説明

温水加熱システム並びに制御装置及び制御方法

【課題】温水系統の過渡状態における昇温速度を適切に制御する。
【解決手段】制御装置40は、ヒートポンプ20が稼動してから加熱部33の上流側の水の温度が目標温度に達するまで、所定の温度だけ、加熱部33の上流側の水の温度が上昇するように、三方弁34の開度を制御する。または、制御装置40は、ヒートポンプ20が稼動してから加熱部33の下流側の水の温度が目標温度に達するまで、所定の温度だけ、加熱部33の下流側の水の温度が上昇するように、ベーン23の開度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプに設けられた温熱出力熱交換器を用いて温水を加熱する温水加熱システム、並びに当該温水加熱システムの制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、温水を供給する温水系統は、貯熱タンクを備えている。温水系統は、この貯熱タンク内に貯蔵されている一部の水が、温水ヒートポンプ本体に設けられている温熱出力熱交換器から温熱を得ることによって温度制御が行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、温水系統に貯熱タンクを設けるため、設置コストや設置スペースが大きくなってしまうという問題があった。また、貯熱タンクに貯めた水を温熱出力熱交換器に循環させて貯熱タンク中の水温を昇温させるため、昇温に時間がかかるという問題があった。
【0004】
そこで特許文献2には、温水系統に三方弁を設け、温熱出力熱交換器からの温水の出力の一部を温熱出力熱交換器へ循環させ、温熱出力熱交換器の入口の温度が所定の目標温度になるよう制御する方法が記載されている。本方法を用いることで、温水系統の昇温速度を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−340400号公報
【特許文献2】特開2011−185477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に記載の方法を用いる場合、ヒートポンプの起動時など温水系統が過渡状態にある場合、すなわち温水系統全体の水温が目標温度より低い場合に、三方弁が全開となり、温熱出力熱交換器からの全ての温水の出力が循環する可能性がある。この場合、温水系統の水温は急速に上昇し、温熱出力熱交換器の入口の温度が目標温度に達したときに、初めて三方弁の開度が変化する。しかしながら、三方弁の開閉は瞬時に切り替わるものではないため、三方弁の開閉動作が温水の温度変化に追従できず、温熱出力熱交換器の入口の水温が目標温度を越えてしまう可能性がある。この場合、ヒートポンプの温熱出力熱交換器において交換される熱量が小さくなり、温水加熱システムの効率が悪くなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、温水系統の過渡状態における昇温速度を適切に制御する温水加熱システム並びに制御装置及び制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、熱源系統から熱を汲み取り温熱を出力する温熱出力熱交換器を有するヒートポンプと、前記温熱出力熱交換器から得た温熱によって水を加熱する加熱部と、前記加熱部が加熱した水を加熱対象へ流出させる流出部と、前記加熱部が加熱した水を前記加熱部の上流側へ循環させる循環部と、加熱対象から前記加熱部の上流側へ水を流入させる流入部と、前記加熱部から前記流出部及び前記循環部への水の流量配分を調整する調整部とを備えた温水加熱システムを制御する制御装置であって、前記加熱部の上流側の水の目標温度を設定する上流側目標温度設定部と、前記加熱部の上流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、所定の温度だけ、前記加熱部の上流側の水の温度が上昇するように、前記調整部による流量配分の調整量を決定する調整量決定部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明においては、前記調整量決定部は、前記加熱部の上流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、前記加熱部に流通している水、前記循環部によって循環する水、及び前記流入部から前記加熱部の上流側へ流入する水の状態に基づいて算出される所定の温度だけ、前記加熱部の上流側の水の温度が上昇するように、前記調整部による流量配分の調整量を決定することが好ましい。
【0010】
また、本発明においては、前記加熱部に流通している水、前記循環部によって循環する水、及び前記流入部から前記加熱部の上流側へ流入する水の状態に基づいて、前記流入部から前記加熱部の上流側へ流入する水と前記循環部によって循環する水とを混和させた水の温度と、前記加熱部に流通している水の温度との差の温度を、前記調整量の決定に用いる調整温度として算出する調整温度算出部を備え、前記調整量決定部は、前記加熱部の上流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、前記調整温度算出部が算出した調整温度だけ、前記加熱部の上流側の水の温度が上昇するように、前記調整部による流量配分の調整量を決定することが好ましい。
【0011】
また、本発明においては、前記調整量決定部は、前記ヒートポンプが稼動するまで、前記加熱部へ流入する水の温度が一定になるように、前記調整部による流量配分の調整量を決定することが好ましい。
【0012】
また、本発明においては、前記上流側目標温度設定部は、前記加熱部における最大加熱量と、前記加熱部へ流入する水の流量と、前記加熱部の下流側の水の目標温度とに基づいて前記加熱部の上流側の水の目標温度を設定することが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、前記加熱部の下流側の水の目標温度を設定する下流側目標温度設定部と、前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、所定の温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定するヒートポンプ調整量決定部とを備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明においては、前記ヒートポンプ調整量決定部は、前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、前記加熱部に流通している及び前記加熱部から前記調整部へ流入する水の状態並びに前記加熱部における加熱量に基づいて算出される所定の温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定することが好ましい。
【0015】
また、本発明においては、前記加熱部に流通している水及び前記加熱部から前記調整部へ流入する水の状態並びに前記加熱部における加熱量に基づいて、前記加熱部に流通している水が前記加熱部によって加熱されたときの当該水の温度と前記加熱部から前記調整部へ流入する水の温度との差の温度を、ヒートポンプ制御の調整量の決定に用いるヒートポンプ調整温度として算出するヒートポンプ調整温度算出部を備え、前記ヒートポンプ調整量決定部は、前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、前記ヒートポンプ調整温度算出部が算出したヒートポンプ調整温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定することが好ましい。
【0016】
また、本発明は、熱源系統から熱を汲み取り温熱を出力する温熱出力熱交換器を有するヒートポンプと、前記温熱出力熱交換器から得た温熱によって水を加熱する加熱部と、前記加熱部が加熱した水を加熱対象へ流出させる流出部と、前記加熱部が加熱した水を前記加熱部の上流側へ循環させる循環部と、加熱対象から前記加熱部の上流側へ水を流入させる流入部とを備えた温水加熱システムを制御する制御装置であって、前記加熱部の下流側の水の目標温度を設定する下流側目標温度設定部と、前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、所定の温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定するヒートポンプ調整量決定部とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明においては、前記ヒートポンプ調整量決定部は、前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、前記加熱部に流通している水及び前記加熱部から流出する水の状態並びに前記加熱部における加熱量に基づいて算出される所定の温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定することが好ましい。
【0018】
また、本発明においては、前記加熱部に流通している水及び前記加熱部から流出する水の状態並びに前記加熱部における加熱量に基づいて、前記加熱部に流通している水が前記加熱部によって加熱されたときの当該水の温度と前記加熱部から流出する水の温度との差の温度を、ヒートポンプ制御の調整量の決定に用いるヒートポンプ調整温度として算出するヒートポンプ調整温度算出部を備え、前記ヒートポンプ調整量決定部は、前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、前記ヒートポンプ調整温度算出部が算出したヒートポンプ調整温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定することが好ましい。
【0019】
また、本発明は、熱源系統から熱を汲み取り温熱を出力する温熱出力熱交換器を有するヒートポンプと、前記温熱出力熱交換器から得た温熱によって水を加熱する加熱部と、前記加熱部が加熱した水を加熱対象へ流出させる流出部と、前記加熱部が加熱した水を前記加熱部の上流側へ循環させる循環部と、加熱対象から前記加熱部の上流側へ水を流入させる流入部と、前記加熱部から前記循環部及び前記流出部への水の流量配分を調整する調整部と、上記制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、熱源系統から熱を汲み取り温熱を出力する温熱出力熱交換器を有するヒートポンプと、前記温熱出力熱交換器から得た温熱によって水を加熱する加熱部と、前記加熱部が加熱した水を加熱対象へ流出させる流出部と、前記加熱部が加熱した水を前記加熱部の上流側へ循環させる循環部と、加熱対象から前記加熱部の上流側へ水を流入させる流入部と、前記加熱部から前記循環部及び前記流出部への水の流量配分を調整する調整部とを備えた温水加熱システムの調整部の調整量を制御する制御方法であって、前記加熱部の上流側の水の目標温度を決定するステップと、前記加熱部の上流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、所定の温度だけ、前記加熱部の上流側の水の温度が上昇するように、前記調整部による流量配分の調整量を決定するステップとを有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、熱源系統から熱を汲み取り温熱を出力する温熱出力熱交換器を有するヒートポンプと、前記温熱出力熱交換器から得た温熱によって水を加熱する加熱部と、前記加熱部が加熱した水を加熱対象へ流出させる流出部と、前記加熱部が加熱した水を前記加熱部の上流側へ循環させる循環部と、加熱対象から前記加熱部の上流側へ水を流入させる流入部とを備えた温水加熱システムのヒートポンプの調整量を制御する制御装置であって、前記加熱部の下流側の水の目標温度を決定するステップと、前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、所定の温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、加熱部の上流側の温水の温度が目標温度に達するまで、所定の温度だけ、加熱部の上流側または下流側の温水の温度が上昇するように、調整部による調整量またはヒートポンプの調整量を決定する。これにより、温水系統の過渡状態における昇温速度を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態による温水加熱システムの概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態による温水加熱システムの概略構成図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施形態による温水加熱システムの概略構成図である。
【図7】本発明の第3の実施形態による制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施形態による制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第4の実施形態による温水加熱システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
《第1の実施形態》
図1は、本発明の第1の実施形態による温水加熱システムの概略構成図である。
温水加熱システムは、熱源系統10から熱を汲み取り温熱を出力するヒートポンプ20、ヒートポンプ20から出力される温熱により水を熱する温水系統30、及び温水系統30の制御を行う制御装置40を備える。
【0025】
ヒートポンプ20は、熱媒体を充填した配管と、当該配管に接続される蒸発器21、圧縮機22、凝縮器24(温熱出力熱交換器)及び膨張弁25から構成される。
蒸発器21は、熱源系統10から出力される熱により熱媒体の温度を上昇させる。
圧縮機22は、蒸発器21により昇温された熱媒体を圧縮して液化させる。
ベーン23は、圧縮機22が液化させた熱媒体の流量を調整する。
凝縮器24は、ベーン23から流入する熱媒体の熱を温水系統30に供給する。
膨張弁25は、凝縮器24により降温された熱媒体を減圧して気化させる。
【0026】
温水系統30は、流入部31、循環ポンプ32、加熱部33、三方弁34(調整部)、循環部35、流出部36から構成される。
流入部31は、加熱対象から循環ポンプ32を介して加熱部33へ水を流入させる。
循環ポンプ32は、流入した水を加熱部33へ圧送する。
加熱部33は、循環ポンプ32から流入した水を凝縮器24から供給される熱により加熱し、加熱された水を三方弁34へ供給する。
三方弁34は、その開度(流量配分)に応じて加熱部33が加熱した水の一部を循環部35へ流入させ、残りを流出部36へ流入させる。
循環部35は、三方弁34から循環ポンプ32を介して加熱部33へ水を循環させる。
流出部36は、三方弁34から加熱対象へ水を流出させる。
【0027】
また温水系統30には、流入部流量検出器51、流入部温度検出器52、加熱部流量検出器53、加熱部上流側温度検出器54、加熱部下流側温度検出器55が設けられる。
流入部流量検出器51は、流入部31を流れる水の流量Fを検出する。
流入部温度検出器52は、流入部31を流れる水の温度Tを検出する。
加熱部流量検出器53は、加熱部33を流れる水の流量Fを検出する。
加熱部上流側温度検出器54は、加熱部33の上流側における水の温度を検出する。すなわち、加熱部上流側温度検出器54は、加熱部33において加熱される前の水の温度Tを検出する。
加熱部下流側温度検出器55は、加熱部33の下流側における水の温度を検出する。すなわち、加熱部下流側温度検出器55は、加熱部33において加熱された後の水の温度Tを検出する。
【0028】
図2は、本発明の第1の実施形態による制御装置40の構成を示す概略ブロック図である。
制御装置40は、センサ情報取得部401、上流側温度変化率算出部402(調整温度算出部)、上流側目標温度設定部403、ヒートポンプ情報入力部404、上流側当面目標温度設定部405、三方弁制御部406(調整量決定部)を備える。
センサ情報取得部401は、温水系統30に設けられた各検出器が検出したセンサ情報(流量・温度)を取得する。
上流側温度変化率算出部402は、センサ情報取得部401が取得したセンサ情報に基づいて、加熱部33の上流側における水温の変化率(調整温度)、すなわち水温の上昇速度を算出する。なお、水温の変化率はセンサ情報を熱収支モデルに当てはめることで算出する。
上流側目標温度設定部403は、ヒートポンプ20及び温水系統30が稼動した場合において、温水系統30が定常状態になったときにおける加熱部33の上流側における水の目標温度を設定する。
ヒートポンプ情報入力部404は、ヒートポンプ20の圧縮機22が稼動を開始したか否かを示すヒートポンプ情報の入力を受け付ける。
【0029】
上流側当面目標温度設定部405は、センサ情報取得部401、上流側温度変化率算出部402、上流側目標温度設定部403、及びヒートポンプ情報入力部404から取得する情報に従って、現在時刻における加熱部33の上流側における水の当面の目標温度を設定する。具体的には、上流側当面目標温度設定部405は、ヒートポンプ20の圧縮機22が稼動していない状態にあっては、加熱部33の上流側における現在の水温を、当面の目標温度に設定する。すなわち現在の水温を保存するよう当面目標温度を設定する。また、上流側当面目標温度設定部405は、圧縮機22が稼動した後において、加熱部33の上流側における現在の水温が上流側目標温度に達するまでは、上流側温度変化率算出部402が算出した温度変化率に基づいて当面の目標温度を設定する。そして、上流側当面目標温度設定部405は、加熱部33の上流側における現在の水温が上流側目標温度に達した後は、上流側目標温度設定部403が設定した目標温度を当面の目標温度に設定する。
【0030】
三方弁制御部406は、上流側当面目標温度設定部405が設定した当面の目標温度と現在の加熱部33の上流側における現在の水温とに基づくPID(Proportional/Integral/Differential)制御により、三方弁34の開度制御を行う。
【0031】
次に、本実施形態による温水加熱システムの稼動開始時における制御装置40の動作について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態による制御装置40の動作を示すフローチャートである。
まず、制御装置40の上流側目標温度設定部403は、温水加熱システムの稼動開始前に、管理者から加熱部33の上流側の目標温度T2dの入力を受け付ける(ステップS1)。
【0032】
温水加熱システムの管理者は目標温度の設定後、温水系統30を稼動させる。温水系統30が稼動すると、上流側当面目標温度設定部405は、ヒートポンプ情報入力部404が入力を受け付けたヒートポンプ情報が、圧縮機22の稼動開始を示しているか否かを判定する(ステップS2)。なお、ヒートポンプ情報は、温水加熱システムの管理者が圧縮機22を稼動させたときに、圧縮機22の稼動開始を示す。
【0033】
上流側当面目標温度設定部405は、ヒートポンプ情報が、圧縮機22がまだ稼動していないことを示していると判定した場合(ステップS2:NO)、センサ情報取得部401から、加熱部上流側温度検出器54が検出した温度Tを取得し、当該温度Tを加熱部33の上流側における水温を当面目標温度T2aに設定する(ステップS3)。次に、三方弁制御部406は、加熱部33の上流側の水温が当面目標温度T2a、すなわち現在の温度Tで一定になるように開度を決定し、当該開度に基づいて三方弁34を制御する(ステップS4)。つまり、三方弁制御部406は、循環ポンプ32による発熱を冷却する分だけの水が流入部31から流入するように三方弁34の開度を制御することとなる。これにより、圧縮機22が稼動するまでの間、三方弁34は、循環部35に対し全開から少し閉じた開度、すなわち流出部36に対し少し開いた開度に調節することとなる。
以降、ステップS2に戻り圧縮機22が稼動するまでステップS2〜ステップS4の動作を繰り返し実行する。
【0034】
他方、上流側当面目標温度設定部405は、ヒートポンプ情報が、圧縮機22の稼動開始を示していると判定した場合(ステップS2:YES)、センサ情報取得部401から、加熱部上流側温度検出器54が検出した温度Tを取得する。次に上流側当面目標温度設定部405は、当該温度Tが、上流側目標温度設定部403が設定した目標温度T2dに達したか否かを判定する(ステップS5)。
【0035】
上流側当面目標温度設定部405は、温度Tが目標温度T2d未満であると判定した場合(ステップS5:NO)、センサ情報取得部401が取得した温度T、T、T及び熱媒体流量F、Fを用いて加熱部33の上流側における温度変化率dT/dtを算出する(ステップS6)。なお温度Tは、流入部31を流れる水の温度である。また温度Tは、加熱部33の上流側における水の温度である。また温度Tは、加熱部33の下流側における水の温度である。また流量Fは、流入部31を流れる水の流量である。また流量Fは、加熱部33を流れる水の流量である。
【0036】
ここで、上流側温度変化率算出部402は、以下に示す熱収支モデルを示す式(1)に各センサ情報を代入することで、温度変化率dT/dtを算出する。
【0037】
【数1】

【0038】
但し、Mは、加熱部33が保有する水量を示す。また、cp(nは自然数)は、温度Tにおける水の比熱を示す。なお、比熱は水温によって定まるため、上流側温度変化率算出部402は、温度Tに従って比熱cpを算出する。また、Qpumpは、循環ポンプ32における水への入熱量を示す。なお、循環ポンプ32から水への熱量は循環ポンプ32を通過する水の流量F及び循環ポンプ32の回転数、消費電力並びに特性によって定まるため、上流側温度変化率算出部402は、これらの値に従って入熱量Qpumpを算出する。なお、各検出部が検出するセンサ情報には検出遅れが含まれるため、上流側温度変化率算出部402は、水量M、比熱cp、及び入熱量Qpumpを実機運転中の過渡状態のデータに基づいて同定することで、推定精度を向上させるようにしても良い。
【0039】
ここで、式(1)を参照すると、式(1)の右辺の分母は、加熱部33が保有する水の熱容量を示す。また、式(2)の右辺の分子は、流入部31から加熱部33の上流側へ流入する水と循環部35によって循環する水とを混和させた水の熱量と、加熱部33に流通している水の熱量との差の熱量を示す。つまり、温度変化率dT/dtは、流入部31から加熱部33の上流側へ流入する水と循環部35によって循環する水とを混和させた水の温度と、加熱部33に流通している水の温度との差によって算出される。
【0040】
次に、上流側当面目標温度設定部405は、センサ情報取得部401が取得した温度Tに上流側温度変化率算出部402が算出した温度変化率を加算した値を、当面目標温度T2aに設定する(ステップS7)。次に、三方弁制御部406は、加熱部33の上流側の水温が当面目標温度T2aになるように開度を決定し、当該開度に基づいて三方弁34を制御する(ステップS8)。これにより、三方弁制御部406は、加熱部33の上流側の水温Tが目標温度T2dに達するまで、温水系統30の特性(各部温度、流量、及び加熱部33の保水量)に応じた適切な温度変化率で、三方弁34の開度を制御することができる。以降、ステップS5において温度Tが目標温度T2dに達するまで、ステップS5〜ステップS8の動作を繰り返し実行する。
【0041】
ステップS5において、上流側当面目標温度設定部405は、温度Tが目標温度T2dに達したと判定した場合(ステップS5:YES)、目標温度T2dを当面目標温度T2aに設定する(ステップS9)。次に、三方弁制御部406は、加熱部33の上流側の水温が当面目標温度T2a、すなわち目標温度T2dになるように開度を決定し、当該開度に基づいて三方弁34を制御する(ステップS10)。以降、制御装置40は、過渡状態における三方弁34の制御を終了し、目標温度T2dに基づいて三方弁34の開度を制御する定常状態の制御を開始する。なお、定常状態における三方弁34の制御は、ステップS9及びステップS10を繰り返し実行する処理と同じである。
【0042】
このように、本実施形態によれば、三方弁制御部406は、ヒートポンプ20が稼動してから加熱部33の上流側の水の温度が目標温度T2dに達するまで、所定の温度だけ、加熱部33の上流側の水の温度が上昇するように、三方弁34の開度を制御する。これにより、温水系統30が過渡状態にある場合に、三方弁34の開閉動作が温水の温度変化に追従できる程度に三方弁34の開度を制御することができる。特に、本実施形態において所定の温度は、加熱部33に流通している水、循環部35によって循環する水、及び流入部31から加熱部33の上流側へ流入する水の状態に基づいて算出される。これにより、温水加熱システムの特性に応じて三方弁34の開度の制御をすることができ、適切な昇温速度で、加熱部33の上流側の水温を目標温度T2aまで引き上げることができる。特に、本実施形態に示すように、流入部31から加熱部33の上流側へ流入する水と循環部35によって循環する水とを混和させた水の温度と、加熱部33に流通している水の温度との差の温度である温度変化率dT/dtを用いることで、適切な開度の制御を行うことができる。
【0043】
なお、本実施形態において三方弁制御部406は、上流側温度変化率算出部402が算出した温度変化率dT/dtを用いて開度の制御を行う場合を説明したが、これに限られず、他の所定の温度だけ、加熱部33の上流側の水温が上昇するように三方弁34の開度を制御するようにしても良い。但し、当該所定の温度が過小に設定されていると、開度が流出部36に対して開き気味に制御され、加熱部33の上流側の水温の昇温が遅くなり、温水系統30が定常状態に遷移するまでに時間がかかることとなる。他方、当該所定の温度が過大に設定されていると、開度が循環部35に対して開き気味に制御され、加熱部33の上流側の水温の昇温が早くなり、三方弁34の開閉動作が温水の温度変化に追従できなくなることがある。この場合、ヒートポンプ20の凝縮器24において交換される熱量が小さくなり、温水加熱システムの効率が悪くなってしまうという問題がある。
【0044】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態による温水加熱システムは、熱源系統10と温水系統30の特性に基づいて温水系統30の加熱部33の上流側の目標温度を設定する。
図4は、本発明の第2の実施形態による温水加熱システムの概略構成図である。
第2の実施形態による温水加熱システムは、第1の実施形態による温水加熱システムの温水系統30に、熱源上流側温度検出器56及び熱源流量検出器57を備えるものであり、制御装置40の動作が異なる。
熱源上流側温度検出器56は、熱源系統10の上流側における熱水の温度Tを検出する。
熱源流量検出器57は、熱源系統10を流れる熱水の流量Fを検出する。
【0045】
図5は、本発明の第2の実施形態による制御装置40の構成を示す概略ブロック図である。
第2の実施形態による制御装置40は、第1の実施形態による制御装置40の構成に加えて、下流側目標温度設定部407を備え、上流側目標温度設定部403の動作が異なる。
下流側目標温度設定部407は、ヒートポンプ20及び温水系統30が稼動した場合において、温水系統30が定常状態になったときにおける加熱部33の下流側における水の目標温度を設定する。
上流側目標温度設定部403は、下流側の目標温度と、センサ情報取得部401が取得したセンサ情報に基づいて、温水系統30が定常状態になったときにおける加熱部33の上流側における水の目標温度を設定する。
【0046】
次に、本実施形態による温水加熱システムの稼動開始時における制御装置40の動作について説明する。
第2の実施形態による制御装置40の動作は、第1の実施形態における制御装置40の動作とステップS1の動作が異なるものであり、ステップS1以降の動作は第1の実施形態と同じものである。
【0047】
したがって、ここでは第2の実施形態におけるステップS1の動作について説明する。
まず、制御装置40の下流側目標温度設定部407は、温水加熱システムの稼動開始前に、管理者から加熱部33の下流側の目標温度T3dの入力を受け付ける。次に、上流側目標温度設定部403は、センサ情報取得部401から熱源上流側温度検出器56及び熱源流量検出器57が検出した温度T及び流量Fを取得する。そして、上流側目標温度設定部403は、取得した温度T及び流量Fに基づいてヒートポンプ20の最大出力時における凝縮器24の最大加熱量を算出する。次に、上流側目標温度設定部403は、算出した最大加熱量、加熱部33を流れる水の流量F及び下流側の目標温度T3dに基づいて、加熱部33の上流側の目標温度T2dを算出する。具体的には、上流側目標温度設定部403は、ヒートポンプ20の最大出力によって加熱部33の下流側の水温を目標温度T3dとするために要する加熱部33の上流側の水温を、目標温度T2dとする。
【0048】
以降、第1の実施形態と同様にステップS2以降の処理を実行することで、熱源系統10の条件に応じてヒートポンプ20の能力を最大に生かすよう温水系統30の温度を制御することができる。
【0049】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態による温水加熱システムは、温水系統30の加熱部33の下流側の温度に基づいてヒートポンプ20のベーン23の開度(ヒートポンプ制御の調整量)を制御する。
図6は、本発明の第3の実施形態による温水加熱システムの概略構成図である。
第3の実施形態による温水加熱システムは、第1の実施形態による温水加熱システムの温水系統30に凝縮器温度検出器58を備えるものであり、制御装置40の動作が異なる。また、第3の実施形態による温水加熱システムにおいては、流入部温度検出器52及び流入部流量検出器51は備えなくても良い。
凝縮器温度検出器58は、ヒートポンプ20の凝縮器24の温度Tを検出する。
【0050】
図7は、本発明の第3の実施形態による制御装置40の構成を示す概略ブロック図である。
第3の実施形態による制御装置40は、センサ情報取得部401、下流側温度変化率算出部408(ヒートポンプ調整温度算出部)、下流側目標温度設定部407、下流側当面目標温度設定部409、ベーン制御部410(ヒートポンプ調整量決定部)を備える。
センサ情報取得部401は、温水系統30及び凝縮器24に設けられた各検出器が検出したセンサ情報(流量・温度)を取得する。
下流側温度変化率算出部408は、センサ情報取得部401が取得したセンサ情報に基づいて、加熱部33の下流側における水温の変化率(ヒートポンプ調整温度)、すなわち水温の上昇速度を算出する。なお、水温の変化率はセンサ情報を熱収支モデルに当てはめることで算出する。
下流側目標温度設定部407は、ヒートポンプ20が稼動した場合において、温水系統30が定常状態になったときにおける加熱部33の下流側における水の目標温度を設定する。
【0051】
下流側当面目標温度設定部409は、センサ情報取得部401、下流側温度変化率算出部408、及び下流側目標温度設定部407から取得する情報に従って、現在時刻における加熱部33の下流側における水の当面の目標温度を設定する。具体的には、下流側当面目標温度設定部409は、加熱部33の下流側における現在の水温が下流側目標温度に達するまでは、下流側温度変化率算出部408が算出した温度変化率に基づいて当面の目標温度を設定する。そして、下流側当面目標温度設定部409は、加熱部33の下流側における現在の水温が下流側目標温度に達した後は、下流側目標温度設定部407が設定した目標温度を当面の目標温度に設定する。
【0052】
ベーン制御部410は、下流側当面目標温度設定部409が設定した当面の目標温度と現在の加熱部33の下流側における現在の水温とに基づくPID制御により、ベーン23の開度の制御を行う。
【0053】
次に、本実施形態による温水加熱システムの稼動開始時における制御装置40の動作について説明する。
図8は、本発明の第3の実施形態による制御装置40の動作を示すフローチャートである。
まず、制御装置40の下流側目標温度設定部407は、温水加熱システムの稼動開始前に、管理者から加熱部33の下流側の目標温度T3dの入力を受け付ける(ステップS11)。
【0054】
温水加熱システムの管理者は目標温度の設定後、温水系統30を稼動させ、その後圧縮機22を稼動させる。
下流側当面目標温度設定部409は、センサ情報取得部401から、加熱部下流側温度検出器55が検出した温度Tを取得する。次に下流側当面目標温度設定部409は、当該温度Tが、下流側目標温度設定部407が設定した目標温度T3dに達したか否かを判定する(ステップS12)。
【0055】
下流側当面目標温度設定部409は、温度Tが目標温度T3d未満であると判定した場合(ステップS12:NO)、センサ情報取得部401が取得した温度T、T、T及び熱媒体流量Fを用いて加熱部33の下流側における温度変化率dT/dtを算出する(ステップS13)。なお温度Tは、加熱部33の上流側における水の温度である。また温度Tは、加熱部33の下流側における水の温度である。また、温度Tは、凝縮器24内の熱媒体の温度である。また流量Fは、加熱部33を流れる水の流量である。
【0056】
ここで、下流側温度変化率算出部408は、以下に示す熱収支モデルを示す式(2)に各センサ情報を代入することで、温度変化率dT/dtを算出する。
【0057】
【数2】

【0058】
但し、U及びAは、それぞれ凝縮器24の総括熱伝達率及び伝熱面積を示す。U及びAの値は、ヒートポンプ20の設計値として予め算出しておいても良いが、これに限られず実機運転中の定常状態におけるデータから同定しても良い。なお、U・Aは、以下に示す式(3)の計算により算出することができる。
【0059】
【数3】

【0060】
ここで、式(2)を参照すると、式(2)の右辺の分母は、加熱部33が保有する水の熱容量を示す。また、式(2)の右辺の分子は、加熱部33に流通している水の熱量と加熱部33において加熱される熱量の和から、加熱部33から三方弁34へ流入する水の熱量との差の熱量を示す。つまり、温度変化率dT/dtは、加熱部33に流通している水が加熱部33によって加熱されたときの当該水の温度と加熱部33から三方弁34へ流入する水の温度との差によって算出される。
【0061】
次に、下流側当面目標温度設定部409は、センサ情報取得部401が取得した温度Tに下流側温度変化率算出部408が算出した温度変化率を加算した値を、当面目標温度T3aに設定する(ステップS14)。次に、ベーン制御部410は、加熱部33の下流側の水温が当面目標温度T3aになるようにベーン23の開度を決定し、当該開度になるようベーン23を制御する(ステップS15)。これにより、ベーン制御部410は、加熱部33の下流側の水温Tが目標温度T3dに達するまで、加熱部33の特性に応じた適切な温度変化率で、ベーン23の開度を制御することができる。以降、ステップS12において温度Tが目標温度T3dに達するまで、ステップS12〜ステップS15の動作を繰り返し実行する。
【0062】
ステップS12において、下流側当面目標温度設定部409は、温度Tが目標温度T3dに達したと判定した場合(ステップS12:YES)、目標温度T3dを当面目標温度T3aに設定する(ステップS16)。次に、ベーン制御部410は、加熱部33の下流側の水温が当面目標温度T3a、すなわち目標温度T3dになるように開度を決定し、当該開度でベーン23を制御する(ステップS17)。以降、制御装置40は、過渡状態における圧縮機22の制御を終了し、目標温度T3dに基づいてベーン23の開度を制御する定常状態の制御を開始する。なお、定常状態におけるベーン23の制御は、ステップS16及びステップS17を繰り返し実行する処理と同じである。
【0063】
このように、本実施形態によれば、ベーン制御部410は、ヒートポンプ20が稼動してから加熱部33の下流側の水の温度が目標温度T3dに達するまで、所定の温度だけ、加熱部33の下流側の水の温度が上昇するように、ベーン23の開度を制御する。これにより、温水系統30が過渡状態にある場合に、ベーン23の開度制御が温水の温度変化に追従できる程度にベーン23の開度を制御することができる。特に、本実施形態において所定の温度は、加熱部33に流通している水及び加熱部33から三方弁34へ流入する水の状態並びに加熱部33における加熱量に基づいて算出される。これにより、温水加熱システムの特性に応じてベーン23の開度の制御をすることができ、適切な昇温速度で、加熱部33の下流側の水温を目標温度T3aまで引き上げることができる。特に、本実施形態に示すように、加熱部33に流通している水が加熱部33によって加熱されたときの当該水の温度と加熱部33から三方弁34へ流入する水の温度との差の温度である温度変化率dT/dtを用いることで、適切な開度の制御を行うことができる。
【0064】
なお、本実施形態においてベーン制御部410は、下流側温度変化率算出部408が算出した温度変化率dT/dtを用いて開度の制御を行う場合を説明したが、これに限られず、他の所定の温度だけ、加熱部33の下流側の水温が上昇するようにベーン23の開度を制御するようにしても良い。但し、当該所定の温度が過小に設定されていると、開度の上昇レートが抑え気味に制御され、加熱部33の下流側の水温の昇温が遅くなり、温水系統30が定常状態に遷移するまでに時間がかかることとなる。他方、当該所定の温度が過大に設定されていると、開度の上昇レートが高めに制御され、加熱部33の下流側の水温の昇温が早くなり、ベーン23の開度制御が温水の温度変化に追従できなくなることがある。この場合、ヒートポンプ20の凝縮器24において交換される熱量が小さくなり、温水加熱システムの効率が悪くなってしまうという問題がある。
【0065】
《第4の実施形態》
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態による温水加熱システムは、第2の実施形態と同様に温水系統30の状態に基づいて三方弁34の開度を制御しつつ、第3の実施形態と同様に温水系統30の加熱部33の状態に基づいてヒートポンプ20のベーン23の開度を制御する。
【0066】
図9は、本発明の第4の実施形態による温水加熱システムの概略構成図である。
第4の実施形態による温水加熱システムは、第2の実施形態による温水加熱システムの構成と、第3の実施形態による温水加熱システムの構成とを併せ持つ。なお、第4の実施形態による制御装置40の構成も、第2の実施形態による制御装置40の構成と、第3の実施形態による制御装置40の構成とを併せ持ったものである。
【0067】
第4の実施形態による温水加熱システムの動作は、第2の実施形態の動作と第3の実施形態の動作を併せたものである。
具体的には、第3の実施形態のステップS11による下流側目標温度の設定がされたときに、当該下流側目標温度を用いて第2の実施形態のステップS1による上流側目標温度の算出を行う。
また、第2の実施形態によるステップS2〜ステップS4では、制御装置40は三方弁34の開度制御のみを行う。他方、制御装置40は、ステップS5〜ステップS8の処理を実行している間、並行して第3の実施形態によるステップS12〜ステップS15の処理を実行する。そして、制御装置40は、第2の実施形態によるステップS9及びステップS10の処理を実行するときに、第3の実施形態によるステップS16及びステップS17の処理を行う。
これにより、制御装置40は、三方弁34の開度とベーン23の開度をそれぞれ適切に制御することができる。
【0068】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0069】
なお、上述の制御装置40は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0070】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0071】
10…熱源系統 20…ヒートポンプ 21…蒸発器 22…圧縮機 23…凝縮器 24…膨張弁 30…温水系統 31…流入部 32…循環ポンプ 33…加熱部 34…三方弁 35…循環部 36…流出部 40…制御装置 51…流入部流量検出器 52…流入部温度検出器 53…加熱部流量検出器 54…加熱部上流側温度検出器 55…加熱部下流側温度検出器 56…熱源上流側温度検出器 57…熱源流量検出器 58…凝縮器温度検出器 401…センサ情報取得部 402…上流側温度変化率算出部 403…上流側目標温度設定部 404…ヒートポンプ情報入力部 405…上流側当面目標温度設定部 406…三方弁制御部 407…下流側目標温度設定部 408…下流側温度変化率算出部 409…下流側当面目標温度設定部 410…ベーン制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源系統から熱を汲み取り温熱を出力する温熱出力熱交換器を有するヒートポンプと、
前記温熱出力熱交換器から得た温熱によって水を加熱する加熱部と、
前記加熱部が加熱した水を加熱対象へ流出させる流出部と、
前記加熱部が加熱した水を前記加熱部の上流側へ循環させる循環部と、
加熱対象から前記加熱部の上流側へ水を流入させる流入部と、
前記加熱部から前記流出部及び前記循環部への水の流量配分を調整する調整部と
を備えた温水加熱システムを制御する制御装置であって、
前記加熱部の上流側の水の目標温度を設定する上流側目標温度設定部と、
前記加熱部の上流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、所定の温度だけ、前記加熱部の上流側の水の温度が上昇するように、前記調整部による流量配分の調整量を決定する調整量決定部と
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記調整量決定部は、前記加熱部の上流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、前記加熱部に流通している水、前記循環部によって循環する水、及び前記流入部から前記加熱部の上流側へ流入する水の状態に基づいて算出される所定の温度だけ、前記加熱部の上流側の水の温度が上昇するように、前記調整部による流量配分の調整量を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記加熱部に流通している水、前記循環部によって循環する水、及び前記流入部から前記加熱部の上流側へ流入する水の状態に基づいて、前記流入部から前記加熱部の上流側へ流入する水と前記循環部によって循環する水とを混和させた水の温度と、前記加熱部に流通している水の温度との差の温度を、前記調整量の決定に用いる調整温度として算出する調整温度算出部を備え、
前記調整量決定部は、前記加熱部の上流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、前記調整温度算出部が算出した調整温度だけ、前記加熱部の上流側の水の温度が上昇するように、前記調整部による流量配分の調整量を決定する
ことを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記調整量決定部は、前記ヒートポンプが稼動するまで、前記加熱部へ流入する水の温度が一定になるように、前記調整部による流量配分の調整量を決定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記上流側目標温度設定部は、前記加熱部における最大加熱量と、前記加熱部へ流入する水の流量と、前記加熱部の下流側の水の目標温度とに基づいて前記加熱部の上流側の水の目標温度を設定することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記加熱部の下流側の水の目標温度を設定する下流側目標温度設定部と、
前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、所定の温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定するヒートポンプ調整量決定部と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記ヒートポンプ調整量決定部は、前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、前記加熱部に流通している及び前記加熱部から前記調整部へ流入する水の状態並びに前記加熱部における加熱量に基づいて算出される所定の温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定する
ことを特徴とする請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記加熱部に流通している水及び前記加熱部から前記調整部へ流入する水の状態並びに前記加熱部における加熱量に基づいて、前記加熱部に流通している水が前記加熱部によって加熱されたときの当該水の温度と前記加熱部から前記調整部へ流入する水の温度との差の温度を、ヒートポンプ制御の調整量の決定に用いるヒートポンプ調整温度として算出するヒートポンプ調整温度算出部を備え、
前記ヒートポンプ調整量決定部は、前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、前記ヒートポンプ調整温度算出部が算出したヒートポンプ調整温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定する
ことを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
熱源系統から熱を汲み取り温熱を出力する温熱出力熱交換器を有するヒートポンプと、
前記温熱出力熱交換器から得た温熱によって水を加熱する加熱部と、
前記加熱部が加熱した水を加熱対象へ流出させる流出部と、
前記加熱部が加熱した水を前記加熱部の上流側へ循環させる循環部と、
加熱対象から前記加熱部の上流側へ水を流入させる流入部と
を備えた温水加熱システムを制御する制御装置であって、
前記加熱部の下流側の水の目標温度を設定する下流側目標温度設定部と、
前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、所定の温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定するヒートポンプ調整量決定部と
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項10】
前記ヒートポンプ調整量決定部は、前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、前記加熱部に流通している水及び前記加熱部から流出する水の状態並びに前記加熱部における加熱量に基づいて算出される所定の温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定する
ことを特徴とする請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記加熱部に流通している水及び前記加熱部から流出する水の状態並びに前記加熱部における加熱量に基づいて、前記加熱部に流通している水が前記加熱部によって加熱されたときの当該水の温度と前記加熱部から流出する水の温度との差の温度を、ヒートポンプ制御の調整量の決定に用いるヒートポンプ調整温度として算出するヒートポンプ調整温度算出部を備え、
前記ヒートポンプ調整量決定部は、前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、前記ヒートポンプ調整温度算出部が算出したヒートポンプ調整温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定する
ことを特徴とする請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
熱源系統から熱を汲み取り温熱を出力する温熱出力熱交換器を有するヒートポンプと、
前記温熱出力熱交換器から得た温熱によって水を加熱する加熱部と、
前記加熱部が加熱した水を加熱対象へ流出させる流出部と、
前記加熱部が加熱した水を前記加熱部の上流側へ循環させる循環部と、
加熱対象から前記加熱部の上流側へ水を流入させる流入部と、
前記加熱部から前記循環部及び前記流出部への水の流量配分を調整する調整部と、
請求項1から請求項11の何れか1項に記載の制御装置と、
を備えることを特徴とする温水加熱システム。
【請求項13】
熱源系統から熱を汲み取り温熱を出力する温熱出力熱交換器を有するヒートポンプと、
前記温熱出力熱交換器から得た温熱によって水を加熱する加熱部と、
前記加熱部が加熱した水を加熱対象へ流出させる流出部と、
前記加熱部が加熱した水を前記加熱部の上流側へ循環させる循環部と、
加熱対象から前記加熱部の上流側へ水を流入させる流入部と、
前記加熱部から前記循環部及び前記流出部への水の流量配分を調整する調整部と
を備えた温水加熱システムの調整部の調整量を制御する制御方法であって、
前記加熱部の上流側の水の目標温度を決定するステップと、
前記加熱部の上流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、所定の温度だけ、前記加熱部の上流側の水の温度が上昇するように、前記調整部による流量配分の調整量を決定するステップと
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項14】
熱源系統から熱を汲み取り温熱を出力する温熱出力熱交換器を有するヒートポンプと、
前記温熱出力熱交換器から得た温熱によって水を加熱する加熱部と、
前記加熱部が加熱した水を加熱対象へ流出させる流出部と、
前記加熱部が加熱した水を前記加熱部の上流側へ循環させる循環部と、
加熱対象から前記加熱部の上流側へ水を流入させる流入部と
を備えた温水加熱システムのヒートポンプの調整量を制御する制御装置であって、
前記加熱部の下流側の水の目標温度を決定するステップと、
前記加熱部の下流側の水の温度が前記目標温度に達するまで、所定の温度だけ、前記加熱部の下流側の水の温度が上昇するように、ヒートポンプ制御の調整量を決定するステップと
を備えることを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−104601(P2013−104601A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248030(P2011−248030)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)