としてもよい。この場合にも、装置内部の視認性を考慮すると、透明性の高い材料を用いることが好ましい。
【0060】
次に、上記装置の動作について説明する。
【0061】
まず、制御装置を作動させ、加熱冷却素子1a,1bの温度を、それぞれ異なる温度に設定する。この設定温度は、特に限定するものではなく、装置の使用目的に応じて適宜設定することができる。一例として、タンパク質結晶を溶液から析出させる際の溶液温度の調節に使用する場合、両加熱冷却素子1a,1bの温度は、それぞれを、例えば、−5〜40℃、好ましくは4〜20℃の範囲内とし、両者の温度差を、例えば、2〜40℃、好ましくは5〜20℃とすることができる。
【0062】
加熱冷却素子の熱は熱伝導体に伝導し、更に熱伝導体2内を伝導する。このとき、熱伝導体には、前述したように、温度勾配が形成される。この状態で、熱伝導体試料配置面上に試料を載置すると、試料は、載置された箇所の熱伝導体2の温度に応じて、温度調節される。このとき、熱伝導体表面には温度勾配が形成されているため、試料の配置位置によって、調節される試料温度は相違することとなる。よって、複数の試料を、温度勾配形成方向に沿って配列させて載置すると、1回の操作で、異なる温度条件での実験等を同時に実施することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、熱伝導体の試料配置面において、一方の端部からの温度勾配形成方向に沿った距離の増加に伴って、温度が直線的に上昇または低下するような温度プロファイルを実現することができる。従って、熱伝導体の所定の位置を目的温度に容易に調節できる。
【0064】
なお、本装置において、前記温度勾配生成ユニットは、1つでも2つ以上でもよい。前記温度勾配生成ユニットが2つ以上である場合、図29に示すように、複数の前記温度勾配生成ユニットを、1つの前記制御装置に接続する構成が好ましい。このようにすれば、省スペース化が図られ、実験効率も向上可能となる。
【0065】
また、前記温度勾配生成ユニットは、例えば、断熱素材で覆うことで、低温に保持する際の結露の発生を防ぐことができるが、湿度の高い環境では、完全に結露の発生を防止することが困難な場合がある。このような場合には、図20に示すように、前記温度勾配生成ユニット21を、電源22、制御基板23などからなる制御装置の上部に配置することが好ましい。このようにすれば、電源22または制御基板23などは、運転時などにおいて熱を放出しているので、この上部に配置した温度勾配生成ユニット21を覆う断熱素材の表面を、前記放出熱に起因する暖かい乾燥した空気が流れることになり、この結果、結露の発生を防ぐことが可能となる。なお、図20において、矢印は、前記暖かい乾燥した空気の流れを示す。
【0066】
(第2の実施形態)
本実施形態においては、熱伝導体を1種以上の材料で構成し、且つ、熱伝導体の試料配置面とは反対側の面に複数の凹部を形成し、この凹部内に空気を存在させた形態について、説明する。なお、本実施形態に係る温度調節装置は、熱伝導体の構成が異なること以外は、第1の実施形態と同様の構成を有するものである。
【0067】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る熱伝導体の一例を示す断面図である。この熱伝導体2は、1種の材料で構成されており、その裏面(加熱冷却素子側の面)に複数の凹部8が形成されている。なお、この凹部8内部には空気が存在している。
【0068】
この凹部8の形状については、特に限定するものではなく、例えば、溝状、穴状などの形状とすることができる。但し、凹部8の温度勾配形成方向における寸法は、0.5〜20mm、更には1〜5mmに設定されることが好ましい。温度勾配形成方向に生じる空気の対流に起因した、熱伝導体2における温度の過度の均一化を抑制することができるからである。このことから、凹部8を溝状とする場合には、温度勾配形成方向に垂直な方向に伸びる溝として形成することが好ましい。
【0069】
この熱伝導体においては、図7に示すように、熱伝導体2の温度勾配が形成される領域において、凹部8の深さが、前記領域の端部から中央部に向かうほど、小さくなるように調整されている。凹部8の深さ分布を、温度勾配形成方向に沿って、このように変化させることによって、dc/K値の平均値を、前記領域の端部よりも、前記領域の中央部において小さくなるよう調整することができ、温度勾配の均一化を実現することができるからである。なお、この形態の場合、複数の凹部8は、図7に示すように、前記領域において、単位面積当りの凹部8の数が均等となるように、凹部8を規則的に配列することが可能である。
【0070】
更に、このような形態の熱伝導体においては、熱伝導体2の温度勾配形成領域において、凹部8の深さが最小となる部分が、前記領域の中央部よりも高温側に位置するように調整することが好ましい。熱伝導体2のdc/K値の平均値が最小となる箇所が高温側に位置するため、更なる温度勾配の均一化を実現することができるからである。
【0071】
また、本実施形態に係る熱伝導体の別の例としては、温度勾配が形成される領域において、単位面積当りの凹部の数が、前記領域の端部から中央部に向かうほど、少なくなるように形成された形態を採用することも可能である。この形態としては、例えば、凹部が溝状の場合は、その溝同士の間隔を、前記領域の端部から中央部に向かうほど、大きくなるように調整された形態を挙げることができる。凹部の分布密度を、温度勾配形成方向に沿って、このように変化させることによって、dc/K値の平均値を、前記領域の端部よりも、前記領域の中央部において小さくなるよう調整することができ、温度勾配の均一化を実現することができるからである。なお、この形態の場合、複数の凹部の深さは、均等となるように調整することが可能である。
【0072】
更に、このような形態の熱伝導体においては、熱伝導体の温度勾配形成領域において、単位面積当りの前記凹部の数が最小となる部分が、前記領域の中央部よりも高温側に位置することが好ましい。熱伝導体のdc/K値の平均値が最小となる箇所が高温側に位置するため、更なる温度勾配の均一化を実現することができるからである。
【0073】
また、上記両形態を組み合わせることも可能である。すなわち、熱伝導体の温度勾配形成方向に沿って、凹部の深さ分布と密度分布の両方を、変化させてもよい。
【0074】
なお、いずれの例においても、熱伝導体全体の寸法は、特に限定するものではなく、第1の実施形態と同様に設定することができる。
【0075】
また、熱伝導体を構成する材料についても、特に限定するものではなく、第1の実施形態と同様の材料を使用することができる。更に、上記説明においては、熱伝導体を1種の材料で構成し、これに凹部を設けた形態を例示しているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。熱伝導体として、第1の実施形態と同様に2種以上の材料を使用し、且つ、凹部を設けることにより、より精度の高い温度プロファイルの調整が可能となる。
【0076】
このような形態の熱伝導体を用いても、第1の実施形態と同様の効果を達成することができる。なお、上記装置の動作については、第1の実施形態と同様であり、その説明を省略する。
【0077】
(第3の実施形態)
本発明の温度調節装置においては、熱伝導体の前記試料と熱的に接触する面に、温度勾配が形成される方向に対して垂直な方向に伸びる溝(図8における溝9)が形成されていることが好ましい。図8は、このような熱伝導体の好ましい形態の一例を示す断面図である。
【0078】
このような形態によれば、熱伝導体2の試料配置面において、溝9に垂直な方向(すなわち、温度勾配形成方向)への熱の移動が抑制されるため、溝9同士間の領域と、これと隣り合う別の溝9同士間の領域との温度差を大きくすることができる。一方、同じ溝9同士間の領域においては、溝9に沿った方向(すなわち、温度勾配形成方向に垂直な方向)への熱の移動が妨げられていないので、等温性を向上させることができる。このように、温度勾配形成方向においては、熱伝導体2表面に大きな温度差を形成し、これに垂直な方向においては、熱伝導体2表面の各位置での温度を略均一に維持することが可能となる。よって、熱伝導体2表面に、複数の試料を、温度勾配形成方向に配列するとともに、これに垂直な方向にも配列させることにより、温度条件の異なる複数の実験を実施しながら、尚且つ、同温度での複数の実験とを、同時に進行させることが可能となる。
【0079】
なお、溝9の形状は、特に限定するものではなく、図8に示すような断面が矩形となる溝のほかに、V字溝、U字溝などの形状とすることも可能である。
【0080】
また、溝9の数は、特に限定するものではなく、使用目的に応じて適宜選択することができる。例えば、図8に示すように複数のウェルを含むプレート4を載置する場合、溝9の数はウェル列の数に対応させて設定すればよい。溝9の数は、例えば3〜50本、好ましくは5〜25本である。
【0081】
溝9の幅、および、溝9同士の間隔についても、特に限定するものではなく、使用目的に応じて適宜選択することができる。例えば、図8に示すように複数のウェルを含むプレート4を載置する場合、溝9の幅はウェル同士の間隔に対応させて設定し、溝8同士の間隔は各ウェルの大きさに対応させて設定すればよい。溝9の幅は、例えば0.5〜20mm、好ましくは1〜10mmであり、溝9同士の間隔は、例えば1〜50mm、好ましくは1〜20mmである。
【0082】
また、溝9の深さについても、特に限定するものではないが、例えば0.5〜10mm、好ましくは1〜5mmである。
【0083】
なお、本実施形態に係る熱伝導体は、その試料配置に溝が形成されていること以外は、第1および第2の実施形態と同様の構成とすることができる。また、本実施形態に係る熱伝導体によっても、第1および第2の実施形態と同様の効果を達成できることはいうまでもない。
【0084】
(第4の実施形態)
本実施形態においては、温度プロファイルを時間的に変化させることのできる形態について説明する。
【0085】
図23は、本発明の第4の実施形態に係る温度調節装置の一部の一例を示す模式図である。この装置では、パーソナルコンピュータ(PC)やシーケンサなどの制御装置が、予め設定された温度設定スケジュールを持っており、これに従って、温度設定情報を通信インターフェイスを介して、温度調節回路に出力する。前記温度出力回路は、設定温度と温度センサなどの測温体によって得られた制御点での温度との差から計算した温度制御信号を、制御出力生成回路に出力する。前記制御出力生成回路は、前記制御信号に従った制御出力をペルチェ素子などの加熱冷却素子に出力する。
【0086】
前記温度調節回路の出力は、PID制御パラメータをもとに算出された温度制御信号であることが好ましい。前記温度制御信号に従って出力される前記制御出力生成回路の制御出力は、連続的な電流出力でもよいし、定電圧の可変パルス出力でもよい。
【0087】
また、図23に示した装置では、温度センサなどの測温体の電圧または電流が、センサ出力測定回路に送られ、前記センサ出力測定回路から、センサ指示温度が、前記温度調節回路、通信インターフェイス、PCやシーケンサなどの制御機器へとフィードバックされている。
【0088】
なお、図23においては、前記温度調節回路、制御出力生成回路、ペルチェ素子などの加熱冷却素子、温度センサなどの測温体、センサ出力回路の数をそれぞれ2つとしたが、これに制限されるものではなく、それぞれ3つ以上とすることもできる。
【0089】
本実施形態によって、図24に示すような温度制御が可能となる。図24Aは、一定温度から次第に温度勾配をつけていく例を示すグラフであり、図24Bは、一定の温度勾配を保ちながら全体的に温度を降下させる例を示すグラフであり、図24Cは、平均温度を変えずに温度勾配を次第に変化させていく例を示すグラフである。更に、前記の例に挙げた温度制御を組み合わせるなどして、例えば、温度上昇後に温度降下するなど、実験対象に対応した多彩な温度制御が可能となる。
【0090】
なお、本実施形態に係る装置は、その一部に図23に示す構成を含むこと以外は、第1、第2および第3の実施形態と同様の構成とすることができる。また、本実施形態に係る装置によっても、第1、第2および第3の実施形態と同様の効果を達成できることはいうまでもない。
【0091】
(第5の実施形態)
本発明の温度調節装置は、各種の化学反応を伴う処理、物性の温度依存性評価などの測定など、温度条件の設定が必要となるあらゆる実験操作に使用することができる。
【0092】
本発明の温度調節装置は、例えば、タンパク質の結晶化において、タンパク質を含む試料溶液の温度調節に好適に用いることができる。また、タンパク質の結晶化には、バッチ法、透析法、蒸気拡散法などの方法があるが、本発明の温度調節装置は、このいずれの方法に対しても適用することが可能である。
【0093】
図9は、本発明の温度調節装置を適用したタンパク質結晶化装置の一例を示す断面図である。この装置は、拡散法、特にハンギングドロップ法に適したタンパク質結晶化装置である。なお、図9において、図1と同一部材については同一番号を付し、その部材の説明は省略する。
【0094】
本装置は、前述したような本発明の温度調節装置と、試料を保持するための保持機構11と、これらを包囲する筐体10とを備えている。温度調節装置は、熱伝導体2の試料配置面を下方に向けて配置されており、この配置面の下方に、前記保持機構11が配置されている。また、この保持機構11は、試料を保持する試料保持面と、この面を昇降させる昇降機構を有している。試料保持面は、温度調節装置の熱伝導体2の試料配置面と、適当な間隔をあけて、互いに対向するように配置されている。
【0095】
次に、この装置の動作について説明する。
【0096】
本装置においては、試料溶液はプレート4に保持された状態で、保持機構11に設置される。このプレート4は、複数のウェルを有するウェルプレートと、ウェルの開口を塞ぐようにウェルプレート上に配置されるカバープレートとで構成されている。ウェルには、沈殿剤を含むリザーバ溶液が保持されている。タンパク質を含む試料溶液は、カバープレートの内面に液滴として置かれる。このカバープレートがウェルプレート上に配置されることにより、リザーバ溶液を含むウェル上部に、試料溶液の液滴が垂下された状態となる。すなわち、密閉された空間内に、試料溶液とリザーバ溶液とが収容された状態となる。このプレート4においては、試料溶液とリザーバ溶液との間で、これらの溶液中に含まれる揮発成分の拡散が生じ、その結果、試料溶液においてタンパク質の結晶化が進行する。
【0097】
上記プレート4において、複数のウェルは、2次元状に配列されていることが好ましい。この場合、一方の配列方向が、温度調節装置の温度勾配形成方向に沿うように、プレートを装置内に配置することによって、1回の操作で異なる温度条件での結晶化を行うことが可能となる。更に、他方の配列方向を、温度調節装置の温度勾配形成方向に垂直な方向に沿うように、プレート4を装置内に配置すれば、更に同温条件での複数の実験を行うことができる。なお、ウェルの数については、特に限定するものではない。
【0098】
上記プレート4を保持機構11の試料保持面に配置し、保持機構11を作動させて、その試料保持面を熱伝導体2に向かって上昇させる。これによって、プレート4の上面、すなわちカバープレートが、温度調節装置の熱伝導体2に接触する。温度調節装置は、第1の実施形態で説明したように動作し、熱伝導体2の温度に応じて、カバープレートに垂下された試料溶液の液滴が温度調節される。このとき、熱伝導体2の温度勾配形成方向に沿って配列された各ウェル上の試料溶液は、温度勾配に応じて、それぞれ異なった温度に調節される。よって、1回の操作によって、異なる温度条件での結晶化を行うことが可能となるのである。
【0099】
なお、温度調節装置における設定温度は、特に限定するものではないが最も高温に設定される加熱冷却素子1aを、例えば10〜100℃、好ましくは10〜50℃とし、最も低温に設定される加熱冷却素子1bを、例えば−5〜30℃、好ましくは4〜20℃とすることができる。
【0100】
そして、結晶化が終了した後、上記装置においては、保持機構11を作動させて、その試料保持面を下降させて、プレート4と熱伝導体2とを離間させる。そして、プレート4を装置から取り出し、プレート4から結晶が取り出すことにより、タンパク質の結晶化操作が終了する。
【0101】
この装置においては、保持機構の昇降動作によって、温度調節装置に対して、試料溶液を保持するプレートの配置がなされる。すなわち、保持機構を可動式とすることによって、温度調節装置を固定した状態でプレートの配置を実現することができる。このように、タンパク質結晶化装置の中核をなす温度調節装置を可動式とする必要がないため、この装置が可動に伴って受ける外部衝撃などを回避することができ、装置の故障の可能性を低減することができる。
【0102】
(第6の実施形態)
次に、本発明の温度調節装置を適用したタンパク質結晶化装置の、別の一例について説明する。この装置は、特にシッティングドロップ法に適したものである。
【0103】
本装置は、前述したような本発明の温度調節装置を備えている。そして、この温度調節装置を構成する加熱冷却素子および熱伝導体を、第1の加熱冷却素子および第1の熱伝導体としたとき、更に、第2の加熱冷却素子と、この第2の加熱冷却素子と熱的に接触し、且つ、前記第1の加熱冷却素子および前記第1の熱伝導体とは熱的に絶縁された、第2の熱伝導体とを備え、前記第2の加熱冷却素子によって、前記第2の熱伝導体が一定の温度に維持される構成を有している。
【0104】
図10Aは、このようなタンパク質結晶化装置の一例を示す断面図である。また、図10Bは、上記タンパク質結晶化装置の、図10Aの断面図と切断方向が互いに直交するような断面図である。この装置は、複数の第1の加熱冷却素子1a,1bと、その上面に熱的に接触させて配置された第1の熱伝導体2とを備えている。なお、これらの部材については、本発明の温度調節装置の実施形態において説明した通りであり、その説明を省略する。
【0105】
そして、第1の加熱冷却素子1a,1bの下方には、第2の加熱冷却素子14が配置されている。この第2の加熱冷却素子14は、第1の加熱冷却素子1a,1bよりも大きな熱作用面(対象物に対して加熱冷却を行う面)を有しており、この熱作用面上に第1の加熱冷却素子1a,1bが配置されている。そして、この第2の加熱冷却素子14の熱作用面の、第1の加熱冷却素子1a,1bで覆われていない領域に、第2の熱伝導体12が熱的に接触している構成を有している。この第2の加熱冷却素子14の熱作用面において、第1の加熱冷却素子1a,1bで覆われていない領域は、例えば、図10Bに示すように、第1の加熱冷却素子1a,1bで覆われた領域の両端に配置される形態とすることができる。このような形態においては、第2の熱伝導体12は、第1の熱伝導体2を挟むように、その両端に配置することとなる。
【0106】
なお、第2の加熱冷却素子14としては、第1の加熱冷却素子1a,1bと同様に、ペルチェ素子を用いることが好ましい。なお、熱伝導体12を加熱のみさせる場合であれば、電気ヒータ等のヒータを用いることも可能である。
【0107】
また、第2の熱伝導体12としては、特に限定するものではないが、dc/K値の小さい材料を使用することが好ましい。例えば、銅、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、真鍮などの金属材料を使用することができる。また、その寸法については、特に限定するものではなく、使用するプレートの寸法などに応じて適宜設定することができる。
【0108】
第2の熱伝導体12と、第1の加熱冷却素子1a,1bおよび第1の熱伝導体2との間には、断熱体13が配置されている。断熱体13としては、特に限定するものではないが、例えば、フッ素樹脂、断熱セラミックス、発泡スチロール、シリコンゴムなどを使用することができる。
【0109】
更に、本装置は、加熱冷却素子1a,1bおよび14を駆動、制御するための制御装置(図示せず。)を備えている。この制御装置は、上記の各加熱冷却素子を個別制御するものである。また、第2の加熱冷却素子14の下面には、排熱を回収するための熱浴部3が配置されている。
【0110】
次に、この装置の動作について説明する。
【0111】
本装置においては、試料溶液はプレート4に保持された状態で、装置に配置される。このプレート4は、互いに連通した内部空間を有する第1のウェル4aおよび第2のウェル4bを有するウェルプレートと、これらのウェルの開口を塞ぐようにウェルプレート上に配置されるカバープレートとで構成されている。試料溶液は第1のウェル4aに保持される。また、第2のウェル4bには、沈殿剤を含むリザーバ溶液が保持される。このウェルプレート上にカバープレートが配置されることにより、第4の実施形態と同様、密閉された空間内に、試料溶液とリザーバ溶液とが収容された状態となる。
【0112】
このプレート4においては、1個の第1のウェル4aと1個の第2のウェル4bとで1個のセルが構成されており、このセルが2次元状に配列されている。具体的には、図10に示すように、セルを2列に配列した構成とすることができる。このとき、セル列は、第1のウェル4a同士が隣り合うように配列させる。このような配列とすることによって、第1のウェル4aをプレート4の中央部に、第2のウェル4bをその両端部に配置することが可能となる。なお、セル列を構成するセルの数については、特に限定するものではない。
【0113】
上記プレート4は、装置を構成する熱伝導体表面に配置される。このとき、図10に示すように、第1のウェル4aが第1の熱伝導体2と熱的に接触し、第2のウェル4bが第2の熱伝導体12と熱的に接触するように配置される。
【0114】
本発明の温度調節装置の実施形態において説明したように、第1の熱伝導体2表面には、第1の加熱冷却素子1a,1bが互いに異なる温度に設定されることにより、温度勾配が形成される。そして、第1のウェル4aに保持された試料溶液は、第1の熱伝導体2の温度に応じて、温度調節される。このとき、温度勾配形成方向に沿って配列された各第1のウェル4a内の試料溶液は、温度勾配に応じて、それぞれ異なった温度に調節される。よって、1回の操作によって、異なる温度条件での結晶化を行うことが可能となる。
【0115】
なお、第1の加熱冷却素子1a,1bの設定温度は、特に限定するものではなく、第5の実施形態と同様に設定することができる。
【0116】
一方、第2の熱伝導体12は、第2の加熱冷却素子14の熱(冷熱を含む。)を受け、一定の温度に維持される。そして、第2のウェル4bに保持されたリザーバ溶液は、第2の熱伝導体12の温度に応じて温度調節される。このとき、第2の熱伝導体12表面には温度勾配は実質的に形成されていない。よって、プレート4に形成された複数の第2のウェル4bについて、それに保持されたリザーバ溶液を、全て等温に維持することが可能となる。
【0117】
なお、第2の加熱冷却素子14の設定温度は、特に限定するものではないが、例えば−5〜50℃、好ましくは4〜20℃とすることができる。
【0118】
そして、結晶化が終了した後、プレート4を装置から取り出し、プレート4から結晶が取り出すことにより、タンパク質の結晶化操作が終了する。
【0119】
このように、上記装置は、比較的簡単な装置構成によって、各セルのリザーバ溶液を等温に保ちながら、試料溶液をそれぞれ異なった温度に調節することができるという利点を有している。
【実施例1】
【0120】
図1に示すような構成を有する温度調節装置を作製した。熱伝導体としては、アルミニウムおよびSUSを用いて、図11AおよびBに示すように、2種の熱伝導体を作製した(実施例1−1、実施例1−2)。熱伝導体は、いずれも、上部に三角柱形のアルミニウム部材15を配置し、下部に2つの三角柱形または四角柱形のSUS部材16を配置した構成とし、各部材同士は、熱伝導性グリースを介して接触させた。熱伝導体の全体の寸法は、幅110mm、奥行き60mm、厚さ6mmとした。すなわち、熱伝導体の中心部でのSUS部材16の厚さは0mm、両端部でのSUS部材16の厚さは6mmである。そして、実施例1−1においては、アルミニウム部材15の幅(W1)を110mmとし、実施例1−2においては、アルミニウム部材15の幅(W2)を66mmとした。また、いずれの熱伝導体においても、温度勾配形成の有効領域は60×30mmとした。
【0121】
また、比較例として、図11Cに示すように、SUS部材16のみで構成された熱伝導体を作製した。この比較例においても、熱伝導体の全体の寸法は、幅110mm、奥行き60mm、厚さ6mmとし、温度勾配形成の有効領域は60×30mmとした。
【0122】
次に、ペルチェ素子(サイズ:40mm×40mm)を2個用意し、これを互いに隣接させて配置するとともに、両素子を、個別に制御し得るように構成された制御装置に接続した。そして、両ペルチェ素子の上方に上記熱伝導体を配置した。熱伝導体表面の両ペルチェ素子に対応する部分には、それぞれ熱電対を設けた。また、周囲環境への放熱による影響を低減するため、ペルチェ素子および熱伝導体の側面には、フッ素系樹脂製の断熱カバーを設けた。更に、ペルチェ素子の下面には、熱浴部として水冷ユニットを配置し、温度調節装置を得た。
【0123】
上記温度制御装置において、2個のペルチェ素子の設定温度をそれぞれ5℃および15℃、2.5℃および17.5℃、0℃及び20℃の3種の設定で、熱伝導体上面に設置されたプレートのウェル内の水温を測定し、得られた測定値から各位置における温度勾配を算出した。高温端のウェル内水温と低温端ウェル内水温の差を生成温度差とし、隣接するウェル間の水温差をこの生成温度差で除した値を、隣接するウェル間の中間位置での温度勾配の相対値とした。上記3種の設定で測定を行い、場所ごとに得られた温度勾配の平均値を求めた。
【0124】
結果を、図12に示す。なお、図12において、熱伝導体上面における位置は、熱伝導体の中央部を基準位置(0mm)とし、基準位置より低温側を「−」、高温側を「+」とする符号と、温度勾配形成方向に沿った中央部からの距離を示す数値とによって表すものとする。
【0125】
図12に示すように、比較例の熱伝導体を用いた場合、熱伝導体の中央部(位置0mm付近)において温度勾配が大きく、中央部から遠ざかるに従って温度勾配が小さくなっており、温度勾配が不均一であることが確認できた。これに対して、実施例1−1および実施例1−2の熱伝導体を用いた場合、比較例に比べて、温度勾配の均一性が向上していることが確認できた。特に、実施例1−2の熱伝導体を用いた場合、温度勾配形成領域全体に渡ってほぼ均一な温度勾配が得られることが確認できた。
【0126】
次に、上記実施例1−1の熱伝導体を用いた温度調節装置に、ウェル内に試料を保持したプレートを載置し、2個のペルチェ素子の設定温度をそれぞれ5℃および15℃に設定して、その温度調節を行った。試料としては、水を使用し、その量は、各ウェルに対して10μLとした。また、プレートとしては、直径3mmのウェルが、7mmピッチで9個×5個配置されたものを使用し、ウェルが9個配列した方向が、ペルチェ素子の配列方向(温度勾配形成方向)と平行となるように、熱伝導体上に載置した。
【0127】
12時間経過後、各ウェル内の水温を測定した。結果を、図13に示す。なお、試料番号については、温度勾配形成方向に沿って配列された9個のウェルに対し、それぞれ、実施した低温側から順に番号を付している。上記プレートにおいて、9個のウェルは、温度勾配形成方向に沿って等間隔で配置されている。よって、図13の横軸は、温度勾配形成方向に沿った距離とみなすことができる。
【0128】
図13に示すように、上記温度調節装置によれは、複数のウェルに対して、それに保持された水の温度を、同時に異なる温度に設定することができた。更に、本温度調節装置においては、その温度を、温度勾配形成方向に沿った距離に対して、ほぼ直線的に変化させることができることが確認できた。
【0129】
次に、上記実施例1−2の熱伝導体を用いた温度調節装置における制御装置の制御設定温度と前記熱伝導体上に生成される温度の関係について調べた。
【0130】
図17Aは、制御装置の高温設定温度と低温設定温度の平均値(設定平均温度(℃))と前記熱伝導体の中央部の実測平均温度(℃)の関係を示すグラフである。図示のとおり、両者は比例関係にある。
【0131】
図17Bは、前記制御装置の高温設定温度と低温設定温度の差(設定温度差(K))と生成された温度勾配(K/mm)の関係を示すグラフである。図示のとおり、両者は比例関係にある。
【0132】
前記図17Aに示したグラフの勾配およびy切片と、前記図17Bに示したグラフの勾配の三つのパラメータから、前記熱伝導体の温度勾配形成領域の中央温度(℃)および生成された温度勾配(K/mm)を求めた。更に、下記式(1)を用いて、前記熱伝導体の温度勾配形成領域の所定個所の温度を推定した。
【0133】
Y(℃)=AX+B・・・(1)
Y:前記熱伝体の温度勾配形成領域の所定個所の温度
X:生成された温度勾配(K/mm)
A:前記温度勾配形成領域中央から前記所定個所までの距離(mm)
T:前記温度勾配形成領域の中央温度(℃)
【0134】
なお、実施例1−2で用いた熱伝導体(図11Bに示す熱伝導体)では、アルミニウム部材15とSUS部材16の接合部が前記熱伝導体の上部表面に露出した箇所があり、ここから、熱伝導性グリースがしみ出し、前記熱伝導体の上部に配置された試料を汚染する場合がある。
【0135】
このような場合には、前記熱伝導性グリースに代えて、熱伝導性接着剤を用いれば、試料の汚染を防止することができる。ただし、前記熱伝導性接着剤を用いる場合には、前記接着剤の塗布後、固化時間内に速やかに接着作業を終了しなければならないため、注意が必要である。また、前記接着層の均一性や厚さ、アルミニウム部材15とSUS部材16の相対位置の保持などにも注意を払う必要がある。
【0136】
なお、前記熱伝導性グリースを用いる場合であっても、図16に示すように、前記熱伝導体の試料配置面を、更に別の熱伝導体17で覆うことで、前記試料配置面の温度プロファイルをほとんど変えることなく、試料の汚染を防止することができる。なお、図16において、18は測温体を示し、図11Bと同一部材については同一番号を付している。前記更に別の熱伝導体17としては、例えば、dc/K値が大きな薄板など(例えば、厚さ0.5mmのSUS板など)を用いることが好ましい。これにより、熱伝導性グリースを用いる場合には、熱伝導体の組立時間に制限がなく、多少塗布が不均一であっても、慣らし運転中に前記グリースがなじんでくるため、熱伝導体の組立を容易に行なうことができるようになる。
【実施例2】
【0137】
上記実施例1で作製した温度調節装置(熱伝導体として実施例1−1を用いた装置)を用いて、下記の手順により、タンパク質の結晶化を行った。結晶化は、静置バッチ法によって実施した。
【0138】
鶏卵白製リゾチーム(Hen Egg White Lysozyme)を、pH4.5の0.1M酢酸緩衝溶液の中に溶かし、濃度25mg/mLとした。さらに、塩化ナトリウム25mg/mLを混合し、試料溶液を調製した。プレートの各ウェル内にこの溶液を10μL入れた。また、プレートとしては、実施例1と同様のプレートを使用した。
【0139】
上記プレートを、実施例1で作製した温度調節装置の熱伝導体(実施例1−1)上に載置した。なお、2個のペルチェ素子の設定温度は、それぞれ5℃および15℃に設定しておいた。また、プレートの載置は、ウェルが9個配列した方向が、ペルチェ素子の配列方向(温度勾配形成方向)と平行となるように実施した。
【0140】
1週間経過後、装置からプレートを取り出し、各ウェルにおいて形成された結晶を光学顕微鏡により観察した。結果を、図14に示す。なお、試料番号については、温度勾配形成方向に沿って配列された9個のウェルに対し、それぞれ、実施した低温側から順に番号を付している。
【0141】
また、各ウェル内の液温を測定したところ、図13に示すように、複数のウェルに対して、それに保持された溶液の温度を、同時に異なる温度に設定することができた。また、その温度が、温度勾配形成方向に沿った距離に対して、ほぼ直線的に変化していることが確認できた。
【実施例3】
【0142】
幅110mm、奥行き60mm、厚さ6mmのSUS製平板の下面に、3mmピッチで幅1mmの溝を複数形成し、図7に示すような構成を有する熱伝導体を作製した。なお、温度勾配形成の有効領域は、60×30mmで、直径3mmのウェルを7mmピッチで9×5個配置したプレートに対応するものとした。そして、この熱伝導体を用い、且つ、高温設定側の加熱冷却素子として、ペルチェ素子とセラミックヒータを併用すること以外は、上記実施例1と同様にして、温度調節装置を作製した。
【0143】
上記温度調節装置において、ヒータを作動させない状態で、2個のペルチェ素子の設定温度をそれぞれ5℃および15℃に設定し、熱伝導体の上面に設置されたプレートのウェルの各位置での温度を測定した。結果を、図15Aに示す。また、ヒータを50℃に設定し、2個のペルチェ素子の設定温度をそれぞれ5℃および50℃に設定して、熱伝導体の上面に設置されたプレートのウェルの各位置での温度を測定した。結果を、図15Bに示す。なお、図15において、熱伝導体上面における位置は、熱伝導体の中央部を基準位置(0mm)とし、基準位置より低温側を「−」、高温側を「+」とする符号と、温度勾配形成方向に沿った中央部からの距離を示す数値とによって表すものとする。
【0144】
図15AおよびBに示すように、熱伝導体の上面に温度勾配を形成することができることが確認できた。また、熱伝導体の上面の温度を、温度勾配形成方向に沿った距離に対して、ほぼ直線的に変化させることができることが確認できた。
【実施例4】
【0145】
図25Aに示す構造の別の熱伝導体32を準備した。dc/K値が大きな層29にはポリイミドテープを、dc/K値が小さな層30にはアルミニウム箔を用いた。次に、図25Bの平面図に示すように、前記別の熱伝導体32を、厚さ1.5mmの熱伝導体2上に配置した。なお、前記熱伝導体2には、前記実施例1−2で用いた熱伝導体と同様のものを使用した。これ以外は、実施例1と同様にして、温度調節装置を作製した。
【0146】
図26のグラフに、別の熱伝導体32の表面のウェル内温度と熱伝導体2の表面のウェル内温度を測定した結果を示す。図示のとおり、別の熱伝導体32のある部分の温度勾配が、別の熱伝導体32のない部分の温度勾配のほぼ1/2となっていた。次に、前記別の熱伝導体32に代えて、図27に示す構造の別の熱伝導体を用いて、温度調節装置を作製した。dc/K値が大きな層34にはシリコンゴムを、dc/K値が小さな層33にはアルミニウム薄板を用いた。この場合でも、別の熱伝導体のある部分の温度勾配を、別の熱伝導体のない部分の温度勾配の約60%程度に小さくすることができた。
【実施例5】
【0147】
図28Aに示すような3つの熱伝導体から構成されるものを準備した。この構成のものにおいて、別の熱伝導体32には実施例4で用いた別の熱伝導体と同様のものを、第二の別の熱伝導体36にはSUS板を用いた。これ以外は、実施例4と同様にして、温度調節装置を作製した。なお、前記構成のものにおいて、熱伝導体2には実施例4で用いた熱伝導体2と同様のものを用いた。上記温度調節装置では、図28Bに示すように、前記別の熱伝導体32の表面にはより小さな温度勾配が、前記第二の別の熱伝導体36の表面にはより大きな温度勾配が形成された。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明の温度調節装置は、例えば、物質合成などの化学反応を伴う操作、生化学的反応の測定、物性の温度依存性評価などの測定など、温度条件の設定が必要となるあらゆる操作に活用でき、各種の産業分野での幅広い用途に応用可能である。特に、コンビナトリアルケミストリーなどに用いられる化学反応、酵素反応、タンパク質などの結晶化、微生物培養などにおける温度スクリーニングなど、種々の温度条件下での処理を必要とする用途に有用である。また、本発明のタンパク質結晶化装置は、例えば、タンパク質の機能解析に基づく新薬開発などに活用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱冷却素子と、前記加熱冷却素子と熱的に接触させて配置された熱伝導体とを含み、前記熱伝導体の温度に応じて、これと熱的に接触させて配置された試料の温度を調節する温度調節装置であって、
前記加熱冷却素子は、2個以上設けられ、これらの加熱冷却素子が互いに異なる温度に設定されることにより、前記熱伝導体の前記試料と熱的に接触する面に温度勾配が形成されるものであり、
前記熱伝導体は、比重をd[kg/m]、比熱をc[J/(kg・K)]、熱伝導率をK[W/(m・K)]としたとき、dc/Kで表される値が、互いに異なる2種以上の材料で構成されていることを特徴とする温度調節装置。
【請求項2】
前記熱伝導体の温度勾配が形成される領域において、前記dc/K値の平均値が、前記領域の端部よりも、前記領域の中央部において小さくなるように調整されている請求項1に記載の温度調節装置。
但し、前記dc/K値の平均値は、前記熱伝導体を構成する各材料のdc/K値を(dc/K)xとし、前記熱伝導体の温度勾配が形成される方向に対して垂直な断面における前記材料の占有面積をSx[m]としたとき、下記式で表される値である。
【数2】

(但し、xは、1〜nの整数であり、nは、熱伝導体を構成する材料の数であって、2以上の整数である。)
【請求項3】
前記加熱冷却素子が前記熱伝導体の下面に配置され、前記試料が前記熱伝導体の上面に配置され、
前記熱伝導体の前記上面と前記下面とが、前記dc/K値が互いに異なる材料で構成されており、前記上面を構成する材料の前記dc/K値が、前記下面を構成する材料の前記dc/K値よりも小さくなるように調整されている請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項4】
前記熱伝導体が、前記dc/K値が互いに異なる2つの層が積層した構造を有し、前記2つの層のうち、前記dc/K値が小さい層の層厚が、前記熱伝導体の温度勾配が形成される領域の端部よりも、前記領域の中央部において大きくなるよう調整されている請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項5】
前記熱伝導体が、前記dc/K値が互いに異なる2以上の部材が、温度勾配が形成される方向に配列された構造を有し、前記2以上の部材が、前記熱伝導体の温度勾配が形成される領域の端部から中央部に向かうほど、前記dc/K値が小さくなるように配列されている請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項6】
前記熱伝導体を、前記dc/K値が互いに異なる2種以上の材料で構成することに代えて、
前記熱伝導体を、1種以上の材料で構成し、且つ、前記試料と熱的に接触する面とは反対側の面に複数の凹部を形成し、この凹部内に空気を存在させる請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項7】
前記凹部の温度勾配が形成される方向における寸法が、0.5〜20mmである請求項6に記載の温度調節装置。
【請求項8】
前記熱伝導体の温度勾配が形成される領域において、前記凹部の深さが、前記領域の端部から中央部に向かうほど、小さくなるように形成されている請求項6に記載の温度調節装置。
【請求項9】
前記熱伝導体の温度勾配が形成される領域において、単位面積当りの前記凹部の数が、前記領域の端部から中央部に向かうほど、少なくなるように形成されている請求項6に記載の温度調節装置。
【請求項10】
前記加熱冷却素子同士間の間隔が、100mm以下である請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項11】
前記熱伝導体の前記試料と熱的に接触する面に、温度勾配が形成される方向に対して垂直な方向に伸びる溝が形成されている請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項12】
前記熱伝導体の前記試料と熱的に接触する面に、測温体が埋設されている請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項13】
前記熱伝導体が、金属で構成される請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項14】
前記加熱冷却素子が、ペルチェ素子である請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項15】
前記熱伝導体の上に、別の熱伝導体が配置され、前記別の熱伝導体の前記試料と熱的に接触する面に温度勾配が形成される請求項1記載の温度調節装置。
【請求項16】
前記別の熱伝導体が、dc/K値が互いに異なる2つの材料を積層した構造である請求項15記載の温度調節装置。
【請求項17】
前記別の熱伝導体が、2つ以上である請求項15記載の温度調節装置。
【請求項18】
前記測温体が、保護管と感温部とから構成され、前記感温部が前記保護管内の略中央に配置され、前記温度勾配形成領域が矩形であり、前記保護管の長手方向と前記温度勾配形成方向とが垂直になる状態で、かつ前記感温部が、前記温度勾配形成領域において温度勾配形成方向と垂直方向の略中央の位置で、前記測温体が前記熱伝導体に埋設されている請求項12記載の温度調節装置。
【請求項19】
更に、温度モニター用の別の測温体を有し、前記別の測温体が、前記熱伝導体の端部に埋設されている請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項20】
更に、前記熱伝導体の上に配置される蓋体を有し、前記蓋体が、内部に空気層を有する請求項1記載の温度調節装置。
【請求項21】
更に、制御装置を有し、これにより、前記加熱冷却素子の出力が制御されている請求項1記載の温度調節装置。
【請求項22】
前記加熱冷却素子および熱伝導体が、前記制御装置の上に配置される請求項21記載の温度調節装置。
【請求項23】
一対の前記加熱冷却素子と前記熱伝導体とで温度勾配生成ユニットが構成され、これらが、一つの前記制御装置で制御されている請求項21記載の温度調節装置。
【請求項24】
下記式により、前記熱伝導体の温度勾配形成領域の所定個所の温度推定手段を有する請求項1記載の温度調節装置。
Y(℃)=AX+B
Y:前記熱伝導体の温度勾配形成領域の所定個所の温度
X:生成された温度勾配(K/mm)
A:前記温度勾配形成領域中央から前記所定個所までの距離(mm)
B:前記温度勾配形成領域の中央温度(℃)
【請求項25】
前記熱伝導体の前記試料と熱的に接触する面が、更に別の熱伝導体で覆われている請求項1記載の温度調節装置。
【請求項26】
タンパク質を含む試料溶液から、前記タンパク質の結晶を析出させるためのタンパク質結晶化装置であって、前記試料溶液の温度を調節するために、請求項1に記載の温度調節装置を含むことを特徴とするタンパク質結晶化装置。
【請求項27】
前記試料溶液は、複数のウェルを備えたプレートに保持されており、前記プレートが熱伝導体に接触するように配置される請求項26に記載のタンパク質結晶化装置。
【請求項28】
更に、前記プレートを保持し、これを前記熱伝導体に接触させるための保持機構を備える請求項27に記載のタンパク質結晶化装置。
【請求項29】
前記熱伝導体が、前記プレートと熱的に接触する面を下方に向けて配置されており、前記保持機構が、前記熱伝導体の下方に配置され、前記プレートを昇降させる機構を有する請求項28に記載のタンパク質結晶化装置。
【請求項30】
前記温度調節装置を構成する加熱冷却素子および熱伝導体を、第1の加熱冷却素子および第1の熱伝導体としたとき、
更に、第2の加熱冷却素子と、この第2の加熱冷却素子と熱的に接触し、且つ、前記第1の加熱冷却素子および前記第1の熱伝導体とは熱的に絶縁された、第2の熱伝導体とを備え、
前記第2の加熱冷却素子によって、前記第2の熱伝導体が一定の温度に維持される請求項27に記載のタンパク質結晶化装置。
【請求項31】
前記第2の加熱冷却素子は、前記第1の加熱冷却素子よりも大きな熱作用面を有しており、前記第2の加熱冷却素子の熱作用面に前記第1の加熱冷却素子が配置されており、この熱作用面の前記第1の加熱冷却素子で覆われていない領域に、前記第2の熱伝導体が熱的に接触している請求項30に記載のタンパク質結晶化装置。
【請求項32】
前記プレートは、互いに連通した内部空間を有する第1のウェルおよび第2のウェルを備え、前記第1のウェルは前記試料溶液を保持し、前記第2のウェルは前記タンパク質を含まないリザーバ溶液を保持するものであり、
前記第1のウェルが、前記第1の熱伝導体と熱的に接触し、前記第2のウェルが、前記第2の熱伝導体と熱的に接触するように配置される請求項30に記載のタンパク質結晶化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【国際公開番号】WO2005/068066
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517109(P2005−517109)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000585
【国際出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(506243161)株式会社創晶 (1)
【Fターム(参考)】